2021年3月

天然ガス・LNG価格動向

直近の値動き

  • 北東アジアのアセスメントされたスポットLNG価格JKMは、気温の上昇や十分に在庫が確保されたことで2月下旬には5米ドル台まで下落したが、3月に入り一部のLNG生産設備の停止やメンテナンスによる供給障害、中国、韓国等の旺盛な需要、堅調な欧州ガス市場によって価格は上昇に転じ、3月下旬には6米ドル台半ばを推移している。経済産業省統計速報によれば、2月契約ベースのスポットLNG価格は12.7米ドル(1月比5.8米ドル下落)、2月入着ベースのスポットLNG価格は16.3米ドル(1月比 0.8米ドル上昇)となった。入着ベースにおいては、前月に続いて最高値更新となった。
  • 米国では2月中旬の異常な寒波の影響により需要が大きく増加した一方、テキサス州では天然ガス生産設備が停止して生産が減少し、HHは2月中旬に3米ドルを上回った。その後、寒波の緩和と共に価格は下落し、2月下旬は2米ドル後半を推移、3月中旬には2米ドル半ばとなっている。依然として他地域のスポット市場との価格差は大きく、今後もLNG輸出量は高水準になると予想される一方で、原油価格の上昇により石油生産が増加すれば随伴ガス生産も伸びるため、天然ガス価格を押し下げる要因ともなりうる。
  • TTFは 2月下旬に6米ドルを下回り、3月初旬は5米ドル後半を推移したが、3月10日に6米ドルを超えて以降、6米ドル前半を推移している。気温が低く推移したこと、ブレント価格やEUのEmissions Trading System(ETS)市場が上昇したことが価格の押し上げ要因とみられる。また欧州のガス地下貯蔵充填率は、前年同時期に5割以上であったものが今年は3割程度まで減少しており、春から夏にかけて貯蔵向けに一定の需要が続くものと考えられる。
  • 財務省貿易統計速報に基づく2021年2月の日本平均LNG輸入価格は9.35米ドルであった。供給地域別では、ASEAN地域産が7.83米ドル、ロシア産が8.30米ドルと全体平均を下回ったが、米国産は13.13米ドルと全体平均を大きく上回った。2月の日本平均LNG輸入価格は、北東アジアのスポットLNG価格の2月引き渡し分平均18.31米ドルに対して約半分と、スポットLNG価格を大きく下回った。
  • 2月の日本のLNG輸入量は、寒波の影響もあり806.9万トンと前年同月比で21.5%増加し、2か月連続で800万トンを超えた。なお、北東アジア地域各国での2月の平均輸入価格は、韓国10.24米ドル、台湾9.54米ドル、中国8.43米ドルとなっている。韓国は1月、2月とも輸入量が日本同様に前年同月比で増加、特に2月は過去最高の517万トンとなったが、台湾は2月分が前年同月比20%減となった。中国の1-2月のLNG輸入量は1,404万トンと、前年同期比で27.2%増となった。

天然ガス・LNG価格推移(直近1年)

中長期の値動き

  • JKMは、2019年冬期は6米ドル前後の水準にあったが、2020年1月以降、供給拡大と需要増加ペースの失速により下落基調となり、2020年4月末には史上最安値の1.83米ドルを記録した。5月以降2米ドル台が続いたが、8月に入り複数の生産設備での供給障害により上昇基調に転じ、12月には10米ドル台を超え、2021年1月には寒波の影響で需要が急増し32.5米ドルの史上最高値を付けた。この上昇率は下落時と同様に過去に類を見ない顕著なものとなった。ただし、実際にその価格水準で取引されたカーゴ数は限定的と想定される。その後、価格は急落し、2月から3月にかけて5米ドル台を推移、3月中旬から6米ドル台半ばを推移している。
  • 日本平均LNG輸入価格は、2020年3月以降の原油価格急落の影響により、8月から10月にかけて2005年1月以来の低水準となる5米ドル台まで下落、その後原油価格の回復に伴い、12月には7米ドル台に上昇した。2021年1月は8米ドル半ば、2月には9米ドル台まで上昇したが、その理由としては、スポットLNG価格高騰と相対的に高価となった米国産LNGの輸入が多かったことが影響したと推定される。

