2024年3月

天然ガス・LNG価格動向

直近の値動き

アジア

  • 北東アジアのアセスメントされたスポットLNG価格JKMは、短期的な需要を満たすための買いが入り100万Btu当たり9米ドル台に上昇したが、需要の低下に伴い8米ドル台に戻した。その後米輸出施設トラブルや豪サイクロン発生などの報を受け、JKMは再び上昇し3月18日には10米ドルに近づいた。JKMは価格上昇による市場の購買意欲の減退に伴い再び下げたが、気温低下を受け、日本のバイヤーの買いが入り3月25日に9米ドル後半まで上昇した。翌日、JKMは需要先細りにより下落し8ドル後半まで下げた。
  • JOGMECは2月の日本着スポットLNG月次価格(速報)について、同月以降に契約がなされて日本に入着するスポットLNG取引の平均価格(契約ベース)を非公表とした。また、同月中に日本に入着したスポットLNG取引の平均価格(入着ベース)を非公表とした。
  • 財務省貿易統計速報に基づくと、2024年2月の日本平均LNG輸入価格は100 万Btu当たり12.91米ドル、円建てでは1トン当たり99,135円となった。2月着のスポット価格が大幅に低下した影響で前月比0.7米ドル程の下落となった。供給地域別では、米国産は9.81米ドル、ASEAN地域産が13.16米ドル、中東産が12.36米ドル、ロシア産が12.80米ドルであった。また、2月の北東アジア各国の平均輸入価格は、中国11.32米ドル、韓国12.30米ドル、台湾10.09米ドルであった(なお、中国の1月分データは11.77米ドルであった)。全日本平均原油輸入CIF価格(JCC: Japan crude cocktail)は2024年2月には1バレル当たり83.58米ドルとなった。円建てでは1キロリットル当たり77,882円となった。
  • 2月の日本のLNG輸入量は、603万トンと前年同月比で6%減少した。2月の輸入量としては2009年以来の低水準となった。2月の中国のLNG輸入量は595万トンと前年同月比で19%増加、韓国は426万トンと前年同月比で16%減少、台湾は137万トンと前年同月比8%減少となった(中国の1月分データは725万トンであった)。

米国

  • 米国スポットガス価格HHは、米大手シェールガス企業の生産削減発表を受け1.9米ドルに上昇したが、ファンダメンタルズは弱く、その後1.7米ドルまで下落した。HHはLNG輸出施設へのフィードガス供給や在庫の状況に応じて値動きを示したが、3月26日時点で1.6米ドルとなった。
  • 米国エネルギー情報局(EIA)は、3月12日発表の短期エネルギー見通しにおいて、冬の暖房シーズンが終了し、ガス在庫が5年平均を37%上回る中、2024年Q2のHHスポット価格平均は2米ドルを下回る予想している。また、2月のHH価格平均を1.7米ドルとし、この冬の家庭用および商業用の天然ガス消費量の減少が部分的に作用したと述べている。

欧州

  • 欧州ガススポット価格TTFは、価格低下により地下ガス貯蔵注入への関心が高まったことなどから8.7米ドルまで上昇したが、ファンダメンタルズは弱く8米ドルを割る水準まで戻した。しかし米輸出施設の不調が報じられたことなどから上昇し3月19日に9.2米ドルとなった。TTFは堅調な在庫水準と低需要から再び下げたが、3月25日、ロシアがウクライナ地下ガス貯蔵施設を攻撃したことが報じられると上昇し、9.0米ドルとなった。翌日、貯蔵施設の補修と代替供給の実施が発表されるとリスクプレミアムは緩和され、TTFは8.8米ドルまで下げた。

天然ガス・LNG価格推移(直近2年)

