2024年5月

天然ガス・LNG価格動向

直近の値動き

アジア

  • 北東アジアのアセスメントされたスポットLNG価格JKMは、月間を通じて夏季に向けたアジア地域の需要増やインドの熱波による電力需要増を背景に上昇基調であった。月初に10米ドル半ばであった価格は下旬には一時12米ドル台を付けた。ゴーゴンLNGにおけるトラブル等の供給不確実性も価格を下支えする要因であったと考えられる。
  • JOGMECは4月の日本着スポットLNG月次価格(速報)について、同月以降に契約がなされて日本に入着するスポットLNG取引の平均価格(契約ベース)を9.6米ドルと発表した。また、同月中に日本に入着したスポットLNG取引の平均価格(入着ベース)を9.6米ドルと発表した。
  • 財務省貿易統計速報に基づくと、2024年4月の日本平均LNG輸入価格は100万Btu当たり11.29米ドル、円建てでは1トン当たり88,727円となった。主として2024年1月の全日本平均原油輸入CIF価格が低下した影響で前月比1.1米ドル程の下落となった。供給地域別では、米国産は10.08米ドル、ASEAN地域産が11.08米ドル、中東産が10.79米ドル、ロシア産が12.35米ドルであった。また、4月の北東アジア各国の平均輸入価格は、中国10.31米ドル、韓国11.75米ドル、台湾8.89米ドルであった。全日本平均原油輸入CIF価格(JCC: Japan crude cocktail)は2024年4月には1バレル当たり85.73米ドルとなった。円建てでは1キロリットル当たり81,721円となった。
  • 4月の日本のLNG輸入量は、529万トンと前年同月比で16.7%増加した。4月の中国のLNG輸入量は622万トンと前年同月比で31.5%増加、韓国は421万トンと前年同月比で33.7%増加、台湾は138万トンと前年同月比18.4%減少となった。

米国

  • 米国スポットガス価格HHは、月初に2米ドル台前半で推移していたものの、22日には2.8米ドルを付けるなど上昇。背景のひとつとしてFreeport LNGへのフィードガス供給量が高水準にあるとされている。

欧州

  • 欧州ガススポット価格TTFは、ノルウェー・ドヴァリンガス田での計画外メンテナンスやゴーゴンLNGの設備トラブル等による供給懸念、さらに風力発電の大幅な出力低下予想等を受けて3日には9.6ドルまで上昇した。下旬にはアジア地域の高い需要に加え、ノルウェーガス生産設備のメンテナンス、オーストリア・OMVによるロシアパイプラインガス停止の可能性をめぐる懸念などの供給リスクにより上昇基調であり23日には11ドル台前半まで上昇。

天然ガス・LNG価格推移(直近2年)

中長期の値動き

  • JKMは、2020年1月以降、供給拡大と需要増加ペースの失速により下落基調となり、2020年4月末には史上最安値の1.83米ドルを記録した。5月以降2米ドル台が続いたが、8月に入り複数の生産設備での供給障害により上昇基調に転じ、12月には10米ドル台を超え、2021年1月には寒波の影響で需要が急増したことにより、32.5米ドルの史上最高値を付けた。その後、価格は急落して2月下旬にかけて5米ドル台まで下落、3月に入り上昇基調に転じて以降は、高値で推移する欧州ガス市場にも牽引され、10月に一時56米ドルまで上昇し、11月は30米ドル半ば、12月には40米ドルに達した。2022年1月と2月は20米ドル台で推移し、3月にはロシア産パイプラインガス供給中断の懸念に伴って一時急騰し80米ドルを上回ったが、その後30米ドル台で推移した。4月以降取引は低調であり、JKMは36米ドルから22米ドルまで減少し、5月から6月前半にかけて20米ドル前半で推移した。しかし6月後半以降天然ガス・LNGの供給不安の高まりを背景に40米ドルに到達、7月も同様の水準で推移し、8月には概ね50米ドルで推移しつつ、一時、60米ドル、70米ドルを超える状況となった。9月、JKMはTTFの下落に伴い下落傾向を示し30米ドル後半まで下落し、10月~11月にかけて概ね20米ドル後半で推移した。12月には市場は年末商戦で活況となり30米ドル台で推移した。2023年1月、取引が再開するも低調であり、20米ドル付近から下落基調にあり、5月は9米ドル台まで落ち込んだ。2023年6月、JKMは欧州ガス価格の影響等を受け12米ドル付近で推移したが、7月には高在庫と低需要を背景に若干軟化し11米ドル付近で推移した。8月には豪州の主要プロジェクトでのストライキ発生の可能性が生じ、価格はやや上昇基調に入り、9月にストライキが実施された後は15米ドルまで上昇した。10月には中東での紛争の勃発等を受け17米ドルまで上昇したが、11月には地政学的リスクがいくらか緩和され概ね14米ドルで推移した。12月には豊富な供給と軟調な需要によりJKMは11米ドルまで下げ、年が明けた1月においても傾向は変わらず概ね9米ドルで推移した。2月に入り北東アジア地域での旧正月後には下落基調は更に拍車がかかり8米ドルを割ったが、3月には短期的な需要が発生したことなどから一時10米ドルに近づいた。4月半ばには中東情勢激化への懸念等もあり中旬に11米ドル前半まで急騰するも、下旬には緊張緩和により10米ドル前半で推移。5月は夏季に向けた需要増を背景に、下旬には11米ドル後半から-12米ドル台前半を推移。
  • 日本平均LNG輸入価格は、2020年3月以降の原油価格急落の影響により、8月から10月にかけて2005年1月以来の低水準となる5米ドル台まで下落、その後原油価格上昇に伴い、12月には7米ドル台に上昇した。堅調な原油価格の値動きに応じて、2021年2月には9米ドル半ばまで上昇後、3月は7米ドル半ばまで下落した。その後は、2022年6月までの日本平均原油価格の上昇に伴って、続く18ヶ月間は概ね一貫して上昇し、2022年9月には過去最高の22.73米ドルを記録した。その後、原油価格の2022年7月以降の下降傾向も一因として、2023年4月以降は11から13米ドル台で推移している。

