2022年2月

天然ガス・LNG価格動向

直近の値動き

  • 北東アジアのアセスメントされたスポットLNG価格JKM(期近分)は、2月中旬にかけて100万Btu当たり20米ドル後半から20米ドル半ばを推移していたが、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、24日には36ドルに急上昇し、25日には33ドルに反落した。JKMは欧州ガス価格の値動きに連動して推移しているが、需給面では、マレーシアと豪州でのLNG生産障害の継続、北東アジア地域の寒冷化予報、そして欧州向けガス供給に対する不確実性が懸念される。
  • JOGMECは1月の日本着スポットLNG月次価格(速報)について、同月以降に契約がなされて日本に入着するスポットLNG取引の平均価格(契約ベース)を26.0米ドルと発表した。また、同月中に日本に入着したスポットLNG取引の平均価格(入着ベース)は、報告者が1社以下のため非公表となった。
  • 米国スポットガス価格HHは、2月初めに一時5.5米ドルまで上昇した後、4米ドルを下回るまで下落し、月末にかけて4米ドル半ばを推移している。米国エネルギー情報局(EIA)によれば、1月は比較的寒冷な気候となり暖房及び電力需要が増加したこと、引き続き米国産LNG需要が旺盛なことが価格上昇要因となった。価格見通しについては、2022年の第1四半期平均は3.82米ドル、2022年の年間平均が3.79米ドルと予想している。米国産LNG輸出については、2022年1月は推計約720万トンと、2021年第4四半期平均の月間約670万トンを上回った。2022年輸出量は、新たな液化設備が稼働することで前年比16%増加し約8,600万トンと予測している。
  • 欧州ガススポット価格TTFは、2月初めに27米ドル台に達して以降、中旬にかけて20米ドル前半まで下落したが、ウクライナ情勢の緊迫化に伴って上昇に転じ、24日にはロシアのウクライナ侵攻により44米ドルに急騰、翌日には30米ドルまで急落した。
  • 財務省貿易統計速報に基づくと、2022年1月の日本平均LNG輸入価格は13.77米ドルとなった。供給地域別では、米国産は15.30米ドル、ASEAN地域産が14.40米ドル、中東産が15.28米ドル、ロシア産が13.67米ドルであった。また、1月のアジア各国の平均輸入価格は、韓国21.92米ドル、台湾21.35米ドルであった(2月25日時点、中国の貿易統計情報は未公表)。全日本平均原油輸入CIF価格(JCC: Japan crude cocktail)は2022年1月には79.64米ドルと前月より低下したものの、引き続き高値を維持している。原油価格リンクの長期契約が7,8割を占める日本平均LNG輸入価格は、今後も堅調に推移すると想定される。
  • 1月の日本のLNG輸入量は、679万トンと前年同月比で16%減少した。韓国は500万トンと前年同月比で13%増加、台湾は143万トンと前年同月比1%増加となった。なお、欧州では1月のLNG輸入量が米国産を中心に前月比で260万トン程度増加し、ロシア産パイプイランガス供給減少に代替した(2月25日時点、中国の貿易統計情報は未公表)。

天然ガス・LNG価格推移(直近2年)

中長期の値動き

  • JKMは、2020年1月以降、供給拡大と需要増加ペースの失速により下落基調となり、2020年4月末には史上最安値の1.83米ドルを記録した。5月以降2米ドル台が続いたが、8月に入り複数の生産設備での供給障害により上昇基調に転じ、12月には10米ドル台を超え、2021年1月には寒波の影響で需要が急増したことにより、32.5米ドルの史上最高値を付けた。その後、価格は急落して2月下旬にかけて5米ドル台まで下落、3月に入り上昇基調に転じて以降は、高値で推移する欧州ガス市場にも牽引され、10月に56米ドルまで一時上昇し、11月は30米ドル半ば、12月には40米ドルに達した。2022年1月と 2月は20米ドル台で推移していていたが、月末にかけて30米ドルに上昇している。
  • 日本平均LNG輸入価格は、2020年3月以降の原油価格急落の影響により、8月から10月にかけて2005年1月以来の低水準となる5米ドル台まで下落、その後原油価格上昇に伴い、12月には7米ドル台に上昇した。堅調な原油価格の値動きに応じて、2021年2月には9米ドル半ばまで上昇後、3月は7米ドル半ばまで下落した。その後は、原油価格の上昇に伴って、11月、12月は14米ドルまで上昇した後、2022年1月には13米ドル後半に下落している。

