2024年4月
天然ガス・LNG価格動向
直近の値動き
アジア
- 北東アジアのアセスメントされたスポットLNG価格JKMは、11日未明のロシアによるウクライナの地下ガス貯蔵庫への攻撃によって地政学的緊張が高まったことを受け10米ドル半ばまで上昇。その後中東情勢激化への懸念等もあり16日には11米ドル前半まで急騰。下旬には地政学的緊張の緩和や潤沢な在庫による低需要が続き、10米ドル前半まで下落した。
- JOGMECは3月の日本着スポットLNG月次価格(速報)について、同月以降に契約がなされて日本に入着するスポットLNG取引の平均価格(契約ベース)を9.3米ドルと発表した。また、同月中に日本に入着したスポットLNG取引の平均価格(入着ベース)を非公表とした。
- 財務省貿易統計速報に基づくと、2024年3月の日本平均LNG輸入価格は100万Btu当たり12.39米ドル、円建てでは1トン当たり95,967円となった。主として2023年12月の全日本平均原油輸入CIF価格が低下した影響で前月比0.5米ドル程の下落となった。供給地域別では、米国産は11.04米ドル、ASEAN地域産が12.06米ドル、中東産が10.90米ドル、ロシア産が12.54米ドルであった。また、3月の北東アジア各国の平均輸入価格は、中国10.50米ドル、韓国11.70米ドル、台湾10.24米ドルであった。全日本平均原油輸入CIF価格(JCC: Japan crude cocktail)は2024年3月には1バレル当たり82.99米ドルとなった。円建てでは1キロリットル当たり78,014円となった。
- 3月の日本のLNG輸入量は、555万トンと前年同月比で3%減少した。3月として2009年以来の低水準となった。3月の中国のLNG輸入量は665万トンと前年同月比で25%増加、韓国は361万トンと前年同月比で10%減少、台湾は193万トンと前年同月比16%増加となった。
米国
- 米国スポットガス価格HHは、月間を通じて低需要高在庫を受け低位安定。天候が穏やかなうえ生産が堅調なこともあり、4月25日には1.6米ドルまで下落した。
欧州
- 欧州ガススポット価格TTFは、中旬には露-ウクライナ間及び中東情勢の緊迫化を背景に急騰し、4月16日には10.3米ドルまで上昇。その後地政学的緊張が緩和したことを受けて、下旬には8米ドル後半から9米ドル前半で推移した。
中長期の値動き
-
JKMは、2020年1月以降、供給拡大と需要増加ペースの失速により下落基調となり、2020年4月末には史上最安値の1.83米ドルを記録した。5月以降2米ドル台が続いたが、8月に入り複数の生産設備での供給障害により上昇基調に転じ、12月には10米ドル台を超え、2021年1月には寒波の影響で需要が急増したことにより、32.5米ドルの史上最高値を付けた。その後、価格は急落して2月下旬にかけて5米ドル台まで下落、3月に入り上昇基調に転じて以降は、高値で推移する欧州ガス市場にも牽引され、10月に一時56米ドルまで上昇し、11月は30米ドル半ば、12月には40米ドルに達した。2022年1月と2月は20米ドル台で推移し、3月にはロシア産パイプラインガス供給中断の懸念に伴って一時急騰し80米ドルを上回ったが、その後30米ドル台で推移した。4月以降取引は低調であり、JKMは36米ドルから22米ドルまで減少し、5月から6月前半にかけて20米ドル前半で推移した。しかし6月後半以降天然ガス・LNGの供給不安の高まりを背景に40米ドルに到達、7月も同様の水準で推移し、8月には概ね50米ドルで推移しつつ、一時、60米ドル、70米ドルを超える状況となった。9月、JKMはTTFの下落に伴い下落傾向を示し30米ドル後半まで下落し、10月~11月にかけて概ね20米ドル後半で推移した。12月には市場は年末商戦で活況となり30米ドル台で推移した。2023年1月、取引が再開するも低調であり、20米ドル付近から下落基調にあり、5月は9米ドル台まで落ち込んだ。2023年6月、JKMは欧州ガス価格の影響等を受け12米ドル付近で推移したが、7月には高在庫と低需要を背景に若干軟化し11米ドル付近で推移した。8月には豪州の主要プロジェクトでのストライキ発生の可能性が生じ、価格はやや上昇基調に入り、9月にストライキが実施された後は15米ドルまで上昇した。10月には中東での紛争の勃発等を受け17米ドルまで上昇したが、11月には地政学的リスクがいくらか緩和され概ね14米ドルで推移した。12月には豊富な供給と軟調な需要によりJKMは11米ドルまで下げ、年が明けた1月においても傾向は変わらず概ね9米ドルで推移した。2月に入り北東アジア地域での旧正月後には下落基調は更に拍車がかかり8米ドルを割ったが、3月には短期的な需要が発生したことなどから一時10米ドルに近づいた。4月半ばには中東情勢激化への懸念等もあり中旬に11米ドル前半まで急騰するも、下旬には緊張緩和により10米ドル前半で推移。
