2024年9月

天然ガス・LNG価格動向

直近の値動き

アジア

  • 北東アジアのアセスメントされたスポットLNG価格JKMは、高値継続を背景に需要が低調であり9月初めから半ばにかけて下落基調であり、12日には12米ドル後半と5週間ぶりの低水準となるも、北東アジアにおけるスポット需要の高まりを受け一時反発した。18日のロシアトヴェリ州でのドローン攻撃によるロシアーウクライナ間の地政学的緊張の高まりから19日には13米ドル半ばまで上昇、その後、欧州ガス価格の大幅な下落に伴い一転して12米ドル後半まで急落した。
  • JOGMECは8月の日本着スポットLNG月次価格(速報)について、同月に契約がなされて同月以降に日本に入着するスポットLNG取引の平均価格(契約ベース)を非公表とした。また、同月中に日本に入着したスポットLNG取引の平均価格(入着ベース)を非公表とした。
  • 財務省貿易統計速報に基づくと、2024年8月の日本平均LNG輸入価格は100万Btu当たり12.09米ドル、円建てでは1トン当たり94,687円となった。前者の米ドル建ての価格は、2024年5月の全日本平均原油輸入CIF価格が前月比上昇したため、前月比上昇となった。供給地域別では、米国産は10.14米ドル、ASEAN地域産が12.51米ドル、中東産が11.86米ドル、ロシア産が11.77米ドルであった。また、8月の北東アジア各国の平均輸入価格は、中国11.30米ドル、韓国12.06米ドル、台湾10.49米ドルであった。全日本平均原油輸入CIF価格(JCC: Japan crude cocktail)は2024年8月には1バレル当たり86.87米ドル、円建てでは1キロリットル当たり82,510円となった。
  • 8月の日本のLNG輸入量は、573万トンと前年同月比で1.0%増加した。8月の中国のLNG輸入量は654万トンと前年同月比で5.1%増加、韓国は386万トンと前年同月比で13.4%増加、台湾は203万トンと前年同月比14.7%増加となった。

米国

  • 米国スポットガス価格HHは、9月頭から2米ドル前半を推移していたところ、下旬にかけて上昇基調となっている。ハリケーン「ヘレン」により、9月26日時点でメキシコ湾のガス生産は約17%が停止した。

欧州

  • 欧州ガススポット価格TTFは、9月中旬までは弱気なファンダメンタルズの中、11米ドル半ばで推移していたが、ウクライナがアゼルバイジャン産ガス通過を許可するとの報道を受けて19日に10.8ドルまで大きく下落、その後、報道が否定されたことで20日は11.3ドルまで値を戻した。

天然ガス・LNG価格推移(直近2年)

中長期の値動き

  • JKMは2023年6月、JKMは欧州ガス価格の影響等を受け12米ドル付近で推移したが、7月には高在庫と低需要を背景に若干軟化し11米ドル付近で推移した。8月には豪州の主要プロジェクトでのストライキ発生の可能性が生じ、価格はやや上昇基調に入り、9月にストライキが実施された後は15米ドルまで上昇した。10月には中東での紛争の勃発等を受け17米ドルまで上昇したが、11月には地政学的リスクがいくらか緩和され概ね14米ドルで推移した。12月には豊富な供給と軟調な需要によりJKMは11米ドルまで下げ、年が明けた1月においても傾向は変わらず概ね9米ドルで推移した。2月に入り北東アジア地域での旧正月後には下落基調は更に拍車がかかり8米ドルを割ったが、3月には短期的な需要が発生したことなどから一時10米ドルに近づいた。4月半ばには中東情勢激化への懸念等もあり中旬に11米ドル前半まで急騰するも、下旬には緊張緩和により10米ドル前半で推移。5月は夏季に向けた需要増を背景に、下旬には11米ドル後半から-12米ドル台前半を推移。6月も夏場の需要増等を背景に一時13米ドル半ばまで上昇。7月は需要が低調ながら価格下落による短期的な購入意欲の高まりもあり11米ドル後半から12米ドル前半を推移。8月中旬には地政学的な不透明さを背景に14米ドル半ばを付け2024年中の最高値を更新した。9月は低需要を背景に軟化し13米ドル付近を推移。
  • 日本平均LNG輸入価格は、2020年3月以降の原油価格急落の影響により、8月から10月にかけて2005年1月以来の低水準となる5米ドル台まで下落、その後原油価格上昇に伴い、12月には7米ドル台に上昇した。堅調な原油価格の値動きに応じて、2021年2月には9米ドル半ばまで上昇後、3月は7米ドル半ばまで下落した。その後は、2022年6月までの日本平均原油価格の上昇に伴って、続く18ヶ月間は概ね一貫して上昇し、2022年9月には過去最高の22.73米ドルを記録した。その後、原油価格の2022年7月以降の下降傾向も一因として、2023年4月以降は11から13米ドル台で推移している。

