2024年8月

天然ガス・LNG価格動向

直近の値動き

アジア

  • 北東アジアのアセスメントされたスポットLNG価格JKMは、8月7日のウクライナ軍によるロシアのクルスク州への侵攻を背景とした地政学的リスクの高まりもあり、8月19日に2024年に入ってからの最高値を更新し14米ドル半ばとなった。その後は高価格を背景に東南アジアおよび東アジアの需要が低調であり、13米ドル半ばとなっている。
  • JOGMECは7月の日本着スポットLNG月次価格(速報)について、同月に契約がなされて同月以降に日本に入着するスポットLNG取引の平均価格(契約ベース)を12.1米ドルとした。また、同月中に日本に入着したスポットLNG取引の平均価格(入着ベース)を非公表とした。
  • 財務省貿易統計速報に基づくと、2024年7月の日本平均LNG輸入価格は100万Btu当たり11.57米ドル、円建てでは1トン当たり95,824円となった。2024年4 月の全日本平均原油輸入CIF価格が前月比上昇したため、前月比上昇となった。供給地域別では、米国産は9.47米ドル、ASEAN地域産が11.67米ドル、中東産が11.99米ドル、ロシア産が11.82米ドルであった。また、7月の北東アジア各国の平均輸入価格は、中国10.72米ドル、韓国11.61米ドル、台湾10.72米ドルであった。全日本平均原油輸入CIF価格(JCC: Japan crude cocktail)は2024年7月には1バレル当たり87.93米ドルとなった。円建てでは1キロリットル当たり88,324円となった。
  • 7月の日本のLNG輸入量は、562万トンと前年同月比で10.4%増加した。2024年の最初の7ヶ月間のLNG輸入量は3,803万トンとなり、年初来のLNG輸入として、初めて2023年同期を上回った。7月の中国のLNG輸入量は590万トンと前年同月比で1.1%増加、韓国は307万トンと前年同月比で17.6%増加、台湾は197万トンと前年同月比5.9%増加となった。

米国

  • 米国スポットガス価格HHは、需給が概ね均衡している状態が継続し、8月中は主に2米ドル前半で小幅な値動きであった。

欧州

  • 欧州ガススポット価格TTFは、8月半ばにかけて地政学的リスクの高まりから12.9米ドルまで上昇。しかしその後もノルウェーによる供給は安定的に継続、ロシア・Sudzhaからウクライナに向かうガス供給が続き、地政学的緊張の緩和傾向も受けて下落基調となった。AGSI+によるとEU全体の地下ガス貯蔵率は、8月20日時点でEUのガス貯蔵目標である90%に到達した。

天然ガス・LNG価格推移(直近2年)

中長期の値動き

  • JKMは2023年6月、JKMは欧州ガス価格の影響等を受け12米ドル付近で推移したが、7月には高在庫と低需要を背景に若干軟化し11米ドル付近で推移した。8月には豪州の主要プロジェクトでのストライキ発生の可能性が生じ、価格はやや上昇基調に入り、9月にストライキが実施された後は15米ドルまで上昇した。10月には中東での紛争の勃発等を受け17米ドルまで上昇したが、11月には地政学的リスクがいくらか緩和され概ね14米ドルで推移した。12月には豊富な供給と軟調な需要によりJKMは11米ドルまで下げ、年が明けた1月においても傾向は変わらず概ね9米ドルで推移した。2月に入り北東アジア地域での旧正月後には下落基調は更に拍車がかかり8米ドルを割ったが、3月には短期的な需要が発生したことなどから一時10米ドルに近づいた。4月半ばには中東情勢激化への懸念等もあり中旬に11米ドル前半まで急騰するも、下旬には緊張緩和により10米ドル前半で推移。5月は夏季に向けた需要増を背景に、下旬には11米ドル後半から-12米ドル台前半を推移。6月も夏場の需要増等を背景に一時13米ドル半ばまで上昇。7月は需要が低調ながら価格下落による短期的な購入意欲の高まりもあり11米ドル後半から12米ドル前半を推移。8月中旬には地政学的な不透明さを背景に14米ドル半ばを付け2024年中の最高値を更新した。
  • 日本平均LNG輸入価格は、2020年3月以降の原油価格急落の影響により、8月から10月にかけて2005年1月以来の低水準となる5米ドル台まで下落、その後原油価格上昇に伴い、12月には7米ドル台に上昇した。堅調な原油価格の値動きに応じて、2021年2月には9米ドル半ばまで上昇後、3月は7米ドル半ばまで下落した。その後は、2022年6月までの日本平均原油価格の上昇に伴って、続く18ヶ月間は概ね一貫して上昇し、2022年9月には過去最高の22.73米ドルを記録した。その後、原油価格の2022年7月以降の下降傾向も一因として、2023年4月以降は11から13米ドル台で推移している。

