2024年7月
天然ガス・LNG価格動向
直近の値動き
アジア
- 北東アジアのアセスメントされたスポットLNG価格JKMは、7月はじめは12米ドル半ばであったところ、十分な供給量を背景に10日には11米ドル半ばまで下落した。その後は価格下落による購入意欲の高まりを受け短期的に需給が引き締まったこともあり、24日には12米ドル前半となっている。
- JOGMECは6月の日本着スポットLNG月次価格(速報)について、同月以降に契約がなされて日本に入着するスポットLNG取引の平均価格(契約ベース)を非公表とした。また、同月中に日本に入着したスポットLNG取引の平均価格(入着ベース)を10.0米ドルと発表した。
- 財務省貿易統計速報に基づくと、2024年6月の日本平均LNG輸入価格は100万Btu当たり11.46米ドル、円建てでは1トン当たり93,039円となった。2024年2月と3月の全日本平均原油輸入CIF価格に大きな変化が無かったため、前月比概ね横ばいとなった。供給地域別では、米国産は10.83米ドル、ASEAN地域産が11.53米ドル、中東産が11.11米ドル、ロシア産が12.01米ドルであった。また、6月の北東アジア各国の平均輸入価格は、中国10.72米ドル、韓国11.50米ドル、台湾10.16米ドルであった。全日本平均原油輸入CIF価格(JCC: Japan crude cocktail)は2024年6月には1バレル当たり87.85米ドルとなった。円建てでは1キロリットル当たり86,543円となった。
- 6月の日本のLNG輸入量は、457万トンと前年同月比で0.8%増加した。6月の中国のLNG輸入量は562万トンと前年同月比で4.6%減少、韓国は311万トンと前年同月比で6.2%増加、台湾は195万トンと前年同月比31.9%増加となった。
- 2024年上半期(1-6月)における日本のLNG輸入量は3,241万トンと前年同期比0.7%減、中国は3,800万トンと前年同期比13.9%増、韓国と台湾を加えた上記4市場合計では10,399万トンと前年同期比5.2%増となった。
米国
- 米国スポットガス価格HHは、6月中旬からの米国の堅調な天然ガス生産量及び在庫を背景とした下落基調が続き、7月17日には2.0米ドルまで下落した。その後フリーポートLNGへのフィードガス供給量増加もあり、23日には2.2米ドルとなっている。
欧州
- 欧州ガススポット価格TTFは、7月上旬は需要の弱さを受けて下落基調であり、10日には9.8米ドルとなった。その後はフリーポートLNG復旧の不透明さを受け16日に10.5米ドルを付けるも、これが復旧したこともあり下旬には下落基調となっている。
中長期の値動き
- JKMは2023年6月、JKMは欧州ガス価格の影響等を受け12米ドル付近で推移したが、7月には高在庫と低需要を背景に若干軟化し11米ドル付近で推移した。8月には豪州の主要プロジェクトでのストライキ発生の可能性が生じ、価格はやや上昇基調に入り、9月にストライキが実施された後は15米ドルまで上昇した。10月には中東での紛争の勃発等を受け17米ドルまで上昇したが、11月には地政学的リスクがいくらか緩和され概ね14米ドルで推移した。12月には豊富な供給と軟調な需要によりJKMは11米ドルまで下げ、年が明けた1月においても傾向は変わらず概ね9米ドルで推移した。2月に入り北東アジア地域での旧正月後には下落基調は更に拍車がかかり8米ドルを割ったが、3月には短期的な需要が発生したことなどから一時10米ドルに近づいた。4月半ばには中東情勢激化への懸念等もあり中旬に11米ドル前半まで急騰するも、下旬には緊張緩和により10米ドル前半で推移。5月は夏季に向けた需要増を背景に、下旬には11米ドル後半から-12米ドル台前半を推移。6月も夏場の需要増等を背景に一時13米ドル半ばまで上昇。7月は需要が低調ながら価格下落による短期的な購入意欲の高まりもあり11米ドル後半から12米ドル前半を推移。
- 日本平均LNG輸入価格は、2020年3月以降の原油価格急落の影響により、8月から10月にかけて2005年1月以来の低水準となる5米ドル台まで下落、その後原油価格上昇に伴い、12月には7米ドル台に上昇した。堅調な原油価格の値動きに応じて、2021年2月には9米ドル半ばまで上昇後、3月は7米ドル半ばまで下落した。その後は、2022年6月までの日本平均原油価格の上昇に伴って、続く18ヶ月間は概ね一貫して上昇し、2022年9月には過去最高の22.73米ドルを記録した。その後、原油価格の2022年7月以降の下降傾向も一因として、2023年4月以降は11から13米ドル台で推移している。
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(出典)
米国HH(Henry Hub)価格: NYMEX Futures and Options, CME Group
蘭TTF(Title Transfer Facility)価格:ICE Endex, Intercontinental Exchange
JKM: LNG Japan/Korea Marker© 2024 by S&P Global Platts, a division of S&P Global Inc.
