2025年10月
天然ガス・LNG価格動向
直近の値動き
アジア
- 北東アジアのアセスメントされたスポットLNG価格JKMは、10月前半は北東アジアでの需要低迷やガザ地区の停戦による地政学的リスクの緩和を受けて10ドル半ばまで下落。しかしながら後半は12月受渡に切り替わり、需要の高い冬季シーズンの取引となったことから11ドル台に再び上昇、その後も11ドル台前半から半ばでの取引が続いた。
- 財務省貿易統計速報に基づくと、2025年9月の日本平均LNG輸入価格は100万Btuあたり10.77ドル、円建てでは1トンあたり82,428円となった。前者のドル建て価格は、2025年6月の全日本平均原油輸入CIF価格が2025年5月より下落したため、前月比0.28ドル下落した。供給地域別では、米国産は10.80ドル、ASEAN地域産が10.52ドル、中東産が10.90ドル、ロシア産が10.47ドルであった。また、9月の北東アジア各国の平均輸入価格は、中国9.66ドル、韓国10.26ドル、台湾10.13ドルであった。全日本平均原油輸入CIF価格(JCC: Japan crude cocktail)は2025年9月には1バレル当たり73.02ドル、円建てでは1キロリットル当たり67,794円となった。
- 9月の日本のLNG輸入量は、516万トンと前年同月比で5.0%減少した。9月の中国のLNG輸入量は575万トンと前年同月比で14.8%減少、韓国のLNG輸入量は391万トンと前年同月比で19.3%増加、台湾のLNG輸入量は222万トンと前年同月比13.2%増加となった。
米国
- 米国スポットガス価格HHは、温暖な天気予報と堅調な供給ファンダメンタルズを背景に、月初の3.5ドルから10月半ばには2ドル後半まで下落。しかしその後、気温の低下が予想されたことから反発し、10月後半は3.3~3.5ドルのレンジで推移。
欧州
- 欧州ガススポット価格TTFは、10月初旬にウクライナの生産施設が攻撃されたとの報道を受け、一時的に11ドル半ばまで上昇。しかし、ノルウェーからの供給が安定していたことに加え、気温も比較的温暖であったため、それ以外の期間は概ね10ドル台後半で推移。10月後半には暖房需要の増加も見られたことから、EU全体の地下ガス貯蔵率は83%付近で横ばいとなり、上昇率は鈍化。

中長期の値動き
2024年
- 2024年1月にはJKMは概ね100万Btuあたり9ドルで推移した。2月に入り北東アジア地域での旧正月後には下落基調は更に拍車がかかり8ドルを割ったが、3月には短期的な需要が発生したことなどから一時10ドルに近づいた。4月半ばには中東情勢激化への懸念等もあり中旬に11ドル前半まで急騰するも、下旬には緊張緩和により10ドル前半で推移。5月は夏季に向けた需要増を背景に、下旬には11ドル後半から12ドル台前半を推移。6月も夏場の需要増等を背景に一時13ドル半ばまで上昇。7月は需要が低調ながら価格下落による短期的な購入意欲の高まりもあり11ドル後半から12ドル前半を推移。8月中旬には地政学的な不透明さを背景に14ドル半ばを付け2024年中の最高値を更新した。9・10月は低需要を背景に軟化し13ドル付近を推移。11月には気温低下と地政学的緊張の高まりにより15ドル台を付け、2024年中の最高値を更新している。その後上昇は一時一服するも翌年のロシア産ガスフローの不透明感を受け再び上昇基調に転じた。
2025年
- 2025年1月のJKMは欧州ガス価格に連動する形で主に100万Btuあたり13-14ドル台を推移。2月には一時2023年11月以来の17ドルを付けるもほどなく下落に転じた。3月は北東アジアでの低需要を背景に、一時12ドル前半まで下落したものの、その後地政学的リスクの高まりにより13ドル後半まで上昇した。4月は米国の関税政策発表による世界的な景気後退の懸念から11ドル前半まで急落したが、その後反発し12ドル前半で推移。5月は市場動向が夏季需要に本格的にシフトしたことや、ウクライナ-ロシア間の和平交渉に進展がみられなかったことから、中旬に12ドル後半まで上昇し、その後は12ドル半ばで推移した。6月にはイスラエルとイランの衝突による地政学的緊張の高まりを受けて、一時14ドル後半まで上昇したが、その後の停戦を受けて12ドル前半まで下落。7月は北東アジアでの気温情報による需要増加から8月分カーゴが不足、13ドル付近まで値を上げたが、9月配送分に切り替わったことで11ドル半ばまで下落した。8月は充分な供給と低調な需要を背景に、中旬には11ドル前半まで下落したものの、その後ウクライナ・ロシア間の停戦交渉を巡る不透明感の高まりから、11ドル後半まで上昇。9月も引き続き概ね11ドル台で推移。10月は需要が低調であったことから10ドル半ばまで値を下げたが、冬季シーズンとなる12月配送分に切り替わった後に、11ドル台まで再度上昇。

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(出典)
米国HH(Henry Hub)価格: NYMEX Futures and Options, CME Group
蘭TTF(Title Transfer Facility)価格:ICE Endex, Intercontinental Exchange
JKM: LNG Japan/Korea Marker© 2025 by S&P Global Platts, a division of S&P Global Inc.
