2025年4月
天然ガス・LNG価格動向
直近の値動き
アジア
- 北東アジアのアセスメントされたスポットLNG価格JKMは、3月21日には13ドル後半だった価格が、ウクライナの停戦を巡る米露間交渉開始による市場心理の和らぎから3月末には12ドル後半まで下落、さらに4月3日のトランプ政権による新たな関税措置の発表を受けて、4月11日には11ドル前半まで大きく下落した。その後は、トランプ政権が関税導入時期延期、見直し等を発表したことに加え、アジア地域の複数のLNG出荷基地で計画外停止があったことが重なり、4月22日には12ドル前半まで値を戻している。
- 財務省貿易統計速報に基づくと、2025年3月の日本平均LNG輸入価格は100万Btu当たり11.73米ドル、円建てでは1トン当たり90,953円となった。前者の米ドル建て価格は、2024年12月の全日本平均原油輸入CIF価格が11月より低下したため、前月比0.04米ドル低下した。供給地域別では、米国産は12.22米ドル、ASEAN地域産が11.69米ドル、中東産が12.11米ドル、ロシア産が11.15米ドルであった。また、3月の北東アジア各国の平均輸入価格は、中国9.92米ドル、韓国11.82米ドル、台湾11.01米ドルであった。全日本平均原油輸入CIF価格(JCC: Japan crude cocktail)は2025年3月には1バレル当たり79.49米ドル、円建てでは1キロリットル当たり74,773円となった。
- 3月の日本のLNG輸入量は、515万トンと前年同月比で7.2%減少した。3月の中国は497万トンと前年同月比で24.5%減少、韓国は427万トンと前年同月比で19.3%増加、台湾は209万トンと前年同月比10.1%増加となった。
- 1、2、3月の日本のLNG輸入合計量は1,767万トン、中国は1,557万トンとなり、この3ヶ月は日本のLNG輸入量が中国を13%、210万トン上回った。
米国
- 米国スポットガス価格HHは、3月下旬は4ドル付近を推移していたが、トランプ政権が4月3日に公表した関税政策に対し、各国の報復関税による景気後退の懸念が強まったことで月を通して下落傾向が続き、4月22日には3.0ドルまで下落。
欧州
- 欧州ガススポット価格TTFは、3月21日には13.5ドルだった価格は、ウクライナの停戦を巡る米露間交渉開始のニュースで市場心理が弱気となり、また欧州の気温上昇や再生可能エネルギーの出力上昇が続いたことで下落傾向にあったが、4月上旬の米国の新たな関税措置の発表を受けてさらに大きく下落、4月10日には10.8ドルとなった。その後は、大きな価格下落に対するリバウンドもあり値を戻して、4月22日には11.5ドル付近で推移している。
中長期の値動き
- JKMは2023年6月、JKMは欧州ガス価格の影響等を受け12米ドル付近で推移したが、7月には高在庫と低需要を背景に若干軟化し11米ドル付近で推移した。8月には豪州の主要プロジェクトでのストライキ発生の可能性が生じ、価格はやや上昇基調に入り、9月にストライキが実施された後は15米ドルまで上昇した。10月には中東での紛争の勃発等を受け17米ドルまで上昇したが、11月には地政学的リスクがいくらか緩和され概ね14米ドルで推移した。12月には豊富な供給と軟調な需要によりJKMは11米ドルまで下げ、年が明けた1月においても傾向は変わらず概ね9米ドルで推移した。2月に入り北東アジア地域での旧正月後には下落基調は更に拍車がかかり8米ドルを割ったが、3月には短期的な需要が発生したことなどから一時10米ドルに近づいた。4月半ばには中東情勢激化への懸念等もあり中旬に11米ドル前半まで急騰するも、下旬には緊張緩和により10米ドル前半で推移。5月は夏季に向けた需要増を背景に、下旬には11米ドル後半から-12米ドル台前半を推移。6月も夏場の需要増等を背景に一時13米ドル半ばまで上昇。7月は需要が低調ながら価格下落による短期的な購入意欲の高まりもあり11米ドル後半から12米ドル前半を推移。8月中旬には地政学的な不透明さを背景に14米ドル半ばを付け2024年中の最高値を更新した。9・10月は低需要を背景に軟化し13米ドル付近を推移。11月には気温低下と地政学的緊張の高まりにより15米ドル台を付け、2024年中の最高値を更新している。その後上昇は一時一服するも翌年のロシア産ガスフローの不透明感を受け再び上昇基調に転じた。2025年1月は欧州ガス価格に連動する形で主に13-14米ドル台を推移。2月には一時2023年11月以来の17米ドルを付けるもほどなく下落に転じた。3月は北東アジアでの低需要を背景に、一時12ドル前半まで下落したものの、その後地政学的リスクの高まりにより13ドル後半まで上昇した。4月は米国の関税政策発表による世界的な景気後退の懸念から11ドル前半まで急落したが、その後反発し12ドル前半で推移。