天然ガス・LNG価格推移(直近10年)

価格情報についてはファイルでのダウンロードサービスはありません。なお、上図については、S&P Global Plattsの情報が含まれることから、閲覧に際しては後述する内容にご同意いただくこととなります。
(出典)
米国HH(Henry Hub)価格: NYMEX Futures and Options, CME Group
蘭TTF(Title Transfer Facility)価格:ICE Endex, Intercontinental Exchange
JKM: LNG Japan/Korea Marker© 2024 by S&P Global Platts, a division of S&P Global Inc.
JOGMECスポットLNG価格:JOGMEC「日本着スポットLNG月次価格」、2021年3月までは経済産業省「スポットLNG価格調査」を出典とする
日本平均LNG輸入価格: 財務省貿易統計をもとに作成
EUA(EU ETS): ICE Endex, Intercontinental Exchange

上記閲覧に際しては、以下について同意することとなります。

  • Platts情報はS&P Global Plattsによって作成されています(出典:© 2024 by S&P Global Platts, a division of S&P Global Inc. All rights reserved)。
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天然ガス・LNG在庫動向

日本

  • 2024年3月末の国内LNG在庫量は395万トンで、前月比14.3%、65.7万トンの減少、前年同月比では27.8%減少し、過去5年平均値を66.2万トン下回った。(昨月公表分から更新なし)
  • 5月末のガス事業用LNG在庫量は244万トンで、前月比15.9%増、前年同月比では9.7%減となった。5月の都市ガス用LNG消費量は前年同月比2.6%減の199万トン、都市ガス用LNG受入量は前年同月比7.8%増の233万トンだった。
  • 3月末の発電燃料用LNG在庫量は178万トンで前月比27.6%減、前年同月比36.7%の減少となった。3月の発電燃料用LNG消費量は、前年同月比で19.9%増の358万トン、発電燃料用LNG受入量は、前年同月比で1.5%増の337万トンであった。(昨月公表分から更新なし)
  • 2024年8月21日に経済産業省が発表した「発電用LNGの在庫状況」によると、大手電力事業者の8月18日時点のLNG在庫は192万トンであった。2023年8月末比では20万トン上回り、過去5年間の8月末平均を10万トン下回っている。

国内LNG月末在庫量(直近2年)

国内LNG月末在庫(直近10年)

(出典)
経済産業省「ガス事業主生産動態統計」及び「電力調査統計・火力発電燃料実績」をもとに作成したもので、これら月末在庫を合算した値を国内在庫としてみなしたもの。なお、利用可能なデータは2008年1月以降のものであるため、過去5年平均は2013年1月分から計算している。


米国

  • 2024年8月16日の米国天然ガス地下貯蔵有効稼働ガス在庫(ワーキングガス)は、米国エネルギー情報局(EIA)のデータによると、3.30Tcfで前月比2.1%増となった。在庫量は2023年の同時期と比較すると7.0%高く、過去5年平均値を367.8Bcf上回っている。

米国天然ガス地下貯蔵量(直近2年)

米国天然ガス地下貯蔵量(直近10年)