天然ガス・LNG価格推移(直近10年)

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(出典)
米国HH(Henry Hub)価格: NYMEX Futures and Options, CME Group
蘭TTF(Title Transfer Facility)価格:ICE Endex, Intercontinental Exchange
JKM: LNG Japan/Korea Marker© 2022 by S&P Global Platts, a division of S&P Global Inc.
JOGMECスポットLNG価格:JOGMEC「日本着スポットLNG月次価格」、2021年3月までは経済産業省「スポットLNG価格調査」を出典とする
日本平均LNG輸入価格: 財務省貿易統計をもとに作成
EUA(EU ETS): ICE Endex, Intercontinental Exchange

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天然ガス・LNG在庫動向

日本

  • 2021年10月末の国内LNG在庫量は499万トンで、前月比7.7%、41万トンの減少、前年同月比では15.3%増加し、過去5年平均値を66万トン上回ったが、3ヶ月振りに500万トンを下回った。
  • 10月末のガス事業用LNG在庫量は245万トンで、前月比2.0%増、前年同月比では31.2%の増加、3ヶ月連続で前年同月比増加となった。10月の都市ガス用LNG消費量は前年同月比5.2%減の214万トン、都市ガス用LNG受入量は前年同月比3.6%減の209万トンだった。
  • 10月末の発電燃料用LNG在庫量は254万トンで前月比15.4%減、前年同月比3.3%の増加となった。10月の発電燃料用LNG消費量は、前年同月比で17.2%減の308万トン、発電燃料用LNG受入量は、前年同月比で25.2%減の298万トンであった。
  • 2022年2月22日に経済産業省が発表した「発電用LNGの在庫状況」によると、大手電力事業者の2月20日時点のLNG在庫は約182万トンであった。これは、昨年同月末比にて約48万トン減、過去4年平均を16万トン下回っている。

国内LNG月末在庫量(直近2年)

国内LNG月末在庫(直近10年)

(出典)
経済産業省「ガス事業主生産動態統計」及び「電力調査統計・火力発電燃料実績」をもとに作成したもので、これら月末在庫を合算した値を国内在庫としてみなしたもの。なお、利用可能なデータは2008年1月以降のものであるため、過去5年平均は2013年1月分から計算している。


米国

  • 2022年2月11日の米国天然ガス地下貯蔵有効稼働ガス在庫は、米国エネルギー情報局(EIA)のデータによると、1.91Tcfで前月比32.0%減となった。在庫量は2021年の同時期と比較すると16.2%低く、過去5年平均値を334Bcf下回っているが、2020年11月以降は過去5年のレンジに入っている。
  • EIAが2022年2月に発表した月例の短期エネルギー展望(Short-Term Energy Outlook)によると、3月までの在庫は合計1.6 Tcfを僅かに下回ると予測している。これはその時期の5年間平均(2017年~2021年)よりも8%少ない。

米国天然ガス地下貯蔵量(直近2年)

米国天然ガス地下貯蔵量(直近10年)