- 日本平均LNG輸入価格は、2020年3月以降の原油価格急落の影響により、8月から10月にかけて2005年1月以来の低水準となる5米ドル台まで下落、その後原油価格上昇に伴い、12月には7米ドル台に上昇した。堅調な原油価格の値動きに応じて、2021年2月には9米ドル半ばまで上昇後、3月は7米ドル半ばまで下落した。その後は、2022年6月までの日本平均原油価格の上昇に伴って、続く18ヶ月間は概ね一貫して上昇し、2022年9月には過去最高の22.73米ドルを記録した。その後、原油価格の2022年7月以降の下降傾向も一因として、2023年4月以降は11から13米ドル台で推移している。
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(出典)
米国HH(Henry Hub)価格: NYMEX Futures and Options, CME Group
蘭TTF(Title Transfer Facility)価格:ICE Endex, Intercontinental Exchange
JKM: LNG Japan/Korea Marker© 2025 by S&P Global Platts, a division of S&P Global Inc.
JOGMECスポットLNG価格:JOGMEC「日本着スポットLNG月次価格」、2021年3月までは経済産業省「スポットLNG価格調査」を出典とする
日本平均LNG輸入価格: 財務省貿易統計をもとに作成
EUA(EU ETS): ICE Endex, Intercontinental Exchange
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天然ガス・LNG在庫動向
日本
- 2024年11月末の国内LNG在庫量は503万トンで、前月比3.3%、15.9万トンの増加、前年同月比では8.0%減少し、過去5年平均値を7.6万トン上回った。
- 2024年12月末の国内LNG在庫量は499万トンで、前月比0.6%、3.12万トンの減少、前年同月比では13.4%減少し、過去5年平均値を15.9万トン上回った。
- 12月末のガス事業用LNG在庫量は246万トンで、前月比12.0%減、前年同月比では7.0%減となった。12月の都市ガス用LNG消費量は前年同月比4.3%減の295万トン、都市ガス用LNG受入量は前年同月比10.3%減の236万トンだった。
- 1月末のガス事業用LNG在庫量は225万トンで、前月比8.3%減、前年同月比では1.8%減となった。1月の都市ガス用LNG消費量は前年同月比4.7%減の269万トン、都市ガス用LNG受入量は前年同月比7.8%増の266万トンだった。
- 11月末の発電燃料用LNG在庫量は224万トンで前月比4.4%減、前年同月比15.0%の減少となった。11月の発電燃料用LNG消費量は、前年同月比で8.5%減の271万トン、発電燃料用LNG受入量は、前年同月比で12.2%減の298万トンであった。
- 12月末の発電燃料用LNG在庫量は254万トンで前月比13.5%増、前年同月比18.8%の減少となった。12月の発電燃料用LNG消費量は、前年同月比で1.0%増の345万トン、発電燃料用LNG受入量は、前年同月比で6.2%減の417万トンであった。
- 2025年4月23日に経済産業省が発表した「発電用LNGの在庫状況」によると、大手電力事業者の4月20日時点のLNG在庫は211万トンであった。2024年4月末比では7万トン下回り、過去5年間の4月末平均を3万トン下回っている。
(出典)
経済産業省「ガス事業主生産動態統計」及び「電力調査統計・火力発電燃料実績」をもとに作成したもので、これら月末在庫を合算した値を国内在庫としてみなしたもの。なお、利用可能なデータは2008年1月以降のものであるため、過去5年平均は2013年1月分から計算している。
米国
- 2025年4月11日の米国天然ガス地下貯蔵有効稼働ガス在庫(ワーキングガス)は、米国エネルギー情報局(EIA)のデータによると、1.9Tcfで前月比8.1%増となった。在庫量は2024年の同時期と比較すると20.9%低く、過去5年平均値を74Bcf下回っている。
(出典)
米国エネルギー情報局(U.S. Energy Information Administration, EIA)のデータをもとに作成
