2023年11月
天然ガス・LNG価格動向
直近の値動き
アジア
- 北東アジアのアセスメントされたスポットLNG価格JKMは、弱気な市場心理と健全な在庫水準を受け100万Btu当たり16米ドル台から15米ドル台へと下降して推移した後、11月16日に受渡月が切替わると17米ドルとなった。オマーンLNGやフリーポートLNGにおいて一時トラブルが生じたがリスクは緩和され、JKMは月末にかけて16米ドル台で推移している。
- JOGMECは10月の日本着スポットLNG月次価格(速報)について、同月以降に契約がなされて日本に入着するスポットLNG取引の平均価格(契約ベース)を14.7米ドルと発表した。また、同月中に日本に入着したスポットLNG取引の平均価格(入着ベース)を13.8米ドルと発表した。
- 財務省貿易統計速報に基づくと、2023年10月の日本平均LNG輸入価格は100 万Btu当たり11.86米ドル、円建てでは1トン当たり91,550円となり、いずれも前月より上がった。円安影響も重なり、円建て価格が4月以来の90,000円超となった。供給地域別では、米国産は11.12米ドル、ASEAN地域産が11.75米ドル、中東産が12.45米ドル、ロシア産が11.77米ドルであった。また、10月の北東アジア各国の平均輸入価格は、中国10.92米ドル、韓国12.09米ドル、台湾11.20米ドルであった。全日本平均原油輸入CIF価格(JCC: Japan crude cocktail)は2023年10月には1バレル当たり92.70米ドルとなった。円建てでは1キロリットル当たり86,808円となった。
- 10月の日本のLNG輸入量は、541万トンと前年同月比で6%増加、1月から10月までのLNG輸入量合計は5,432万トンと前年同期比で10%減少した。中国の10月のLNG輸入量は517万トンと前年同月比で28%増加したものの、4月以降で初めて日本の輸入量を下回った。中国の1月から10月までのLNG輸入量合計は、5,625万トンと前年同期比で11%増加した。韓国は343万トンと前年同月比で16%減少、台湾は165万トンと前年同月比13%減少となった。これら4市場合計のLNG輸入量は、10月までの累計で1億6,299万トンと前年同期比2%減少となった。
米国
- 米国スポットガス価格HHは、冬場の需要増加への期待を受けて3.5米ドルで推移していたが、その後下落基調に転じ11月20日に3米ドルを割って以降同水準で推移している。
- 米国エネルギー情報局(EIA)は、11月7日発表の短期エネルギー見通しにおいて、ヘンリーハブ・スポット価格を2023年平均で2.67米ドル、2024年平均を3.25米ドルと予想している。EIAはまた、今冬におけるHHを平均して3.40米ドルとし、ピークを迎える1月には3.60米ドルを超えると予想し、今冬は生産量が増加し、天然ガスの貯蔵在庫が比較的満杯の状態で暖房シーズンを迎えるため、価格は昨冬より下がると指摘している。
欧州
- 欧州ガススポット価格TTFは、弱い需給のファンダメンタルズが継続するなか、概ね14米ドル台で推移した。中東における地政学的リスクは依然として存在しているが、豪州ストライキやバルチックコネクターパイプライン等のリスク要因は減じた。冬場の到来を受け、地下ガス貯蔵からの引き出しも開始されたが、在庫は満杯に近く需要は緩慢であった。
中長期の値動き
- JKMは、2020年1月以降、供給拡大と需要増加ペースの失速により下落基調となり、2020年4月末には史上最安値の1.83米ドルを記録した。5月以降2米ドル台が続いたが、8月に入り複数の生産設備での供給障害により上昇基調に転じ、12月には10米ドル台を超え、2021年1月には寒波の影響で需要が急増したことにより、32.5米ドルの史上最高値を付けた。その後、価格は急落して2月下旬にかけて5米ドル台まで下落、3月に入り上昇基調に転じて以降は、高値で推移する欧州ガス市場にも牽引され、10月に一時56米ドルまで上昇し、11月は30米ドル半ば、12月には40米ドルに達した。2022年1月と2月は20米ドル台で推移し、3月にはロシア産パイプラインガス供給中断の懸念に伴って一時急騰し80米ドルを上回ったが、その後30米ドル台で推移した。4月以降取引は低調であり、JKMは36米ドルから22米ドルまで減少し、5月から6月前半にかけて20米ドル前半で推移した。