JOGMECスポットLNG価格:JOGMEC「日本着スポットLNG月次価格」、2021年3月までは経済産業省「スポットLNG価格調査」を出典とする
日本平均LNG輸入価格: 財務省貿易統計をもとに作成
EUA(EU ETS): ICE Endex, Intercontinental Exchange
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天然ガス・LNG在庫動向
日本
- 2024年3月末の国内LNG在庫量は395万トンで、前月比14.3%、65.7万トンの減少、前年同月比では27.8%減少し、過去5年平均値を66.2万トン下回った。
- 4月末のガス事業用LNG在庫量は211万トンで、前月比2.5%減、前年同月比では18.4%減となった。4月の都市ガス用LNG消費量は前年同月比0.05%減の213万トン、都市ガス用LNG受入量は前年同月比3.3%減の200万トンだった。
- 3月末の発電燃料用LNG在庫量は178万トンで前月比27.6%減、前年同月比36.7%の減少となった。3月の発電燃料用LNG消費量は、前年同月比で19.9%増の358万トン、発電燃料用LNG受入量は、前年同月比で1.5%増の337万トンであった。
- 2024年7月24日に経済産業省が発表した「発電用LNGの在庫状況」によると、大手電力事業者の7月21日時点のLNG在庫は235万トンであった。2023年7月末比では41万トン上回り、過去5年間の7月末平均を16万トン上回っている。
(出典)
経済産業省「ガス事業主生産動態統計」及び「電力調査統計・火力発電燃料実績」をもとに作成したもので、これら月末在庫を合算した値を国内在庫としてみなしたもの。なお、利用可能なデータは2008年1月以降のものであるため、過去5年平均は2013年1月分から計算している。
米国
- 2024年7月12日の米国天然ガス地下貯蔵有効稼働ガス在庫(ワーキングガス)は、米国エネルギー情報局(EIA)のデータによると、3.21Tcfで前月比5.4%増となった。在庫量は2023年の同時期と比較すると8.0%高く、過去5年平均値を466.6Bcf上回っている。
(出典)
米国エネルギー情報局(U.S. Energy Information Administration, EIA)のデータをもとに作成
欧州
- 2024年7月22日現在のAggregated Gas Storage Inventory(AGSI+)加盟各社中、EU加盟国各社が有する欧州天然ガス地下貯蔵在庫は944.4TWh(LNG換算6,247万トン相当)であった。これは前年同期より0.1%、0.8TWh(LNG換算5万トン相当)下回るものだった。貯蔵容量に対する充填率は83.2%であり、前年同期の83.4%を下回り、過去5年間平均値の73.4%を上回った。貯蔵容量の大きなドイツ、イタリア、オランダの充填率はそれぞれ87.8%、86.2%、76.4%であった。
(出典)
Aggregated Gas Storage Inventory(AGSI), Gas Infrastructure Europeのデータをもとに作成。なお、利用可能なデータは2011年1月以降のものであるため、過去5年平均は2016年1月分から計算している。
- 2024年7月22日現在のAggregated LNG Storage Inventory(ALSI)加盟各社が有する欧州LNG在庫量は447.6万m3で、前月比3.3%増加、前年同日比1.0%減少、過去5年平均値を1.9%上回っている。貯蔵容量に対する充填率は52.1%であり、前年同期の51.3%を上回っている。
(出典)
Aggregated LNG Storage Inventory(ALSI), Gas Infrastructure Europeのデータをもとに作成。なお、利用可能なデータは2012年1月以降のものであるため、グラフ中の過去10年平均及び過去10年平均幅の値については、5年未満の値が含まれる。
天然ガス・LNGプロジェクト動向
ハイライト
- 6月下旬、カナダで2件目、本年世界で2件目のLNG生産プロジェクトへのFIDが発表された。Cedar LNGプロジェクトは、FLNG設備を用いるもので、2028年末稼働開始予定としている。6月上旬にFIDを発表したアブダビRuwais LNGプロジェクトには、7月に国際パートナー4社が各10%出資参加することを発表した。
