2023年9月

天然ガス・LNG価格動向

直近の値動き

アジア

  • 北東アジアのアセスメントされたスポットLNG価格JKMは、100万Btu当たり12米ドル台で推移していたが、9月8日以降豪ウィートストーン及びゴーゴンで時限ストライキが開始されると供給への不安から上昇し、13米ドル台に乗せた。JKMは一時下げたが、ストライキの24時間実施への拡大が発表されたことや、ノルウェー主要ガス田にてメンテナンスの延長が発表されると再び上昇し、以降14米ドル台で推移した。更にノルウェーで複数のガス田の操業停止が相次いだことや、北東アジア市場で冬場に向けた調達が始まったことなどから、JKMは更に上昇し、9月26日時点で15米ドルとなっている。
  • JOGMECは8月の日本着スポットLNG月次価格(速報)について、同月以降に契約がなされて日本に入着するスポットLNG取引の平均価格(契約ベース)を11.6米ドルと発表した。また、同月中に日本に入着したスポットLNG取引の平均価格(入着ベース)を非公表とした。
  • 財務省貿易統計速報に基づくと、2023年8月の日本平均LNG輸入価格は100 万Btu当たり11.96米ドル、円建てでは1トン当たり88,273円となり、いずれも前月より下がった。供給地域別では、米国産は10.97米ドル、ASEAN地域産が12.42米ドル、中東産が11.52米ドル、ロシア産が12.05米ドルであった。また、8月の北東アジア各国の平均輸入価格は、中国10.75米ドル、韓国12.65米ドル、台湾9.85米ドルであった。全日本平均原油輸入CIF価格(JCC: Japan crude cocktail)は2023年8月には1バレル当たり82.04米ドルとなった。円建てでは1キロリットル当たり73,465円となった。
  • 8月の日本のLNG輸入量は、567万トンと前年同月比で10%減少、1月から8月までのLNG輸入量合計は4,338万トンと前年同期比で13%減少した。中国の8月のLNG輸入量は630万トンと前年同月比で34%増加した。中国の1月から8月までのLNG輸入量合計は、4,551万トンと前年同期比で12%増加した。日本の月間LNG輸入量は前年同月比では7か月連続の減少となった一方、中国は7か月連続で増加した。但し中国の8か月間の合計は、同国で通年のLNG輸入が過去最高を記録した2021年同期比を13%下回った。韓国は346万トンと前年同月比で9%減少、台湾は180万トンと前年同月比11%増加となった。これら4市場合計のLNG輸入量は、8月までの累計で1億3,164万トンと前年同期比2%減少となった。

米国

  • 米国スポットガス価格HHは、2米ドル半ばで推移した。Freeport LNGで一時フィードガス供給量が減少したが、HHへの影響は比較的軽微であった。
  • 米国エネルギー情報局(EIA)は、9月12日発表の短期エネルギー見通しにおいて、ヘンリーハブ・スポット価格を2023年平均で2.58米ドルとし、2024年平均は3.24ドルと予想している。同レポートにてEIAは、夏季における天然ガス消費量の伸びが2023年消費量の増加につながっており、通年平均89.7 Bcf/d、対2022年比1%の増加と予想し、記録的水準を記録した2022年平均消費量の88.6 Bcf/dを上回るものとしている。

欧州

  • 欧州ガススポット価格TTFは、10米ドル付近で推移していたが、豪主要LNG輸出基地でストライキが開始されると、11米ドル台に乗せた。その後豪ストライキの本格実施やノルウェー主要ガス田トロールのメンテナンス延長やその他ガス田の操業停止が生じたが、豊富な地下ガス貯蔵量や需要の停滞により価格上昇は比較的抑えられ、9月26日時点で12.2米ドルとなっている。

天然ガス・LNG価格推移(直近2年)