欧州
- 2025年4月16日現在のAggregated Gas Storage Inventory(AGSI+)加盟各社中、EU加盟国各社が有する欧州天然ガス地下貯蔵在庫は407.67TWh(LNG換算2,696万トン相当)であった。これは前年同期より42.0%、295.04TWh(LNG換算1,952万トン相当)下回るものだった。貯蔵容量に対する充填率は36.09%であり、前年同期の62.18%を下回り、過去5年間平均値の46.98%を下回った。貯蔵容量の大きなドイツ、イタリア、オランダの充填率はそれぞれ30.14%、43.88%、23.25%であった。
(出典)
Aggregated Gas Storage Inventory(AGSI), Gas Infrastructure Europeのデータをもとに作成。なお、利用可能なデータは2011年1月以降のものであるため、過去5年平均は2016年1月分から計算している。
- 2025年4月16日現在のAggregated LNG Storage Inventory(ALSI)加盟各社が有する欧州LNG在庫量は503万m3で、前月比34.4%増加、前年同日比9.8%増加、過去5年平均値を14.8%上回っている。貯蔵容量に対する充填率は54.7%であり、前年同期の51.5%を上回っている。
(出典)
Aggregated LNG Storage Inventory(ALSI), Gas Infrastructure Europeのデータをもとに作成。なお、利用可能なデータは2012年1月以降のものであるため、グラフ中の過去10年平均及び過去10年平均幅の値については、5年未満の値が含まれる。
天然ガス・LNGプロジェクト動向
ハイライト
米国本土のLNGプロジェクトでは、規制面に加えコマーシャル面での進展も見られる。豪Woodsideが買い取ったLouisiana LNGプロジェクトでは、Stonepeakが設備の40%に出資することとなり、さらにドイツUniperと販売取引を締結した。Lake Charles LNGプロジェクトでは、Energy TransferがMidOcean Energyの30%参画に関してHOAを締結した。Commonwealth LNGプロジェクトでは、Kimmeridge傘下のプロジェクト親会社の24.1%株式をアブダビのMubadala Energyが取得する。フェーズ1設備建設中のRio Grande LNGプロジェクトは、次フェーズの販売取引を確保した。
アジア・オセアニア地域
- ベトナムPV GAS(PetroVietnam Gas)は2025年3月26日、マレーシアPETRONASとの間で協力可能性に関して話し合った、と述べた。PETRONASは4月10日、PETROVIETNAMとの間で、PM3コマーシャル・アレンジメント・エリア(CAA)に関して、生産分与契約(PSC)・上流ガス販売契約(UGSA)を20年間延長する原則合意(KPA)を締結したことを発表した。同地域は両国の海洋境界にまたがる。
- 豪Viva Energyは2025年3月31日、Poten & PartnersにGeelongに計画するLNG基地向けのFSRU 1隻の確保に向け支援を委託したことを発表した。この新基地は、LNG 160,000m3 - 180,000m3容量の船舶を必要とする。Viva Energyは、Geelongの自社石油精製設備隣接のLNG基地建設計画に関して規制上の承認を待っている。ビクトリア州政府からの環境影響評価は4月に見込まれ、Viva Energyは2025年末までにFIDを見込んでいる。承認されれば、同基地は2028年稼働開始予定である。
- Shellは2025年4月1日、Shell Eastern Tradingが既に発表していたPavilion Energy株式の100%買収を完了したことを発表した。Pavilion Energyは、グローバルLNGトレーディングビジネスを実施しており、契約供給量は年間650万トン有する。今回の買収はPavilion EnergyのLNG引き取り・供給契約、気化容量のポートフォリオ、LNGバンカリングビジネスを含む。Pavilion Energyのシンガポールでのパイプラインガスビジネスはこの取引に含まれず、Temasek完全子会社Gas Supply Pte Ltd(GSPL)に移管された。Pavilion Energyのタンザニア第1鉱区、第4鉱区における20%持分はこの取引に含まれていない。
