ページ番号1006031 更新日 平成30年2月16日

確率論的な可採埋蔵量評価及び生産予測の現状と課題

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レポートID 1006031
作成日 2002-11-30 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 探鉱開発
著者
著者直接入力 難波 隆夫 田中 弘樹 加藤 隆明
年度 2002
Vol 35
No 6
ページ数
抽出データ 確率論的な可採埋蔵量評価及び生産予測の現状と課題難波 隆夫*,田中 弘樹*,加藤 隆明*石油・天然ガスの探鉱・開発事業には様々な不確実性が存在するが,可採埋蔵量や生産量の推移はそのなかでも最大の不確実要因の一つである。探鉱のリスク評価においては従前より確率論的な手法による不確実性の定量化が試みられているが,数年来,開発・生産段階の油ガス田の評価においても,確率論的手法が採り入れられつつある。本稿においては,探鉱段階における生産予測を目的に開発したソフトウエア(PFX)について紹介するとともに,開発・生産段階の油ガス田の可採埋蔵量評価及び生産予測における各種確率論的評価手法について特長と限界を考察する。れており(prospective/contingent resourcesに対してはlow estimate, best estimate, highestimate,また,reservesに対しては1P, 2P, 3P),1.はじめに石油公団では,1998年以来,探鉱プロスペクトの埋蔵量評価において確率論的な手法を採用している(1)。埋蔵量評価結果から経済性指標を算出するためには,可採埋蔵量の年次展開,即ち,生産プロファイルの作成が必要であり,これについては,本誌(2)及び石油技術協会誌(3)において試案を報告済みである。本稿においては,続報として同試案に基づいて開発したソフトウエアについて紹介するとともに,開発・生産段階の油ガス田の可採埋蔵量評価及び生産予測における各種確率論的評価手法について特長と限界を考察する。なお,SPE/WPC/AAPGが2000年に提示したガイドライン(4)においては,今後採取が見込まれる油ガスの量は探鉱・開発段階の熟成度に応じて分類され,未発見構造はprospectiveresources,評価段階の既発見構造はcontingent resources,開発・生産油ガス田や確実に開発が見込まれる構造についてはreservesと定義されている(図1)。また,採取量の不確実性は分類毎に評価すべきものとさ*本稿は技術部生産技術課難波隆夫(E-mail: namba-t@jnoc.go.jp),田中弘樹(E-mail:tanak-hr@jnoc.go.jp)および技術部 技術企画室 加藤 隆明(E-mail:kato-t@jnoc.go.jp),が担当した。石油/天然ガス レビュー’02・11― 8 ―図1 SPE/WPC/AAPG Resources分類サの定量化手段として確率論的手法の適用を認めている。本稿では,普及した用語訳がないことから,探鉱・開発段階の如何に関わらず可採埋蔵量という言葉を用いるが,必要に応じてresourcesあるいはreservesであることを括弧書きにより注記することとする。2.探鉱段階における生産予測?PFXの紹介探鉱プロスペクト及び評価初期段階の既発見構造に対しては,ENPV(Expected NetPresent Value:期待現在価値)が経済指標のひとつとして使われており,これを算出するため,通常,P90, Pmean(あるいはP50), P10の可採埋蔵量に対応する開発シナリオと生産プロファイルの作成が求められる(なお,確率論的生産プロファイルの定義には曖昧さがあり,これについては後述する)。探鉱段階における可採埋蔵量(resources)の振れ幅については,通常モンテカルロシミュレーションによって評価される。ここで算出された各ケース(パーセンタイル)の可採埋蔵量に対する生産シナリオの想定に際し,これまでは評価者の主観によるものが少なからず存在し,一貫性のある評価手法とは言い難いものであった。客観的でかつ簡便な評価手法の確立が必要であることから,統計データに基づいたパラメトリックな評価手法が適用可能であるかどうか検討した。