中長期の値動き

  • JKMは、2020年1月以降、供給拡大と需要増加ペースの失速により下落基調となり、2020年4月末には史上最安値の1.83米ドルを記録した。5月以降2米ドル台が続いたが、8月に入り複数の生産設備での供給障害により上昇基調に転じ、12月には10米ドル台を超え、2021年1月には寒波の影響で需要が急増したことにより、32.5米ドルの史上最高値を付けた。その後、価格は急落して2月下旬にかけて5米ドル台まで下落、3月に入り上昇基調に転じて以降は、高値で推移する欧州ガス市場にも牽引され、10月に一時56米ドルまで上昇し、11月は30米ドル半ば、12月には40米ドルに達した。2022年1月と2月は20米ドル台で推移し、3月にはロシア産パイプラインガス供給中断の懸念に伴って一時急騰し80米ドルを上回ったが、その後30米ドル台で推移した。4月以降取引は低調であり、JKMは36米ドルから22米ドルまで減少し、5月から6月前半にかけて20米ドル前半で推移した。しかし6月後半以降天然ガス・LNGの供給不安の高まりを背景に40米ドルに到達、7月も同様の水準で推移し、8月には概ね50米ドルで推移しつつ、一時、60米ドル、70米ドルを超える状況となった。9月、JKMはTTFの下落に伴い下落傾向を示し30米ドル後半まで下落し、10月~11月にかけて概ね20米ドル後半で推移した。12月には市場は年末商戦で活況となり30米ドル台で推移した。2023年1月、取引が再開するも低調であり、20米ドル付近から下落基調にあり、5月は9米ドル台まで落ち込んだ。2023年6月、JKMは欧州ガス価格の影響等を受け12米ドル付近で推移したが、7月には高在庫と低需要を背景に若干軟化し11米ドル付近で推移した。8月には豪州の主要プロジェクトでのストライキ発生の可能性が生じ、価格はやや上昇基調に入り、9月にストライキが実施された後は15米ドルまで上昇した。10月には中東での紛争の勃発等を受け17米ドルまで上昇したが、11月には地政学的リスクがいくらか緩和され概ね14米ドルで推移した。12月には豊富な供給と軟調な需要によりJKMは11米ドルまで下げ、年が明けた1月においても傾向は変わらず概ね9米ドルで推移した。2月に入り北東アジア地域での旧正月後には下落基調は更に拍車がかかり8米ドルを割ったが、3月には短期的な需要が発生したことなどから一時10米ドルに近づいた。
  • 日本平均LNG輸入価格は、2020年3月以降の原油価格急落の影響により、8月から10月にかけて2005年1月以来の低水準となる5米ドル台まで下落、その後原油価格上昇に伴い、12月には7米ドル台に上昇した。堅調な原油価格の値動きに応じて、2021年2月には9米ドル半ばまで上昇後、3月は7米ドル半ばまで下落した。その後は、2022年6月までの日本平均原油価格の上昇に伴って、続く18カ月間は概ね一貫して上昇し、2022年9月には過去最高の22.73米ドルを記録した。その後、原油価格の2022年7月以降の下落傾向も一因として、2023年4月以降は11から13米ドル台で推移している。

天然ガス・LNG価格推移(直近10年)

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(出典)
米国HH(Henry Hub)価格: NYMEX Futures and Options, CME Group
蘭TTF(Title Transfer Facility)価格:ICE Endex, Intercontinental Exchange
JKM: LNG Japan/Korea Marker© 2024 by S&P Global Platts, a division of S&P Global Inc.
JOGMECスポットLNG価格:JOGMEC「日本着スポットLNG月次価格」、2021年3月までは経済産業省「スポットLNG価格調査」を出典とする
日本平均LNG輸入価格: 財務省貿易統計をもとに作成
EUA(EU ETS): ICE Endex, Intercontinental Exchange

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天然ガス・LNG在庫動向

日本

  • 2023年11月末の国内LNG在庫量は546万トンで、前月比2.0%、10.7万トンの増加、前年同月比では10.1%減少し、過去5年平均値を42.1万トン上回った。
  • 12月末のガス事業用LNG在庫量は264万トンで、前月比6.9%減、前年同月比では2.2%減となった。12月の都市ガス用LNG消費量は前年同月比1.9%減の308万トン、都市ガス用LNG受入量は前年同月比2.3%減の291万トンだった。
  • 11月末の発電燃料用LNG在庫量は263万トンで前月比1.1%減、前年同月比19.4%の減少となった。11月の発電燃料用LNG消費量は、前年同月比で1.6%減の296万トン、発電燃料用LNG受入量は、前年同月比で6.3%減の340万トンであった。
  • 2024年3月21日に経済産業省が発表した「発電用LNGの在庫状況」によると、大手電力事業者の3月17日時点のLNG在庫は160万トンであった。2023年3月末比では73万トン下回り、過去5年間の3月末平均を54万トン下回っている。

国内LNG月末在庫量(直近2年)

国内LNG月末在庫(直近10年)

