2022年1月

天然ガス・LNG価格動向

直近の値動き

  • 北東アジアのアセスメントされたスポットLNG価格JKM(期近分)は、1月上旬に100万Btu当たり30米ドル半ばで推移した後、中旬以降は欧州市場のガス価格に伴って低下し、20米ドル前後で推移している。冬季需要期においてマレーシアや豪州のLNG生産障害や、欧州ガスの高値影響が残る一方で、中国で比較的温暖な気候が予想され、また中国企業が2月以降の引き渡しでLNGカーゴ販売を多数オファーするなど、想定よりも供給に余裕があると市場から判断されたことから、JKM価格は下落している。
  • JOGMECは12月の日本着スポットLNG月次価格(速報)について、同月以降に契約がなされて日本に入着するスポットLNG取引の平均価格(契約ベース)を33.2米ドル、そのうち同月中に日本に入着したスポットLNG取引の平均価格(入着ベース)も同じく33.2米ドルであったと発表した。これはスポットLNG取引価格報告が開始された2014年3月以来の最高値である。
  • 米国スポットガス価格HHは、1月初めの3米ドル後半から中旬には4.8米ドル台まで上昇した後、月末にかけて4米ドルを挟んで推移している。米国エネルギー情報局(EIA)によれば、11月から12月にかけて比較的温暖な気候となり暖房需要が減少したことが価格下落要因となった。価格見通しについては、2022年の第1四半期平均は3.82米ドル、2022年の年間平均が3.79米ドル、そして2023年の年間平均を3.63米ドルと予想している。米国産LNG輸出については、2021年は約7,400万トンとなったが、今後、新たに液化設備が稼働することで2022年には約8,700万トン、そして2023年には約9,200万トンまで液化容量が増加すると予測している。
  • 欧州ガススポット価格TTFは、1月初めに32米ドル台に達して以降、中旬にかけて20米ドル半ばまで低下し、その後30米ドルまで上昇している。冬季需要期に低下し続ける欧州ガス地下貯蔵量と Nord Stream 2 パイプラインの承認手続き問題や緊迫化するロシアのウクライナ対立懸念等が、欧州ガス価格への不安材料として引き続き残っている。しかし、アジア地域からのカーゴを含めた多くのLNGカーゴを受け入れたことで供給懸念が一時期よりも緩和され、欧州ガス価格は前月より急激に下落している。
  • 財務省貿易統計速報に基づくと、2021年12月の日本平均LNG輸入価格は14.36米ドルとなった。供給地域別では、米国産は16.32米ドル、ASEAN地域産が14.40米ドル、中東産が11.14米ドル、ロシア産が12.24米ドルであった。また、12月のアジア各国の平均輸入価格は、中国18.88米ドル、韓国17.20米ドル、台湾17.26米ドルと4カ月連続で日本が最も安価となった。全日本平均原油輸入CIF価格(JCC: Japan crude cocktail)は2021年12月には82.27米ドルと8カ月連続で上昇しており、2014年11月以来の高値を記録している。原油価格リンクの長期契約が7,8割を占める日本平均LNG輸入価格は、今後も堅調に推移すると想定される。
  • 12月の日本のLNG輸入量は、704万トンと前年同月比で9%減少、2021年のLNG輸入量合計は7,432万トンと前年比で0.2%減少した。中国のLNG輸入量は763万トンと前年同月比で1%増加、2021年のLNG輸入量合計は、7,893万トンと前年比で18%増加した。これにより、中国が年間を通して初めて世界最大の輸入国となった。韓国は386万トンと前年同月比で9%減少、台湾は170万トンと前年同月比1%減となった。これら4市場合計の2021年のLNG輸入量は、2億1,872万トンと前年比10%増加となり、過去最大を更新している。

天然ガス・LNG価格推移(直近2年)

中長期の値動き

  • JKMは、2020年1月以降、供給拡大と需要増加ペースの失速により下落基調となり、2020年4月末には史上最安値の1.83米ドルを記録した。5月以降2米ドル台が続いたが、8月に入り複数の生産設備での供給障害により上昇基調に転じ、12月には10米ドル台を超え、2021年1月には寒波の影響で需要が急増したことにより、32.5米ドルの史上最高値を付けた。その後、価格は急落して2月下旬にかけて5米ドル台まで下落、3月に入り上昇基調に転じて以降は、高値で推移する欧州ガス市場にも牽引され、10月に56米ドルまで一時上昇し、11月は30米ドル半ば、12月には40米ドルに達した後に、1月には20米ドル台で推移している。
  • 日本平均LNG輸入価格は、2020年3月以降の原油価格急落の影響により、8月から10月にかけて2005年1月以来の低水準となる5米ドル台まで下落、その後原油価格上昇に伴い、12月には7米ドル台に上昇した。堅調な原油価格の値動きに応じて、2021年2月には9米ドル半ばまで上昇後、3月は7米ドル半ばまで下落した。その後は、原油価格の上昇に伴って、2021年10月は11米ドル後半、そして11月、12月は14米ドルまで上昇し、2015年1月以来の高値となっている。

