ページ番号1006024 更新日 平成30年2月16日

サウジアラビアの最近の動向と課題

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レポートID 1006024
作成日 2002-09-30 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 エネルギー一般探鉱開発
著者
著者直接入力 須藤 繁
年度 2002
Vol 35
No 5
ページ数
抽出データ サウジアラビアの最近の動向と課題(財)国際開発センターエネルギー・環境室 主任研究員 須 藤  繁*はじめにサウジアラビアは,君主制国家として,王制の維持・イスラム法の堅持・国内開発の推進を基本方針に,伝統的なコンセンサスを尊重しつつ,総じて安定した国政運営を営んでいる。同国は,現在,慢性化した財政赤字の累積により脆弱化した財政基盤の建て直しを図るべく,1999年より国政を代行しているアブドラ皇太子の主導により,経済改革・民営化の推進や受益者負担の原則に基づく施策を遂行している。保守層からの反発や,改革を先送りしようとする動きもないとはいえないが,大きな流れとしては,人口増・若年層の失業増加・雇用機会創出という社会問題の解決のため,経済構造改革路線を推進している。本論においては,まず,サウジアラビアの最近の動向を押さえるため,経済動向・経済改革の進捗状況及び民営化の現状を概観し,次いで,戦略目標と潜在的課題に関し,今次5カ年計画の戦略目標及び将来的問題を考える上で重要な人口問題・雇用上の問題点を確認し,最後に世界と同国経済における石油の位置と石油供給国としての同国の特異性(ユニークさ)に関し,平素考えているところを,私見として述べてみたい。2002年度国家予算Ⅰ.最近の経済動向1.11.2 経済改革の進捗状況1.3 民営化の状況Ⅱ.戦略目標と潜在的課題2.1 第7次5カ年計画2.2 人口・雇用問題Ⅲ.サウジアラビアと石油3.1 世界にとってサウジアラビア石油の占める位置3.2 サウジアラビア経済にとっての石油の位置3.3 石油供給国としてのサウジアラビアの特異性Ⅰ.最近の経済動向1.12002年度国家予算サウジアラビアの2001年度の国家予算は,歳入は前年度予算を36.9%上回る2,150億SR(サウジ・リヤル)(約573億米ドル),歳出は前年*E-mail:sudo.s@idcj.or.jp度予算を16.2%上回る2,150億SR(約573億米ドル)とする均衡予算であった。しかしながら,実勢では,9月以後の油価の低落・大幅歳出増を受けて,67億ドルの赤字であった。2002年度予算に関しては,歳入1,570億SR(419億ドル),歳出2,020億SR(539億ドル)とする,450億SR(120億ドル)の赤字予算が策定された。1999?2002年度までのサウジアラビアの国家予算は表1,2002年度予算における歳石油/天然ガス レビュー ’02・9―26―oの部門別内訳は表2のとおりである。同国の最近の予算配分では,将来の社会経済発展に不可欠な「教育・職業訓練」や「保健・社会開発」や人口増を見据えた水資源開発に重点的に配分された編成となっている点が特徴である。また,最近の同国の主要経済指標の推移は,表3?5に示すとおりである。2002年度 予算 419 539 △120 1,570 2,020 △450表1 1999?2001年度財政実績および2002年度予算(cid:0) 2000年度 2001年度 1999年度 実績 392 483 △91 1,470 1,810 △340予算 419 493 △74 1,570 1,759 △280実績 661 541 +120 2,475 2,026 +449予算 573 573 0 2,150 2,150 0実績 613 680 △67 2,300 2,550 △250入 歳出 収支 歳入 歳出 収支 歳 億ドル億S R表2 2002年度歳出の内訳(cid:0)歳出額(億SR) 増減額(億SR) 増減率(%) .9% 4.1% 9.2% 12.1% △9.8 △35.7 △11.9 △6.0 1 +10 +9 +8 +7 △11 △25 △128 △1302001年度 533 218 87 58 112 70 1,071 2,1502002年度 543 228 95 65 101 45 943 2,020育・職業訓練 保健・社会開発 地方自治体・水 運輸・通信 インフラ整備 補助金 その他 合計 教表3 サウジアラビアにおける主な経済指標の推移(cid:0)1997年 20.00 6.60 548.4 227.4 107.6 △1.11998年 20.67 6.80 481.2 145.5 112.4 49.21999年 21.33 7.20 535.0 190.1 105.0 △1.52000年 22.01 ― 649.0 295.8 113.5 △58.3口(百万人) 1996年 19.35 6.40 労働人口(百万人) 529.3 GDP(名目,10億リヤル)227.4 輸出額(10億リヤル) 104.0 輸入額(10億リヤル) 経常収支(10億リヤル) △2.5出所:サウジ通貨庁“Annual Report”(2001年版) 1995年 18.80 6.30 478.7 187.4 105.2 19.9 人表4 貿易動向(cid:0)(単位:億SR) 輸  出 輸  入 1995年 1,874 1,0521996年 2,274 1,0411997年 2,274 1,0761998年 1,455 1,1241999年 1,901 1,0502000年 2,958 1,135出所:サウジ通貨庁“Annual Report”(2001年版) ―27―石油/天然ガス レビュー ’02・9\5 国際収支(cid:0)(単位:億SR) 1997年 1998年 1999年 2000年 品貿易収支 商石油輸出 その他輸出 輸  入 サービス・移転収支 収  入 (うち,投資収入) 支  払 経常収支 出所:サウジ通貨庁“Annual Report”(2001年版) 1,281 1,992 277 △988 △1,269 381 (216) △1.650 △11419 1,216 234 △1,031 △912 398 (218) △1,310 △492933 1,678 218 △963 △917 424 (218) △1,341 △151,908 2,701 248 △1,041 △1,325 313 (125) △1,638 △5831.2 経済改革の進捗状況現在,国政を代行しているアブドラ皇太子は,国内インフラ開発という困難な課題の実現に向け,民間資本の導入という戦略目標を掲げている。