ページ番号1006002 更新日 平成30年2月16日

驚くべき変貌を遂げた中国国有石油会社の民営化 ~「大釜の飯」の喪失~

レポート属性
レポートID 1006002
作成日 2002-05-30 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 企業
著者 竹原 美佳
著者直接入力
年度 2002
Vol 35
No 3
ページ数
抽出データ 驚くべき変貌を遂げた中国国有石油会社の民営化?「大釜の飯」の喪失?佐 藤 美 佳*中国の国有石油企業(NOC)と聞いて皆さんはどのような姿を思い浮かべるであろうか。恐らく,人海戦術による非効率な生産・操業を行う地方油田や,収益ではなく政府の意向に従う非効率な経営を想像されるのではないか。「大釜の飯」という言葉は,「社会主義経済の下の機械的な平均主義」を意味する。しかしそれは過去の姿である。中国の国有石油企業(National Oil Company)とは中国石油天然気集団公司(CNPC),中国海洋石油総公司(CNOOC),中国石化集団公司(Sinopec)を指すが,その3社はそれぞれのコア事業を子会社に移し,2000年から2001年にかけてニューヨーク・香港など海外への株式上場,民営化を果たした。その結果,トップマネージメントに対するストックオプションの付与や,管理職給与の大部分を株価や業績とリンクさせるなど,市場を意識した経営を行う企業へとその姿を変えた。また監査,審査・報酬委員会の設立及び社外取締役の導入を行うなど組織の透明化が図られ,また米国会計基準により決算や埋蔵量の報告を行うという点において,めざましい国際化が進んでいる。企業は組織のリストラクチャリングを通じ,組織運営などのパフォーマンスも好転させた。NOCがこのように短期間でドラスティックな変化を遂げた理由は主に二つある。一つはNOC3社の上場・民営化が政府の強力な指示・支援の下に行われたことである。中国政府はWTO加盟により国際競争にさらされる国有企業の改革を急いでおり,NOCの改革は中国国有企業改革のパイロットケースと位置付けられた。政府はNOCに対し上場の加速を指示すると共に,速やかな上場を達成できるよう積極的な支援を行った。彼らの成功を受け,政府は2001年から他の国有企業の改革(通信産業や電力部門など)に着手している。もう一つの理由は,NOCが上場プロセスにおいて外部アドバイザーを活用したことにある。NOC自身が欧米企業とのイコールフッテイングを目指し,世界的に著名な外部アドバイザーを積極的に活用したことにより,優れたビジネスモデルの導入のみならず,組織内部の抵抗勢力を抑え,リストラクチャリングを加速することにつながった。本稿では,中国NOCのうち,上流企業のCNPC(PetroChina)を中心にその民営化プロセスと上場後の企業におけるパフォーマンスの変化について紹介する。PetroChinaとはCNPCの採算部門(コア事業)によって上場,民営化した会社である。そして,ドラスティックで華々しい企業発展の裏で行われているCNPCグループ企業(非採算部門)の切り捨て,CNPC,PetroChinaの双方で実施されている過酷なリストラの実態など,民営化に伴う影の部分についても紹介する。*本稿は,企画調査部佐藤美佳(E-mail:sato-mi@jnoc.go.jp)が担当した。―19―石油/天然ガス レビュー ’02・5英語で取締役会?!?本年1月に北京のPetroChina,CNOOCを訪問し,民営化プロセスについてヒアリングを行った。その際驚いたのがCNOOCロビーにある電光表示板の存在である。それは数秒おきに変化しCNOOCの香港・ニューヨーク市場における株価を写しだしていた。彼らから話を聞くうちに驚きはさらに深まった。彼らは外国人の社外取締役やキッシンジャー元米国務長官を筆頭とする顧問グループを抱え,英語で取締役会を行っているというのだ。日本の業界関係者の予想をはるかに超えて彼らの民営化が進展していることについて以下報告することとする。1.民営化による変化(1)企業規模CNPCの採算部門(コア事業)によって上場,民営化した会社PetroChinaの企業規模を生産量(2000年)及び時価総額(2001年)で表すと,生産量が約210万bbl,時価総額は約313億USドルであり,生産量ではTotalFinaElf,時価総額ではConocoPhillipsに匹敵する位置にいる(図1参照)。