ページ番号1006032 更新日 平成30年2月16日

多相流量計の原理とフィールド適用  ― Multi-Phase Flow Meter ―

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レポートID 1006032
作成日 2002-11-30 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 技術探鉱開発
著者
著者直接入力 真鍋 亮
年度 2002
Vol 35
No 6
ページ数
抽出データ 多相流流量計の原理とフィールド適用―Multi-Phase Flow Meter ―真鍋 亮*石油生産技術あるいは流量計測の専門家以外の技術者でも,「多相流流量計(Multi-Phase FlowMeter,以下MPFM)」という言葉に聞き覚えのある方は,多いのではないでしょうか? これは油ガス田において生産される原油・ガス・水を,セパレーターで分離する前に各相の流量を計算する方式で,プロセスの単純化,設備・操業コストの低減,可載スペース・重量の低減などを可能にするもので,特に海洋においては開発・操業の効率化・コスト削減をはかる手段のひとつとして注目されているものです。しかしながら,専門家以外の多くの方にとって,この技術は,「ブラックボックス」であり,場合によっては「手品」のように思えるのではないでしょうか? 本報1?2章では,MPFMに対する基礎知識,技術動向や適用実績,導入に際しての検討事項をまとめ,紹介することにより,非専門家や非技術者に「MPFM」というものを親しんでもらえるようにすると共に,MPFMの導入を検討している本邦石油会社の一助となることを目的としています。また,技術開発/適用事例の一つとして,石油開発技術センターで足掛け10年にわたり実施してきた石油公団独自のMPFMの開発及びフィールドトライアルについて報告します。その成果は,要素技術の開発,実験設備での試験を経て,今般,その最終段階としてのフィールドトライアルに入りました。そこで,3章では,石油開発技術センターで取り組んできた研究開発について紹介し,4章では,ZADCO社の操業する上部ザクム油田において,水攻法の最適化のための産出水データ連続・集中取得を目的として導入された2機のMPFMについて,その経過を報告します。1.MPFMの用途及び利点1.1MPFMとは油ガス層からの産出流体は,通常,原油(コンデンセート)―天然ガス―産出水からなる多相(Multiphase)であることが一般的である。多相流流量計測とは,原油・ガス・水各々の流量(既知の圧力温度条件下での体積流量であることが一般的)を計測することを意味する。これらの流量(生産量)に関する情報は,油ガス田の油層及び生産管理上,重要かつ不可欠な情報であること言うまでもない。従来の生産方式*本稿は石油公団石油開発技術センター石油工学研究室真鍋 亮(E-mail:manabe-r @jnoc.go.jp)が担当した。(図1)では,この多相流体はセパレーターを用い油/ガス/水に分離され,その各相流量を各々計測することが一般的であった。しかしながら,海洋油ガス田の開発・操業効率化を目的として,セパレーターによる分離を用いず各相の流量を計測する「MPFM」が提案され,同技術の確立が切望されてきた。1.2MPFM適用で期待されるメリット前述した従来式の「セパレーター+各単相流量計測」と違い,MPFMを用いた生産方式の場合,図1中の「テストセパレータ+各単相(油+水+ガス)流量計」が多相流流量計に置き換えることができる(図2)。この場合,下記のようなメリットが考えられる。1)生産流体の処理プロセスの単純化―21―石油/天然ガス レビュー ’02・11ネり,その設備コストの低減は非常に大きなものとなり得る。更に,図3に示すように,MPFMをテストセパレータに置き換えるのではなく,各坑井毎に設置する場合は,上記に加え更に下記のメリットが考えられる。6)坑井テストの精度,頻度向上に伴う油層管理精度の向上しかしながら,今後,MPFMのこのような適用を実現するためには,技術的信頼性の向上,機器の低価格化が必要である。1.3MPFMの用途MPFMの適用を検討する場合,その流量計測に求める仕様及び性能を明確にすることが肝要である。要求される仕様・性能は,その計測データを使用する目的に依存する。多相流流量計の用途は,大別すると下記の3つに分けられる1)。