アジア・オセアニア地域
- CNOOCは2024年6月30日、同社が中国最大のLNG貯蔵基地とする Binhai LNG基地増設分を稼働開始したことを発表した。270,000 m3タンク6基を、既存220,000 m3容量の4基に追加した。
- GTTは2024年6月24日、 Hudong-Zhonghua Shipbuilding (Group) Co. Ltd.から、LNG輸送船舶10隻のタンク設計を受注したことを発表した。各船5タンクで合計271,000 m3容量。これらのタンクはNO96 Super+ メンブレンコンテインメント方式となる。引き渡しは、2030年第1四半期から2031年第4四半期を予定している。
- フィリピンFirst Genは2024年7月7日、国産Malampaya天然ガスが利用可能なことによって、同月予定していた5隻目のLNGカーゴ引き取りを一時的に延期することを明らかにした。First Genは6月、TG Global Trading Co.(東京ガス)に、7月に1カーゴ、First Gen Singapore向け引き渡しの契約をしていた。
- Shell は2024年7月12日、SapuraOMV Upstreamがオペレーションを担当するマレーシアJerunガス田で生産が開始されたことを発表した。この開発のFIDは2021年になされた。同ガス田はサラワク州ビントゥル北西160 km・ミリ北西190 kmに位置する。統合型中央処理プラットフォーム1基で構成され、新規80kmパイプラインによりE11RB生産ハブへと輸送し、Malaysia LNG 含むビントゥル周辺顧客に引き渡すこととなる。Jerun プラットフォームは、ピーク時の生産において、ガス日量0.55 bcf、コンデンセート日量15,000バレルの生産で設計されている。Jerunには、SapuraOMV Upstream(40%)がオペレーションを担当、Sarawak Shell Berhad(30%)、PETRONAS Carigali Sdn Bhd(30%)が参加している。
- インド石油・天然ガス規制機関(PNGRB)は2024年6月5日、LNG輸入プロジェクトのPNGRBによる登録認証を含む新たな規制案を公表した。全社が料金を含む情報の提出を義務付けられることとなる。
- 豪Woodsideは2024年7月11日、台湾CPCと、同国へのLNG長期SPAを締結したことを発表した。Woodsideは、2024年7月から10年間、DESで累計600万トンのLNGを供給する。Woodsideは2034-2043年の10年間も、その期間の諸条件・合意次第で累計840万トンを引き渡す可能性もある。本件SPA下で引き渡すのはWoodsideのグローバルポートフォリオからとなる。
- Baker Hughesは2024年6月27日、Woodside Energyの豪州LNG操業支援のため10年間の業務枠組契約を締結したことを発表した。2021年、Baker Hughesは Woodside Energyの西豪州沖合Scarboroughプロジェクトのガス供給先であるPluto LNG第2系列プロジェクト向けにガスタービン、コンプレッサー供給を受注した。2022年両社は脱炭素化ソリューションでの協力可能性に向けMOUを締結した。
- 豪Worleyは2024年6月24日、Australia Pacific LNG(APLNG)上流側オペレーターOriginから、クィーンズランド州の新規天然ガス圧送設備のFEEDを受注したことを発表した。Angry Jungleガス田は、Surat地域で複数の生産企業が操業する合弁型ガス田である。このFEEDでWorleyは、APLNGがAngry Jungleガス田で生産される炭層ガス(CSG)自社分を増量するために必要なインフラのエンジニアリング設計を支援する。
- Woodは2024年7月9日、Shellの西豪州Prelude FLNG設備の既存設備EPCm (エンジニアリング・調達・建設管理)ソリューション提供の6年契約を締結したことを発表した。
