ページ番号1006022 更新日 平成30年2月16日

石油業界の M&A は成功へのパスポートか

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レポートID 1006022
作成日 2002-09-30 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 企業
著者
著者直接入力 企画調査部
年度 2002
Vol 35
No 5
ページ数
抽出データ 石油業界のM&Aは成功へのパスポートか企画調査部*上流業界のM&Aは,歴史的なM&AであるExxon/MobilやBP Amoco/ArcoのM&Aが発表された1998年をピークに今日まで高水準で推移している。2001年は前年比約2割減ではあるものの,50百万ドル以上の主要取引の総計が約640億ドル,上流全体では800億ドル以上にのぼり,5年前の2倍の水準となっている。このように活発なM&Aは,何を意味するのか? これを,企業活動の利益還元先たる株主/投資家の側に立ってみるとどういうことが言えるだろうか。株主/投資家=株式市場は石油業界のM&Aを評価したのか。評価したとすれば,何を評価したのだろうか。M&A企業の株価は,買収側も,被買収側もM&Aを経てほとんどが上昇した。買収のターゲットとされているという噂だけで買収のプレミアムを期待して株価は上昇した。他方,M&Aを志向しない企業の株価は,油価上昇にも関わらず小幅に止まったり,低位に推移したままで,アナリストらによって常にM&A企業の株価と対比された。株価は本来の企業価値を表すものである。M&Aにおける買収のプレミアムは,算出された企業価値と時価総額との差であり,上記のようなM&Aに絡んだ企業の株価の上昇は,株式市場がこれらの企業をM&Aゆえに評価したことの顕れである。株価が示す企業価値について,信頼性がどの程度あるのか,疑問をもつ読者もいるかもしれないが,現在の欧米株式市場における株価は,過去のものとは比較にならないほど,企業の実体価値に近づいていると考えられている。企業は株主の要請やIR(Investor Relations:自社株の投資価値を訴える企業の情報開示活動)戦略により,広範かつ詳細な経営・財務情報等を市場に提供するようになった。アナリスト・金融機関等の専門家は,これらを緻密に分析・比較し,批判を重ねている。現在の株価はこうして形成されており,株主の投資に対する真剣な態度が反映されているのである(注)。M&A企業の多くは,企業規模を拡大し,財務基盤を強化し,ポートフォリオを向上させた。企業規模を拡大し,資本や事業機会のアクセスを向上させた企業は,カスピ海やメキシコ湾大水深域など世界の有望探鉱・開発地域でメガプロジェクトを推進し,長期的な成長を確保している。重複地域の操業コスト削減や非中核資産の売却を行った企業は,収益性を向上させている。上流事業は今や油・ガス価の変動に大きく収益を左右される不安定な業種から,長期の成長と高収益を提供する魅力的な業種へ生まれ変わった。石油業界の歴史的なM&Aは,このような企業の動きを上流業界全体で加速させた。株式市場はM&A企業のこうした成長を可能にする積極的な経営戦略を評価したのだ。多くの石油企業は米国の株式市場に上場しており,激しい産業間,企業間競争の中で株主の要請に応えなければならない。このような競争の中で,企業はより大きく株主価値を向上させることを求められた。大規模なM&Aはそのための有効な手法,つまり,株式市場の要請に応える成功へのパスポートであったと言うことができよう。石油業界に詳しい投資銀行JPMorganは,M&Aを通じた業界の大規模な合理化を評価し*本稿は企画調査部 池ヶ谷清貴(E-mail:ikegay-k @jnoc.go.jp),佐々木育子(E-mail:sasaki-i@jnoc.go.jp),が担当した。―13―石油/天然ガス レビュー ’02・9ス上で,2002年の上流企業活動は活発に行われ,相当量のフリーキャッシュフローを生むと予測している。そして,今後のM&Aは,埋蔵量・生産量の成長目標達成や,資産ポートフォリオ改善を目的とした取引が中心になると述べている。1.