天然ガス・LNG価格推移(直近10年)

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(出典)
米国HH(Henry Hub)価格: NYMEX Futures and Options, CME Group
蘭TTF(Title Transfer Facility)価格:ICE Endex, Intercontinental Exchange
JKM: LNG Japan/Korea Marker© 2022 by S&P Global Platts, a division of S&P Global Inc.
JOGMECスポットLNG価格:JOGMEC「日本着スポットLNG月次価格」、2021年3月までは経済産業省「スポットLNG価格調査」を出典とする
日本平均LNG輸入価格: 財務省貿易統計をもとに作成
EUA(EU ETS): ICE Endex, Intercontinental Exchange

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天然ガス・LNG在庫動向

日本

  • 2022年9月末の国内LNG在庫量は541万トンで、前月比7.9%、39万トンの増加、前年同月比30.9%の増加と大幅に増加し、過去5年平均値を133万トン上回った。さらに過去5年の最大値を100万トン以上も上回り、また2ヶ月連続で500万トンを上回った。
  • 9月末のガス事業用LNG在庫量は240万トンで、前月比22.0%増、前年同月比では22.3%の増加となった。9月の都市ガス用LNG消費量は前年同月比12%減の201万トン、都市ガス用LNG受入量は前年同月比9.3%増の254万トンだった。ガス事業用LNG在庫は2ヶ月連続で前年同月比増加となった。
  • 9月末の発電燃料用LNG在庫量は301万トンで前月比1.3%減、前年同月比38.8%の増加となった。9月の発電燃料用LNG消費量は、前年同月比で33.0%減の278万トン、発電燃料用LNG受入量は、前年同月比で33.8%減の306万トンであった。

  • 2022年1月19日に経済産業省が発表した「発電用LNGの在庫状況」によると、大手電力事業者の1月16日時点のLNG在庫は約201万トンであった。これは、昨年同月末比にて約52万トン増、過去4年平均を34万トン上回っている。

国内LNG月末在庫量(直近2年)

国内LNG月末在庫(直近10年)

(出典)
経済産業省「ガス事業主生産動態統計」及び「電力調査統計・火力発電燃料実績」をもとに作成したもので、これら月末在庫を合算した値を国内在庫としてみなしたもの。なお、利用可能なデータは2008年1月以降のものであるため、過去5年平均は2013年1月分から計算している。


米国

  • 2022年1月14日の米国天然ガス地下貯蔵有効稼働ガス在庫は、米国エネルギー情報局(EIA)のデータによると、2.81Tcfで前月比16.4%減となった。在庫量は2021年の同時期と比較すると6.6%低く、過去5年平均値を44 Bcf下回っているが、2020年11月以降は過去5年のレンジに入っている。
  • EIAが2022年1月に発表した月例の短期エネルギー展望(Short-Term Energy Outlook)によると、12月末の在庫は3.2 Tcfで、過去5年間平均より3.0%上回っている。EIAによると2022年第1四半期の在庫の払い出しは平均に近いと推測しており、3月末の在庫は合計1.8 Tcfになると予測している。これはその時期の5年間平均(2017年~2021年)よりも8%多い。2022年4月から10月の貯蔵注入シーズンでは、注入量は過去5年間の平均に追い着かないものと見通しており、これは予想される産業部門のガス需要の伸びとLNG輸出の増加を反映している。

米国天然ガス地下貯蔵量(直近2年)

米国天然ガス地下貯蔵量(直近10年)

(出典)
米国エネルギー情報局(U.S. Energy Information Administration, EIA)のデータをもとに作成


欧州

  • 2022年1月23日現在のAggregated Gas Storage Inventory(AGSI+)加盟各社(欧州連合(EU)加盟国各社、英国)が有する欧州天然ガス地下貯蔵在庫は472.5 TWh (LNG換算3,125万トン)であった。貯蔵容量に対する充填率は42.3%であり、前年同期の53.5%より大幅に低く、さらに過去5年間平均値である52.3%を下回っている。2021年12月31日時点での在庫量は600.4 TWhで、2014年以来の最低量となり、過去5年平均を23.9%、過去5年間の最小値を12.3%下回った。特に貯蔵容量の大きなドイツ、オランダの充填率はそれぞれ53%、36%であった。
  • 2022年1月23日現在のウクライナが有する天然ガス地下貯蔵在庫は75.0 TWhであった。在庫量は前月比24.7%減少、前年同期比では57.5%減少し、同時期の過去5年平均値よりも71.8 TWh低い。貯蔵容量に対する充填率は23.3%で、前年同期の55.1%、過去5年間平均値の42.7%を下回っている。

