ページ番号1006023 更新日 平成30年3月5日

ブティック LNG がアジア太平洋のマージナルガス田を救うか? ―超小型 LNG プロジェクトの豪州における現状―

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レポートID 1006023
作成日 2002-09-30 01:00:00 +0900
更新日 2018-03-05 19:32:42 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 天然ガス・LNG探鉱開発
著者
著者直接入力 企画調査部
年度 2002
Vol 35
No 5
ページ数
抽出データ ブティックLNGがアジア太平洋のマージナルガス田を救うか?―超小型LNGプロジェクトの豪州における現状―企画調査部*アジア・太平洋地域には既に発見されながら、大市場から地理的に遠く、パイプライン等のインフラが未整備のため未開発のまま放置されている小規模ガス田が数多く存在するが,ブティックLNGと呼ばれる超小型LNGプロジェクトが,今後FPSO(船上LNGプラント)やGTLともに小規模ガス田の開発に役立つ可能性が出てきている。豪州のEnergy World社は、豪州内陸地において年間生産量がわずか数万トンの小規模LNGプラントを従来より操業し,発電プラントに輸送する事業を行っているが,同社はここで培った技術を今後アジアの小規模ガス田開発に役立てること具体的に検討している。果たして、ブティックLNGは何処まで応用可能性のあるビジネスコンセプトなのか、現地調査の結果、現状と今後の可能性について簡単に纏めてみた。1.豪州Energy World社の挑戦広範囲にわたるパイプライン網の敷設や大規模基地の建設が現実的ではないアジアの幾つかの地点において「Boutique LNG」プロジェクト計画が将来のガス供給に一役果たす可能性が出てきた。豪州のエネルギー企業Energy World社(EWC)は,オーストラリア北部準州の小都市アリススプリングスにおいて年間生産量がわずか数万トンの小規模LNGプラントを操業し,ロードタンカーと呼ばれる複数(2台または最大3台)のタンクを接続したローリーによりYulara(エアーズロック,世界最大の一枚岩で有名な観光地)の天然ガス発電所にLNGを輸送する事業を1989年以来行っている。そして同社は,同プラントで培った技術を今後、アジアの小規模ガス田開発に役立てることを検討中である。現在同社は開発した天然ガスを小規模LNGプラントにより液化して近隣の*本稿は、長谷川徹 前企画調査部調査第一課課長代理が担当した。潜在ガス市場に輸送する小規模LNGプロジェクトのコンセプトをインドネシアやフィリピンの離島や需要規模が大きく見込めない場所,さらにはハワイやフィジーといった観光地にも適用する計画を持っている。同社はインドネシアにおいて,旧社名であるEnergy Equityの社名で米El Paso(各50%)とともに南SulawesiのSengkangガス田の権益を保有しているが,ここに小規模LNGプラントを建設し,5千トンほどの小型LNG船によりインドネシア国内やフィリピンに輸出すること(豪州小規模LNGプラント全景)―21―石油/天然ガス レビュー ’02・9v画している。なお同社は,同ガス田において135千KWの独立発電も行っており,電力をインドネシア国営電力PLNに売電するガス&パワー事業も展開中である。上記ガス田の埋蔵量は2P(Proven+Probable)ベースで0.5Tcf程度であるが,国内発電向けに1/3の埋蔵量が割り当てられるため,LNGの生産には残りの埋蔵量が利用される予定である。同社はインドにもガス田を保有しているが,ここでも小規模LNGプロジェクトで培った技術を活用して事業を拡大する計画を持つ。同社によれば,インド政府からパイプラインの設置許可を取得することは非常に煩雑であり,インドのような海岸線の長い地形では小型LNG船で輸送した方が経済効率がより高いということである。(ロードタンカー模型)すでにEWC社は小規模LNGプラント(主として貯蔵施設)および輸送タンカーのコストを25%削減することに成功したということであり,これにより小規模LNGのコンセプトをガス田開発に適用する機会が拡大すると見込んでいる。