株式市場はM&Aを評価したか(1)株式市場の圧力米国の株式市場は機関投資家と年金基金が全体の約7割を保有するようになり(図1),過去10年で市場規模が急速に拡大し,時価総額は1990?2000年で176兆円と5倍に膨れ上がった。また,米国機関投資家は,米国石油企業の概ね6?7割の株式を占有している。こうした投資家は,膨大な株式を短期的に売買して運用実績を上げるのではなく,株主権を行使して利益を増大させるような経営改善提案を行ったり,長期安定志向型の優良株に投資を傾斜するようになってきた。機関投資家は株主権行使の義務を法的に負っており,特にCalPERS (カリフォルニア州公務員退職者年金基金)等の有力な公的年金基金は投資先企業との利害関係がないこともあり,経営者に対する発言を強めている。収益性の向上や長期的な成長の確保といった株図1 米国株式市場における機関投資家と年金基金の割合出所:FRB資料より作成,数値は時価総額(除,優先株)注)米国では,2001年12月のEnron倒産を契機に2002年8月現在まで,株価急落や一部企業の不正会計が問題となっている。株価引き上げのために行われたEnronの損失隠しやWorld Comの利益水増しなどは,株主や投資家に対する背任行為であり,株価の信頼性を損ねた。しかし,米国政府及び米証券取引委員会(SEC)の対応は早く,企業の不正行為に対する取締を強化する企業改革法が2002年7月に成立,SECも違法性のある企業を対象に調査を進めている。また,企業自ら会計の透明性を高めるなど開示情報の不信感を払拭する対応に前向きに取組んでいる。これにより,企業会計問題は沈静化し,株価の信頼性はさらに向上するものと見られる。石油/天然ガス レビュー ’02・9―14―蛯フ要請は,このような株主構成と株主活動の変化を背景として高まっている。石油企業に対する株主の圧力も非常に強くなっていると理解される。(2)M&Aと株価大半の企業がM&Aを実施1998年のBPとAmocoの合併に始まる石油業界のメガマージャー(巨大企業同士の合併・買収)以降,ほとんどの企業がM&Aを行ってきた。BP Amoco誕生以前と現在の上位10社を比較すると(表1),1998年の上位10社のうち4社はメガマージャーにより吸収合併され,一方,メジャー以下の企業が,複数の企業買収や合併を実施して上位にランクインしている。M&A企業の株価こうしたM&Aを市場は評価したのだろうか。M&A発表後の石油企業の株価(注)は,多くの場合,これを評価して上昇している。株主価値をあらわすTSR*(Total ShareholderReturn=株価増減+配当)で比較すると,企業がM&Aを発表した年のTSRは他社と比べ高い割合を示しており,株価が上昇して株主価値が向上していることがわかる(表2)。また,各社のM&A発表前年のTSRが低いこと,メガマージャーを志向しなかったRD/ShellのTSRは過去4年間最低であることも,M&Aと株価の因果関係を示している。M&Aを行っていない企業の株価は同業種の中でも割安で,市場の評価が低かった。例えばTexaco経営陣はChevronとの合併(2001年ChevronTexaco誕生)に至った理由の一つと(cid:0)1(cid:0)2(cid:0)3(cid:0)4(cid:0)5(cid:0)6(cid:0)7(cid:0)8(cid:0)9(cid:0)10表1 石油企業 時価総額上位10社(cid:0)2002年8月12日現在(cid:0)(cid:0)1998年8月11日現在(cid:0)(cid:0)2.442(cid:0)ExxonMobil(cid:0)1,470(cid:0)RD/Shell(cid:0)1.788(cid:0)BP(cid:0)1,080(cid:0)Exxon(cid:0)1.617(cid:0)RD/Shell(cid:0)740(cid:0)BP(cid:0)Mobil(cid:0)550(cid:0)TotalFinaElf(cid:0)969(cid:0)796(cid:0)ChevronTexaco(cid:0)480(cid:0)Chevron(cid:0)590(cid:0)ENI(cid:0)420(cid:0)ENI(cid:0)Amoco(cid:0)400(cid:0)ConocoPhillips 