(出典)
経済産業省「ガス事業主生産動態統計」及び「電力調査統計・火力発電燃料実績」をもとに作成したもので、これら月末在庫を合算した値を国内在庫としてみなしたもの。なお、利用可能なデータは2008年1月以降のものであるため、過去5年平均は2013年1月分から計算している。


米国

  • 2024年3月15日の米国天然ガス地下貯蔵有効稼働ガス在庫(ワーキングガス)は、米国エネルギー情報局(EIA)のデータによると、2.33Tcfで前月比5.6%減となった。在庫量は2023年の同時期と比較すると22.7%高く、過去5年平均値を682.4Bcf上回っている。

米国天然ガス地下貯蔵量(直近2年)

米国天然ガス地下貯蔵量(直近10年)

(出典)
米国エネルギー情報局(U.S. Energy Information Administration, EIA)のデータをもとに作成


欧州

  • 2024年3月24日現在のAggregated Gas Storage Inventory(AGSI+)加盟各社中、EU加盟国各社が有する欧州天然ガス地下貯蔵在庫は675.4TWh (LNG換算4,468万トン相当)であった。これは前年同期より7.4%、46.3TWh (LNG換算306万トン相当)上回るものだった。貯蔵容量に対する充填率は59.2%であり、前年同期の55.8%を上回り、過去5年間平均値の41.6%を上回った。貯蔵容量の大きなドイツ、イタリア、オランダの充填率はそれぞれ65.8%、57.8%、53.9%であった。

欧州天然ガス地下貯蔵量(直近2年)

欧州天然ガス地下貯蔵量(直近10年)

(出典)
Aggregated Gas Storage Inventory(AGSI), Gas Infrastructure Europeのデータをもとに作成。なお、利用可能なデータは2011年1月以降のものであるため、過去5年平均は2016年1月分から計算している。

 

  • 2024年3月24日現在のAggregated LNG Storage Inventory(ALSI)加盟各社が有する欧州LNG在庫量は480.8万m3で、前月比4.0%増加、前年同日比17.0%増加、過去5年平均値を27.2%上回っている。貯蔵容量に対する充填率は55.9%であり、前年同期の53.0%を上回っている。

欧州LNG在庫量(直近2年)

欧州LNG在庫量(直近10年)

(出典)
Aggregated LNG Storage Inventory(ALSI), Gas Infrastructure Europeのデータをもとに作成。なお、利用可能なデータは2012年1月以降のものであるため、グラフ中の過去10年平均及び過去10年平均幅の値については、5年未満の値が含まれる。


天然ガス・LNGプロジェクト動向

ハイライト

  • この1ヶ月間、世界中のLNG産業の輸出側と輸入側の両方で注目すべき開発活動が見られた。アブダビのADNOC社は、LNG販売契約の進展と並行して、計画されているRuwais LNG生産プロジェクトを早期エンジニアリング・建設準備活動へと進めた。Cheniere Energy社は、FERCにSabine Pass Stage 5拡張プロジェクトの建設許可を申請した。Sempra Infrastructure社は、Port Arthur LNGプロジェクトの起工式を挙行した。LNG Canada社は、第1段階の施設が完成に近づいていると述べた。また、世界各国のLNG輸入事業各社は、調達やインフラストラクチャ開発活動を活発化させている。

 