1998年秋の米国訪問以来,同戦略に基づく交渉が進められ,政府は,電力と通信部門の民営化に取り組む一方で,2000年4月外国投資家に国内の民間投資家と同等の権利を認める新たな投資法も可決した。多額の石油収入にもかかわらず,サウジアラビアが外国投資を必要としていることは明らかである。インフラの再整備・近代化という課題に外国投資家が貢献できるようにするため,法整備・財政上の枠組の確立が求められている。現在問題となっているのは投資法に盛り込まれた外国資本の関与を認めない排他的分野リスト(“Exclusive Activities List of ForeignInvestment”。通称,「ネガティブリスト」)の扱いである。現在,このリストを実効性のある範囲で縮小する努力が進められている。1990年代の経済危機によって,政府幹部は,経済運営の方法を変更して石油部門への依存度を低減し,多額の補助金行政を見直すことに加え,インフラの整備と雇用創出という課題に対処するために,民間投資に基づく経済成長基盤を確立する必要性を認めている。政府は,また民間投資が雇用創出の主要因であるという考えを明確に示している。現在実施中の一連の改革措置は,雇用機会の増大のための条件整備を狙ったものでもある。この点からは,新外国投資法の導入とサウジアラビア総合投資院(SAGIA)の創設が重要であった。新表6 ベガティブ・リスト(cid:0)9.医療器具の卸売,小売,及び代理店 10.ラジオ/テレビサービス 12.通信 13.陸上輸送・空輸 14.国家送電網における送電・配電 15.空輸 16.パイプライン輸送 17.助産婦,看護婦,物理療法,心理療法サービス 18.漁業関連サービス 19.血液銀行,検疫,血清センターの運営 サ(cid:7891)ビス部門 区分 分野・業種 分野・業種 1.石油探査,掘削,生産 2.軍事関連物質,軍服,部品の製造 3.非軍事用爆発物の製造 1.ミニタリー・ケータリング 2.調査とセキュリティー 3.保険 4.メッカ・メディーナの不動産投資 5.巡礼・ウムラーに関連する観光ガイド 6.人材提供・斡旋業 7.不動産斡旋業 8.印刷・出版 区分 製造部門 サ(cid:7891)ビス部門 石油/天然ガス レビュー ’02・9―28―O国投資法の目的は投資手続の簡略化にあり,これによって外国投資家に対しては,従来サウジアラビア国民にしか提供されなかった優遇措置や特別の権利が認められることになった。ネガティブ・リストに関しては,現在,同リストの見直し(分野の縮小)が進められているが,2001年2月に発表されたリストは,具体的には表6に示す業種・分野の開放を禁じている。2002年6月現在における経済改革の進捗状況は,表7に示すとおりである。2001年においては広範な改革措置が実施され,改革プログラムの動向に関する発表が相次いだ。その中で特に重点が置かれたのは外国投資環境の整備で,2月に上記ネガティブリストが発表されたのに続いて,国内経済のさまざまな分野において改革が進められた。1.3 民営化の状況サウジアラビア政府は,現在財政支出削減と国営企業の経営効率化を目指し,まず通信分野から1998年頃から民営化に取り組んで来た。しかしながら,個々の事業主体に民営化を委ねる従来のやり方では必ずしも順調に民営化プロセスが進まないことから,アブドラ皇太子を議長とする最高経済会議(SEC)がリーダーシップをもって民営化を推進する方針が打ち出された。また2001年2月最高経済会議は民営化計画を統括するため,7人の閣僚級メンバーからなる民営化統括委員会を設立し,民営化計画を実行に移している。現在の民営化の主な進捗状況は,表8のとおりである。サウジは,GCC諸国で唯一のWTO未加盟国である。WTO加盟は,石化製品輸出に関して経済効果が期待されるので,海外からの投資と技術導入の促進の観点からも,重要な政策課題と認識されている(今次5ヵ年計画でもその点は明示)。2001年11月カタールで開催された表7 経済改革の進捗状況(cid:0)経済改革措置の内容・進捗状況 経済政策決定機関として1999年8月に設立。 省庁間会議で承認 2000年4月に新外国投資法可決。サウジアラビア総合投資院(SAGIA)創設。2001年2月に規制緩和対象外分野リスト発表。2002年2月に第二次発表の予定。 1998年サウジアラビア電気通信公社創設。2001年6月監督機関としてサウジアラビア通信委員会が創設。 2000年4月サウジアラビア電力公社が法人化。2001年11月11日最高経済会議が監督機関を承認。 2005年3月を目標。統合を進めるため,2001年6月サウジアラビアの基本関税を5%に引下げ。 1999年11月外国投資家に対しミューチュアルファンドを通じての参入権を認める。2001年10月電子取引システム(Tadawul)を導入。証券,為替委員会の創設を含む新たな資本市場法を準備中。 2001年12月16日に中核会社とプロジェクト実施協定が調印される予定であったが,2002年夏以降に延期。 2000年7月,外国人に不動産所有を認める新不動産法が可決。 2001年11月11日,最高経済理事会が工業地区を所轄する独立監督機関を承認。 2000年7月,一部民間資本と人材開発基金の資金提供によるサウジ人訓練基金の創設を閣議了解。 次段階協議が進行中。 物品税と間接税の導入検討中。 