- Woodは2024年7月2日、Sunrise Joint Venture(SJV)のGreater Sunrise開発への独立スタディの筆頭コンサルタントに選定されたことを発表した。2024年第4四半期までに完了を目標とする同スタディは、同開発の次の段階への進展を支援する。SJVは、TIMOR GAP(56.56%)、Woodside Energy(33.44%・オペレーター)、大阪ガス (10.00%)で構成される。同開発プロジェクトは東ティモール、豪州北部準州間に位置し、Sunrise・Troubadourガス・コンデンセート田で構成される。
北米地域
- 米ルイジアナ州の連邦判事は2024年7月1日、非自由貿易協定(非FTA)国へのLNG輸出承認の一時停止に反対して共和党の16州の司法長官によって起こされた訴訟において、LNG輸出許可の発行の一時停止を打ち切る仮差し止めを認めた。
- DOEとEPA(米環境保護庁)は、2024年6月21日、石油・ガス部門からのメタン排出監視、測定、定量化、削減を支援するプロジェクトに連邦政府8.50億米ドル支援申請の受付を開始することを発表した。今回の資金は、小規模石油・天然ガス事業企業のメタン排出削減、実用可能な革新的メタン排出削減技術への移行を支援しつつ、排出測定を改善し影響を受ける関係者への正確かつ透明性の高いデータを提供するパートナーシップを支援するものとしている。
- HoneywellとAir Productsは2024年7月10日、Honeywellが Air ProductsのLNGプロセス技術・機器ビジネスを買い取ることに合意したことを発表した。同発表によると、新しい包括的な提供サービスには、天然ガスの前処理と液化が含まれることとなる。Honeywellは現在前処理ソリューションを提供している。Air ProductsのLNGプロセス技術・機器ビジネスは、コイル巻式熱交換器(CWHE)の自社設計・製造を含む包括的なポートフォリオからなっている。
- 米インフラストラクチャー企業WhiteWaterは2024年7月12日、ADCCパイプラインが同1日に本格稼働を開始し、Cheniere Corpus Christi液化設備に向けて、テキサス州南部WhistlerパイプラインのAgua Dulce設備につながる市場から日量1.7 bcf の天然ガス輸送容量を持つと発表した。Agua Dulceでの天然ガス引き取りにより、Cheniereはメキシコ湾岸での調達に加え、Permian地域、Eagle Ford地域への直接アクセスを確保できることとなる。ADCCパイプラインはWhistlerパイプラインが70%・Cheniere Energy社子会社が30%を保有する。Whistlerパイプラインは、WhiteWater (50.6%)、MPLX LP(30.4%)、Enbridge(19.0%)による合弁事業である。
- AramcoとSempraは2024年6月26日、両社子会社間で、Port Arthur LNG第2フェーズ拡張プロジェクトから、年間500万トンの20年間SPAに向けた法的拘束力のないHOAを締結したことを発表した。本HoAはさらに、第2フェーズでのAramcoによる25%出資参画を織り込んでいる。第2フェーズは、年間1,300万トンを生産する最大2系列の追加を含むこととなる。Sempra InfrastructureはPort Arthurエネルギーハブ内で、Titanカーボン貯留プロジェクト計画等を推進している。
- Sempra Infrastructureは2024年7月18日、Port Arthur LNG Phase 2・Bechtel Energyが、テキサス州ポートアーサーでのPort Arthur LNG第2フェーズプロジェクトのEPC契約締結を発表した。契約範囲には、プロジェクトコスト・スケジュールの確実性を高めるため、FID準備業務を実施することも含まれる。
- Tellurianは2024年7月1日、既に発表していた上流部門資産のAethon Energy Management子会社への売却手続きが完了したことを発表した。Aethon Energyは引き続きTellurianとLNG年間200万トンの長期SPA検討を進めるとしている。
- 豪Woodside Energyと米Tellurianは2024年7月22日、WoodsideがTellurianの Driftwood LNGプロジェクト含め、Tellurianの発行済み全株式を買い取る契約を締結したことを発表した。WoodsideはDriftwood LNGおよび豪州のPluto Train 2プロジェクトの両方でEPCコントラクターとなっているBechtelとの関係を強調した。