天然ガス・LNG価格推移(直近10年)

価格情報についてはファイルでのダウンロードサービスはありません。なお、上図については、S&P Global Plattsの情報が含まれることから、閲覧に際しては後述する内容にご同意いただくこととなります。
(出典)
米国HH(Henry Hub)価格: NYMEX Futures and Options, CME Group
蘭TTF(Title Transfer Facility)価格:ICE Endex, Intercontinental Exchange
JKM: LNG Japan/Korea Marker© 2024 by S&P Global Platts, a division of S&P Global Inc.
JOGMECスポットLNG価格:JOGMEC「日本着スポットLNG月次価格」、2021年3月までは経済産業省「スポットLNG価格調査」を出典とする
日本平均LNG輸入価格: 財務省貿易統計をもとに作成
EUA(EU ETS): ICE Endex, Intercontinental Exchange

上記閲覧に際しては、以下について同意することとなります。

  • Platts情報はS&P Global Plattsによって作成されています(出典:© 2024 by S&P Global Platts, a division of S&P Global Inc. All rights reserved)。
  • Platts情報を内部目的にのみ使用することに同意します。またインターネット、イントラネット、またはその他のネットワークを含むあらゆる形式または手段で、Platts情報をいかなる目的でも第三者に保存、複製、またはさらに配布しないことに同意します。
  • Platts、その関係会社およびそれらのすべての第三者ライセンサーが、Platts情報、および特許、企業秘密、著作権、商標権(登録有無に関わらず)を含むすべての知的財産権を所有していることに同意します。
  • Platts、その関係会社およびそれらのすべての第三者ライセンサーは、すべてのPlatts情報、データ、またはそれらの使用や実行によって得られた結果を含む、Platts情報に関する特定の目的または使用に対する商品性または適合性を含むすべての保障について、明示または黙示に関わらずすべての保障を否認します。Plattsまたはその関係会社あるいはそれらの第三者ライセンサーのいずれも、Platts情報またはその構成要素についての通知または通信の妥当性、正確性、適時性または完全性を保証しないものとします。Platts、その関係会社およびそれらの第三者ライセンサーは、Platts情報のいかなる誤差、脱漏または遅延についても、いかなる損害賠償または法的責任も問われないものとします。Platts情報およびそのすべての構成要素は、「現状の有り姿」として提供され、JOGMECウェブサイトのPlatts情報の使用は購読者自身の危険負担で行われるものとします。Platts情報は金融またはその他の専門的なアドバイスとみなされるべきではありません。
  • 上記記載内容に関わらず、いかなる場合も、Platts、その関係会社またはそれらの第三者ライセンサーは、利益の損失、取引損失、または損失時間や事業上の信用の損失を含むがこれに限定されないいかなる間接的損害、特別損害、付随的損害、懲罰的損害、または派生的損害について、たとえかかる損害の可能性について知らされていたとしても、契約の記述、不法行為(過失を含む)、厳格責任または別の方法のあるなしを問わず、決して責任を負わないものとします。またPlatts、その関係会社およびそれらの第三者ライセンサーは、第三者によるJOGMECウェブサイトに対するいかなるクレームにつきましても責任を負わないものとします。