中長期の値動き

  • JKMは、2020年1月以降、供給拡大と需要増加ペースの失速により下落基調となり、2020年4月末には史上最安値の1.83米ドルを記録した。5月以降2米ドル台が続いたが、8月に入り複数の生産設備での供給障害により上昇基調に転じ、12月には10米ドル台を超え、2021年1月には寒波の影響で需要が急増したことにより、32.5米ドルの史上最高値を付けた。その後、価格は急落して2月下旬にかけて5米ドル台まで下落、3月に入り上昇基調に転じて以降は、高値で推移する欧州ガス市場にも牽引され、10月に一時56米ドルまで上昇し、11月は30米ドル半ば、12月には40米ドルに達した。2022年1月と2月は20米ドル台で推移し、3月にはロシア産パイプラインガス供給中断の懸念に伴って一時急騰し80米ドルを上回ったが、その後30米ドル台で推移した。4月以降取引は低調であり、JKMは36米ドルから22米ドルまで減少し、5月から6月前半にかけて20米ドル前半で推移した。しかし6月後半以降天然ガス・LNGの供給不安の高まりを背景に40米ドルに到達、7月も同様の水準で推移し、8月には概ね50米ドルで推移しつつ、一時、60米ドル、70米ドルを超える状況となった。9月、JKMはTTFの下落に伴い下落傾向を示し30米ドル後半まで下落し、10月~11月にかけて概ね20米ドル後半で推移した。12月には市場は年末商戦で活況となり30米ドル台で推移した。2023年1月、取引が再開するも低調であり、20米ドル付近から下落基調にあり、5月は9米ドル台まで落ち込んだ。2023年6月、JKMは欧州ガス価格の影響等を受け12米ドル付近で推移したが、7月には高在庫と低需要を背景に若干軟化し11米ドル付近で推移した。8月には豪州の主要プロジェクトでのストライキ発生の可能性が生じ、価格はやや上昇基調に入り、9月にストライキが実施された後は15米ドルまで上昇した。
  • 日本平均LNG輸入価格は、2020年3月以降の原油価格急落の影響により、8月から10月にかけて2005年1月以来の低水準となる5米ドル台まで下落、その後原油価格上昇に伴い、12月には7米ドル台に上昇した。堅調な原油価格の値動きに応じて、2021年2月には9米ドル半ばまで上昇後、3月は7米ドル半ばまで下落した。その後は、2022年6月までの日本平均原油価格の上昇に伴って、続く18カ月間は概ね一貫して上昇し、2022年9月には過去最高の22.73米ドルを記録した。その後、原油価格の2022年7月以降の下落傾向も一因として、2023年6-8月に12米ドル前後まで下落している。

天然ガス・LNG価格推移(直近10年)

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(出典)
米国HH(Henry Hub)価格: NYMEX Futures and Options, CME Group
蘭TTF(Title Transfer Facility)価格:ICE Endex, Intercontinental Exchange
JKM: LNG Japan/Korea Marker© 2023 by S&P Global Platts, a division of S&P Global Inc.
JOGMECスポットLNG価格:JOGMEC「日本着スポットLNG月次価格」、2021年3月までは経済産業省「スポットLNG価格調査」を出典とする
日本平均LNG輸入価格: 財務省貿易統計をもとに作成
EUA(EU ETS): ICE Endex, Intercontinental Exchange

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天然ガス・LNG在庫動向

日本

  • 2023年4月末の国内LNG在庫量は529万トンで、前月比3.3%、18.1万トンの減少、前年同月比では23.7%増加し、過去5年平均値を104.6万トン上回った。
  • 5月末のガス事業用LNG在庫量は271万トンで、前月比4.7%増、前年同月比では14.9%増となった。5月の都市ガス用LNG消費量は前年同月比0.7%減の204万トン、都市ガス用LNG受入量は前年同月比12.0%減の216万トンだった。
  • 6月末のガス事業用LNG在庫量は262万トンで、前月比3.4%減、前年同月比では5.5%増となった。6月の都市ガス用LNG消費量は前年同月比6.5%減の208万トン、都市ガス用LNG受入量は前年同月比15.5%減の199万トンだった。
  • 4月末の発電燃料用LNG在庫量は270万トンで前月比4.1%減、前年同月比16.5%の増加となった。4月の発電燃料用LNG消費量は、前年同月比で13.1%減の241万トン、発電燃料用LNG受入量は、前年同月比で16.7%減の272万トンであった。
  • 2023年9月20日に経済産業省が発表した「発電用LNGの在庫状況」によると、大手電力事業者の9月17日時点のLNG在庫は162万トンであった。2022年9月末比では104万トン下回り、過去5年間の9月末平均を44万トン下回っている。

国内LNG月末在庫量(直近2年)

国内LNG月末在庫(直近10年)

(出典)
経済産業省「ガス事業主生産動態統計」及び「電力調査統計・火力発電燃料実績」をもとに作成したもので、これら月末在庫を合算した値を国内在庫としてみなしたもの。なお、利用可能なデータは2008年1月以降のものであるため、過去5年平均は2013年1月分から計算している。


