2025年3月
天然ガス・LNG価格動向
直近の値動き
アジア
- 北東アジアのアセスメントされたスポットLNG価格JKMは、北東アジアでの需要低迷を背景に3月初めには下落傾向にあり、3月7日には12ドル前半まで下落した。その後はロシア軍によるウクライナ国内のガス生産施設やインフラへの幾度かの攻撃や、ウクライナでの和平交渉を巡りトランプ大統領がロシアへの制裁や追加関税を示唆したことなどを受け、地政学的リスクが高まり、3月21日には13ドル後半まで上昇した。
- 財務省貿易統計速報に基づくと、2025年2月の日本平均LNG輸入価格は100万Btu当たり11.77米ドル、円建てでは1トン当たり94,326円となった。前者の米ドル建て価格は、2024年11月の全日本平均原油輸入CIF価格が10月より低下したため、前月比0.5米ドル低下した。供給地域別では、米国産は11.53米ドル、ASEAN地域産が11.58米ドル、中東産が11.66米ドル、ロシア産が11.60米ドルであった。また、2月の北東アジア各国の平均輸入価格は、中国10.59米ドル、韓国10.72米ドル、台湾10.63米ドルであった。全日本平均原油輸入CIF価格(JCC: Japan crude cocktail)は2025年2月には1バレル当たり80.40米ドル、円建てでは1キロリットル当たり78,189円となった。
- 2月の日本のLNG輸入量は、587.5万トンと前年同月比で2.5%減少した。2月の中国は454万トンと前年同月比で22.9%減少、韓国は334万トンと前年同月比で20.4%減少、台湾は180万トンと前年同月比34.8%増加となった。
- 1、2月の日本のLNG輸入合計量は1252万トン、中国は1060万トンとなり、日本のLNG輸入量が中国を18%、192万トン上回った。
米国
- 米国スポットガス価格HHは、2月中旬以降4ドル付近を推移していたが、寒波による暖房需要が落ち着いたことにより、2月28日には3.8ドルに下落。3月1週目はガス貯蔵水準の低下により、3月7日には4.4ドルまで上昇した。その後は温暖な天候により3月14日には4.1ドルまで下落した後、再度4ドル付近で推移している。
欧州
- 欧州ガススポット価格TTFは、気温の上昇予報、次期ガス貯蔵目標の緩和に向けた議論、ウクライナ経由のロシア産ガス供給再開の可能性などにより、3月初めまで下落傾向にあり、3月6日には一時11ドル台まで下落した。その後はウクライナにおけるガス生産設備への攻撃や、気温の低下予報を背景に、14日までに13.5ドルまで上昇し、一旦気温上昇予報により12ドル台まで下落したものの、その後再度地政学リスクの高まりもあり21日まで13.5ドル前後で推移した。
中長期の値動き
- JKMは2023年6月に欧州ガス価格の影響等を受け12米ドル付近で推移したが、7月には高在庫と低需要を背景に若干軟化し11米ドル付近で推移した。8月には豪州の主要プロジェクトでのストライキ発生の可能性が生じ、価格はやや上昇基調に入り、9月にストライキが実施された後は15米ドルまで上昇した。10月には中東での紛争の勃発等を受け17米ドルまで上昇したが、11月には地政学的リスクがいくらか緩和され概ね14米ドルで推移した。12月には豊富な供給と軟調な需要によりJKMは11米ドルまで下げ、年が明けた1月においても傾向は変わらず概ね9米ドルで推移した。2月に入り北東アジア地域での旧正月後には下落基調は更に拍車がかかり8米ドルを割ったが、3月には短期的な需要が発生したことなどから一時10米ドルに近づいた。4月半ばには中東情勢激化への懸念等もあり中旬に11米ドル前半まで急騰するも、下旬には緊張緩和により10米ドル前半で推移。5月は夏季に向けた需要増を背景に、下旬には11米ドル後半から-12米ドル台前半を推移。6月も夏場の需要増等を背景に一時13米ドル半ばまで上昇。7月は需要が低調ながら価格下落による短期的な購入意欲の高まりもあり11米ドル後半から12米ドル前半を推移。8月中旬には地政学的な不透明さを背景に14米ドル半ばを付け2024年中の最高値を更新した。9・10月は低需要を背景に軟化し13米ドル付近を推移。11月には気温低下と地政学的緊張の高まりにより15米ドル台を付け、2024年中の最高値を更新している。その後上昇は一時一服するも翌年のロシア産ガスフローの不透明感を受け再び上昇基調に転じた。2025年1月は欧州ガス価格に連動する形で主に13-14米ドル台を推移。2月には一時2023年11月以来の17米ドルを付けるもほどなく下落に転じた。3月は北東アジアでの低需要を背景に、一時12ドル前半まで下落したものの、その後地政学的リスクの高まりにより13ドル後半まで上昇した。