天然ガス・LNG在庫動向

日本

  • 2024年1月末の国内LNG在庫量は494万トンで、前月比14.3%、82.5万トンの減少、前年同月比では5.9%減少し、過去5年平均値を75.1万トン上回った。
  • 2024年2月末の国内LNG在庫量は460万トンで、前月比6.8%、33.8万トンの減少、前年同月比では14.3%減少し、過去5年平均値を24.8万トン上回った。
  • 2月末のガス事業用LNG在庫量は214万トンで、前月比6.8%減、前年同月比では14.2%減となった。2月の都市ガス用LNG消費量は前年同月比0.5%増の301万トン、都市ガス用LNG受入量は前年同月比9.6%減の286万トンだった。
  • 1月末の発電燃料用LNG在庫量は265万トンで前月比15.3%減、前年同月比9.3%の減少となった。1月の発電燃料用LNG消費量は、前年同月比で1.0%減の372万トン、発電燃料用LNG受入量は、前年同月比で13.7%減の377万トンであった。
  • 2月末の発電燃料用LNG在庫量は247万トンで前月比6.9%減、前年同月比14.4%の減少となった。1月の発電燃料用LNG消費量は、前年同月比で0.7%増の339万トン、発電燃料用LNG受入量は、前年同月比で1.3%減の375万トンであった。
  • 2024年5月22日に経済産業省が発表した「発電用LNGの在庫状況」によると、大手電力事業者の5月19日時点のLNG在庫は226万トンであった。2023年5月末比では15万トン下回り、過去5年間の5月末平均を15万トン上回っている。

国内LNG月末在庫量(直近2年)

国内LNG月末在庫(直近10年)

(出典)
経済産業省「ガス事業主生産動態統計」及び「電力調査統計・火力発電燃料実績」をもとに作成したもので、これら月末在庫を合算した値を国内在庫としてみなしたもの。なお、利用可能なデータは2008年1月以降のものであるため、過去5年平均は2013年1月分から計算している。


米国

  • 2024年5月17日の米国天然ガス地下貯蔵有効稼働ガス在庫(ワーキングガス)は、米国エネルギー情報局(EIA)のデータによると、2.71Tcfで前月比11.8%増となった。在庫量は2023年の同時期と比較すると16.1%高く、過去5年平均値を608.8Bcf上回っている。

米国天然ガス地下貯蔵量(直近2年)

米国天然ガス地下貯蔵量(直近10年)

(出典)
米国エネルギー情報局(U.S. Energy Information Administration, EIA)のデータをもとに作成


欧州

  • 2024年5月25日現在のAggregated Gas Storage Inventory(AGSI+)加盟各社中、EU加盟国各社が有する欧州天然ガス地下貯蔵在庫は775.7TWh (LNG換算5,131万トン相当)であった。これは前年同期より2.0%、15.5TWh (LNG換算102万トン相当)上回るものだった。貯蔵容量に対する充填率は68.5%であり、前年同期の67.1%を上回り、過去5年間平均値の55.4%を上回った。貯蔵容量の大きなドイツ、イタリア、オランダの充填率はそれぞれ72.1%、72.9%、62.0%であった。

欧州天然ガス地下貯蔵量(直近2年)

欧州天然ガス地下貯蔵量(直近10年)

(出典)
Aggregated Gas Storage Inventory(AGSI), Gas Infrastructure Europeのデータをもとに作成。なお、利用可能なデータは2011年1月以降のものであるため、過去5年平均は2016年1月分から計算している。

 

  • 2024年5月25日現在のAggregated LNG Storage Inventory(ALSI)加盟各社が有する欧州LNG在庫量は442.0万m3で、前月比11.3%減少、前年同日比0.2%減少、過去5年平均値を9.2%下回っている。貯蔵容量に対する充填率は51.4%であり、前年同期の56.1%を下回っている。

欧州LNG在庫量(直近2年)

欧州LNG在庫量(直近10年)

(出典)
Aggregated LNG Storage Inventory(ALSI), Gas Infrastructure Europeのデータをもとに作成。なお、利用可能なデータは2012年1月以降のものであるため、グラフ中の過去10年平均及び過去10年平均幅の値については、5年未満の値が含まれる。