344(cid:0)153(cid:0)RepsolYPF(cid:0)300(cid:0)Elf(cid:0)136(cid:0)EnCana(cid:0)300(cid:0)Texaco(cid:0)Total(cid:0)240(cid:0)Occidental103(cid:0)時価総額合(cid:0)5,9808,938出所:JP Morgan表2 大手石油企業のTotal Shareholder Return(%)(cid:0)2002年(cid:0)9.3%(cid:0)Exxon(Mobil)(cid:0)9.0%(cid:0)BP(cid:0)2.4%(cid:0)Royal Dutch(cid:0)2.5%(cid:0)Shell T&T(cid:0)9.3%(cid:0)Total(FinaElf)(cid:0)7.0%(cid:0)Chevron(Texaco)(cid:0)6.0%(cid:0)ENI(cid:0)6.5%(cid:0)7社平均(cid:0)7.0%(cid:0)DJIA(cid:0)2.9%(cid:0)S&P(cid:0)14.9%(cid:0)油価(WTIスポット)ガス価(期近物)(cid:0)62.8%(cid:0)*TSRが高いのは、1998年はExxon/Mobil,BP/Amoco,1999年はBp Amoco/Arco,TotalFina/Elf,2000年1999年(cid:0)12.5%(cid:0)43.6%(cid:0)29.8%(cid:0)35.8%(cid:0)41.2%(cid:0)7.1%(cid:0)?16.3%(cid:0)22.0%(cid:0)25.2%(cid:0)16.1%(cid:0)112.4%(cid:0)19.5%(cid:0)2000年(cid:0)10.1%(cid:0)?17.2%(cid:0)1.8%(cid:0)3.3%(cid:0)6.3%(cid:0)0.5%(cid:0)18.9%(cid:0)3.4%(cid:0)?6.2%(cid:0)?10.1%(cid:0)4.7%(cid:0)319.5%(cid:0)1998年(cid:0)22.2%(cid:0)9.6%(cid:0)?8.7%(cid:0)?12.0%(cid:0)?8.8%(cid:0)11.2%(cid:0)21.5%(cid:0)5.0%(cid:0)16.1%(cid:0)26.7%(cid:0)?31.7%(cid:0)?14.1%(cid:0)2001年(cid:0)?7.5%(cid:0)?0.2%(cid:0)?13.5%(cid:0)?17.3%(cid:0)?1.7%(cid:0)9.3%(cid:0)?0.2%(cid:0)?4.4%(cid:0)?7.1%(cid:0)?21.0%(cid:0)?26.0%(cid:0)?73.9%(cid:0)はENI/LasmoでいずれもM&A発表年(cid:0)出所:各種資料より作成(cid:0)(注)M&A直前直後の株価比較は,噂先行で折込済みであったり,その時点での市場の状況にも左右されるため,M&Aによる株式市場の評価を正確に反映しているとは言えない。このため,年間を通じた株価変化,ないしは,TSRで判断することがより適切である。表2のTSRは各年末の株価から割り出したものであり,年間の株価増減率とは異なる。―15―石油/天然ガス レビュー ’02・9蛹^M&Aを含む競争力強化の経営戦略へ転換した。そしてこの戦略に沿った買収を直ちに実施し,2001年上半期にはEnterpriseを含む100億ドル相当の買収を行った。株式市場は,Enterpirse買収を直ぐには評価しなかったものの,翌月の2002年5月には,同社株価は2年ぶりにExxonMobil,BPと同水準に回復した。株式市場が,RD/Shellのこうした買収戦略への転換を評価したことを示している。2.株式市場は石油業界のM&Aの何を評価したのかそれでは,なぜM&A企業の株価は上昇したのか。株式市場はM&A企業の何を評価したのだろうか。株主の企業に対する要請は,より大きな株主価値を実現することである。石油企業は①企業規模拡大,②財務基盤の強化,③ポートフォリオの向上を目的としたM&Aで収益性と成長性を大きく改善させて,これに応えた(表4)。