項目・分野 最高経済会議関連 民営化戦略 外国投資関連 信分野の改革 力分野の改革 通 電CC関税統合 G  株式市場の創設 ス・イニシャテ ガィブ関連 不動産所有権 工業地区 労働市場関連 TOへの加盟 W財政改革 ―29―石油/天然ガス レビュー ’02・9\8 民営化の進補状況(cid:0)進 捗 状 況 1998年にSaudi Telecommunication Co.(STC)設立。 現在,各種料金改定を行いながら将来の民営化の準備を進めている状況。今後は全体を統括するTelecom Authorityの創設と関連法の整備が課題。 2000年,既存電力会社がSaudi Electric Co.(SEC)として統合,2001年4月に営業開始。将来的にはSECを発電・送電・配電の3部門に分割し,IPPの導入や,一部民間資金を活用しながら,増大する電力需要を賄うことになるとみられる。サウジ航空は2002年10月民営化に向け財務・法務の国際コンサルタント会社に2社を起用,フィジビリティスタディ実施中。 2000年10月,公益インフラ会社(Marafiq)設立(主要株主:サウジアラムコ,SABIC,ロイヤルコミッション,PIFの4社)。3年以内に一部民間資本を導入し民営化する予定と報じられている。 力部門 空部門 益事業部門 電 航 公部 門 通信部門 WTO会議での加盟も一部に観測されたが,これは不調に終わった。日本との間では,既に2000年初,二国間協議で実質合意に至っている。法体系の不明瞭さが最大の障害といわれており,加盟に向けては,国内企業に対する税制優遇・関税保護,補助金支給,代理店制度等の見直しが課題となるとみられている。なお,WTO加盟に関連した最近の動きとして,2001年5月,GCC統一関税実現に向けて,輸入関税が12%から5%へ引き下げられた。Ⅱ.戦略目標と潜在的課題2.1 第7次5カ年計画サウジアラビアは,1970年以来,5カ年計画を策定し,経済・社会開発を推進してきた。1999年8月には第7次5カ年計画の戦略的機軸がまず明らかにされた。2000年8月28日,サウジアラビア政府は,2001?2005年を対象とする第7次5カ年計画を閣議了解したが,同計画は,年率3.16%のGDP成長率を見込んでおり,国家収入源の多様化,自国民の雇用機会の一層の創出,民営化,社会インフラの拡充,外国投資の誘致等を目標としている。新5カ年計画の骨子は,以下のとおりである。①民間部門の成長率は年平均5.04%を見込んでいる。民間部門による投資は計画期間中に総額4,785億SR(約1,276億米ドル)に達し,投資総額は71.2%に達する見込みである。投資の実質増加率は年率6.85%となることが見込まれ,対GDP比としては99年の22.7%から計画期間末の2004年末には25.4%に増加する見通しである。②石油部門の進展に伴う政府収入の増加及び財政支出の合理化を通じ,GDPに占める財政赤字の割合は99年の10.8%から2004年末には0となる見通しである。③非石油部門の成長率は4.01%を見込んでおり,結果としてGDPに占める非石油部門の割合は99年の68.4%から2004年には71.6%に上昇する。④項目別では,石油化学部門における成長率が年率8.29%,石油を除く鉱業が同8.34%,工業が同5.14%,公共事業(電力,水,ガス)が4.62%,サービス部門では3.44%となる見通しである。⑤人材開発政策(サウダイゼーション)を推進した結果,817,300人の新たな雇用機会が提供され,総雇用に占めるサウジ人の割合は現在の44.2%から53.2%に増加する見通しである。新たな雇用機会の内,488,600人は非サウジ人からサウジ人に置き換えることによって創出される見通しである。⑥福利厚生面では保健水準の向上,死亡率の低下,教育機会の充実等が挙げられる。その他分野別の主な内容は,以下のとおりである。石油/天然ガス レビュー ’02・9―30―m造 水]○総量210万m3の水及び2,502メガワットの総発電能力を有する12基の海水淡水化プラントの建設の着工。○現在建設中の22のダム工事の完成健所の建設。○7万戸の住宅建設のための総額157億SRの融資提供。及び62の新たなダムの着工。2.2 人口・雇用問題[電 力]○793,000の新たな顧客に対する電力供給。[通 信]○固定及び携帯電話網における近代的通信インフラの提供。[その他]○既存の工業地域の拡大と新たな工業都市の建設。○外国投資誘致の条件を整備するための外国投資法の改正。○59の新たな病院の建設と500の保近年中東では人口増加が著しい。1970?95年までの25年間における人口増加率は,年率2.2%であり,アラビア半島の人口は1950年の800万人から,2000年には6倍の4,800万人に増加した。こうしたペースが続けば,2025年のアラビア半島の人口は9,200万人に増加するとみられている。サウジアラビアにおいても高出生率,医療事情の整備を背景とする若年層の人口比率が急増 図1 サウジアラビア人の年齢構成(1999年)―31―石油/天然ガス レビュー ’02・9オてきており,若年層の雇用期間の創出問題が喫緊の課題となっている。公式の人口統計は,1992年10月に実施された国勢調査であるが,同調査結果はサウジ人1,231万人,外国人464万人というものであった。その後も雇用拡大を目的に打ち出した経済の改革,開放は,政府の目標どおり進展しているとは言いがたく,政府は一層の対応に迫られている。中東ではまた,人口増加に加えて,雇用機会やよりよい生活を求めて都市への人口流入現象がみられる。中東の都市化率は1960年代には25%であったが,ほぼ10年毎に10ポイントずつ上昇し,1998年には約60%に上昇している。さらに社会内部の動きとしては,アラブ社会の基礎であった大家族主義が半ば崩壊しつつあり,夫婦単位の核家族化の進行が進んでいる。こうした現象は,世帯数の増大を招き,水道・電力供給等の社会資本の不足を惹起しつつある。