天然ガス・LNGプロジェクト動向

ハイライト

  • 中東のカタール、アブダビ、オマーンとも、LNG生産プロジェクトに関係するエンジニアリング、マーケティング、海上輸送手配面で進展している。カタールは、世界最大となるQC-Maxクラス18隻を含む合計122隻調達のLNG輸送船団体制を進展させている。アブダビでADNOCは自国での新規LNGプロジェクト開発進展に加え、米国、モザンビークで新規LNGプロジェクトへの出資参加を進めている。

 

アジア・オセアニア地域

  • ベトナムPV Gas社は2024年4月30日、 Thị Vải LNG 基地に通算3隻目のLNGカーゴを受け入れた、と述べた。さらに同社は、3月から6月の乾季で水力発電が減るため、4月に2隻の引き渡しを受けた後、20日間隔でLNGカーゴ1隻を引き取る可能性がある、と述べた。同社は5月16日、4隻目のLNGカーゴを受け入れたことを発表した。
  • AG&P LNG社は2024年5月8日、 Hải Linh 社・Atlantic、Gulf and Pacific LNG (AG&P)社間の共同操業となる Cái Mép LNG 受入基地がコミッショニングを開始、9月稼働開始見込みとなる、と述べた。
  • マレーシアPETRONAS社は2024年5月14日、Malaysia LNG社が5月10日 11:30 p.m.頃、ビントゥルPETRONAS LNG Complex設備で停電が発生した、と述べた。PETRONASは、停電原因は特定された、と述べた。
  • TotalEnergies社は2024年4月24日、Sapura Upstream Assets Sdn Bhd(SUA)との間で、マレーシアの独立系ガス生産企業SapuraOMV Upstream社の50%持分を買い取る契約を締結したことを発表した。取引完了は2024年後半を見込んでいる。今回の契約は、同年1月31日にSapuraOMVの50%買い取りのためOMVと締結した契約に続くもの。TotalEnergiesはSapuraOMVの100%持ち分を保有することとなる。SapuraOMVの主たる資産は、サラワク州沖 SK408 鉱区の40%操業権付、SK310鉱区の30%操業権付持分が含まれる。
  • インドGAIL (India) Limited社は2024年5月16日、 Cool Company Ltd (CoolCo)社と、新造LNG輸送船舶1隻の14年間の定期傭船契約を発表した。この定期傭船契約は2025年初開始で、GAILは2年間の延長オプション権を持つ。GAILは船団に4隻のLNG輸送船舶を持っている。
  • 豪 Santos 社の2024年4月18日の同年第1四半期業績報告によると、 Barossa ガスプロジェクトは70.6%、 Darwin LNG 延命プロジェクトは39%完成している。 Bayu-Undan ガス田は生産を継続し、豪州国内市場に供給している。
  • 豪Woodside Energy社は2024年4月19日、同年第1四半期末時点で Scarborough Energy プロジェクトは Pluto 第1系列改造プロジェクト分を除き62%完成しており、2026年初カーゴを目標としている、と述べた。
  • 豪連邦政府は2024年5月9日、利用可能なガスを確保しながら2050年までにネットゼロを実現する上でガスの役割を確立する、将来へのガス戦略Future Gas Strategyを発表した。同戦略の6原則には、次が含まれる。ガスはネットゼロへのトランジッション期間を通じて豪州需要家にとり利用可能なものであり続けなくてはならない。新規ガス供給源が豪州経済全体のトランジッション期間の需要を満たすため必要である。信頼性あるガス供給が、より高価値で代替不能なガス利用へのシフトを徐々に、かつ不可避的に支えることとなる。家庭用需要は引き続きそのエネルギー需要をどのように満たすかの選択権を維持することとなる。豪州は現在も将来もLNG・低排出ガス含むエネルギーの信頼性ある通商相手であり続けるとする。
  • 豪Australia Pacific LNG(APLNG)社は2024年5月21日、Ampol Refineries、 Mount Isa Minesなど、3顧客と合計5.75 ペタジュール(PJ)分のガス販売契約を締結したことを発表した。これにより2024暦年のAPLNGによる東部国内市場への貢献は158 PJ(300万トン相当)となる。

 