- 商船三井(MOL)は2025年4月10日、東京ガス100%子会社東京エルエヌジータンカー(TLT)へ長期傭船される新造LNG運搬船に、風力補助推進システムであるウインドチャレンジャーの2基搭載に合意したことを発表した。LNG運搬船へのウインドチャレンジャー搭載は、本件が世界で2隻目となる。
- シンガポール海事庁(MPA)は2025年4月10日、シンガポール港湾での海洋燃料としてのLNG供給規模拡大に向けた関心表明手続き(EOI)で14件の提案を受領したことを発表した。18社がEOIに参加した。8件はバイオメタン、e-メタンのソリューションを含めていた。MPAは候補選定された企業と2025年後半までに海上でのLNG積み込みのトライアルを実施する。シンガポールでの海洋燃料としてのバイオメタン、e-メタン利用促進の計画も構築する。MPAはバイオメタン、e-メタン含めたバンカー供給ライセンス申請募集を2026年初までに見込んでいる。
- 豪Santosは、2025年4月17日、Barossa LNGは第1四半期中に95.2%完了、ガス輸送パイプライン・ダーウィンパイプライン複線化は完了、海底インフラストラクチャはほぼ敷設され、FPSOのシップヤードでのコミッショニング活動は90%完了した、と述べた。生産井4本が掘削・完了され、5本目は完了を残して中断、6本目の掘削は進行中である。4本からの生産でDLNG全量生産量分のガスの引き渡しが可能となる。同プロジェクトは引き続き2025年第3四半期ガス生産開始の予定で進んでいるとのこと。
北米地域
- カナダCedar LNGは2025年3月21日、エネルギー・天然資源相がCedar LNGプロジェクト向けに最大2億カナダドルの戦略・革新ファンド(SIF)に基づく拠出契約を発表したことを明らかにした。Cedar LNGは2024年6月にFIDを行い、カナダ初の原住民マジョリティ所有のLNG設備が現実化している。FID以降、海洋基地・パイプライン敷設権用地の承認手続きが開始され、完了に近付いている。海洋基地・パイプライン建設は2025年第2四半期開始、建設のピークは2026年と見込まれる。FLNG開発は韓国で進行中である。同プロジェクト稼働開始は2028年末と見込まれる。
- ドイツSEFE(Securing Energy for Europe)、米Delfin Midstreamは2025年3月25日、年間150万トン・15年間以上・FOB条件でのLNG長期供給に関するHOAを締結したことを発表した。このLNGはDelfinが湾岸ルイジアナ州キャメロン郡沖に配置するFLNG船舶より調達されることとなる。
- Venture Globalは2025年3月25日、自社最初のLNG輸出プロジェクトであるCalcasieu Passプロジェクトの残り設備、電力集約システム、前処理設備、LNG貯蔵、BOG(ボイルオフガス)、海洋設備の稼働開始についてFERCに承認を申請した。FERCは4月3日、これを承認した。Venture Globalは4月15日、Calcasieu Passのコマーシャル稼働開始期日、同プロジェクト長期買主向けLNG販売の開始を発表した。同社はFIDから68ヶ月後のマイルストーンで到達したことで、最速完成の新規プロジェクトのひとつとなった、と述べた。この発表によると、多数のミッドスケール・モジュラー液化・プロセス設備を順次引き渡し設置する革新的な新規の構成および自社によるオーナー主導の建設手法により、グローバルのパンデミック、2件のハリケーン、設備のパワーアイランド(電力供給拠点)の製造上の問題により生じたフォースマジュールなど、予測されていなかった大きな諸課題を克服することができたとのこと。同プロジェクトは、固有の設計に伴う複合化を支える主要要素の数年間にまたがる修正と修復を完了した。Calcasieu Passの長期SPAsは、世界でも買主にとり最も魅力ある価格方式の範疇に含まれ、平均液化手数料は100万Btu当たり2米ドルを下回っているとしている。