PetroChinaは米国の会計基準で決算を行い,埋蔵量・生産量の報告を行っているため,欧米石油会社との比較が可能となった。PetroChinaの株価やパフォーマンスは同社サイトだけではなく,Yahooサイト(注1)で誰でも検索することが可能である。また,PetroChinaのコア事業は,CNPC時代同様探鉱開発部門である。探鉱開発部門は,職員の数は全体の約半数であるが,事業収入のほとんどを占めている。(表1,図2参照)。(2)投資家へのリターン株価の2001年の動きを見てみると,PetroChinaの株価は2000年に比べ5.6%上昇して注1Yahooサイトhttp://messages.yahoo.com/yahoo/Business___Finance/Investments/Sectors/Energy/index.html石油/天然ガス レビュー ’02・5―20―}1 Petro Chinaの企業規模表1 Petro China事業内訳(cid:0)資本支出に占(cid:0)める比率(%)(cid:0)71(cid:0)22(cid:0)3(cid:0)4(cid:0)1(cid:0)100資本出資(cid:0)(百万USドル)(cid:0)1,603.99(cid:0)487.91(cid:0)71.34(cid:0)82.83(cid:0)18.83(cid:0)273.81営業利益に占める比率(%)(cid:0)101(cid:0)1(cid:0)?2(cid:0)0(cid:0)?1(cid:0)100職員数(cid:0)(%)(cid:0)(cid:0)53.7(cid:0)27.8(cid:0)15.7(cid:0)2.3(cid:0)0.5(cid:0)100営業利益(cid:0)(百万USドル)(cid:0)(cid:0)5,066.26(cid:0)70.25(cid:0)?99.03(cid:0)19.47(cid:0)?39.06(cid:0)606.76精製(cid:0)化学工業(cid:0)天然ガス・PL(cid:0)その他(cid:0)計(cid:0)鉱開発(cid:0)(cid:0)(cid:0)探出所:PetroChina2001年中期報告(cid:0)(cid:0)(cid:0)(2001年1月1日?2001年6月30日)(cid:0)1元=8.27元とする(cid:0)(cid:0)図2 PetroChina事業収入内訳出所:PetroChina2000年年報―21―石油/天然ガス レビュー ’02・5\2 Petro China株式保有主要外国投資家内訳(cid:0)株式保有数(cid:0)(cid:0)(H株)(cid:0)3,516,485,000(cid:0)2,470,114,000(cid:0)2,460,528,000(cid:0)2,116,744,000(cid:0)10,563,871,000(cid:0)7,018,547,000株式全体に占める(cid:0)比率(%)(cid:0)2.00(cid:0)1.4(cid:0)1.39(cid:0)1.2(cid:0)5.99(cid:0)4.01P Investments China Limited(cid:0)Flanklin Resources,Inc(cid:0)Templeton International,Inc(cid:0)Templeton Global Advisors,Ltd.(cid:0)計(cid:0)市場放出株(cid:0)(cid:0)出所:PetroChina2000年年報(cid:0)(cid:0)外国投資家内訳(cid:0)(cid:0)B図3 PetroChina株価の動き出所:YahooFinanceの数値に基づき作成いる。この利回りは米国債(10年)の利回りとほぼ同等である。また,PetroChinaは2001年中期に0.0625HKドル/H株(注2)の配当を行っている。