北米地域

  • 米 National Petroleum Council (NPC)は2024年4月23日、米国が気候変動目標に前進しつつ低カーボンの将来に向けて規制、政策、技術開発を進める諸提言を織り込む2報告を承認した。両報告のタイトルは"Charting the Course: Reducing Greenhouse Gas (GHG) Emissions from the U.S. Natural Gas Supply Chain"/ "Harnessing Hydrogen: A Key Element of the U.S. Energy Future," で、連邦エネルギー長官の要請により作成された。「米天然ガス供給チェーンからの温室効果ガス排出削減の道筋」の要点は、豊富な天然ガスが米国最大の一次エネルギー生産源として今後も自国エネルギー・経済セキュリティの重要な役割を果たし続けること、米国は天然ガス供給チェーンのGHG排出を、業界の取り組み・社会との協力・効果的規制と政策・排出データの監視測定報告認証(MMRV)革新・市場インセンティブを通じて削減できることである。
  • 2024年4月19日付米連邦官報に掲載された通知によると、Sabine Pass Liquefaction, LLC ・ Sabine Pass Liquefaction Stage V, LLC による2024年3月1日付・同21日付提出の申請をDOEが受領した。Sabine Pass Stage 5は、Sabine Pass Stage 5拡張プロジェクト(第7 - 8系列) (Stage 5 プロジェクト)から天然ガス年間899.46 bcf相当のLNGを、非FTA諸国向けに輸出する長期承認を求めている。Sabine Pass Stage 5は、Stage 5プロジェクトには新規天然ガス液化設備2系列 (第7 - 8系列)、ボイルオフガス再液化設備1基、フルコンテインメントLNG貯蔵タンク2基、関連インフラストラクチャーによるものとなるとしている。Sabine Pass Stage 5 は承認期間について、輸出開始または申請された承認発行日から7年の内の早い方から、2050年12月31日または20年間の遅い方までを求めている。
  • FERC事務局は2024年5月16日、 Corpus Christi Liquefaction(CCL)ミッドスケールトレイン8 & 9プロジェクトの環境アセスメント(EA)完了日程変更を通知した。2023年11月3日発出の最初の日程通知では、2024年3月15日をEA発行日としていた。しかし事務局は、2024年3月5日に提出された基準大気汚染物質に関するCCLの全面的大気拡散影響分析に対応して、追加情報の必要性を指摘した。このことがEA発行日程遅延につながった。CCL側が追加情報提出後、修正日程は2024年6月21日となる。新たな90日後の連邦承認決定期限は2024年9月19日となる。
  • TCEQ(テキサス州環境監督委員会)への提出書類によると、Freeport LNG 設備第2トレインは、2024年5月16日午前、コンプレッサーシステムの不具合によりトリップした。この事象により、液化フレアシステムへの放出につながった。トリップ原因への対応後、事象から13時間でクールダウン、再稼働に至った。
  • Sempra社は2024年5月7日、同年第1四半期業績説明会の中で、DOEによる許可一時停止が盛んに報道されているが、自社は長期安定クリーンなエネルギーを顧客に提供するプロジェクトを実現することに引き続き確信を持つ、と述べた。自社プロジェクトの競争力への確信に影響を与えることなく、機会を着実に前進するためにこの期間を戦略的に活用している、とした。同社はこの許可一時停止は一時的なものであり、今後許可は発行されるものと考えており、自社では一時停止はPort Arthurフェーズ2のみに影響しているとした。
  • DOEは、Venture Global Plaquemines LNG, LLC 社の外国から輸入したLNG最大天然ガス6 bcf相当につき、2024年7月22日から2年間輸出する包括許可の申請受理を通知した。「Plaquemines LNG は現在2024年半ばにLNG生産開始を見込んでいる」と申請で述べた。申請によれば最大3カーゴの受け入れ可能性がある。そのLNG輸入に関してはスタートアップ・クールダウンの一環としていずれも2024年に実施する見込みとしている。