- Glenfarne、アラスカ州公社Alaska Gasline Development Corporation(AGDC)は2025年3月27日、Glenfarne Alaska LNGがAlaska LNGプロジェクトのマジョリティオーナーとなり、プロジェクト全体の建設・操業に向けた開発を主導する諸契約を締結したことを発表した。Alaska LNGは、North Slope天然ガスをアラスカ州市民・アラスカ州のユーティリティ企業に供給し、最大年間2,000万トンのLNGを輸出するべく構想されている。AGDCは、Alaska LNGプロジェクト資産全体を所有し運営するべく創設されたAGDC子会社8 Star Alaskaの75%をGlenfarneに譲渡する。GlenfarneはAlaska LNGの主開発者の役割を担い、Alaska LNGの開発に関わる残りの業務に関して、FEEDからFIDに至るまで推進する。AGDCは8 Star Alaskaの残り25%所有者として残る。Alaska LNGは3つのサブプロジェクトであり、(1)全長807マイル・42インチ径パイプライン、(2)ニキスキでのLNG輸出設備、(3)North Slopeにおける年間700万トンの二酸化炭素を回収・貯蔵するCCS設備となる。Cook Inletでの天然ガス生産の減少に伴い、プロジェクトフェーズ(1)は直ちに着手し、速やかにNorth Slopeガスをアラスカ州市場にもたらすため必要なパイプラインインフラストラクチャ開発・FIDを優先するものとする。FID後もアラスカ州政府は8 Star Alaskaにおける25%株式を維持し、8 Star Alaskaサブプロジェクト3件のいずれにおいても、あるいは全部に最大25%を投資するオプション権を有する。
- Alaska LNG Project社は2025年3月28日、Alaska LNG プロジェクト進捗状況を示す半期報告書をDOEに提出した。AGDCは、FEED段階への資金調達の過程にある。潜在投資家は、FEEDに必要な資金拠出を検討するためデューデリジェンスを実施している。AGDCによるFERC提出文書、FERCが発行した最終環境影響評価(EIS)に基づくと、同プロジェクトは建設開始から6年後に稼働開始となり得る。Alaska LNG Projectは、LNG長期輸出に伴う長期契約、あるいは長期供給契約を締結していないとしている。
- FERCは2025年3月28日、Rio Grande LNGプロジェクト及びTexas LNGプロジェクトへの同委員会の環境審査についてコロンビア特別区連邦控訴審が発行した2024年8月6日の意見に対応する追加環境影響評価(EIS)案を、FERC事務局が用意したことを発表した。今回の追加EIS案に対するコメント期間は、東部時間で5月19日が期限となる。
- 東京ガスとChevronは2025年3月31日-4月1日、東京ガスが同社100%子会社の東京ガスアメリカが出資するTGナチュラル・リソーシズ(TGNR)を通じて、Chevronの東テキサス地域におけるシェールガス資産の70%を買い取る契約を締結したことを発表した。
- DOEは2025年4月1日、承認されたLNG輸出者が、承認されたプロジェクトの輸出開始日延長申請をDOEが審査するために厳しい基準を満たすことを義務付けていた前政権時代の政策文書を撤回したことを発表した。DOEは非FTA(米国と自由貿易協定を締結していない)諸国向けの輸出承認の輸出開始日延長申請を、DOEが申請許可を検討する前に当該輸出プロジェクトが建設中となっていること、許可保持者が自社のコントロール外の酌量すべき事情により7年以内に輸出開始できないことを実証する必要等の厳しい基準を承認された輸出者に義務付けることではなく、ケースバイケースで審査する形に戻す。
- LNG Canadaは2025年4月2日、LNG輸送船舶Maran Gas Roxanaが、キティマットのLNG Canada設備に、設備試験運転のため使われるように荷卸されるカーゴを積載して到着したことを発表した。
- カナダCedar LNGは2025年4月4日、Ledcor Haisla Limited Partnership (LHLP)をプロジェクトのパイプライン建設に選定した、と述べた。Haisla Nation ・ Ledcorがキティマット地域の諸プロジェクト請負のため10年前に設立した。パイプライン建設は2025年第2四半期開始を見込む。Cedar LNGが2024年6月FID をして以降、海洋設備用地・パイプライン経路の整備は完了している。海洋設備建設は2025年第2四半期開始を見込む。浮体LNG設備開発は海外にて進行中で、2028年末のプロジェクト営業開始を見込んでいる。
- 豪Woodside Energyと投資会社Stonepeakは2025年4月7日、Stonepeakが米Louisiana LNG Infrastructure(InfraCo)株式を取得する契約を締結したことを発表した。StonepeakはInfraCoの40%を持つこととなり、残り60%は、Woodside傘下の持株会社Louisiana LNG(HoldCo)が所有する。InfraCoはBechtelとのEPC契約を持ち、FIDを条件として、液化インフラストラクチャ、共通諸設備を所有・建設することとなる。InfraCoへの投資は、InfraCo・HoldCo間の長期液化加工契約を下支えとしている。HoldCoは原料ガス供給およびLNG引き取りを担当することとなる。取引期日は2025年1月1日付、クロージング目標は2025年第2四半期となっている。