しかし6月後半以降天然ガス・LNGの供給不安の高まりを背景に40米ドルに到達、7月も同様の水準で推移し、8月には概ね50米ドルで推移しつつ、一時、60米ドル、70米ドルを超える状況となった。9月、JKMはTTFの下落に伴い下落傾向を示し30米ドル後半まで下落し、10月~11月にかけて概ね20米ドル後半で推移した。12月には市場は年末商戦で活況となり30米ドル台で推移した。2023年1月、取引が再開するも低調であり、20米ドル付近から下落基調にあり、5月は9米ドル台まで落ち込んだ。2023年6月、JKMは欧州ガス価格の影響等を受け12米ドル付近で推移したが、7月には高在庫と低需要を背景に若干軟化し11米ドル付近で推移した。8月には豪州の主要プロジェクトでのストライキ発生の可能性が生じ、価格はやや上昇基調に入り、9月にストライキが実施された後は15米ドルまで上昇した。10月には中東での紛争の勃発等を受け17米ドルまで上昇したが、11月には地政学的リスクがいくらか緩和され概ね14米ドルで推移した。
- 日本平均LNG輸入価格は、2020年3月以降の原油価格急落の影響により、8月から10月にかけて2005年1月以来の低水準となる5米ドル台まで下落、その後原油価格上昇に伴い、12月には7米ドル台に上昇した。堅調な原油価格の値動きに応じて、2021年2月には9米ドル半ばまで上昇後、3月は7米ドル半ばまで下落した。その後は、2022年6月までの日本平均原油価格の上昇に伴って、続く18カ月間は概ね一貫して上昇し、2022年9月には過去最高の22.73米ドルを記録した。その後、原油価格の2022年7月以降の下落傾向も一因として、2023年5月には12米ドル台まで下落し、8 - 10月は11米ドル台で推移している。
価格情報についてはファイルでのダウンロードサービスはありません。なお、上図については、S&P Global Plattsの情報が含まれることから、閲覧に際しては後述する内容にご同意いただくこととなります。
(出典)
米国HH(Henry Hub)価格: NYMEX Futures and Options, CME Group
蘭TTF(Title Transfer Facility)価格:ICE Endex, Intercontinental Exchange
JKM: LNG Japan/Korea Marker© 2023 by S&P Global Platts, a division of S&P Global Inc.
JOGMECスポットLNG価格:JOGMEC「日本着スポットLNG月次価格」、2021年3月までは経済産業省「スポットLNG価格調査」を出典とする
日本平均LNG輸入価格: 財務省貿易統計をもとに作成
EUA(EU ETS): ICE Endex, Intercontinental Exchange
上記閲覧に際しては、以下について同意することとなります。
- Platts情報はS&P Global Plattsによって作成されています(出典:© 2023 by S&P Global Platts, a division of S&P Global Inc. All rights reserved)。
- Platts情報を内部目的にのみ使用することに同意します。またインターネット、イントラネット、またはその他のネットワークを含むあらゆる形式または手段で、Platts情報をいかなる目的でも第三者に保存、複製、またはさらに配布しないことに同意します。
- Platts、その関係会社およびそれらのすべての第三者ライセンサーが、Platts情報、および特許、企業秘密、著作権、商標権(登録有無に関わらず)を含むすべての知的財産権を所有していることに同意します。
- Platts、その関係会社およびそれらのすべての第三者ライセンサーは、すべてのPlatts情報、データ、またはそれらの使用や実行によって得られた結果を含む、Platts情報に関する特定の目的または使用に対する商品性または適合性を含むすべての保障について、明示または黙示に関わらずすべての保障を否認します。Plattsまたはその関係会社あるいはそれらの第三者ライセンサーのいずれも、Platts情報またはその構成要素についての通知または通信の妥当性、正確性、適時性または完全性を保証しないものとします。Platts、その関係会社およびそれらの第三者ライセンサーは、Platts情報のいかなる誤差、脱漏または遅延についても、いかなる損害賠償または法的責任も問われないものとします。Platts情報およびそのすべての構成要素は、「現状の有り姿」として提供され、JOGMECウェブサイトのPlatts情報の使用は購読者自身の危険負担で行われるものとします。Platts情報は金融またはその他の専門的なアドバイスとみなされるべきではありません。