JOGMECスポットLNG価格:JOGMEC「日本着スポットLNG月次価格」、2021年3月までは経済産業省「スポットLNG価格調査」を出典とする
日本平均LNG輸入価格: 財務省貿易統計をもとに作成
EUA(EU ETS): ICE Endex, Intercontinental Exchange
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天然ガス・LNG在庫動向
日本
- 2025年5月末の国内LNG在庫量は536万トンで、前月比13.9%、65.4万トンの増加、前年同月比では6.4%増加し、過去5年平均値を34万トン上回った。
- 2025年6月末の国内LNG在庫量は511万トンで、前月比4.6%、24.9万トンの減少、前年同月比では1.1%減少し、過去5年平均値を10万トン回った。
- 6月末のガス事業用LNG在庫量は252万トンで、前月比0.9%減、前年同月比では3.1%減となった。6月の都市ガス用LNG消費量は前年同月比2.4%減の201万トン、都市ガス用LNG受入量は前年同月比7.2%減の187万トンだった。
- 7月末のガス事業用LNG在庫量は222万トンで、前月比12%減、前年同月比では7.8%減となった。7月の都市ガス用LNG消費量は前年同月比10.8%減の194万トン、都市ガス用LNG受入量は前年同月比5.6%減の194万トンだった。
- 5月末の発電燃料用LNG在庫量は281万トンで前月比15.2%増、前年同月比8.7%の増加となった。5月の発電燃料用LNG消費量は、前年同月比で、6.2%減の220万トン、発電燃料用LNG受入量は、前年同月比で9.6%増の289万トンであった。
- 6月末の発電燃料用LNG在庫量は259万トンで前月比8%減、前年同月比0.9%の増加となった。6月の発電燃料用LNG消費量は、前年同月比で、2.2%増の261万トン、発電燃料用LNG受入量は、前年同月比で3.7%減の276万トンであった。
- 2025年10月22日に経済産業省が発表した「発電用LNGの在庫状況」によると、大手電力事業者の10月19日時点のLNG在庫は213万トンであった。昨年同月末比では29万トン上回り、過去5年間の10月末平均を10万トン上回っている。


(出典)
経済産業省「ガス事業主生産動態統計」及び「電力調査統計・火力発電燃料実績」をもとに作成したもので、これら月末在庫を合算した値を国内在庫としてみなしたもの。なお、利用可能なデータは2008年1月以降のものであるため、過去5年平均は2013年1月分から計算している。
米国
- 2025年10月17日の米国天然ガス地下貯蔵有効稼働ガス在庫(ワーキングガス)は、米国エネルギー情報局(EIA)のデータによると、3.8Tcfで前月比8.6%増となった。在庫量は昨年同時期と比較すると0.6%高く、過去5年平均値を164Bcf上回っている。


(出典)
米国エネルギー情報局(U.S. Energy Information Administration, EIA)のデータをもとに作成
欧州
- 2025年10月20日現在のAggregated Gas Storage Inventory(AGSI+)加盟各社中、EU加盟国各社が有する欧州天然ガス地下貯蔵在庫は945.3TWh(LNG換算6,253万トン相当)であった。これは前年同期より13.6%、148.4TWh (LNG換算982万トン相当)下回るものだった。貯蔵容量に対する充填率は82.83%であり、前年同期の95.31%を下回り、過去5年間平均値の91.72%を下回った。貯蔵容量の大きなドイツ、イタリア、オランダの充填率はそれぞれ75.44%、94.17%、71.77%であった。


(出典)
Aggregated Gas Storage Inventory(AGSI), Gas Infrastructure Europeのデータをもとに作成。なお、利用可能なデータは2011年1月以降のものであるため、過去5年平均は2016年1月分から計算している。
- 2025年10月20日現在のAggregated LNG Storage Inventory(ALSI)加盟各社が有する欧州LNG在庫量は493万m3で、前月比4.1%増加、前年同日比8.3%減少、過去5年平均値を6.6%下回っている。貯蔵容量に対する充填率は51.9%であり、前年同期の59.6%を下回っている。