- NextDecadeは2025年4月8日、20年間のLNG SPAをAramco子会社とRio Grande LNG設備第4系列からの引き取りについて締結したことを発表した。年間120万トンのLNGを20年間、FOB条件、ヘンリーハブ連動価格で、同系列へのFIDを条件として購入することとなる。
- Energy TransferとMidOcean Energyは2025年4月9日、Energy Transfer子会社Energy Transfer LNG ExportがEIG Global Energy Partners傘下のMidOceanとLake Charles LNGプロジェクトに関わるHOAを締結したことを発表した。同プロジェクト共同開発の主要条件の非拘束の枠組を設定する。MidOceanは建設コストの30%資金負担にコミットし、LNG生産の30%を受け取る権利を得る。MidOceanはLNG生産自社分のガス供給を手配するオプション権を持ち、MidOceanはEnergy Transferパイプラインでの長期ガス輸送にコミットするものとする。
- アブダビMubadala Energyは2025年4月10日、米Kimmeridge傘下のSoTex HoldCoの24.1%株式を、新株式発行により取得する契約を締結したことを発表した。SoTexはその傘下にテキサス州南部Eagle Fordの上流非在来型ガスビジネスを行うKimmeridge Texas Gas、ルイジアナ州カルカシュー運河河口に年間930万トン・FID前LNG液化・輸出設備を持つCommonwealth LNGを抱える。Commonwealth LNGは2025年FIDを控え、主要作業を固めつつあり、2029年同LNG設備からの引き取り開始を計画している。
- NextDecadeは2025年4月14日、TotalEnergiesがRio Grande LNG設備第4系列でのLNG購入オプション権を行使し、両社の子会社が同系列からの引き取りに関して長期LNG SPAを締結したことを発表した。TotalEnergies Gas & Power North Americaが年間150万トンのLNGを20年間、FOB条件、ヘンリーハブ連動価格で同系列へのFIDを条件として購入することとなる。今回の発表によると、NextDecadeは年間460万トンのLNGを同系列より長期ベースで販売契約している。TotalEnergiesはRio Grande LNG設備第1段階に16.7%を持つ。第1段階は建設中の3つのLNG系列で構成される。TotalEnergiesはこれまでに、2027年稼働開始見込みの第1段階で生産予定の年間1,750万トン中、540万トンを購入することに合意している。TotalEnergiesはNextDecadeの17.5%も所有している。
- Cheniere子会社Corpus Christi Liquefactionは2025年4月16日、ミッドスケール第8 & 9系列プロジェクトの用地準備作業開始許可をFERCに申請した。
- エネルギー・インフラストラクチャ企業Saharaは2025年4月16日、シンガポール企業LNG Allianceのメキシコ子会社Amigo LNGと、20年間のLNG SPAを締結したことを発表した。Saharaは、年間60万トンのLNGをAmigo LNGのメキシコのソノラ州グアイマスの輸出設備から購入する。LNG引き渡しは、2028年第3四半期に開始予定。Amigo LNGの年間780万トン輸出設備は、2系列から構成される予定。
- USTR(米通商代表部)は2025年4月17日、「米造船を再建し、中国による海洋、ロジスティクス、造船部門を支配するための不合理な行動、政策、プラクティスに対処する具体的措置」を発行したことを発表した。最初の180日間に適用する課金はゼロとする。「第1段階として、180日以降、中国の船主・運航者への課金は米国への航海の度に、純トン数に基づき、その後年次で増加する」。さらに「第2段階の措置は、3年間は適用しない。米国での建造LNG輸送船舶の誘因とするため、外国船のLNG輸送に限定的な制限をかける。この制限は、22年間段階的に増加する」としている。
