2023年10月

天然ガス・LNG価格動向

直近の値動き

アジア

  • 北東アジアのアセスメントされたスポットLNG価格JKMは、中国国慶節など北東アジアでの需要低下を受け100万Btu当たり12米ドル台で推移していたが、イスラエルとハマスとの紛争やBalticconnectorガスパイプラインの操業停止により供給に対する懸念が浮上し、10月13日までに16米ドル後半まで上昇した。JKMは更に中東での紛争の激化や豪ストライキが再燃したことにより10月18日に19米ドルまで上昇した。健全な在庫や実需の低迷、豊富な供給などファンダメンタルズのひっ迫はないものの供給への不安は継続し、JKMは10月30日時点で18米ドル半ばとなっている。
  • JOGMECは9月の日本着スポットLNG月次価格(速報)について、同月以降に契約がなされて日本に入着するスポットLNG取引の平均価格(契約ベース)を12.2米ドルと発表した。また、同月中に日本に入着したスポットLNG取引の平均価格(入着ベース)を11.9米ドルと発表した。
  • 財務省貿易統計速報に基づくと、2023年9月の日本平均LNG輸入価格は100 万Btu当たり11.54米ドル、円建てでは1トン当たり87,662円となり、いずれも前月より下がった。供給地域別では、米国産は10.78米ドル、ASEAN地域産が11.33米ドル、中東産が10.50米ドル、ロシア産が11.69米ドルであった。また、9月の北東アジア各国の平均輸入価格は、中国10.80米ドル、韓国12.89米ドル、台湾10.90米ドルであった。全日本平均原油輸入CIF価格(JCC: Japan crude cocktail)は2023年9月には1バレル当たり86.44米ドルとなった。円建てでは1キロリットル当たり79,646円となった。
  • 9月の日本のLNG輸入量は、552万トンと前年同月比で4%増加、1月から9月までのLNG輸入量合計は4,891万トンと前年同期比で12%減少した。中国の9月のLNG輸入量は569万トンと前年同月比で3%減少した。中国の1月から9月までのLNG輸入量合計は、5,113万トンと前年同期比で10%増加した。日本の月間LNG輸入量は前年同月比で8カ月ぶりに増加となった一方、中国は8カ月ぶりに減少した。韓国は296万トンと前年同月比で30%減少、台湾は172万トンと前年同月比1%増加となった。これら4市場合計のLNG輸入量は、9月までの累計で1億4,742万トンと前年同期比2%減少となった。

米国

  • 米国スポットガス価格HHは、僅かに変動しつつ2米ドル後半から3米ドル前半に上昇した。在庫の積み増し状況や需要への期待が作用した。
  • 米国エネルギー情報局(EIA)は、10月11日発表の短期エネルギー見通しにおいて、ヘンリーハブ・スポット価格を2023年平均で2.61米ドル、2024年平均を3.23米ドルと予想している。また、同時に発表された冬季燃料見通し2023-2024にてEIAは、米国家庭の冬の暖房価格は、家庭が使用する主な暖房燃料や地域にもよるが、今シーズンは比較的横ばいか低下すると予想している。天然ガス価格は昨年より下がるとの予想の下、天然ガスを主な暖房燃料とする米国家庭の46%は、昨冬に比べ今冬の暖房費を抑えられる可能性が高いと指摘した。

欧州

  • 欧州ガススポット価格TTFは、高水準の地下ガス貯蔵の積み増しを受け、10月5日に11.2米ドルまで下げたが、欧州北西部の寒気、豪州ストライキの再燃、イスラエル・ハマス紛争の勃発、Balticconnectorパイプラインの操業停止を受け、10月13日には16.6米ドルまで大幅に上昇した。TTFは満杯に近い地下ガス貯蔵量や、比較的温暖な気候によりファンダメンタルズが安定しているにも関わらず、先行き不透明感から高水準を維持し、10月30日時点で15.4米ドルとなっている。

天然ガス・LNG価格推移(直近2年)