- 日本平均LNG輸入価格は、2020年3月以降の原油価格急落の影響により、8月から10月にかけて2005年1月以来の低水準となる5米ドル台まで下落、その後原油価格上昇に伴い、12月には7米ドル台に上昇した。堅調な原油価格の値動きに応じて、2021年2月には9米ドル半ばまで上昇後、3月は7米ドル半ばまで下落した。その後は、2022年6月までの日本平均原油価格の上昇に伴って、続く18ヶ月間は概ね一貫して上昇し、2022年9月には過去最高の22.73米ドルを記録した。その後、原油価格の2022年7月以降の下降傾向も一因として、2023年4月以降は11から13米ドル台で推移している。
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(出典)
米国HH(Henry Hub)価格: NYMEX Futures and Options, CME Group
蘭TTF(Title Transfer Facility)価格:ICE Endex, Intercontinental Exchange
JKM: LNG Japan/Korea Marker© 2025 by S&P Global Platts, a division of S&P Global Inc.
JOGMECスポットLNG価格:JOGMEC「日本着スポットLNG月次価格」、2021年3月までは経済産業省「スポットLNG価格調査」を出典とする
日本平均LNG輸入価格: 財務省貿易統計をもとに作成
EUA(EU ETS): ICE Endex, Intercontinental Exchange
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天然ガス・LNG在庫動向
日本
- 2024年10月末の国内LNG在庫量は487万トンで、前月比5.3%、24.6万トンの増加、前年同月比では9.2%減少し、過去5年平均値を15.2万トン下回った。
- 2024年11月末の国内LNG在庫量は503万トンで、前月比3.3%、15.9万トンの増加、前年同月比では8.0%減少し、過去5年平均値を7.6万トン上回った。
- 11月末のガス事業用LNG在庫量は279万トンで、前月比10.3%増、前年同月比では1.6%減となった。11月の都市ガス用LNG消費量は前年同月比5.3%減の218万トン、都市ガス用LNG受入量は前年同月比2.1%減の212万トンだった。
- 12月末のガス事業用LNG在庫量は246万トンで、前月比12.0%減、前年同月比では7.0%減となった。12月の都市ガス用LNG消費量は前年同月比4.3%減の295万トン、都市ガス用LNG受入量は前年同月比10.3%減の236万トンだった。
- 10月末の発電燃料用LNG在庫量は234万トンで前月比1.7%増、前年同月比12.1%の減少となった。10月の発電燃料用LNG消費量は、前年同月比で7.5%増の278万トン、発電燃料用LNG受入量は、前年同月比で13.1%減の316万トンであった。
- 11月末の発電燃料用LNG在庫量は224万トンで前月比4.4%減、前年同月比15.0%の減少となった。11月の発電燃料用LNG消費量は、前年同月比で8.5%減の271万トン、発電燃料用LNG受入量は、前年同月比で12.2%減の298万トンであった。
- 2025年3月19日に経済産業省が発表した「発電用LNGの在庫状況」によると、大手電力事業者の3月16日時点のLNG在庫は156万トンであった。2024年3月末比では8万トン上回り、過去5年間の3月末平均を47万トン下回っている。
(出典)
経済産業省「ガス事業主生産動態統計」及び「電力調査統計・火力発電燃料実績」をもとに作成したもので、これら月末在庫を合算した値を国内在庫としてみなしたもの。なお、利用可能なデータは2008年1月以降のものであるため、過去5年平均は2013年1月分から計算している。
米国