サウジアラビアの人口は,年率3.8%のペースで増加してきており,このままのペースが続けば,25年後の人口は現在の2倍の4,000万人に達する可能性がある。また,サウジ人男性の失業率は,既に30%程に達しているとの推定もある。また,就労者の部門別構成に関しては,1999年におけるサウジ人就労者(320万人)のうち,70万人(22%)が政府部門に従事している。したがって,90万人の政府職員のうち70万人(78%)がサウジ人である。また1999年の全就労者数(720万人)のうち,56%が外国人労働者であるが,概してサウジ人の給与は外国人労働者に比べて割高であり,この点も政府によるサウジ化政策推進を妨げる要素の一つになっている。因みに,サウジ人の給与は,概して,欧米人従業員の20%増,アジア人従業員の約2倍といわれている。2000年8月に承認された第7次5カ年計画も,年平均3.16%のGDP成長率を見込んでおり,当該5年間で82万人の雇用創出や,約600万人に上る外国人労働者の内,49万人をサウジ人に入れ替えるなどの雇用促進を柱に据えている。労働者の「サウジ人化」政策が着手されたのは1995年である。国営企業では既に5サウジ人比率が5割を上回っているが,人件費が高くつくため,民間企業のサウジ人化は余り進んでいないのが現状である。政府は財政の健全化に向けて努力しているが,これと同時に2001?2005年の5年間で新たに80万人分の雇用を創出しなければならないという大きな課題を抱えている。人口は年間3%強の割合で増加していると推定されているが,人口分布においては若年層の比率が多いため,新たな労働力の増加率はこれを上回ると予想される。政府は,非石油部門の成長を促し,また外国人労働者に代えて国内の労働力を利用することによって雇用の増大を図っている。小売部門ではサウジアラビア国民の雇用を増大させるための新たな規定が導入され,その結果国民による自営業が大幅に増えている。健康保険制度の義務化により,外国人労働者の雇用費も増加が見込まれている。この政策は実施する上で困難を生じているため,国民の同意を得て政府はより簡単な社会保険料制度に移行する可能性もある。1992年時点では,20才未満の人口比率が59.8%を占めていた。サウジ政府は,1996?2000年では,年平均13万人以上の新規雇用機会を創出する課題を与えられた。サウジ政府は,こうした課題を解決すべく,従前から取り組んでいる自国民化政策(サウダイゼーション)の一層の推進を打ち出している。Ⅲ.サウジアラビアと石油本項においては,世界におけるサウジアラビア石油の占める位置を,埋蔵量,生産能力等の点から位置付けると共に,同国経済にとっての石油の占める位置を確認する。また,将来の石油供給削減の蓋然性は大きいとした上で,サウジアラビアが果たしている安定供給上の役割を検証し,最後に産油国グループの中でサウジアラビアだけが有するといってよい特異性について,触れたい。3.1 世界にとってサウジアラビア石油の占める位置(1)埋蔵量石油問題を考えるとき,まず前提としなけれ石油/天然ガス レビュー ’02・9―32―ホならないのは,石油資源賦存の地域的偏在性である。表9によれば,中東地域には原油確認埋蔵量の70%近くが集中している。中でもペルシャ湾岸諸国のシェアが大きく,サウジアラビアの石油確認埋蔵量は2,600億バレル,世界全体の約1/4,イラク,クウェート,アラブ首長国連邦(UAE),イランを加えた5カ国で世界全体の65.0%を占めている。また,世界の2001年における原油生産に占める中東産油国の割合は28.1%であったが,石油輸出に占める割合は43.8%であった(BP?Amoco統計2001年版)。(2)産油能力次に国際石油情勢における原油余剰生産能力に関して,米国エネルギー省の「国際エネルギー見通し―DOE/EIA“International EnergyOutlook(2002年3月)”」により,2020年までの世界のエネルギー需給動向をみると,原油生産余剰能力は,需要規模が約30%増加するにも拘わらず,表10のとおり相対的に縮小していく。その中で,同見通しの基準ケースにおける国別の生産能力見通し(表11)によれば,産油国グループの中でもサウジアラビアは,最大の石油生産能力の保持が想定されている。(3)国際石油供給におけるサウジアラビアの役割石油資源の偏在地域が中東という多くの政治的不安定要因を内在させる地域であることから,多くの石油固有の問題が発生してきた。国際エネルギー機関(IEA)によれば,表12のとおり,第二次大戦後,世界は合計15件の石油供給途絶を経験したが,その内,12回は中東情勢表9 世界の地域別石油確認埋蔵量(2001年末現在)(cid:0)埋 蔵 量 生 産 量 千バレル 構成比(%) 千B/D 構成比(%) 可採年数4.2 1.7 5.7 66.5 25.1 7.4 14.5 100.0 79.4 7,270.8 6,009.0 8,593.7 17,872.1 6,470.0 6,854.4 17,094.8 63,694.8 28,156.011.4 9.4 13.4 28.1 10.2 10.8 25.8 100.0 44.216.5 7.8 18.7 105.1 109.8 30.6 24.0 44.4 92.5西欧 東欧・CIS 中東 内,サウジアラビア アフリカ 米州 合計 内,OPEC出所:Oil & Gas Journal(2001年12月24日号) 43,799,494 17,135,069 58,555,118 683,592,290 259,250,000 76,676,661 149,814,845 1,031,553,477 818,842,000 ジア・太平洋 ア表10 生産能力と生産量見通し(基準ケース,百万B/D)(cid:0)1990年 2000年 2005年 2010年 2015年 2020年 価価価格基準ケース低格高格基準ケース 格低高格基準ケース 低格価価価 18.7 18.7 18.7 16.2 16.2 16.2 2.5 2.5 2.521.7 21.7 21.7 21.2 21.2 21.2 0.5 0.5 0.523.3 25.9 29.2 21.0 23.8 26.2 2.3 2.6 3.025.1 30.7 35.3 23.0 28.8 327 2.1 1.9 2.628.5 36.4 43.0 26.2 34.2 40.5 2.3 2.2 1.532.9 42.9 51.1 31.2 39.6 48.3 1.7 3.3 2.8 高岸OPEC (能力) 湾 生産量見通 剰能力 余出所:DOE/EIA“International Energy Outlook-2002” ―33―石油/天然ガス レビュー ’02・9ノ関連する出来事に起因した。