米国

  • 2023年9月15日の米国天然ガス地下貯蔵有効稼働ガス在庫(ワーキングガス)は、米国エネルギー情報局(EIA)のデータによると、3.27Tcfで前月比6.0%増となった。在庫量は2022年の同時期と比較すると13.7%高く、過去5年平均値を205.2Bcf上回っており、2020年11月以降は過去5年のレンジに入っている。

米国天然ガス地下貯蔵量(直近2年)

米国天然ガス地下貯蔵量(直近10年)

(出典)
米国エネルギー情報局(U.S. Energy Information Administration, EIA)のデータをもとに作成


欧州

  • 2023年9月24日現在のAggregated Gas Storage Inventory(AGSI+)加盟各社中、EU加盟国各社が有する欧州天然ガス地下貯蔵在庫は1,081.5TWh (LNG換算7,154万トン相当)であった。これは前年同期より11.1%、107.9TWh (LNG換算714万トン相当)上回るものだった。貯蔵容量に対する充填率は95.0%であり、前年同期の87.4%、過去5年間平均値の85.9%を上回った。貯蔵容量の大きなドイツ、オランダの充填率はそれぞれ95.0%、96.0%であった。

欧州天然ガス地下貯蔵量(直近2年)

欧州天然ガス地下貯蔵量(直近10年)

(出典)
Aggregated Gas Storage Inventory(AGSI), Gas Infrastructure Europeのデータをもとに作成。なお、利用可能なデータは2011年1月以降のものであるため、過去5年平均は2016年1月分から計算している。

 

  • 2023年9月24日現在のAggregated LNG Storage Inventory(ALSI)加盟各社(11か国、18社)が有する欧州LNG在庫量は482.8万m3で、前月比1.0%増加、前年同日比0.2%増加、過去5年平均値を5.0%下回っている。

欧州LNG在庫量(直近2年)

欧州LNG在庫量(直近10年)

(出典)
Aggregated LNG Storage Inventory(ALSI), Gas Infrastructure Europeのデータをもとに作成。なお、利用可能なデータは2012年1月以降のものであるため、グラフ中の過去10年平均及び過去10年平均幅の値については、5年未満の値が含まれる。


天然ガス・LNGプロジェクト動向

ハイライト

  • 豪州最大級のLNG輸出プロジェクト2件で、オペレーターChevronと労働組合側との話し合いが不調となり、9月8日より時限ストライキ、同14日より24時間ストライキが実施された。同国公正労働機関(FWC)が調停に入り、その調停案に22日、両者は合意し、収束に向かっている。

 