- 豪Woodsideは2025年4月17日、LNG SPAsをドイツUniperと締結したことを発表した。米Louisiana LNGが年間100万トンのLNGをFOB条件で、Louisiana LNGコマーシャル稼働開始期日(COD)から最長13年間供給する。Woodside Energy Trading Singaporeは、最大年間100万トンのLNGをDES条件で、Woodsideのグローバルポートフォリオから欧州へ、Louisiana LNGのCODから2039年までの期間に供給する。これらSPAsは、WoodsideによるLouisiana LNG初期プロジェクト3系列・年間1,650万トン開発へのFIDが条件となる。
欧州および周辺地域
- Worleyは2025年4月3日、ドイツDeutsche Energy Terminal(DET)からブルンスビュッテルのBrunsbüttel FSRU基地フェーズ2に関わる契約を受注したことを発表した。Worleyは建設・設置・コミッショニング業務を提供することとなる。作業範囲は、恒久型桟橋・随伴輸入諸設備の設置とする。これと別にWorleyはエンジニアリング・調達業務を提供している。DETはドイツ連邦政府が所有する企業である。
- Wärtsiläは2025年4月3日、Wärtsilä Gas Solutionsがフィンランドの大規模バイオガスプロジェクト2件にバイオLNG生産ソリューションを供給・設置することを発表した。Suomen Lantakaasuの発注で、同社はバイオメタン企業St1 Biokraft、食品企業Valio間の合弁事業である。両プロジェクトはバイオLNG日量25トンの生産容量を持つ。このバイオガスの原料は主に肥料と食品加工廃棄物となる。残留物は、肥料を供給する農家が使用する無臭のバイオ肥料となる。
- イタリアSnamは2025年4月8日、2月28日以降Punta Marina沖8.5kmに繋留された気化設備BW Singaporeが、稼働開始準備完了している、と述べた。米国産LNG最初のカーゴが4月3日に到着し、5月初旬予定の本格稼働第1段階に向けてコミッショニング活動が始まった。
- 欧州連合(EU)理事会は、加盟国代表が2025年4月11日にガス貯蔵規制の修正に関するEU理事会の方針を承認したことを発表した。EU理事会案はガス貯蔵規則の2年間延長に合意しつつ、変化する市場環境に適応し、市場操作の可能性にも対応する追加のフレキシビリティを加盟国に与える修正を織り込む。90%充填目標は、現在の11月1日期限でなく、10月1日から12月1日の間のいずれかの時点で達成すべきものとする。加盟国は充填目標から最大10%逸脱してもよいとしている。
その他地域
- コモディティトレーディング企業Vitolは2025年3月24日、2024年の取扱量を発表した。LNG数量は10%増加の石油換算1,940万トン相当(LNGとして1,500万トン)とした。2024年にVitolは米国で埋立地からメタンを回収してガス網に注入するBiomethane Partnersを買収した。Vitolは最近Eniと西アフリカ沖の生産資産に投資することに合意した。これによりVitolの総生産量は石油換算日量110,000バレル相当に増加する。これには同社エクイティ分のLNG 100万トンが含まれる。
- Excelerate Energyは2025年3月27日、同社がNew Fortress Energy(NFE)のジャマイカにおけるビジネスを買い取る契約を締結したことを発表した。Excelerate Energyは、Montego Bay LNG基地、Old Harbour LNG基地、Clarendon熱電併給(CHP)コージェネレーション設備の資産・操業権を買い取る。
- bp Trinidad and Tobago (bpTT)は2025年3月27日、Gingerガス開発の推進を決定し、Frangipaniガス探査井の成功を発表した。Ginger はbpTTにとって4件目の海底プロジェクトとなり、海底生産井4本、bpTT既存Mahogany Bプラットフォームへの結び込む海底ツリーを含むこととなる。同プロジェクトからのガス生産開始は2027年に見込まれる。Frangipani探査井掘削は、同じ地質構造内に重層型のガス資源層を特定した。この発見の推進のオプションは現在検討中である。