―油層管理&坑井試験用(Well Test &Monitoring)―取引用(Allocation)―会計用(Fiscal)それぞれの用途に対する多相流流量計の要求精度を表1に示す。この値は,目安となる一般的な基準であり,実際にはフィールドの特徴に基づきフィールド毎に設定されるべきである1)。例えば,油層管理目的で,水攻法の最適化を目的とし,ウォーターブレークスルーを管理したい場合には,水の流量計測精度に対する許容精度について充分検討すべきであり,ガス流量に関する情報はそれほど重要ではない。2.MPFMの概説表1 多相流流量計の要求精度 注)表内の値は各相の流量の読み値に対する誤差2.1. 多相流量計測の原理管内を多相流体が流動する場合,1)各相間に速度差がある,2)各相が不均質に分布している,等の理由により,各相毎の質量流量や体 図1 既存の生産方式による多相流量計測 図2 多相流流量計の適用例(1) 3 多相流流量計の適用例(2) 図2)設備コストの低減3)自動データ取得による操業コストの低減4)プラットホーム可載スペース及び重量の低減(海上トップサイド設置の場合)5)テストライン及びプラットホーム上での新規テスト設備の不要による設備コストの低減(海底設置の場合)以上のようにMPFMを設置することによって,様々なメリットが考えられるが,現状の機器の性能や信頼性に対する技術的リスクを考慮すると,僻地や連続モニタリングが必要なフィールド,インフラのない場所での坑井テスト等の特殊な場合を除いては,陸上フィールドにおけるMPFM適用の効果は一般的にあまり大きいとは言えない。しかしながら,海上トップサイド及び,海底設置の場合,陸上フィールドへの設置に比較してそのメリットは大きい。また,将来的にMPFMの性能が,会計用/取引用に充分耐えうるレベルになった場合,一切の海洋処理設備及びテスト設備を削減することが可能と石油/天然ガス レビュー ’02・11―22―マ流量を直接計測することは,現状技術では不可能である。よって,多相流流量計測とは,幾つかの流動パラメータを計測し,その各流動パラメータを組み合わせて計算することにより,各相の体積流量あるいは質量流量を計算する手法である。現在市販されているMPFMは,主に下記の二つのアプローチに大別される。1)各相の実流速と体積占有率を計測する手法(Type I)2)多相流体を均質化し,多相流体の総体積流量と各相の体積占有率を計測する手法(Type II)Type I では,計測パラメータであるガス,油,水,各相の実流速(vg,vo,vw)と体積占有率(αg,αo,αw)を用いて,各相の体積流量(Qg,Qo,Qw)は下記の式を用いて求める。Qg=――AQo=――AvgαgvoαovwαwQw=――A(1)(2)(3)ここで,Aは配管の断面積,添字g,o,wは各々ガス,油,水を表す。また,ここで留意すべきことは,各相の流量比(λg,λo,λw)は,直接計測することはできない流動パラメータであり,相間の速度差のため,計測可能な体積占有率(αg,αo,αw)とは一般には異なる値となる。また,各相の密度(ρg,ρo,ρw)が既知であるならば,各相の質量流量(Gg,Go,Gw)も下記で表すことができる。Gg=ρgQgGo=ρoQoGw=ρwQw(4)(5)(6)各相の実流速の計測には,相関型流速計測を用いるのが一般的である。相関型流速計測とは,ある流動パラメータを異なる2点で計測し,その信号の時間差を用いて二点間の平均流速を求める方法である。また,各相の体積占有率の計測には,様々な手法が提案されており,その代表的なものは,1)γ線密度計などの放射線源の流体への吸着特性を利用する方法,2)マイクロ波の減衰特性を利用する方法,3)油-水-ガス各々の電気特性(電気伝導率,静電容量等)の差異を利用する方法等がある。このうちγ線を利用したものが最も一般的であり,比較的精度も高いが,一般的にコスト高であり,計測周期が長いという難点がある。一方,静電容量などの電気的性質を用いた場合は,比較的即時性が高いものの,ノイズや電極の汚れ,電極?流体間の親和性といった課題をクリアする必要がある等,一長一短がある。他方,Type IIでは,均質化により各相間の速度差がなくなるため,α=λ(7)となり,各相の体積占有率(αg,αo,αw)と多相流体の総体積流量(Qt)のみから,各相の体積流量を求めることができる。