  • FERC委員長は2024年5月17日付、連邦下院議員への書簡で、Venture Global社に対して2024年3月26日にCP2 LNGプロジェクトからの大気汚染がEPA(環境保護庁)が設定した新たな基準を超えないことを示すよう求める環境情報要請を送ったと述べた。Venture Global社はこの要請に応えた。同書簡によると「その後、FERC事務局は、同社CP1プロジェクトが最初に報告したよりも多くの大気汚染を排出することを、同社はルイジアナ州大気保全局に連絡したがFERCにはしていなかったことを知った。CP1 LNGプロジェクトからのこの排出分が、CP2 LNGプロジェクトからの排出の累積影響に加算される」。FERC事務局は、2024年5月15日、Venture Global社に排出量修正後の累積影響更新を求める環境情報要請を送った。同社はこの要請に回答した。FERC事務局は同社の回答を見直している。今回の書簡によると、その結果は同社提案に対するFERC最終決定に織り込まれる。
  • 米エンジニアリング企業Zachry Holdings, Inc.(ZHI)社は2024年5月21日、Golden Pass LNG(GPX)輸出プロジェクト関連諸問題を解決する時間とフレキシビリティーを確保する、裁判所管理下での連邦破産法第11条手続きを開始したことを発表した。ZHIは、「GPXおよびその株主QatarEnergy、ExxonMobil の日程や要望に対応するため、高い水準あるいはそれ以上」を維持してきた、と述べた。同プロジェクトの「リードコントラクターとして、ZHIは先ずCOVID-19パンデミック、さらに最近国際地政諸問題による困難を切り抜けてきた。このような予想外の困難から、目標を達成しつつプロジェクトの人員を確保し続けることで、経済的な困窮につながった」と述べた。発表によると、今回の手続きでZHIは「GPXプロジェクトからの構造的な撤退開始へのメカニズムを得る」こととなるとしている。
  • アブダビADNOC社は2024年5月20日、NextDecade Corporation社の米テキサス州Rio Grande LNG(RGLNG) 輸出プロジェクトフェーズ1(第1 – 3トレイン)11.7%持分を取得したことを発表した。両社は第4トレインからの20年間LNG引き取り契約を発表した。RGLNGフェーズ1の出資分は、Global Infrastructure Partners(GIP) 傘下の投資機関を通じて取得された。ADNOCはGIP既存出資分の一部を取得した。今回の買収はADNOCにより米国での最初の戦略的投資である。引き取り契約は年間190万トン・FOB条件で、価格はヘンリーハブ指標連動、FIDが条件となる。
  • Glenfarne Energy Transition LLC社は2024年4月23日、子会社Texas LNG Brownsville LLC社がEQT Corporationとの間で、LNG追加年間150万トン・20年間の天然ガス液化業務に関して、2件目のHOAを締結したことを発表した。この取引により、Texas LNGによるEQT社とのHOA総量は年間200万トンに増加する。 Texas LNGは2028年に商業運転開始を計画している。
  • Delfin LNG, LLC社による2017年3月13日付 ROD(決定確認書)に基づくルイジアナ州沖大水深港湾設備所有・建設・操業ライセンス発行を求めるMARAD(連邦海事局)への申請が、同プロジェクトの所有権・設計・資金調達法・操業に関する2017年 ROD 以降の広範囲の変更を理由として、2024年4月22日に却下された。
  • 米ルイジアナ州プラクミンズ郡で陸上新規LNG輸出プロジェクトを開発する Gulfstream LNG Development社は2024年5月16日、年間400万トンのモジュラー方式輸出設備計画に関して、FERCからプレファイリング許可手続き(公式許可申請前の事前審査手続き)開始の承認を受けた。同設備は、ガス処理設備2系列、LNG生産能力年間140万トンの電動液化設備3系列、200,000 m3 LNG貯蔵タンク1基およびタンク防護システム、海洋荷役用桟橋2本(小規模バージ・船舶用1本および海洋LNG輸送船舶用大型1本)、現場ガス火力発電設備1基で構成されることとなる。
  • Pembina Pipeline Corporation社は2024年5月16日、Cedar LNGが2024年6月のFIDを見込んでいると述べた。
  • New Fortress Energy(NFE)社は2024年5月8日、同年第1四半期業績報告の中で、1件目のFLNG設備を完工済で、5月にLNG生産、6月に最初のカーゴを見込んでいることを明らかにした。
  • DOEは2024年5月16日、Gato Negro Permitium Uno, S. de R.L. de C.V.(Gato)社による、2027年9月から20年間メキシコへパイプラインで最大年間236 Bcf (日量0.647 Bcf)、また同地からFTA (自由貿易協定) 諸国への年間203 Bcf (日量0.556 Bcf) LNG輸出の長期承認申請を受領した。Gatoは、コリマ州で計画中のGato Negro Manzanillo液化プロジェクトから船舶でLNGとして再輸出する計画である。同プロジェクトは合計で年間400万トンを生産する4液化トレインを含むこととなる。

