2023年3月
天然ガス・LNG価格動向
直近の値動き
アジア
- 北東アジアのアセスメントされたスポットLNG価格JKM(期近分)は、価格低下により南アジアのバイヤーのスポット需要を喚起するも、穏やかな気候とLNG在庫高のなか、北東アジアバイヤーの購買意欲が低く下落基調を辿り、3月9日に100万Btu当たり12米ドル台まで下落した。JKMは、3月10日に欧州ガス価格の上昇を受け14米ドル台に戻し、翌営業日にも14米ドル後半まで続伸したが再び下落基調を辿り、月末にかけて12米ドル台で推移している。
- JOGMECは2月の日本着スポットLNG月次価格(速報)について、同月以降に契約がなされて日本に入着するスポットLNG取引の平均価格(契約ベース)を、非公表とした。また、同月中に日本に入着したスポットLNG取引の平均価格(入着ベース)を非公表とした。
- 財務省貿易統計速報に基づくと、2023年2月の日本平均LNG輸入価格は100 万Btu当たり17.60米ドル、円建てでは円安の影響もあって1トン当たり118,926円となり、いずれも前月より下がったものの、高水準を維持している。供給地域別では、米国産は15.72米ドル、ASEAN地域産が17.69米ドル、中東産が20.84米ドル、ロシア産が14.57米ドルであった。また、2月の北東アジア各国の平均輸入価格は、中国15.01米ドル、韓国21.21米ドル、台湾16.23米ドルであった。全日本平均原油輸入CIF価格(JCC: Japan crude cocktail)は2023年2月には1バレル当たり87.71米ドルとなった。また、円建てでは1キロリットル当たり71,913円となり、前月より値を下げた。原油価格リンクの長期契約が7,8割を占める日本平均LNG輸入価格は、引き続き足元の原油価格の影響を受けることが想定される。
- 2月の日本のLNG輸入量は、640万トンと前年同月比で10%減少、1月から2月までのLNG輸入量合計は1,322万トンと前年同期比で5%減少した。中国は521万トンと前年同月比で8%増加、1月から2月までのLNG輸入量合計は、1,112万トンと前年同期比で12%減少した。韓国は514万トンと前年同月比で48%増加、台湾は153万トンと前年同月比4%減少となった。これら4市場合計のLNG輸入量は、2月までの累計で3,766万トンと前年同期比8%増加となった。
米国
- 米国スポットガス価格HHは、米北東部や中西部で予想を上回る寒さが予報されたことによる暖房需要増加への予想から上昇し、3月3日には3.0米ドルをつけた。翌週3月6日にはHHは2.6米ドルまで下落し、週後半にかけて2.4米ドルまで続落した。その後、ガスの需要予測が気象予報の変化に左右され、HHも僅かな値動きを示したが、下落傾向を辿り、3月27日には2.1米ドルとなった。
- 米国エネルギー情報局(EIA)は、3月7日発表の短期エネルギー見通しにて2023年の天然ガススポット価格の平均値の見通しを、3.0米ドルと予測し、昨年から50%以上の下げ幅とした。
欧州
- 欧州ガススポット価格TTFは、穏やかな気候が続き地下ガス貯蔵量も多く、下落基調を辿り、3月1日の14.7ドルから3月8日に13.1米ドルに下落した。しかし、仏原子力発電所の不調や仏LNG受入基地でのストライキ、ノルウェーのガス田からの生産量減少が相次ぎ、TTFは3月10日に16.4米ドルに反発した。翌週3月13日にはTTFは15.6米ドルまで下落したが、スイス中央銀行のクレディ・スイス銀行への融資報道でガス需要に影響する景気後退懸念が一部解消され、一時反発するも下落基調を辿り3月17日には13.3米ドルとなった。その後TTFは、仏LNG受入基地でのストライキの動向にも左右されつつ値動きを示したが、3月27日時点で13.1米ドルとなっている。
中長期の値動き
- JKMは、2020年1月以降、供給拡大と需要増加ペースの失速により下落基調となり、2020年4月末には史上最安値の1.83米ドルを記録した。5月以降2米ドル台が続いたが、8月に入り複数の生産設備での供給障害により上昇基調に転じ、12月には10米ドル台を超え、2021年1月には寒波の影響で需要が急増したことにより、32.5米ドルの史上最高値をつけた。その後、価格は急落して2月下旬にかけて5米ドル台まで下落、3月に入り上昇基調に転じて以降は、高値で推移する欧州ガス市場にも牽引され、10月に一時56米ドルまで上昇し、11月は30米ドル半ば、12月には40米ドルに達した。2022年1月と2月は20米ドル台で推移し、3月にはロシア産パイプラインガス供給中断の懸念に伴って一時急騰し80米ドルを上回ったが、その後30米ドル台で推移した。4月以降取引は低調であり、JKMは36米ドルから22米ドルまで減少し、5月から6月前半にかけて20米ドル前半で推移した。しかし6月後半以降天然ガス・LNGの供給不安の高まりを背景に40米ドルに到達、7月も同様の水準で推移し、8月には概ね50米ドルで推移しつつ、一時、60米ドル、70米ドルを超える状況となった。9月、JKMはTTFの下落に伴い下落傾向を示し30米ドル後半まで下落し、10月~11月にかけて概ね20米ドル後半で推移した。12月には市場は年末商戦で活況となり30米ドル台で推移した。2023年1月取引が再開するも低調であり、20米ドル付近から下落基調にあり、3月は12米ドル台まで落ち込んでいる。
- 日本平均LNG輸入価格は、2020年3月以降の原油価格急落の影響により、8月から10月にかけて2005年1月以来の低水準となる5米ドル台まで下落、その後原油価格上昇に伴い、12月には7米ドル台に上昇した。堅調な原油価格の値動きに応じて、2021年2月には9米ドル半ばまで上昇後、3月は7米ドル半ばまで下落した。その後は、原油価格の上昇に伴って、2022年9月には過去最高の22.73米ドルを記録した。その後、2023年2月に17.60米ドルに下落している。
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(出典)
米国HH(Henry Hub)価格: NYMEX Futures and Options, CME Group
蘭TTF(Title Transfer Facility)価格:ICE Endex, Intercontinental Exchange
JKM: LNG Japan/Korea Marker© 2023 by S&P Global Platts, a division of S&P Global Inc.