天然ガス・LNG価格推移(直近10年)

価格情報についてはファイルでのダウンロードサービスはありません。なお、上図については、S&P Global Plattsの情報が含まれることから、閲覧に際しては後述する内容にご同意いただくこととなります。
(出典)
米国HH(Henry Hub)価格: NYMEX Futures and Options, CME Group
蘭TTF(Title Transfer Facility)価格:ICE Endex, Intercontinental Exchange
JKM: LNG Japan/Korea Marker© 2024 by S&P Global Platts, a division of S&P Global Inc.
JOGMECスポットLNG価格:JOGMEC「日本着スポットLNG月次価格」、2021年3月までは経済産業省「スポットLNG価格調査」を出典とする
日本平均LNG輸入価格: 財務省貿易統計をもとに作成
EUA(EU ETS): ICE Endex, Intercontinental Exchange

上記閲覧に際しては、以下について同意することとなります。

  • Platts情報はS&P Global Plattsによって作成されています(出典:© 2024 by S&P Global Platts, a division of S&P Global Inc. All rights reserved)。
  • Platts情報を内部目的にのみ使用することに同意します。またインターネット、イントラネット、またはその他のネットワークを含むあらゆる形式または手段で、Platts情報をいかなる目的でも第三者に保存、複製、またはさらに配布しないことに同意します。
  • Platts、その関係会社およびそれらのすべての第三者ライセンサーが、Platts情報、および特許、企業秘密、著作権、商標権(登録有無に関わらず)を含むすべての知的財産権を所有していることに同意します。
  • Platts、その関係会社およびそれらのすべての第三者ライセンサーは、すべてのPlatts情報、データ、またはそれらの使用や実行によって得られた結果を含む、Platts情報に関する特定の目的または使用に対する商品性または適合性を含むすべての保障について、明示または黙示に関わらずすべての保障を否認します。Plattsまたはその関係会社あるいはそれらの第三者ライセンサーのいずれも、Platts情報またはその構成要素についての通知または通信の妥当性、正確性、適時性または完全性を保証しないものとします。Platts、その関係会社およびそれらの第三者ライセンサーは、Platts情報のいかなる誤差、脱漏または遅延についても、いかなる損害賠償または法的責任も問われないものとします。Platts情報およびそのすべての構成要素は、「現状の有り姿」として提供され、JOGMECウェブサイトのPlatts情報の使用は購読者自身の危険負担で行われるものとします。Platts情報は金融またはその他の専門的なアドバイスとみなされるべきではありません。
  • 上記記載内容に関わらず、いかなる場合も、Platts、その関係会社またはそれらの第三者ライセンサーは、利益の損失、取引損失、または損失時間や事業上の信用の損失を含むがこれに限定されないいかなる間接的損害、特別損害、付随的損害、懲罰的損害、または派生的損害について、たとえかかる損害の可能性について知らされていたとしても、契約の記述、不法行為(過失を含む)、厳格責任または別の方法のあるなしを問わず、決して責任を負わないものとします。またPlatts、その関係会社およびそれらの第三者ライセンサーは、第三者によるJOGMECウェブサイトに対するいかなるクレームにつきましても責任を負わないものとします。