欧米メジャーではBP InvestmentChina LimitedがH株約35億株(PetroChina発行株式の20%,株式全体の2%)を保有しており,単純に計算すると2.3億HKドル(29.5百万USドル)の配当を受けていることになる。注2H株:香港で上場されている中国国有企業株,1USドル≒7.8HKドル(3)組織運営の変化株価には様々な要素が作用するとはいえ,株価が上昇したということは,企業が市場から一定の評価を受けたということが言える。ではPetroChinaの何が投資家を引き付けたのか。それは組織の改革及びそれがもたらした成果であろう。① 管理職給与を業績・株価と連動PetroChina管理職は給与の大部分を業績・株価と連動させている。その割合は役職により異なるが,部長(Executive Director)の場合,石油/天然ガス レビュー ’02・5―22―ナ定給の比率は25%,株価連動分が50%,業績評価制度に基づく報奨金の比率が25%となっている。一般の職員についても所得の格差は広がっている。政府による給与総額の制限はあるが,CNPCは1998年から利潤を基本とし,安全・環境及び職員数を勘案し,企業毎にベースアップを定める制度を実施している。2000年現在,油田・精製企業で,一人当たりの収入格差は2.04倍に広がっている。② 経営者層に対するストックオプションまた,PetroChina,CNOOCLtd.共にストックオプション制度を導入しており,管理職の利益を投資家と同一化させている。(PetroChina経営者層へのストックオプションの数値は公表されていないため,CNOOCの数値を参考までに表3に記載する。)③ 人事管理制度の改革・若手の登用:後継管理職の育成を強化。「条件が同じであれば若手を起用」という原則の下に若手管理職の育成を図った。1999年には40歳以下の幹部4名が大型油ガス企業の責任者を務めている。2000年現在,45歳以下の管理職の占める割合は33.6%。40歳以下の管理図4 PetroChina管理職給与の内訳出所:PetroChina2001年中期報告に基づき作成表3 CNOOC Ltd. 経営者へのストックオプション(cid:0)役  職(cid:0)氏  名(cid:0)(cid:0)株式数(H株)(cid:0)(cid:0)(cid:0)C(cid:0)500,000(cid:0)(cid:0)350,000(cid:0)280,000(cid:0)(cid:0)280,000(cid:0)280,000Longsheng JIANG(蒋 龍生)(cid:0)hengyu FU(溥 成玉)(cid:0)(cid:0)Chouwei ZHOU(周 守為)(cid:0)Han LUO(羅 漢)(cid:0)(cid:0)Siucheng WEI(衛 留成)(cid:0)(cid:0)Lhairman of the Board of Directors, Chief Executive Officer(cid:0)President, Executive Director and, Chief Operating Officer(cid:0)Executive Director(cid:0)Executive Director and Executive Vice President(cid:0)Executive Director出所:CNOOC Ltd. 2001年中間報告に基づき作成(cid:0)2001年3月付与,行使価格:5.95HK$/株(cid:0)2002年2月現在のCNOOC Ltd. 株価:8.4HK$/株 1USドル≒7.8HKドル(cid:0)―23―石油/天然ガス レビュー ’02・5Cホール掘削に係る支出を損益として計上。開発コストは従来通り償却。・操業費削減:「市場が価格を決定し,価格がコストを決定する」という考えの下,①詳細な予算の策定,厳しい評価②慎重な投資決定によるコスト管理を行った。これにより,油田の老朽化によるコスト上昇の中,操業費を2000年の5.05US$/bblから2001年には4.37US$/bblに削減した。・支払利息削減:1998年から2000年にかけ,対外借款の返済及びプリペイド(期限満了前の返済)により支払い利息の削減を行った。支払い利息は1998年の1,484百万USドルから753百万USドル減少し,731百万USドルとなった。