(出典)
Aggregated LNG Storage Inventory(ALSI), Gas Infrastructure Europeのデータをもとに作成。なお、利用可能なデータは2012年1月以降のものであるため、グラフ中の過去10年平均及び過去10年平均幅の値については、5年未満の値が含まれる。
天然ガス・LNGプロジェクト動向
ハイライト
- 2025年1 - 9月の世界のLNG貿易量は、前年同期比3%増加し、3.09億トンとなった。米国では引き続き、LNG生産プロジェクトへの投資活動の活況が続いている。NextDecadeはRio Grande第5系列のFIDを発表した。モザンビークでは2件目のFLNGプロジェクトがFIDに至った。他方太平洋地域のLNG消費市場では、ベトナムで2件の大規模LNG火力発電プロジェクトが着工した。ニュージーランドではタラナキ港湾でのLNG受入基地設置可能性が浮上している。イタリアではLNG受入基地規模・サービス面での拡張の動きが観察された。欧州連合は初めて、ロシア産LNG輸入の禁止を制裁パッケージに織り込んだ。
アジア・オセアニア地域
- ニュージーランド政府ビジネス・イノベーション・雇用省(MBIE)は2025年10月1日、LNG輸入設備の競争調達プロセスを実施する、と述べた。MBIEによると政府は業界部門と相談して、迅速にLNG引き渡しを行う可能性も含めて市場の関心を測るべく、関心表明(ROI)プロセスを実施する。このROIは10月6日に開始する。次の段階の諸決定は2025年12月に政府によりなされる見込み。ニュージーランドのタラナキ港湾局は、LNG輸入設備調達プロセス開始の2025年10月1日の政府決定を歓迎した。プロジェクトの引き渡し期限を2027年冬季とすれば、同港湾は適地となるとしている。
- Vopakは2025年10月1日、Seapeakとの間でVopakが計画中の豪州Port Phillip Bay LNG輸入基地向けにFSRUを提供する契約を締結したことを発表した。VopakのVictoria Energy Terminal(VVET)基地は、2029年からビクトリア州向けにガス供給を行うことが見込まれる。今回の発表によれば、VVETは同基地の着桟・離桟の想定を行う次の段階に進むことができる。VVETはアバロン沖19km、Port Phillip Bay内、既存投錨地域内に位置することとなる。この地点は浚渫を必要とせず、海洋生物、動植物への影響が最小限に抑えられるとしている。同プロジェクト操業用に再生可能電力を供給し、炭素(CO₂)排出を最小限に抑える。VVETは環境影響評価作業を続けており、18か月間での完了に向け政府と協働している。
- 商船三井、カナデビア、ヤンマーパワーソリューションは2025年10月7日、NEDOによるグリーンイノベーション基金事業「次世代船舶の開発」プロジェクトで採択された「触媒とエンジン改良によるLNG燃料船からのメタンスリップ削減技術の開発」において、2025年5月から日本と豪州間などの海域で実船試験を開始し、目標である70%を大きく上回る削減率98%を達成したことを発表した。
- ベトナムTTVN(Trường Thành Việt Nam)グループは2025年10月10日、東京ガス、九州電力と、Thái Bình LNG火力発電プロジェクト起工式を行った。同プロジェクトは容量1,500MW、フンイェン省Đông Thái Ninhに立地、2029年第4四半期に本格稼働開始予定となる。Thái Bình LNG Powerは2024年1月、東京ガス(40%)、九州電力(30%)、TTVN(30%)により設立された。
- 豪Santosは2025年10月16日、Barossa LNGは引き続き第4四半期のLNGカーゴ実現に向けて予定通りであることを再確認した。Darwin LNG設備は8月に稼働開始準備完了(RFSU)を達成、これに先立って寿命延長プロジェクトが完了し、北部準州環境保護当局がDarwin LNGの環境保護ライセンスを9月19日開始で更新した、とも述べた。