アジア・オセアニア地域

  • SHPGX(上海石油天然气交易中心)は、2023年8月23日、シンガポールPavilion Energyが、CNOOC(中国海洋石油有限公司)が販売するLNGカーゴ1件について支払うため、人民元を使うことを発表した。
  • Saipemは、2023年9月1日、合弁事業パートナーTripatra、千代田化工建設とともに、インドネシア西パプア・タングーにおけるTangguh Train 3プロジェクトを完工し、bpに引き渡したことを発表した。同設備は年間380万トンの容量を持つ。
  • 豪Conrad Energy Asia、シンガポールSembCorp Gasは、2023年9月12日、インドネシア規制機関SKK Migasが、Makoガス田からの2025年供給開始の最初の長期ガス販売契約を承認したことを発表した。Conrad Energy Asiaはナトゥナ海Duyung生産分与契約(PSC)オペレーターである。
  • Shell plc子会社Sarawak Shell Berhad(SSB)は、2023年8月28日、マレーシアSK318生産分与契約(PSC)下で、Timiプラットフォームからガス生産が開始されたことを発表した。Timiは、太陽光・風力混合発電での同国での自社最初の井戸元プラットフォームであると述べている。SSBはオペレーターとして75%を出資している。他パートナーは、PETRONAS Carigali Sdn Bhd(15%)、Brunei Energy Exploration(10%)である。
  • 豪州連邦資源・北豪州相は、2023年9月13日、豪州が洋上の石油・ガスインフラストラクチャのデコミッショニングという新しい産業を構築する可能性を概説し、この部門の機会に関する課題文書を発表した。同相は、議会への説明の中で、プロジェクトの生産が終了した際、インフラストラクチャを廃止する作業は、今後30 - 50年間で最大600億豪ドルの価値がある可能性があると述べた。
  • 豪Woodsideは、2023年9月7日、日豪間のCCSバリューチェーン可能性検討に関する覚書(MOU)を関西電力との間に締結したことを発表した。関西電力は、自社火力発電設備から排出する二酸化炭素(CO2)回収、豪州への輸送を検討する計画である。 Woodside は豪州でCCSプロジェクトを検討しており、日本からのCO2の注入・貯留、合成メタン(e-methane)製造を検討する。
  • 東邦ガス、川崎汽船は、2023年9月7日、住友商事、豪Woodside Energy社と、日豪間のCCSバリューチェーン構築に向けた事業性調査に関して、覚書を締結したことを発表した。東邦ガスが開発中の「LNG未利用冷熱を活用したCO2分離回収技術」などの利用により中部圏の産業から排出されるCO2を分離・回収・集積・液化させ、低温低圧型の液化CO2輸送船で豪州へ運搬し、Woodsideが保有する貯留サイトへ圧入貯留するまでのCCSバリューチェーン構築に向けた事業性を調査する。
  • 豪Woodside Energyは、2023年8月24日、Australian Workers' Union、Electrical Trades Union、その他、交渉における代表者達と、North West Shelf沖合プラットフォーム従業員を対象とする労使協定に、原則合意したことを発表した。
  • 豪州Offshore Alliance(OA)労働組合連合は、2023年9月5日、Chevronとの Wheatstone及びGorgon LNG 設備での賃金その他労働条件をめぐり、同14日以降、1日単位の24時間ストライキへとエスカレートする、と述べた。OAは、同16日、両LNG輸出設備での24時間完全ストライキ宣言を行った。
  • 豪州公正労働委員会(FWC)は、9月21日、Wheatstone及びGorgon LNG 設備でのChevronとOffshore Alliance(OA)組合との間の紛争を解決するべく、提言を発表した。同22日までに両者はこの提言に合意した。
  • Chevron Australia は、2023年8月23日、自社Wheatstoneプロジェクトが、国内供給用ガス設備の生産量増加のための技術改善・改造を実施したことを発表した。同国内向けガス設備の公式設計容量は、日量205テラジュール(TJ)から215 TJ(年間144万トン)へと、5%増加する。
  • 豪Santosは、2023年8月23日、Bayu-Undanガス田からの原料ガスにより、年内では少なくとも1カーゴは生産見込みであり、その後同ガス田の残りのガスは、国内市場に向ける見込みであると述べた。2023年末までに掘削を再開できれば、 Barossaプロジェクトからの生産開始は2025年上半期と見込んでいる。
  • 豪Santosは、2023年9月1日、Kumul Petroleum Holdings LimitedにパプアニューギニアPNG LNGの2.6%持分を譲渡する売却契約を締結したことを発表した。 Santosは追加2.4%持分取得もKumul側にコールオプションとして認めた。同オプションは2024年6月30日が行使期限となる。

 