JOGMECスポットLNG価格:JOGMEC「日本着スポットLNG月次価格」、2021年3月までは経済産業省「スポットLNG価格調査」を出典とする
日本平均LNG輸入価格: 財務省貿易統計をもとに作成
EUA(EU ETS): ICE Endex, Intercontinental Exchange
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天然ガス・LNG在庫動向
日本
- 2022年11月末の国内LNG在庫量は608万トンで、前月比6.0%、34.5万トンの増加、前年同月比では19.3%増加し、過去5年平均値を146.3万トン上回った。
- 11月末のガス事業用LNG在庫量は281万トンで、前月比4.9%増、前年同月比では16.3%増となった。11月の都市ガス用LNG消費量は前年同月比3.0%減の243万トン、都市ガス用LNG受入量は前年同月比6.0%増の256万トンだった。
- 11月末の発電燃料用LNG在庫量は326万トンで前月比7.0%減、前年同月比22.0%の増加となった。11月の発電燃料用LNG消費量は、前年同月比で9.4%減の301万トン、発電燃料用LNG受入量は、前年同月比で6.2%減の362万トンであった。
- 2023年3月22日に経済産業省が発表した「発電用LNGの在庫状況」によると、大手電力事業者の3月19日時点のLNG在庫は約256万トンであった。2022年3月末比では約17万トン、過去5年間の3月末平均を49万トン上回っている。
(出典)
経済産業省「ガス事業主生産動態統計」及び「電力調査統計・火力発電燃料実績」をもとに作成したもので、これら月末在庫を合算した値を国内在庫としてみなしたもの。なお、利用可能なデータは2008年1月以降のものであるため、過去5年平均は2013年1月分から計算している。
米国
- 2023年3月17日の米国天然ガス地下貯蔵有効稼働ガス在庫(ワーキングガス)は、米国エネルギー情報局(EIA)のデータによると、1.90Tcfで前月比13.4%減となった。在庫量は2022年の同時期と比較すると36.8%高く、過去5年平均値を351Bcf上回っており、2020年11月以降は過去5年のレンジに入っている。
(出典)
米国エネルギー情報局(U.S. Energy Information Administration, EIA)のデータをもとに作成
欧州
- 2023年3月22日現在のAggregated Gas Storage Inventory(AGSI+)加盟各社中、EU加盟国各社が有する欧州天然ガス地下貯蔵在庫は625.0TWh (LNG換算4,134万トン相当)であった。これは前年同期より119.4%、340.2TWh (LNG換算2,250万トン相当)上回るものだった。貯蔵容量に対する充填率は55.6%であり、前年同期の25.7%、過去5年間平均値の34.7%を上回った。貯蔵容量の大きなドイツ、オランダの充填率はそれぞれ64.0%、58.6%であった。
(出典)
Aggregated Gas Storage Inventory(AGSI), Gas Infrastructure Europeのデータをもとに作成。なお、利用可能なデータは2011年1月以降のものであるため、過去5年平均は2016年1月分から計算している。
- 2023年3月22日現在のAggregated LNG Storage Inventory(ALSI)加盟各社(11か国、18社)が有する欧州LNG在庫量は436万m3で、前月比9.6%増加、前年同日比42.4%増加、過去5年平均値を18.4%上回っている。
(出典)
Aggregated LNG Storage Inventory(ALSI), Gas Infrastructure Europeのデータをもとに作成。なお、利用可能なデータは2012年1月以降のものであるため、グラフ中の過去10年平均及び過去10年平均幅の値については、5年未満の値が含まれる。
天然ガス・LNGプロジェクト動向
ハイライト
- 米国メキシコ湾岸LNG生産プロジェクトとして、Venture Global LNGのPlaquemines LNG第2段階とSempra Infrastructure PartnersのPort Arthur LNG 第1段階の2件のFIDが発表された。 Venture Global LNGはPlaquemines LNG 第2段階のプロジェクトファイナンス締結も発表し、第1・2段階合計で史上最大規模のプロジェクトファイナンスになるとしている。
アジア・オセアニア地域
- TotalEnergiesは2023年3月7日、パプアニューギニア Papua LNG プロジェクトのFEED開始を発表した。 Papua LNG 参加企業は総容量年間400万トンの電動LNG液化4系列(e-トレイン)でのコンセプトを選定し、生産開始は2027年を見込む。日揮ホールディングスは3月17日、日揮グローバルが韓国現代建設と共同で、本件FEEDを受注したことを発表した。