 

欧州および周辺地域

  • 欧州理事会は2024年5月21日、再生可能ガス、天然ガス、水素の共通域内市場規則を確立し、既存EUガス法制を改正する規制・指令を採択した。指令は、化石ガスの長期契約は2049年を超えて締結しない、と規定している。規制は加盟国がロシア連邦、ベラルーシからのガス引き渡しを制限できる文言を含んでいる。
  • 英電気・ガスインフラストラクチャー企業National Grid社は2024年5月23日、新しい5か年計画とともに、Grain LNG基地を売却する意向を明らかにした。
  • 英ウェールズ地方南西でLNG受入基地を運営するDragon LNGは2024年5月16日、2029年9月から利用可能となる年間9 bcm容量の関心募集(EOI)手続きを開始したことを発表した。英国3件のLNG受入基地のひとつをDragonは2009年から操業している。同基地は最大217,500 m3の船舶に対応でき、貯蔵タンク2基合計容量320,000 m3を有する。払出容量は日量298 GWh (25.6 mcm)で、2018年に再液化設備も稼働した。EOIは、2024年7月1日まで実施し、長期容量取得に関心のある企業は関心表明を招請されている。Dragonは2024-2025年冬季に容量オークションを計画している。
  • オランダのエネルギーインフラストラクチャー企業VTTI社は2024年5月8日、 Ancala社との間で、後者から英Dragon LNG 輸入基地所有企業Dragon LNG Group Limited社の50%持分を取得する契約を発表した。Dragon LNG Group Limited社子会社Dragon Energy Limited社は、同基地用地に太陽光発電システムを開発済で、さらに追加で再生可能発電プロジェクトを開発中である。
  • 商船三井(MOL)は2024年4月25日、ポーランドGAZ-SYSTEM S.A.とのGdańsk プロジェクト向け新造FSRU 1隻の長期傭船契約を締結したことを発表した。2027年竣工を目指し韓国の現代重工HDにより建造され、商船三井が船舶管理を担う予定。
  • トルコBOTAŞ社は2024年5月9日、ExxonMobilとの年間最大250万トンのLNGを10年間引き取るLNG購入契約を発表した。

 