アジア・オセアニア地域

  • 商船三井(MOL)は、2024年3月5日、東京ガス子会社の東京エルエヌジータンカー株式会社(TLT)との間で、新造LNG船1隻の長期傭船契約を締結したことを発表した。本件は両社間で8隻目の傭船契約となる。TLTが長期傭船契約を締結するLNG船は11隻目となる。本船は韓国Hanwha Ocean Co., Ltd.のコジェ造船所にて建造され、2026年に竣工予定とされている。
  • フィリピンAboitiz Power社(AP)は、2024年3月4日、San Miguel Global Power Holdings社(SMGP)およびMeralco PowerGen社(Mgen)との間で、バタンガスでの統合型LNG設備開発に取り組むパートナーシップを締結したことを発表した。2,500 MWの発電容量を加えることが期待される。AP、MGenは、SMGPのガス火力発電設備2件、1,278 MWのIlijan発電設備および、2024年末までに稼働開始見込みの新規1,320 MWコンバインドサイクル発電設備に投資する。SMGPはAP・MGenと共同でAG&P傘下のLinseed Field社が所有するLNG気化基地の100%近くに投資する。
  • TotalEnergiesは、2024年2月29日、シンガポールSembcorp Industries子会社Sembcorp Fuels社との間で、2027年から16年間、年間最大80万トンの自社グローバルポートフォリオからの調達によるLNGのSPAを締結したことを発表した。両社間の2029年までの既存SPAに上乗せとなる。
  • ベトナムPetrovietnam Gas(PV Gas)社の2024月1月の情報によると、2024年第2四半期からThị Vải LNG基地より同国南東部工業用需要家向けにLNG気化ガス供給を開始できる見込みである。PV Gasは同基地容量を2026年までに年間300万トンに拡張する第2段階を実施中である。また、同社は南中部地域ビントゥアン省でSơn Mỹ発電設備に燃料供給するべく、Sơn Mỹ LNG基地も開発中である。北部・中部地域では、LNGハブ2件の立地点を検討中としている。またスポットLNGカーゴを求めており、その最初の1件は4月の引渡を希望している。PV GASは、3月6日、同15日よりタンクトラックでのLNGビジネスを開始することを発表した。
  • Nebula Energy子会社AG&P LNGは、2024年3月7日、ベトナム南部ブンタウ省 Cái Mép LNG基地の49%を買い取ったことを発表した。同基地はHai Linh社が開発した。同基地は、メコン川デルタに立地し、陸上型貯蔵タンク3基合計容量220,000 m3、LNGブレイクバルク機能を有し、また、ガス火力発電容量3.9 GWの同国最大の発電設備Phú Mỹ工業地域とパイプライン接続がある。同基地の稼働開始は2024年第3四半期に見込まれている。
  • インドPetronet LNG社は、グジャラート州Dahej基地第3桟橋海洋設備、上部構造設備のEPC請負者招請のため入札2件を開始した。応札期限は、海洋設備に関しては4月16日、上部構造に関しては同24日であると述べた。
  • インドGAIL(India)社、Oil and Natural Gas社(ONGC)、Shell Energy India(SEI)社は、2024年3月7日、HaziraのShell Energy基地におけるエタンその他炭化水素の輸入、配送用のインフラストラクチャ開発に関する3社間MoUを締結した。
  • 豪Santos社は、2024年2月26日、サウスオーストラリア州での2.20億米ドル Moomba CCSプロジェクトの自社分資金調達を確保したことを発表した。Moomba CCSプロジェクト第1段階は80%完成しており、ライフサイクルでの収支ラインとなる貯蔵コスト、トン当たり24米ドルを目標とする。CO2年間170万トンの貯蔵容量を持つこととなる。
  • 豪Woodside Energy社は、2024年2月27日に気候移行行動計画(CTAP)を公表した。WoodsideはCTAPには投資家要望に応じて同社の気候変動・エネルギー移行に関する追加情報を織り込んだと述べた。スコープ1 ・ 2ネットエクイティベースでの排出量を2050年までにネットゼロとする経路の追加詳細、CO2換算年間500万トン相当の削減対策へのFIDsを行う新たなスコープ3目標導入を含む。これは2030年までに新エネルギー・低カーボンサービスに50億米ドルを投資するこれまでの目標に上乗せとなる。
  • 豪Woodside Energy社は、2024年2月27日、自社のスコープ1、2排出の2030年までの30%削減目標について、最も手近な成果につながる(low-hanging fruit)対象はPluto LNG設備に太陽光発電、低排出電源を織り込むことであると述べた。同社は過去10年間にポートフォリオマーケティングに移行しており、特定地点間マーケティングは最早行っていないという。東京ガスによるPluto LNGにおける同社5%持分の売却発表に関して、Woodsideは先買権を留保すると述べている。PlutoはWoodsideにとり最優良資産であり、仔細に検討したいとしている。
  • 豪Woodside Energy社は、2024年2月28日、韓国ガス公社(KOGAS)との間に、同国向けLNG供給、DES条件で2026年から10.5年間、年間50万トンのSPAを発表した。このLNGは、2026年LNGカーゴ出荷開始を目標とするScarborough Energyプロジェクトを含むWoodsideグローバルポートフォリオの未コミット分より手当される。
  • 東京ガスは、2024年3月19日、既に発表済みの豪州プロジェクト保有会社5社の株式譲渡に関して、実行予定日を未定としたことを発表した。実行予定日は今後の豪州政府や関係者の承認状況、その他契約上の条件によること、それらの状況次第で譲渡が実行されない可能性もあると述べた。
  • CIMICグループ子会社UGLは、2024年3月5日、Santos社から契約を受注したことを発表した。UGLは、Santos社のDarwin LNG設備のBarossaガス田からのバックフィル供給に備えるため延命建設工事を担当する。