なお,2001年上半期の支払利息について表4 Petro China Finance Costの推移(cid:0)単位:百万USドル(cid:0)2000年(cid:0)▲142(cid:0)661(cid:0)3771999年(cid:0)270(cid:0)999(cid:0)1998年(cid:0)226(cid:0)1,324(cid:0)1,777利息*(cid:0)Total Finance Cost出所:Petro China2000年年報(cid:0)*利息=受取利息?支払利息(cid:0)1,539替差損(cid:0)(cid:0)為も,2000年同時期の512百万USドルに比べ44.3%減少し299百万USドルとなっている。⑦ 税金・連結納税:1999年12月,国家税務総局はPetroChina及び傘下企業の所得税を連結納税とすることを許可。・組織再編に係る税金の減免:国務院の指示により,国家税務総局はCNPC分割,PetroChinaの設立に伴う土地や不動産所有権の移譲などに伴う税金の全額を免除した。2.CNPCのリストラクチャリング,海外上場プロセス(1)約1年でリストラクチャリング・上場準備作業を終えたCNPC職17名が局(部)長クラスに在籍している。・語学・経営研修の強化(留学・MBA取得):1998年8月以降,管理職及び後継管理職から,40歳以下の優秀な人材25名を選出,国内で半年間の研修(英語・工商管理)を受けさせた。1999年現在,17名がTOEFLを通過,米国及びMBA取得のため米国,カナダに留学した。・管理職への業績評価:CNPCは1999年から「中国石油天然気集団公司所属企業生産経営評価賞罰試行方法」により収益を中心とした評価指標制度を策定している。これは企業が年度指標を達成,もしくは超過した場合は主要な管理職に報奨金を支給し,企業に損失を与えた場合は主要な管理職に経済的な処罰を行う制度である。④ 社外取締役の導入PetroChinaは監査・審査・報酬委員会の設立と共に社外取締役を導入した。PetroChinaの社外取締役はボードメンバー13名中3名で,ENIの前CEO(1992?1998年)FrancoBernade氏の他,中国社会科学院の教授など内外の著名人が就任している。PetroChinaは企業の透明性をアピールすることが狙いである。取締役会は英語で行われている。⑤ 財務管理制度の改革PetroChinaは欧米メジャーに倣い,財務管理制度を改定した。・財務(資金,債務,会計の管理)をPetroChina本部に集中・国際会計基準に基づき,財務会計報告を作成・連結決算を行い,中国の会計基準を国際会計基準とイコールフッティング・国際会計準則及び慣例に基づき,PetroChinaの会計処理,情報を公開する⑥ コスト削減・コスト計算方法の改定:欧米石油企業の慣例にならい,2000年からコスト計算法を改定。現行の油田維持費と埋蔵量有償使用費(注1)を廃し,油ガスの探鉱費用及び探鉱井のドラ注3これまで財政部(日本の財務省に相当)は石油企業の探鉱開発資金の不足を補うため,油田維持費と埋蔵量有償使用費を徴収CNPCは1997年に株式上場への検討を開始した。しかし1998年3月から7月にかけ,国務院石油/天然ガス レビュー ’02・5―24―}5 CNPC海外上場のプロセス機構改革に伴う石油・石化産業再編作業(SINOPEC,化学工業部(当時)と資産・人員のスワップを行い,上下流一貫統合会社を形成)を行ったため,上場検討作業は一時中断した。その後リストラクチャリング・株式上場ワーキンググループが中心となってリストラクチャリング及び上場準備作業を進め,2000年4月にニューヨーク・香港株式市場で新規株式公開(IPO)を行った。CNPCがリストラクチャリング作業を終え,PetroChinaが成立したのは国家工商局への登録が完了した11月であり,上場準備作業の完了は国家経済貿易委員会による海外上場の認可が下りた12月である。つまりリストラクチャリング・上場準備の実質的な作業期間は約10ヶ月ということになる。政府の強力な指示と支援があったとはいえ,少数のWGメンバー及び外部アドバイザーの活注3CNPCリストラクチャリングWGメンバー:グループ副リーダーは財務資産部の副主任が任命された。