ページ番号1005988 更新日 平成30年2月16日

フィリピン:Malampaya ガス田生産開始で天然ガス生産国の仲間入り、ガスへのエネルギーシフトが進む

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レポートID 1005988
作成日 2002-01-30 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 探鉱開発
著者
著者直接入力 長谷川 徹
年度 2002
Vol 35
No 1
ページ数
抽出データ フィリピンがMalampayaガス田生産開始で天然ガス生産国の仲間入り,ガスへのエネルギーシフトが進むフィリピンで9月27日,RD/Shell等が開発するMalampayaガス田の生産が開始された。Malampayaガス&パワープロジェクトの開始はフィリピンの天然ガス時代の幕開けを告げるものである。同国Palawan島沖合いで1989年に初めてガス田が発見されて以来,同国は4人の大統領の統治を経て,インドネシア,マレーシア,タイ,ブルネイ,ミャンマーに次ぐ東南アジアで第6の本格的な天然ガス生産国の仲間入りを果たした。そして,この経済効果は,フィリピンの年間30億ドルにのぼる原油輸入支払い額の約25%にあたる7億ドルの削減と,総額130億ドルのロイヤリティーを20年間にわたり受け取る効果をもたらすことである。Malampayaガスプロジェクトの概要正式には“Malampaya Deep Water Gas-to-Power Project”と呼ばれ,フィリピンPalawan島西80kmのService Contract 38地区(SC38)で発見したCamago/Malampayaガス田から504kmの海底24インチパイプラインにより首都ManilaのあるLuzon島南部Batangasで陸揚げ・ガスの処理を行い,総発電能力270万kwのコンバインド・サイクル・ガス発電所(CCGT)にガスを供給するプロジェクトである。当初,本プロジェクトの実現には困難な課題が山積みされていた。発見したガス田は水深820m,貯留層は地下3千mにある大水深開発であり,開発には北海やメキシコ湾に匹敵するほど,技術的に困難が伴うと考えられていた。SCALE LUZON0km150ManilaPROPOSED BATMAN PIPELINE TO MANILAPhilippine SeaSANTA RITA POWER STATION (FGH) SAN LORENZO POWER STATION(FGH) ILIJAN POWER STATION (NPC) South China SeaONSHORE GAS PLANT AT TABANGAO REFINERY, BATANGAS CITYMINDOROPLATFORMBUSANGACULION30 kmLINAPACAN50 kmMALAMPAYA BLOCK SC 38PALAWANAREA OF MAP―113―石油/天然ガス レビュー ’02・1Gンジニアリング面でも,生産プラットフォームの重量が11,500トンにもおよびこれまでのもので最大級となる等,規模の面で本プロジェクトは多くの記録を残すことになった。天然ガスの埋蔵量は2.7兆cf(コンデンセート85百万bbl)だが,これだけの量の天然ガスを必要とする地域は首都Manilaを抱えるLuzon島以外にない。しかし,Luzon島までの海底パイプラインの敷設区間は複雑な地形にわたるうえに,500kmもの距離があった。しかも,当時フィリピンにはガス発電所すらない状況であった。にもかかわらず,本プロジェクトは1998年5月の商業化宣言から約3年半で,当初の計画を上回るペースかつ当初予算の範囲内で生産開始に漕ぎ着けた。これは,オペレーターであるShellや潜在的な顧客を含めすべての関係者が一致して,本プロジェクトがすべての点でフィリピンの国益にかなうものとの認識を持っていたためである。天然ガスの販売価格については,LNGを輸入する場合の価格よりも安く,かつ石炭価格に競合するよう設定されている。また,石油火力発電所に対する競争力を保つため,価格フォーミュラは石油価格とのリンクも含まれるとされる。Gas-to-Power(CCGT発電所概要)陸揚げされたガスは新設される3ヶ所のCCGT発電所に供給される。発電所等の概要は次表の通りである。