- 上記記載内容に関わらず、いかなる場合も、Platts、その関係会社またはそれらの第三者ライセンサーは、利益の損失、取引損失、または損失時間や事業上の信用の損失を含むがこれに限定されないいかなる間接的損害、特別損害、付随的損害、懲罰的損害、または派生的損害について、たとえかかる損害の可能性について知らされていたとしても、契約の記述、不法行為(過失を含む)、厳格責任または別の方法のあるなしを問わず、決して責任を負わないものとします。またPlatts、その関係会社およびそれらの第三者ライセンサーは、第三者によるJOGMECウェブサイトに対するいかなるクレームにつきましても責任を負わないものとします。
天然ガス・LNG在庫動向
日本
- 2023年6月末の国内LNG在庫量は549万トンで、前月比1.8%、10.1万トンの減少、前年同月比では4.2%増加し、過去5年平均値を89.5万トン上回った。
- 2023年7月末の国内LNG在庫量は470万トンで、前月比14.4%、79.0万トンの減少、前年同月比では10.9%減少し、過去5年平均値を7.9万トン上回った。
- 8月末のガス事業用LNG在庫量は217万トンで、前月比10.2%減、前年同月比では14.5%減となった。8月の都市ガス用LNG消費量は前年同月比0.6%増の232万トン、都市ガス用LNG受入量は前年同月比11.4%減の207万トンだった。
- 6月末の発電燃料用LNG在庫量は288万トンで前月比0.3%減、前年同月比3.1%の増加となった。6月の発電燃料用LNG消費量は、前年同月比で26.4%減の254万トン、発電燃料用LNG受入量は、前年同月比で28.0%減の282万トンであった。
- 7月末の発電燃料用LNG在庫量は229万トンで前月比20.5%減、前年同月比17.4%の減少となった。7月の発電燃料用LNG消費量は、前年同月比で11.0%減の334万トン、発電燃料用LNG受入量は、前年同月比で15.4%減の350万トンであった。
- 2023年11月22日に経済産業省が発表した「発電用LNGの在庫状況」によると、大手電力事業者の11月19日時点のLNG在庫は249万トンであった。2022年11月末比では6万トン下回り、過去5年間の11月末平均を37万トン上回っている。
(出典)
経済産業省「ガス事業主生産動態統計」及び「電力調査統計・火力発電燃料実績」をもとに作成したもので、これら月末在庫を合算した値を国内在庫としてみなしたもの。なお、利用可能なデータは2008年1月以降のものであるため、過去5年平均は2013年1月分から計算している。
米国
- 2023年11月17日の米国天然ガス地下貯蔵有効稼働ガス在庫(ワーキングガス)は、米国エネルギー情報局(EIA)のデータによると、3.83Tcfで前月比3.4%増となった。在庫量は2022年の同時期と比較すると7.4%高く、過去5年平均値を242.6Bcf上回っており、2020年11月以降は過去5年のレンジに入っている。
(出典)
米国エネルギー情報局(U.S. Energy Information Administration, EIA)のデータをもとに作成
欧州
- 2023年11月22日現在のAggregated Gas Storage Inventory(AGSI+)加盟各社中、EU加盟国各社が有する欧州天然ガス地下貯蔵在庫は1,121.6TWh (LNG換算7,419万トン相当)であった。これは前年同期より6.0%、63.9TWh (LNG換算423万トン相当)上回るものだった。貯蔵容量に対する充填率は98.4%であり、前年同期の94.6%、過去5年間平均値の87.7%を上回った。貯蔵容量の大きなドイツ、オランダの充填率はそれぞれ99.7%、98.0%であった。
(出典)