天然ガス・LNG価格推移(直近10年)

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(出典)
米国HH(Henry Hub)価格: NYMEX Futures and Options, CME Group
英国NBP(National Balancing Point)価格: ICE Futures Europe, Intercontinental Exchange
蘭TTF(Title Transfer Facility)価格:ICE Futures Europe, Intercontinental Exchange
JKM: LNG Japan/Korea Marker© 2021 by S&P Global Platts, a division of S&P Global Inc.
METIスポットLNG価格: 経済産業省「スポットLNG価格調査」
日本平均LNG輸入価格: 財務省貿易統計をもとに作成

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天然ガス・LNG在庫動向

日本

  • 2020年11月末の国内LNG在庫量は391万tで、前月比9.8%、43万tの減少、前年同月比24.1%の減少となった。LNG在庫量は8月に対前年を下回って以降、10月末まで過去5年平均値とほぼ同じ水準を維持したが、11月末には過去5年平均値を52万t下回った。
  • 11月末のガス事業用LNG在庫量は171万tで、前月比8.4%減、前年同月比では34.0%の減少となった。11月の都市ガス用LNG消費量は前年同月比4.4%増の255万t、都市ガス用LNG受入量は前年同月比12.0%減の202万tだった。LNG在庫量の171万tは11月としては2017年以来の低水準である。
  • 11月末の発電燃料用LNG在庫量は219万tで前月比11.0%減、前年同月比14.0%の減少となった。11月の発電燃料用LNG消費量は、前年同月比で9.0%増の393万t、発電燃料用LNG受入量は、前年同月比で4.4%増の429万tであった。

国内LNG月末在庫量(直近1年)

国内LNG月末在庫(直近10年)

(出典)
経済産業省「ガス事業主生産動態統計」及び「電力調査統計・火力発電燃料実績」をもとに作成したもので、これら月末在庫を合算した値を国内在庫としてみなしたもの。なお、利用可能なデータは2008年1月以降のものであるため、過去5年平均は2013年1月分から計算している。


米国

  • 2021年3月12日の米国天然ガス地下貯蔵有効稼働ガス在庫は、米国エネルギー情報局(EIA)のデータによると、1.78 Tcfで前月比 21.9%減となった。在庫量は2020年の同時期と比較すると12.4%低く、過去5年平均値を93 Bcf 下回っているが、2020年11月以降は過去5年のレンジに入っている。
  • EIAが2021年3月に発表した月例の短期エネルギー展望(Short-Term Energy Outlook)によると、2月の在庫の払い出しは0.83 Tcfで、2月中旬の異常寒波によるテキサス州を含む中南部地域での記録的な払い出しが影響し、2月としては過去最大の払い出し量となった。なお、過去5年間(2016年~2020年)の平均払い出し量は0.45 Tcfであった。EIAは2021年3月末の天然ガス在庫は過去5年間の平均よりも13%少ない1.6 Tcf になると推測している。また、2021年の天然ガスの貯蔵シーズンが終わる10月末には、天然ガスの在庫量は約 3.7 Tcf になると推測している。

米国天然ガス地下貯蔵量(直近1年)

米国天然ガス地下貯蔵量(直近10年)

(出典)
米国エネルギー情報局(U.S. Energy Information Administration, EIA)のデータをもとに作成


欧州

  • 2021年3月17日現在のAggregated Gas Storage Inventory(AGSI+)加盟各社中の欧州連合(EU)・英国各社が有する欧州天然ガス地下貯蔵在庫は349 TWh、前月比21.0%減、前年同期比では44.0%減少し、同時期の過去5年平均よりも49.1 TWh低い。貯蔵容量に対する充填率は、2021年3月17日時点で32%と前年同期の56%を大きく下回っているが、過去5年間の同時期の充填率平均(36%)からは、僅かに下回る程度となった。
  • 2020~2021年冬期の在庫払い出し量は、欧州での寒冷化の影響により約760 TWhと大幅に増加し、これは2017~2018年冬季に記録した773 Twh 以来、3シーズンぶりに多い払い出し量となる。なお、昨シーズンは天然ガス価格の季節的なスプレッドを利用するために多くの天然ガスが貯蔵されたが、需要地の暖冬の影響で2019~2020年冬季の払い出し量は485 TWhにとどまっていた。