- 豪Woodside Energyは2025年10月22日、自社の主要成長プロジェクトについて、引き続きスケジュール通り・予算内で遂行していると述べた。Scarborough Energyプロジェクトは進捗率91%、2026年後半のLNG生産開始に予定通り進んでいる。Louisiana LNGプロジェクトは19%完成している。マレーシアPETRONASとのSPAにより、Woodsideは年間100万トンのLNGをマレーシア向けに、2028年から15年間供給することとなる。トルコBOTAŞとのHOAにより、SPA締結が条件となるが、Woodsideは年間50万トンのLNGを2030年から9年間引き渡すこととなる。
北米地域
- TotalEnergiesは2025年9月29日、Continental Resourcesとの間で、オクラホマ州Anadarko地域の天然ガス生産資産の持分49%を買い取る契約を締結したことを発表した。これらの資産は、2030年までに総生産量日量3.50億立方フィートに達し長期間その水準を維持するポテンシャルを有する。これによりTotalEnergiesは自社分として日量1.50億立方フィート(年間115万トン)を確保できる。今回のノンオペ分シェールガス資産買い取りは、2024年Eagle Ford地域で完了したDorado、Constellation買い取りを補完するものとなる。TotalEnergiesはBarnett地域で日量5億立方フィート(年間380万トン相当)の生産を操業している。
- MidOcean Energy、PETRONASは2025年9月30日、MidOceanがPETRONASのカナダにおける主要事業の20%持分を取得する複数の契約を締結したことを発表した。PETRONASのカナダにおける上流部門投資を保有するNorth Montney Upstream Joint Venture(NMJV)における20%持分、PETRONASのLNG Canadaプロジェクトにおける25%参加持分を保有するNorth Montney LNG Limited Partnership(NMLLP)における20%持分が含まれる。PETRONASとのこのパートナーシップを通じて、MidOceanはこれに伴う年間70万トンのLNGを確保でき、LNG Canada第2段階開発の成長ポテンシャルも得られることとなる。
- Golden Pass LNG輸出プロジェクト(GPLNG)の2025年10月1日付DOE向け半期報告によると、GPLNGプロジェクトは第1系列の機器のコミッショニング(試運転)を開始しており、2025年末または2026年初までにLNG生産開始を見込んでいる。2025年6月26日、GPLNGは10月から2年間、輸入したLNG最大50 Bcf(100万トン)の再輸出包括申請をDOEに提出した。この申請は、2025年9月22日に発行された指令で承認された。
- Baker Hughesは2025年10月1日、Bechtel Energyから、Sempra InfrastructureのPort Arthur LNGフェーズ2プロジェクト向けに主要液化機器を供給する業務を受注したことを発表した。フェーズ2向けのBaker Hughesの業務範囲は、公称設計容量年間1300万トン分のLNG系列2本分に対してFrame 7タービン4基・コンプレッサー8基を組み合わせて提供する。さらにBaker Hughesは設備のブースターとして電動モーター式コンプレッサー2基を提供することとなる。
- アラスカAlaska LNG ProjectのDOE向け2025年10月1日付半期報告によると、2025年5月にGlenfarneは追加エンジニアリング設計を実施しFID実現に十分に詳細なプロジェクトの最終コスト見積を準備するためWorleyを選定したことを発表した。2025年6月、GlenfarneはPTTが20年間、年間200万トンのLNG調達を含め同プロジェクトへの戦略的参加に向けた基本協力協定を締結したことを発表した。2025年9月、GlenfarneはJERAと同プロジェクトからのLNG引き取りの話し合いを進めるため法的拘束力のないLOI(覚書)を締結し、POSCO Internationalとプロジェクト推進の戦略パートナーシップへの基本合意を締結したことを発表した。AGDCのFERC提出書類、FERC発行の最終環境影響評価によると、同プロジェクトは建設開始後6年で稼働できる可能性が高いとのこと。
- Commonwealth LNGは2025年10月2日、自社LNGプロジェクトの建設完了・業務開始期限を2031年12月31日まで延長する申請をFERCに提出した。
