ページ番号1005986 更新日 平成30年2月16日

各国の上中流事業でも失敗していた Enron のソフト重視のビジネスモデル

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レポートID 1005986
作成日 2002-01-30 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 企業
著者
著者直接入力 佐々木 育子
年度 2002
Vol 35
No 1
ページ数
抽出データ トピックス各国の上中流事業でも失敗していたEnronのソフト重視のビジネスモデルエネルギー取引最大手のEnronは2001年12月2日,連邦破産裁判所に連邦破産法第11条(日本の会社更生法に相当)の適用を申請した。Enron破綻の最大の原因はデリバティブズの大失敗にあるが,インド・中国等,各国の石油・ガスの上中流事業でも通用していない現実がある。このため,その根本的な過ちはエネルギー供給でハード資産を軽視した「ソフト重視のビジネスモデル」にあると考えられる。<Enronビジネスモデルの起源>Enronは過去15年で北米パイプライン事業からパイプラインを利用したトレーディング事業に焦点を移し,ガス・電力を中心とする卸売り部門を米国の規制緩和の流れに乗って急拡大して成長した。送電線やガスパイプラインなど既存インフラの整った米国では,自由市場の成熟化の段階で,リスクをとって需給を繋ぐ市場マーケッターの役割拡大が必須であった。Enronは政治的圧力等を利用しながら各州で市場自由化を進め,地方のパイプライン事業者から北米エネルギー最大の供給者へと成長した。また,この過程で,欧米のエネルギー市場自由化のパイオニアたる初期ビジネスモデルを構築した。Enronは更に,市場自由化のメリットを世界各地で得るため,欧米以外でも広く発電所や配給会社などの買収等を進める一方,各国で規制緩和を求めてきた。拠点である米国では1996年にオレゴン州の発電会社Portland Generalを買収し,電力供給事業の核とした。また上流事業にも進出して,メキシコ湾をはじめとしてガスを中心に資産を拡大した。海外では将来の大市場であるインド,中国などで上流権益を取得し,電力等の供給事業を立ち上げた。<もてはやされたビジネスモデル?Asset Light―>しかし1999年頃よりITバブルと時を同じくするように同社の戦略はソフト資産重視,スピード重視の経営にシフトしていく。PortlandGeneralの売却発表(最後まで取引成立せず),上流事業売却(EOG:Enron Oil & Gas)など,エネルギー供給会社でありながら保有するハード資産の軽減に努め,資源や生産関連施設への投資を最小限とした。エネルギー供給も世界最大規模のオンライン取引EnronOnlineを始め,スワップやデリバティブ等リスクマネージメント商品の供給等を主流とするようになり,今日のソフト重視型ビジネスモデルを構築した。前CEOのSkilling氏は,同社のShell,BP等をしのぐ高株価を背景に,今日のエネルギー供給は「柔軟でスピードが求められる」ものであり,依然として生産から消費まで統合的なバリューチェーンを保持する石油ガス会社は「1世紀前にロックフェラーがつくった垂直統合型」であり,「技術進歩がこれらに死の宣告をした」と挑戦的なメッセージを残している。ほとんどの石油/ガス会社はハード資産を根拠としてエネルギー開発/供給を行っており,Enronの目指すハード資産を軽視し,サービスを焦点とする経営と対照的である。一方では,Enron同様に米国大手のエネルギー供給会社であるEl Pasoが,「我々はハードを好む」として,上流事業の拡充と上流・中下流事業の統合化,物理的資産と金融市場との統合的な運用をすすめている例もある。<Enron経営破綻の原因>同社破綻の最大の原因はデリバティブの大失敗であるが,エネルギー商品市場で予測不能な事態に陥って失敗したわけではない。Enron経石油/天然ガス レビュー ’02・1―108―cの根本的な過ちは,エネルギー供給でハード資産を軽視したビジネスモデルにあり,同時に性急な事業の成果を追求したことにも問題があった。市場の先行者利益の追求,参加者の増大による収益の成長性にそのほとんどを依拠したビジネスモデルによって,同社は上流子会社EnronOil and Gas(EOG)を1999年7月に分離し,北米を中心とする上流事業から事実上撤退した。ただし,将来の大市場として重視していた中国とインドでの事業は本社直轄として残し,上流・発電・LNG受入施設の建設という各段階でのバリューチェーン構築をすすめた。