中長期の値動き

  • JKMは、2020年1月以降、供給拡大と需要増加ペースの失速により下落基調となり、2020年4月末には史上最安値の1.83米ドルを記録した。5月以降2米ドル台が続いたが、8月に入り複数の生産設備での供給障害により上昇基調に転じ、12月には10米ドル台を超え、2021年1月には寒波の影響で需要が急増したことにより、32.5米ドルの史上最高値を付けた。その後、価格は急落して2月下旬にかけて5米ドル台まで下落、3月に入り上昇基調に転じて以降は、高値で推移する欧州ガス市場にも牽引され、10月に一時56米ドルまで上昇し、11月は30米ドル半ば、12月には40米ドルに達した。2022年1月と2月は20米ドル台で推移し、3月にはロシア産パイプラインガス供給中断の懸念に伴って一時急騰し80米ドルを上回ったが、その後30米ドル台で推移した。4月以降取引は低調であり、JKMは36米ドルから22米ドルまで減少し、5月から6月前半にかけて20米ドル前半で推移した。しかし6月後半以降天然ガス・LNGの供給不安の高まりを背景に40米ドルに到達、7月も同様の水準で推移し、8月には概ね50米ドルで推移しつつ、一時、60米ドル、70米ドルを超える状況となった。9月、JKMはTTFの下落に伴い下落傾向を示し30米ドル後半まで下落し、10月~11月にかけて概ね20米ドル後半で推移した。12月には市場は年末商戦で活況となり30米ドル台で推移した。2023年1月、取引が再開するも低調であり、20米ドル付近から下落基調にあり、5月は9米ドル台まで落ち込んだ。2023年6月、JKMは欧州ガス価格の影響等を受け12米ドル付近で推移したが、7月には高在庫と低需要を背景に若干軟化し11米ドル付近で推移した。8月には豪州の主要プロジェクトでのストライキ発生の可能性が生じ、価格はやや上昇基調に入り、9月にストライキが実施された後は15米ドルまで上昇した。10月には中東での紛争の勃発や豪ストライキの再燃等を受け17米ドルまで上昇している。
  • 日本平均LNG輸入価格は、2020年3月以降の原油価格急落の影響により、8月から10月にかけて2005年1月以来の低水準となる5米ドル台まで下落、その後原油価格上昇に伴い、12月には7米ドル台に上昇した。堅調な原油価格の値動きに応じて、2021年2月には9米ドル半ばまで上昇後、3月は7米ドル半ばまで下落した。その後は、2022年6月までの日本平均原油価格の上昇に伴って、続く18カ月間は概ね一貫して上昇し、2022年9月には過去最高の22.73米ドルを記録した。その後、原油価格の2022年7月以降の下落傾向も一因として、2023年9月に11米ドル半ばまで下落している。

天然ガス・LNG価格推移(直近10年)

価格情報についてはファイルでのダウンロードサービスはありません。なお、上図については、S&P Global Plattsの情報が含まれることから、閲覧に際しては後述する内容にご同意いただくこととなります。
(出典)
米国HH(Henry Hub)価格: NYMEX Futures and Options, CME Group
蘭TTF(Title Transfer Facility)価格:ICE Endex, Intercontinental Exchange
JKM: LNG Japan/Korea Marker© 2023 by S&P Global Platts, a division of S&P Global Inc.
JOGMECスポットLNG価格:JOGMEC「日本着スポットLNG月次価格」、2021年3月までは経済産業省「スポットLNG価格調査」を出典とする
日本平均LNG輸入価格: 財務省貿易統計をもとに作成
EUA(EU ETS): ICE Endex, Intercontinental Exchange