(出典)
米国エネルギー情報局(U.S. Energy Information Administration, EIA)のデータをもとに作成


欧州

  • 2024年8月24日現在のAggregated Gas Storage Inventory(AGSI+)加盟各社中、EU加盟国各社が有する欧州天然ガス地下貯蔵在庫は1039.6TWh (LNG換算6,877万トン相当)であった。これは前年同期より0.7%、7.5TWh (LNG換算50万トン相当)下回るものだった。貯蔵容量に対する充填率は91.2%であり、前年同期の92.0%を下回り、過去5年間平均値の83.4%を上回った。貯蔵容量の大きなドイツ、イタリア、オランダの充填率はそれぞれ94.2%、92.0%、88.5%であった。

欧州天然ガス地下貯蔵量(直近2年)

欧州天然ガス地下貯蔵量(直近10年)

(出典)
Aggregated Gas Storage Inventory(AGSI), Gas Infrastructure Europeのデータをもとに作成。なお、利用可能なデータは2011年1月以降のものであるため、過去5年平均は2016年1月分から計算している。

 

  • 2024年8月24日現在のAggregated LNG Storage Inventory(ALSI)加盟各社が有する欧州LNG在庫量は472.4万m3で、前月比1.4%減少、前年同日比2.0%減少、過去5年平均値を0.04%上回っている。貯蔵容量に対する充填率は54.9%であり、前年同期の56.9%を下回っている。

欧州LNG在庫量(直近2年)

欧州LNG在庫量(直近10年)

(出典)
Aggregated LNG Storage Inventory(ALSI), Gas Infrastructure Europeのデータをもとに作成。なお、利用可能なデータは2012年1月以降のものであるため、グラフ中の過去10年平均及び過去10年平均幅の値については、5年未満の値が含まれる。


天然ガス・LNGプロジェクト動向

ハイライト

  • 北米で洋上LNG生産プロジェクト1件が本格稼働に近付く一方、同地域で建設中の他LNG生産プロジェクトではスケジュールの若干の遅延が報告された。米連邦議会上院エネルギー・天然資源委員会は、LNG輸出プロジェクトの規制承認手続きを加速する法案を採択したが、その一方で連邦控訴審が2件のLNGプロジェクトのFERC承認を取り消す決定を下した。ロシア Arctic LNG 2 プロジェクトは、LNG出荷を開始した模様である。

 

