2023年度調査結果
ページ番号1009928 更新日 令和5年11月10日
LNG売買契約に係る仕向地条項及び価格指標等に関する2023年度調査結果について
2023/11/10
調査実施概要
- 調査目的:政府の「新国際資源戦略」(2020年3月)では、LNGセキュリティ上の懸念点となる仕向地条項の撤廃等が重要と位置付けられている。本調査は同戦略に基づき、また、公正取引委員会の「液化天然ガスの取引実態に関する調査報告書」(2017年6月)を踏まえ、仕向地条項の撤廃等の状況についてフォローアップを行うことを目的として実施するものである。本調査は、2021年度に初めて実施し、今次調査で三年度目となる。
- 調査期間:2023年6月下旬から8月中旬(回答期間約2か月)。
- 調査対象企業:国内LNG買主企業として、電力会社、ガス会社、石油会社、製鉄会社の計22社(回答率100%)
<調査内容>
2022年度から2030年度までの9年間について以下項目を調査(実績値ではなく契約数量)
- ターム契約に基づく全契約数量に係る仕向地条項について
スポット契約を除く全ターム契約数量について、FOB/DESの別、仕向地条項の有無、利益配分条項の有無 - Take or Pay 条項について
Take or Pay条項の有無とTake or Pay条項有りの場合のMake up条項の有無 - 価格指標について
採用している価格指標別の契約数量(JCC・ブレント等原油価格、HH、TTF、JLC、ハイブリッド、JKMなど) - 最近の動向など自由記述
1. 仕向地制限に係る契約数量の推移について
- 仕向地制限が課せられている契約数量と全体に占める割合は、2022年度は約3,300万トン、42% (全契約数量約7,900万トン)、2030年度には約2,200万トン、40%(全契約数量約5,500万トン)へと減少する。なお、2021年度から2022年度にかけて仕向地制限が課せられている契約数量は、全体の53%から42%へと大幅に減少した。
- なお、仕向け地制限が課されている契約数量と全体に占める割合は、2016年度では約4,600万トン、75%(全契約数量約6,100万トン)、2021年度では約4,500万トン、53%(全契約数量約8,400万トン)であった。
- 本調査では以下のように定義している。
- 「仕向地制限無し」(=仕向地制限の課せられていない契約数量)とは、「仕向地条項無し」と「国内外への仕向地変更を可能としている場合で利益分配条項が無い場合」とを合算した契約数量と定義している。仕向地変更が可能であっても利益分配条項が付されているものは制限がかけられていると解釈した。
- 「仕向地制限有り」(=仕向地制限の課せられている契約数量)とは、全体の契約数量から、「仕向地制限無し」を差し引いた数量とした。この場合、「仕向地制限有り」は、「仕向地が指定されている場合」と「国内外への仕向地変更が可能であっても利益分配条項が有る場合」と整理される。
2. Take or Pay条項とMake Up条項
- Take or Pay条項が適用される契約数量と全体に占める割合は、2022年度に約7,200万トン、91%を占めたが、2030年度には約4,800万トン、88%へと減少する。なお、Take or Pay条項が適用される契約数量のうち、Make Up条項があるものは、2022年度は75%、2030年度は64%であった。
- Take or Pay条項は、買主の実際の引取量が不足する場合に当該不足分に係る支払いを売主に対して行うという義務を定める条項であり、LNG取引における買主側の引取義務を契約締結時点で約するもので、売主側の強い立場を反映したものとなっている。また、Make Up条項は、Take or Pay条項に基づき支払いがなされた分のLNGを、翌期以降の一定年数の間に引き取れることを定めた規定である。
3. スポット取引を除くターム契約数量
- 本調査実施時点で締結済の日本企業のターム契約数量は、2022年度は約7,900万トン、2030年度には約5,500万トンとなった。
- FOB条件とDES条件とに係る契約数量と、全契約数量に対してそれぞれが占める割合は、2022年度時点においてFOB条件が約3,400万トン、43%、DES条件が約4,500万トン、57%であった。
- 2030年度におけるFOB条件とDES条件と係る契約数量は、ともに約2,800万トン、50%まで減少する。2022年度に比べてFOB条件の割合が増加する。
4. ターム契約に採用される価格指標の推移
- ターム契約で採用される価格指標について、JCC・ブレント等の原油価格を参照する契約数量は、2022年度では約5,700万トンと全体の72%を占めたが、2030年度には約3,200万トンまで減少し、その割合は58%となる。
- ヘンリーハブ等の米国スポットガス価格指標を採用する契約数量は、2022年度には約1,100万トンと全体の14%を占め、2030年度では約1,400万トンに増加し、その割合は25%へと倍増する。また、二つ以上の価格指標で組み合わせるハイブリッド方式による契約数量は2022年度の3%から2030年度の7%へと増加を示す。なお、JKMやTTF等については2030年度に向かって減少しその割合は僅かとなる。