- Venture Global LNGは2024年6月27日、ルイジアナ州キャメロンCP2プロジェクトに関して、立地・建設・商業についてFERCから承認を受けた。同プロジェクトは、容量年間110万トンの液化設備18件、200,000 m3フルコンテインメント型LNG貯蔵タンク4基を備えることとなる。引き続きDOE非FTA承認手続きが注目を集めることとなる。
- Glenfarne Energy Transition子会社のTexas LNG Brownsvilleは2024年7月2日、年間50万トンのLNG SPA(FOB)に向け法的拘束力のないHOAを締結したことを発表した。Texas LNGは2024年建設開始、2028年商業運転開始を計画している。 Glenfarne Energy TransitionのLNGポートフォリオには、ルイジアナ州レイクチャールズで開発中の年間880万トンのMagnolia LNG計画も含まれている。
- 三井物産は2024年6月24日、米SabanaとVannaからテキサス州でのシェールガス上流事業(Tatonka鉱区)権益を、100%子会社Mitsui E&P USA LLC(MEPUSA)を通じて取得したことを発表した。MEPUSAは、オペレーターとして今後当該鉱区の有望性評価を進め、2027年以降の本格開発に向けて掘削/操業を行うとしている。
- カナダのHaislaネイションとPembina Pipeline社は2024年6月25日、同国西海岸のHaislaネイションの伝統的領域内の年間330万トンのFLNG設備となるCedar LNGプロジェクトのFIDを発表した。Cedar LNGは、Haislaネイションが50.1%、 Pembina Pipelineが49.9%を所有している。設備動力はBC Hydroによる再生可能電力を用いる予定。Coastal GasLinkパイプライン、深水港湾、道路その他の既存LNGインフラを活用する。FLNG設備はサムスン重工業・Black&Veatchが設計及び建造中である。プロジェクトは2028年末稼働開始が期待される。Cedar LNGはARC Resources、Pembinaと、各年間150万トンの20年間・テイクオアペイ方式液化加工業務契約を締結している。
- GTTは2024年7月15日、船主Cedar LNGに代わって韓国サムスン重工業から新規FLNGタンク設計を同年第2四半期中に受注したことを発表した。当該FLNGは、タンク容量合計180,000 m3、GTT社が開発したMark III Flexメンブレン搭載方式を備えることとなる。FLNG引き渡しは2028年第1四半期を予定している。
- New Fortress Energy(NFE)は2024年7月19日、メキシコのアルタミラ沖Fast LNG 設備からのLNG生産開始を発表した。NFE固有のFast LNG設計は、モジュラー方式の液化技術とジャッキアップリグ等の沖合インフラストラクチャーを組み合わせる。同設備は年間140万トンの生産容量を持つ。
欧州および周辺地域
- ドイツHanseatic Energy Hubは2024年6月28日、自国初の陸上型LNG基地が2027年稼働開始に向けStadeで建設が開始されたことを発表した。アンモニア対応も備え、容量240,000 m3のタンク2基が3年後に輸送網に接続されることとなる。ドイツEnBW、SEFEが年間容量各6 bcm、4 bcmを確保しており、チェコČEZは年間2 bcm長期輸入権を確保している。全顧客は、契約を水素エネルギー源に転換するオプション権を持つ。
- スイスに本拠を置くMET Groupは2024年7月9日、Shell と10年間のLNG購入契約を締結したことを発表した。METの主たる目的は、欧州向け米国産LNGの供給。
- フィンランドGasumは2024年6月25日、EU制裁を遵守し7月26日以降ロシア産LNGを輸入しない、と発表した。欧州連合理事会により6月24日に承認されたロシアに対する第14次制裁パッケージは、EUガス網に接続していない基地を通じてのロシア起源のLNG購入・輸入の禁止を含めた。同制裁パッケージに含まれた禁止は、7月26日発効する。この制裁は、GasumがGazprom Exportとの契約を打ち切ることを認めていないが、グリッド接続ない基地へのロシア産LNG購入・輸入のフォースマジュール事項となる。