(出典)
米国エネルギー情報局(U.S. Energy Information Administration, EIA)のデータをもとに作成


欧州

  • 2022年2月22日現在のAggregated Gas Storage Inventory(AGSI+)加盟各社(EU加盟国各社、英国)が有する欧州天然ガス地下貯蔵在庫は336.6 TWh (LNG換算2,230万トン相当)であった。これは前年同期より20.3%、85.8 TWh (LNG換算570万トン相当)下回るものだった。貯蔵容量に対する充填率は30.4%であり、前年同期の38.0%、過去5年間平均値の36.2%を下回った。貯蔵容量の大きなドイツ、オランダの充填率はそれぞれ30%、22%であった。
  • 2022年2月22日現在のウクライナが有する天然ガス地下貯蔵在庫は58.6 TWhであった。在庫量は前月比22.8%減少、前年同期比では59.5%減少し、同時期の過去5年平均値よりも64.2 TWh低い。貯蔵容量に対する充填率は18.1%で、前年同期の45.2%、過去5年間平均値の36.4%を下回っている。

欧州天然ガス地下貯蔵量(直近2年)

欧州天然ガス地下貯蔵量(直近10年)

(出典)
Aggregated Gas Storage Inventory(AGSI), Gas Infrastructure Europeのデータをもとに作成。なお、利用可能なデータは2011年1月以降のものであるため、過去5年平均は2016年1月分から計算している。

 

  • 2022年2月22日現在のAggregated LNG Storage Inventory(ALSI)加盟各社(11か国、18社)が有する欧州LNG在庫量は303万m3(液体ベース)で、前月比34.6%減少、前年同期比21.8%減少、過去5年平均値を18.4%下回っている。

欧州LNG在庫量(直近2年)

欧州LNG在庫量(直近10年)

(出典)
Aggregated LNG Storage Inventory(ALSI), Gas Infrastructure Europeのデータをもとに作成。なお、利用可能なデータは2012年1月以降のものであるため、グラフ中の過去10年平均及び過去10年平均幅の値については、5年未満の値が含まれる。


天然ガス・LNGプロジェクト動向

ハイライト

  • 米国ではSabine Pass 液化設備の第6系列の実質的な完成、Calcasieu Pass 液化設備の輸出開始などLNGのさらなる増産が見込まれる。2022年1月のEUと英国のLNG輸入量960万トンのうち、約半分を米国が占めた。

 

アジア・オセアニア地域

  • 西部ガスは2022年2月3日、東京ガスから調達した西部ガスとして初となるカーボンニュートラルLNGを積載したLNG船が前日にひびきLNG受入基地に入港したと発表した。
  • タイPTTは2022年2月15日、タイ・ラヨーン県で自国2件目となるLNG受入基地 LNG Map Ta Phut Terminal 2 (LMPT2)に投資する合弁事業契約を、タイ電力公社 (EGAT)と締結したと発表した。2022年に稼働を開始し、年間750万トンの受入容量を有する予定である。
  • ConocoPhillips は2022年2月17日、Origin Energy からAustralia Pacific LNG (APLNG)の株式10%の追加取得を完了したと発表した。 ConocoPhillips は47.5%、 Origin Energyは27.5%、中国Sinopecは25%を所有する。
  • Gazprom は2022年2月4日、中国CNPC と東廻りルートで供給する天然ガスの長期売買契約を締結したと発表した。中国向けロシア産ガスパイプライン供給は10Bcm増加し年間48 Bcmとなる。

 