既報告(2)においては,英領北海油田のデータ分析に基づき,原始埋蔵量あるいは可採埋蔵量(resources)から,坑井数,ピークレート,プラトー期間回収量,減退率を算定し,生産プロファイルを作成する以下の手順が提案された。第1ステップとして,石油公団が所有する各種データベースを用い,原始埋蔵量,可採埋蔵量,油層面積,坑井数,孔隙率,浸透率,原油比重,ガス油比,生産ヒストリー等のデータを収集する。また,生産ヒストリーをグラフ化し,生産挙動を解析することにより,プラトーレート,プラトー期間,プラトー期間の累計生産量,減退率を求める。第2ステップとして,収集・解析したデータを用い,生産プロファイルを作成するために必要な次の5組の相関式を作成する。・原始埋蔵量?可採埋蔵量・可採埋蔵量?坑井数・可採埋蔵量?ピークレート・可採埋蔵量?プラトー期間回収量・可採埋蔵量?減退率これらの相関式を求めることができれば,ある原始埋蔵量もしくは可採埋蔵量に対する生産プロファイルを作成することが可能となり,また必要坑井数も想定できる。第3ステップとして,同規模の近傍油田の生産実績と相関式から計算される生産プロファイルを比較し,相関式の妥当性を検証する。この手法の有効性は,ノルウエー領北海,オーストラリア北西大陸棚,ブルネイ沖,タイ沖,マレーシアの油ガス田に対しても適用され検証された(3)(5)。また,海外の石油開発会社26社にインタビュー調査を行ったところ,概ね肯定的な意見が聞かれ,未開発構造の経済性評価に用いる生産予測に本手法を適用することにより,客観的で一貫性を持った評価ができるものと判断された。更に,評価作業の効率化を図るためにExcelベースのソフトウエアPFX(ProductionForecasting for the Exploration Stage of aProject)が整備された(6)。PFXソフトウエアは,上述の3つのステップを自動的,可視的に行うプログラムであり,マニュアルでの作業に比べ,評価時間を大幅に短縮することができる。また,課題の1つであった生産量の立ち上がりについて,実現可能な掘削スケジュールを考慮し,ピークレートに達するまでのビルドアップ期間を推定することができる。当該ソフトウエアの構造を図2に,また,操作の流れを図3及び以下に示す。a.地域・堆積盆を選択する。b.必要に応じ,海洋か陸上か,また,深度,油比重,ガス油比,生産開始年,生産履歴年数,埋蔵量規模などの範囲を指定することにより,分析対象油ガス田を絞り込む(フィルタリング)。― 9 ―石油/天然ガス レビュー’02・11}2 PFX:システム構造c.上記のデータの回帰分析により,前記の5つの相関式が自動的に導かれる(図4参照)。d.必要に応じ,海洋か陸上か,地域,深度,リグタイプ,坑井タイプ,リグ数を与えることにより,開発井掘削時間が推定される(生産量立ち上がりの推定に利用)。e.原始埋蔵量あるいは可採埋蔵量を与えることにより,上記の相関式及び開発井掘削時間から,生産プロファイルが作成される。f.近隣油ガス田実績との比較により検証する(図5参照)。なお,上記ソフトウエアは,データベースの分析を基本とするが,オペレータなどからより信頼性の高い情報がもたらされている場合においては,その部分についての置換えが可能である。また,データベース自体の形式についても特段の指定はなく,データの更新についても自由度の高い設計となっている。図3 PFX:操作の流れ石油/天然ガス レビュー ’02・11―10―}4 PFX:相関式の例図5 PFX:予測結果と近隣事例との比較・検討―11―石油/天然ガス レビュー ’02・11R.開発・生産段階の油ガス田の評価(1)確率論的手法の適用の難しさ開発移行の意志決定やファームイン・ファームアウトなどに際し,従前より可採埋蔵量及び生産挙動の振れ幅(不確実性)が考慮されて来た。しかしながら,多くの場合,標準ケース(base, best estimate, most likely, reference)に歩留まり(discount factor, risk factor)を掛ける,あるいは,悲観(pessimistic, downside,low)ケースや楽観(optimistic, upside, high)ケースを主観的に設定するといった客観性の乏しい決定論的なものに留まっていた。SPE/WPC/AAPGの定義を使えば,resources評価には確率論的手法が用いられてきたが,reserves評価は決定論的な手法が主流であったとも言える。