- 中国Wison New Energiesは2024年6月21日、進行中のロシアでのプロジェクトについて打ち切り、新規のロシアでのビジネス受注は即時・無期限で引き受けを止める決定を発表した。Arctic LNG 2はWisonからの機器を使って、ガスタービン発電設備を建設する計画であった。
その他地域
- アブダビADNOCと国際パートナー各社が2024年7月10日、パートナー各社によるRuwais LNGプロジェクトへの参加を発表した。bp、三井物産、Shell、TotalEnergies は各10%出資を認められ、ADNOCは残り60%を維持する。さらにADNOCは、Shell 向け年間100万トン、三井物産向け年間60万トンの引き渡しなど国際パートナー向け数件の新規長期LNG販売コミットメントを締結し、Ruwais LNG 生産容量の70%をコミットした。
- アブダビADNOC Logistics and Services は2024年7月1日、韓国サムスン重工業とハンファオーシャンに新規LNG輸送船舶建造に関して最大25億米ドル(92億ディルハム)を発注したことを発表した。2社は各々確定4隻、オプション1隻建造を受注した。2028年から引き渡し見込みで、ADNOC関係会社に20年間定期傭船される。各隻容量174,000 m3、MEGA・XDF22エンジンを備える。
- Aramcoは2024年6月30日、戦略的ガス拡大進展のため250億米ドルを超える契約を発注したことを発表した。この計画は、販売用ガス生産量を2021年水準から、2030年までに60%以上増加することを目標としている。これら契約は、Jafurah非在来型ガス田第2フェーズ開発、Aramcoマスターガスシステムの第3フェーズ拡張、新規ガスリグ、生産中の設備メンテナンスに関わるものである。マスターガスシステム拡張では、ネットワークの規模にパイプライン4,000 km、圧送設備17系列を追加することにより、2028年までに日量31.5億立方フィート(3.15 bscfd)増加する計画である。
- Golar LNGは2024年7月5日、Pan American Energy(PAE)と、アルゼンチンでのFLNGの20年間の配備に関わる契約を締結したことを発表した。同FLNGプロジェクトは、Neuquina地域Vaca Muertaシェールを開発する。2027年LNG輸出開始見込み。契約の一環として、Golar LNGはPAEとの本件合弁事業で国内天然ガス購入・操業・アルゼンチンからのLNG販売・マーケティングを担当するSouthern Energyの10%株式を保有することとなる。
- Shell Trinidad and Tobagoは2024年7月9日、トリニダード・トバゴECMA(東岸海洋地域)Manateeガス田プロジェクトのFIDを発表した。ECMAには、ガス生産中の Dolphin、Starfish、Bounty、Endeavourガス田が含まれている。Manatee ガス田は、 Atlantic LNG設備にバックフィル(追加原料ガス供給)をもたらすこととなる。同ガス田は2027年生産開始予定。ピーク生産量は、石油換算日量104,000バレル相当 (0.604 bscf/d (日量6.04億立方フィート))に達する見込み。
(注:bcm:10億m3、CCS:炭素回収・貯蔵、DES:持ち届けex-ship、DOE:米連邦エネルギー省、EPC:エンジニアリング・調達・建設、EPCI:エンジニアリング・調達・建設・設置、EPCm:エンジニアリング・調達・建設管理、FEED:基本設計、FERC:米連邦エネルギー規制委員会、FID:最終投資決定、FLNG:浮体液化設備、FOB:本船渡し、FSRU:浮体貯蔵・気化設備、FSU:浮体貯蔵化設備、HOA:基本合意、MOU:覚書、SPA:LNG売買契約)
作成協力 一般財団法人日本エネルギー経済研究所
添付ファイル
- 日本のLNG在庫量(28.6KB) (2024/7/25更新)
- 米国天然ガス地下貯蔵量(60.7KB) (2024/7/25更新)
- 欧州天然ガス地下貯蔵量(436.1KB) (2024/7/25更新)
- 欧州LNG在庫量(262.9KB) (2024/7/25更新)