- Chart Industriesは2025年10月6日、株主総会でBaker Hughesによる買収に賛成多数で承認されたことを発表した。取引完了は、手続き事項および規制承認を条件として、2026年半ばを見込んでいる。
- Venture Globalは2025年10月9日、米證券取引委員会への報告の中で、8月12日のShell NA LNGとの仲裁に関する自社有利な決定に続いて、Venture Global Calcasieu Pass(VGCP)がCalcasieu Pass設備に関わる仲裁手続きに関して、さらにSPA買主1社と決着に至った、と述べた。これと別に、同8日、国際商工会議所国際仲裁法廷がVGCPに対して、BP Gas Marketingとの、CalcasieuプロジェクトからのVGCP・BP間の長期LNG SPAに基づくLNG販売に関し仲裁手続きで部分的最終判断がなされたことを通知した。この仲裁法廷による判断は、VGCPがCalcasieuプロジェクトCODをタイムリーな方法で発表する義務、SPAに従って「合理的で慎重なオペレーター」として行動する義務、その他いくつかの義務に違反した、と判断した。補償額は別途損害審理で判断されることとなるが、その日程は決まっておらず、2026年と予想される。
- 米ルイジアナ州キャメロン郡の同州第38地方裁判所は2025年10月10日、Commonwealth LNGプロジェクトに関する判断を下した。同法廷は、同州エネルギー・天然資源部(LDENR)沿岸管理課がCommonwealth LNG向けに発行した沿岸区域利用許可(CUP)を取り消した。気候変動関連も含め累積的環境影響を適切に評価しなかったこと、低所得・マイノリティ地域への影響を中心に環境公平性の観点を検討しなかったこと、爆発・漏洩可能性などの公共衛生・安全上のリスクを見落としたことにより、同州法にLDENRが違反した、と同法廷は判断した。前記のCUP許可は取り消され、LDENRは同プロジェクト審査をやり直すことを命じられた。この判断は、その審査が完了しLDENRが便益は地域に対するコストを上回ることを実証できるまで、同LNG輸出設備建設を差し止めることとなる。
- 2025年10月15日付FERCからVenture Global Plaquemines LNGへの書簡により、同社はPlaquemines LNGプロジェクト建設を完了し業務を開始する期限の2027年12月31日までの延長を許可された。2025年9月19日、Plaquemines LNGは15ヶ月間の期間延長を申請した。Plaquemines LNGは第1段階全設備の操業開始完了を2026年第4四半期、第2段階全設備の操業開始完了を2027年半ばと見込んでいる。これによりPlaquemines LNGは2027年12月までの期間延長を申請している。Chevron U.S.A.、ポーランドOrlenは意見を提出した。OrlenはFERCに対して期間延長が必要なのか検討すべきこと、慎重に進めるべきことを求めた。だが許可そのものに対する異議は提出されなかった。
- NextDecadeは2025年10月16日、Rio Grande LNG第5系列のFIDを行い、同系列および関連インフラストラクチャー資金調達の金融取引を完了し、Bechtel Energyに同系列および関連インフラストラクチャー一括請負引き渡し方式のEPC契約下の全面推進通知を発行したことを発表した。同系列は年間600万トンのLNG生産容量を持つ見込みで、Rio Grande LNGにおける建設中の総LNG生産容量を年間3,000万トンに引き上げる。同系列は、JERA、EQT、ConocoPhillipsとの20年間LNG SPAs年間450万トン分によりコマーシャル的に支えられている。同系列の保証された実質完成期日、第5系列LNG SPAs下のコマーシャル引き渡し開始日は、2031年上半期になると見込まれる。同系列および関連インフラストラクチャープロジェクトコストは、EPCコスト、オーナーズコスト、予備費、資金調達手数料、建設期間中の利息その他コストを含め、総額67億米ドルと見込まれ、資金調達を確保している。Rio Grande LNG Train 5社向けの35.9億米ドルの融資契約、 Rio Grande LNG Train 5社における5億米ドル分の私募債券、NextDecadeからの12.9億米ドル出資確約、BlackRock傘下Global Infrastructure Partners (GIP)・GIC・Mubadala Investment Company(フィナンシャルインベスター)からの12.9億米ドル出資確約である。NextDecade は初期的に第5系列の50%分を所有し、フィナンシャルインベスターが第5系列に対する投資の一定のリターンを回収後に70%に増加する。