天然ガス・LNG在庫動向

日本

  • 2024年3月末の国内LNG在庫量は395万トンで、前月比14.3%、65.7万トンの減少、前年同月比では27.8%減少し、過去5年平均値を66.2万トン下回った。(昨月公表分から更新なし)
  • 6月末のガス事業用LNG在庫量は260万トンで、前月比6.3%増、前年同月比では0.7%減となった。6月の都市ガス用LNG消費量は前年同月比1.2%減の206万トン、都市ガス用LNG受入量は前年同月比11.0%増の221万トンだった。
  • 3月末の発電燃料用LNG在庫量は178万トンで前月比27.6%減、前年同月比36.7%の減少となった。3月の発電燃料用LNG消費量は、前年同月比で19.9%増の358万トン、発電燃料用LNG受入量は、前年同月比で1.5%増の337万トンであった。(昨月公表分から更新なし)
  • 2024年9月18日に経済産業省が発表した「発電用LNGの在庫状況」によると、大手電力事業者の9月15日時点のLNG在庫は188万トンであった。2023年9月末比では24万トン上回り、過去5年間の9月末平均を11万トン下回っている。

国内LNG月末在庫量(直近2年)

国内LNG月末在庫(直近10年)

(出典)
経済産業省「ガス事業主生産動態統計」及び「電力調査統計・火力発電燃料実績」をもとに作成したもので、これら月末在庫を合算した値を国内在庫としてみなしたもの。なお、利用可能なデータは2008年1月以降のものであるため、過去5年平均は2013年1月分から計算している。


米国

  • 2024年9月13日の米国天然ガス地下貯蔵有効稼働ガス在庫(ワーキングガス)は、米国エネルギー情報局(EIA)のデータによると、3.45Tcfで前月比4.4%増となった。在庫量は2023年の同時期と比較すると5.4%高く、過去5年平均値を271.8Bcf上回っている。

米国天然ガス地下貯蔵量(直近2年)

米国天然ガス地下貯蔵量(直近10年)

(出典)
米国エネルギー情報局(U.S. Energy Information Administration, EIA)のデータをもとに作成


欧州

  • 2024年9月22日現在のAggregated Gas Storage Inventory(AGSI+)加盟各社中、EU加盟国各社が有する欧州天然ガス地下貯蔵在庫は1074.0TWh (LNG換算7,104万トン相当)であった。これは前年同期より0.5%、5.3TWh (LNG換算35万トン相当)下回るものだった。貯蔵容量に対する充填率は93.7%であり、前年同期の94.5%を下回り、過去5年間平均値の88.8%を上回った。貯蔵容量の大きなドイツ、イタリア、オランダの充填率はそれぞれ95.8%、95.0%、92.0%であった。

欧州天然ガス地下貯蔵量(直近2年)

欧州天然ガス地下貯蔵量(直近10年)

(出典)
Aggregated Gas Storage Inventory(AGSI), Gas Infrastructure Europeのデータをもとに作成。なお、利用可能なデータは2011年1月以降のものであるため、過去5年平均は2016年1月分から計算している。

 

  • 2024年9月22日現在のAggregated LNG Storage Inventory(ALSI)加盟各社が有する欧州LNG在庫量は475.8万m3で、前月比0.6%増加、前年同日比0.9%増加、過去5年平均値を7.6%下回っている。貯蔵容量に対する充填率は54.5%であり、前年同期の55.5%を下回っている。

欧州LNG在庫量(直近2年)

欧州LNG在庫量(直近10年)

(出典)
Aggregated LNG Storage Inventory(ALSI), Gas Infrastructure Europeのデータをもとに作成。なお、利用可能なデータは2012年1月以降のものであるため、グラフ中の過去10年平均及び過去10年平均幅の値については、5年未満の値が含まれる。