欧州天然ガス貯蔵量(直近1年)

欧州天然ガス貯蔵量(直近10年)

(出典)
Aggregated Gas Storage Inventory(AGSI), Gas Infrastructure Europeのデータをもとに作成。なお、利用可能なデータは2011年1月以降のものであるため、過去5年平均は2016年1月分から計算している。


天然ガス・LNGプロジェクト動向

ハイライト

  • LNGプロジェクトの開発や売買取引のなかで、温室効果ガス(GHG)排出に関して、排出量自体を削減するCCS等に加え、カーボンニュートラルLNGとしてオフセットする、またGHG排出量に関する情報を提供するといった取り組みが活発化している。

 

アジア・オセアニア地域

  • 三井物産、北海道ガスは2021年2月26日、カーボンニュートラルLNGの供給契約を締結したことを発表した。2017年10月に締結したLNG長期売買契約(SPA)に基づいて、2021年3月18日に石狩LNG基地で受入予定のLNGに関し、採掘から燃焼に至るまでの工程で発生するCO2と三井物産が保有するカーボンクレジットを相殺する(カーボン・オフセット)。北海道ガスの年間LNG取扱量の10%に相当する。
  • 東京ガスは2021年3月9日、東芝、三菱地所、アサヒグループ、いすゞ自動車等14社との間で、CNLの普及拡大とその利用価値向上の実現を目的としてカーボンニュートラルLNGバイヤーズアライアンスを設立したことを発表した。
  • 東京ガスは2021年3月、日立LNG基地の2号LNGタンクの運用を開始した。2020年8月にはJAPEX相馬LNG基地内の福島天然ガス発電用LNGタンク、10月には石狩LNG受入基地の北海道電力 No.4 LNGタンクの運用が開始されており、これらタンク容量は合計69万kl、日本全体のLNG貯蔵容量は約3.5%増加したことになる。
  • シンガポール Pavilion Energy は2021年2月22日、 Chevron との間で、シンガポール向け年間50万トンのLNGを2023年から6年間供給するSPAを締結したことを発表した。カーゴ毎に坑口から荷揚港までのGHG排出量の測定結果が添付される。
  • スリランカ最大の電力会社Ceylon Electricity Boardは2021年2月18日、 Kerawalapitiya に設置するFSRU (浮体貯蔵・気化機器)の入札参加にかかる入札通知を発行した。

 

北米地域

  • EIAの2021年2月の「Natural Gas Monthly」によると、天然ガス輸出量は2019年の12.8 Bcf/dから2020年の14.4 Bcf/dへと13.1%増加した。LNG輸出量は2019年の5.0 Bcf/dから2020年の6.5 Bcf/d(約5,000万トン)へと31.0%増加した。ドライ天然ガス生産量は2019年の93.1 Bcf/dから2020年の91.3 Bcf/dへと1.9%減少した。推定天然ガス消費量は2019年の85.2 Bcf/dから2.3%減少して2020年は83.3 Bcf/dだった。
  • 米 Cheniere Energy は2021年2月24日、 Sabine Pass、 Corpus Christi 液化設備で生産される各LNGカーゴにつき、LNG顧客にGHG排出データの提供を開始すると発表した。このカーゴ・エミッション・タグ(CE Tags)は、井戸元からカーゴ引き渡し点までLNGカーゴの推定GHG排出を数量化し、2022年から顧客に提供見込み。 CE Tags は Cheniere 固有のライフサイクル分析モデルにより計算される。
  • 米 NextDecade Corporationは2021年3月18日、CCSプロジェクトを実施するNEXT Carbon Solutions, LLC. 設立を発表した。Rio Grande LNGプロジェクトの少なくとも2系列については2021年中にFIDを見込んでおり、そのすぐ後にCCSプロジェクトのFIDを予定している。