- 日本平均LNG輸入価格は、2020年3月以降の原油価格急落の影響により、8月から10月にかけて2005年1月以来の低水準となる5米ドル台まで下落、その後原油価格上昇に伴い、12月には7米ドル台に上昇した。堅調な原油価格の値動きに応じて、2021年2月には9米ドル半ばまで上昇後、3月は7米ドル半ばまで下落した。その後は、2022年6月までの日本平均原油価格の上昇に伴って、続く18ヶ月間は概ね一貫して上昇し、2022年9月には過去最高の22.73米ドルを記録した。その後、原油価格の2022年7月以降の下降傾向も一因として、2023年4月以降は11から13米ドル台で推移している。
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(出典)
米国HH(Henry Hub)価格: NYMEX Futures and Options, CME Group
蘭TTF(Title Transfer Facility)価格:ICE Endex, Intercontinental Exchange
JKM: LNG Japan/Korea Marker© 2024 by S&P Global Platts, a division of S&P Global Inc.
JOGMECスポットLNG価格:JOGMEC「日本着スポットLNG月次価格」、2021年3月までは経済産業省「スポットLNG価格調査」を出典とする
日本平均LNG輸入価格: 財務省貿易統計をもとに作成
EUA(EU ETS): ICE Endex, Intercontinental Exchange
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天然ガス・LNG在庫動向
日本
- 2023年12月末の国内LNG在庫量は577万トンで、前月比5.5%、30.3万トンの増加、前年同月比では4.1%増加し、過去5年平均値を109.7万トン上回った。
- 1月末のガス事業用LNG在庫量は229万トンで、前月比13.1%減、前年同月比では1.8%減となった。1月の都市ガス用LNG消費量は前年同月比13.6%減の282万トン、都市ガス用LNG受入量は前年同月比3.8%減の279万トンだった。
- 12月末の発電燃料用LNG在庫量は313万トンで前月比18.9%増、前年同月比10.0%の増加となった。12月の発電燃料用LNG消費量は、前年同月比で10.2%減の341万トン、発電燃料用LNG受入量は、前年同月比で30.8%増の444万トンであった。
- 2024年4月17日に経済産業省が発表した「発電用LNGの在庫状況」によると、大手電力事業者の4月14日時点のLNG在庫は161万トンであった。2023年4月末比では83万トン下回り、過去5年間の4月末平均を41万トン下回っている。
(出典)
経済産業省「ガス事業主生産動態統計」及び「電力調査統計・火力発電燃料実績」をもとに作成したもので、これら月末在庫を合算した値を国内在庫としてみなしたもの。なお、利用可能なデータは2008年1月以降のものであるため、過去5年平均は2013年1月分から計算している。
米国
- 2024年4月12日の米国天然ガス地下貯蔵有効稼働ガス在庫(ワーキングガス)は、米国エネルギー情報局(EIA)のデータによると、2.33Tcfで前月比増減なしとなった。在庫量は2023年の同時期と比較すると20.9%高く、過去5年平均値を619.2Bcf上回っている。
(出典)
米国エネルギー情報局(U.S. Energy Information Administration, EIA)のデータをもとに作成
欧州
- 2024年4月21日現在のAggregated Gas Storage Inventory(AGSI+)加盟各社中、EU加盟国各社が有する欧州天然ガス地下貯蔵在庫は703.5TWh (LNG換算4,654万トン相当)であった。これは前年同期より8.2%、53.3TWh (LNG換算353万トン相当)上回るものだった。貯蔵容量に対する充填率は62.1%であり、前年同期の57.2%を上回り、過去5年間平均値の44.4%を上回った。貯蔵容量の大きなドイツ、イタリア、オランダの充填率はそれぞれ68.3%、62.6%、54.8%であった。
(出典)
Aggregated Gas Storage Inventory(AGSI), Gas Infrastructure Europeのデータをもとに作成。なお、利用可能なデータは2011年1月以降のものであるため、過去5年平均は2016年1月分から計算している。