アジア・オセアニア地域

  • 西部ガス株式会社は2024年8月5日、Tree Energy Solutions Belgium B.V.(TES)と、e-methaneに関する包括連携覚書を締結したことを発表した。
  • 商船三井は2024年8月20日、三井海洋開発の普通株式89,500株の市場での買い付けを完了し、2023年6月に取得済みの10,162,300株と合わせて同社への出資割合を15.00%としたことを発表した。本取得をもって商船三井は三井海洋開発の単独筆頭株主となる見込みであり、持分法適用関連会社とする。
  • Excelerate Energyは2024年8月7日、同年6月にベトナムの民間開発企業ITECO Joint Stock Companyと、同国ハイフォン市でのLNG輸入基地開発基本合意を締結したと明らかにした。Northern Vietnam LNG Terminal基地は、2段階で輸入容量年間120万トンを有する見込み。第1段階年間容量70万トンは2027年稼働開始が期待される。
  • INPEXの2024年8月8日付け同年第2四半期業績報告資料によると、インドネシアAbadi LNG プロジェクトについて、2030年頃の生産開始に向けFEEDの開始及びFIDに向けた活動を継続しており、陸上・海上の地盤調査・物理探査、FEED実施に向けた入札活動が開始済みとなっている。CCS導入により、同ガス田の生産ガスに付随するCO2の全量を削減予定としている。
  • インドSwan Energy(Swan)は2024年8月14日、証券取引所NSE India(National Stock Exchange of India Limited)への提出資料でFSRU Vasant Oneにおける自社持分についてトルコBotasに売却する計画を明らかにした。提出資料によれば、この取引は今後6か月間以内に完了見込みとなる。本FSRUは貯蔵容量180,000 m3を持ち、韓国現代重工業が建造し、2020年にSwanに引き渡された。しかしSwanのグジャラート州でのLNG輸入基地プロジェクトが実現しなかった。Swan子会社Triumph Offshoreが当該FSRUの51%持ち分を保有し、Indian Farmers Fertiliser Cooperativeが残りを保有している。
  • 豪州政府は2024年7月23日、ガス供給に向けた新規沖合探査鉱区権許可を発行することを発表した。Esso・Beach EnergyのOtway・Sorrell地域に関して発見されたガスは東部市場に向けることや、Chevron、INPEX、Melbana、Woodside Energyの西海岸の許可が含まれる。さらにCCSに関して10件の許可が進められる。今回の発表によると、最新版のACCCガス市場暫定報告では早ければ2027年から東部市場にガス供給不足が発生する可能性を指摘している。また、新規ガス供給資源が開発されない限り、供給上の諸課題が2030年代半ばまで続く可能性が高いとしている。
  • 豪Santosの2024年8月21日付資料によると、Moomba CCSプロジェクト第1段階はコミッショニングが進展、パイプラインは昇圧されつつありまもなくCO2がシステムに導入される。2024年中に注入開始、全面稼働に達するスケジュールは予定通りで、Moomba CCS 第1段階は世界でコストが最も低いCCSプロジェクトのひとつとなり、年間170万トンの二酸化炭素を恒久的に貯蔵できる容量を持つものとなる。
  • 東京ガス、大阪ガス、東邦ガスは2024年8月21日、豪Santosと、豪州Cooper地域Moombaでのe-メタンの製造・輸出に向けたプレFEED実施に関する覚書を締結したことを発表した。2025年3月までの期間、技術や制度、商務に関する検討を4社共同で実施し、2030年以降に年間約13万トン(都市ガス約1.8億m3分)以上のe-メタンを製造・日本に輸出することを目指すとしている。
  • Shell、PetroChinaが所有する豪Arrow Energyは2024年8月12日、27年間を予定するSurat Gasプロジェクト(SGP)のクイーンズランド州マイルズ北東地域への拡張(SGP North)計画を発表した。この開発は、追加のガス量として日量130TJ(年間87万トン)を長期契約及び国内顧客向けにもたらすこととなる。この拡張は、プロジェクト期間中に4,000PJ(7,350万トン)以上のガスを生産する能力を持つSGP開発の一環である。SGP North 建設は2024年開始予定で、2段階に渡ってインフラとして最大450本の新規ガス生産井、新規ガス田コンプレッサーステーション1件、パイプライン27 km、道路・インフラ増強を含むこととなる。
  • 豪Woodside Energyは2024年7月23日、同年第2四半期中にScarboroughプロジェクトのコスト・スケジュールのレビューが実施されたことを明らかにした。スケジュールに変更なく、2026年にLNGカーゴ出荷目標である。修正後のコスト見通しは125億米ドル(自社分82億米ドル)とFID時点の120億米ドルから4%増となった。このコスト増加は、Plutoトレイン1改造の作業スコープがより精緻に詰められたことによるところが大きいとしている。プロジェクトコストの合計には、Scarboroughガス田プロジェクト、Plutoトレイン2プロジェクト、Plutoトレイン1改造プロジェクトが含まれる。Scarboroughプロジェクトは同四半期末時点で67%完成となり、LNG生産開始は2026年と見込まれる。Plutoトレイン2モジュールのうち29のモジュールが現場に搬入済みで、25のモジュールは同四半期末時点で設置済み、現場作業が進んでいる。浮体式生産設備・トップサイドの組み立ても進展した。居住区モジュールはトップサイド上に設置され、構造的には完成している。トランクラインの設置は36インチ径から32インチ径へと移行し、50%以上完成している。開発井2坑が掘削され、1坑は仕上げ済み、もう1坑は2024年後半に仕上げを計画している。貯留層は掘削前の見通しに沿ったものである。フローライン3本の設置と試験は完了した。 Plutoトレイン1改造の主要なエンジニアリングレビューは完了し、資機材の80%が発注済みである。
  • 豪Woodside Energyは2024年8月19日、Australian Conservation Foundation(ACF)との間で、WoodsideのScarboroughプロジェクトへの環境承認に対するACF訴訟の取り下げで合意したことを発表した。Scarboroughプロジェクトは全ての環境承認を取得済みで、洋上作業は進行中である。連邦法廷での審理は、同プロジェクト洋上作業の停止を求める仮処分を求めていた。両者は審理の却下を法廷に求めることで一致した。ACFは、Environmental Defenders Office が代表しており2022年6月、同プロジェクトの洋上環境影響評価に関して連邦法廷での審理を提起した。
  • 豪Woodside Energyは2024年7月23日、G-8-AP温室効果ガスアセスメント許可 (Woodside が Browse オペレーターとして保有)の範囲においてCalliance貯蔵構造に関して、連邦政府から2024年6月に指定温室効果ガス貯蔵構造としての通知がなされたことを明らかにした。この通知は、Browse開発におけるCCSのソリューション案の織り込みを支えることとなる。
  • 豪Woodside Energy 社は、2024年7月23日、 Sunrise 合弁事業参加企業は、新たな生産分与契約、鉱業規則、財務的枠組みに関して、豪州、東ティモール政府との検討を続けた、と述べた。
  • 豪Santos の2024年8月21日付けの情報によると、Barossaガスプロジェクトは80%完成近くまで進捗し、2025年第3四半期にガス生産を見込む。同ガス田からDarwin LNG設備へのガス輸送パイプラインは完成した。Barossa第3井掘削は成功し結果は予想を上回っている。FPSOは2025年第1四半期豪州に向かうという予定通りに進捗している。Barossaは全面稼働により年間180万トンを SantosのLNGポートフォリオに加える見込み。