その他探鉱(探鉱開発公司),地方油田(大慶石油管理局),海外事業(CNPC香港),精製(錦西リファイナリー),化工(吉化集団),財務(財務資産部・中油財務有限公司)から各1名が選出。(出所「CNPC年鑑2000」石油工業出版社2001年)用によりリストラクチャリング・上場準備作業を推進したことが,速やかな上場を実現した要因であると言える。(2)少数メンバーによりリストラクチャリング・上場作業を実施1999年2月10日,CNPCは青海石油管理局局長を「CNPCリストラクチャリング及び上場準備ワーキンググループ(以下WG)」グループ長に指名し,上場・リストラクチャリング作業の責任者とした。WGメンバーはグループの副長に財務の人間が指名され,その他財務,探鉱開発,地方油田,海外事業,精製,化工から各1名が選出され,計8名で構成された。(注3)その後WGリーダーの統率の下,5つの作業グループ(①財務資産,②政策・法律,③リストラクチャリング・管理,④業務発展計画,⑤総合調整)が組織され,上場準備作業を開始した(図6参照)。(3)ゴーン効果?!外部アドバイザーの活用CNPCは上場準備作業にあたり,世界的に著名なアドバイザー(上場幹事会社にはGoldman―25―石油/天然ガス レビュー ’02・5}6 CNPCのリストラクチャリングに係るワーキンググループ表5 CNPCの組織分割(cid:0)CNPC(cid:0)13億USドル(cid:0)その他(海外事業並びに技術サービス事業)(cid:0)中国石油工程建設公司,中国石油物資装備公司,中油技術服務有限責任公司,石油工業出版社他(cid:0)N.A.(cid:0)106万人(cid:0)内訳(cid:0)エンジニアリングサービス:31万人(cid:0)生産サービス:18万人(cid:0)加工製造:10万人(cid:0)社会サービス:30万人(cid:0)多角経営:8万人(cid:0)その他:9万人(cid:0)Petro China株式の80%を保有(持株会社)(cid:0)(cid:0)6Petro China(cid:0)86億USドル(cid:0)13油ガス田(大慶,遼河,新彊,四川等)(cid:0)15精製企業(大慶石化,遼陽化繊他)(cid:0)21販売企業(西北,東北販売公司他)(cid:0)PL輸送公司,研究機関(cid:0)(cid:0)428億USドル(cid:0)48万人(cid:0)内訳*1(01年6月現在43万人)(cid:0)探鉱開発:23万人(cid:0)精製:12万人(cid:0)化学工業:6.8万人(cid:0)天然ガス・PL:1万人(cid:0)その他*2:0.2万人(cid:0)(cid:0)2資産(cid:0)(cid:0)(cid:0)総資産内訳(cid:0)債(cid:0)(cid:0)(cid:0)(cid:0)(cid:0)負職員数(cid:0)(cid:0)(cid:0)(cid:0)(cid:0)(cid:0)(cid:0)(cid:0)両開(IPO)(cid:0)(cid:0)出所:CNPC年鑑2000(cid:0)*1:Petro China職員数内訳は2001年中期報告に基づく(cid:0)*2:その他職員はPetro China本部管理部門及び調査研究機関(cid:0)式の10%を香港,NYに新規株式公(cid:0)株社の関係(cid:0)石油/天然ガス レビュー ’02・5―26―G 上場申請書作成⑨ 中国証券監督委員会へ海外株式市場への上場を申請→1999年7月認可⑩ 香港証券取引所及び米国証券取引委員会(SEC)へ上場申請書提出3.民営化の影(1)大規模な人員削減2000年?2001年の2年間でPetroChinaは不採算部門の閉鎖や部署の統合による人員整理を行い,職員数を設立当初の48万人から5.23万人削減し約43万人とした。(CNPC非上場部門も約150万人のうち25万人削減し125万人となった。)・不採算部門閉鎖コスト(2000年):796百万USドル。(2)早期退職を奨励不採算部門や部署の統合により生じた余剰人員の削減は非管理職員の退職年齢の引き下げや早期退職の実施により行われている。CNPCの早期退職制度は残りの勤務年数に一定の額(役職により異なる)を乗じた金額を事前に支給する制度。