- 2024年4月21日現在のAggregated LNG Storage Inventory(ALSI)加盟各社が有する欧州LNG在庫量は518.8万m3で、前月比12.6%増加、前年同日比6.4%増加、過去5年平均値を20.8%上回っている。貯蔵容量に対する充填率は60.3%であり、前年同期の65.6%を下回っている。
(出典)
Aggregated LNG Storage Inventory(ALSI), Gas Infrastructure Europeのデータをもとに作成。なお、利用可能なデータは2012年1月以降のものであるため、グラフ中の過去10年平均及び過去10年平均幅の値については、5年未満の値が含まれる。
天然ガス・LNGプロジェクト動向
ハイライト
- 米国以外の有望ガス資源地域で、LNGプロジェクト開発活動の進展が観察された。
- 豪州では、 Scarborough ガス田開発への日本企業による出資参加の手続きが進んだ。カナダ西部で開発中の Cedar LNG プロジェクトは、EPC請負会社に推進通知 (NTP) が発行され、2024年半ばのFIDに向けて前進している。
アジア・オセアニア地域
- 国際協力銀行(JBIC)は、2024年3月29日、シンガポール共和国法人 Trafigura 社との間で、融資金額390百万米ドル限度(JBIC分)の貸付契約を発表した。本融資は、三井住友銀行との協調融資により実施するもので、協調融資総額は約560百万米ドル相当となる。本件は、日本企業が Trafigura からLNGを輸入するために必要な資金を融資するとしている。
- 西部ガス株式会社は、2024年3月26日、230,000 m3 LNGタンク1基、LNG気化器、ローリー出荷設備等の増設によるひびきLNG基地の能力増強について、入札を行うことを決定したことを発表した。結果を踏まえ、年内を目途に本投資の実行可否を決定するとしている。運転開始予定時期を2029年度内としている。
- 中国は2024年4月公表の貿易統計によると、同年第1四半期、パイプラインガス・LNG合計で3,279.3万トンの天然ガスを輸入した。前年同期2669.5万トンに比して22.8%増加した。3月分は1,075.8万トンと前年同月比21%増加した。第1四半期分、3月分としても過去最高。2024年1 - 3月の中国のLNG輸入量は、前年同期比25%増の1,978万トンとなったが、日本は7%減の1,768万トンの対照的な動きとなった。
- BASF社は、2024年4月5日、中国の新奥能源(ENN Energy)との間で、広東省湛江市の自社地点に天然ガス供給を購入する15年契約を締結したことを発表した。
- JERAは、2024年4月16日、シンガポール貿易産業省傘下のエネルギー市場監督庁 Energy Market Authority(EMA)との間で、シンガポールと日本のLNGバリューチェーン強化に向けた協業検討に関する覚書を締結したことを発表した。
- Daphne Technology 社は、2024年4月16日、 PureMetrics™ システムを Trafigura 社が傭船し Latsco LNG 社が運航管理するLNG輸送船舶に搭載することを発表した。同システムは、リアルタイムのGHG排出を直接計測・報告する点で、燃料消費推計に基づく報告と異なるとしている。
- フィリピン First Gen Corporation (FGEN) 社は、2024年4月15日、LNGカーゴ1隻に関しての国際入札を、 CNOOC Gas and Power Trading & Marketing Limited (中海石油气电集团有限责任公司贸易分公司)に決定したことを発表した。CNOOCは、2024年5月、DES条件でFGEN子会社 First Gen Singapore Pte. Ltd (FGEN Singapore)に1カーゴを供給することとなる。
- ベトナム PV Gas (PetroVietnam Gas Corporation)社は、2024年3月27日、カタール QatarEnergy 社と、1カーゴの LNGを4月12 - 13日引き渡しで購入する契約を締結したことを発表した。PV Gas 社は、4月9日、EVN向けに70,000トン近くのLNGを販売する契約を3月29日に締結したことを発表した。4 - 5月、フーミー(Phú Mỹ)3 発電設備向けに供給される。前記のLNGカーゴが、ブンタウ県チーバイ(Thị Vải)LNG 基地に4月11日に到着した。