情報量の少ない探鉱プロスペクトの評価では確率論的な手法が普及しているのに対し,情報量の多い開発・生産段階において,このような遅れた対応がなされているのは,一見,矛盾しているように思われるが,情報の増加に伴うモデルの精緻化こそが,確率論的評価の適用を困難としている主因ともいえる。即ち,探鉱プロスペクトや評価初期段階の既発見構造の可採埋蔵量(resources)は6要素の積から成る以下の式(モデル)で表され,各要素に確率分布を与えることにより,モンテカルロシミュレーションによって確率分布を算出することができる(なお,各要素の確率分布が正規分布の場合には解析的に可採埋蔵量分布が算出できる(7))。可採埋蔵量=原始埋蔵量×回収率=集油面積×ネットペイ×孔隙率×飽和率/容積係数×回収率これに対し,開発・生産段階においては,採取方法,坑井数・配置,生産施設規模,油層管理などの最適化が必要となることから,精緻な油層モデルが構築され,数値シミュレーションによって生産予測及び可採埋蔵量(reserves)評価が行われる。理屈の上からは,この油層モデルをモンテカルロシミュレーションのループに入れることにより確率論的な評価ができることになるが,モデルが巨大である上に,影響する要素が極めて多種多様であることから,実現困難である。また,多種多様な要素につき,客観的に確率分布を設定することも困難な課題である。繰り返しになるが,1)影響要素の多種多様性,2)モデルの複雑さ(重さ)及び3)確率分布設定の主観性が,開発・生産油ガス田における確率論的評価手法の適用を難しくしていると言える。このような技術的な困難さは有りながら,一方で,評価の客観性を高める必要性も高く,数年来,開発・生産段階の油田に対しても確率論的な手法の導入が試みられている。各種論文や技術レポートで示されている手法は様々であり,また,組み合わせで活用されるため,系統的な分類は困難であるが,ここでは,主な要素手法を概説し特徴を考察する。(2)確率論的可採埋蔵量評価手法①感度分析(Sensitivity Study)感度分析,即ち,各種油層パラメータが可採埋蔵量(あるいは回収率)に与える影響度の調査は,最も普及した不確実性の定量化手段であり,確率論的評価の基礎となる。通常,他のパラメータを標準値に固定した上で,1パラメータずつ想定される幅で変動させるOPAATSS(one-parameter-at-a-time sensitivity studies)(8)が行われ,その結果はトルネードチャート(エラーバー)やスパイダーグラフに表示される。不確実性が大きく,かつ,感度が大きな要素は,トルネードチャート上では大きなバー,スパイダーグラフ上では大きな膨らみとして表示され,対象油ガス田の主要な不確実要素(key uncertainties)と認識される(図6参照)。即ち,感度分析は,多種多様な要素の中から重要なものを絞り込むという意味において確率論的評価の第1のハードルである「影響要素の多種多様性」の解決策と位置付けることもできる。なお,確率論的可採埋蔵量評価においては,原始埋蔵量分布と回収率分布の独立性を前提として,両分布のモンテカルロシミュレーション石油/天然ガス レビュー ’02・11―12―ノよって可採埋蔵量分布を算出する方法と,回収率を介さずに直接的に可採埋蔵量分布を算出する方法がある。前者においては,原始埋蔵量分布は探鉱プロスペクト評価と同様な手法で算出され,感度分析は回収率の不確実性の定量化を目的として行われる。この際,地質モデル(原始埋蔵量)は一定とし,流動パラメータ(絶対浸透率,相対浸透率,垂直水平浸透率比,アキュファー強度,流体特性,岩石圧縮率,坑井の生産・圧入指数,断層の導通性など)が回収率に及ぼす影響が調査される。一方,原始埋蔵量と回収率に相当程度の相関性が想定される場合には,流動パラメータに加え,原始埋蔵量(あるいは,孔隙率,流体界面深度,構造形態など,原始埋蔵量に影響するパラメータ)が可採埋蔵量に及ぼす影響についても調査しておく必要がある。②マルチシナリオ(Multi Scenario)とディシジョンツリー(Decision Tree)マルチシナリオ法においては,まず,上記の感度分析などによって認識した主要不確実要素がとり得るケースを幾通りか設定し,また,その発生確率を割り当てる。原則,各ケースの全て組み合わせ(シナリオ)につき,可採埋蔵量(あるいは回収率)が評価される。