1970年代の2度の石油危機はその最大の例である。その点からは,具体的な原因は特定は困難であっても,中東情勢を原因とする石油供給途絶は,将来とも起こり得ると考えておくことが自然であろう。また,生起確率の大小は別にして,表11 国別石油生産能力見通し(基準ケース,万B/D)(cid:0) 2005年 2,590 1,250 400 310 300 280 1,260 3,840 2,400 1,350 1,210 4,960 8,880見 通 し 2010年 3,070 1,460 440 390 370 350 1,410 4,480 2,440 1,550 1,370 5,360 9,8402015年 3,640 1,820 450 450 440 410 1,560 5,200 2,530 1,710 1,540 5,780 10,980 2020年 4,290 2,210 470 550 510 480 1,730 6,020 2,560 1,830 1,720 6,110 12,130実  績 1990年 1,870 860 320 220 250 220 850 2,720 2,010 1,450 760 4,220 6,940内,サウジアラビア   イラン   イラク   UAE   クウェート その他OPEC OPEC計 工業諸国計 旧共産圏計 その他非OPEC 非OPEC計 世界計 出所:DOE/EIA“International Energy Outlook-2002” 2000年 2,170 940 380 260 250 250 970 3,140 2,330 1,160 1,110 4,600 7,740岸OPEC 湾 時  期 表12 第2次大戦後の石油供給中断(cid:0) 区 供給削減量 世界石油消費量 供給中断の原因 (A) (B) (A)/(B) (百万B/D) (%) 5.3 11.4 2.0 5.0 1.3 2.7 1.2 0.9 7.4 1.1 8.6 6.8 <1.0 1.0 6.513.2 17.5 34.3 40.4 40.1 48.0 50.2 58.2 58.2 62.1 65.1 60.4 51.6 51.6 66.3 (百万B/D) * * * * 分0.7 2.0 0.7 2.0 0.5 1.3 0.6 0.5 4.3 0.7 5.6 4.1 <0.5 0.5 4.3 * * * * * * * *1951年3月?54年10月 1956年11月?57年3月 1966年12月?67年3月 1967年6月?67年8月 1967年7月?68年10月 1970年5月?71年6月 1971年4月?71年8月 1973年3月?73年5月 1973年10月?74年3月 1977年5月 1978年11月?79年4月 1980年10月?81年1月 1989年3月?89年4月 1989年4月?89年6月 1990年8月?91年1月 出所:IEA資料 注:区分において*を付したものは中東情勢に起因する供給中断事例。 イラン,油田国有化 スエズ動乱  シリアパイプライン紛争 6日戦争 ナイジェリア内戦 リビア価格紛争 アルジェリア・フランス資産国有化レバノン政治紛争 第4次中東戦争 サウジ油田事故 イラン革命 イラン・イラク戦争 エクソン・バルデス油流出事故 北海コモラント油田事故 イラク/クウェート侵攻 石油/天然ガス レビュー ’02・9―34―8,990 63.7 1,554 13,138 12,645 n. a. 4.5 4.0 2.5 成長率 (%) 13.0 4.0 ?3.9 1.7 6.7 10.4 3.6 ?12.6 11.5 21.7イラン 石油産業に事故は付きものであり,さらに政治的要因から供給途絶が起こる可能性も排除できない。消費国にとって,緊急時対策の充実が求められる所以であるが,90日備蓄の達成を含む諸対策の整備状況から考えると,第一次石油危機時のようなパニックの発生は考えにくい。また,石油の市況商品化の潮流の中では産油国が石油を武器として使用する可能性も極めて乏しくなった。したがって,石油供給途絶は起こり得るにしても,短期間の内に収束する可能性の方がむしろ増大したと考えられる。上記15回の供給削減事態に関しては,供給途絶事態が石油価格の高騰につながった時(例えば第1次,第2次石油危機)と,それ程つながらなかった時(例えば,湾岸戦争)があることがみてとれる。様々な要因があるが,高騰しなかった時は,産油国グループが保有していた余剰産油能力が動員され,供給途絶が吸収ないし相殺されたことが大きい。湾岸戦争は後者の好例であるが,緊急時対策が実効性を確保するには,余剰産油能力が一定程度保持されていることが重要である。その点からは,平常時はもとより,緊急時においても,サウジアラビアは大きな役割を有している。表13 湾岸産油国の経済状況(2000年)(cid:0)(単位:百万米ドル) 表14 サウジアラビアの各目GDP推移と石油部門(cid:0)クウェート 37,704 2.2 17,138 13.027 14,670 10,402 (2002. 5) 5.1 △1.0 1.5UAE 60,700 3.1 19,581 11,367 9,188 13.120 (2002. 3) 6.0 3.5 2.5カタール 16,454 0.6 28,369 6,373 3,157 1,184 (2002. 