- 三井物産株式会社は、2024年3月29日、100%子会社である三井石油開発株式会社(MOECO)を通じて参画する、上流ガス田およびガス火力発電所までの輸送パイプラインを含めた一体開発事業(Block B事業)につき、事業パートナーのベトナム国営石油ガス会社 Vietnam Oil and Gas Group (PVN)、 PetroVietnam Exploration Production Corporation Limited (PVEP)、 PetroVietnam Gas Joint Stock Corporation (PV Gas)、タイ国営石油ガス会社 PTT Exploration and Production Public Company Limited (PTTEP)と、28日にFIDを行い、関連契約を締結したことを発表した。日量4.9億立方フィートの生産能力を見込み、生産開始時期は2026年末を予定する。
- Chevron 子会社 Unocal Myanmar Offshore Company 社 (UMOC) は、パートナー1社のタイ PTT Exploration and Production 社 (PTTEP) による2024年4月5日付同国證券取引所への書簡によると、ミャンマー Yadana 天然ガス田プロジェクトへの投資から撤退した。その所有権を、残りのパートナー企業に移管した。
- インドネシア Pertamina 社は、2024年3月30日、西ジャワ Jawa Satu FSRU ・1.76 GW発電設備で構成する Jawa-1 LNG 発電プロジェクトが、完全稼働準備完了したことを発表した。同社によると、気化システムを備えた東南アジア最大の統合型発電設備となる。 Pertamina New & Renewable Energy (40%)、 丸紅 (40%)、 双日 (20%) が所有する Jawa Satu Power (JSP) 社が操業管理する。同国国営電力企業PLNが長期契約で同プロジェクトが発電する電力を全量引き取る。同発電設備は、容量各880 MWの2系統からなる。 Pertamina 社によると2号機が2023年12月以降商業運転している。2022年2月、 Pertamina 社は、 Jawa-1 PLTGU 発電設備が1号機点火を行った、と述べた。同発電設備は、LNGをパプア地方 Tangguh 設備より FSRU Jawa Satu経由で得ている。2021年4月、同FSRUはコミッショニングカーゴを受け入れた。同船は Pertamina, 丸紅、双日、MOL (商船三井 = オペレーター) 間の合弁事業 Jawa Satu Regas により管理されている。MOLは、2024年4月5日、FSRU Jawa Satu が、3月29日より商業運転を開始したことを発表した。
- インド GAIL 社は、マハラシュトラ州 Dabhol LNG 基地容量を、2030年までに年間1,200万トンに拡張することを計画している。同基地は公称容量年間500万トンだが、モンスーン季は動かない。同社は防波堤インフラストラクチャーを建設している。
- 豪 Beach Energy 社は、2024年4月8日、 Waitsia ガス田第2段階開発の最新動向を報告した。 Waitsia 合弁事業体は、同ガス設備でシステム試運転の間に、2023年検知された品質上の問題に対処した。その後、試運転進行中にさらに品質問題が浮上した。 Beach 社による請負会社による日程・コスト見積検討後、 Waitsia ガス設備の生産開始は2025年初 (従来は2024年央) 見込みとなる。その後3ヶ月間の生産立ち上げとなる。 Beach はこの Waitsia ガス設備完成前まで、LNGカーゴ引き取りのためにコマーシャル上の枠組を引き続き活用する、と述べている。2023年12月に引き取ったLNGカーゴ1件に加え、 Beach は (2024年6月までの)2024年度中にさらに1カーゴ引き取りを見込んでいる。
- 国際協力銀行(JBIC)は、2024年3月26日、株式会社JERAが出資する豪州法人 JERA Scarborough Pty Ltd との間で、融資金額831百万米ドル(JBIC分)を限度とする貸付契約を締結した。本融資は、民間金融機関との協調融資により実施するもので、協調融資総額は1,231百万米ドル。
- エルエヌジージャパン株式会社、住友商事株式会社、双日株式会社は、2024年3月26日、2023年8月に発表した、西豪州 Scarboroughガス 田開発プロジェクト権益の10%取得について、 Woodside Energy Group Ltd の子会社との間の権益売買契約の発効条件が全て充足し、権益取得手続きが完了したことを発表した。本権益取得に当たり、JOGMECから出資および債務保証の対象事業として採択を受けた。JOGMECは、LJS社 (エルエヌジージャパン子会社 LJ Scarborough Pty Ltd)が負担する開発費等の50%を上限に同社に対して出資を行うとともに、同社の借入金額の50%を上限に債務保証を行う。