例えば,主要不確実要素数がn,各要素について3ケース(low, base, high)が設定された場合には,3n(3要素の場合は33=27,4要素の場合は34=81,5要素の場合は35=243)通りのシナリオにつき検討が行われる。不確実要素間に系統的な関連性が想定される場合には,図7のようなディシジョンツリーによる評価が行われることもある。各シナリオの発生確率は,構成するケースの発生確率の積となり,また,可採埋蔵量(あるいは回収率)順に並べて発生確率を積算することにより,累積確率分布を作成することができる(図8参照)。マルチシナリオ及びディシジョンツリー法の作業量は,上記のように検討する主要不確実要素の数に伴って急激に増加することから,事前の感度分析に基づき主要要素を適切に抽出し,絞り込むことが極めて重要であることが分かる。考慮すべき主要不確実要素数は,油層状況や原油採取方法などにより大きく異なると思図6 トルネードチャートの例(ガス層)―13―石油/天然ガス レビュー ’02・11墲黷驍ェ,3大不確実要素のみの検討により,十分な確率論的な評価が可能であったとの報告例もある(9)。これら手法においては,発生確率の設定が大きな課題であり,深い知見を要する部分である。汎用的なガイドラインはなく,各社とも,事例ごとにグループミーティングによる議論を経て決定するなどにより主観性の低減に努めている。また,マルチシナリオ及びディシジョンツリー法は,埋蔵量評価に留まらず,開発計画やコスト,油価の不確実性を含めたプロジェクトの不確実性評価へ発展・応用が可能という大き図7 デイシジョンツリーの例図8 マルチシナリオ法における累計確率分布の例石油/天然ガス レビュー ’02・11―14―ネ利点もある(10)。シェル社においては,近年,マルチシナリオ及びディシジョンツリー法を採用するケースが多くみられ,これに基づくP85をlowケース,P15をhigh ケースとすることが良く知られている(11)。マルチシナリオ法及びディシジョンツリー法の長所及び短所としては以下が挙げられる。長所a.確率評価結果に対応する具体なシナリオ(油層モデル)が認識できる。b.開発計画やコスト,油価の不確実性を含めたプロジェクトの不確実性評価へ発展・応用が可能である。短所a.多くの作業量を要する。b.各ケースの発生確率を主観的に設定せざるを得ない。③単純化油層モデリング(SimplifiedReservoir Modeling)とモンテカルロシミュレーション開発・生産段階の油ガス田に対する確率論的手法,特にモンテカルロシミュレーションの適用を難しくしている原因のひとつが,モデルの複雑さにあることは前記した。逆に言えば,モデルを単純化することができれば,大きな課題の一つが解決されたことになる。最も単純なモデルのひとつとしては,次のような回収率に関する乗積モデル(product model)がある。回収率=回収率ref×CFx×CFy×CFzここで,回収率refは,標準ケースの回収率,また,x,y,zは主要不確実要素(絶対浸透率,相対浸透率,アキュファーなど)を示す。CFx,CFy, CFzは主要不確実要素の不確実性に起因する補正係数の分布であり,上記の感度分析結果に基づき設定される。その他には,回収率あるいは可採埋蔵量を主要不確実要素を変数とする多項式,最も簡便には,以下のような1次式で近似する方法がある。回収率=ax+by+cz+d可採埋蔵量=ax+by+cz+d×原始埋蔵量+eこの際,主要不確実要素が構造形態や相対浸透率といった単一の数値(スカラー)でない場合には,low=?1, base=0, high=+1といった数値への置き換えを行う。多項式の係数(a?e)は,OPAATSS感度分析結果を回帰分析することによって求めることができる。主要不確実要素の組み合わせによる相乗効果や相殺効果が想定される場合には,幾つかの組み合わせケース(全てlow,全てhighなど)が追加されることがある。このモデルは,応答曲面モデル(response surface model)とも呼ばれ,手法は医学や農学で用いられる実験計画法(method ofexperimental design)の応用と言える(12)。導いた単純化油層モデル(近似式)をモンテカルロシミュレーションのループに入れ,各主要不確実要素に確率分布を与えることにより,可採埋蔵量(あるいは回収率)の確率分布を算出することができる。この手法による感度分析から可採埋蔵量評価までの一連の手順を図9に示す。