北米地域

  • 米Cheniere Energy社は、2023年8月22日、Cheniere Marketing, LLCがBASFと長期LNG SPAを締結したことを発表した。BASFは、最大年間80万トン、FOB条件、ヘンリーハブ連動購入価格、プラス固定液化手数料にて購入することに合意した。引き渡しは2026年半ばに開始予定で、ルイジアナ州 Sabine Pass 液化拡張(SPL Expansion)プロジェクト最初の系列(第7系列)のFIDを条件として、同系列稼働開始とともに年間80万トンまで増量する。SPA期間は2043年までとなる。
  • Sempra Infrastructure社は、2023年9月12日、自社Port Arthur LNG第1段階プロジェクトの間接・非支配権持分42%のKKRへの売却が完了したことを発表した。 Sempra Infrastructureは、支配権付28%を維持し、ConocoPhillipsは残り30%を持つ。第1系列2027年、第2系列2028年の稼働開始を見込んでいる。
  • Sempra Infrastructureは、2023年8月30日、東京ガス、大阪ガス、東邦ガス、三菱商事連合と、米メキシコ湾岸でのe-天然ガス生産プロジェクト検討への参加協定を締結したと発表した。
  • Venture Global LNG は、2023年9月4日、公称LNG輸出容量を、年間7,000万トンから1億トン以上に増加する長期拡張計画を発表した。この取り組みを支えるため、Venture GlobalとBaker Hughesは、前者の将来のLNGプロジェクト向けに、追加液化系列・電力供給システムを供給する拡大包括機器供給契約を締結した。
  • NextDecade Corporationは、2023年9月20日、自社子会社Rio Grande LNG, LLC (RGLNG)が、テキサス州ブラウンズビルの年産2,700万トンのRio Grande LNG輸出設備における最初の3系列(フェーズ1)の一部資金調達のための優先融資3.56億米ドルに関して、複数の貸主連合との間に信用契約を締結したことを発表した。
  • 米DOEは、2023年8月18日付で、Lake Charles Exports, LLC(LCE)より、年間8,510億立方フィート(1,771万トン)相当の米国産LNGを、非自由貿易協定(Non-FTA)諸国に輸出する長期複数契約の承認を求める申請の受理を通知した。
  • Tellurian Inc.、Baker Hughesは、2023年9月5日、Driftwood LNGプロジェクト第1段階向けの主冷媒コンプレッサーパッケージ8件の供給に関する契約を発表した。 2027年LNG生産開始を目標とする第1段階のために、LM6000PF+ガスタービン、主冷媒コンプレッサー、コントロールユニットの供給を確保するパッケージとなる。
  • 米Commonwealth LNGは、2023年8月21日、Baker Hughesとの間で、ルイジアナ州キャメロン郡で開発中のCommonwealth LNG設備に関する戦略協定を発表した。Baker HughesのLM9000航空転用ガスタービン技術を用い、生産量最大化・排出量最小化を検討する。
  • Commonwealth LNGは、2023年9月4日、スイスMET Groupとの間で、 Commonwealth LNG設備から、20年間、年間100万トンのLNG売買について、HOAを締結したことを発表した。今回、非拘束HOA期間は、2027年の同設備稼働開始により開始する。
  • EQT Corporationは、2023年9月18日、年間100万トンのLNGを生産する15年間の加工契約に基づくCommonwealth LNG設備からの液化業務についてHOAを締結したことを発表した。Commonwealthは同プロジェクトのFIDを2024年第1四半期に、出荷開始を2027年と見込んでいる。
  • Delfin Midstream 社は、2023年8月23日、北米で開発中の自社大水深港湾プロジェクト向けのFLNG船舶開発のため、Wison Offshore & Marineとの間で、設計・エンジニアリング契約を締結したことを発表した。Delfinは、FLNG船舶4隻・合計輸出容量年間1,330万トンのDelfin LNG Deepwater Portプロジェクトを開発している。
  • bpは、2023年9月5日、カナダのブリティッシュコロンビア州Woodfibre LNG設備から、3件目の長期LNG引取契約の締結を発表した。この年間45万トン、15年間、FOB条件での追加引取契約により、Woodfibre LNG輸出設備のLNG生産全量がbp向けに配分されることとなった。合計年間195万トン分が確定分、残りは柔軟条件での引き取りとなる。

 

欧州および周辺地域

  • PRISMAは、2023年8月23日、AggregateEUプラットフォームによる第3回入札を9月21日より開始し、27日まで需要集約手続きを実施すると発表した。今回のプロセスでの需要と供給の応札対象期間は、2023年11月から2025年3月となる。また、今回より売主は入札価格を、オランダTTF天然ガス先物価格に対する EUR/MWh でのディスカウントないしプレミアムにて提示しなくてはならない。
  • 英国のNational Grid Ventures傘下Grain LNGは、2023年9月14日、既存容量375 GWh/d(年間900万トン)について、11月23日までの競売を開始したことを発表した。 Grain LNGは最近実施した市場コンサルテーションから受けた好意的な感触を活用して規制機関Ofgemの承認を受け、容量を3枠でオファーしている。各枠は、着桟枠42隻、貯蔵20万m3、気化容量125 GWh/d(年間300万トン)となっており、早ければ2029年1月より提供を開始する。またOfgemと検討し、「共同応札」条件を織り込み、競売に共同で応札し、容量を共同で利用する方式も促そうとしている。
  • アイルランドの国家計画機関An Bord Pleanálaは、2023年9月15日、New Fortress Energy(NFE)のShannon LNG基地及び隣接の600 MW Count Kerry発電設備の許可申請を却下したことを発表した。
  • オランダ・ロッテルダムGate基地及びその株主Gasunie、Vopakは、2023年8月23日、同基地の貯蔵・気化容量の拡張に関するFIDを発表した。拡張内容は、18万 m3の新規貯蔵タンク、年間4 bcmの気化容量となっている。この新規容量は、2026年下半期稼働準備完了となる。Gate 基地全てのプロジェクトが完成すれば、総気化容量は年間20 bcmとなる。
  • ConocoPhillipsは、2023年9月14日、オランダGate LNG基地で、2031年9月から15年間、年間150万トン、2 bcmの気化容量を確保する契約を締結したと発表した。
  • ドイツの公的部門企業Deutsche Energy Terminal GmbH(DET)は、2023年9月19日、初めて貯蔵・送出容量込みでの気化容量競売を行うことを発表した。10月16日、23日開始の2件のデジタル競売手続きで、市場プレイヤー達は、Brunsbüttel、 Wilhelmshaven 1基地の2024年、最初の短期容量の利用権を得ることとなる。 Stade、Wilhelmshaven 2基地の短期容量は、2023年12月、次回の競売でオファーされる計画である。1年以上の長期容量のマーケティングは、2024年4月に計画されている。
  • 米国務省は、2023年9月14日、ロシアのウクライナ侵攻に伴う追加制裁対象として、Arctic LNG 2プロジェクト含む主要エネルギープロジェクト、関連インフラストラクチャ開発に関わる機関・個人を指定した。Novatek子会社でMurmansk、Kamchatka LNG移送基地オペレーターであるArctic Transshipmentをリストに加え、既にムルマンスク、カムチャッカに設置済みのSaam FSU、Koryak FSUを封鎖対象とした。
  • ロシアGazpromは、2023年9月15日、LNG輸送船舶Veliky NovgorodがPortovaya コンプレッサーステーション近くの設備で生産されたLNGカーゴを、中国唐山LNG基地で荷揚完了したと発表した。これはGazpromのLNGの北周航路(NSR)での最初の引き渡しである。