また,受入施設はモジュール形式で建設することができ,需要の状況に応じて追加でタンクを建設することが可能であり,初期投資を抑制することもできる。これにより,同社の主張によれば年間3万トンの需要があれば充分経済性を持つとのことである。天然ガス供給インフラに関しては,大規模受入基地と高度に張り巡らされたパイプライン網が必要であるという,半ば信仰のようなものをエネルギー会社は信じているかのようだが,同社はこれに異議を唱えているのである。2.小規模LNGプロジェクトの経済性(2?1 小規模vs大規模?)これまでのLNGプラントは,規模を拡大することにより経済性を高めてきた。プラントの大型化は,装置のコストダウンを図り,投資効率を高める上で最も効果的な手段であり,LNGプロジェクトのように巨額な投資を必要とするプロジェクトでは特に有効な手法と考えられてきた。上記の考え方に基づけば,年間生産量がわずか数万トンという小規模LNGプラントに経済性があるのか疑問を感じる向きもあろう。しかし,この点を論じる際には,小規模LNGプラントが何に対して競合しているかに注意する必要がある。はじめに断っておくと,小規模LNGプラントは同じプロジェクトスキームという条件下において大型LNGプラントより経済性が優れるということはない。規模の経済から言って当然のことである。では,なぜ小規模LNGプロジェクトが成立するのか。それは,需要規模が小さい場合にパイプラインに対して経済性を有する場合があるからである。つまり,小規模LNGプロジェクトは,大規模なガス田の発見とLNG船で輸送することを前提とした従来の大型LNGプロジェクトと比較するものではなく,あくまでも天然ガスを輸送するのに最も経済性の高い方法は何かという発想から輸送コストを低減するためのものである。この点で,小規模LNGプロジェクトは,小さな需要地へパイプラインで送るプロジェクトに対して競争力を有する場合にのみ成立するものであり,あくまでもニッチ市場を対象としたものである,ということが言える。(2?2 パイプラインとの比較)LNGのパイプラインに対する競争力は需要石油/天然ガス レビュー ’02・9―22―nとの距離と需要の規模に応じてほぼ決まる。同じ需要量であれば一定の距離に達するまではパイプラインの方が競争力を有するし,需要量が多ければパイプラインの競争力を保つ距離は長くなるという概念である。したがって小規模LNGプロジェクトの経済性にとってパイプラインの敷設コストは重要なパラメーターの一つである。パイプラインの敷設コストについて,欧米のパイプラインでは約100万ドル/kmで,日本では最低でもその倍の約200万ドル/km以上である,という検討結果が一般的になっているようである。オーストラリアのパイプライン建設コストは平均して800ドル/m(80万ドル/km)だということである。我々日本人からすると,土地が有り余る豪州はパイプラインを敷設するのに何も障害がなく,敷設コストは非常に安いという印象をもつが,先住民の土地所有権利等の問題もあり,特段に安い訳ではない模様である。アリススプリングスの小規模LNGプロジェクトの場合,LNGプラントと需要地との距離は約450km(ロードトラックによる輸送距離)である。これを上記にあげた一般的なパイプライン建設を仮定すると,360百万ドル(450km×80万ドル)という計算になる。(ちなみに日本では(450km×200万ドル)で,さらに倍以上の900百万ドルというかなりの額となる。)したがってパイプラインの敷設コストを下回ることができれば,小規模LNGプロジェクトは経済性において優位性を発揮することができるのである。では,小規模LNGプラントのコストはいくらなのか。残念ながら小規模LNGプラントのコストについて具体的なデータを入手できていない。そのため,ここでは建設コストについて報道ベースで知り得た石油資源開発(JAPEX)の勇払LNGプロジェクトを例に小規模LNGプラントのコストについて検討を進めることとする。(2?3JAPEX勇払LNGプロジェクト)JAPEXの勇払LNGプロジェクトは,北海道苫小牧勇払ガス田を利用した本邦初となる天然ガス液化プラントである。JAPEXでは旭川ガスとの間でガス供給を合意しており,平成15年の供給開始に向けて現在プラント建設等の準備をすすめている。