上記閲覧に際しては、以下について同意することとなります。

  • Platts情報はS&P Global Plattsによって作成されています(出典:© 2023 by S&P Global Platts, a division of S&P Global Inc. All rights reserved)。
  • Platts情報を内部目的にのみ使用することに同意します。またインターネット、イントラネット、またはその他のネットワークを含むあらゆる形式または手段で、Platts情報をいかなる目的でも第三者に保存、複製、またはさらに配布しないことに同意します。
  • Platts、その関係会社およびそれらのすべての第三者ライセンサーが、Platts情報、および特許、企業秘密、著作権、商標権(登録有無に関わらず)を含むすべての知的財産権を所有していることに同意します。
  • Platts、その関係会社およびそれらのすべての第三者ライセンサーは、すべてのPlatts情報、データ、またはそれらの使用や実行によって得られた結果を含む、Platts情報に関する特定の目的または使用に対する商品性または適合性を含むすべての保障について、明示または黙示に関わらずすべての保障を否認します。Plattsまたはその関係会社あるいはそれらの第三者ライセンサーのいずれも、Platts情報またはその構成要素についての通知または通信の妥当性、正確性、適時性または完全性を保証しないものとします。Platts、その関係会社およびそれらの第三者ライセンサーは、Platts情報のいかなる誤差、脱漏または遅延についても、いかなる損害賠償または法的責任も問われないものとします。Platts情報およびそのすべての構成要素は、「現状の有り姿」として提供され、JOGMECウェブサイトのPlatts情報の使用は購読者自身の危険負担で行われるものとします。Platts情報は金融またはその他の専門的なアドバイスとみなされるべきではありません。
  • 上記記載内容に関わらず、いかなる場合も、Platts、その関係会社またはそれらの第三者ライセンサーは、利益の損失、取引損失、または損失時間や事業上の信用の損失を含むがこれに限定されないいかなる間接的損害、特別損害、付随的損害、懲罰的損害、または派生的損害について、たとえかかる損害の可能性について知らされていたとしても、契約の記述、不法行為(過失を含む)、厳格責任または別の方法のあるなしを問わず、決して責任を負わないものとします。またPlatts、その関係会社およびそれらの第三者ライセンサーは、第三者によるJOGMECウェブサイトに対するいかなるクレームにつきましても責任を負わないものとします。

天然ガス・LNG在庫動向

日本

  • 2023年5月末の国内LNG在庫量は559万トンで、前月比5.8%、30.7万トンの増加、前年同月比では8.7%増加し、過去5年平均値を95.5万トン上回った。
  • 7月末のガス事業用LNG在庫量は242万トンで、前月比7.6%減、前年同月比では3.8%減となった。7月の都市ガス用LNG消費量は前年同月比10.1%減の222万トン、都市ガス用LNG受入量は前年同月比18.4%減の204万トンだった。
  • 5月末の発電燃料用LNG在庫量は289万トンで前月比6.8%増、前年同月比8.5%の増加となった。5月の発電燃料用LNG消費量は、前年同月比で16.7%減の239万トン、発電燃料用LNG受入量は、前年同月比で20.6%減の280万トンであった。
  • 2023年10月25日に経済産業省が発表した「発電用LNGの在庫状況」によると、大手電力事業者の10月22日時点のLNG在庫は223万トンであった。2022年10月末比では30万トン下回り、過去5年間の10月末平均を22万トン上回っている。

国内LNG月末在庫量(直近2年)

国内LNG月末在庫(直近10年)

(出典)
経済産業省「ガス事業主生産動態統計」及び「電力調査統計・火力発電燃料実績」をもとに作成したもので、これら月末在庫を合算した値を国内在庫としてみなしたもの。なお、利用可能なデータは2008年1月以降のものであるため、過去5年平均は2013年1月分から計算している。


米国

  • 2023年10月13日の米国天然ガス地下貯蔵有効稼働ガス在庫(ワーキングガス)は、米国エネルギー情報局(EIA)のデータによると、3.43Tcfで前月比10.9%増となった。在庫量は2022年の同時期と比較すると8.5%高く、過去5年平均値を284.0Bcf上回っており、2020年11月以降は過去5年のレンジに入っている。

米国天然ガス地下貯蔵量(直近2年)

米国天然ガス地下貯蔵量(直近10年)