4) 12.0 1.6 1.0オーマン 20,007 2.4 8,663 6,726 3,347 2,936 (2002. 5) 4.6 3.0 2.5DP 人口(百万人) 1人当りGDP(_) 貿易収支 経常収支 外貨準備高 サウジアラビア 173,287 22.7 7,621 49,843 14,336 14,488 (2002. 4)  2000年 4.5  2001年 1.8  2002年(見込) 0.5出所:MEED(2002年7月19日号他) 済成長率(%) G 経 府部門 政非石油部門 間部門 民 石油部門 合計 金額 金額 (百万SR) 148,450 156,365 162,760 168,398 172,939 178,904 187,982 191,961 196,591 205,085成長率 (%) 6.8 5.3 4.1 3.5 2.7 3.4 5.1 2.1 2.4 4.3金額 (百万SR) 119,062 109,409 113,441 115,616 123,011 128,842 137,517 138,286 143,419 150,888成長率 (%) 19.6 ?8.1 3.7 1.9 6.4 4.7 6.7 0.7 3.5 5.2(百万SR) 435,037 452,298 434,565 441,736 471,151 520,375 539,340 471,191 525,391 639,308 金額 構成比 (%) 38.5 41.2 36.4 35.7 37.2 40.9 39.6 29.9 35.3 44.3(百万SR) 167,525 186,524 158,364 157,722 175,201 212,629 213,846 140,696 185,381 283,3351991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000出所:サウジ通貨庁年報(各年版) 成長率 (%) 14.4 11.3 ?15.1 ?0.4 11.1 21.4 0.6 ?34.2 31.8 52.8 ―35―石油/天然ガス レビュー ’02・9ノ前項でみたとおり,DOEの「国際エネルギー見通し」によれば,表10のとおり,石油需要規模が増加するにも拘わらず,原油生産余剰能力は相対的に縮小していく。従って,石油供給途絶事態が発生したときには,従前のように事態が収束されるか否か,議論の分かれるところであろう。3.2 サウジアラビア経済にとっての石油の位置表13はバハレーンを除くGCC加盟国とイランの2000年の経済概況を比較したものである。ペルシャ湾岸産油国は,総じて各国の経済開発への取り組みにも拘らず,依然石油モノカルチャーの域を脱しておらず,その経済動向は石油輸出に大きく依存している。サウジアラビアの場合,表14と図2に見る如く国家財政は,歳入の大半を石油および石油関連収入に依存している。サウジは,GDPの約40%,歳入の約70%,輸出の約90%を石油に依存しているが,このことはぺルシャ湾の対岸の産油国であるイランと(1)GDP(百万SR)(2)石油部門・非石油部門の構成比図2:サウジアラビアの名目GDP推移と石油部門石油/天然ガス レビュー ’02・9―36―フ対比においてかなり特徴的である。因みにイランの石油依存度はGDPの10%,歳入の45%,輸出の80%である。サウジアラビアは,また生産財,消費財も輸入に依存し,さらに労働力に関しても外国人労働者への依存度が高い。2000年の政府発表のGDPは,1,732億ドルで,一人当たりは7,621ドル,イランと比べれば約5倍の水準ではあっても,GCC諸国内では最低であった。サウジアラビアのGDPは,油価の変動に大きく影響を受ける。石油部門は総じてGDPの35?40%を占めるが,1998年のような油価の暴落時には30%を割り込むこともあり,産業構造の多様化を通じた歳入基盤の多様化が求められている。3.3 石油供給国としてのサウジアラビアの特異性最後に,米国エネルギー省の見通しに基づき,長期国際石油情勢の枠組みを確認する中から,石油供給国としてのサウジアラビアの特異性を,確認してみたい。(1)石油供給「国際エネルギー見通し(2002年版)」の基準ケースによれば,2020年の世界の石油供給量は,2000年水準の7,700万B/Dを4,100万B/D上回る1億1,800万B/Dの水準となる。生産量の増加はOPEC,非OPEC諸国で見込まれるものの,非OPECの増産分は伸び幅全体の3分の1以下と予想される。非OPECの増産の影響で,OPECの市場占有率は過去20年間常に,1973年に記録した52%のピークを大幅に下回る結果となっている。非OPEC供給に関する長期見通しが引き続き楽観的である一方で,1998年から1999年初めにかけての原油価格の軟化は探鉱開発活動に対し,明らかに否定的な影響を及ぼした。1998年末には,北米の採掘活動は前年比25%以上の減少を示しており,1998年において掘削活動が停滞しなかったのは中東地域だけであった。全般的には,陸上掘削数の下落幅の方が沖合よりも大きくなった。世界的には,沖合の掘削装置の稼働率は概して,80%以上の水準を維持した。その結果,基準ケース見通しでは,今後20年間に予想される石油需要増のおよそ3分の2が出所:DOE/EIA“International Energy Outlook-2002”図3:地域別石油生産見通し(DOE,基準ケース)―37―石油/天然ガス レビュー ’02・9PEC加盟諸国の増産によって供給されることになる。2020年のOPEC生産量は2000年水準を2,600万B/D以上上回る見込みである。非OPEC石油供給は,1980?1990年代において,ますます多様化し,その増産はOPEC市場占有率の低下をもたらす上で重要な役割を演じた。1970年代初期における非OPEC供給は北米が支配的であったが,1980年代には北海とメキシコが主要産油国として台頭,また,1990年代の生産増の多くは中南米や西アフリカ,並びに中東の非OPEC諸国や中国でもたらされた。