欧州天然ガス地下貯蔵量(直近2年)

欧州天然ガス地下貯蔵量(直近10年)

(出典)
Aggregated Gas Storage Inventory(AGSI), Gas Infrastructure Europeのデータをもとに作成。なお、利用可能なデータは2011年1月以降のものであるため、過去5年平均は2016年1月分から計算している。

 

  • 2022年1月23日現在のAggregated LNG Storage Inventory(ALSI)加盟各社(11か国、18社)が有する欧州LNG在庫量は521万m3(液体ベース)で、前月比18.1%増加、前年同期比34.4%増加、過去5年平均値を25.8%上回っている。

欧州LNG在庫量(直近2年)

欧州LNG在庫量(直近10年)

(出典)
Aggregated LNG Storage Inventory(ALSI), Gas Infrastructure Europeのデータをもとに作成。なお、利用可能なデータは2012年1月以降のものであるため、グラフ中の過去10年平均及び過去10年平均幅の値については、5年未満の値が含まれる。


天然ガス・LNGプロジェクト動向

ハイライト

  • 中国市場向けの長期契約の締結が続く一方で、米国を中心とした世界各地でのLNG生産プロジェクト開発活動も活発化しつつある。既存の生産設備での稼働率向上と建設中や試運転中のプロジェクトで生産開始が期待される。2021年のLNG輸入量は、日本の7,432万トンに対し、中国は7,893万トンとなり、世界首位となった。

 

アジア・オセアニア地域

  • 広島ガスは初めてカーボンニュートラルLNGをマレーシアLNG社から導入し、2022年1月2日に自社廿日市工場に入港する予定であることを発表、その後カーゴの受入が実施された。
  • INPEXは2022年1月17日、子会社INPEX山陰沖開発が、島根・山口県沖合で石油及び天然ガス賦存の可能性を探るため試掘調査を予定していることを発表した。
  • 石油資源開発株式会社(JAPEX)は2022年1月11日、ベトナム北部でLNG基地建設プロジェクトへ参入することを発表した。ハイフォン市のナム・ディンブ工業団地にLNG基地を建設し、LNGの調達と貯蔵、供給を行うもので、初期開発では、年間最大65万トンのLNGの受入・払出を可能とする桟橋設備や容量5万m3のLNG貯蔵タンクを建設する予定。現在は2022年下期のFIDを目指し検討を進めており、2025年の操業開始を予定している。
  • マレーシアのサバ州政府とPETRONAS は2022年1月4日、同州の天然ガス開発の指針を示すガスマスタープランを発表した。 Sipitang Oil and Gas Industrial Park における容量年間200万トンのLNG生産設備等の投資機会を含んでいる。
  • シンガポール企業 LNG Alliance は2022年1月5日、インドのカルナタカ州 New Mangalore Port Trust (NMPT)との間で、LNGバーチャルパイプラインとLNGバンカリング設備を伴う当初年間容量400万トンのLNG受入基地開発に係る協力協定を締結したことを発表した。
  • 豪 Veneice Energy は2021年12月23日、南オーストラリア州政府がアデレード港 Outer Harbor でのLNG受入基地建設を承認したことを発表した。同基地は同州唯一のLNG受入設備で世界初の再生可能エネルギー動力となるとしている。建設は2022年半ばに開始し、同基地へのLNG輸入開始と同州ガス網への接続は、2023年末から2024年初頭を見込んでいる。
  • 豪 Woodside Energy は2022年1月10日、500 MW 太陽光発電プロジェクト計画を、西豪州環境保護当局に提出した。 Woodside は自社 Pluto LNG 輸出設備含む、地域内工業用需要家向けの電力供給の一端とするため、最大100万枚の太陽光パネルの設置を計画している。
  • 豪 Woodside は2022年1月18日、 Pluto Train 2 Joint Venture の49%非操業持分の Global Infrastructure Partners (GIP)への売却を完了したことを発表した。Pluto Train 2 は Scarborough 開発の主要素であり、既存 Pluto LNG 陸上設備に建設される新規LNG設備1系列、国内向けガス供給設備が含まれる。 Pluto Train 2 の初出荷は2026年に予定されている。
  • McDermott International は2022年1月10日、豪 Woodside から西豪州沖での浮体生産機器(FPU)のエンジニアリング・調達・建造・設置・コミッショニング(EPCIC)業務契約を受注したことを、Scarborough 合弁事業体を代表して発表した。
  • 豪州海上安全規制機関 NOPSEMA は2021年12月24日、 Shell に対し、西豪州北西沖 Prelude 浮体LNG生産船舶に関して、12月2日に発生した電気供給支障により緊急対応、安全機器作動、人員避難に影響が出た事態の再発防止策が完備できるまで同設備の停止を命じた。
  • 国際協力銀行(JBIC)は2021年12月27日、JERAが出資する豪州法人 JERA Barossa Pty Ltd との間で、融資金額346百万米ドル限度(JBIC分)の貸付契約を24日に締結したことを発表した。民間金融機関との協調融資により実施するもので、協調融資総額は497百万米ドルとなる。

