2024年6月
天然ガス・LNG価格動向
直近の値動き
アジア
- 北東アジアのアセスメントされたスポットLNG価格JKMは、豪Wheatstoneの生産停止による供給懸念や夏場の需要増もあり、6月13日に2023年12月以来の高値である13米ドル半ばを付けた。その後は買い意欲の落ち着きにより12ドル台まで下落している。
- JOGMECは5月の日本着スポットLNG月次価格(速報)について、同月以降に契約がなされて日本に入着するスポットLNG取引の平均価格(契約ベース)を9.9米ドルと発表した。また、同月中に日本に入着したスポットLNG取引の平均価格(入着ベース)を9.5米ドルと発表した。
- 財務省貿易統計速報に基づくと、2024年5月の日本平均LNG輸入価格は100万Btu当たり11.44米ドル、円建てでは1トン当たり92,193円となった。2024年2月の全日本平均原油輸入CIF価格(JCC: Japan crude cocktail)に大きな変化が無かったため、前月比概ね横ばいとなった。供給地域別では、米国産は10.14米ドル、ASEAN地域産が11.30米ドル、中東産が11.45米ドル、ロシア産が12.09米ドルであった。また、5月の北東アジア各国の平均輸入価格は、中国10.53米ドル、韓国11.18米ドル、台湾9.88米ドルであった。全日本平均原油輸入CIF価格は2024年5月には1バレル当たり88.87米ドルとなった。円建てでは1キロリットル当たり86,908円となった。
- 5月の日本のLNG輸入量は、487万トンと前年同月比で5.6%増加した。5月の中国のLNG輸入量は657万トンと前年同月比で3.4%増加、韓国は362万トンと前年同月比で16.5%増加、台湾は171万トンと前年同月比9.1%増加となった。
米国
- 米国スポットガス価格HHは、発電用天然ガス需要の増加を受けて6月11日には3.1米ドルまで上昇した。その後EIAにより堅調な在庫水準が示されたこともあり14日には2.9米ドルまで下落。主要液化施設へのフィードガス供給量の減少、米国の堅調な天然ガス生産量及び在庫を背景に24日には2.8米ドルとなっている。
欧州
- 欧州ガススポット価格TTFは、10米ドル半ばから11米ドル半ばで推移。ノルウェーガス生産設備の計画外メンテナンスによる供給減が発生するも、需要は弱いままで価格への影響は限定的であった。下旬には気温が平年を下回るとの予報や潤沢な在庫といった背景もあり価格の上昇傾向は見られず。
中長期の値動き
- JKMは2023年6月、JKMは欧州ガス価格の影響等を受け12米ドル付近で推移したが、7月には高在庫と低需要を背景に若干軟化し11米ドル付近で推移した。8月には豪州の主要プロジェクトでのストライキ発生の可能性が生じ、価格はやや上昇基調に入り、9月にストライキが実施された後は15米ドルまで上昇した。10月には中東での紛争の勃発等を受け17米ドルまで上昇したが、11月には地政学的リスクがいくらか緩和され概ね14米ドルで推移した。12月には豊富な供給と軟調な需要によりJKMは11米ドルまで下げ、年が明けた1月においても傾向は変わらず概ね9米ドルで推移した。2月に入り北東アジア地域での旧正月後には下落基調は更に拍車がかかり8米ドルを割ったが、3月には短期的な需要が発生したことなどから一時10米ドルに近づいた。4月半ばには中東情勢激化への懸念等もあり中旬に11米ドル前半まで急騰するも、下旬には緊張緩和により10米ドル前半で推移。5月は夏季に向けた需要増を背景に、下旬には11米ドル後半から-12米ドル台前半を推移。6月も夏場の需要増等を背景に一時13ドル半ばまで上昇。
- 日本平均LNG輸入価格は、2020年3月以降の原油価格急落の影響により、8月から10月にかけて2005年1月以来の低水準となる5米ドル台まで下落、その後原油価格上昇に伴い、12月には7米ドル台に上昇した。堅調な原油価格の値動きに応じて、2021年2月には9米ドル半ばまで上昇後、3月は7米ドル半ばまで下落した。その後は、2022年6月までの日本平均原油価格の上昇に伴って、続く18ヶ月間は概ね一貫して上昇し、2022年9月には過去最高の22.73米ドルを記録した。その後、原油価格の2022年7月以降の下降傾向も一因として、2023年4月以降は11から13米ドル台で推移している。
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(出典)
米国HH(Henry Hub)価格: NYMEX Futures and Options, CME Group
蘭TTF(Title Transfer Facility)価格:ICE Endex, Intercontinental Exchange
JKM: LNG Japan/Korea Marker© 2024 by S&P Global Platts, a division of S&P Global Inc.