北米地域
- Freeport LNG Development社は、2023年3月8日、米連邦エネルギー規制委員会(FERC)と連邦パイプライン・危険物安全管理局(PHMSA)より、3系列液化設備のうち最後となる第1系列の稼働再開承認を受けたと発表した。3系列生産立ち上がりは今後数週間で実現する見込み。
- Venture Global LNGとChina Gasは2023年2月23日、China Gas Hongda Energy Trading社が20年間のSPA 2件を締結したことを発表した。China Gasは、Plaquemines LNGとCP2 LNG からFOB条件で、各々年間100万トンを購入する。
- Excelerate EnergyとVenture Global LNGは2023年2月28日、20年間のSPAを発表した。 Excelerate社は、Plaquemines LNGからFOB条件で年間70万トンを購入する。
- Venture Global LNGは2023年3月13日、 Plaquemines LNG第2段階のFIDを発表した。第1、2段階合計で210億米ドルの投資となり、史上最大のプロジェクトファイナンスとなる。借入・出資により、設計容量年間2,000万トンの同プロジェクト第2段階の残り建設・コミッショニングの残り必要資金に充当される。
- Sempra は2023年3月20日、自社70%所有子会社 Sempra Infrastructure PartnersのPort Arthur LNG 第1段階のFIDを発表した。公称設計容量年間1,300万トンで資本的支出は130億米ドルと見積もられている。年間1,050万トン分が、ConocoPhillips、RWE Supply and Trading、PKN ORLEN S.A.、INEOS、ENGIEとの間で拘束力ある長期契約により申し込み済みとなっている。本格稼働開始は、第1系列2027年、第2系列2028年を見込む。
- Chesapeake EnergyとGunvorは2023年3月6日、 Chesapeakeが最大年間200万トンのLNGを Gunvor 向けに、JKM連動価格で15年間供給するHOAを発表した。ChesapeakeとGunvorは、米国で最適な液化設備を共同で選定し、2027年の開始目標で Chesapeake が生産するガスを液化してGunvorにFOB条件でLNG供給する。
- カナダCedar LNG プロジェクトの参加パートナーHaisla NationとPembina Pipeline は2023年3月14日、BC州環境アセスメント局から環境影響評価証書を受け、 ARC Resources社との間で長期液化業務のMOUを締結したことを発表した。 Cedar LNG は同州キティマット Haisla Nation 所有地で計画される容量年間300万トンのFLNGで、FIDは2023年第3四半期を見込んでいる。
欧州および周辺地域
- 欧州委員会のマロシュ・シェフショヴィッチ副委員長は2023年3月2日、22 のEU加盟国が共同購入へのコミットメントとして、今後3年間で合計17 Bcm分のガス需要を集約して暫定的な関心を表明しており、さらにモルドバ、ウクライナ、セルビアが4 Bcm近くに関して関心を示していると述べた。
- リトアニア KNは2023年3月10日、イタリア Snam FSRU Italia 社より、トスカーナ地方リヴォルノ西岸 Piombinoにおける新規FSRU型LNG受入基地プロジェクトの協力を委託されたと発表した。
その他地域
- ブエノスアイレス Bahía Blanca 港湾当局による2023年2月28日の発表によると、統合型LNGプロジェクト Argentina GNL 開発可能性を検討する共同検討・開発契約を2022年9月1日に締結したアルゼンチンYPF社とマレーシア Petronasは、同港湾との間で用地賃貸借基本契約を締結した。
(注: CCS: 炭素回収・貯蔵、EPC: エンジニアリング・調達・建設、FEED: 基本設計、FID: 最終投資決定、FLNG: 浮体液化設備、FOB: 本船渡し、FSRU: 浮体貯蔵・気化設備、HOA: 基本合意、SPA: LNG売買契約)
作成協力 一般財団法人日本エネルギー経済研究所
添付ファイル
- 日本のLNG在庫量(27.3KB) (2023/3/24更新)
- 米国天然ガス地下貯蔵量(55.4KB) (2023/3/24更新)
- 欧州天然ガス地下貯蔵量(382.8KB) (2023/3/24更新)
- 欧州LNG在庫量(225.0KB) (2023/3/24更新)