・人員削減コスト2000年(3.84万人):385百万USドル表7 退職年齢(cid:0)従来の退職年齢(cid:0)CNPC(cid:0)Sinopec(cid:0)男(60歳)(cid:0)女(55歳)(cid:0)55(cid:0)5050(cid:0)45・人員削減コスト2001年(1.39万人):125百万USドル(3)大慶油田で大規模な抗議運動発生2002年3月1日,CNPCの保有する国内最大の油田である大慶油田(黒龍江省)において早期退職に追い込まれた職員約3千人が職場復帰を求めて抗議運動を起こした。数日後には職員の一部も待遇改善を求めて抗議運動に加わり,一時その数は5万人に膨れ上がった。3月末現株式保有数(cid:0)(H株)(cid:0)158,241,758,000(cid:0)(cid:0)17,582,418,000(cid:0)175,824,176,000株式全体に占(cid:0)める比率(%)(cid:0)90(cid:0)(cid:0)10(cid:0)100府(CNPC本体)(cid:0)(cid:0)政保有(cid:0)外国投資家保有(cid:0)計(cid:0)出所:Petro China2000年年報(cid:0)Sachs(ゴールドマンサックス),経営改革にはMackinsey&Co(マッキンゼー)並びにDeutsche Bank(ドイツ銀行),企業の買収,合併はJP Morgan(モルガン)を雇った。外部アドバイザーを雇った理由は,優れたビジネスモデルを導入すること・組織を客観的に評価・分析してもらうことの他に,内部の抵抗勢力を排除する狙いがあったと思われる。従業員約150万人を抱え,600億USドルの資産を有する巨大企業のCNPCにとって,リストラクチャリングは決して簡単なものではなかった。特にコア・ノンコア事業の仕分けや職員のレイオフについては,「揺り籠から棺桶の手配まで面倒を見てくれる」という“共同体意識”の強い職員からの反発は相当強いものであったと思われる。(4)CNPCのリストラクチャリング・上場準備作業WGは外部アドバイザーのアドバイスを受け,CNPC本部及び傘下の53企業を対象にリストラクチャリング及び上場準備作業を進めた。① 資産(油ガス田埋蔵量,不動産)を評価② 業務をコア,ノンコアに分割。コア業務を石油探鉱開発,精製,販売,パイプライン輸送及び上述に関連した研究機関と定めた。③ コア業務に係る資産(486億USドル),負債(228億USドル),人員(48万人)を上場会社PetroChinaに移管→PetroChina設立④ 過去3年及び1999年1?9月の連結決算を作成→米国・香港の会計基準に適合⑤ PetroChinaの今後5年の発展戦略,目標を策定⑥ 株式発行計画作成⑦ 政府関連部門との調整(探鉱権,輸出入権表6 Petro China株式比率(cid:0)などのPetroChinaへの引継ぎ)―27―石油/天然ガス レビュー ’02・5ンも抗議運動は続いている。しかしPetroChinaは2002年にも従業員4,500人を削減,41.8万人とすると発表,2003?2005年も引き続き人員削減を継続する計画である。労働者の抗議運動は大慶油田以外でも起きている。2001年に入り,労働者による抗議運動は大規模化・深刻化している。国有企業経営者の人事は政策の後押しで若返りが進んでいるが,高齢者に早期退職を強制した30代,40代の国有企業経営者が殺されるという事件も起きている。しかし,CNPC(PetroChina)は生き残るため,今後も赤字・不採算部門の切り捨てと大量の失業者を出しながらグローバル化への道を進んでいくだろう。それはCNPCだけが行うことではない。中国社会全体が程度の差こそあれ,日本よりもドラスティックに「社会の痛みを伴う改革」を実行している。交渉を行ってきたが,加盟交渉に平行するように,国有企業改革に関しても政府関連部門及び専門家が研究を行ってきた。石油産業の改革については,1993年に国務院直属のシンクタンクである発展研究センターが①総公司の持株会社化,②上下流一体化の石油企業グループ構想などについて政府に提案を行っている。