Aggregated Gas Storage Inventory(AGSI), Gas Infrastructure Europeのデータをもとに作成。なお、利用可能なデータは2011年1月以降のものであるため、過去5年平均は2016年1月分から計算している。
- 2023年11月22日現在のAggregated LNG Storage Inventory(ALSI)加盟各社(11か国、18社)が有する欧州LNG在庫量は544.9万m3で、前月比2.8%減少、前年同日比1.7%増加、過去5年平均値を2.5%上回っている。
(出典)
Aggregated LNG Storage Inventory(ALSI), Gas Infrastructure Europeのデータをもとに作成。なお、利用可能なデータは2012年1月以降のものであるため、グラフ中の過去10年平均及び過去10年平均幅の値については、5年未満の値が含まれる。
天然ガス・LNGプロジェクト動向
ハイライト
- 欧州出資参加パートナーとの3本の27年間のSPAに続き、カタール国有QatarEnergy 社は、11月初旬、North Field South拡張プロジェクトについて、中国Sinopecとの取引を固めた。年間300万トン、2026年から27年間のLNG販売及びNFSプロジェクトへのSinopecによる1.875%出資参加となる。North Field EastプロジェクトとNFSプロジェクトのLNG生産容量合わせて年間4,800万トン中、2,100万トンが超長期ベースで両プロジェクトの国際出資パートナー企業によりコミットされたこととなる。
アジア・オセアニア地域
- 中国PipeChina社は、2023年11月9日、自社7件のLNG基地について、2024年4月以降分、3 - 20年間の長期枠、2024年4月から2025年3月の年間枠について、容量枠予約手続きを開始したことを発表した。
- PipeChina社は、2023年11月10日、天津LNG基地第2期第2段階が稼働開始したことを発表した。
- 中国Sinopec社は、2023年11月3日、中国では初となる、世界最大容量27万m3のLNGタンクが青島LNG受入基地で2日に正式に使用開始されたことを発表した。
- シンガポール通商産業省(MTI)、エネルギー市場当局(EMA)は、2023年10月23日、発電企業からのガス需要を集約し、同部門へのガス調達・供給を集中化する Gascoを設立することを発表した。この集中調達はガス契約更改を含め、発電部門の将来のガス需要全てを対象とする。発電企業はそれぞれのガス供給者との間で持つ既存ガス契約を継続することは認められる。他工業用ガス需要家は、ライセンスを受けたガス輸入者を通じてのガス調達を継続でき、集中調達枠組の対象とならない。EMAはGascoを2024年に設立する意向で、今後数ヶ月間に集中ガス調達枠組の詳細に関して業界の意見聴取を行う。
- シンガポール副首相が、2023年10月24日、同国第2のLNG基地開発に関するSLNG(Singapore LNG)の計画を発表した。SLNGは、同プロジェクト開発の承認を受けたことを確認した。SLNGは2030年までに稼働開始を目指す。SLNGは、FSRU利用のオプションを検討している。
- ベトナムPetroVietnamは、2023年10月29日、PV Gas社がThị Vải LNG輸入基地を稼働開始したことを発表した。同基地は最初のカーゴを7月10日に受け入れた。同基地容量は当初年間100万トンから、2027年までに300万トンに拡張する計画である。
- フィリピンFirst Gen社(FGEN)は、2023年11月16日、LNGカーゴ1隻の国際入札を完了し、Trafigura 社との契約を決定したことを発表した。Trafiguraは、1カーゴを11月25日から12月25日の間にDES条件で、FGEN完全子会社First Gen Singapore Pte. Ltdに引き渡す。
- ENIは、2023年10月26日、Merakes LNG売主連合と、2024年1月から3年間で0.8 bcmのLNG売買契約を締結したことを発表した。2017年以来の年間1.4 bcmのJangkrik LNG売主連合との契約に上乗せとなる。Eniのエネルギートランジッション戦略は、上流生産全体でのガスのシェアを2030年までに段階的に60%まで増加することを目指し、同時に自社出資LNGの増加を図る。Eniは契約LNG数量を2026年までに2倍増以上の年間1,800万トンとすることを目指す。