(出典)
米国エネルギー情報局(U.S. Energy Information Administration, EIA)のデータをもとに作成


欧州

  • 2023年10月24日現在のAggregated Gas Storage Inventory(AGSI+)加盟各社中、EU加盟国各社が有する欧州天然ガス地下貯蔵在庫は1,123.8TWh(LNG換算7,437万トン相当)であった。これは前年同期より7.5%、78.8TWh(LNG換算521万トン相当)上回るものだった。貯蔵容量に対する充填率は98.7%であり、前年同期の93.8%、過去5年間平均値の89.9%を上回った。貯蔵容量の大きなドイツ、オランダの充填率はそれぞれ98.9%、98.8%であった。

欧州天然ガス地下貯蔵量(直近2年)

欧州天然ガス地下貯蔵量(直近10年)

(出典)
Aggregated Gas Storage Inventory(AGSI), Gas Infrastructure Europeのデータをもとに作成。なお、利用可能なデータは2011年1月以降のものであるため、過去5年平均は2016年1月分から計算している。

 

  • 2023年10月24日現在のAggregated LNG Storage Inventory(ALSI)加盟各社(11か国、18社)が有する欧州LNG在庫量は514.0万m3で、前月比12.0%増加、前年同日比2.2%増加、過去5年平均値を12.6%下回っている。

欧州LNG在庫量(直近2年)

欧州LNG在庫量(直近10年)

(出典)
Aggregated LNG Storage Inventory(ALSI), Gas Infrastructure Europeのデータをもとに作成。なお、利用可能なデータは2012年1月以降のものであるため、グラフ中の過去10年平均及び過去10年平均幅の値については、5年未満の値が含まれる。


天然ガス・LNGプロジェクト動向

ハイライト

  • カタール国有QatarEnergyは、10月上旬、自国LNG生産容量を現在の年間7,700万トンから、2026年までに1.26億トンに引き上げることになる超大型拡張プロジェクトの起工式典が行われたことを発表した。プロジェクト完成時期を前倒ししていることから、LNGのマーケティングが円滑に進行していること、さらにエンジニアリングの観点で建設の円滑な推進管理に自信を持っていることが示唆される。10月、当該プロジェクトからは欧州向けに2026年から27年間の長期販売取引3件が締結された。

 