当該手法の適用に当たって必要となる油層シミュレーションの数は,OPAATSS感度分析結果,即ち,baseケースと感度分析結果(各要素のlow, high),合計2n+1(3要素の場合は2×2+1=7,4要素の場合は2×4+1=9,5要素の場合は2×5+1=11通り)に過ぎず,数ケースを追加したとしても,3n通りの検討を要するマルチシナリオ法と比較して要する作業量が大幅に少ないことが分かる。また,マルチシナリオ法により算出される確率分布が不連続(離散的)であるのに対し,本手法では,実際に検討されるシナリオは少ないにも係わらず,モンテカルロシミュレーションのループの中で,数千?数万通りの不確実要素の組み合わせが行われていることに相当し,連続的な確率分布が得られる。但し,評価結果を遡って,構成する主不確実要素の唯一の組み合わせ(シナリオ=油層モデル)を決めることはできない。従って,坑井数などの人為的な条件を変えた場合,評価をやり直す必要が生じ,また,後述するように,生産プロファイル作成において課題が生じる(図10参照)。―15―石油/天然ガス レビュー ’02・11}9 単純化油層モデルによる確率論的可採埋蔵量評価の流れ図10 単純化油層モデルによる確率論的生産プロファイル作成の概念石油/天然ガス レビュー ’02・11―16―m率論的評価の先進地域である北海,特にノルウェーでは,この手法が普及している(13)。単純化油層モデリングの長所及び短所としては以下が挙げられる。長所a.必要な作業量が少ない。b.連続的な確率分布を得ることができる。c.探鉱プロスペクト評価と手法の一貫性を保つことができる。短所a.確率評価結果に対応する具体なシナリオ(油層モデル)が認識できない。b.各主要不確実要素の確率分布の設定が困難な場合がある。④地質推計学モデリング(StochasticModeling)上記のマルチシナリオ法や単純化油層モデリングルにおいて解決されない主要課題は,確率分布(あるいは発生確率)の設定といえる。地質推計学モデリングは,不均質性を記述する油層キャラクタリゼーションの有力なツールとして知られているが,発生確率の等しい油層モデ 図11 地質推計学モデリングによる確率論的評価(GRUSスタディ?)―17―石油/天然ガス レビュー ’02・11求iリアライゼーション)を完全に客観的に複数作成できることから,確率論的評価への利用も期待されている。ノルウエーのGRUS(The Great UncertaintyStudy)は,このテーマに最も意欲的に取り組んでいる代表的なプロジェクトのひとつであり,図11に示すように,リアライゼーションの作成,アップスケーリング,油層シミュレーションが自動的なクローズドシステムの中で実施されている(14)。GRUSに代表される試みは一定の成果を上げているものの,多くの場合,不確実性が考慮されるパラメータは,岩相分布,浸透率分布などに限られ,構造形態,相対浸透率,バリオグラムの不確実性,あるいは,実測データ誤差などが考慮されないことから,可採埋蔵量の振れ幅が限定的となりがちである。現時点においては,地質推計学モデリングのみで確率論的評価を行うことは困難であり,一種の感度分析と捉え,上記のマルチシナリオ法や単純化油層モデリング,その他不確実性評価手法と併用することが現実的と考えられる。地質推計学モデリングの長所及び短所としては以下が挙げられる。長所a.発生確率の等しいケースを完全に客観的に作成できる。短所a.膨大な作業量を要する。b.実務的には,検討対象とできるパラメータが限られるなどのために,可採埋蔵量の振れ幅が限定的となることが多い。(2)確率論的生産プロファイル生産プロファイルの確率論的評価手法については,可採埋蔵量評価と比べ,更に,確立した手順が存在せず,定義すら曖昧なところがある。例えばP90可採埋蔵量と言えば,90%以上の確率で達成される量であり,累積確率分布の下位10%に当たる量,と明確に定義できるが,生産プロファイルのような非スカラーについては単純には順位付け(ランキング)ができず,従って下位何%の生産プロファイルがどれだとは特定できないのである。ひとつの考え方は,最終時点の累計生産量,即ち,可採埋蔵量に基づき順位付けを行うというものである。例えば,P90生産プロファイルは,P90可採埋蔵量が採れる生産プロファイルということになり,前述の探鉱段階の評価においてはこの考え方が採用されている。探鉱段階の評価ではデータベースが活用されるが,開発・生産段階においては,多くの場合,可採埋蔵量評価において実施された油層シミュレーションに基づいて選択,あるいは,調整することによって生産プロファイルが作成される。