- インドネシアPertamina子会社PGN(PT Perusahaan Gas Negara)は、2023年11月7日、Gunvor Singapore社とのLNG供給取引でフォースマジュールを宣言したことを明らかにした。證券取引所への提出書類の中でPGNは11月3日にGunvor社に通知を出したと述べた。「当社はフォースマジュール期間が2024年の数ヶ月間以上とみている」とPGN は述べた。両社は2022年6月に当該LNG供給取引を開始した。
- マレーシアMISC社は、2023年10月31日、PETRONAS Gas Berhad(PGB)子会社Pengerang LNG (Two) Sdn. Bhd.(PLNG2SB)との間で、ジョホール州 PETRONAS Pengerang (RGTP)基地への配置用としてLNG FSU供給・操業・メンテナンスのHOAを締結したことを発表した。MISCのLNG輸送船舶Puteri Delima Satuが本プロジェクト専用のFSUに改造される。2025年第2四半期稼働予定。
- Excelerate Energy社は、2023年11月8日、バングラデシュPetrobanglaとの間で長期LNG SPAを締結したことを発表した。Petrobanglaは、年間85 - 100万トンのLNGをExcelerateから2026年1月より購入することに合意した。Excelerateは、2026 - 2027年は年間85万トン、2028 - 2040年は年間100万トンを引き渡す。
- 南豪州エネルギーインフラストラクチャー開発企業Venice Energyは、2023年10月27日、同社とOrigin Energyが、アデレード港湾に建設予定のOuter Harbor LNG輸入基地の実現性を支える枠組に合意したことを発表した。Originは、10年以上同基地の単独利用者となり延長オプションを付ける。Venice Energyは2021年12月に政府からプロジェクト承認を確保した。年間最大110ペタジュール(200万トン)のガスを送出することが承認されている。Venice Energyは、同基地が再生可能エネルギーのみで運営される世界最初の例となる、と述べている。第1段階に向けた準備作業が11月に開始され、最初のガスは2026年5月までに送出されることが見込まれている。
- 豪Santosは、2023年11月2日、Barossaガス輸送パイプライン(GEP)敷設開始を13日まで差し止める仮処分命令を連邦法廷が発したことを明らかにした。
- 豪州連邦政府による、環境保護(海洋投棄)(気候変動対応新規技術利用)改正案が、2023年11月13日、自由・国民連合の支持を受け、議会上院を通過した。同法は、Santos社のBarossaガス田開発にとって重要となるBayu-Undan CCSプロジェクト開発に道を開くこととなる。
- 豪Woodside Energy社は、2023年11月8日、Scarborough LNGプロジェクトは進捗率50%まで完成しており、Pluto LNG設備建設工事は予定通り進んでいる、と述べた。インドネシアでのPluto Train 2モジュール組み立て、カラサでの現場作業は順調に進捗しており、最初のLNGカーゴは2026年を目標としている。Pluto設備は、遠隔操業センターによりパースから運転可能となっている。同社Scarborough及びPluto 第2系列もパースから遠隔運転する準備を進めている。
- 豪Woodside Energy社の2023年11月8日の投資家説明会によると、同社は過去5年間、LNGマーケティング戦略を、プロジェクト特定型契約方式から、ポートフォリオ契約方式に移しているという。
北米地域
- 米DOE化石燃料・炭素管理局(FECM)は、2023年11月17日、月刊LNG報告・季刊天然ガス輸出入報告に代わる月刊天然ガス輸出入報告を発刊した。LNG、圧縮天然ガス(CNG)、全輸送形態など天然ガスの全形態で比較・傾向の分析を含む。 Excel の2ファイルで集計・取引レベルのデータを含む。