その他地域

  • アブダビADNOC社は2024年5月8日、ドイツEnBW Energie Baden-Württemberg AG(EnBW)社と、年間60万トンのLNGに関する15年間のHoAを発表した。このLNGは、ADNOCのRuwais LNGプロジェクトを中心に手当てされる。ADNOCはRuwais LNG設備が、中東・アフリカ地域でクリーン電力により稼働する最初のLNG輸出設備となり、排出を最小化し効率を促進するため最新技術・AI (人工知能)を活用することとなるとしている。本合意は、同プロジェクトから3件目の長期LNG供給合意となる。引き渡しは2028年で本格操業開始とともに開始が見込まれる。同プロジェクトは年間480万トンの2トレインで構成される。
  • カタールQatarEnergy社は2024年4月29日、中国船舶工业集团公司(CSSC)とQC-MaxサイズLNG 船舶18隻建造の契約を締結したことを発表した。各容量は271,000 m3、沪东中华造船(集团)有限公司(Hudong-Zhonghua)で建造される。現在同造船所で12 隻の既存型サイズのLNG輸送船舶が建造中で、その1隻目の引き渡しが2024年第3四半期に見込まれている。QC-MaxサイズLNG輸送船舶18隻中8隻は2028年から2029年に引き渡し予定で、残り10隻は2030年から2031年に引き渡し予定。
  • カタールQatarEnergy社は2024年4月29日、自社LNG輸送船団拡張プログラムのうちQC-Maxに関して、新規LNG輸送船舶9隻の運航に関して3船主と長期の定期傭船契約(TCP)を締結したことを発表した。これらTCP契約は、CMES(招商局能源运输股份有限公司=招商输船)、Shandong Marine Group(山东海洋集团有限公司)、China LNG Shipping (Holdings) Limited (中国液化天然气运输(控股)有限公司=CLNG)傘下の企業により担当される。QatarEnergy社は、5月8日、Qatar Gas Transport Company Limited(Nakilat)社との長期契約を発表した。NakilatはQC-Max クラスのLNG輸送船舶9隻を所有・運航することになる。QatarEnergyの船団拡張プログラムは、104隻の在来型LNG輸送船舶、18隻のQC-MaxクラスLNG輸送船舶の造船契約・定期傭船契約、合計122隻の超近代的船舶を含み、1隻目は2024年第3四半期引き渡しが見込まれる。
  • Oman LNGは2024年4月19日、トルコ BOTAŞ Petroleum Pipeline Corporation との間で、年間100万トン、DES条件で2025年から10年間のSPAを発表した。
  • Oman LNG 社は2024年4月22日、TotalEnergiesとの間で、年間80万トン、2025年から10年間のSPAを発表した。
  • TotalEnergies社、オマーン国有石油企業OQ社は、2024年4月22日、Marsa LNG プロジェクト(TotalEnergies(80%)・OQ (20%))Sohar港での年間100万トン容量建設のFIDを発表した。2028年第1四半期LNG生産開始予定で、基本的にガルフ地域でのLNGバンカリング燃料供給用途となる。同LNG設備は100%電動、太陽光発電供給を受ける。主EPC契約はLNG設備がTechnip Energies、165,000 m3 LNG タンクがCB&Iに決定している。
  • Höegh LNG Holdings Ltd.社は2024年5月2日、自社、豪Australian Industrial Energy Pty Ltd(AIE)社、エジプトEgyptian Natural Gas Holding Company(EGAS)社間のFSRU Hoegh Galleon配置に関する合意を発表した。同FSRUは、エジプト Ain Sokhnaに約19-20か月間配置後、豪Port Kembla で建設中のAIE社のLNG基地に配置される見込み。Höegh LNGとAIEは、2022年6月、Hoegh Galleon について15年間のFSRU傭船契約を発表した。EGASとの契約は2024年6月から2026年2月の暫定期間となる。
  • Kosmos Energy社は2024年5月7日、同年第1四半期業績報告にて、Greater Tortue Ahmeyim LNG プロジェクトに関し生産井4本の仕上げ、ハブ基地設備の引き渡し、FLNG生産設備のモーリタニア・セネガル沖現場への到着、海底設備の設置・接続および見込まれるFPSO接続・試運転等の進捗を説明、ガス生産開始は2024年第3四半期、LNG生産開始は同年第4四半期との見通しを示した。
  • TotalEnergies社は4月26日、2024年第1四半期業績のアナリスト向け説明会の中で、Mozambique LNGプロジェクトに関してコントラクター全社との間で実行に関して合意ができ、再入札や再設計の必要はないとのことを明らかにした。
  • ExxonMobil社は4月26日、2024年第1四半期業績報告のアナリスト向け説明会の中で、モザンビークでのLNG開発が陸上か沖合かの選択は、投資機会に対して生み出されるリターン、供給地点の競争力度合いに依存するとした。
  • Air Products社は2024年5月6日、モザンビークCoral South FLNG 設備に配置された自社二重混合冷媒LNGプロセス技術(AP-DMR™)・機器が生産量年間340万トンを超え、実機試験に合格したことを発表した。
  • アブダビADNOCは2024年5月22日、モザンビーク Rovuma 盆地第4鉱区におけるGalp社持10%買い取りを発表した。発表によれば、これによりADNOCは合計して生産量年間2,500万トンを超えるLNG生産シェアを得る。この持分には稼働中の Coral South FLNG設備、計画中のCoral North FLNG開発、計画中のRovuma LNG 陸上設備が含まれる。年間1,800万トンのRovuma LNG はモジュラー型・電動設計となる。
  • トルコKarpowershipは2024年5月7日、ブラジルPetrobrasとの天然ガス・発電分野での協力のためのMoI(関心合意)を発表した。
  • Black & Veatch社は2024年5月8日、コロンビア太平洋岸ブエナベントゥーラ港湾近くのLNG再ガス化基地・発電設備計画となるAndes Energy Terminal事業化調査を完了したことを発表した。
  • EIG子会社のMidOcean Energy社は2024年4月23日、Peru LNG における SK Earthon社の20%持分を買い取りについて、既に発表されていた合意事項の完了を発表した。PLNG 資産は、容量年間445万トンの天然ガス液化設備、全長408 kmパイプライン、130,000 m3貯蔵タンク2基、全長1.4 km海洋桟橋設備、トラックへの積み込み設備で構成されている。

 

(注: bcm: 10億m3、CCS: 炭素回収・貯蔵、DES: 持ち届け ex-ship、DOE: 米連邦エネルギー省、EPC: エンジニアリング・調達・建設、EPCI: エンジニアリング・調達・建設・設置、 EPCm: エンジニアリング・調達・建設管理、FEED: 基本設計、FERC: 米連邦エネルギー規制委員会、FID: 最終投資決定、FLNG: 浮体液化設備、FOB: 本船渡し、FSRU: 浮体貯蔵・気化設備、FSU: 浮体貯蔵化設備、HOA: 基本合意、MOU: 覚書、SPA: LNG売買契約)

 

 

作成協力 一般財団法人日本エネルギー経済研究所

 

添付ファイル