- 2025年3月14日の米国天然ガス地下貯蔵有効稼働ガス在庫(ワーキングガス)は、米国エネルギー情報局(EIA)のデータによると、1.7Tcfで前月比18.8%減となった。在庫量は2024年の同時期と比較すると26.8%低く、過去5年平均値を180.4Bcf下回っている。
(出典)
米国エネルギー情報局(U.S. Energy Information Administration, EIA)のデータをもとに作成
欧州
- 2025年3月21日現在のAggregated Gas Storage Inventory(AGSI+)加盟各社中、EU加盟国各社が有する欧州天然ガス地下貯蔵在庫は387.98TWh(LNG換算2,567万トン相当)であった。これは前年同期より42.6%、287.73TWh(LNG換算1,903万トン相当)下回るものだった。貯蔵容量に対する充填率は33.84%であり、前年同期の59.21%を下回り、過去5年間平均値の41.71%を下回った。貯蔵容量の大きなドイツ、イタリア、オランダの充填率はそれぞれ28.78%、44.29%、21.74%であった。
(出典)
Aggregated Gas Storage Inventory(AGSI), Gas Infrastructure Europeのデータをもとに作成。なお、利用可能なデータは2011年1月以降のものであるため、過去5年平均は2016年1月分から計算している。
- 2025年3月21日現在のAggregated LNG Storage Inventory(ALSI)加盟各社が有する欧州LNG在庫量は362万m3で、前月比6.5%減少、前年同日比21.5%減少、過去5年平均値を6.9%下回っている。貯蔵容量に対する充填率は39.3%であり、前年同期の53.6%を下回っている。
(出典)
Aggregated LNG Storage Inventory(ALSI), Gas Infrastructure Europeのデータをもとに作成。なお、利用可能なデータは2012年1月以降のものであるため、グラフ中の過去10年平均及び過去10年平均幅の値については、5年未満の値が含まれる。
天然ガス・LNGプロジェクト動向
ハイライト
米国でLNG生産プロジェクト開発の勢いが加速している。規制承認面では、建設中のプロジェクト1件、計画中の1件について、DOEが輸出開始期限の延長を承認した。さらに1件のプロジェクトが条件付きながら非FTA諸国への輸出許可を得た。建設中の案件を有するLNGプロジェクト開発企業数社が、拡張計画・方針および推進中の案件について、具体的な日程を明らかにした。欧州委員会は、LNG輸出国側でのLNG生産プロジェクトへの支援可能性を示唆した。
アジア・オセアニア地域
- 豪 Woodside Energyは2025年3月17日、中国China Resources Gas International Limitedとの間で中国向けLNG供給に関する長期SPAを締結したことを発表した。当該SPAは、年間60万トン、15年間、DES条件で2027年開始としている。Woodsideにとって2024年初以降締結したアジア向け4件目の長期LNG販売である。また、Woodsideにとって中国の買主と長期販売契約を単独で締結した初めての事例となる。
- IHIは2025年3月17日、子会社IHIプラントが台湾 CTCIと共同で、CPCが台湾南部の高雄市で計画している洲際LNG受入・貯蔵基地の地上式LNG貯蔵タンク4基のEPC業務を受注したことを発表した。2030年後半の完成を予定している。
- 台湾政府経済部は2025年2月26日、TaiPower(台湾電力公司)が、2.6GWガス火力発電設備・基隆港西側の年間180万トンのLNG輸入基地建設計画について、環境部管轄下の環境評価委員会から承認を受けた、と述べた。
- Vitolは2025年3月4日、フィリピンLNGPHとLNG SPAを締結したことを発表した。Vitolは最大年間80万トンのLNGを2025年から10年間供給する。このLNGは、バタンガスのLNGPH基地に引き渡されることとなる。
- Excelerate Energyは2025年3月14日、Petrovietnam Gas(PV Gas)と早ければ2026年の米国からのLNG調達で協力すべくMoUを締結したことを発表した。両社はPV GasのLNG需要を精査し、両社がLNG調達を実施する戦略的枠組を検討する。