JOGMECスポットLNG価格:JOGMEC「日本着スポットLNG月次価格」、2021年3月までは経済産業省「スポットLNG価格調査」を出典とする
日本平均LNG輸入価格: 財務省貿易統計をもとに作成
EUA(EU ETS): ICE Endex, Intercontinental Exchange
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天然ガス・LNG在庫動向
日本
- 2024年3月末の国内LNG在庫量は395万トンで、前月比14.3%、65.7万トンの減少、前年同月比では27.8%減少し、過去5年平均値を66.2万トン下回った。
- 3月末のガス事業用LNG在庫量は216万トンで、前月比1.1%増、前年同月比では18.4%減となった。3月の都市ガス用LNG消費量は前年同月比8.5%増の278万トン、都市ガス用LNG受入量は前年同月比3.6%増の280万トンだった。
- 3月末の発電燃料用LNG在庫量は178万トンで前月比27.6%減、前年同月比36.7%の減少となった。3月の発電燃料用LNG消費量は、前年同月比で19.9%増の358万トン、発電燃料用LNG受入量は、前年同月比で1.5%増の337万トンであった。
- 2024年6月19日に経済産業省が発表した「発電用LNGの在庫状況」によると、大手電力事業者の6月16日時点のLNG在庫は214万トンであった。2023年6月末比では6万トン上回り、過去5年間の6月末平均を13万トン上回っている。
(出典)
経済産業省「ガス事業主生産動態統計」及び「電力調査統計・火力発電燃料実績」をもとに作成したもので、これら月末在庫を合算した値を国内在庫としてみなしたもの。なお、利用可能なデータは2008年1月以降のものであるため、過去5年平均は2013年1月分から計算している。
米国
- 2024年6月14日の米国天然ガス地下貯蔵有効稼働ガス在庫(ワーキングガス)は、米国エネルギー情報局(EIA)のデータによると、3.05Tcfで前月比12.0%増となった。在庫量は2023年の同時期と比較すると11.6%高く、過去5年平均値を561.0Bcf上回っている。
(出典)
米国エネルギー情報局(U.S. Energy Information Administration, EIA)のデータをもとに作成
欧州
- 2024年6月22日現在のAggregated Gas Storage Inventory(AGSI+)加盟各社中、EU加盟国各社が有する欧州天然ガス地下貯蔵在庫は851.5TWh(LNG換算5,632万トン相当)であった。これは前年同期より0.2%、2.0TWh(LNG換算13万トン相当)上回るものだった。貯蔵容量に対する充填率は75.1%であり、前年同期の75.2%を下回り、過去5年間平均値の64.9%を上回った。貯蔵容量の大きなドイツ、イタリア、オランダの充填率はそれぞれ78.3%、79.7%、67.4%であった。
(出典)
Aggregated Gas Storage Inventory(AGSI), Gas Infrastructure Europeのデータをもとに作成。なお、利用可能なデータは2011年1月以降のものであるため、過去5年平均は2016年1月分から計算している。
- 2024年6月22日現在のAggregated LNG Storage Inventory(ALSI)加盟各社が有する欧州LNG在庫量は472.8万m3で、前月比18.4%増加、前年同日比17.0%増加、過去5年平均値を5.7%上回っている。貯蔵容量に対する充填率は56.1%であり、前年同期の46.3%を上回っている。
(出典)
Aggregated LNG Storage Inventory(ALSI), Gas Infrastructure Europeのデータをもとに作成。なお、利用可能なデータは2012年1月以降のものであるため、グラフ中の過去10年平均及び過去10年平均幅の値については、5年未満の値が含まれる。
天然ガス・LNGプロジェクト動向
ハイライト