(2)中国共産党上層部は朱鎔基首相に国有企業改革の全権を委任このような提案を受け,1997年9月,中国共産党第15期中央委員会第1回全体会議において,江沢民総書記が組織や人員の膨張,官僚主義の弊害などを訴え,「国務院(政府)機構改革」を提案し,その中で政府と国有企業の機能を分離し,経営権を企業に渡すことを示した。そして中国共産党は国務院朱鎔基首相に具体的な改革の遂行を指示した。参考:NOC民営化・海外株式上場の目的とその背景(3)朱鎔基首相のリーダーシップ(1)NOC民営化は国有企業改革のパイロットケース1999年,中国政府は国有企業改革(企業構造改革?民営化・組織の国際標準化により,外国企業に対し競争力のある産業を育成する)のパイロットケースとして,二大国有石油企業(NOC)である中国石油天然気集団公司(CNPC),中国石油化工集団公司(SINOPEC)に「現代的な企業制度を有する中国版石油メジャー」を目指し民営化,海外株式上場を行うよう指示した。政府が国有企業改革を推進する目的は,外資に対抗し得る産業を育成することにある。国有企業は政府に社会保障を押し付けられ余剰人員を養う一方で,厚い非関税障壁に守られ,非効率な生産・経営を行ってきた。しかし中国は2001年11月にWTOに加盟,今後はGDPの三分の一を担う私営企業に加え外国企業との市場競争にさらされる。中国政府は非関税障壁が段階的に撤廃されているうちに国有基幹産業に競争力を付けさせておくために,国有企業の民営化を決断した。中国は1990年代初頭からWTO加盟に向けて朱鎔基首相は上海市長や経済担当副首相として企業改革に辣腕をふるってきた人物である。首相就任後,国有企業改革(「大部分の赤字大中型国有企業を3年以内に赤字から脱却させる」)を第9次5カ年計画(1996?2000年)期間中に達成するという公約を掲げた。朱鎔基首相は自らリーダーシップを発揮し,国有企業のうち,長期に亘り赤字を続け,再建の見込みのない企業については「閉鎖・合併」を進める一方,行政と企業の分離,監督・管理制度の強化,企業指導グループ体制(経営責任の明確化)の推進など大胆な改革を推し進めた。また,政府首脳部は“国有企業の海外上場”による改革を試みることにした。上場により,株主(市場)によるモニタリングや外部の監査法人による監査などを通じ,不透明さが残る中国式の経営システムを打破することを狙った。NOC3社が海外上場のパイロットケースとして選ばれた大きな理由は,その企業の特殊性と規模にあると思われる。石油産業は国が資産を保有する寡占産業であり,価格の調整など政策的にコントロールしやすい分野であった。3社の利益額は1999年当時,全国有企業の4分の石油/天然ガス レビュー ’02・5―28―黷閧゚る大きなものであり,3社の企業改革の成功は朱鎔基政権の公約達成につながる。また朱鎔基首相にとり,知見のある産業(朱鎔基首相は石油産業出身者)であったことも理由の一つと思われる。(4)政府の支援政府はNOCに上場を指示する一方,積極的な支援を行った。CNPCについては,1999年5月にCNPC馬富才総経理が国務院・呉邦国副首相に上場作業について報告をおこなった際,副首相は上場に関する基本計画を承認し,国家証券取引委員会副主任兼発行部主任及び中国建設銀行行長立会いのもと,以下の指示を行った(表8参照)。国務院の指示があった2ヶ月後(7月)には,国務院及び中国証券監督管理委員会がCNPCの上場を承認している。行政手続きの煩瑣な中国において異例の早さである。また,政府はCNPC,Sinopec以外(地方政府など)の企業が経営する非合法または非効率な小規模製油所の閉鎖を行う一方,卸売り・小売業務をCNPC・Sinopecの2社に特化するなど両社を保護し,市場環境を整えている。この他,政府は1999年より社会保険を企業から地方政府の管理に移した。これにより国有企業は社会保障事業を切り離し,早期退職などによる余剰人員の削減を実施できるようになった。経済力が異なるため地方により金額は異なるが,地方政府は世帯収入の下限を設定し,そ―29―石油/天然ガス レビュー ’02・5表8 政府のCNPC民営化・株式上場に関する指示(1999年5月現在)(cid:0)(cid:0)内 容(cid:0)PetroChinaが発起し,中国建設銀行と石化企業5社の債務400億元(48.4億USドル)の株式転換を行う。