- 東京ガス株式会社は、2024年3月28日、 Tokyo Gas Australia Pty Ltd の子会社5社(4プロジェクト)を米 EIG Global Energy Partners 社の豪子会社 MidOcean Energy Holdings 社に譲渡する手続きが完了したことを明らかにした。 MidOcean Energy 社は、4月1日、三菱商事による戦略的投資を発表した。
- 豪 Woodside Energy 社は、2024年4月17日、ティモールレステ TIMOR GAP (56.56%)、 オペレーター Woodside (33.44%)、 Osaka Gas Australia (10.00%) で構成する Sunrise Joint Venture (SJV) 参加企業は、 Greater Sunrise コンセプトスタディ契約を Wood Australia 社に発注したことを発表した。
- パプアニューギニア Kumul Petroleum Holdings 社は、2024年4月17日、 PNG LNG プロジェクトから自社シェア分より初めてスポット市場にて直接LNG販売を行っていることを発表した。2月に行った入札を経て、 PetroChina International 社 (中国石油国际事业有限公司) にFOB条件で1カーゴを販売する。
- TotalEnergies 社は、2024年4月8日、パプアニューギニア Papua LNG プロジェクトは商業上実現可能なEPC契約を確保するため請負会社とさらに検討が必要で、FIDに達するまで追加的な作業が必要である、と述べた。同プロジェクトは一部のパッケージについて見直し、EPC競争入札の範囲をアジアの建設請負会社のさらに幅広い範囲に拡大する計画である。FIDは2025年に見込んでいる。
北米地域
- DOEは、2024年4月18日、連邦議会下院公聴会で、LNG輸出の経済・環境影響分析の最新状況を説明した。その証言によると、米国天然ガス輸出部門の数年間の急成長後、織り込むべき膨大なデータ、多くの世界の事象、傾向が存在している。DOEは可能な限り迅速に作業しており、60日間のパブリックコメント募集を計画している。パブリックコメントプロセスを含めて、2025年第1四半期末までに完了すると見越している。
- 米商工会議所米日ビジネス協議会は、2024年4月9日、日本の首相を招いて、重要・新興技術ラウンドテーブルを開催した。エネルギーセキュリティについて話し合い、新規米国産LNG輸出に関する政権のモラトリアム、グローバルでのエネルギー制約に照らして、日本他同盟諸国向け米国産LNG輸出の重要性を強調した。
- 日米首脳の2024年4月10日共同声明によると、「米国は、日本と他の同盟国のエネルギー安全保障を支援するというコミットメントを揺るぎないものとしている。これにはLNG安定供給を含み、同時にグローバルレベルでのゼロエミッションエネルギーへのトランジッションを加速し、化石エネルギーバリューチェーンでのメタン排出を実際的に最小限にすべく、他化石燃料輸入者、生産者と共同で取り組む」としている。
- BRG (Berkeley Research Group) 社は、2024年4月16日、欧州・アジアの最終消費市場13件の発電燃料供給チェーンでのメタン (CH4) ・二酸化炭素 (CO2) 排出統合型分析を含む報告書を発行した。2021年から重ねたスタディで、ボトムアップ積み上げ型手法により、一次燃料源での排出源単位比較を、発電量MWh当たりのCO2換算kgで行っている。同報告書は LNG Allies 向けに作成された。
- Gulfstream LNG は、2024年4月17日、FERCに、ルイジアナ州内でのLNG輸出プロジェクト環境面のプレファイリング(本申請前事前審査)手続きの開始を申請した。 Gulfstream LNG は、FERC承認2027年、稼働開始2030年を目指している。 Gulfstream LNG は同州プラクミンズ郡に容量年間400万トン・合計3系列の設備建設を計画している。
- JERAは、2024年3月25日、 ExxonMobil 社との間で、同社の低炭素水素・アンモニアの製造プロジェクトへの参画等についての共同検討に関する契約(Project Framework Agreement)を締結したことを発表した。 ExxonMobil 社は、米国テキサス州ベイタウン複合施設にて、世界最大規模となる低炭素水素製造プラントの開発プロジェクトを進めている。本プロジェクトは年間約90万トンの低炭素水素を生産するとともに、その水素の一部を原料とした年間約100万トン以上のアンモニアを生産することを想定している。現在、基本設計の検討を行っており、2028年の生産開始を目指している。両社は、JERAの本プロジェクトへの参画、低炭素アンモニアの日本向け調達(年間約50万トン)を検討するとしている。