天然ガス・LNGプロジェクト動向

ハイライト

  • DOEは8月末、NFE Altamira FLNGによる非FTA(非自由貿易協定相手国)向けLNG輸出ライセンスを許可した。既に稼働開始済みプロジェクトで、メキシコ経由の再輸出、輸出許可期間を5年間に限定する特殊な事例であるが、1月の輸出許可一時停止以降で初めての非FTA輸出承認となった。
  • FERCは、法廷判断により承認取り消し対象となったテキサス州2件のLNGプロジェクト(1件は建設中、もう1件はFIDに近付いている模様であった)について、追加的な環境影響審査を実施することを発表した。これにより見込まれていたプロジェクトのスケジュールはいずれも1年以上遅延する。

 

アジア・オセアニア地域

  • 商船三井(MOL)は2024年9月13日、Chevron Shipping Companyと、MOL Encean Pte. Ltd.からChevron Asia Pacific Shipping Pte. Ltd.へ長期傭船される新造LNG運搬船にウインドチャレンジャー(風力補助推進システム)2基を搭載することに合意したことを発表した。風力補助推進システムを搭載した世界初のLNG運搬船となる。本船は韓国ハンファオーシャンのコジェ造船所にて建造され、2026年の竣工を予定。
  • TotalEnergiesは2024年9月19日、CNOOCとの年間125万トンの中国向けLNG引き渡しに関するSPAの2034年まで5年間延長を発表した。
  • タイPTTは2024年9月12日、PTT International Trading(PTTT)がOman LNGと初めてタームLNG購入契約を締結したことを発表した。契約期間は2025年から2029年である。PTTはASEAN地域のLNGトレーディング拠点となる体制を強化している、と述べた。
  • タイPTTは2024年9月16日、PTT International Trading(PTTT)がBrunei LNGと初めてタームLNG購入契約を締結したことを発表した。契約期間は2025年から2029年となる。
  • シンガポール Sembcorp Industriesは2024年9月2日、子会社Sembcorp Gasが West Natuna Exploration、Empyrean Energy、Coro Energy Duyung(Singapore)との間で、日量1,110億Btusのパイプラインガス(LNG換算年間78.5万トン相当)をインドネシアMakoガス田から輸入するガス売買契約(GSA)を締結したことを発表した。GSAは2025年上半期、Makoガス田への売主側FID、必要な規制承認・諸契約含む前提条件の充足を条件として発効する見込み。ガス引き渡しは2026年から11年間を見込んでいる。
  • 豪Santosは2024年9月4日、Glencore Singaporeとの中期LNG供給契約を発表した。3.25年の期間で合計19カーゴ、年間50万トンを供給する。2025年第4四半期開始で、SantosグローバルポートフォリオからDES条件で引き渡す。
  • 豪Woodside Energyは2024年9月18日、JERAとの間で日本向けLNG長期供給に関するSPAを発表した。Woodsideは、年間40万トン(6カーゴ)のLNGを10年間、DES条件で2026年4月から引き渡す。本SPA下でJERAに引き渡すLNGはWoodsideグローバルポートフォリオから調達される。本契約締結は2月にWoodside がJERAにScarborough JVの持分15.1%を売却する合意に達した発表に続くものである。WoodsideはScarborough持分のJERAへの売却は2024年末までに完了すると見込んでいる。
  • 豪Santosは2024年9月17日、同月2日の発表を受けてBayu-Undan Joint Venture(BUJV)参加企業と東ティモールTIMOR GAPが、Bayu-Undan上流プロジェクトの16%持分をTIMOR GAPに同年7月1日発効で移管する売買合意(SPD)を締結したことを発表した。TIMOR GAPはBUJVに残りの商業生産期間中参加する。 Bayu-Undan生産分与契約(PSC)は2026年6月26日、または生産終了のいずれか早い方で終了する。Bayu-Undan上流プロジェクトは、沖合油・ガス田、東ティモール領内の沖合生産・処理設備で構成される。Bayu-Undanは北部準州電力・水道公社とのガス販売契約に基づき、豪州国内市場向けにガスを、また液体製品を生産している。Santosは、Bayu-Undanを生産終了後は新規大規模コマーシャルベースのCCSプロジェクトに再編すべく、東ティモール、JVパートナーとの事業を引き続き実施していくとしている。