 

北米地域

  • 米連邦議会上院エネルギー・天然資源委員会委員長および有力議員の、ジョー・マンシン議員(独立系-ウェストバージニア州)、ジョン・バローゾ議員(共和党-ワイオミング州)が2024年7月22日、エネルギー許可制度改革法案を示した。同法案はLNG輸出許可申請について、環境審査後にエネルギー長官が許可ないし却下する90日間の期限を設定し、長官がこの期限に間に合わない場合、申請は承認とみなされるとしている。新たなスタディが完了しない限りDOEによる既存のLNG経済・排出に関するスタディに基づいて判断することを長官に義務付け、事実に基づく判断を確保するとしている。同法案は7月31日、連邦議会上院エネルギー・天然資源委員会により採択された。
  • Cheniere Energyは2024年8月5日、自社子会社Cheniere MarketingがGalp Energia, SGPS子会社Galp Tradingとの間で長期 LNG SPAを締結したことを発表した。Galpは年間50万トンのLNGを20年間Cheniere Marketing からFOB条件でヘンリーハブ価格連動の価格プラス固定液化手数料により購入することに合意した。引き渡しは2030年代初頭より開始見込みで、Sabine Pass液化拡張プロジェクト (SPL拡張プロジェクト)第2系列(第8系列)FIDが条件となる。本SPAは、第8系列稼働開始前に、Galp が購入する限定数量の早期カーゴが含まれる。SPL拡張プロジェクトはデボトルネッキング機会も含めたLNG容量年間最大2,000万トンにて開発中である。2024年2月、Cheniere Energy Partners複数の子会社が、FERC にSPL拡張プロジェクト立地、建設、操業承認を申請、DOEに自由貿易相手国 (FTA)、非FTA国向けLNG輸出承認申請を行った。
  • Cheniere Energyは2024年8月8日、Corpus Christi LNG(CCL)プロジェクト隣接で7つのミッドスケール液化系列により総生産容量LNG年間1,000万トンを超えるCCLステージ3拡張プロジェクトを建設しており、6月30日時点で62.4%完成していると述べた。2024年末までに同第1系列からのLNG生産開始が見込まれる。CCLステージ3プロジェクト隣接で、年間300万トン(CCLミッドスケール第8 & 9系列プロジェクト)合計2系列を開発している。2023年3月、子会社数社により、同プロジェクト立地・建設・操業許可をFERCに申請した。2023年4月、FTA・非FTA諸国向け輸出許可をDOEに申請した。2023年7月、DOEからFTA諸国向けLNG輸出承認を受けた。2024年6月、FERCから肯定的なEA(環境影響評価)を受けた。残りの規制承認を全て、2025年に受領することを見込んでいる。
  • 千代田化工建設は2024年8月14日、Chiyoda International Corporation(CIC)と米国テキサス州でGolden Pass LNGプロジェクトを共同遂行している米国Zachry Industrialが米国連邦破産法第11条を申し立てた件に関連して、7月25日(米国時間)付の現地裁判所によるZachryの本プロジェクトからの離脱に関わる基本合意書の暫定承認に引き続き、8月12日(米国時間)付で最終承認がなされたことを明らかにした。同裁判所による最終承認に基づき法的な制限が解除されたことより、ジョイントベンチャーパートナーである米CB&I LLC・CICはGolden Pass LNG Terminal との協議を加速させ、本プロジェクト全体の完工までの遂行に関する取決め「長期的な遂行プラン」に関わる早期のEPC契約の改定・合意を目指すとしている。
  • Venture Global LNGは2024年8月13日、FERCへの提出文書で自社2件目のLNGプロジェクトPlaquemines LNGの建設が80%近く完了し、この秋のLNG生産と、その後直ちに商業運転前段階におけるLNG輸出開始を目標としていることを明らかにした。Venture Globalは、以前の規制提出文書で、Plaquemines LNGは早ければ8月にもLNG生産開始の可能性があるとしていた。
  • NextDecadeは2024年8月5日、Rio Grande LNG 設備第4系列・関連インフラストラクチャー建設に関して子会社 Rio Grande LNG Train 4がEPC 契約を Bechtel Energyとの間で締結したことを発表した。NextDecadeは引き続き2024年後半を第4系列のFID目標としている。