M&Aの最大の利点は,企業の株主価値を向上させる収益性と成長性の両面においてシナジー効果を生むことである。複数の企業を統合し,様々な要素を巧く組み合わせることにより,企業が各々単独で実現できる成長よりも,さらに大きな成長,さらに高い収益性を獲得することが可能になる。実際,大型M&A企業各して,企業の将来価値を示す2つの株式指標PER(Price Earnings Ratio=株価/収益),及びPCFR(Price Cash Flow Ratio株価キャッシュフロー倍率=株価/一株あたりのキャッシュフロー)が競合他社に比べ低かったことから,企業経営に対する株主の支持が得られていないと判断されたことを挙げている(表3)。表3 TexacoのPER,及びPCFR見通し(cid:0)PER(cid:0)12.4(cid:0)19.2(cid:0)15.2PCFR(cid:0)6.8(cid:0)12.3(cid:0)9.9ExxonMobil(cid:0)BP*2000年10月13日現在,税引き後利益は見通し(cid:0)出所:Chevron Texacoホームページ(cid:0)投資アナリストたちは,過去4年間一貫して,RD/Shellが大型合併に乗り出さないことを酷評し,WoodsideやBarette Resourcesなどの企業買収失敗をあげつらった。RD/Shellの株価は,ExxonMobil,BP Amocoのメガマージャーを境に低迷し,一方でM&Aを発表したBPとExxonの株価は,歴史的な低油価で石油企業の株価が全面的に下降局面にあった中で上昇に転じ,以来高いパフォーマンスを示している(図2)。RD/Shellの株価は2001年9月末に増産率引き下げ(5%→3%)を発表して以降,同年末までに25%下落した。同社は株価急落を受けて,exaco(cid:0)(cid:0)T図2 スーパーメジャーの株価指数推移XOMBPRD石油/天然ガス レビュー ’02・9―16―adarko/Berkley(cid:0)Kerr-McGee/HS(cid:0)(cid:0)Conoco/GulfCanada(cid:0)Amerada H/Triton(cid:0)(cid:0)Devon/Mitchell(cid:0)Burlington/CanadianH(cid:0)(cid:0)(cid:0)Ahillips/Tosco(cid:0)(cid:0)P表4 石油企業M&Aの主たる目的(cid:0)2000年(cid:0)Phillips/ArcoAlaska(cid:0)ChevronTexaco(cid:0)(cid:0)Devon/SantaFeSynder(cid:0)2001年(cid:0)Conoco/GulfCanada(cid:0)Phillips/Conoco(cid:0)(cid:0)nadarko/UPR(cid:0)(cid:0)Ahell/Fletcher(cid:0)(cid:0)(cid:0)(cid:0)S1999年(cid:0)BPAmoco/Arco(cid:0)SantaFe/Synder(cid:0)evon/Pennzoil(cid:0)(cid:0)(cid:0)Durlington/Poco(cid:0)(cid:0)B1998年(cid:0)BP/Amoco(cid:0)Exxon/Mobil(cid:0)(cid:0)Arco/UTP(cid:0)KerrMcGee/Oryx(cid:0)PR/Norcen(cid:0)(cid:0)(cid:0)(cid:0)UDevon/Northstar企業規模(cid:0)財務基盤(cid:0)ポ(cid:7891)トフ(cid:7932)リ(cid:7932)(cid:0)出所:JP Morgan社のシナジーは,当初見込みを大きく上回っており,M&Aによって予想以上に有機的な成長を実現していることがわかる(図3?5)。株式市場はM&Aによって生み出される収益性のシナジー,成長性のシナジーを評価したと言えるのではないか。(1)収益性のシナジーM&Aによるシナジー効果で収益性はどのように強化されたのだろうか。スーパーメジャー5社のROCE(使用総資本利益率)は,1996-98年平均が12%であり,1999-2001年平均が16%と比べ明らかに向上している(表5)。