2021年度調査結果

ページ番号1009138 更新日 令和3年10月7日

LNG売買契約に係る仕向地条項及び価格指標等に関する2021年度調査結果について

2021/10/05

調査実施概要

  • 調査目的:本調査は、2020年3月に策定された「新国際資源戦略」に基づき、LNGセキュリティ上の懸念点となる仕向地条項の撤廃等に向けて、2017年6月に公表された公正取引委員会の「液化天然ガスの取引実態に関する調査報告書」(以下、「公取委調査」という)を踏まえた当該契約条件等の状況についてフォローアップを行うことを目的として実施したもの。
  • 調査期間:2021年6月下旬から8月下旬(回答期間2か月)。調査実施にあたっては事前の説明会を実施。
  • 調査対象企業:国内LNG買主企業として、電力会社、ガス会社、石油会社、製鉄会社の計22社(回答率100%)

<調査内容>

2016年度から2025年度までの10年間について以下項目を調査(実績値ではなく契約数量)

  1. スポット取引を除く全ターム契約数量
  2. 仕向地条項に係る契約数量
    (1) 公取発表に締結した契約について、DES条件とFOB条件にかかるそれぞれの国内外の仕向地変更条項の有無と利益分配条項の有無
    (2) 公取発表に締結した契約について、DES条件とFOB条件にかかるそれぞれの国内外の仕向地変更条項の有無と利益分配条項の有無
    (3) 公取発表改定した契約について、DES条件とFOB条件にかかるそれぞれの国内外の仕向地変更条項の有無と利益分配条項の有無
  3. Take or Pay条項に係る契約数量
    Take or Pay条項の有無とTake or Pay条項有りの場合のMake up条項の有無
  4. 価格指標に係る契約数量
    採用している価格指標別の契約数量(JCC・ブレント等原油価格、HH、TTF、JLC、ハイブリッド、JKMなど)
  5. 最近の動向など自由記述

 

1. スポット取引を除くターム契約数量とFOB/DES条件の推移

  • 日本企業によるターム契約数量は、2020年度に約8,600万トンとピークを付けたのちに減少し、2025年度には約6,200万トンとなっている。このうち、公取委調査以降に新たに締結した契約分が2020年度時点で約800万トンとほぼ横ばいで推移、また公取委調査以降に既存契約の仕向地条項にかかる改定を行った数量は2020年度以降1,500万トン程度となっている。
  • ターム契約数量のDES条件とFOB条件の比率は、2016年度時点にDES条件70%、FOB条件30%から、2025年年度にはそれぞれ47%と53%と、FOB条件の割合が半数まで高まっている。

グラフ 全ターム契約数量の推移/ターム契約数量のFOB/DESの推移


2. 仕向地制限に係る契約数量の推移について

  • 本調査の結果、仕向地制限が課せられている契約数量は、2016年度では75%(約4,600万トン)であったのに対して、2025年度には46%(約2,900万トン)まで低下する。
  • ちなみに、公取委調査によれば、仕向地制限は需要者がLNGを他の需要者等に再販売することを制限することを指し、これにより市場参入機会を排除・減少させている場合に、原則として独禁法上問題となると指摘している。そのため本調査では、「仕向地制限の課せられている契約数量」を、「国内外への仕向地変更を不可としている場合」と、「国内外への仕向地変更を可能としている場合でも利益分配条項が有る場合」とを合算した契約数量としている。「仕向地制限の課せられていない契約数量」とは、「国内外への仕向地変更が可能でかつ利益分配条項が無い場合」の契約数量としている。

グラフ 仕向地制限に係る契約数量の推移/仕向地制限に係る契約数量の比較


3. 公取委調査前後での仕向地制限条件の比較(2020年度断面)

  • 仕向地制限に係る契約条件について2017年6月公取委調査の前後で比較すると、2020年度の契約数量のうち仕向地制限が課されていたのは、公取委調査前以前の契約数量(公取委調査以降の契約改定分を除く)のうち71%、公取委調査後に新たに契約を締結したものを含めた全契約数量では57%、公取委調査後に新たに契約・改定した契約数量では23%となった。
  • なお、本調査では、(1)公取委調査前に締結した契約数量、(2)公取委調査後に新たに締結した契約数量、(3)公取委調査後に既存契約を改定した契約数量((1)の内数)の3点について仕向地条項にかかる項目を調査しているところ、公取委調査前の契約条件は(1)から(3)を差し引いた契約数量としている。

グラフ 公取委調査以前の契約(改定分除く)/公取委調査以降の契約も含めた全契約/公取委調査以降の契約と改訂した契約


4. Take or Pay条項とMake Up条項

  • Take or Pay条項は、買主の実際の引き取り数量が不足する場合に当該不足分を支払う義務を定める条項で契約締結時に将来支払を保証するもので、公取委調査ではFIDに際し重要な要素としているが、初期投資回収後に買主側に一方的に課すことは独禁法上問題になると指摘している。なお、Make Up条項は当該支払い済み分のLNGを翌期以降の一定年数の間に引き取れることを定めた規定である。
  • Take or Pay条項は、2016年度に全契約数量の96%を占めていたが、2025年度時点には85%に低下した。Take or Pay条項有りのうち、Make Up条項有りが78%、Make Up条項無しは22%とその比率は2016年度と2025年度で変わらなかった。

グラフ 


5. ターム契約に採用される価格指標の推移

  • ターム契約で採用される価格指標について、2016年度には93%(約5,700万トン)を占めていたJCC・ブレント等の原油価格は減少傾向にあり、2025年度にはその割合は66%(約4,100万トン)まで低下している。
  • ヘンリーハブ等の米国スポットガス価格指標の採用が米国LNG輸入量増加に伴い増加しており、その割合は2016年度の1%(数十万トン)から2025年度には17%(約1,000万トン)まで拡大している。また二つ以上の価格指標で組み合わせるハイブリッド方式を採用する割合も増加しており、多様な価格指標の採用が進展する傾向がみられる。なお、JKMやTTF等を価格指標とする契約数量は数十万トンとまだ非常に少ない。

グラフ ターム契約における価格指標の契約数量推移/価格指標別比率