  • NextDecadeは2024年8月14日、FERCによるRio Grande LNG設備の差し戻し承認を無効とする同月6日DC連邦控訴審の判断に同意しないと述べた。同社は同プロジェクト第1段階を日程通り・予算内で実現し、第4・5系列のFIDが不当に遅れることがないよう、あらゆる法的・規制手続きをとるとしている。同月6日、DC連邦控訴審は、Rio Grande LNG設備に関して、FERCは差し戻し審査プロセスの期間中に、追加的な環境影響評価(EIS)を発行すべきだったとの根拠で、FERC差し戻し審査承認を無効とする指令を発した。同法定判断は、実行指令が発行されるまで発効せず、上告手続きが完了するまで実行指令は見込まれていない。Rio Grande LNG設備の最初の3系列および関連インフラ(第1段階)建設は継続している。
  • NextDecadeは2024年8月20日、子会社 Rio Grande LNGが、Rio Grande LNG 設備でのCCSプロジェクト計画についてFERC申請を取り下げ、手続き停止を要請したことを発表した。
  • 米Texas LNG Brownsvilleは2024年7月23日、EQTとの間でLNG年間200万トン20年間の天然ガス液化加工契約を締結したことを発表した。Texas LNGは7月初めの年間50万トンに関する契約についても発表した。 Texas LNG は、2024年建設開始、2028年本格稼働開始を計画している。
  • Excelerate Energyは2024年8月8日、自社同年第2四半期業績投資家向けプレゼンの中でアラスカ州Cook Inlet LNG受入基地プロジェクトについて公表した。 Excelerateによるとクック湾南側地域にFSRUに基づくLNG輸入基地開発に関して、アラスカ州南中部の地域公益事業企業との話し合いが進展している。地元ガス生産の減少により、同州中南部ガス不足が深刻化している。Excelerateは、FSRUと受入基地を所有し、全気化容量の排他的所有権を持ち、LNG供給および地元公益事業企業へのガス販売を担当することになると見込まれる。ガス販売契約は、テイクオアペイ義務付きのインフラ支払い要素を有する見込み。商業稼働開始は2028年を目標とする。
  • Natural Allies for a Clean Energy Future(NACEF)、Partnership to Address Global Emissions(PAGE)は2024年7月30日、米国LNG輸出のライフサイクル温室効果ガス(GHG)排出と代替燃料との比較に関するスタディを公表した。NACEF、PAGEが委託しICFが実施した"Lifecycle GHG Emissions of U.S. LNG Exports: Concepts, Methodologies, Data and Results"は、米国LNG輸出が、2022年に仮になかったとした場合に代替した可能性が高い代替燃料のミックス(主として石炭、石油)と比較して、世界のGHG排出純減となった可能性が高いことを示す。本スタディのベースケース想定によると、米国産LNGから石炭へのシフトでGHG排出は47.7%から85.9%に増加する。米国産LNG対外輸出がなかったとすると、このエネルギーは54%石炭、34%燃料油、16%国産ガス、8%再生可能エネルギー源により代替されることとなる。
  • カナダTC Energyは2024年7月30日、NGTL System・Foothills Pipelineにおける持分5.34%に関して、原住民所有の投資パートナーシップとの間での出資分株式売買契約を発表した。同契約はAlberta Indigenous Opportunities Corporation(AIOC)が支援しており、アルバータ州、ブリティッシュコロンビア州、サスカチュワン州原住民グループを代表するコンソーシアムが交渉した。
  • Sempraは2024年8月6日、Energía Costa Azul LNG建設第1段階が85%完了したが、最近数ヶ月間労働と生産性の問題に直面していることを明らかにした。機械的な完成、LNG生産開始は2025年見込み、本格稼働タイミングは2026年春を目標としている。
  • Chart Industriesは2024年7月22日、自社IPSMR®プロセス技術により、メキシコのアルタミラ沖New Fortress EnergyのFast LNG 設備からLNG生産開始が実現したことを発表した。ChartによるとNew Fortress Energy固有のFast LNG 方式は新規のもので、Chartのモジュラー液化技術とジャッキアップリグまたは同種の沖合インフラストラクチャーを組み合わせ、1系列年間140万トンの生産容量を実現している。