Qg=αgQtQo=αoQtQw=αwQt(8)(9)(10)ここで,総体積流量の計測には,ベンチュリ表2 既存の多相流流量計の要素計測技術 ―23―石油/天然ガス レビュー ’02・11 窿Iリフィス等の絞り流量計,や,タービン型流量計を用いることが一般的である。また,Type IIでは,均質化の程度がMPFMの性能上重要であることは言うまでもなく,様々な均質化装置が開発されている。つまり,既存のMPFMの種類とは,各流動パラメータ計測要素技術の組み合せの種類であるということができる。既存のMPFMについて,使用している要素計測技術及び特徴を表2に示す。2.2MPFMの現状及び技術開発トレンドMPFMの研究開発は,80年代初頭に単独研究プロジェクトやJIPという形で開始され,90年代初頭のプロトタイプ機の室内/フィールド試験を経て商品化され,その幾つかは技術的のみならず,商業的にも成功を収めている。このうち,Agar(写真1),Roxar(Fluenta)(写真2),Schlumberger(Framo)(写真3)等は,比較的適用実績がある。MPFMのフィールド適用実績も90年初頭にはほんの数台であったものの,2000年には数百台が実際フィールドに設置され,今後も増加するものと思われる(図4)。また,地域的にも,開発を積極的に推進してきた北海,メキシコ湾のみならず,中東,中南米,アジア,オセアニア,アフリカ等,世界のあらゆる地域で設置されている。本邦石油会社でもMPFMに関心示す会社も多く,既に数社で適用が試みられている。これら既に商品化されている「第1世代」のMPFMのレベルを一言で言い表すなら,「一般的な操業条件の油ガス田において,油層管理&坑井試験用として充分な性能を持つMPFMが写真1 Agar社製MPFM写真2 Fuenta社製MPFM図4 MPFM設置実績(Falcone et. al.2))写真3 Framo社製MPFM石油/天然ガス レビュー ’02・11―24―eストセパレータより安価に導入できる」ということが言える。その一方で,更に多様なニーズ及び用途にこたえるため,いわゆる「第2世代」,「第3世代」といえるMPFMの開発が数多くなされている。それらの研究開発は下記に示す4つの方向性に集約される。1)取引用/会計用に向けての高性能化2)油層管理&坑井試験用の低価格化3)ウェットガス用多相流流量計の開発4)坑底多相流流量計取引用/会計用に向けての高性能化においては,既存の計測手法での延長線上で性能向上を図る正攻法の他,数値モデルやトモグラフィ(スキャニング)によるマッピングや,単純な圧力データ等を学習して膨大なデータベースを取得し,いわば経験的に結果を得るニューラルネットワークによる方法など,種々の方法が提案され,幾つかは実フィールドでの実証試験が行われている。現在のところ,これらの手法は商品化まで至っていないものの,コンピュータ処理の高速化に伴って,これらMPFMも,ゆくゆくはユーザーの選択肢の一つとなるものと考えられる。油層管理&坑井試験用MPFMの低価格化については,前述したMPFMの坑井毎に設置するといった用途を達成するためには,第一世代機のほとんどで用いられているガンマ線の吸収を利用した密度計測機器などの製作および管理にコストの割高な技術を用いないType I,II以外の新たな計測理論の確立が肝要である。石油公団で実施してきた研究開発もこの範疇に入り,その成果については後述する。その他,計測技術として非常に困難なウェットガス用多相流流量計の開発,マルチラテラル坑井への適用が魅力的である坑底多相流流量計の開発についても,未だ商品化には至っていないが,研究開発は活発に行われている。2.3MPFMユーザーとしての技術課題新技術であるMPFMの導入が,近年急速に進んでいるのは,その導入によるメリットが明確であることに起因すると思われるが,現状では,MPFMは’proven technology’ではなく,従来のセパレーション+単相流計測方式に比べ,技術的なリスクが高いことは避けられない。現状では,MPFMは単に「買ってくれば良い」機器ではなく,導入に際しては,下記の項目に際しての専門的かつ慎重な検討が必要である。(i)MPFM機種の選定(ii)較正方法(iii)MPFMのテスト及び性能評価2.3.1MPFM機種の選定現状では,全ての条件に対し充分な精度を持つ多相流流量計は存在しない。