- ベトナム産業・通商省は2025年3月14日、PV GasがConocoPhillips、Excelerate Energyとの間で各々、長期LNG買売契約に関するMOUを締結したことを発表した。
- 豪Woodside Energyは2025年2月25日、Scarboroughプロジェクトは80%完成しており、2026年に最初のLNGカーゴの予定通りに進捗している、と述べた。
- Shell Australiaは2025年3月5日、西オーストラリア州沖Cruxガス田での設置・コミッショニング活動に向けて、連邦海洋石油類安全・環境規制機関NOPSEMAから、環境対応計画(EP)について承認を受けた。同プロジェクトは、Prelude FLNG向けバックフィルガス供給源とみなされている。
北米地域
- 米商工会議所は2025年3月6日、米国LNG輸出の大きな経済上・環境上の利益を実証するスタディをS&P Globalが公表したことを発表した。北東部諸州に供給する天然ガスパイプライン建設の巨大な利益も示している。このスタディは、米国産LNG輸出が世界の温室効果ガス排出を削減する上で役立つとしている。検討中のLNGプロジェクトが停止されれば、喪失される数量の85%は石炭、石油、ロシア・アルジェリアからのパイプラインガス等のより排出量の大きな供給で代替されることとなるとした。これらプロジェクトの推進で2040年までに最大7.80億トンの温室効果ガス排出が回避されるとしている。
- EPA(米連邦環境保護庁)は2025年3月12日、規制緩和項目31件を発表した。温室効果ガス報告プログラム見直し、石油・ガス開発の排水規制見直しが含まれる。
- Cheniere Energyは2025年3月17日、Corpus Christiステージ3液化プロジェクト(CCL Stage 3)第1系列実質完成が同16日に実現したことを発表した。コミッショニングが完了し、EPCパートナーBechtel Energyは、同系列の監督・運転・制御関連システムをCheniereに引き渡した。CCL Stage 3は7本のミッドスケール系列で構成、見込まれる合計生産容量は年間1,000万トンを超える。
- 米Sempraは2025年2月25日、Port Arthur LNGフェーズ2開発プロジェクトについて強力なコマーシャル上の関心を受けており、FID目標を2025年としている、と述べた。同プロジェクトは既にSaudi Aramco子会社とLNG引き取り・出資参加に関して非拘束のHOAを結んでおり、Bechtel Energyと固定価格EPC契約を確保している。
- Venture Globalは2025年3月6日、ルイジアナ州Plaquemines LNG設備のブラウンフィールド拡張計画を発表した。この拡張計画は、24系列で、容量を年間1,800万トン加え、累計4,500万トン超とする。
- DOEとVenture Globalは2025年3月19日、Venture GlobalがDOEからルイジアナ州キャメロン郡CP2 LNGプロジェクトから非FTA諸国への条件付きLNG輸出承認を受けたことを発表した。DOEは数か月後に最終指令を発行する見通し。
- DOEは2025年3月5日、Golden Pass LNG TerminalにLNG輸出許可建設開始期限延長を承認した。テキサス州で建設中のGolden Pass LNG設備のLNG輸出開始までの期間に延長を認める。
- NextDecadeとBaker Hughesは2025年3月11日、NextDecadeがRio Grande LNG設備第4 - 8系列について、Baker Hughesのガスタービン、冷媒圧縮(機器パッケージ)を活用し、これら機器パッケージのメンテナンス作業を担当する委託業務の枠組契約を締結したことを発表した。NextDecadeは、第4、5系列・関連インフラストラクチャについて、必要な政府承認を維持すること、EPC契約を固めて締結すること、適切なコマーシャル手配を整えること、各系列・関連インフラストラクチャ建設に必要な資金調達を獲得することを条件に、FIDを行い建設開始することを見込んでいる。NextDecadeは第6 - 8系列の承認手続きを開始している。これにより同社液化容量は年間1,800万トン増加する見込み。