 

欧州および周辺地域

  • エネルギーインフラ企業VTTIは2024年8月9日、英 Dragon LNGの株式50%の買い取りを完了したことを発表した。同基地の残り50%は Shell 社が所有している。 Dragon LNGはVTTIにとって、2024年4月に発表した同年末取得完了が見込まれるイタリアAdriatic LNG 基地70%持分買い取り計画に続く2件目のLNG受入基地投資である。Dragon LNGの子会社 Dragon Energyは、同基地内で太陽光発電設備を開発済みで、同基地のスコープ2排出脱炭素化支援のため追加の再生可能電力プロジェクトを開発している。Dragon Energyは最近、Milford Haven CO2プロジェクトを発表した。RWE Pembroke Net Zero Centre 社と共同で開発しており、炭素回収、パイプライン輸送、液化、一時的貯蔵、新規 Dragon 桟橋からのCO2を積み込み英国内外での貯留のためパイプラインを使わない輸送を検討している。
  • 米 Crown LNG 社は、2024年7月25日、英スコットランド東岸フォース湾グランジマウス浮体式LNG輸入基地の設計・エンジニアリングパートナーとして、 IKM Engineering & Environmental Consultants 社を選定したことを発表した。IKM社業務担当は、プレFEED、FEED段階となる。
  • ドイツUniperは2024年7月30日、ロッテルダムGate基地でバイオメタンをバイオLNGに転換するため、BioLNG生産容量を利用する最初の企業となったことを発表した。同社によると、Gate基地で生産されるこのBioLNGは、国際サステナビリティ・カーボン認証(ISCC)制度により認証される。原料はEU加盟諸国の1国で生産されるバイオガスとなる。Gate 基地がバイオメタンを引き取り、同基地の既存インフラストラクチャーを用いて液化する。液化設備容量は年間100,000トンとなる。
  • ConocoPhillipsは2024年7月24日、欧州、アジアにLNGを供給するための新規契約2本を発表した。FluxysのベルギーZeebrugge 基地で2027年4月からLNG年75万トンを輸入・気化する長期容量予約、同年からアジア市場に供給する長期LNG SPA である。
  • イタリアEdisonは2024年7月30日、トリエステ港でLNG燃料充填を完了したことを発表した。アドリア海初の船舶間(STS)LNGバンカリングで、Ravenna LNG内航拠点(DIG)に供給を行っているLNG輸送船舶Ravenna Knutsenを用いて実施された。 Ravenna Knutsen小規模LNG輸送船舶は、Edison向けにノルウェー船主Knutsen OAS Shippingにより傭船されている。
  • ロシアSakhalin Energyは2024年8月5日、Sakhalin-2設備で、プロセス機器のメンテナンス・オーバーホール完了後、LNG生産を完全に再開したことを発表した。