基準ケースによると,非OPEC供給は拡大基調で推移し,1999年の4,600万B/Dから,2020年に6,110万B/Dに増加する見通しである。(2)OPEC,非OPEC供給に対する価格動向の影響の相違これまで見てきたことから,重要なことが導き出される。表15からも明らかなとおり,原油高価格は非OPEC諸国の石油開発を促進し,非OPEC石油供給の強化をもたらし,OPECの石油供給シェアは,むしろ低下するということ,及び原油低価格はOPECのシェア拡大をもたらすが,低価格のため石油収入はそれほど増えないということである。したがって,OPEC諸国にとって最善のシナリオは,中庸の価格水準ということになる。DOE見通しでいえば,2020年まで1990年ドル価値で26ドル程とする基準ケース・シナリオである。この点を将来に対する認識の基礎の一つとする必要があるのに加え,もう一つの基本的な点は,OPEC諸国対非OPEC諸国という基本構造の他に,OPEC加盟国の中にもサウジアラビア対その他加盟国という潜在的対立構造があることである。サウジアラビアは資源量の点からも生産能力の点からも,他の加盟国から抜きん出た存在であり,必ずしも他の加盟諸国と利害が一致している訳ではない。サウジアラビアの特異性は,低価格シナリオにおいて,最大限顕在化する。低価格によりOPEC諸国はシェアを回復するが,その中でも最大限シェアを回復・増加させるのはサウジアラビアである。そのことは,「価格軟化・暴落」→「非OPECの開発延期・断念」→「対OPEC石油需要増加」→「サウジアラビアの圧倒的な生産増加」というサイクルによってもたらされる。低価格シナリオは,OPEC諸国には,概して歓迎されないが,個別サウジアラビアにとっては石油収入の極大化という点からは,中・長期的に堅実な戦略となり得る。上記の点を検証するために,DOEのシナリオに基づき,OPEC主要国のサウジアラビア・イラン・ベネズエラに関し,簡単な試算を行った。結論的には,概して高価格ケースの場合は,短期的には,非OPECの生産量が増加するため,OPECのシェアはそれほど伸びず,石油収入も伸びない。逆に低価格の場合は,生産シェアは伸びるが,総収入は原油価格の低下を背景に,大幅に減少する。試算は,以下の前提に基づき行い,試算結果は表16に示すとおりとなった。○価格水準は,DOE見通しの2010年,2020年価格を採用。表15 OPEC・非OPEC別原油生産見通し(cid:0)(単位:百万B/D) 基準ケース 高価格ケース 低価格ケース OPEC 24.5 30.9 35.3 42.1 49.4 57.2非OPEC OPEC 非OPEC OPEC 非OPEC 42.2 46.0 49.6 53.6 57.8 61.1? ? 31.1 34.3 39.4 45.6? ? 51.7 58.1 63.7 68.2? ? 38.0 47.1 56.5 66.2? ? 48.9 52.2 55.7 58.7 1990年 2000年 2005年 2010年 2015年 2020年 績 通し 実 見出所:DOE/EIA“International Energy Outlook-2002” 石油/天然ガス レビュー ’02・9―38―\16 価格シナリオ別対象国の石油収入(試算)(cid:0)(cid:0)生産量(輸出量)万B/D 2010年 2020年 950(800) 1,270(1,120) 1,530(1,380) 1,440(1,240) 1,880(1,680) 2,550(2,350) 石油収入(億ドル) 2010年 2020年 1,384 1,513 1,513889 955 889 (1)サウジアラビア 価格水準(ドル/バレル) 2010年 30.44 23.36 17.642020年 30.58 24.68 17.64価格 基準価格 低価格 高生産量(輸出量)万B/D 2010年 2020年 石油収入(億ドル) 2010年 2020年 410(310) 440(340) 450(350) 450(300) 470(320) 510(360) 344 290 225335 288 232価格水準(ドル/バレル) 2010年 30.44 23.36 17.642020年 30.58 24.68 17.64価格 高基準価格 低価格 生産量(輸出量)万B/D 2010年 2020年 石油収入(億ドル) 2010年 2020年 460(400) 460(400) 460(400) 540(460) 540(460) 540(460) 444 345 258513 414 296価格水準(ドル/バレル) 2010年 30.44 23.36 17.642020年 30.58 24.68 17.64価格 高基準価格 低価格 (3)ベネズエラ (2)イラン ○生産量は,サウジアラビア以外は,DOE見通しの原油生産能力を採用。サウジアラビアについては,原油生産能力から余剰分を差し引いて試算。○輸出量は,上記生産量から内需想定量を減じて試算。○石油収入は,原油価格(単価,ドル/バレル)×輸出量として試算。試算結果のポイントとしては,サウジアラビアに関しては,2010年においては,基準ケースの収入が最も多いが,2020年にはおいては基準ケースと低価格ケースが等しい結果となることが重要である。この点に関しては,DOEのシナリオの需要規模,サウジアラビアへの依存度の大きさ(生産能力の拡張の大きさ)が背景にある。イランは,2010年,2020年共に高価格ケースが最も石油収入が大きくなる。イランにとっては,産油能力拡張の制約から,基準ケースも低価格ケースも共にジリ貧状態に陥る可能性がある。したがって,イランとしてはガス開発により,ガス収入増を確保すると共に,石油の国内消費をガスで代替し,石油をより多く輸出に回すなどの措置が必要になると考えられる。他方,イランでは第3次5カ年計画で創設された石油安定化基金には,2000年度においては高水準の原油価格により,約60億ドルが繰り入れられた。