北米地域

  • 米連邦エネルギー規制委員会(FERC)は2022年2月17日、パイプラインとLNG輸出プロジェクトに影響を及ぼす可能性がある2件の政策を承認した。1件目は、ガスプロジェクト許可に関する政策を修正するもので、プロジェクトの承認を裏付ける「公共上の必要性」が十分にあるかFERCが判断する基準を改訂する。2件目は、パブリックコメントに基づき修正され得る暫定的な改正で、プロジェクトの見込みGHG排出と気象変動影響を評価する枠組を設定する。FERCは、開発者がプロジェクトによるGHG排出を抑制する計画を提案することを促し、CO2換算で年間10万トン相当以上を排出するプロジェクトは、全面的な環境影響評価を義務付けると述べた。
  • Cheniere Energy は2022年2月7日、ルイジアナ州Sabine Pass 液化プロジェクト(SPL Project)第6系列の実質的完成を同4日に達成したと発表した。コミッショニングが完了し、エンジニアリング・調達・建設のパートナーであるBechtel Oil, Gas and Chemicals, Inc.は同系列の監督・管理を Cheniere に引き渡した。
  • Venture Global LNG は2022年2月3日、自社 Calcasieu Pass プロジェクトから最短で2月9日にLNGをカーゴに積込む承認をFERCに申請した。同社の報告によると1月19日にLNG生産を開始した。
  • Tellurian は2022年2月2日、ルイジアナ州 Driftwood LNG 設備の建設を4月に開始する計画であると述べた。
  • 米Energy Transfer は2022月2月3日、 Lake Charles LNG 設備の建設期限を2028年末まで3年間延長することをFERCに申請した。
  • 2022年1月末に米アラスカ州知事は、 Alaska LNG プロジェクトに関して、アジア市場で競合する他の米国プロジェクトよりも安価になるとの独立機関による試算結果のメリットを指摘した。アジアに近く海上輸送面でも優位性がある。インフラ投資・雇用法により、アラスカ州の液化天然ガスプロジェクトに対し連邦債務保証250億米ドルが利用可能であることが再確認された。
  • カナダ Pembina Pipeline Corporation は2022年2月8日、自社とファーストネイションズ Haisla Nationが、ブリティッシュコロンビア州キティマットで計画中のCedar LNG 輸出プロジェクトについて同州環境影響評価局に環境影響評価(EAC)申請を提出し、180日間の評価期間に入ったことを発表した。またBlack & Veatch 社およびサムスン重工業と、浮体式液化貯蔵積出設備(FLNG)について、基本設計(FEED)契約について合意したことを発表した。 Cedar LNG は、2023年にFIDを見込み、稼働開始日程は2027年を予定している。
  • Sempra は2022年1月31日、メキシコ電力公社CFEとSempra Infrastructure が、シナロア州トポロバンポのVista Pacífico LNG 液化プロジェクト、バハカリフォルニアスル州 La Paz 気化プロジェクト、ソノラ州 Guaymas-El Oro パイプラインの再稼働といったプロジェクトの開発に関して拘束力のないMOUを締結したことを発表した。これにより、CFEはテキサス州からトポロバンポへまでの余剰天然ガスとパイプライン容量を最適化することができる。

 

欧州・ロシア地域

  • ノルウェー Equinor は2022年1月31日、COVID-19の影響と操業制限のために、Hammerfest LNG 設備の稼働再開は2022年3月31日から5月17日に延期すると述べた。
  • Fluxys は2022年2月1日、フランス Dunkerque LNG 受入基地に関して、2023 - 2036年の間に、3年間以上で年間3.5 Bcmまでの容量予約に関して、市場の関心を募集する手続きを行うことを発表した。
  • ギリシャ Gastrade は2022年1月31日、 Alexandroupolis の独立天然ガスシステム(INGS)の建設に関してFIDを前日に行ったことを発表した。浮体式貯蔵気化設備(FSRU)は、全長28 kmのパイプラインでギリシャの天然ガス輸送システムに接続され、ギリシャ、ブルガリア、さらにルーマニア、セルビア、マケドニア北部から、モルドバ、ウクライナまで広範囲にガスを供給することが可能となる。同基地は2023年末に稼働開始予定で、年間気化容量の5.5Bcm中、5割は既に契約されている。

 

その他地域

  • Qatargas は2022年2月18日、 2つの系列で計画外停止となっているとの報道の憶測を否定し、年間計画の一部として、オペレーション、海上輸送、買主と調整されたものであると述べた。
  • ENIは2022年2月18日、コンゴ Congo LNG プロジェクトについて、2023年に稼働を開始し、2024年に年間200万トンの生産容量達成を目指していると述べた。

 

 

作成協力 一般財団法人日本エネルギー経済研究所

 

添付ファイル