そして最終的には,同社モデルはこの事業からも撤退をもたらすことととなった。これら地域における上流事業では着実な増産を遂げていたが,収益が急速に拡大する性格のものではないため,同社の求める性急な結果は望めなかった。また中下流事業でも契約合意のみの供給ポートフォリオが志向されて,ハードを根拠とした着実な収益は軽視されていった。中下流事業では,中長期の収益拡大を望むためにはハードを拡張しなければならず,El Pasoなど中下流・発電事業者がハード資産を好む理由はここにある。しかしEnronは結局これらハード資産を軽視し,インド,中国の市場開拓事業においても性急な事業の成果を求めた結果,全ての供給事業から撤退することになった。エネルギー供給事業はリードタイムが長いこと,中国やインドといった大国には欧米とは異なる意思決定,独自のカルチャーがあることなどが尊重されず,最後まで自社流のビジネスモデルを適用させようとしたことが,このような失敗の根本的な原因ということができる。2000?2001年には,上流でほぼ前面撤退,その他供給事業も中止又は今後の活動が不透明な情勢となっている。(1)Enronの上流事業同社にとって,上流事業は中核事業の周辺ビジネスであり,事業を大きく成長させて主要な収益源とする企図はそもそもなかった。米国内のガス需要増大と価格上昇に対応して,1996年末にEnron Oil & Gasの株式53%を取得してグループに取り込み,一部を海外発電プロジェクトへの供給源として上流投資を進めていたに過ぎない。1996年末の上流資産は8割がメキシコ湾,ワイオミング,テキサス,ニューメキシコなど米国内にあった。探鉱/開発は順調で,生産量は1998年に前年比11%増の417bcf(天然ガス換算),埋蔵量リプレースメント率は429%に達した(埋蔵量は計5.9兆cfと過去最高の保有埋蔵量)。発見コストは0.42ドル/千cf(ガス換算),フルコストは1.4ドル/千cfと業界でもトップ水準であった。海外では,Dabhol発電プロジェクトを進めるインドにおいて,特に天然ガスの探鉱/開発を進めた。保有する3ガス田の保有埋蔵量は1997年の652Bcfから1998年には1兆cf(いずれもガス換算)に増大,生産量も1997年に18MMcf/d,1998年には56 MMcf/dへ増産していた(ガス田のワーキングインタレストは30%)。発見ガス田Taptiについては2001年中に開発承認を得る予定であった。タイでは沖合SECC鉱区でガス生産を行い,生産量は1997年に113 MMcf/d,1998年に139MMcf/dであった。同じく沖合のU(a)鉱区では1998年に0.6Tcf?1.0Tcf(ガス換算)の埋蔵量を発見。2001年の供給を見込み,60百万cf/dの契約を模索していた。中国ではSichuan basinのタイトガスサンドのガス開発評価,パイプライン事業,ガス市場の開拓を中心に活動を広げていた。この他,ベネズエラ沖合,カタール,ウズベクで探鉱を行い,オーストラリア,フランス,英国などでもコールベッドメタンの評価などを実施している。しかし,戦略上,ハード資産の保有を嫌うEnronは,資産投資の最小限化,一層の資産軽量化を進めた。需要地への供給サービス・取引は契約合意により世界各地から調達する手法とし,上流資産の保有は意味を持たなくなった。これによりインド,中国の上流資産も売却されることになった。(2)インドDabhol発電プロジェクトから撤退インドMaharashtra州でEnronが主導してい―109―石油/天然ガス レビュー ’02・1スDabhol発電プロジェクト(Dabhol PowerCo.が操業,以下DPC)は,1999年5月に操業を開始した。しかし,供給先であるMaharashtra State Electricity Board(MSEB)が2001年4月に高価格を理由として電力引取りを停止し,操業はなお停止中である。外資パートナー(Enron,Bectel,GE)は,保有するDPC権益を政府及び金融機関に売却することを提案してきたが,拒否され,現在はTata Powerなどと売却交渉中である。同プロジェクトでは2000年1月より電力料金も未回収であり,これまでに発生した未払い債務は50億ドルに上る(DPC発表)。DPCは総工費29億ドルの7割をBank of America, Citibank等から調達しているが,それらの利払いも不履行に陥っている。操業停止により,関連事業も停止しており,供給元である上流・中流プロジェクトでは一部延期を余儀なくされている。