- 米連邦コロンビア特別区控訴審は2025年3月18日、FERCによるRio Grande LNG・Texas LNG両輸出プロジェクト建設・操業の承認の有効性を再確認した。2024年8月の同法廷による承認取り消し判断について、プロジェクト側の再審理請求に応じて、取り消した。
- DOEは2025年3月10日、Delfin LNGに対するLNG輸出許可延長を認めた。Delfinは2025年中にFIDに達し、FLNGV(浮体液化船舶)建造開始することを目指す。今回の指令は、Delfin輸出承認の輸出開始日程を2029年6月1日まで延長する。米連邦海事局は3月21日、Delfin LNGにLNG輸出のため沖合港湾設備を所有、建設、操業、最終的には廃止することを承認するライセンスを発行した。
- DOEは2025年2月28日、船舶燃料としてのLNG利用の障壁を除外する指令を発表した。JAX LNG向けに前政権下で発行された海洋船舶燃料利用、LNGバンカリングに対する新たな監督権を規定した指令を修正する。再審理に関する指令を発行することで、DOEは2024年に発行された指令を修正する。
- 台湾経済部は2025年3月20日、CPCが米アラスカ州Alaska Gasline Development Corporation(AGDC)との間で、LNG購入、Alaska LNGプロジェクトへの投資に向けたLOI(覚書)を締結したことを発表した。
- ARC Resources(ARC)は2025年3月11日、ExxonMobil LNG Asia Pacific(EMLAP)と長期SPAを締結したことを発表した。EMLAPはARCのCedar LNGプロジェクトにおける引き取り量全量、年間150万トンを国際LNG価格方式で購入する。この契約は2028年末に見込まれるCedar LNG設備コマーシャル稼働開始とともに開始し、ARCのCedar LNG Partnersとの液化加工サービス契約期間中続く。
欧州および周辺地域
- 欧州委員会(EC)は2025年2月26日、"Action Plan for Affordable Energy"を公表した。その第3項目として"Ensuring well-functioning gas markets"は「需要集約と共同購入は、エネルギー源および、クリーンエネルギー生産に必要な資機材の市場創出を加速する上で強力な役割を果たすことができる。EU競争規則に従い需要を集約し、共同購入戦略を採ることにより、EU買主達は共同した経済力を活かし、交渉上のポジションを強化し、供給者との間でより有利な条件を交渉できる。このアプローチは、過去日本により採用されたもので、日本はLNGを生産する諸国の輸出インフラストラクチャへの投資を支援する長年の政策を有する。EU共同購買力は、価格を安定させるため、ガス液化権、購入のオプションの確保など、より長期の契約関係のオプションを探求することにより醸成されるべきである。EUの競争力、地政的事情、気候変動対応目標に鑑み、EUとその加盟諸国は、民間投資家に有利な融資を提供し、EU輸入企業に、海外の輸出インフラストラクチャへの直接投資に、ともに取り組むことができ得る。さらに委員会支援を得て加盟諸国間での調整を向上し、さらに柔軟な貯蔵の充填により、ガス貯蔵再充填に伴うシステムの緊張の緩和、市場の混乱を回避し、よりよい購入条件での再充填、供給セキュリティを支えることができる」としている。
- 欧州委員会は2025年3月5日、各国ガス貯蔵を11月1日までに有効稼働容量に対して貯蔵率90%とする義務を2年間延長することを提案した。「EU各国が、この夏の貯蔵設備再充填に向け対策を決める際、現在の市場環境を勘案し柔軟性を織り込み、最適な購入条件で夏季を通じて貯蔵設備を充填できるようにすることを推奨する」として、調整を認めている。
- 欧州委員会は2025年3月4日、AggregateEUメカニズムを通じての共同ガス購入調整の新規中期マッチング手続きを12日より開始することを発表した。買主は2025年7月から2030年10月の5年間の需要を表明できる。参加希望買主・売主は3月10日までPRISMAプラットフォームで登録可能。過去のマッチング手続きでは買主・売主はLNG引き渡しのEU内希望基地を示すことができた。今回はFOB希望も表明することができる。