 

欧州・ロシア地域

  • ドイツ Hanseatic Energy Hub は2021年2月22日、ドイツ・ハンブルグ港に隣接するシュターデ近郊のLNG基地の計画容量年間12 Bcm全体の裏付けとなるグローバルプレイヤーから市場の関心が示され、オープンシーズンの非拘束段階が完了したことを発表した。 Fluxys は2021年3月3日、同プロジェクトに参加することにHanseatic Energy Hub 株主と合意したことを発表した。
  • スペイン Reganosa は2021年2月22日、イタリアのサルディーニャ島西部のオリスタノ港の同島初となるHigas LNG基地について操業、メンテナンスを担当すると発表した。Higas LNG基地は2021年前半に稼働開始見込みで、最大20,000 m3船舶を受け入れることができる桟橋、タンク(各1,500 m3)6基、LNGトラック積み込み設備2件、ガス火力発電設備を備える。
  • Excelerate Energy は2021年3月12日、 ExxonMobil、アルバニアのインフラストラクチャー・エネルギー省との間で、アルバニア南部 Vlora 港でのLNG受入基地の開発可能性に関してFSを実施する覚書を締結したと発表した。LNG輸入開始は早ければ2023年を見込む。
  • ロシア NOVATEK は2021年2月25日、 NOVATEK Gas & Power Asiaと中国Shenergyが、 Arctic LNG 2 プロジェクトで生産されたLNGを15年間にわたり300万トン以上について中国にDES条件で納入する長期SPAを締結したと発表した。
  • Shell は2021年3月8日、 Shell Global LNG Limited が、欧州初のカーボンニュートラルLNGカーゴをGazprom から受け入れ、英国Dragon LNG 基地で荷揚したと発表した。

 

その他地域

  • Qatar Petroleum (QP)は2021年3月1日、 North Field East (NFE)プロジェクトの一環としてLNG貯蔵・積込設備の拡張工事について、サムスンC&T社にエンジニアリング・調達・建設(EPC)契約を発注したことを発表した。契約総額は一括発注の20億米ドル以上(オプションを含む)で、NFEプロジェクト2件目の大規模EPC契約となる。
  • QPは2021年2月22日、Vitol との間で、バングラデシュのVitolの最終顧客向けに年間125万トンのLNGを供給する長期SPAを締結し、2021年に引き渡しを開始すると発表した。
  • QPは2021年2月26日、パキスタン国営石油会社(PSO)との間で、2022年から10 年間、年間300万トンのLNG長期SPAを締結したことを発表した。今回の契約でカタールからパキスタンへの長期LNG供給は年間675万トンとなる。
  • イスラエルのエネルギー省は2021年2月22日、同国とエジプトのエネルギー大臣との間で、エジプトの液化施設を経由した欧州へのガス輸出を拡大するため、Leviathanガス田からエジプトの液化施設までの海底ガスパイプラインの建設に合意したと発表した。
  • Eni は2021年2月22日、エジプト Damietta 液化設備から2012年以来となるLNGカーゴが出荷され、引き取られたと発表した。
  • ナイジェリアの Templars 法律事務所は2021年2月10日、顧客企業 UTM Offshore Limited がナイジェリア初となる年産120万トンの浮体LNG (FLNG)生産設備について石油類資源省から設置ライセンスを受けたと発表した。ここで石油採掘リース第104鉱区からの天然ガス、コンデンセートを処理する。
  • Vitol は2021年3月1日、LNG顧客向けにグリーンLNG商品を発売したと発表した。坑口からDES引き渡しまでのカーゴに伴う排出が排出削減証書(VERs)により相殺される。オフセットされる排出量は、 Wood Mackenzie LNG Emissions Tool を用いて推計される。

添付ファイル