よって,ユーザーは,MPFMの用途,要求される性能,設置対象油田の特徴を充分に把握した上で,種々のMPFMのうちから,その要求に最適なMPFMを選定する必要がある。市販のMPFMの仕様を表3に示す。なお,これらの値は各社が公表しているカタログ及び文献調査から得たものである。一般的には,MPFM機種の選定にあたっては,下記の項目について検討することが肝要である。(i)計測性能(ii)信頼性(iii)ベンダーの実績2.3.2MPFMの較正MPFMの適用に際して,較正は,その困難さ,複雑さゆえ大きな技術課題と考えられている。単相流計測の場合に比べて,MPFMの較正の異なる点は,計測が各々の要素計測の組み合わせで行われているため,要素計測各々の較正を行うと共に,流動(あるいは各相の相分布)自体の相違をも考慮した総合的な較正の必要があることである。よって,MPFMの較正は下記の2つのステップを経て行われることが望ましい。1)静的較正静的較正は,通常ベンダー自身によって行われ,流量計各々の要素計測技術毎に,通常静的状態で行われる。つまり,要素計測技術の較正は,実際の使用条件からは独立して実施される。2)動的較正目的は,較正係数を決定し,かつ,出力結果や各々の要素計測技術の組み合わせに対する較正を実施することである。動的較正は,1)フ―25―石油/天然ガス レビュー ’02・11\3 各多相流流量計の仕様 的/電気的作動性,システムとしての整合性の確認も重要なテストの目的の一つである。1)フローループを用いたテスト本テストは,異なる流動条件下での計測精度とMPFMの適用範囲を決定するために行われる。また,テストがマトリックス的に実施できるため,MPFM出力結果の再現性,及び,幾つかの代表的な流動パラメータに対する感度を評価することも重要である。このようにフローループを用いたテストすることにより,種々の貴重な情報を得ることができるものの,テスト自体が高価になる,あるいは,実操業条件と異なる条件でのテストになる,等の欠点も存在する。2)フィールドテスト本テストはMPFMを設置した後,コミッショニングの一環として行われる。MPFMの性能は,その適用する操業条件に依存するため,本テストから得られた結果は,まさしくその適用に関する性能を表すものである。特に,MPFMでは操業条件の変化に伴う流動様式の変化により,その性能も著しく変化するので,想定される操業条件下での性能をテストする事が肝要である。しかしながら,本テストは,テスト条件の範囲が限定されること,基準計測値の信頼性が低いこと,感度及び再現性に関する評価はできないことなどが,短所として挙げられる。2.3.4MPFMの性能評価MPFMの客観的な性能評価は重要である。ここでは,ノルウェイ油ガス計測協会が策定した基準3)をベースに,性能の評価指標として, ローループによる較正,2)フィールドでの較正,の二つに分けられ,それぞれ一長一短がある。フローループによる較正では,流動条件を精度よく制御できるため,適用範囲全般にわたりマトリックス的に較正することが可能である。また,較正の元データとなる基準値の信頼性も高い。しかしながら,通常,実操業条件とは異なる条件(圧力,温度,流体物性,配管形状)で較正を行う場合が多い。他方,フィールド較正は,実際の適用条件下で行い,静的較正やフローループでの較正との操業条件の相違による較正誤差を減少させることを目的に行われる。フィールド較正では,一般的に基準計測値(ほとんどの場合,テストセパレータでの単相流計測)の信頼性が低く,かつ,再現できる流動条件も限られている。通常,MPFMの計測精度を要求する場合は,両方の較正を行うことが望ましく,どちらかが行えない場合は,計測精度が低下する可能性がある。また,希に,フィールドに較正用の設備を設けて,高精度の基準機を用い,実操業条件におけるマトリックス的なフィールド較正を行う場合がある。技術的には理想的であるが,通常,非常に高価であるため行わない。2.3.3MPFMのテストMPFMを選定,あるいは,性能を評価するためには,実フィールドに適用する前に実際にテストする必要がある。テストは,一般に,多相流動下におけるMPFMの出力値と基準計測値を比較することにより,その性能を定量化するために実施される。また,各構成機器の機械石油/天然ガス レビュー ’02・11―26―P)精度,2)感度,3)再現性,について述べる。