 

北米地域

  • EIA(米国エネルギー情報局)の2024年9月4日付発表によると、北米LNG輸出容量は建設中のプロジェクトが計画通り稼働すれば、2023年日量11.4 Bcfから2028年24.4 Bcf(年間1.85億トン)と2倍増以上となる見込み。2028年末までにメキシコ0.6 Bcf、カナダ2.5 Bcf、米国9.7 Bcf増加見込み。
  • Venture Global LNGは、ルイジアナ州 Plaquemines LNGで2024年8月26日までに最初のコミッショニング用カーゴを積載したLNG輸送船舶を受け入れた。FERCは同月30日、LNGタンクのクールダウンに向けて可燃性液体導入への最終申請に基づき、エンジニアリング情報の提供を求めた。Venture Globalは同月29日、コミッショニングカーゴ荷揚げ許可を申請していた。FERCは9月6日、Venture Global LNG 社に対して、Plaquemines輸出設備のLNG機器のスタートアップ準備作業開始を承認した。
  • Golden Pass LNG Terminal(GPLNG)は2024年8月28日、輸出プロジェクト設備の稼働開始の2026年11月30日期限をさらに2029年11月30日まで延長する申請をFERCに提出した。この申請時点でGPLNGは、輸出プロジェクト建設が80%完成している、と述べた。
  • NextDecadeは2024年9月11日、自社Rio Grande LNG輸出プロジェクトが、FERCによる承認を無効とする法廷判断に上訴する期限を、10月21日まで延長することを認められたことを明らかにした。DC地区連邦控訴審による8月6日の判断は、既に建設中のLNGプロジェクトの主要許可を無効とする史上初めての連邦法廷判断となった。
  • FERCは2024年9月13日、「Rio Grande LNG設備・Rio Bravoパイプラインプロジェクト向け追加環境影響評価書(EIS)準備通知」と「Texas LNGパイプラインプロジェクト向け追加環境影響評価書(EIS)準備、環境問題コメント募集、環境審査日程通知」を発行、この中には8月にDC地区連邦控訴審が手続き上の理由でFERC承認を無効としたことを受けての追加環境影響評価書(EIS)完成への日程を含んでいる。FERCはEIS案を2025年3月発表目標として、45日間のパブリックコメント期間を置き、最終案を2025年7月31日公表としている。これにより90日間の連邦承認判断期限を2025年10月29日として、同プロジェクト最終承認発行期限を2025年11月20日としている。
  • Glenfarne Energy Transition子会社Texas LNG Brownsvilleは2024年9月11日、あるLNG企業とさらに1件の長期LNG SPAに向けたHOAを締結したことを発表した。Texas LNGは、FID実現に十分な数量の買主コミットメントを確保したとしている。今回の新合意はEQT、Gunvor、Macquarieとの既存の合意に上乗せとなる。
  • Kimmeridge Texas Gas(KTG)、Commonwealth LNGは2024年9月19日、Glencore 社とLNG供給の基本合意を締結したことを発表した。Glencoreは年間200万トンのLNGを20年間Commonwealthから、同じ量の天然ガス供給をKTGから国際価格指標ネットバック契約の下購入する。Commonwealthはルイジアナ州キャメロンLNG輸出設備のFIDを2025年前半、LNG生産開始を2028年に見込んでいる。