- イタリアOLT Offshore LNG Toscanaは2025年3月14日、FSRU Toscanaの有効稼働寿命延長の結果、2044年末まで操業する予定を発表した。2024年に同設備が特別メンテナンスのためシップヤードにあった際、OLTは有効稼働寿命延長を目的とした一連の作業も実施した。
- 欧州連合理事会は2025年2月24日、第16次ロシア制裁パッケージを採択した。同時に採択された理事会規制では、過去分の規制を修正している。「ロシア産LNG船舶積み替え目的の再積み込み業務禁止は、欧州連合への輸入、加盟諸国の供給セキュリティに影響してはならない。この理由により、加盟国本土から、遠隔地など、同一加盟国港湾間輸送のため必要な場合、船舶積み替え目的の再積み込み業務が認められることを明確にする」「相互に接続された天然ガスシステムに接続していない欧州連合のLNG基地を通じてのロシア産LNG輸入は禁止される。この禁止について、相互接続された天然ガスシステムに接続していない加盟国が認め得る適用除外を導入する。当該LNGが、エネルギー供給を確保するため、相互に接続された天然ガスシステムに接続している別の加盟国に位置する基地から購入、輸入、移送される場合である」としている。
- ポーランドORLEN、ウクライナNaftogazは2025年3月7日、ウクライナ向け天然ガス供給における協力諸条件に合意したことを発表した。協力の覚書の一環として、両社は1億m3のガス供給契約も締結した。供給されるガスはリトアニアKlaipėda基地に引き渡されるLNGカーゴから調達される。
その他地域
- サウディアラビア Aramcoは2025年3月4日、2030年までにコマーシャル上実現可能な長期引き取りのプロジェクトが利用できることを条件に、ブルーアンモニア最大年間250万トンの生産を目標とする、と述べた。従来の年間1,100万トンから下方修正となる。
- 大阪ガスとADNOCは2025年2月27日、Ruwais LNGプロジェクトにおいて生産されるLNGのSPAを締結したことを発表した。2020年代後半から15年間で、最大年間80万トンのLNGを引き渡す。大阪ガスがアブダビから長期でLNGを調達するのは今回が初めて。
- 米国輸出入銀行は2025年3月19日、同13日の理事会にてMozambique LNGプロジェクト開発・建設への米国産資機材・サービス輸出支援のための2019年の直接融資案件最大47億米ドルの2度目の修正を全会一致で承認したことを発表した。本件は4年間中断していた。
- Golar LNG(Golar)の2025年2月27日付情報によるとGolarは2024年7月、アルゼンチンでのFLNG配備に公式合意、同10月FLNG Hilliの20年間傭船の通知を受けた。2024年11月にPampa EnergiaがSESA(Southern Energy S.A.)プロジェクトに20%出資参加、Harbour Energyが同12月に15%、YPFが2025年2月に15%参加を決めている。Pan American Energyは40%を維持、Golarは10%出資する。SESAは同FLNG向けアルゼンチン産天然ガス調達、FLNG Hilli傭船・操業、LNG販売を担当する。FLNG Hilliは2026年7月、現在のカメルーン沖傭船完了後、改修を行う。アルゼンチンでの操業は2027年開始見込み。
(注: bcm: 10億m3、CCS: 炭素回収・貯蔵、DES: 持ち届け ex-ship、DOE: 米連邦エネルギー省、EPC: エンジニアリング・調達・建設、EPCI: エンジニアリング・調達・建設・設置、 EPCm: エンジニアリング・調達・建設管理、FEED: 基本設計、FERC: 米連邦エネルギー規制委員会、FID: 最終投資決定、FLNG: 浮体液化設備、FOB: 本船渡し、FSRU: 浮体貯蔵・気化設備、FSU: 浮体貯蔵化設備、HOA: 基本合意、MOU: 覚書、SPA: LNG売買契約)
作成協力 一般財団法人日本エネルギー経済研究所
添付ファイル
- 日本のLNG在庫量(29.5KB) (2025/3/25更新)
- 米国天然ガス地下貯蔵量(62.2KB) (2025/3/25更新)
- 欧州天然ガス地下貯蔵量(460.6KB) (2025/3/25更新)
- 欧州LNG在庫量(277.7KB) (2025/3/25更新)