 

北米地域

  • 米LNG業界団体USLNG Association (LNG Allies)は、全米石油機関(API)、他5団体とともに、2024年2月26日、今後のLNG輸出承認を一時停止する1月26日の決定を再考することをDOEに要請した。テキサス州ほか15州が、3月21日、このLNG輸出許可申請一時停止措置に関して反対する訴訟を提起した。
  • 米議会上院エネルギー・天然資源委員会ジョン・バロッソ上院議員(共和党-ワイオミング州)、下院エネルギー・商務委員会委員長キャシー・マクモリス・ロジャース下院議員(共和党-ワシントン州)は、2024年3月21日、エネルギーセキュリティの中核ミッションに回帰することを求めるIEA(国際エネルギー機関)向け書簡を公表した。両議員は、IEAの見通しを根拠に「米連邦エネルギー省デヴィッド・ターク次官が、米LNG輸出許可手続きを『一時停止』するバイデン大統領決定を正当化している」と指摘。同書簡は、「LNG輸出許可承認を停止する大統領決定は、今後数十年間堅調に天然ガス需要を増加する開発途上諸国向け米国産LNGの将来の供給に破壊的な帰結をもたらす可能性が高」く、また、「日本エネルギー経済研究所、BP、ExxonMobil、OPEC等、しっかりしたエネルギーモデルを行う機関は、そのレファレンスケースにて世界の天然ガス需要が2050年まで増加し続けることを示している」と述べている。
  • Sabine Pass Liquefaction社およびグループ数社は、2024年2月29日、Sabine Pass Stage 5拡張プロジェクトの立地・建設・操業許可をFERCに申請した。同拡張プロジェクトは、各年間843万トンの最大生産容量を持つ2液化系列、最大再液化容量年間70万トンのボイルオフガス再液化設備1基、フルコンテインメント地上式220,000 m3 LNG貯蔵タンク2基で構成される。この新規液化系列(第7、8系列)、新規BOG再液化設備により、Sabine Pass LNG設備の全LNG生産容量は、最大年間1,776万トン増加することとなる。
  • Cheniere社の2024年3月8日のFERC提出書類によると、Corpus Christi LNG Stage 3 拡張は53%近く完了し、2024年内の生産開始を目指している。同拡張プロジェクトは液化容量年間149万トンの中規模液化設備7系列を建設する。
  • 東京ガスは、2024年3月19日、東京ガスアメリカ社の子会社として、米国における e-methane事業開発を担うTokyo Gas GX1, LLC (TGX1)を2024年4月に米国に設立することを発表した。
  • 国際企業8社が、2024年3月19日、e-methaneの普及拡大を目指す国際的アライアンスe-NG Coalitionを設立することに合意したことを発表した。参加企業はEngie、三菱商事、大阪ガス、Sempra Infrastructure、TES、東京ガス、東邦ガス、TotalEnergiesである。
  • 東京ガスは、2024年3月22日、三井物産との間で海外産バイオメタンに関する取引について合意したことを発表した。本合意に基づき、米国のごみ埋立地から発生するバイオガス由来のバイオメタン約4万m3(気体換算。LNG換算約30トン相当)を天然ガスの一部とみなして液化(LNG化)し、3月19日に東京ガス扇島LNG基地にて国内初となる受渡が行われた。
  • 米Sempra社は、2024年2月27日の2023年業績報告会によると、「両岸LNG輸出戦略」を有する。ECA LNG第1段階は北米太平洋岸最初期のLNGプロジェクトのひとつを市場に持ち込むべく、2025年夏COD(商業運転開始)に近付いており、2026年には全面稼働を見込み、2027年Port Arthur第1系列、2028年同第2系列が続く。Cameron第2段階FIDを最短2025年前半と見込んでいる。同社は2024年3月18日、Port Arthur LNGプロジェクトの起工式を実施した。
  • 米Tellurian社は、2024年3月5日、Driftwood LNGプロジェクト第1段階の建設を2024年後半に開始するために、Bechtel社に対して建設開始公式推進通知を発すると述べた。同社は2028年までの最初のLNGを生産することを目標としている。この年間2,760万トンプロジェクトについてはFERCの延長承認がなされており、DOEはDriftwoodの非FTA許可が輸出承認判断の「一時停止」の影響を受けないことを確認したとしている。
  • 米Tellurian社は、2024年3月18日、SEC(證券取引委員会)8-K提出文書にて、 Lazard Frères社への委託事項に関して、既に発表していた上流天然ガス資産の売却可能性検討のみならず、融資・出資による資金調達方法、Driftwoodあるいは Tellurianにおける出資分の売却、あるいは会社自体の売却、コマーシャル上のパートナー確保の支援、取締役会に対する戦略指針の提供等、広範囲の助言を含むように拡大したことを明らかにした。