  • LNG Canadaは、2024年8月29日、同月最終週、Kitimatの設備に初めて天然ガスを導入する見込み、と述べた。9月12日のアップデートによると、全体として建設は95%以上を完了、引き続き2025年半ばのカーゴ出荷開始に向けて予定通り進んでいる。フレアリングはプロジェクトスタートアップ中に間歇的になされるが、プロジェクトが稼働開始すれば、頻度は下がるという。
  • カナダのブリティッシュコロンビア州環境・気候変動戦略部は2024年9月12日、環境評価オフィス(EAO)が、同月11日にCoastal GasLink Pipeline(CGL)に対して環境評価証明書の要件に違反したとして、10件総額59万カナダドルの罰則金を科したことを発表した。この罰則金は2023年4-5月にパイプライン建設ルート沿いの数日間の検査中にコンプライアンス・実行管理官によって確認された腐食・土壌管理措置の不備に関するもの。
  • DOEは2024年8月31日、NFE Altamira FLNGによる申請の非FTA部分に関して、年間145 Bcf、日量0.40 Bcfの全量を許可した。NFE Altamiraは2050年12月までの輸出期間を要請したが、DOEは2024年8月31日から2029年8月30日の5年間の輸出期間を承認した。DOEは今回許可指令の日付から2年経過して以降のNFE Altamiraによる指令の改正申請に基づき輸出期間を再検討する、と述べた。DOEは今回の許可指令により本土48州からLNG非FTA輸出累計承認量が日量46.45 Bcfとなる、と述べた。New Fortress Energy(NFE)は9月3日、DOEから最大年間140万トンのLNGを非自由貿易諸国向けにメキシコアルタミラ沖Fast LNG 1(FLNG 1)設備から5年間輸出する承認を受けたことを発表した。
  • メキシコ太平洋岸Saguaro Energía LNG設備、Sierra Madreパイプラインの所有者 であるMexico Pacificは2024年8月28日、SPAを韓国POSCO Internationalと締結したことを発表した。POSCO Internationalは年間70万トンのLNGをFOB条件で20年間購入する。メキシコのソノラ州プエルトリベルタッドSaguaro Energía LNG設備フェーズ1は液化系列3基と関連インフラで構成される。同LNG設備は米テキサス州Permian盆地からの天然ガスを活用する。
  • シンガポールLNG Allianceの子会社メキシコAmigo LNGは2024年8月23日、長期LNG供給契約を、マレーシアE&H ENERGYと締結したことを発表した。Amigo LNG は、年間360万トンのLNGをマレーシア市場向けとしてE&Hに20年間、2027年第3四半期から供給する。メキシコ Amigo LNGはソノラ州グアイマス港隣接に位置し、年間780万トンの液化・輸出設備で、DOEからの米国FTA・非FTA向け輸出許可を2027年12月まで有効に所持している。
  • シンガポール LNG Allianceは2024年8月30日、子会社メキシコAmigo LNGが同国ソノラ州グアイマスでの液化設備からLNGを供給することでオマーンOQ TradingとHOAを締結したことを発表した。
  • DOEは2024年8月27日、Gato Negro Permitium Unoにより米国で生産された天然ガスをパイプラインでメキシコ向けに最大年間236 Bcf(日量0.647 Bcf)輸出、この内年間203 Bcf(日量0.556 Bcf)をLNGとして米国のFTA諸国に再輸出することに長期承認が求められ、5月10日に申請が提出されたと述べた。Gatoは、LNGを船舶により計画中のメキシコのコリマ州マンサニーヨGato Negro Manzanillo LNG設備から再輸出することを検討している。申請されているのは2050年12月31日までの期間。