- アブダビADNOCがRuwais LNGプロジェクトへのFIDを発表、2024年の世界初の大型LNG生産プロジェクトへのFIDとなった。5月末から6月中旬にかけて、世界で年間900万トン分以上のLNG販売ターム取引(SPA、HOAを含む)が発表された。この内1件はカタールから台湾CPC向け年間400万トン、27年間の超大型案件だった。短期LNG市場に関しては、LNG生産設備の計画外停止に伴う不確実性の兆候が見られた。
アジア・オセアニア地域
- 北海道ガス、豪Santosは、2024年5月28日、石狩LNG基地向けLNG SPAを発表した。2027年から10年間、年間40万トンをDES条件で、Santosポートフォリオから引き渡す。両社はCCS、e-メタンでも協力を意図している。
- 川崎汽船は、2024年6月12日、Tree Energy Solutions(TES)と、2050年の海運業界における温室効果ガス排出量ネットゼロへの移行に向け、e-メタンに関する包括的な共同検討を開始することに合意したことを発表した。TESが生産したe-メタンの船舶燃料としての利用可能性の検討、制度設計の研究、将来のe-メタンおよび原料としてのCO2輸送に向けたe-メタン輸送船や液化CO2輸送船の管理・運航に関する技術的な提携を行うとしている。
- Vitolは、2024年5月28日、KOMIPO(韓国中部発電)と自社が既存長期LNG SPA延長に合意したことを発表した。オリジナルの取引は2011年に締結され、引き渡しは2015年に開始、VitolはKOMIPOに10年間で400万トン以上のLNGを供給した。2025年から2028年、Vitolは年間3カーゴを供給する。
- 日本郵船は、2024年5月30日、中国の海運会社CMES(China Merchants Energy Shipping Co., Ltd)の子会社CMLNG(CMES LNG Shipping Company Limited)、CNOOC(中海石油)グループの子会社CETS(CETS Investment Management(HK)Co., Ltd.)と共同で、船舶管理会社OPearl LNG Ship Management Company Limitedを2023年12月に設立し、4月18日に香港でオフィス開所式を行ったことを発表した。
- ベトナムPV Gas(Petro Vietnam Gas)は、2024年6月12日、LNG輸送船AMANIが自国5件目のLNGカーゴを積載してブンタウ県Thị Vải LNG基地に着桟したことを発表した。このカーゴはブルネイからで、Petro China International(Singapore)が供給した。
- フィリピンFirst Gen(FGEN)は、2024年6月13日、LNGカーゴ1件の国際入札の結果、発注先をTG Global Trading(東京ガス)に決定したことを発表した。東京ガスは125,000m3 1カーゴ、2024年7月にDES条件でFGEN子会社First Gen Singaporeに供給する。バタンガス市First Gen Clean Energy Complex(FGCEC)のBW Batangas FSRUに荷揚げされることとなる。
- TotalEnergiesは、2024年6月4日、アジアにおける2件のLNG中期・長期契約を発表した。インド向け年間80万トン・2027年から10年間のSPAをIndian Oil Corporation(IOCL)との間で、韓国向け年間50万トン・2027年から5年間のHoAをKOEN(Korea South-East Power:韓国南東発電)と締結した。
- Shell、シンガポールPavilion Energyは、2024年6月24日、Shell Eastern Trading、Temasek間接・完全所有子会社Carne Investments間で、ShellがPavilion Energy株式100%を買い取る契約を締結したことを発表した。Pavilion Energyのポートフォリオは、年間650万トンの長期LNG売買・供給契約で構成される。英Isle Grain LNG基地年間200万トンの長期気化容量、シンガポール・スペインでの気化アクセス、MEGI(M型電子制御式ガスインジェクションディーゼルエンジン)LNG輸送船舶3隻、TFDE(三元燃料ディーゼル機関電気推進方式)船舶2隻定期傭船契約を含む。LNGバンカリングビジネスも有し、1隻目は2024年初に引き渡しを受けている。Pavilion Energyのパイプラインガスビジネスは、今回の取引に含まれず、この取引の完了前に、Temasek子会社Gas Supply(GSPL)に移管される。Pavilion Energyのタンザニア第1・第4鉱区における20%持分は今回の取引に含まれていない。