  • 米Venture Global LNG社は、2024年3月18日、LNG動力による新規模大型船団の取得・建造を発表した。この船団は韓国で建造中の9隻から成り、2024年に引渡開始予定である。6隻はカーゴ容量174,000 m3、3隻は200,000 m3となる。
  • 米Venture Global LNG社は、2024年3月15日、CP2がFERC議題に含まれていないことに失望を表明した。同社はFERCがCP2について最終環境影響評価 (FEIS)を発行して8ヶ月が経過しており、同委員会審査待ちで最長級になっていると指摘した。
  • Shell、Edisonその他欧州企業が、2024年3月8日、Venture Global Calcasieu Pass社が2月15日に申請したLNG許可延長申請を却下することをFERCに要請した。FERCは、3月13日、Venture Global Calcasieu Pass社に対して、同社が守秘扱いで提出した文書に関する情報を5日間以内で提供することを要請した。
  • Glenfarne Energy Transition社子会社Texas LNG Brownsville社は、2024年3月14日、プロジェクトファイナンシング実施段階に向け、主要なプロジェクトファイナンス銀行より十分な関心表明を受けたことを発表した。Texas LNG社はまた、3月18日、Gunvor Groupとの間にLNG年間50万トン、20年間のLNG HOAを締結したことを発表した。今回の取引は1月11日に発表したEQT社とのLNG液化加工契約に続くものである。また Baker Hughes(2023年11月)、ABB(2023年12月)、Gulf LNG Tugs of Texas(2024年2月)とのパートナーシップに続くものとなる。
  • Delfin LNG社は、2024年3月1日、ルイジアナ州キャメロン郡沖DelfinのFLNGプロジェクトからFTA、非FTA諸国向けにLNG輸出を開始する期限を、当初の2024年6月1日から5年間延長し、2029年6月1日までとする条件付延長申請をDOEに提出した。Delfin LNGは、非FTA輸出承認をDOEから受けている唯一のFLNGプロジェクトであり、連邦海事局(MARAD)より大水深港湾法(DWPA)に基づく条件付承認・肯定評価(ROD)を受けている唯一のLNG輸出プロジェクトである。Delfin LNG は、FIDを行う準備がほぼ整ったと述べている。
  • Gulf LNG Liquefaction社(GLLC)およびGulf LNG Energy社(GLE)は、2024年2月22日、ミシシッピ州ジャクソン郡パスカグーラ近郊の液化プロジェクトの完了期限を当初の2024年7月16日から2029年7月16日まで5年間延長することをFERCに申請した。既存Gulf LNG基地は既開発の設備で、2011年10月に業務を開始した。Gulf LNG基地は、海洋桟橋1本、フルコンテインメントLNG貯蔵タンク2基、気化設備、防潮壁からなる。計画されている液化設備は既存Gulf LNG基地隣接で設置される。GLLCは早ければ2025年のFIDを見込んでいる。
  • Vitol社は、2024年2月22日、EOG Resources社との天然ガスSPAを発表した。EOGは、2027年から10年間、天然ガス日量180,000(100万Btu)(LNG換算年間125万トン相当)をVitolに供給する。この内日量140,000(100万Btu)は、購入価格をブレント原油連動、残り数量はブレントまたは米メキシコ湾岸ガス指標連動とする。
  • EQT社は、2024年3月4日、現在の暖冬と貯蔵在庫水準上昇による低天然ガス価格環境に対応して、2月末から総生産量を日量1Bcf削減する決定を行ったことを発表した。同社は3月末までこの削減を維持する見込みでその後市場環境を再評価する。第1四半期中の純生産量に対する総削減量は30 - 40 bcfと予想される。
  • LNG Canadaは、2024年3月7日、第1段階設備が完成に近付いていると述べた。建設作業がほぼ完成しており、コミッショニング・スタートアップへの作業がまもなく開始する。LNG Canadaは2025年半ばまでに商業運転開始を見込んでいる。LNG Canadaは、世界で操業する大規模LNG輸出設備の中で、最低のカーボン原単位のプロジェクトを設計したとしている。排出量は世界最高水準の諸設備よりも35%、世界平均より60%低いとしている。LNG Canadaは第2段階拡張の検討を続けている。
  • New Fortress Energy(NFE)社は、2024年2月29日、メキシコ・アルタミラ沖自社初のFast LNG設備より、3月にLNG生産開始、4月に初カーゴ出荷を見込んでいると述べた。発表によると、同社はアルタミラ陸上に位置する2件目のFLNGプロジェクトの資金調達コミットメントを確保し、2026年第1四半期に建設を完了する見込みである。