 

北米地域

  • 米 Cameron LNG は2022年1月18日、プロジェクト拡張計画に関して第4系列建設・GHG排出削減増強のための設計を修正し、同系列の信頼性・容量の増強を提案する修正案を連邦エネルギー規制委員会(FERC)に申請した。修正案には液化系列1本と原料ガス前処理設備を含む。第5系列建設は除外され、拡張プロジェクト容量は第4系列のみとなり、年間997万トンから675万トンに減少する。
  • Venture Global LNGとCNOOC Gas & Power Groupは2021年12月21日、20年間のSPA締結を発表した。 Venture Global は年間200万トンのLNGを、ルイジアナ州 Plaquemines LNG 輸出設備からFOB条件で供給する。さらに CNOOC Gas & Power は、 Venture Global の Calcasieu Pass LNG 設備から、これよりも短い期間で150万トンを購入する。
  • 豪 Woodside は2022年1月19日、子会社 Woodside Energy Trading Singapore Pte Ltd がCommonwealth LNG 輸出設備との間でSPA交渉に係る基本合意(HOA)を締結したことを発表した。 Woodside は2026年第2四半期から20年間にわたり年間200万トンを購入することを想定している。
  • 米 NextDecade は2022年1月4日、 Rio Grande LNG プレゼンテーションにおいて、2系列以上に係るFIDを2022年後半に見込んでいることを明らかにした。

 

欧州・ロシア地域

  • モンテネグロの国有発電会社 Elektroprivreda Crne Gore (EPCG)は2021年12月29日、自社とシンガポール LNG Alliance がモンテネグロにガス火力発電設備2件とLNG受入基地を建設する可能性を検討するMOUを12月8日に締結したことを発表した。
  • ロシア NOVATEK は2022年1月11日、 NOVATEK Gas & Power Asia Pte. Ltd. と中国浙江省のZhejiang Energy Gas Group Co., Ltdとの間で、 Arctic LNG 2 プロジェクトから年間100万トンのLNGを15年間供給するSPAを締結したことを発表した。
  • NOVATEK は2022年1月11日、 NOVATEK Gas & Power Asia Pte. Ltd. と中国ENN LNG (Singapore) Pte. Ltd. が、 Arctic LNG 2 プロジェクトから年間60万トンのLNGを11年間供給するSPAを締結したことを発表した。

 

その他地域

  • McDermott International は2022年1月10日、QatarEnergy から、 North Field East トップサイド、 North Field East海洋パイプライン、海底ケーブルプロジェクトのエンジニアリング・調達・建設・設置(EPCI)、 North Field South沖合トップサイドのオプション付き洋上作業契約を受注したことを発表した。
  • モザンビーク National Petroleum Instituteは2021年1月3日、 Rovuma 盆地第4鉱区でガス開発のため設置される予定の浮体式プラットフォームが自国に到着したことを発表した。
  • New Fortress Energyは2021年12月21日、モーリタニア イスラム共和国政府との間で、同国沖合の既存ガス埋蔵量を活用する天然ガス、電力、LNG、ブルーアンモニアを含むエネルギーハブ開発に関してMOUを締結したことを発表した。NFEはLNGを生産するため、浮体液化船舶よりも遥かに低コスト・短期間で開発できる自社の "Fast LNG" 液化技術を適用するとしている。
  • Höegh LNG は2021年12月28日、ブラジル Terminal de Regaseificação de GNL de São Paulo S.A. (TSRP)と10年間のFSRU用船契約を締結したことを発表した。稼働開始は2022年末から2023年初を見込んでいる。

 

 

作成協力 一般財団法人日本エネルギー経済研究所

 

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