アジア・オセアニア地域

  • 船級協会DNVは、Hanwha Oceanの270,000m3型LNG輸送船舶設計を原則承認(AiP)した。全長345m、船幅55m、カーゴタンク5基、X-DFエンジン、再液化システムを有する。
  • 中国Beijing Gasは、2023年9月27日、Tianjin Nangang LNG輸入基地第1段階設備で最初のカーゴを受け入れた。第1段階は220,000m3 LNG貯蔵タンク4基で年間500万トンの容量を持つ。
  • タイEGAT(Electricity Generating Authority of Thailand)は、2023年10月3日、同月より発電燃料コスト削減のため、年間120万トンのLNGを輸入する目標を設定したことを発表した。EGATは、2023年4月5日のエネルギー規制委員会(ERC)決議に従い、競争的価格方式を用いて、年間120万トン、2023-2027年についてLNGの短期調達を開始したとしている。
  • スイスに本拠を置く統合型欧州エネルギー企業MET Groupは、2023年10月4日、シンガポールにオフィスを開設したことを発表した。MET Groupが90%、Keppelが10%所有する子会社MET Asia Pte. Ltd.は、グループのLNGポートフォリオをグローバル化することに焦点を置く。
  • ENIは、2023年10月2日、インドネシア東カリマンタン沖85 kmのNorth Ganal PSC 鉱区で掘削されたGeng North-1探査井のガス資源の発見を発表した。初期的試算として、構造全体で原始ガス資源量5Tcf、コンデンセート4億バレルと推定される。発表によると、この発見は東カリマンタン岸のBontang LNG設備に連結する可能性があるという。
  • インドネシアPertaminaは、2023年9月20日、自社子会社PT Kilang Pertamina Internasionalと、Tangguhオペレーターであり、Tangguh生産分与協力契約(PSC)請負側を代表するBP Berau Ltd(bp)が、ブルーアンモニア開発可能性に関連するTangguhでのガス供給とCO2注入可能性に関するPertaminaが実施するスタディに対する協力に関してのMoUを締結したことを発表した。
  • bpは、2023年10月19日、インドネシア パプア州Tangguh LNG設備新規第3液化系列にて生産したLNG最初のカーゴが、同国有発電企業PT PLN(Persero)向け引き渡しのために積み込まれ、出航したことを発表した。
  • Shellは、2023年10月18日、既に発表済みだったインドネシアMasela生産分与契約(PSC)自社持分35%の、インドネシアPertamina及びPETRONAS Maselaへの売却を完了したことを発表した。
  • インドネシアPT Amman Mineral Internasional Tbk(AMMN)は、2023年9月20日、子会社PT Amman Mineral Nusa Tenggara(AMNT)が、Pertaminaとの間で、AMNT側が計画する450MWコンバインドサイクル発電設備(CCPP)及び精銅設備へのLNG安定供給確保のためのHoAを締結したことを発表した。
  • 日揮ホールディングス、大阪ガス、INPEXは、2023年9月25日、インドネシア Pertamina子会社PT Perusahaan Gas Negara社(PGN)と、同国のパームオイルの搾油工程で生じる廃液(POME)由来のバイオメタン活用の事業化に向けた詳細検討を開始することを発表した。2025年のスマトラ島南部でのバイオメタン製造開始を目指す。バイオメタンを液化したバイオLNGを船舶燃料として供給する事業やバイオLNGを輸出する事業の可能性についても検討予定としている。
  • パキスタンPakistan LNGは、2023年10月4日、最新のLNG購入入札の最終評価報告を公表した。12月分の2カーゴDES購入入札で、Vitol、Trafiguraがオファーした。
  • 豪州連邦政府は、2023年10月3日、「将来に向けたガス戦略」に関するディスカッションペーパーを公表し、意見募集手続きを開始した。業界、国際通商及び投資パートナー、豪州一般市民から広く意見を受けることとなる。戦略としては、2024年にまとめる予定としている。
  • 豪州連邦競争・消費者対策規制機関(ACCC)の2023年9月分、ガス市場調査中間報告書によると、同国東部ガス市場は、2024年第1四半期、LNG生産者が販売未契約分のガスを全て輸出しても、同国東部ガス市場は1.4ペタジュール(PJ) (3万トン弱)余剰となる。
  • KBRは、2023 年9月25日、豪 Pluto合弁事業オペレーターWoodside EnergyからEPCm契約を受注したことを発表した。KBRは、西豪州カラサ近くの Pluto LNG設備第1系列改造を担当する。この改造により同系列を通じてScarboroughガス年間300万トンの処理が可能となる。
  • 豪州連邦法廷は、2023年9月28日、Woodside EnergyのScarboroughプロジェクトの一部についての環境対策計画が、連邦海上石油類安全・環境管理局(NOPSEMA)により合法的に承認されておらず、無効であるとの判断を下した。 Woodsideは7月にNOPSEMA承認を受け、9月に地震探査を開始することを希望していた。
  • Woodside Energyは、2023年10月18日、Scarborough及びPluto Train 2プロジェクトは同期間末時点で46%完了しており、浮体生産設備(FPU)及びPluto Train 2モジュール組み立てが進展している、と述べた。
  • Saudi Aramcoは、2023年9月28日、MidOcean Energyのマイノリティ株式買い取り契約を締結したことを発表した。MidOcean Energyは、グローバルなエネルギー・インフラストラクチャー部門への主導的機関投資家EIGにより創設、経営されるLNG企業である。MidOcean Energyは豪州の4件のLNGプロジェクトの持ち分買い取りの過程にある。
  • 豪Origin Energy社は、2023年10月10日、連邦競争・消費者対策規制機関(ACCC)が、Brookfield Asset Management及びEIG Partners傘下のMidOcean Energyの連合による自社買収を承認したことを明らかにした。
  • 豪州のエネルギー労働組合連合Offshore Alliance(OA)は、2023年10月6日、 ChevronのGorgon、Wheatstone設備に関して、同社が公正労働委員会(FWC)提言を労使協定(FA)に織り込むとしたコミットメントに違背したと非難し、新たな労働争議通告を10月9日に提出した。FWCは、10月11日、両者間の調停の話し合いを開始した。OAは、10月18日、組合メンバーが、労使協定(EBA)案合意に向け、争議行動停止を明らかにした。
  • 豪Santosは、2023年10月19日、Barossaプロジェクトは、Darwinパイプライン複線化プロジェクトを除き68%完了していると述べた。掘削活動は規制機関による環境計画の審査・承認まで停止されている。