 

欧州および周辺地域

  • ドイツDeutsche ReGasは2024年9月3日、ムクラン工業港Deutsche Ostsee基地が2日に通常操業を開始したことを発表した。LNG船HELLAS DIANAが8月最終週に荷揚げを行った。同社は2隻の相互接続したFSRUへの「世界初」同時引き渡しだった、と述べた。民間資金により建設された基地であり、貯蔵容量はLNG 300,000 m3超で、容量時間当たり16 GWhとドイツのLNG基地中最大の受入基地であるとしている。
  • ドイツUniperは2024年9月19日、ConocoPhillipsと今後10年間で最大10 bcmの天然ガス供給により、長期的パートナーシップを拡大することを発表した。 ConocoPhillipsはUniper向けに、既存のパイプラインガス、拡張するLNGを活用して、北西欧州で天然ガスを供給する。
  • フィンランドGasumは2024年9月2日、Hapag-Lloydのコンテナ船舶に液化バイオメタン(バイオLNG)を、2年間の入札対象期間に供給することで協力する、と述べた。世界最大級のコンテナ船舶運航会社Hapag-Lloydは、温室効果ガス排出を90%以上削減する廃棄物ベースのバイオLNGによる外航海運で、Zero Emission Maritime Buyers Alliance(ZEMBA)最初の取り組みを落札した。このバイオLNGは、ロッテルダム・シンガポール間航路で2025 - 2026年に利用されることとなる。
  • Venture Global LNGは2024年9月17日、GASTRADEと法的拘束力のある長期基地利用契約(TUA)締結を発表した。Venture Globalは、年間100万トンのLNG再ガス化容量をギリシャの新規Alexandroupolis LNG 基地で2025年から5年間確保した。
  • NewMed Energyは2024年9月1日、キプロス共和国EEZ(排他的経済水域)内第12鉱区の既承認済みAphroditeガス田開発生産計画について、8月30日に同ガス田パートナーが、計画改定案を同国政府に承認を求め提出したことを発表した。同計画改定案によれば、同ガス田からの天然ガス生産・処理は当初、生産井4本を同ガス田上に設置する浮体生産設備1基に接続して実施され、公称最大生産容量は日量0.8 BCFとなる。天然ガスは同浮体生産設備からパイプラインによりエジプトの輸送網に輸出される。パートナーはChevron Cyprus Limited(オペレーター)35%、BG Cyprus Limited 35%、NewMed Energy Limited Partnership 30%。
  • Shellは2024年9月2日、Shell International Trading Middle East・トルコ BOTAŞ(Boru Hatları ile Petrol Taşıma AŞ)間で、ShellからBOTAŞ向けに年間最大4 bcm(300万トン)のLNGを米国とグローバルポートフォリオから供給、2027年引き渡し開始の10年間の契約を締結したことを発表した。
  • トルコBOTAŞとTotalEnergiesは2024年9月18日、2027年から年間16 LNGカーゴ(110万トン、1.6 bcm)の10年間のHoAを発表した。
  • 米財務省は2024年8月23日、7隻のLNG輸送船舶を標的とした制裁を発表した。ロシアArctic LNG 2設備から最初の2カーゴを出荷したと目されるPioneer、Asya Energyが含まれる。他は、これら2隻同様インドのOcean Speedstar Solutionsに登録されているEverest Energy、Novatekが傭船している新造船North Air、North Mountain、North Sky、North Wayが含まれていた。米財務省は9月5日、さらに2隻のLNG輸送船舶Mulan、New Energyを制裁リストに追加した。
  • ロシアNOVATEKの2024年9月10日の発表によると、同社はArctic LNG 2の参加企業のひとつだが、NOVATEK従業員は同プロジェクトに雇用されておらず、同プロジェクトによるオペレーション、コマーシャル上の活動は全てArctic LNG 2経営陣によってのみ管理されているものとのこと。メディアによりなされている主張、つまり NOVATEKが影の船団の形成および運営、Arctic LNG 2プロジェクトからの製品積み出しに関与しているとの主張は当てはまらず、事実に基づいたものでもないとのこと。

 