イランでは,既に原油価格の変動が経済活動に与える影響を緩和する措置が講じられている。ベネズエラも石油収入パターンという点では,イランと同様である。即ち,高価格ケース→基準価格ケース→低価格ケースの順で,石油収入が多い。産業基盤の拡充・多角化による歳入源の多様化が課題となろう。こうした点から,産油国の経済動向を考えてみると,低価格ケースの場合には,短期的には経済開発ペースの鈍化・経済活動の停滞が予想され,これが長期化すれば,社会問題の激化や内政上の危機につながることも考えられる。さらに,OPEC・非OPECの枠を越えて産油国をトータルで考えるとき,最もドラステックなシナリオは産油国の足並みが崩壊し,サウジアラビアが単独路線をとる途である。この場合の同国戦略の対象は,当面はロシアである。ロ―39―石油/天然ガス レビュー ’02・9Vアは,昨年世界全体の石油需要が結果的に20万B/Dしか伸びなかった(2000年7,570万B/D→2001年7,590万B/D)にも拘わらず,単独で40万B/D生産を伸ばした。また,本年における世界の石油需要増が20万B/D程とみられているにも拘らず,ロシアは一国で50万B/Dの増産を計画している。こうしたロシアを筆頭とする非OPEC諸国の増産基調の中で,サウジアラビアにとって増収の方途はシェアの拡大以外にない。これらの点を総合すると,原油価格の産油国経済・政治動向に対して及ぼす影響に関しては,表17のとおり類型化できる。サウジアラビアの石油供給国としての特徴は,本年の石油情勢を考える中でも,明確に窺える点である。エドワード・モースは,フォーリン・アフェアーズ本年3?4月号に「エネルギー支配を巡る争い(The Battle for EnergyDominance)」を寄稿しているが,その中で,「サウジアラビアはこれまで幾度となく同国の市場シェアを脅かす輸出国に対しては,輸出を不可能とするために余剰産油能力を動員し得ることを誇示してきた。ロシアがサウジの協力要請を無視すれば,サウジは余剰産油能力を行使することになろう」と指摘し,「ロシアとCISの石油開発を食い止めるためには,サウジアラビアはバレル当たり10ドルの価格を2年以上維持する必要がある」と論じている。ロシアが原油コストの低減に努めてきてはいるが,かといって,サウジアラビアが戦略上志向する可能性がある10ドル台前半の水準には耐えられない。非OPEC(=ロシア)対OPEC(=サウジアラビア)の価格支配を巡る争いとは,価格シナリオという点からは,低価格シナリオをも受容し得る特異な産油国としてのサウジアラビアと高価格シナリオを選好するロシアの間の潜在的対立という構図で捉えられよう。おわりに本論を以下のとおり要約して,まとめとしたい。[経済構造改革が課題]サウジアラビアは,現在,アブドラ皇太子の主導により,経済構造改革を断行しようとしている。既得権益を有する保守層からの反発もあるが,全体的な流れとしては人口増・若年層への雇用機会創出という課題の解決のためには経済構造改革が唯一の処方箋であると認識されている。[人造りと雇用機会の創出]人口増への対処としての基礎インフラの拡充・整備,雇用機会の創出は,当面最大の懸案事項である。サウジアラビアの人口は,近年年率3.8%で増加してきており,こうしたペースが続けば,2025年には4,000万人に達する可能性がある。今次5カ年計画では5年間で82万人の雇用創出が課題となっているが,恒常的にGDPの35?40%を占める石油部門への依存から脱却し,産業基盤の多様化を進めることが肝要である。表17 産油国(類型別)の石油シナリオの相対評価(cid:0)(cid:0)高価格ケース × 基準価格ケース 低価格ケース ○ △ シェア低下i収入減 シェアは抑制されるが収入増 シェア増加i収入増 ウジアラビア の他OPEC諸国 (cid:0)サ そ (イラン等) 非OPEC諸国 (例えば,ロシア,メキシコ) 総合評価 △ 収入増 ○ 収入増 サウジ・OPECの生産調整により鎮静化 ○ × 総収入は増えず シェアは増加,収入は増えず △ × 収入は「高価格」に及ばず OPECプライスバンド制の再構築が必要 開発抑制i生産減 サウジと他産油国間の政策調整が必要 注:想定石油収入の規模からの相対評価である。ここでは便宜的に以下の3区分による評価を実施。   〇:最善のシナリオ(受容可能),△:次善の策(受容可能),×:回避すべきシナリオ 石油/天然ガス レビュー ’02・9―40―サのためにも,経済構造改革の一環としての外資導入のニーズが高まっており,今後一層高まることが予期される。[石油供給国としての使命・特異性]サウジアラビアは,国際石油情勢において平常時のみならず緊急時においても大きな役割を有している。これまでの供給途絶事態は多くの場合,同国の余剰産油能力の動員・行使により収束されてきた。サウジアラビアの相対的位置の大きさから,こうしたサウジアラビアの重要性は将来的に増すことはあっても低下することは考えられない。その中で,同国の石油戦略という文脈で考えられることは,同国の戦略オプションの多様性・特異性である。特に産油国として,唯一低価格において戦略的優位性を発揮し得るという特質には平素より留意しておくことが重要である。そのことの意味を,あえて明文化しておけば,産油国間の徒な競合を回避し,産油国間の協調関係を維持する仕組みを構築する必要があるということである。また,競合産油国はもとより,消費諸国もサウジアラビアの低価格戦略発動のシグナルにアンテナを張り,同戦略の発動を回避させるべく,相互の政策対話のチャネルを保持することが重要である。―41―石油/天然ガス レビュー ’02・9
地域1 中東
国1 サウジアラビア
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 中東,サウジアラビア
2002/09/30 [ 2002年09月号 ] 須藤 繁
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