- マレーシアGenting Berhadは、2024年6月20日、間接子会社Genting Oil & Gas Sdn Bhdと間接子会社PT Layar Nusantara Gas(PTLNG)が、惠生清洁能源(Wison New Energies Co., Ltd.)と、年間120万トン容量のFLNG(浮体LNG生産)設備のEPCIC(エンジニアリング・調達・建造・設置・コミッショニング)契約を締結したことを発表した。Wisonは、中国の南通、舟山のヤードでこのFLNG設備を建造する。ヤードでのパフォーマンス試験後に、インドネシアのウェストパプア州Teluk Bintuniの最終目的地へと曳航され、最終コミッショニングテストが実施されることとなる。舟山ヤードからの出航目標は2026年第2四半期、LNG生産開始目標は同年第3四半期となる。原料ガスはKasuri鉱区Asap、Merah、Kido構造となる。同鉱区権は、Genting Berhadの間接子会社Genting Oil Kasuri Pte Ltd(GOKPL)に、2008年5月、当時のインドネシア石油・ガス規制機関BPMIGAS(現在はSKKMIGASに引き継がれている)との生産物分与契約(PSC)により与えられた。インドネシア政府は、3構造の修正第1段階開発計画を2023年2月9日に承認した。これによると、同FLNG設備向けに18年間、ウェストパプア州に建設予定のアンモニア・尿素製造設備向けに17年間、天然ガスが供給できることとなる。
- 国際協力銀行(JBIC)、豪Woodside Energyは、2024年5月30日、融資金額10億米ドル(JBIC分)を限度とする貸付契約を発表した。民間金融機関との協調融資により実施するもので、協調融資総額は14.50億米ドルとなる。Woodsideが、豪州西豪州北西部沖合Scarboroughガス田を開発するために必要な資金を融資する。
- Chevron Australiaは、AEMO(豪州エネルギー市場運営機関)掲示板の「中期容量見通し」データによると、Wheatstone国内ガス供給が、洋上プラットフォームで進行中の修繕作業の期間中、2024年6月26日まで停止すると見込んでいる。Chevronは、6月10日、同プラットフォーム燃料ガスシステムの修繕のため、その運転を停止した。
- ニュージーランド政府は、2024年6月9日、陸上Taranaki地域以外での石油類開発禁止の解除を鉱物資源法改正に織り込むことを明らかにした。同法案は、2024年後半議会に提案される。
北米地域
- 石油資源開発(JAPEX)は、2024年5月30日、JERA孫会社GCLH(Gulf Coast LNG Holdings LLC)持分の15%を、JAPEX(U.S.)Corporation(JUS)を通じて、JERA Americas Inc.から取得することで合意したことを発表した。GCLHはFLNG(Freeport LNG Development, L.P.)に25.7%出資している。
- Freeport LNG Development, L.P.は、2024年5月30日午前、Freeport LNG設備の第2系列が、プロパンコンプレッサーのサージ防止弁の問題によりトリップしたことをTCEQ(テキサス州環境品質委員会)に報告した。この事故は、液化フレアシステムでのベンティングにつながった。運転員達は16時間後、同系列を再稼働した。また、同社は同日付、FERC宛書簡で、TCEQが自社に2023年8月露見したTCEQ規則・同州健康安全規則違反について330,750米ドルの罰金を科したことを明らかにした。