油ガス層状況や契約条件などにより,以下のように幾つかの方法が見られる。a.baseケースの生産プロファイルを基にして,可採埋蔵量比を掛ける(生産性に大きな不確実性があるケースなど)。b.baseケースの生産プロファイルを基にして,プラトー生産期間を調整する(施設能力に比較して初期生産能力には十分な余力があるが減退開始時期に大きな不確実性があるケース,ガス販売契約でプラトーレートが定められているケースなど)。c.検討されたシナリオの中からP90,Pmean, P10可採埋蔵量に一致(類似)する生産プロファイルを選択する。d.主要不確実要素などの調整によりP90,Pmean, P10相当油層モデルを準備し,油層シミュレーションにより生産プロファイルを作成する。上記のように,可採埋蔵量に基づく順位付けは極めて当たり前のようであるが,可採埋蔵量が同じ(類似)であっても,初期生産量が大きく生産期間が短いケースと,生産量が小さく生産期間が長いケースとでは,経済価値が大きく異なる。そこで,年率一定割合で生産量を割り引いた可採埋蔵量(discounted reserves)に基づき順位付けをしたり,更に,一歩進んで,現在価値(NPV)に基づき順位付けすべきとの考え方もある(9)。この場合には,例えば,割引いた可採埋蔵量,あるいはNPVの下位10%に相当するものがP90生産プロファイルとなる。上記のような考え方の他に,P90生産プロファイルとは,各時点で90%以上の確率で達成される生産量を結んだものであるとする考え方も石油/天然ガス レビュー ’02・11―18―?る。但し,この方法では,P90生産プロファイルの累計量がP90可採埋蔵量に一致することが保証されないことから,累計生産量プロファイルを作成した後,差分をとることによって生産プロファイルを作成するという方法もある(最終時点の累計生産量=可採埋蔵量となるから,可採埋蔵量評価との食い違いは生じない)。この方法は一見,合理的とも思えるが,評価結果に対応する物理的に意味を持ったシナリオ(油層モデル)が存在せず,時には,物理的には生じ得ない生産プロファイルが作成されてしまうこともある。その他には,油層シミュレーションの結果に基づき,生産プロファイルを特徴付ける主要素である,ピーク生産量,プラトー生産期間,減退率などにつき,確率分布を求め,この結果に基づき確率論的生産プロファイルを作成する方法もある。特に,契約により義務初期生産量やプラトー維持期間が明記されている場合などでは,可採埋蔵量以上にこれら要素が重要ということになるから,このような観点からの検討が必要である。4.おわりに本稿においては,探鉱段階における生産プロファイル策定プログラム(PFX)を紹介するとともに,開発・生産段階の油ガス田に対する確率論的可採埋蔵量評価及び生産予測手法について考察した。前者のPFXについては,現時点では,更に,中東湾岸,イラン/イラク,アルジェリア,ブラジル,メキシコ,ベネズエラなどのデータが追加されており,また,必要に応じて他地域のデータも比較的容易に追加可能な状況にある。改良の余地はあるものの,実務に活用できる水準には達していると考えている。後者については,まず,開発・生産段階の油ガス田に対して可採埋蔵量評価手法を適用する際には,1)影響要素の多種多様性,2)モデルの複雑さ(重さ),3)確率分布設定の主観性が,ハードルとなることを指摘した。感度分析は,多種多様な影響要素の中から主要不確実要素を抽出(絞りこむ)手段として有効であり,確率論的評価を適用する上での基礎となることを述べた。本稿では,確率論的可採埋蔵量手法を,マルチシナリオ法,単純化油層モデリング,地質推計学モデリングに分類したが,マルチシナリオ法は「多種多様性」,単純化油層モデリングは「モデルの複雑さ」,地質推計学モデリングは「確率分布の主観性」への解決手段として優位性を持つと言える。地質構造解釈や開発計画が大幅に変更になる余地の有るケースにおいてはマルチシナリオ法,構造解釈や開発計画が概ね定まっているケースにおいては単純化油層モデリングが実務的であると考える。また,地質推計学モデリングについては,この手法単独で確率論的評価に使用することは現時点では困難であり,マルチシナリオ法や単純化油層モデリングルと併用することが現実的と考える。最後に,確率論的な生産プロファイルについては,可採埋蔵量評価と比べ,更に,確立した手順が存在せず,定義すら曖昧であることを述べた。