なお,Meralcoはフィリピン最大の民間電力供給会社であり,首都Manilaを含む同国の総電力消費量のおよそ3分の2を供給する会社である。またSanta Rita発電所へのガス供給開始は2002年1月の予定であったが,予定を早めガスの受け入れを開始している。Luzon島の電力需要の1/3を賄うこれら総計2,700MWのCCGT発電所での天然ガス消費量は430百万cf/d程度となる見通しである。しかし,ガス田からの海底パイプラインの輸送能力は650百万cf/dであり,まだ30%以上の余力を持つ。そのため,Shell等はBatmanパイプラインと呼ぶBatangasからManilaへの100kmのパイプライン延伸計画を進めており,さらなるガス需要の開拓を企図している。Batmanパイプラインでは,InterGen(ShellとBechtelの発電JV)またはBatangasのCCGT発電事業者のうち1社がSucat石油火力の敷地内に600MWのガスCCGTを新設する計画である。権益保有企業の変遷当初,SC38地区の権益を有していたのはOccidental(Oxy)であり,その後Shellが対等のパートナーシップで参入した。本プロジェクトは,Oxyが1989年にCamagoガス田を,続いてShellが1992年にMalampayaガス田を発見したことから計画された。しかし,Oxyは1998年7月,Shellとの間で世界的な資産交換をおこない,これにより本プロジェクトにおける権益はすべてShellに帰属することになった。その後,翌年10月にTexacoが,2000年1月には国営PNOCが参入することになり,現在の上流の体制電力供給先 供給開始 2002年1月 2002年7月 2002年1月 Meralco (Manila Electric) (国営電力会社) apcor N  出資企業  (%) First Philippine 51% BG 40% Meralco Funds 9% 韓国電力 51% Southern Diamond 41% 九州電力 9%事業会社 FGHC (First Gas  Holding) epco-Ilijan K発電能力 1,000MW 500MW lijan1,200MW新設 CCGT発電所 Santa Rita San Lorenzo I計画 CCGT発電所 Sucat発電能力 600MW事業会社 出資企業(%) 電力供給先 未定 未定 N.A.供給開始 2005年頃 石油/天然ガス レビュー ’02・1―114―vロジェクト権益の変遷 ガス発見当時 RD/Shell Occidental50% 50%1998. 7RD/Shell 100%1999. 102000. 1以降 RD/Shell Texaco50% 50%RD/Shell Texaco PNOC45% 45% 10%はRD/Shell,Texaco(現ChevronTexaco)とPNOCの3社となっている。フィリピンの新たな天然ガス政策10月16日,フィリピンではMalampayaガス田生産開始の記念式典が行われた。この席でArroyo大統領は同国の天然ガス政策にかかわる重要なスピーチを行っている。それは,ガス供給者が天然ガス価格を引き下げることと引き換えに末端市場でガスの利用推進を拡大する政策を導入することを約束するというもので,実質的にガス販売価格の引き下げを求めたことである。大統領が発表した天然ガス利用拡大の政策内容は以下の3点である。①BatangasからManilaそして最終的にはBataanまで外国資本を活用して陸上ガスパイプラインを新設する。ガス配給事業への投資を促進するため,これらすべてのパイプラインへのアクセスを開放する。②2002年に予定される国営電力Napocorの民営化の一環で,政府は既存発電所の一部をガス発電に転換することを義務付ける政策を導入する。③フィリピンの深刻な大気汚染を防止するため,すべての公共交通網に圧縮天然ガス(CNG)を用いることを最重要課題にあげる。大統領のスピーチは,天然ガスの利用拡大は公式に支持するが,そのためにはガスの販売価格の引き下げが必要だということである。ただし,上記の政策により天然ガス需要が拡大することから,価格の下落による事業者の収益の悪化は販売量の増加で補えるとしている。一方で,フィリピンはガス価格の引き下げにかかわらず,国内事情から上記のガスの利用促進政策を導入せざるを得ない側面もあり,上記の政策を本当に実施に移すかは不透明である。