- TotalEnergies 社は、2024年4月8日、 Eagle Ford シェールにて EOG Resources (80%)が操業している Dorado 鉱区リースの Lewis Energy Group の20%持分の買い取りに合意したことを発表した。
- カナダの Pembina Pipeline 社、パートナー Haisla Nation は、2024年4月4日、 Cedar LNG プロジェクトの進展として、LNG長期引き取り確保、EPC請負会社への推進通知 (NTP) 発行を発表した。 Black & Veatch 社は、 PRICO® 技術含む上部構造設計・機器供給を、サムスン重工業 (SHI)は、船殻・コンテンメント、上部構造モジュール組み立て・統合を担当する。ARC Resources 社と固定手数料による20年間テイクオアペイ液化加工業務契約が 2028年末から年間150万トン分について締結されている。 Pembina 社は、 Cedar LNG と年間150万トン分に、類似のつなぎ契約を締結している。 Pembina 社は自社の容量をFID後に第三者に割り当てる意図である。 Chart Industries 社は、4月15日、 Cedar LNG プロジェクト向け、天然ガス液化コールドボックス、アルミニウム熱交換器含め液化機器供給に選定されたことを発表した。
- カナダの影響アセスメント機関とブリティッシュコロンビア州環境セスメント部 (EAO) は、 Summit Lake PG LNG 第1段階検討作業を行っている。 JX LNG Canada 社が、プリンスジョージ北部30 kmに同プロジェクトを計画している。年間135万トンの2段階で合計年間270万トンのLNG生産を見込んでいる。第1段階稼働開始は2028年に見込んでいる。このLNGはISOコンテナで輸送を見込んでいる。
欧州および周辺地域
- ACER (欧州連合エネルギー規制機関間協力機関) は、2024年4月19日、市場監視報告 (MMR) で、EUのLNG需要は2024年ピークとなる可能性が高く、2023年にEUはロシア産LNGを2022年以前に締結した長期契約主体で18 bcmを輸入し、この内 少なくとも1 bcm (恐らくそれ以上)を再積み込みによりアジア市場に再輸出した、米国は生産力増強を主導していき新規LNG輸出承認の最近発表された一時停止の影響は受けないだろう、EUは引き続きスポットLNG契約よりも長期契約に依存している、と述べた。
- 欧州議会は、2024年4月10日、エネルギー部門からのメタン排出削減新法案に関して、EU諸国との暫定的な政治的合意を採択した。この新規制は、メタン排出削減を目指すEU法制のうち最初のひとつであり、石油、ガス、石炭部門、バイオメタンもガスネットワークに注入される場合、これらからの排出を直接の対象とする。
- オランダ Gasunie 社は、 Groningen ガス田停止を受けて、天然ガス供給・季節対応柔軟性に関して2024年3月27日、警鐘を発した。同社によると、自国の天然ガス輸入への高い依存度(ガス需要の75%)が、国内生産がなくなることでさらに大きくなる。
- TES (Tree Energy Solutions) 社は、2024年3月25日、ドイツの輸送網規制機関 BNetzA が、ヴィルヘルムスハーフェン Green Energy Hub Wilhelmshaven 内の e-LNG基地を、稼働開始から20年間、料金・第三者アクセス規制から適用除外としたことを発表した。このゼロエミッション基地の容量は年間15 bcm である。
- ドイツ Deutsche Energy Terminal 社は、2024年4月11日、 Brunsbüttel 港湾にて、 FSRU Hoegh Gannet 専用桟橋建設を開始した、と述べた。
- ドイツ SEFE Securing Energy for Europe 社は、2024年3月26日、 Wintershall Dea AG が持つ50.02%株式の買い取りにより、WIGA社の単独株主となることを発表した。WIGA社は、ガス輸送網操業企業 GASCADE、NELを所有する。両社はドイツのガス網合計全長4,150 kmを操業している。 GASCADE 社はドイツ全土の全長3,710 kmパイプライン網、NELは欧州北部全長441 km分を操業している。
- ドイツ Deutsche ReGas 社は、2024年4月3日、 Seapeak Hispania FSU ・ルブミン港気化船舶 Neptune との間でのLNGシャトル輸送を終了したことを発表した。 Deutsche ReGas 社は Neptune をルブミンからムクランの新規 "Deutsche Ostsee" 基地へと移転する作業に着手している。ムクラン側での移転作業は初夏に開始予定。