- Cheniere Energy社は、2023年11月2日、中国Foran Energy社との間で、LNG SPAを締結したことを発表した。Foranは、Cheniere Marketing 社からLNG年間90万トン、20年間、FOB条件、購入価格はヘンリーハブ価格連動プラス固定液化手数料条件で購入することに合意した。ルイジアナ州 Sabine Pass液化拡張プロジェクト(SPL拡張プロジェクト)第2系列(トレイン8)商業稼働開始とともに受渡を開始し、同系列のFID等が条件となる。
- Cheniere Energy社は、2023年11月2日、Corpus Christi Stage 3プロジェクトが引き続き計画より先行して進展しており、同第1系列からのLNG生産開始を2024年末までに見込んでいる、と述べた。
- Sempra Infrastructure社は、2023年11月3日、Cameron 第2段階エンジニアリング作業の精緻化についてBechtel社と作業を進めており、同年末までに作業完了を見込んでいると述べた。さらに、2024年にFIDを行う目標である、と述べた。
- 米連邦控訴審第5巡回法廷は、2023年11月14日、TCEQ(テキサス州環境品質委員会)によるSempra Infrastructure社のPort Arthur LNGに対する大気汚染管理対策許可を無効との判断を下した。
- Freeport LNGは、州環境規制機関への提出文書によると、2023年11月13日晩、同日の朝に電力供給の問題で制御、停止した3系列とも、稼働復旧したことを明らかにした。
- Venture Global LNG社は、2023年11月10日、米国・EU(欧州連合)当局者宛に、bp、Edison、Shellがこれらの当局者に提出した書簡に応じる形で書簡を送付した。 米国・EU当局者宛書簡にて同社は、前記欧州各社の書簡が「Venture Globalは、不当な利益を得るため不正行為に関与し長期契約買主との契約上のコミットメント履行を拒否しているという誤った主張を行っており」、Venture Global は、プロジェクトへの「資金調達、商業化、建設に成功した数少ない米国(そして世界の)輸出者の1つであり、「他社が実現できないところを」実現した、と述べている。
- 九州電力は、米連邦エネルギー省(DOE)向け、2023年10月25日付書簡で、 Energy Transfer社ルイジアナ州Lake Charles LNGプロジェクトについて、アジアのエネルギーセキュリティの重要性に鑑み、輸出ライセンス承認を急ぐことを求めた。九州電力は、Energy Transfer社との間でLake Charlesプロジェクトの長期LNG購入・参加可能性を約1年間話し合っている、と述べた。
- Glenfarne Energy Transition, LLC社は、2023年11月9日、テキサス州ブラウンズヴィル港湾に建設予定の同社年間400万トンのTexas LNG輸出プロジェクトが、電動モータードライバーを含む圧縮技術機器の供給先としてBaker Hughes 社を選定したと発表した。Texas LNGは、2024年プロジェクトファイナンスを完了し、速やかに建設を開始する計画である。Texas LNGからのLNG輸出開始は、2027年末か2028年初と見込まれている。
- 米Chesapeake Energy社とVitol社は、2023年10月31日、前者が後者にLNG最大年間100万トン、15年間、価格はJKM連動にて供給するHOAを発表した。今後、最適な米国液化設備を選定する。本HOAは2028年開始を目標とする。
- FERC、NERC(北米電力信頼性機関)は、2023年11月6日、ニューイングランド地方におけるEverett LNG基地の喪失の可能性と、そのことによる同地域のエネルギー供給の信頼性と安定価格での供給に対する影響について、引き続き懸念しているとする共同声明を発表した。
- カナダTC Energy社は、2023年10月30日、Coastal GasLinkが経路全670 km区間でパイプライン敷設を完了したことを発表した。ブリティッシュコロンビア州北東部と西海岸LNG Canada設備とを接続する。この作業は年末予定の機械設備完成に向け最後のステップとなる。
- New Fortress Energy(NFE)社は、2023年11月8日、メキシコのアルタミラ沖最初のFLNG生産設備の設置、ガス生産開始を行ったことを明らかにした。最初のLNG出荷と商業稼働開始は、第4四半期末までに見込んでいる。