- FERCは、2024年6月10日、Venture Globalに対して、当事者間の合意、あるいは行政法判事が発行する保護合意受領の5日以内に買主達が要求している文書のコピーを提供することを命じた。FERCは、買主が要求した「高度に守秘性高い」文書が、その利用・公表に関する保護協定により適切に保護し得ない理由をVenture Globalは示していない、と述べた。2024年2月15日、Venture Global Calcasieu Passは、ルイジアナ州キャメロン郡Calcasieu Pass LNG設備の公式稼働開始日程の延長申請を提出した。Venture GlobalはFERCによる5年間期限の1年間延長、完成日程を2025年2月21日まで延ばすことを求めた。廃熱回収ボイラーの信頼性が低いためにコミッショニング(試運転)段階の継続が必要としていた。
- Venture Global LNGは、2024年6月3日、FERCによる2024年5月29日付、同社のCP2LNGプロジェクト申請に関わるCalcasieu Pass LNGプロジェクトにおける大気汚染物質排出についての追加情報要請に回答を提出した。
- Venture Global LNG、ウクライナD.TRADING(DTEK傘下)は、2024年6月13日、同国・東欧向けLNG供給のHOAを発表した。D.TRADINGはVenture GlobalのPlaquemines LNG設備から、2024年から2026年末までカーゴを購入する。さらにD.TRADINGは、最大年間200万トンのLNGを、Venture Globalの第3設備CP2LNGから、20年間購入する。HOAでは気化基地容量・ガスパイプライン容量へのアクセスに関して協力するとしている。CP2第1段階は、ExxonMobil、Chevron、JERA、New Fortress Energy、INPEX、China Gas(中国燃気控股有限公司)、SEFE、EnBWとの20年間SPAを通じて販売済みである。Venture Globalは規制機関からのプロジェクト承認を待つ一方で、オフサイトでの建設を開始している。
- FERCは、2024年6月12日、当初同月4日に公表し、その後修正された現場調査報告書にて、Golden Passパイプライン拡張プロジェクトの稼働開始見込みを「2025年前半のいずれかの時点」と述べた。LNG輸出プロジェクトのリードコントラクター(Zachry)は2024年5月21日に破産宣告、「完成日程に影響する可能性がある」と述べた。FERCは過去の報告書にて、同パイプライン拡張プロジェクトの稼働開始見込みを「2024年後半よりも前のいずれかの時点」と述べていた。今回の報告書は液化系列の時期に言及しなかった。Golden Pass LNG Pipeline LLC(GPPL)は、6月6日、ルイジアナ州スタークスのMP69CS(コンプレッサーステーション)現場で、「大雨による洪水状況による作業環境の危険性、周辺混乱の可能性」対応のため、24時間・7日間での作業日程を一時的に認めることをFERCに申請した。千代田化工建設株式会社は、6月19日、Golden Pass LNG Terminal LLCが18日、Zachryの本プロジェクトからの離脱を求める申し立て、および第1系列建設工事再開に必要な業務に関して、自動停止の効力からの除外を求める申し立てを行ったことを明らかにした。今後、審理を経て、裁判所がZachryの本プロジェクトからの離脱に関して正式に判断することとなる、と千代田化工は述べた。
- サウジアラビアAramco、Next Decadeは、2024年6月13日、両社子会社が米テキサス州ブラウンズヴィル港湾Rio Grande LNG設備第4系列からの引き取るに関して20年間LNG SPAに向けた拘束力ないHOAを締結したことを発表した。Aramcoは、年間120万トン・20年間を、FOB条件・ヘンリーハブ価格は連動価格で購入する見込み。
- Tellurian Inc.、Aethon Energy Management LLCは、2024年5月29日、AethonがTellurianの上流部門資産を買い取る契約、Aethonが年間200万トンのLNGをTellurianのDriftwood LNG設備より購入するHOAを発表した。