- DOEは2025年10月21日、ルイジアナ州Venture Global CP2 LNGプロジェクトに、非自由貿易協定(non-FTA)諸国向けに最大日量3.96bcfのLNGを輸出することを認める最終輸出承認を行った。今回の承認は、2025年3月のCP2 LNGに対するDOEによる条件付承認に続くもので、FERCによる2025年5月の立地・建設・操業の承認決定を反映している。
- Delfin Midstreamは2025年10月23日、サムスン重工業(SHI)とLOA(発注確認書)を締結したことを発表した。このLOAによりSHIにDelfin LNGプロジェクト最初のFLNG船舶の排他的EPCI請負事業者として選定・発注を受けたことを通知した。2025年これまでにDelfinはFLNG船舶のガスタービンについてSiemens Energyから製造容量を確保した。今回の発表によると、Delfinはルイジアナ州沖の最初のプロジェクトとして2025年11月のFIDへと進んでいる。
- JERAは2025年10月23日、JERA Americasを通じ米国GEP Haynesville II, LLC(GEPII)およびSouth Mansfield E&P, LLC(SMEP)がルイジアナ州西部ヘインズビル地区で保有するシェールガス開発・生産事業権益を取得することを発表した。生産能力は日量約5億立方フィートであり、今後日量約10億立方フィートまで拡大することを見込んでいるとしている。
欧州および周辺地域
- 2025年9月29日、TotalEnergies Investor Day 2025 Strategy & Outlook Presentationによると、同社はYamal LNGに関して慎重なアプローチを採っている。同社の2030年の数字にYamal分は含まれておらず、同社の対応は具体的な政策措置に依存している。Yamal LNG輸入をEUが禁止し、プロジェクト自体に制裁を含まない場合、TotalEnergiesはフォースマジュールを宣言することはできず、引き続きパートナーとしてLNG引き取りを義務付けられ、例えばトルコ、インドなどのEU外の代替仕向先を見つけなくてはならない。Yamalプロジェクト自体への制裁により、同社がフォースマジュールを宣言することができ、参加を終了する可能性がある。同社はYamalから年間450万トンの契約を持ち、欧州向け、アジア向け、行先を特定しないものに分かれる。
- ハンガリー外務相は2025年10月2日、自国史上最長のLNG購入契約として2028年から2038年、年間0.4bcm(294,000トン)をフランスENGIEから購入する契約を締結した、と述べた。
- スペインMolgas Energyは2025年10月6日、Titan Clean Fuels親会社Titan Energy Holding完全買収完了を発表した。今回の取引は、Molgasによる当初45%少数持分を取得したことに続くものとなる。Titanの小規模LNG(LBM・バイオLNG)バンカリング船舶は世界各地市場で運航しているが、大きな基盤は北西欧州にある。TitanのLNGバンカリング事業は、Molgasのノルウェーでの既存の操業と統合され、ノルウェー・欧州大陸でのトラックから船舶への供給事業は全て統合される。
- イタリアOLT Offshore LNG Toscanaは2025年10月6日、新規小規模LNGサービス向け利用可能容量公表を発表した。イタリアでは初めて各社がこのサービス専用のスロット配分のオークションに参加できることとなる。このオークションは、2025年10月29日に実施される。液体換算7,500m3小規模スロット12件で構成されるオファーが利用できることとなる。これらのスロットは2025年11月から2026年11月まで毎月配分される。
- Höegh Eviは2025年10月8日、イタリアSnam、HIGASと、サルディニアOristano港のLNG基地拡張計画に関する協力関係を結んだ、と述べた。Höegh EviはFSRUのエンジニアリング・建設・コミッショニングへの支援を提供する。