顧客である旭川ガスの需要地近くにガスを気化するサテライト基地を建設し,LNGローリーやタンクコンテナという鉄道輸送を用い輸送する,いわゆるサテライト供給と呼ばれるプロジェクトである。勇払LNGのプラント規模は150トン/日で年産5万トンである。これは顧客となる旭川ガス単独の需要から導き出された規模である。将来,顧客を新たに獲得した際にはプラントを増設することも視野に入れている。(→JAPEXでは,LNGプラントに比べてパイプラインは段階的な投資が難しく,初期投資が大きくなる点がデメリットと判断している模様である。)勇払LNGのプラントコストはフルターンキーで40億円前後の模様である(報道では50億円というのも見かけた)。従って年間生産量当たりのコストは8万円/年・トンとなる。なお,プラントの相場はさらに下がっており,現時点では30億円強程度という話もある。これを大型のLNGプラントと比較した場合,最新の年産6?7百万トン規模のプラントコストは20億ドル弱であるので年間生産量ベースで約4万円/年・トン前後になる。したがって小規模LNGプラントの単位当りのコストは大型LNGプラントに比べて約2倍高い水準であるが,規模が小さい割にはそれほど高くなっていない。この理由について,ピークシェービング用小規模LNGプラントは①基本的にインフラ(発電設備等)が必要なく,②液化構造も単純で,③タンクローリーによるピストン輸送のため貯蔵施設も最低限の規模で済むため,と見ている。(2?4 パイプラインに対する経済性)ここで,勇払LNGプロジェクトを例にLNGとパイプラインとの経済性比較を行ってみる。勇払?旭川間は直線距離で200km,実際のパイプライン敷設区間はそれ以上になる。(ただし札幌までは既設のパイプラインがあり,旭川向けには札幌ラインが活用できる。)従って旭―23―石油/天然ガス レビュー ’02・9?ワでのパイプライン建設コストは約400億円(200km×2)以上と試算できる。一方,勇払LNGのプラントコストを約40億円と仮定すると,プラントコスト単体ではパイプラインに比べ大幅に安い。ただしLNGプロジェクトでは,LNGプラントの他に輸送車両と受入側のサテライト基地(再気化器等)への資本費に加え,プラント操業や輸送といった操業費が必要となる。これらプラント以外にかかる資本費や操業費について詳細な資料は持ち合わせていない。しかし,仮にプラント以外の資本費をプラントコストの半分の20億円とし,プロジェクト期間を20年と仮定すると,(400億?60億)/20年=約17億円なので,単純に言うと操業費を毎年17億円以下に抑えればLNG方式の経済性の方が有利になる。このことから,ガス田から需要地までの距離及び需要の規模によっては,小規模LNGプラントがパイプラインに対して充分に競争力を有していることが分かるはずである。ただし,タンクローリーによる輸送はコストに占める人件費の割合が非常に高いとされており,日本における法規制により一般道で200km,高速道で340km以上になるとドライバーを2名の配置が必要になるため,一定の距離を超えると経済性が極端に悪化する。また供給側,受入側のローリーの出荷・受入可能台数の制約から供給量には自ずと限界があり,当然ながら大量ロットには向かない等,サテライト供給には自ずと限界もある。(2?5 小規模LNGプラントの実証性)小規模LNGプラントの技術上の実証性について少し触れておく。豪州ではEnergy World社が操業する小規模LNGプラントが唯一のものである。しかし,同様の小規模LNGプラントは欧米ではピークシェービング用途を中心として30基程度稼動しているとされる。日本でもJAPEXが北海道の勇払ガス田を利用して小規模LNGプラントを立ち上げようとしていることは前述の通りである。従って小規模LNGプラントの技術は確立されており,かつ実証されていると考えて差し支えない。参考までに,現在,大型LNGプラントの液化方式ではエアープロダクツ社(APCI)のプロパン予冷混合冷媒方式,プリコプロセス,窒素サイクルとカスケードの4方式が主流となっており,勇払LNGプラントは,エアープロダクツ社のバックアップを受けた新日鉄がフルターンキーで受注している。アリススプリングスのLNGプラントの技術はこのいずれのものでもなく,窒素等の液化技術から派生したものである。3.