- Shell Deutschland 社は、2024年4月18日、ドイツ最大とするバイオ LNG生産設備を稼働開始したことを発表した。同社のケルン近くの Energy and Chemicals Park Rheinland 基地内に立地している。
- オランダのエネルギーインフラストラクチャー企業VTTI社は、2024年3月27日、ドイツIKAV社とともに、イタリアのベネト州沖15 kmの Adriatic LNG 気化基地の多数所有権を取得するための企業連合に参加したことを発表した。イタリア Snam 社は、4月3日、 Adriatic LNG 気化基地の自社持分を現状の7.3%から30%に増加する先買権を行使したことを発表した。取引完了は2024年末までに見込まれる。取引完了後、 Adriatic LNG 株式はVTTI 70%、 Snam 30%となる。
- ロシア政府の2024年3月23日付指令によると、同政府は Sakhalin-2 プロジェクトにおける Shell が所有していた27.5%持分を Gazprom 傘下の Sakhalin Project 社に948億ルーブルで売却することに合意した。
- ウクライナ Naftogaz は、2024年3月24日、武力攻撃でガス貯蔵 (UGS) 設備の陸上インフラに生じた損傷は、UGSの提供するサービスに影響しない、と述べた。損傷した陸上インフラに修繕は必要。
その他地域
- カタール QatarEnergy 社は、2024年3月24日、 Nakilat (Qatar Gas Transport Company Limited) との間で、25隻の在来型サイズのLNG輸送船舶に関して、 QatarEnergy によるLNG輸送船団拡張プログラムの第2弾船主入札の一環として、定期傭船契約 (TCP) を締結したことを発表した。この内17隻は、韓国現代重工 (HHI)、8隻はハンファオーシャン Hanwha Ocean (旧 大宇造船海洋)にて建造される。各隻は容量174,000 m3となり、今回の15年間TCPに従い、 Nakilat より QatarEnergy 子会社へと傭船される。
- カタール QatarEnergy 社は、2024年3月31日、自社LNG輸送船団拡張プログラムにおける第2回船主入札の一環として、19隻の新造在来型サイズ船舶のため、国際船主企業4社と長期傭船 (TCP) 契約を締結したことを発表した。この契約により、 CMES LNG Carrier Investment社 6隻、 Shandong Marine Energy (Singapore) 社6隻、 MISC Berhad 3隻運航予定分を、韓国 Samsung Heavy Industries (サムスン重工) で建造中。残り4隻は、川崎汽船 (K-Line) ・韓国 Hyundai Glovis (現代グロービス)社合弁事業により運航予定で Hanwha Ocean (ハンファオーシャン = 旧 大宇造船海洋) にて建造中である。2022年以降、 QatarEnergy は104隻の在来型LNG輸送船舶の長期傭船・運航のため、一連の長期傭船契約を締結している。この内43隻を QatarEnergy 子会社 QatarEnergy Trading が傭船することとなる。
- オマーン Oman LNG 社は、2024年4月16日、JERA社と年間80万トン、2025年から10年間のSPAを発表した。 Oman LNG 社は、2024年4月17日、 Shell International Trading Middle East Limited (SITME) と最大年間160万トン、2025年から10年間のSPAを発表した。
(注: bcm: 10億m3、CCS: 炭素回収・貯蔵、DES: 持ち届け ex-ship、DOE: 米連邦エネルギー省、EPC: エンジニアリング・調達・建設、EPCI: エンジニアリング・調達・建設・設置、 EPCm: エンジニアリング・調達・建設管理、FEED: 基本設計、FERC: 米連邦エネルギー規制委員会、FID: 最終投資決定、FLNG: 浮体液化設備、FOB: 本船渡し、FSRU: 浮体貯蔵・気化設備、FSU: 浮体貯蔵化設備、HOA: 基本合意、MOU: 覚書、SPA: LNG売買契約)
作成協力 一般財団法人日本エネルギー経済研究所
添付ファイル
- 日本のLNG在庫量(28.4KB) (2024/4/23更新)
- 米国天然ガス地下貯蔵量(59.8KB) (2024/4/23更新)
- 欧州天然ガス地下貯蔵量(425.5KB) (2024/4/23更新)
- 欧州LNG在庫量(252.9KB) (2024/4/23更新)