- アブダビADNOC傘下の投資会社XRGは2025年3月28日、モザンビークRovuma盆地第4鉱区におけるGalpの10%持分について、2024年5月に発表していた買い取りを完了したことを発表した。この買い取りには、既に稼働しているCoral South FLNG、計画中のCoral North FLNG、Rovuma LNG陸上開発プロジェクトが含まれる。Coral North FLNGはFID目前である。両沖合プロジェクトはEniが主導している。陸上Rovuma LNGフェーズ1プロジェクトはExxonMobilが主導し、2025年中にFEEDを完了見込みである。
- Perenco子会社Dixstoneは2025年4月3日、ガボンのキャップロペスでの新規LNGプロジェクトの建設・調達・統合化業務を受注したことを発表した。ニアショア型LNG設備で、年間70万トンのLNG、年間25,000トンのLPGを生産することとなる (フェーズ1)。
- bp Trinidad and Tobago(bpTT)は2025年4月3日、Cypre開発より最初のガスが生産されたことを確認した。Cypreは、上流部門成長のリセット戦略の一環として発表した2025年から2027年に世界全体で稼働開始を見込むbpにとっての10件の主要プロジェクトの1件である。CypreはbpTTの3件目の海底開発である。生産井7本を既存Juniperプラットフォームに接続することとなる。ピーク時点で、日量石油換算45,000バレル相当 (約2.5億立方フィート) 生産する見込み。この開発の最初のフェーズは生産井4本で、2024年末に完成した。第2フェーズは、2025年後半に開始見込み。Cypre は、bpにとりエジプト沖Ravenガス田第2フェーズ生産開始に続く2025年2件目の大型稼働開始案件である。Cypreガス田は、トリニダード南東78km、East Mayaro鉱区内・水深80 mに位置する。Cypreは100%をbpTTが所有し、bpTTはbp(70%)とRepsol(30%)が所有する。
- モザンビーク閣議は2025年4月8日、Coral Norte FLNGプロジェクト開発計画を承認した。この発表によるとCoral Norte FLNG浮体プラットフォームは、Coral Sul FLNG型の複製となる。
- Eniは2025年4月14日、アルゼンチンYPFとの間で、Argentina LNGプロジェクトへのEniの参加を検討するためMoUを締結したことを発表した。今回の発表によると、Argentina LNGはVaca Muerta陸上ガス田の資源を開発し、数フェーズを通じて2020年代末まで(2029年中)に最大年間3000万トンのLNGを輸出するように計画されている。今回のMoUで対象とするフェーズは、年間600万トンのFLNG生産設備2基により、合計年間1200万トン分のLNGを生産する上流・輸送・液化設備開発である。
- アブダビADNOCは2025年4月16日、15年間のLNG SPAを三井物産との間で締結したことを明らかにした。最大年間60万トンのLNGを Ruwais LNG プロジェクトから引き渡す。
- bpは2025年4月17日、モーリタニア・セネガル沖GTAフェーズ1 FLNGプロジェクトから輸出のため初LNGカーゴを積み込んだことを発表した。この初カーゴはbpの同年3件目の上流部門重要プロジェクト稼働開始である。GTAはアフリカ最深洋上開発のひとつで、ガス資源は最大水深2,850mに及ぶ。GTAフェーズ1は、LNG年間240万トンの生産見込みとともに、両国国内市場にもガスが配分される。
- アブダビADNOCは2025年4月18日、中国ENNとの間で15年間のLNG SPAを締結したことを明らかにした。
(注: bcm: 10億m3、CCS: 炭素回収・貯蔵、DES: 持ち届け ex-ship、DOE: 米連邦エネルギー省、EPC: エンジニアリング・調達・建設、EPCI: エンジニアリング・調達・建設・設置、 EPCm: エンジニアリング・調達・建設管理、FEED: 基本設計、FERC: 米連邦エネルギー規制委員会、FID: 最終投資決定、FLNG: 浮体液化設備、FOB: 本船渡し、FSRU: 浮体貯蔵・気化設備、FSU: 浮体貯蔵化設備、HOA: 基本合意、MOU: 覚書、SPA: LNG売買契約)
作成協力 一般財団法人日本エネルギー経済研究所
添付ファイル
- 日本のLNG在庫量(29.3KB) (2025/4/24更新)
- 米国天然ガス地下貯蔵量(61.9KB) (2025/4/24更新)
- 欧州天然ガス地下貯蔵量(463.0KB) (2025/4/24更新)
- 欧州LNG在庫量(279.3KB) (2025/4/24更新)