- Glenfarne Energy Transition傘下のTexas LNG Brownsville LLCは、2024年5月24日、FERCに、建設完了・稼働開始までの期限を2029年11月29日まで延長する申請を提出した。この提出文書によると「訴訟が続いてプロジェクトが遅延」とのこと。Glenfarne Energy Transitionは、6月6日、Texas LNGプロジェクトがテキサス州税制優遇を、キャメロン郡から承認されたことを発表した。Texas LNGは2024年内に建設開始を見込まれる。Texas LNGは、テキサス州ブラウンズヴィル港湾で建設される計画の年間400万トンのLNG輸出設備である。
- DOEは、2024年5月31日、Delfin LNGについて非自由貿易協定(non-FTA)諸国への輸出許可に関する6月1日の期限を、4月のMarad(連邦海事局)による当初申請からの「大幅変更」による洋上開発建設承認の却下に鑑み、いったん凍結した、と述べた。今回のDOEの措置は、Delfinによる許可期間の5年間延長の申請を認めるものではなく、延長に関して判断できるまで既存許可を維持しておくこととなる。
- New Fortress Energy Inc.(NFE)は、2024年6月14日、メキシコ国アルタミラ沖自社1件目のFast LNG設備より、今後10日以内にLNG生産開始、7月に第1カーゴ引き渡し見込みと発表した。
欧州および周辺地域
- 欧州連合理事会(閣僚級)は、2024年5月27日、メタン排出を追跡・削減する規制を採択した。エネルギー部門でのメタン排出を測定・報告・認証する新基準を導入する。
- ドイツECOnnect Energyは、2024年6月12日、ヴィルヘルムスハーフェンへのLNG輸入のため、桟橋不要型IQuay方式を設置のためTree Energy Solution(TES)・ENGIE間の合弁事業FSRU Wilhelmshavenと契約を締結したと発表した。国有DET(Deutsche Energy Terminal GmbH)が包括的な顧客である。このDETプロジェクトは、ドイツで2025年までに同国のエネルギー強化を図る2022年5月に成立したLNG促進法に支援される優先プロジェクトにリストアップされている。
- フィンランドGasgridは、2024年5月28日、Inkoo LNG基地は2024年分予約容量の95%を販売済みとした。2025年分の予約容量販売手続きは、2024年7月に開始する。
- ドイツUniperは、2024年6月12日、長期ロシア産ガス供給契約を打ち切り、ロシアGazprom Exportと長期ガス供給関係を法的に終結することを決定したことを発表した。この決定は、6月7日、仲裁機関がUniperに契約打ち切り権を認め、2022年半ば以降Gazprom Exportが供給しなかったガス量についてUniperの損害額130億ユーロ超を認めたことで可能となった。
- 米連邦財務省は、2024年6月12日、ロシアの将来のエネルギー生産を標的とする同国に対する追加制裁を発表した。米財務省はObsky LNG、Arctic LNG 1、Arctic LNG 3プロジェクトに関与する各社・機関を標的としている。
- 欧州連合理事会(閣僚級)2024年ベルギー議長によると、2024年6月20日、EU大使レベルでロシアに対する第14次の制裁パッケージに合意した。新制裁は初めてLNGを標的としている。EU各社は引き続きロシア産LNGを購入できるが、他諸国への再輸出を禁じられる。Arctic LNG 2、Ust Luga、Murmanskの3件のLNGプロジェクトも標的としている。
その他地域
- アブダビADNOCは、2024年6月12日、Ruwais LNGプロジェクトのFID、55億米ドル(202億UAEディルハム)でのEPC契約発注先決定を発表した。発表によれば、ルワイス工業都市での同プロジェクトは、中東・北アフリカ(MENA)地域で初めてクリーン電力により運転するLNG輸出設備となり、世界で最低級のカーボン原単位でのLNG生産設備になる。EPC発注額の55%は、ADNOC国内価値創造(ICV)プログラムによりUAE経済に還流することとなる。EPC契約は、Technip Energiesを筆頭とする、日揮グローバル、NMDC Energyの合弁事業に発注決定した。Ruwais LNGプロジェクトは、年間480万トンの2液化系列からなり、総容量は年間960万トンとなる。人工知能(AI)、安全性向上・排出最小化・効率向上の最新技術を活用する。