アジア太平洋地域の小型ガス田開発への応用可能性(3?1 ガス田開発への活用)小規模LNGプロジェクトがガス田の開発に役立つかという点について論じてみたい。JAPEXの勇払LNGプロジェクトでもアリススプリングスのLNGプロジェクトでも,小規模LNGプラントおよびタンクローリーによるLNGの陸上輸送とサテライト基地によるガス供給を行うというスキームを打ち立てたことで,コストを抑えることができ,事業を実現させることができた。この点で小規模LNGプロジェクトはガス田の開発を促進するのに有効であると言うことができる。(3?2 活用可能となる条件)上記の2つのプロジェクトに共通する特徴は,①ガス田の規模があまり大きくはないが,対象となる需要地までの距離は数百km程度である,②需要規模が小さく且つ一地域に纏まっておらず,近隣に他の引き取り手が存在せず需要密度が非常に薄い,といったことがあげられる。したがって,上記のような特徴を有する地点においては,これまでパイプラインでは経済性の観点から開発が進まなかったガス田においても本技術によりガス田開発を進めることができるようになる可能性があるといえる。一方で,上記の特徴を有しないものは小規模LNGプロジェクトの対象には成り難いと考え石油/天然ガス レビュー ’02・9―24―轤黷驕B具体的には次の通りである。①ガス田の規模は大きいが需要地から遠い仮に単位あたりのLNG生産(プラント)コストが安くても需要地までの距離が千kmを超える程になると輸送コストを含めた総コストで大規模LNGプロジェクトに劣る。②大規模ガス発電所等,需要密度が高い説明するまでもなく,小規模では供給効率が悪い。上記から言えることは,ガス田の規模が小さく,しかも周辺地域に大都市のような高密度な需要地がなく,パイプラインを敷設すると経済性が劣悪となるためにこれまで開発を進めることが出来ずに放置されていたガス田であっても、場合によっては小規模LNGプロジェクトのノウハウを活用することによってガス田の開発に結びつく可能性がある,ということである。(3?3 サテライト供給の有益性)また,小規模LNGプロジェクトがサテライト基地を設置しても成立するものであれば,そこからプラント部分を省いたLNG輸入ターミナルから直接LNGをサテライト基地に輸送する供給方法はより経済性が高まるはずである。受入れた輸入LNGを国内で販売するに際し,パイプラインとサテライト方式によるLNGの貨物輸送とを比較して経済効率の高い輸送手段を選択するのである。これにより少なからずLNGの市場開拓につながる可能性が生じるはずであり,このようにしてガス需要が増加すれば,パイプラインでは獲得できなかった需要を新規に開拓することができ,いっそうガス田開発の促進につながることになる。つまり小規模LNGプロジェクトのスキームは大規模LNGプロジェクトと組み合わせるという応用の可能性があるということである。このLNGサテライト供給方式はパイプラインの敷設コストが高い日本はもちろん,他のアジア諸国などパイプラインインフラが十分でない海外でも活用できる筈である。実際に,JAPEXが東北電力の新潟ターミナルから北陸のガス会社向けに行っているガス供給方式はこれに当てはまるものであり,また,アリススプリングスのLNGプロジェクトを実施するEnergy World社はインドにおいて大規模LNGプロジェクトで輸入されたLNGをパイプラインではなく,サテライト方式でガス供給を行う事業展開を検討中だということである。以上見たように、ブティックLNGはスーパーメジャーのような大型ガス田開発、メガガスプロジェクトを専ら狙っている企業にとっては、余り魅力のあるものではないが、多くの日本企業のようにアジア太平洋において探鉱の結果、中途半端なガス田を当ててしまった場合、これを何とかmanetizeしようとする際に一つの検討オプションになり得る可能性が有ると考えられる。今後更に、関連情報の収集に務めたいと考える。以上―25―石油/天然ガス レビュー ’02・9
地域1 大洋州
国1 オーストラリア
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国・地域 大洋州,オーストラリア
2002/09/30 [ 2002年09月号 ] 企画調査部
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