 

欧州および周辺地域

  • 欧州委員会は、2024年2月28日、EUエネルギープラットフォームにおけるガス購入新規中期入札第1回が前日夜に締切となり、97.4bcm分のオファーを集めたことを発表した。これに先立ち、AggregateEUメカニズムを通じて、19社から34bcm分のガス需要を集約していた。供給者と消費者はAggregateEUプラットフォームを通じてマッチされており、相対契約交渉に入ることができる。この中期入札手続では、買主は2024年4月から2029年10月まで最長5年間、複数の6ヶ月単位での需要を提出することが認められた。2023年末、欧州議会と欧州理事会は水素・脱炭素ガスパッケージの暫定政治合意に達し、その中で、共同ガス購入は恒久的な仕組みになることとされている。
  • Macquarie Capital社傘下のWaveCrest Energy社は、2024年3月17日、英国でのTeesside Flexible Regas Port計画について、第3四半期に計画する容量競売に先立ち、市場要望調査手続の開始を発表した。Teesside Flexible Regas Portは天然ガス最大日量248.5 GWhを引き渡す見込みである。同プロジェクトは、陸上緩衝用貯蔵設備とLNG気化設備で構成され、LNG輸送船舶を繋留・荷揚げする専用桟橋に接続する。2026年稼働開始を計画する。市場要望調査手続は3月18日に開始し4月26日に終了する。
  • オランダGate terminal社は、2024年3月11日、新規桟橋(jetty 4)構想への小規模船舶への積込業務に関する関心表明非公式募集を通じて市場の需要を探っていることを発表した。参加者は4月12日までに関心を提出することを求められている。
  • ドイツDeutsche ReGas社は、2024年2月24日、Mukranでの"Deutsche Ostsee"基地が試運転を開始したことを発表した。同日朝、FSRU ENERGOS POWERが同港に到着した。ENERGOS POWERは同基地用に計画されている2隻の気化船舶の一方である。2024年春、他方の NEPTUNEがLubmin港を離れ、調整後に夏、Mukran工業港で操業開始する。Deutsche ReGas社は、Lubminで基地を運営している。ドイツ初の、現時点では唯一の民間資金による浮体LNG基地である。
  • ドイツDeutsche Energy Terminal社は、2024年3月14日、FSRU "Energos Force" のStade-Bützfleth工業港到着を発表した。数週間の試運転後、年間5 bcmを同国のガス網に送出することとなる。DET社の4件の浮体LNG基地中、3件目として完成が近付いている。
  • ドイツHanseatic Energy Hub社(HEH)は、2024年3月21日、ドイツ初の液化ガス陸上型基地建設へのFIDを発表した。2027年稼働開始が計画されている。HEHは当初、LNG、SNG(合成天然ガス)および液化バイオメタンの輸入基地として、その後カーボンニュートラルな水素ベース燃料のキャリアとしてのアンモニアの輸入基地として機能する予定である。

 