 

その他地域

  • カタールQatarEnergyは、2023年9月14日、Qatargasが"QatarEnergy LNG"と改称したことを発表した。
  • アブダビADNOC Gas社は、2023年9月7日、PetroChina International向けにLNGを供給する4.50 - 5.50億米ドル相当の契約を発表した。
  • オマーン政府報道機関は、2023年8月30日、Oman LNGがShell社中東トレーディング子会社と、2025年から10年間、年間80万トンのLNG供給契約を締結したと発表した。Oman LNGはまた、自国政府が所有するOQ Trading社向けに、2026年から4年間、年間75万トンを供給することにも合意した。
  • イスラエルのエネルギー・インフラストラクチャー省は、2023年8月24日、Tamarガス田の天然ガス生産量を、2026年から、年間6bcm、容量を60%増加する計画を促進していることを発表した。
  • 大阪ガス、丸紅、PERU LNG S.R.L.は、2023年8月22日、Peru LNG設備でのe-メタン製造・液化に関する検討(Pre-FEED)を開始する契約を締結したと発表した。2022年7月より進めてきた検討を踏まえ、2030年に年間約6万トンのe-メタン製造を目指す。2025年までのFID、2030年までのe-メタン製造開始を目指す。
  • Daphne Technology社は、2023年9月11日、就航中のLNG輸送船舶でメタン排出削減試験が進行中であることを発表した。この試験は、Daphne Technology からの技術を用い、エンジン製造会社Wärtsilä が培った知見を組み合わせる。同試験用の船舶は、Marine Gas Maritime所有、Shellに傭船されている。Lloyd's Registerが、同試験データの独立監査を行い、DNVが船級協会となる。2019年に建造され、ギリシャ船籍に登録されたLNG Maran Gas Chiosが、Wärtsilä 34DF複合エンジンを用いてこの試験を行う。同船舶は、韓国の大宇造船海洋(DSME)により建造された。電気を用いてメタンを一酸化炭素(CO)、水(H2O)に転換するDaphneのSlipPure技術を用いることとなる。このシステムは、2023年、LR、DNVから原則承認(AiP)を受けている。

 

(注: bcm: 10億m3、CCS: 炭素回収・貯蔵、DES: 持ち届け ex-ship、DOE: 米連邦エネルギー省、EPC: エンジニアリング・調達・建設、EPCI: エンジニアリング・調達・建設・設置、 FEED: 基本設計、FERC: 米連邦エネルギー規制委員会、FID: 最終投資決定、FLNG: 浮体液化設備、FOB: 本船渡し、FSRU: 浮体貯蔵・気化設備、FSU: 浮体貯蔵化設備、HOA: 基本合意、MOU: 覚書、SPA: LNG売買契約)

 

 

作成協力 一般財団法人日本エネルギー経済研究所

 

添付ファイル