現在,これら5社は業界最高水準のROCE達成を経営目標としており,厳しい投資基準を設けて従来以上に明確にROCE向上にフォーカスした経営を行っている。これにより,各社は油ガス価に左右されずに一定水準のROCEを達成している。これは株価にも反映されており,2001年は油価が△26%,ガス価が△74%下落したにもかかわらず,ROCEは5社平均で18%を達成し,米国株式市場が暴落(Dow Jones12業種平均△7.1%,S&P500指数△21%,いずれも前年比,表2を参照)する中で上位7社のTSRは平均△4.4%に止まった。株式市場の評価は,石油業界がもはや油・ガス価変動に大きく左右される不安定な収益構造ではないことを証明していると言えよう。収益性の向上には,M&A後のコスト削減(重複地域の操業コスト,人員整理などの管理コスト,非中核資産の売却など)が大きく寄与している。既に1998年には,大手企業は自社内コスト削減が終わりに近づき,収益性の低い米表5 スーパーメジャー5社のROCE推移(cid:0)1997年(cid:0)18%(cid:0)12%(cid:0)16%(cid:0)10%(cid:0)15%(cid:0)14%(cid:0)1998年(cid:0)13%(cid:0)8%(cid:0)10%(cid:0)9%(cid:0)9%(cid:0)10%(cid:0)1999年(cid:0)11%(cid:0)11%(cid:0)13%(cid:0)10%(cid:0)11%(cid:0)11%(cid:0)2000年(cid:0)22%(cid:0)22%(cid:0)16%(cid:0)19%(cid:0)23%(cid:0)20%(cid:0)2001年(cid:0)19%(cid:0)21%(cid:0)15%(cid:0)17%(cid:0)16%(cid:0)18%(cid:0)96?98平均(cid:0)99?01平均(cid:0)15%(cid:0)11%(cid:0)14%(cid:0)10%(cid:0)13%(cid:0)12%(cid:0)17%(cid:0)18%(cid:0)15%(cid:0)15%(cid:0)17%(cid:0)16%(cid:0)―17―石油/天然ガス レビュー ’02・91996年(cid:0)15%(cid:0)13%(cid:0)15%(cid:0)10%(cid:0)14%(cid:0)13%(cid:0)RD/Shell(cid:0)BP(cid:0)TotalFinaElf(cid:0)ChevronTexaco(cid:0)5社平均(cid:0)出所:年報他各種資料より作成(cid:0)xxonMobil(cid:0)(cid:0)E}3 BP/Amocoのシナジー図4 Total Fina/Elfのシナジー図5 Exxon/Mobilのシナジー図6 RD/Shellのコスト削減国陸上の上流事業や欧米下流事業等で他社とのアライアンス(提携)によるコスト削減策に進んでいた。M&Aはさらに大規模なコスト削減を可能にした。メガマージャーを行わなかったRD/Shellは,自社内コスト削減により,ExxonMobilのシナジーと同規模の50億ドルのコスト削減を行ったが(図6),株式市場は自社内に限ったコスト削減を評価しなかった(上述の通り)。また,メガマージャーをはじめとする石油企業のM&Aは,収益性の高い上流事業を強化し,収益性の低い下流事業等を合理化することを目的としている。スーパーメジャー3社の事業別石油/天然ガス レビュー ’02・9―18―}7 スーパーメジャー3社の部門別利益 1991-2000年平均 (cid:0)出所:年報等各種資料より作成収益は,2000年で70?72%,過去10年平均でも56?72%と大部分を上流事業が占めている(図7)。各社ともM&A後の投資を上流に集中する経営戦略を発表しており,このような経営判断も株主が評価している一面である。(2)成長性のシナジーM&Aによる成長性のシナジー効果は,特に上流事業において大きく,①企業規模拡大・財務基盤強化による事業機会の拡大,②ポートフォリオの向上,③マネージメントや技術のシナジーが期待されている。企業規模の拡大と財務基盤の強化は,巨額の資本を必要とするメガプロジェクトへの参画を可能にした。