その他地域

  • アブダビADNOCは2024年9月10日、インドIndian Oil(IndianOil)と100万トンのLNGについて長期HoAを締結したことを発表した。このLNGは主としてRuwais LNG プロジェクトから調達されることとなる。同プロジェクトは2028年本格稼働開始が見込まれる。今回の15年間合意に基づき、LNGカーゴはインド国内の IndianOil仕向け先港湾に向けて出荷される。2029年までにIndianOilはADNOCにとって最大のLNG買主になる見込みである。引き取りは Das Islandから年間120万トン、Ruwais LNGから年間100万トンの合計年間220万トンとなる。
  • カタールQatarEnergyは2024年8月26日、クウェートKuwait Petroleum Corporation(KPC)と、同国向け最大年間300万トンのLNG供給に関して15年間のSPAを締結したことを発表した。DES条件にて同国Al-Zour LNG 基地向けに、QatarEnergy の在来型、Q-Flex型、Q-Max型LNG輸送船舶により、2025年1月から引き渡す。今回の契約は、KPCとの間で2件目の長期LNG SPAである。
  • カタールQatarEnergyは2024年9月9日、中国CSSC(中国船舶集团有限公司)との間で、QC-Max輸送船舶追加6隻建造の契約を締結したことを発表した。これにより船団拡張計画での発注済みLNG輸送船舶総数は128隻となり、24隻のQC-Max船舶が含まれる。これらQC-Max船舶は中国Hudong-Zhonghua(沪东中华造船(集团)有限公司)造船所で建造されることとなる。史上建造された最大LNG輸送船舶として、容量は各271,000 m3である。引き渡しは2028年から2031年を予定している。
  • ExxonMobilによる2024年8月31日の情報によると、モザンビークエリア4参加企業は、Rovuma LNGプロジェクトのFEED段階に入った。最新電化LNG方式により、年間150万トンのLNGを生産できる12モジュラー方式で構成することとなる。
  • ARA Petroleumは2024年9月16日、タンザニアNtoryaガス田に関して25年間の開発ライセンスを受けたことを発表した。APT(ARA Petroleum Tanzania)は既にNtorya現地での作業を開始している。
  • LNG、LPG輸送船舶を対象として、パナマ運河の初めての長期枠競売手続き(LoTSA)により、2025年のアクセスについて各24通航枠の6パッケージが9月9日に、各12通航枠の18パッケージが同11日にそれぞれ競売が実施された。LoTSAはLNG輸送船舶をより誘致することも考慮して設計された。
  • EIG傘下のLNG企業MidOcean Energyは2024年9月16日、MidOcean Energy・Hunt Oilが、MidOceanがペルーPeru LNG(PLNG)における追加15%持分をHuntから買い取る契約を締結したことを発表した。MidOceanのPLNG持分が20%から35%に増加する。取引はAramcoが全資金を提供するもので、同社はMidOceanにおける持分を49%に増加する。AramcoのPLNG間接持分は17.2%となる。EIG・ Aramcoに加え三菱商事もMidOceanへの出資者である。HuntのPLNGの持分は50%から35%に減少し、Huntは今回の取引後もPLNGオペレーターを継続する。Huntは引き続きペルーCamisea上流プロジェクト25.2%持分を維持する。
  • Wärtsiläは2024年9月19日、Chevron Shippingと組んで、Chevron TransportのLNG輸送船舶6隻のエンジン1基を、二元燃料(DF)からスパークガス(SG)方式に転換する計画であることを発表した。この転換はメタンスリップを下げて温室効果ガス排出削減を意図する。最初の2隻について発注がWärtsiläにより2024年第3四半期に実行された。

 

(注: bcm: 10億m3、CCS: 炭素回収・貯蔵、DES: 持ち届け ex-ship、DOE: 米連邦エネルギー省、EPC: エンジニアリング・調達・建設、EPCI: エンジニアリング・調達・建設・設置、 EPCm: エンジニアリング・調達・建設管理、FEED: 基本設計、FERC: 米連邦エネルギー規制委員会、FID: 最終投資決定、FLNG: 浮体液化設備、FOB: 本船渡し、FSRU: 浮体貯蔵・気化設備、FSU: 浮体貯蔵化設備、HOA: 基本合意、MOU: 覚書、SPA: LNG売買契約)

 

 

作成協力 一般財団法人日本エネルギー経済研究所

 

添付ファイル