欧州および周辺地域
- 欧州理事会(元首・首長級)と欧州議会は、2023年11月15日、エネルギー部門におけるメタン排出の追跡・削減に関する規制に関して、暫定政治的合意に達したことを発表した。特にエネルギー源の輸入に関して、理事会と議会は3段階の実施に合意した。第1段階はデータ収集、メタン排出源をグローバルに監視する手段及びスーパーエミッターへの迅速対応メカニズムの構築に焦点を置く。第2、第3段階では、2027年1月1日までに、EU向け輸出者により、公平な監視・報告・認証手段が適用され、2030年までにメタン原単位上限が適用される。各加盟国規制機関は、これら諸条件が遵守されない場合に行政的罰則を科す権限を持つこととなる。
- TotalEnergies社の2023年10月26日の説明によると、カタールQatarEnergy社との年間350万トンのSPAの27年間の期間について、North Field East、North Field Southプロジェクトの参加パートナーはいずれも自社シェアを27年間引き取ることを要請された。この27年間は権益期間と整合している。TotalEnergies社によると、両当事者の利益になるのであれば、カタールの合意の基に、仕向け変更ができるとしている。
- TotalEnergies社は、2023年10月26日、ルアーブル港Cape Ann FSRUのコミッショニングを発表した。同基地はノルウェーからのLNGを用い、最初のガスを GRTgazが操業するガスパイプライン網に送出した。TotalEnergiesは同基地年間5 bcm容量の50%を契約している。
- Deutsche ReGas社の2023年10月20日の情報によると、同社はドイツ連邦政府とギリシャ船主企業間の傭船契約における権利・義務を引き継いだ。TRANSGAS POWERは、ムクランで計画されるEnergieTerminal 'Deutsche Ostsee' 基地向けの気化船舶(FSRUs)2隻中の1隻となる。2023/2024年の冬季にTRANSGAS POWERはムクラン工業港湾の第12桟橋に繋留され、FSRUとして稼働する。それまでは外部傭船され、LNG輸送船舶として利用される。
- スペインのガスパイプライン網操業企業Enagásは、2023年11月10日、顧客向け通知の中で、自国へのLNGタンカーの引き渡しの柔軟性が、最近の悪天候の結果、タンク在庫水準が高く、減殺される可能性が高い、と述べた。
- ポーランド輸送網操業企業Gaz-Systemは、2023年11月14日、グダニスク湾で気化基地となる最初のFSRU引き渡し及び利用に関する枠組を設定する協定(タームシート)を2船主と締結したことを発表した。気化業務は2028年初開始で計画されている。商船三井(MOL)、BW LNGが選定された。GAZ-SYSTEMはこの内1社と、15年間の傭船契約を締結する計画である。Gaz-Systemは、2023年11月17日、 FSRU 2のオープンシーズン(容量利用者公募)登録者による拘束力あるオファーの提出期間が10月27日で締め切りとなったことを発表した。この過程では同プロジェクト推進に十分な水準の拘束力ある注文が得られなかった。
- 欧州議会は、2023年11月9日、EU市場をロシア産化石燃料に対して完全閉鎖することと、ロシア産LNG及びLPG輸入の完全禁止を求める決議を採択した。この決議は欧州議会議員の多数意見を示したが、法的拘束力ある禁止ではなかった。
- 米連邦財務省は、2023年11月2日、Arctic LNG 2社も含む、ロシアに対する技術制裁の新段階を発表した。三井物産は、11月3日、Arctic2社が米国制裁の対象となったことによる影響について精査の上、必要な措置を講じることを発表した。
その他地域
- QatarEnergy、中国Sinopecは、2023年11月4日、North Field South(NFS)拡張プロジェクトに関するパートナーシップ契約の締結を発表した。両社はまた、年間300万トンのLNGをNFSプロジェクトから中国のSinopec社受入基地に、27年間供給するSPAを締結した。QatarEnergyは、NFSプロジェクトの年間600万トンLNG生産容量を所有する合弁事業の5%持分をSinopecに移管する。このパートナーシップ契約は、Sinopecとの間では、North Field East(NFE)プロジェクトを所有する合弁事業の1つに同社が参入した2023年4月締結のものに続く、2件目となる。今回の長期LNG SPAは、2022年11月締結された年間400万トン、27年間供給するSPAに続くものとなる。