 

北米地域

  • Sempra Infrastructureは、2023年9月21日、FERCがテキサス州ジェファーソン郡のPort Arthur LNG用地で開発中のPort Arthur LNG第2段階拡張プロジェクトを承認したことを発表した。提案された第2段階プロジェクトは、年間最大1,300万トンのLNGを生産できる液化第3、4系列の追加となる。
  • Baker Hughesは、2023年10月2日、Venture Global LNGと同社との間で締結された生産容量年間1億トン以上に向けた包括機器供給契約に基づき、モジュラー化したLNGシステム及び電力供給アイランドを提供する契約を受注したことを発表した。
  • NextDecadeは、2023年10月6日、Rio Grande LNG輸出プロジェクトの起工式を挙行したことを発表した。
  • Tellurian社のDriftwood LNGは、2023年10月4日、FERCにDriftwood LNGプロジェクトのLNG設備及びDriftwoodパイプラインの建設完了と業務開始期限を36ヶ月延長する申請を提出した。
  • ExxonMobilとPioneer Natural Resourcesは、2023年10月11日、 ExxonMobilがPioneerを買収する契約を発表した。純負債を含む取引の理論上企業価値は645億米ドルである。これはExxonとして1998年Mobilとの810億米ドル合併以来最大の取引である。
  • カナダKsi Lisims LNGは、2023年10月16日、ブリティッシュコロンビア州政府に環境アセスメント証明(EAC)申請を提出したと発表した。発表によると、この提出により技術諮問委員会、参加する先住民族集団、規制当局、一般市民によるレビューとコメントのための法定180日間の期間が開始となる。これらコメントを受け、Ksi Lisimsは修正後の最終申請を提出することとなる。その後同州環境アセスメント部が、環境アセスメント証書発行に関して申請を検討し、提言を行う法定の150日間の期間に入る。Ksi Lisims LNGは年間1,200万トンのLNGを生産することとなると述べている。
  • New Fortress Energy(NFE)は、2023年9月27日、Pioneer IIリグが年間140万トンFast LNG Altamira生産プロジェクトで液化設備となるメキシコのアルタミラに出航することを発表した。同プロジェクトはリグ3基を用いる。Pioneer IIは液化用、Pioneer Iはガス処理、Pioneer IIIは居住区及びユーティリティを担当する。後者2リグは既に設置されている。

 

欧州および周辺地域

  • EUの第3回共同ガス購入は、2023年10月6日の欧州委員会(EC)報告によると、供給者から合計18.1 Bcmのオファーを集めた。第1回の18.7 Bcmとほぼ同水準であり、第2回の15.2 Bcmを上回った。総計需要は欧州企業39社から提出された申請に基づき16.5 Bcmだった。共同購入プラットフォームは需要11.9 Bcmを供給者とマッチさせ、第2回(12 Bcm)、第1回(10.9 Bcm)と同水準となった。
  • オランダNAMは、2023年9月22日、Groningen ガス田からのガス生産を10月1日付で停止することを政府が決定したことを発表した。2023/2024年冬季の例外的環境では、ガス生産再開の余地を残している。
  • QatarEnergyは、2023年10月18日、と、カタールからオランダ向け最大年間350万トンのLNGについて、同社とShellが2本の長期LNG SPAsを締結したと発表した。LNGはGate LNG基地向けに2026年から27年間引き渡される。
  • QatarEnergyは、2023年10月11日、 カタールからフランス向け合計最大年間350万トンのLNGについて、同社とTotalEnergiesが2本の長期LNG SPAsを締結したと発表した。LNGはDES条件でフランス南部Fos Cavaou LNG受入基地に、2026年から27年間の引き渡しとなる。
  • QatarEnergyとEniは、2023年10月23日、カタールからイタリア向け2026年から27年間の引き渡し見込みで最大年間100万トンのLNG SPAを締結したと発表した。このLNGはトスカナ地方ピオンビーノ港FSRU Italiaに引き渡しとなる。
  • スペインのインフラストラクチャー操業企業Enagásは、2023年9月27日、ドイツのシュターデのLNG輸入基地を開発しているHanseatic Energy Hub(HEH)連合の10%買い取りに合意したことを発表した。HEH第1段階は、年間10 bcm浮体貯蔵・気化設備(FSRU)船舶が使用されることとなる。174,000 m3 Transgas Force は7月にブレーマーハーフェンに到着しており、2023年末までに稼働開始となる。第2段階は、年間13.3 bcmの陸上輸入基地を含み、2027年稼働開始見込みとEnagásは述べた。
  • スペインのインフラストラクチャー操業企業Enagásは、2023年9月29日、ガス輸送企業Reganosaから130 km分のガスパイプライン全部を買い取ったことを発表した。対してReganosaはEl Musel LNG基地25%をEnagásから買い取った。