 

その他地域

  • 大阪ガスは2024年8月6日、Ruwaisプロジェクトにおいて生産されるLNGの売買について、UAEアブダビのADNOCとのHOAを締結したことを発表した。2020年代後半から、自社・Osaka Gas Energy Supply and Trading Pte. Ltd.への引き渡しDES条件で年間80万トンを購入する。
  • オマーンは2024年7月27日、既存のカルハットLNG拠点における新規LNG液化設備1系列の計画を発表した。本件はSur LNG名義となり、容量年間380万トンとなる。同プロジェクトは2029年までに完成予定としている。
  • Energeanは2024年7月23日、イスラエルKatlan開発プロジェクトのFIDを行ったことを発表した。Katlan地域は、既存Energean Power FPSOへの海底での接続方式で段階的に開発されることとなる。この開発により同FPSOの生産が増加する。 Energeanによる既存ガス販売契約、将来の国際市場向け販売の裏付けとなる。ガス生産開始は2027年前半で計画されている。海底部分のEPCI契約は TechnipFMCに発注されている。
  • 韓国GAS Entecは2024年8月20日、自社・グループ会社AG&P、およびヨルダン企業Issa Haddadinが、ヨルダン王国アカバ港Sheikh Sabah Al-Ahmad Al-Jaber Al Sabah陸上LNG気化基地プロジェクトEPCIC(エンジニアリング・調達・建設・設置・コミッショニング)契約を受注したことを発表した。この入札は、同国国有企業 Aqaba Development Corporation(ADC)により実施された。プロジェクトは陸上LNG気化設備、洋上部分、桟橋上部構造、関連諸設備から構成され、22か月間以内で完成、試運転、引き渡しを求められている。
  • Eniは2024年7月20日、コンゴのCongo LNG プロジェクトが同年2月にLNG輸出を開始した、と述べた。同プロジェクト第2段階が2025年末に開始する時点で、同国ガス輸出は年間4.5 bcmに増加する、とのこと。
  • モザンビーク大統領は2024年8月15日、 ExxonMobil との会談ではRovuma LNGプロジェクトの初期エンジニアリング段階に焦点を置き、その計画では2026年までに諸承認を最終的なものとして、FIDを行うものとしている、と述べた。
  • McDermottは2024年8月12日、Shell Trinidad and Tobagoから、トリニダードトバゴ南東沖100 kmのManateeガス田開発プロジェクトの、EPCI、接続、コミッショニング契約を受注したことを発表した。この受注はプロジェクト初期設計・実行計画のためのFEED、詳細エンジニアリング、要長期項目調達業務契約履行に続くものとなる。McDermott は、プラットフォーム・ジャケット1件の設計、調達、組み立て、接続、試運転を実施する。同社はまた、同プラットフォームをShellが操業するガス処理設備に接続する32インチ径ガスパイプラインの設計、敷設、試運転業務も提供する。同契約範囲は、光ファイバーケーブルの設計、調達、設置、試験業務も含む。

 

(注: bcm: 10億m3、CCS: 炭素回収・貯蔵、DES: 持ち届け ex-ship、DOE: 米連邦エネルギー省、EPC: エンジニアリング・調達・建設、EPCI: エンジニアリング・調達・建設・設置、 EPCm: エンジニアリング・調達・建設管理、FEED: 基本設計、FERC: 米連邦エネルギー規制委員会、FID: 最終投資決定、FLNG: 浮体液化設備、FOB: 本船渡し、FSRU: 浮体貯蔵・気化設備、FSU: 浮体貯蔵化設備、HOA: 基本合意、MOU: 覚書、SPA: LNG売買契約)

 

 

作成協力 一般財団法人日本エネルギー経済研究所

 

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