経済指標を算出する,契約生産量未達成のリスクを定量化する,生産施設能力を最適化するなど,確率論的評価を使用する目的を明確に認識し,目的に応じた適切な定義を行うことが肝要と考える。引用文献1)窪田 寛,宮永 勝,中西 健史1999:「米国石油会社及び石油公団における石油・天然ガス探鉱リスク評価の現状」, 石油/天然ガスレビュー, ‘99・22)君島 晋, 2000:「未開発構造に対する生産計画立案手法について」, 石油/天然ガスレビュー, ‘00・93)田中弘樹,2001:「生産予測・可採埋蔵量の振れ幅の評価」,石油技術協会誌, 第66巻第6号4)SPE/WPC/AAPG, 2001:「Guidelines forthe Evaluation of Petroleum Reserves andResources」A Supplement to the SPE/WPCPetroleum Reserves Definitions and theSPE/WPC/AAPG Petroleum Resources―19―石油/天然ガス レビュー ’02・11efinitions, 20015)石油公団, 2001:平成12年度技術動向調査「未開発構造の生産シナリオ立案手法標準化に関する調査」調査報告書6)石油公団, 2002:平成13年度技術動向調査「未開発構造の生産シナリオ立案用ソフトウエア開発」調査報告書7)Smith, P.J, Hendry D.J. and Crowther A.R.1993: 「The Quantification and Managementof Uncertainty in Reserves」, SPE 260568)Ovreberg, O., Damsleth, E. and Haldorsen,H.H., 1992: 「Putting Error Bars on ReservoirEngineering Forecasts」, JPT, June 19929)Stegall, D.E. and Schozer, D.J. 2001:「Uncertainty Analysis in ReservoirProduction Forecasts During Appraisal AndPilot Production Phases」, SPE6639910)Jonkman, R.M., Bos C.F.M, Breunese, L.N.,Morgan D.T.K., Spencer, J.A. and SondenaE. 2000: 「Best Practices and Methods inResource Hydrocarbon Estimation,Production and Emissions Forecasting,Uncertainty Evaluation and DesignMaking」, SPE65144 11)Woodhead, T.J. and Willemse E.J.M. andMills R.M. 2000: 「Integrated Modeling andUncertainty Management of a Gas InjectionScheme in a Highly Fractured CarbonateReservoir」, SPE5945312)Venkataraman, R. 2000: 「Application ofthe Method of Experimental Design toQuantify Uncertainty in ProductionProfiles」, SPE5942213)石油公団, 2001:平成12年度技術動向調査「既発見油田油田における油層挙動の確率論的評価手法に関する調査」調査報告書14)Aker Geo Petroleum Services, 2001:「Performance NCSProbabilistic Methods, and NCS and UKCDField Histories」Forecasting: 石油/天然ガス レビュー ’02・11―20―
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2002/11/30 [ 2002年11月号 ] 難波 隆夫 田中 弘樹 加藤 隆明
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