- アブダビADNOCは、2023年11月10日、世界で最も炭素原単位が低いLNG生産設備の1つを建設する Ruwais でのプロジェクトがFIDに向け進展している、と述べた。 同プロジェクトは、Al Ruwais工業都市に立地し、再生可能エネルギーまたは原子力電力で運転する年間480万トンLNG系列2本を備えることとなる。オール電化コンプレッサーの調達は既に進行中であるとしている。
- アブダビADNOCは、2023年11月14日、ダス島3系列のLNG設備生産容量を2028年までに現在の年間600万トン水準から、690万トン水準に拡張する計画であることを明らかにした。このLNG 2.0プロジェクトには、GHG排出削減のためLNG系列電化、デボトルネッキング、エタン抽出・輸出が含まれる。
- Shell、三菱商事は2023年10月23 - 24日、オマーンのOman LNG LLC事業の2024年以降延長に関する修正株主間協定を締結したことを発表した。Oman LNGはまた、2034年までのガス供給確保のための諸協定を締結した。TotalEnergiesは、11月2日、Oman LNGとのパートナーシップ延長のため修正契約を締結したことを発表した。TotalEnergiesはOman LNG持分を、2024年を超えて10年間、Qalhat LNGについて5年間延長する。
- Kosmos Energy社は、2023年11月6日、セネガル・モーリタニア沖Tortue LNGプロジェクトのガス生産開始は、2024年第2四半期にずれ込む可能性がある、と述べた。同プロジェクト浮体生産貯蔵・積み出し(FPSO)船舶で生産されたガスは、Gimi FLNG設備に送られLNG化される。Gimiは現在シンガポールにある。KosmosはFLNG船舶が第4四半期末に出航し、2024年初に現場意到着することとなる見通し、と述べた。
- イタリアENI社は、2023年10月21日、Tango FLNG、Excalibur FSUが、ドバイからコンゴ沖に向け出港したことを発表した。Congo LNG プロジェクト第1段階は、2023年12月稼働開始予定である。Tango FLNGは、ガス年間1 bcmの液化容量を持ち、Excalibur FSUとともに3 km沖での繋留を計画されている。Congo LNGプロジェクトは、Marine XIIガス資源と既存生産諸設備を活用した新たな段階的手法で、最盛時液化容量年間4.5 bcmを達成し、定常的フレアリングをゼロにすると同社は述べている。容量年間3.5 bcmの2隻目のFLNG船舶は建造中で、2025年生産開始予定としている。
- New Fortress Energy Inc. (NFE)は、2023年11月6日、FSRU Energos WinterをブラジルPetrobrasから、2023年12月開始で傭船する契約を締結したことを発表した。FSRUは、直ちにサンタカタリーナ州でのNFE新規LNG輸入基地Terminal Gas Sul (TGS)に配置される。
(注: bcm: 10億m3、CCS: 炭素回収・貯蔵、DES: 持ち届け ex-ship、DOE: 米連邦エネルギー省、EPC: エンジニアリング・調達・建設、EPCI: エンジニアリング・調達・建設・設置、 EPCm: エンジニアリング・調達・建設管理、FEED: 基本設計、FERC: 米連邦エネルギー規制委員会、FID: 最終投資決定、FLNG: 浮体液化設備、FOB: 本船渡し、FSRU: 浮体貯蔵・気化設備、FSU: 浮体貯蔵化設備、HOA: 基本合意、MOU: 覚書、SPA: LNG売買契約)
作成協力 一般財団法人日本エネルギー経済研究所
添付ファイル
- 日本のLNG在庫量(28.1KB) (2023/11/24更新)
- 米国天然ガス地下貯蔵量(57.8KB) (2023/11/24更新)
- 欧州天然ガス地下貯蔵量(409.3KB) (2023/11/24更新)
- 欧州LNG在庫量(241.9KB) (2023/11/24更新)