Enronは,発電プロジェクト不成立を理由にオマーンLNGなどの供給引取り義務を拒否している。<上流事業>インド上流事業は,2000年10月に撤退を表明。売却先候補の中からBGを選定し,2001年10月に388百万ドルで売却することで合意した。しかし,油ガス田のパートナーであるONGCとReliance Industriesがオペレーターシップや権益取得を要求しており,BGへの売却を承諾していない。さらに両社がOpexの応分負担を拒否(Enron開発費が超過しているとの理由)している。GE 10% Bectel 10% Enron 65% MSEB 15% 29億ドル フェーズ1 フェーズ2 1999年5月 フェーズ1 操業開始 2001年4月 Maharashtra州が電力引取りを停止 2001年5月 Enron,プロジェクトからの撤退を表明 2001年11月 売却交渉継続 826MW (当初ナフサ炊き→LNGへ転換) 1,624MW (LNG,2002?) 〈Dabholプロジェクト(Dabhol Power Co.)概要〉 権益保有者 工費 総発電 緯 経5百万 t/y 2001年未完成見込み LNG船Laximi(135千cm)→スポットチャーターへ  三井OSK Line 60%  Shipping Corp. of India 20%  Enron 20% Enron子会社MetGas 事業中止 Oman LNG 供給契約1.6百万 t/y(2001末?)→引取義務なしと主張 Abu dabi Adgas 供給契約0.5百万 t/y(2002初?)→同上 Malaysia Tiga MOU等2.6百万 t/y→Enronの一方的な失効通告 Qatar Rasgas 交渉2.6百万 t/y→交渉中止 Ispat Energy(印) 株式49%取得,及びLNG供給契約 イプライン パNG船 LLNGプロジェクト 電/供給プロジェクト 発〈Dabhol 関連プロジェクト〉 LNG受入施設 石油/天然ガス レビュー ’02・1―110―サ  状 Enron ONGC Reliance Industries Enron Hindustan Oil Expl. Tata Petrodybe ONGC BGへ売却予定だが パートナー間で未決着 30% 40% 30% 62.64% 17.36% 10% 10% 蔵量85百万bbl(2000年3月末) 埋 生産量70百万 cf/d,8,200 b/damboy Basin CB-OS-1 C(探鉱中) 資産内容 Tapi/Pann-Mukta油ガス田 (開発・生産中) 〈インド上流資産〉 保有資産 上流権益 (担当 佐々木)(3)中国の上流事業中国でも発電,パイプライン事業とともに上流事業を進めていた。しかし,2001年7月に主要上流資産である四川・川中から撤退,同社による関連事業は事実上中止されたと見られる。一部はなお探鉱権益を保有している。現  状 2001年7月 Burlingtonへ売却 退 撤内  容 四川・川中 Chuanzhong鉱区権益100% (1997年PS契約締結)  金華(Jinhua),Gong,営山(Yingshan)油田,   Bajiaocjangガス田 Sichuan-Wuhan ガスPL(四川上流関連) 流権益 ス輸送 上 ガ〈Enronの中国上流関連事業〉 アンゴラ:生産量が急増するアンゴラで注目される政府の生産プロファイル1.生産量は今後5年間で急増アンゴラは,近年の相次ぐ深海油田の発見によって原油埋蔵量が増大し,Sub-Saharanアフリカにおいてナイジェリアに次ぐ生産国である。同国の石油生産量は,今後急増する傾向にある。2006年までに開発中の油田が生産に移行することによって,現在の750,000b/dから,2005年には1.3百万b/dに達する見込みである。また,2007年には2百万b/dまで増加するとの見方もある。2006年までに生産移行する予定の油田は表1のとおり。尚,一部については最近の開発進捗状況を後述。2.アンゴラ政府は今後30年間の生産プロファイルを策定中アンゴラ政府は昨年,油田の生産期間の長期化を計るため,許可を段階的に与える方針を発表した。国営Sonangolと石油省は,現在,タス―111―石油/天然ガス レビュー ’02・1
地域1 グローバル
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国・地域 グローバル
2002/01/30 [ 2002年01月号 ] 佐々木 育子
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