世界的な上流案件は,カスピ海,西アフリカやメキシコ湾の大水深域など巨額のフロンティア開発や,LNG,長距離ガスパイプラインなど大規模なインフラプロジェクトが主流である。メガマージャーによって誕生したスーパーメジャーは,巨額の複数の投資案件を同時並行で進めることができる財務基盤を得た。また,ポートフォリオの向上は,地域,石油/ガスの資産バランスを一気に向上させた。BPのAmoco/Arco吸収・合併は,BPのガス資表6 2001年生産量・埋蔵量分布(単位:%)(cid:0)ExxonM(cid:0)RD/Shell(cid:0)BP(cid:0)ChevrTex(cid:0)TFE(cid:0)欧米 54%(cid:0)(cid:0)他  46%(cid:0)(cid:0)欧米 36%(cid:0)(cid:0)他  64%欧米 63%(cid:0)(cid:0)他  37%(cid:0)(cid:0)欧米 53%(cid:0)(cid:0)他  47%欧米 52%(cid:0)(cid:0)他  48%(cid:0)(cid:0)欧米 30%(cid:0)(cid:0)他  70%欧米 37%(cid:0)(cid:0)他  63%(cid:0)欧米 22%(cid:0)(cid:0)他  78%―19―石油/天然ガス レビュー ’02・9 産 量(cid:0)欧米 72%(cid:0)(cid:0)他  28%(cid:0)(cid:0)欧米 63%(cid:0)(cid:0)(cid:0)他  37%出所:年報他各種資料より作成(cid:0) 蔵 量(cid:0)(cid:0)生(cid:0)埋Y,欧米外資産を格段に強化させた。M&A前後でガス生産比率は29%から40%へ,欧米外生産比率は15%から29%へ増大した(2000/1997年比)。スーパーメジャーでも石油・ガスの生産は欧米中心(表6)であり,これら地域の既存生産油ガス田は成熟化が著しい。M&Aによって埋蔵量の地域バランスを向上させた各社は,欧米外地域の有望案件であるカスピ海や西アフリカ大水深の開発プロジェクト,中東やアジアのガスプロジェクトなどによって,今後の成長を達成すると宣言している。マネージメントや技術のシナジー効果は,直接的に数値で表すことはできないが,M&A企業の経営手腕や,技術,人的資源の強化は上記に示されたシナジー,及び将来のシナジーに具体的に反映されるものと考えられる。3.まとめ株式市場は,企業に対し株主価値向上の圧力を増大させている。石油企業はM&Aによって収益性と成長性を向上させてこれに応えた。市場の要請に応えたM&Aは1件,2件ではない。この4年間のM&Aは,業界全体に影響を与えるような大型のM&Aが次々と起こり,業界地図を一変させた歴史的なものである。欧米の石油業界では,これにより成長を可能にする堅固な体制が整えられつつある。株式市場は石油業界のこうしたM&Aを評価した。つまり,石油業界のM&Aは市場の要請に応えられたと言えるであろう。現在では,株価のパフォーマンスのみならず,売上規模,収益性,コーポレートガバナンス等に関わる世界的な企業ランキングでも,M&Aを経た石油企業が上位にランクインしている。例えば,BPはコーポレートガバナンスランキングでNo.1であり(Standerd &Poorsのガバナンススコア最高点,FT/Pricewater houseのガバナンスランキング1位:2002年),Anadarkoは,Fortune誌の成長の速い企業の上位にランクイン,2002年はApache,Murphy等の上流企業が数多くランクインしている等である。このように,石油業界は他業種に対しても競争力を取り戻している。今後も石油企業は,こうした厳しい株式市場の圧力の下,株主価値向上のための不断の経営努力を続けていかなければならない。M&Aはこの経営目標達成のための常套手段であり続けるだろう。石油/天然ガス レビュー ’02・9―20―
地域1 グローバル
国1
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2002/09/30 [ 2002年09月号 ] 企画調査部
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