 

その他地域

  • QatarEnergyは、2023年10月3日、自国LNG生産容量を現在の年間7,700万トンから2026年までに1.26億トンに引き上げるNorth Field拡張プロジェクトの起工式典が行われたと発表した。
  • QatarEnergyは、2023年9月27日、韓国HD現代重工業(HHI)と、17隻の最新型LNG輸送船舶建造契約を締結したことを発表した。QatarEnergyによる North Field LNG拡張及びGolden Pass LNG輸出プロジェクトLNG生産容量拡張、長期船団代替需要を支えるLNG輸送船舶調達プログラム第2段階の始まりとなる。第1段階で韓国、中国の造船所で建造されるべく契約された60隻と合わせ総数が77隻となる。
  • Worleyは、2023年9月25日、QatarEnergy LNGのラスラファンでのCO2貯留プロジェクトのFEEDを実施することを発表した。WorleyチームがFEEDスタディ及びEPC仕様を2024年までに作成する。年間430万トンのCO2を回収できるものとなる。
  • アブダビADNOCとBaker Hughesは、2023年10月4日、ADNOC GasがRuwais LNGプロジェクト向けに、クリーンエネルギーを動力源とする天然ガス液化用オール電化圧縮システム2セットの供給契約をBaker Hughesに発注したと発表した。Ruwais LNGプロジェクトは、年間480万トンの天然ガス液化系列2本、総容量は年間960万トンとなる。
  • アブダビADNOCは、2023年10月5日、Hail及びGhasha沖合開発プロジェクトに関するFID及び2本のEPC契約の発注を発表した。本プロジェクトは、ネットゼロ二酸化炭素(CO2)排出で操業することを目指している。HaiとGhashaはアブダビGhasha鉱区に属し、同鉱区は2020年代中にガス日量1.5 bscfd (年間1,100万トン)以上を生産する予定である。
  • アブダビADNOC Gasは、2023年10月18日、JERA Global Marketsとの間で、複数年LNG SPAを締結したと発表した。
  • 欧州連合(EU)とアルジェリアは、2023年10月5日、エネルギーに関するハイレベル政治対話の中で、石油・ガス産業におけるメタン排出削減における協力を話し合い、大気に放出されるメタンの回収・商業化促進に協力することに合意した。
  • Marathon Oilは、2023年10月16日、赤道ギニアAlbaフィールド(Marathon 64%持分)から生産される自社分天然ガスの一部について、2024年1月1日発効でGlencore との間で5年間のLNG販売契約を締結したことを発表した。価格設定は、TTF指標から固定輸送料を差し引く。別途Marathon Oilは2024年にAlbaユニットの天然ガスを地元メタノール設備(Marathon 45%)からLNG設備(Marathon 56%)に振り替える最適化を行う見込みと発表した。
  • Allseasは、2023年10月5日、モーリタニア・セネガル沖の超大水深 Greater Tortue Ahmeyim(GTA)天然ガスプロジェクトの海底パイプライン完成業務に向け自社がbpから選定されたことを発表した。Allseasは、2023年12月初旬よりGTA海底パイプライン敷設作業を請け負う。
  • ENIは、2023年10月21日、Tango FLNG及びExcalibur FSUが、ドバイからコンゴ沖に向け出港したことを発表した。Congo LNGプロジェクト第1段階は2023年12月稼働開始予定である。Tango FLNGは、ガス年間1bcmの液化容量を持ち、 Excalibur FSUとともに3km沖に繋留を計画されている。Congo LNGプロジェクトは、Marine XIガス資源及び既存生産諸設備を活用し、新たな段階的手法で最盛時液化容量年間4.5bcmと定常的フレアリングゼロを達成すると同社は述べている。容量年間3.5bcmの2隻目のFLNG船舶は建造中であり、2025年生産開始予定としている。