- フランスのターミナル操業企業Elengyは2025年10月10日、同社ウェブサイトでFos Tonkin、 Fos Cavaou 基地での従業員のストライキがこれまで明らかにしていた同月9日から延びて15日までガス送出に影響を与え続けることを示した。今回のストライキは数回、数日ずつ延長されている。Montoir 基地はストライキで同月10日まで影響を受けるが、その後同11-26日は計画メンテナンスとなる。
- 米財務長官は2025年10月15日、日本の財務相に対して日本がロシア産エネルギー輸入を停止することに対する米政権の期待を伝えた。
- 欧州議会産業・リサーチ・エネルギー委員会、国際通商委員会は2025年10月16日、2026年1月1日からロシア産天然ガス、パイプライン・LNGとも禁じ、2025年6月17日よりも前に締結され修正されていない既存短期契約(2026年6月17日まで)、長期契約(2027年1月1日まで)の限定的例外を設ける計画を承認した。この規則案では、エネルギー企業はロシア産ガス輸入契約を打ち切るため「フォースマジュール」を発動できることとなる。この新規則に定める法的拘束力ある追加輸入の禁止が、企業のコントロール外の主権行為として明示されるため。議会両委員会は、2026年1月1日付でEU設備におけるロシア起源の天然ガスの一時的貯蔵も禁じることを提案している。さらに抜け穴を塞ぎ、迂回手段のリスクを軽減するため、企業は輸入または貯蔵の前にガスの生産国に関するより厳格かつ詳細な証憑を税関当局に提示することを義務付けられることとなる。それも当該天然ガスの産地次第で事前承認を必要とすることとなる。
- EU理事会(閣僚級)は2025年10月20日、ロシア産天然ガス輸入フェーズアウトのための規制案に関する交渉上のポジションに合意した。この規制案は、ロシアからのパイプラインガス、LNG輸入ともに法的拘束力ある段階的禁止を織り込み、2028年1月1日から完全禁止とするものである。EU理事会は、ロシア産ガス輸入が2026年1月1日から禁止されることを確認しつつ、既存契約の移行期間を維持する。2025年6月17日よりも前に締結された短期契約は2026年6月17日まで継続でき、長期契約は2028年1月1日まで履行できる。既存契約の修正は、限定的に定義された操業上の理由でしか認められず、供給経路の最近の変更により影響を受けている内陸加盟国についての特殊なフレキシビリティ以外は増量につながってはならない。
- カタールQatarEnergyは2025年10月20日、英Isle of Grain基地での長期LNG引き渡し・貯蔵・気化容量利用を7月に開始したことを発表した。この最大年間720万トン容量は、2020年10月締結の長期契約に従い利用される。その最初のLNGカーゴは2025年7月15日に荷揚げされ、同契約による25年間の開始となった。
- 米国、カタールは2025年10月22日付・欧州連合(EU)加盟諸国首脳向けの公開書簡で、コーポレート・サステナビリティー・デューデリジェンス指令案について、欧州向けLNG供給チェーンを分断する可能性が高いと警告し、EU側に見直しを求めた。
- EU理事会は、2025年10月23日、ロシアに対する個人・経済的に制限を加える制裁第19次のパッケージを採択した。今回のパッケージはロシア産LNGのEU向け輸入について、長期契約は2027年1月から、短期契約は6か月以内での、輸入禁止を導入する。
その他地域
- Excelerate Energyは2025年10月1日、イラク政府から統合型浮体式LNG輸入基地開発について公式発注書簡を受け取ったことを発表した。この発注書簡は初期的なステップであり、同基地の開発は拘束力あるコマーシャル上の諸契約の交渉・締結が条件となる。
- Eniは2025年10月2日、モザンビークのカボ・デルガード州沖大水深地域のCoral North FLNGプロジェクト開発についてパートナー企業連合がFIDに達したことを発表した。同プロジェクトは、Rovuma盆地第4鉱区Coralガス資源層北部のガスをFLNG設備を通じて生産する。Eni(50%)、CNPC(20%)、Kogas(10%)、ENH(10%)、ADNOC子会社XRG(10%)の合弁事業により実施される。2028年完成予定としている。Coral NorthはモザンビークでEniにとり2件目の開発であり、世界全体で大水深地域の2件目の大型FLNGで、いずれも1件目はCoral Southである。生産液化容量年間360万トン新設Coral North FLNGは、先駆のCoral Southと合わせ、モザンビーク全体としてのLNG生産を年間700万トンを超えるものとする。