(cid:0)PetroChina株式(資本金)の5%を「中国石油労働者基金」として積立て,CNPC154万人の職員に用いる。特に非上場公司(PetroChinaではなく,CNPCグループに所属する)職員104万人及び退職者37.9万人への給付に用いる。(cid:0)PetroChina調達資金はCNPC全体の発展のために用いる。(cid:0)企業の納税額は従来通りとする。(cid:0)上場の時期は1999年10月または年末の適当な時期とする。(cid:0)株式(資本金)の5%により非上場部門職員104万人の今後の問題を解決する。(cid:0)項 目(cid:0)債務の株式転換(cid:0)職給付金積立(cid:0)達資金(cid:0)(cid:0)退(cid:0)(cid:0)(cid:0)調納税(cid:0)上場時期(cid:0)雇用問題(cid:0)出所:CNPC年鑑2000に基づき作成(cid:0)表9 政府のCNPC民営化に関する主な支援策(cid:0)内 容(cid:0)政府は石油産業支援策を実行。石油製品の指標価格制度導入,石油製品(ガソリン,軽油)の輸入禁止,密輸取締り強化,非合法な製油所の取締り(全国3,000カ所以上)(cid:0)国務院はCNPCに株式上場について検討するよう指示(cid:0)国務院はCNPCの株式上場基本計画を承認(cid:0)中国証券監督管理委員会は国有石油企業の上場を承認。(cid:0)国務院は2000年7月を目途に石油製品市場の再編に着手。流通経路を簡素化するとともに市場管理を強化することを目的に,卸売りから小売(SSを含む)をCNPC,SINOPECの2社に特化(cid:0)国家経済貿易委員会はPetro Chinaの海外上場を承認(cid:0)時 期(cid:0)1998年下半期(cid:0)998年7月(cid:0)1999年5月(cid:0)1999年7月(cid:0)1999年8月(cid:0)(cid:0)(cid:0)1999年12月(cid:0)(cid:0)(cid:0)1出所:CNPC年鑑2000及び新聞情報に基づき作成(cid:0)}7 石油産業再編・民営化の流れの額に満たない世帯には差額を補填する。北京市を例に取ると500元(60USドル)/月以下の世帯には共産党最下部組織の「居民委員会」(日本の町内会に相当)から差額が支給される。ちなみに現在北京市の30代ホワイトカラーの月収は約1,500?1,800元/月(購買力平価1元=約100円)である。参考資料:「中国国有石油企業重組」石油工業出版社1997年「中国石油天然気集団公司年鑑2000」石油工業出版社2001年PetroChina Annual Report2000 PetroChina 2001 Interim ReportCNOOC Ltd. 2001 Interim Report石油/天然ガス レビュー ’02・5―30―
地域1 アジア
国1 中国
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 アジア,中国
2002/05/30 [ 2002年05月号 ] 竹原 美佳
Global Disclaimer(免責事項)

このwebサイトに掲載されている情報は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

※Copyright (C) Japan Oil, Gas and Metals National Corporation All Rights Reserved.

本レポートはPDFファイルでのご提供となります。

上記リンクより閲覧・ダウンロードができます。

アンケートにご協力ください
1.このレポートをどのような目的でご覧になりましたか?
2.このレポートは参考になりましたか?
3.ご意見・ご感想をお書きください。 (200文字程度)
下記にご同意ください
{{ message }}
  • {{ error.name }} {{ error.value }}
ご質問などはこちらから

アンケートの送信

送信しますか?
送信しています。
送信完了しました。
送信できませんでした、入力したデータを確認の上再度お試しください。