  • 2021年3月にモザンビーク北部で発生したテロ攻撃の際に「虐殺と危険に曝されている人々を支援しなかった」として自社に対してなされた告発を受け、2023年10月11日、 TotalEnergiesはこれらの非難事項を否定し、2,500人以上(民間人、人員、請負業者、下請業者)をAfungi現場から避難させるためにMozambique LNGチームにより提供された緊急支援と、これらのチームが動員した資源に関して詳述した。
  • AES Corporationは、2023年9月26日、ドミニカ共和国及びパナマでの自社事業のマイノリティ持分売却を、Grupo Lindaとの既存パートナーシップ拡大、Grupo Popular子会社AFI Popularとの新たなパートナーシップのため、合意したことを発表した。今回の合意には、ドミニカ共和国でのAES事業の10%を Grupo LindaとGrupo Popular子会社AFI Popularに売却することが含まれる。ドミニカ共和国でのAES事業には、160,000 m3 LNG 容量の貯蔵タンク1基を有するLNG気化基地、コンバインドサイクルガスタービン工場、太陽光・風力発電所が含まれる。また今回の発表にはパナマAES Colón20%のGrupo Lindaへの売却が含まれる。AES Colónは381MWコンバインドサイクルガスタービンと隣接の180,000 m3 LNG貯蔵タンク1基を有する気化設備が含まれる。
  • National Gas Company of Trinidad and Tobago Limited(NGC)は、2023年9月22日、 Shell Trinidad and Tobago Limitedとの間で、Shellが操業するManatee ガス田からの天然ガスの一部を、プロジェクトが認可された時点で含むようにする修正国内ガス販売契約を締結したと発表した。
  • Excelerate Energyは、2023年10月17日、ブラジルPetrobrasと FSRU Sequoiaの10年間の傭船契約を締結したと発表した。契約は2024年1月1日から開始される。Sequoiaはブラジルのバイア州サルバドールBahia気化基地を中心に同国での気化業務を提供し続けることとなる。
  • Safetytech Acceleratorは、2023年10月9日、CoolCo、商船三井(MOL)、Shell International Trading and Shipping Company Limitedと協力して、Green InstrumentsとEverimpactを、船上での燃焼からのメタン排出測定課題に取り組む海上メタン削減革新取り組み(MAMII)で評価されるべき最初の技術提供者2社として選定したことを発表した。

 

(注: bcm: 10億m3、CCS: 炭素回収・貯蔵、DES: 持ち届け ex-ship、DOE: 米連邦エネルギー省、EPC: エンジニアリング・調達・建設、EPCI: エンジニアリング・調達・建設・設置、 EPCm: エンジニアリング・調達・建設管理、FEED: 基本設計、FERC: 米連邦エネルギー規制委員会、FID: 最終投資決定、FLNG: 浮体液化設備、FOB: 本船渡し、FSRU: 浮体貯蔵・気化設備、FSU: 浮体貯蔵化設備、HOA: 基本合意、MOU: 覚書、SPA: LNG売買契約)

 

 

作成協力 一般財団法人日本エネルギー経済研究所

 

添付ファイル