- イタリアEniは2025年10月10日、アルゼンチンYPFと統合型上流・中流 Argentina LNGプロジェクトにおける年間1,200万トンLNGフェーズの最終テクニカルプロジェクト仕様書(FTPD)を締結したことを発表した。同プロジェクトは、容量各年間600万トンのFLNG(浮体式ガス液化設備)2基を通じての輸出に向け、ガス生産、処理、輸送、液化、さらに随伴液体製品の処理・輸出を含む。今回の合意は、2025年6月に両社が締結したHOA(基本合意)に続くものである。Argentina LNGは、統合型上流・中流ガス開発プロジェクトで、陸上Vaca Muertaガス田を開発し国際市場に供給するもので、数段階で累計最大年間3000万トンのLNGを輸出するよう計画されている。
- エジプト石油類・鉱物資源省は2025年10月13日、Idku LNG設備からイタリア向け、ShellによりタンカーNew Nature積載で輸送されたことを発表した。この輸出はエジプトの国内ガス開発・生産への国際パートナー企業による投資を促すための、より広範な戦略の一環である、と同省は述べた。また地中海West Delta Deep Marine区域の第10および11段階の生産井開発促進も意図しているとのこと。
- Shellは2025年10月14日、Shell Nigeria Exploration and Production (SNEPCo)とSunlink Energies and Resources がナイジェリア沖HIガスプロジェクトにFIDを行ったことを発表した。同プロジェクトはピーク生産量日量3.50億立方フィートのガスをNigeria LNG(NLNG、Shellは25.6%所有)に供給する。生産は2029年末までに開始見込み。HIガス田は1985年に発見され、水深100m、沖合50km程度に位置する。HIプロジェクトはSunlink Energies and Resources(60%)、SNEPCo(40%)間の合弁事業の一部である。同プロジェクトはHIガス田位置の生産井4本・井戸元プラットフォーム、多段階でのガスを陸上Bonnyに輸送するパイプライン、Bonnyでのガス処理設備からなる。ここから処理済みガスをNLNG、コンデンセートをBonny石油・ガス輸出ターミナルへと輸送する。
- Golar LNGは2025年10月23日、アルゼンチンSouthern Energy(SESA)向け年間350万トンMKII FLNGの20年間傭船の前提条件が全て整ったことを発表した。この達成は、2025年5月2日に発表された諸契約締結、同8月6日に発表されたFIDに続くものである。MKII FLNGはアルゼンチンのサンマティアス湾に配備されFLNG Hilliの近くで稼働することとなる。MKII FLNGは、中国の煙台のCIMC Raffles Shipyardで改造中である。2027年末までに引き渡し予定で、2028年に稼働開始が見込まれている。
(注: bcm: 10億m3、CCS: 炭素回収・貯蔵、DES: 持ち届け ex-ship、DOE: 米連邦エネルギー省、EPC: エンジニアリング・調達・建設、EPCI: エンジニアリング・調達・建設・設置、 EPCm: エンジニアリング・調達・建設管理、FEED: 基本設計、FERC: 米連邦エネルギー規制委員会、FID: 最終投資決定、FLNG: 浮体液化設備、FOB: 本船渡し、FSRU: 浮体貯蔵・気化設備、FSU: 浮体貯蔵化設備、HOA: 基本合意、MOU: 覚書、SPA: LNG売買契約)
作成協力 一般財団法人日本エネルギー経済研究所
添付ファイル
- 日本のLNG在庫量(30.8KB) (2025/10/30更新)
- 米国天然ガス地下貯蔵量(66.2KB) (2025/10/30更新)
- 欧州天然ガス地下貯蔵量(481.4KB) (2025/10/30更新)
- 欧州LNG在庫量(292.5KB) (2025/10/30更新)