その他地域

  • フランスGTT社は、2024年2月26日、同社が2023年においてLNG輸送船舶73隻、FLNG生産設備1隻のタンク設計を受注したことを発表した。GTTは、同日、2024年初に韓国造船業サムスン重工業(SHI)より、ある有力LNG企業を代理して、新規LNG輸送船舶15隻のタンク設計を受注したことを発表した。これら船舶の容量は174,000 m3となる。タンクはGTTが開発したMark III Flexメンブレンコンテインメント方式を採用する。これら船舶の引渡は2026年第4四半期から2028年第4四半期を予定している。
  • アブダビADNOCは、2024年3月12日、自社アブダビAl Ruwais工業地域での低炭素LNGプロジェクトの初期EPC活動に関して、Technip Energiesを中心とする 日揮・National Petroleum Construction Company PJSCを含む合弁事業体に、限定推進通知(LNTP)を発したことを発表した。発表によると、2024年にFIDを予定しているRuwais LNGプロジェクトは、MENA(中東・北アフリカ)地域で初めてクリーン電力で運転し、世界で最もカーボン原単位が低いLNG生産設備のひとつとなる。同プロジェクトは年間480万トンのLNG液化系列2本で構成されることとなる。
  • ADNOC社は、2024年3月18日、ドイツSEFE Securing Energy for Europe社子会社SEFE Marketing & Trading Singapore社との間のLNG年間100万トンに関する15年間のHOAを発表した。LNGは主にRuwais LNGプロジェクトから調達される。本件は2023年12月締結された中国ENN社との15年HOAに続く2件目の長期LNG供給である。引渡は稼働開始後の2028年開始を見込んでいる。
  • Saipem社は、2024年3月14日、インドネシアの自社Karimun組立ヤードからカタールQatarEnergy LNGのNorth Field生産持続沖合・パイプラインプロジェクト向けに最初の上部構造3件(1本が井戸元生産用、2本がライザープラットフォーム)が積み込まれたことを明らかにした。
  • 日立造船株式会社は、2024年3月12日、オマーン国Oman LNG社と、MOU「メタネーションの事業化に向けた協力覚書」を締結したことを発表した。Oman LNGが保有するLNG設備にメタネーション装置を実装しCO2の資源化を目指す。
  • Eniは、2024年2月27日、コンゴ共和国からの最初のLNG出荷祝賀を発表した。
  • Höegh LNG社は、2024年2月28日、FSRU Höegh Giantが第1四半期末に向けてブラジル・サントス州にてコミッショニングを開始する見込みであると述べた。
  • New Fortress Energy(NFE)社は、2024年2月29日、ブラジル・パラ州に位置するBarcarena LNG基地がEnergos Celsius FSRUの現場到着により稼働開始となったことを発表した。同基地はアマゾン河口に立地し、パラ州および同国北部における唯一の天然ガス供給源となる。
  • New Fortress Energy(NFE)社は、2024年3月1日、ブラジル・サンタカタリーナ州のTerminal Gas Sul (TGS) LNG基地がEnergos Winter FSRU到着により稼働を開始したことを発表した。
  • アルゼンチンYPF社は、2024年3月7日、2027年までに既存FLNGを活用してLNG輸出を開始し、2032年以降は輸出を年間2,500~3,000万トンに拡大すると述べた。
  • スリナムStaatsolie Maatschappij Suriname N.V.社は、2024年3月4日、PETRONASおよびExxonMobil との間で、2020年に同国沖合第52鉱区Sloanea-1探査井で発見されたガスについて、さらに探査を進めるための基本合意(LoA)を締結したことを発表した。PETRONASが2020年に同鉱区でガス資源を発見した。本LoAは、第52鉱区で商業的にガス田を開発する事業化可能性をさらに調査・向上するための合意事項、原則および条件を定めるもので、生産開始から10年間の免税期間の保証を含んでいる。商業開発の可能性にはFLNGプロジェクトによる開発も含まれる。

 

(注: bcm: 10億m3、CCS: 炭素回収・貯蔵、DES: 持ち届け ex-ship、DOE: 米連邦エネルギー省、EPC: エンジニアリング・調達・建設、EPCI: エンジニアリング・調達・建設・設置、 EPCm: エンジニアリング・調達・建設管理、FEED: 基本設計、FERC: 米連邦エネルギー規制委員会、FID: 最終投資決定、FLNG: 浮体液化設備、FOB: 本船渡し、FSRU: 浮体貯蔵・気化設備、FSU: 浮体貯蔵化設備、HOA: 基本合意、MOU: 覚書、SPA: LNG売買契約)

 

 

作成協力 一般財団法人日本エネルギー経済研究所

 

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