また,ガスの供給者側としてはガス価格の引き下げ要請は短期的には歓迎できないが,上記の政策が導入された場合,Shellのようにガスの供給ソースを豊富に持つ事業者にとっては天然ガスを供給できる市場機会が増えることも考えられる。このことから,大統領の発言はフィリピンの政策に基づくものよりも,むしろ大統領の政治的な配慮であった可能性も否定できない。フィリピンのエネルギー需要予測フィリピンエネルギー省(DOE)によれば,同国の一次エネルギー需要は,2000年の256百万bbl(石油換算)から2009年に445百万bbl(石油換算)へ,10年間で年平均6.3%増加すると予測されている。フィリピンの2000年の輸入依存率は57.8%だが,Malampayaガス田の生産の寄与により2004年には50%程度となる予測である。このエネルギー自給率の増加を担うのがMalampayaガス田であるが,その後は需要の増加に伴って再び輸入依存率が高まっていく。そのため,Malampayaガス田に続く資源を探索するために,現在PNOCはMalampaya構造の下部にある薄い石油層についても評価井を掘削中である。フィリピンは探鉱・開発の投資誘致にも積極的である。探鉱のインセンティブでは「Cross-Cost-Recovery」と呼ばれる生産性のない鉱区にかかるコストを別の生産鉱区で回収できる制度や,マージナル鉱区やフロンティア鉱区でのPS契約における政府の取り分を60%から引き下げる改定を進めている。―115―石油/天然ガス レビュー ’02・1000 2004 2009 mmboe 108.17 0.00 0.02 3.20 12.85 19.98 72.11 148.14 116.50 31.63 0.00 256.31% 42.20 0.00 0.01 1.25 5.01 7.80 28.14 57.80 45.45 12.34 0.00 100.00mmboe 156.46 16.92 18.93 3.57 14.40 22.16 80.48 160.49 125.89 32.26 2.34 316.95% 49.36 5.34 5.97 1.13 4.54 6.99 25.39 50.64 39.72 10.18 0.74 100.00mmboe 175.61 9.71 25.41 3.82 19.55 24.80 92.32 268.90 189.82 44.55 34.53 444.50% 39.51 2.18 5.72 0.86 4.40 5.58 20.77 60.49 42.70 10.02 7.77 100.00内生産 国原油 天然ガス 石炭 水力 地熱 その他 輸入 原油 石炭 その他 総需要 LNG等天然ガス輸入契約上記のフィリピンの需要予測や大統領の天然ガス利用拡大策を受けて,同国では天然ガスを充分に確保するために,規模の大小を問わずガス田の開発が急務となっている。しかし国内の探鉱・開発が充分に成果をあげない事態も予測されることから,Arroyo大統領はプロジェクト記念式典において,必要であればフィリピンはLNGの輸入も検討すると発言している。実際にフィリピンの独立系電力GNPower社は,インドネシアTangguh LNGプロジェクトと130万トン/年のLNG供給に関しPertaminaとLOIを調印したばかりである。さらに,PertaminaとフィリピンPNOCの両国営石油会社は11月12日,フィリピンArroyo大統領のインドネシア訪問にあわせて,インドネシアで計画されるLNGプロジェクトやPertaminaがSulawesi島で発見したDonggiガス田のフィリピンへの輸出を含む,探鉱・開発,地熱,石油精製・販売にITなどを含む広範な分野で協力関係を構築する覚書(MOU)を締結している。またフィリピンは,マレーシアとも天然ガスの輸入に関する協議を開始しており,東南アジアで計画が進むTrans-ASEANガスパイプラインの一部を構成する予定のパイプラインをマレーシアSabah州からMalampayaガス田に繋ぎこむことも計画している。(担当 長谷川)石油/天然ガス レビュー ’02・1―116―
地域1 アジア
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2002/01/30 [ 2002年01月号 ] 長谷川 徹
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