- カタールQatar Energyは、2024年6月5日、台灣CPCとのLNG長期供給、North Field East LNG拡張プロジェクト(NFE)でのパートナーシップを対象とする2契約を発表した。両社は年間400万トン、NFEプロジェクトからCPC向け27年間のLNG SPAを締結した。両社はQatar EnergyがCPCに、NFEの1トレイン容量年間800万トン相当の5%分を譲渡する株式売買契約を締結した。
- TotalEnergiesは、2024年6月20日、ナイジェリア陸上OML58陸上鉱区40%所有オペレーターとして、Nigerian National Petroleum Corporation Ltd(NNPCL,60%)とともにUbetaガス田開発のFIDを行った。リバーズ州Port Harcourt北西80kmに位置するOML58鉱区には、生産中のObagi油田、Ibewaガス・コンデンセート田が含まれる。OML58ガス生産は、Obite処理センターで処理され、同国国内市場、Nigeria LNG(NLNG)設備の両方に供給されている。Ubetaガス・コンデンセート田は、新規6井構造で開発し、既存Obite処理設備に11km埋設パイプラインで接続される。生産開始は2027年と見込まれ、プラトー生産は日量3億立方フィート(コンデンセート込みで原油換算日量70,000バレル相当)。Ubetaからのガスは、Bonny IslandのNLNG液化設備に供給される。同設備は、年間2,200万トンから3,000万トンへと容量拡張が進行中。TotalEnergiesは15%出資を有している。UbetaはOML58既存ガス処理設備を活用し、低排出・低コストの開発である。Obiteにて建設中の5MW太陽光発電設備、掘削リグの電化により、炭素強度はさらに下げられる。
- エンジニアリング企業Technip Energiesは2024年5月24日、オペレーターbpは同6月4日、アフリカ西部、モーリタニア・セネガル沖でbpが操業するGreater Tortue Ahmeyim(GTA)ガス田に第1段階LNG開発用のFPSO(浮体生産・貯蔵・積み出し)設備が到着したことを発表した。FPSOは全長270m、幅54m、高さ31.5mである。沖合40km、水深120m地点に繋留されている。同プロジェクトは、海底システムを通じて、沖合120kmの大水深地点の資源層よりガスを生産することとなる。GTA第1開発は、年間230万トンのLNGを20年間以上生産することが見込まれる。FPSOはガスから水分、コンデンセート、不純分を除去した後、パイプラインにより、10km沖合のハブターミナルのFLNG船舶へと移送されることとなる。
- CNOOC Limited(中国海洋石油有限公司)は、2024年5月24日、自社子会社5社が、石油類資源開発・生産鉱区権契約(EPCCs)を、モザンビーク鉱物資源・エネルギー省(MIREME)、同国国有炭化水素エネルギー企業Empresa Nacionalde Hidrocarbonetos(ENH)との間で、同国沖合鉱区5件に関して締結したことを発表した。これら鉱区の探査開発期間の初期段階は4年間となる。5子会社は探査開発段階のオペレーターとなり、5鉱区権を個々別に所有する。
(注:bcm:10億m3、CCS:炭素回収・貯蔵、DES:持ち届けex-ship、DOE:米連邦エネルギー省、EPC:エンジニアリング・調達・建設、EPCI:エンジニアリング・調達・建設・設置、EPCm:エンジニアリング・調達・建設管理、FEED:基本設計、FERC:米連邦エネルギー規制委員会、FID:最終投資決定、FLNG:浮体液化設備、FOB:本船渡し、FSRU:浮体貯蔵・気化設備、FSU:浮体貯蔵化設備、HOA:基本合意、MOU:覚書、SPA:LNG売買契約)
作成協力 一般財団法人日本エネルギー経済研究所
添付ファイル
- 日本のLNG在庫量(28.6KB) (2024/6/24更新)
- 米国天然ガス地下貯蔵量(60.0KB) (2024/6/24更新)
- 欧州天然ガス地下貯蔵量(430.8KB) (2024/6/24更新)
- 欧州LNG在庫量(255.8KB) (2024/6/24更新)