1)精度(Accuracy)一般に計測精度は,計測値(measured value)と真値(true value)の差を表す計測誤差(measurement error),あるいは,真値が存在する範囲を表す計測不確定性(measurementuncertainty)という指標で理論的に表現される。しかしながら,通常真値は知りえないので,下記式に示すように真値の変わりに基準計測値を用いた計測誤差,EQ,を用いる場合が一般的である。EQ(%)=――――――×100|Qmeas.?Qref|Qref(11)ここで,基準計測値, Qref., は,各相流量の読み値を用いるのが望ましい。2)感度(Sensitivity)MPFMを油層管理・モニタリング目的で適用した場合,一般的に,この「感度」は「精度」よりも重要であることが多い。それは,計測値の絶対的な正しさよりも,計測値の「比較」から得られるトレンドから,物理現象を把握することが重要であるからである。よって,MPFMの性能に影響を与えるパラメータに関して,その感度を正しく評価することが重要である。ただし,MPFMのテストの項でも述べたように,感度は,フローループを用いたマトリックス型のテストにてのみ検討することができる。3)再現性(Repeatability)再現性とは,同じ流動条件下で,その他の条件(圧力,温度,流体特性等)が異なる場合での計測値の一致性を定量化したものである。この再現性に大きく影響を与えるファクターは,フィールド毎あるいはMPFM機種毎に異なるが,一般的に1)流体の物性,2)水の電気的特性,3)流動様式,等である。再現性は,フローループを用いたマトリックス型のテスト,及び,フローループとフィールドでの結果の比較によって検討することができる。3.JNOC/OVAL多相流流量計油層管理及び生産モニタリングを対象としたMPFMを目的として,JNOC-TRC独自の計測理論によるMPFM(図6)の開発にOVAL社と共同で取り組んできた。開発のコンセプトは,放射線機器を用いず機器構成の単純化と構成要素をすべて既存技術で構成することにより,徹底したコストダウンを図るという方針である。図5 計測精度と再現性4)図6 JNOC/OVAL多相流流量計概念図―27―石油/天然ガス レビュー ’02・11齦福ナ,同MPFMは,可動部を有し,かつ流体に対する影響度が大きく,さらに高いガス混入率や粘度には対応が困難といった制限を持つ。同MPFMは下記の4つの構成機器の組み合わせからなる。―インラインミキサー+差圧計―ツインロータータービン流量計―圧力計―温度計原理は,JNOC-TRCと名古屋大学の共同研究により開発された,液体用のタービン流量計とインラインミキサーを組み合わせた気液二相流の同時計測手法5)をベースに,翼角度が互いに異なる2つのタービンロータをスプリングで連結して直列二連化した「ツインロータ」(写真4)による総質量流量計測を組み合わせ,各相流量を算出する手法を取っている。ここで,kはバネ定数,Δθはロータ間の位相差,ζmpは回転トルク比と呼ばれる較正定数である。最後に,多相流体の気相体積率(GVF),βの推定方法は,下記に示すようにミキサーにおける差圧,ΔPから求める。ΔP=c1ρL(1?β)2-ZQmp(14)ここで,ρLは液相(油水)の平均密度,c1,Zは各々較正定数である。2以上のような理論に基づき,入力データとして操業の温度,圧力下での油,ガス,水各々の密度と共に,較正により決定した上記4つの較正定数(c1,Z,εmp,ζmp)を入力すれば,多相流の各相流量が求められる。1998年までのラボ実験を中心としたロータ機構と計測理論の最適化を経て口径2インチのプロトタイプ機を作製し,柏崎TF多相流実験設備を用いて,窒素-灯油-真水系三相流動下において性能評価試験を行った(写真5)。その結果,油,ガス,水各流量全てで,高GVF領域を除き,フルスケール誤差で概ね±10%以内の精度で三相計測が可能であることが検証された(図7)。写真4 ツインロータタービン多相流体の総体積流量は,一般に用いられているタービン型流量計測の基本原理,つまり,ロータの回転数が流体の流速,すなわち体積流量に比例する性質を利用して計測している。総体積流量,Qmp, は下記の式で表される。Qmp=ARmω/εmp(12)ここで,A,Rmは各々ローターの断面積及び半径,ωはローターの回転角速度,εmpは回転速度比と呼ばれるJNOC-TRC独自で定着した較正定数である。次に,ツインロータによる総質量流量計測では,翼角度の違いにより発生するロータ間のねじれ量が,流体の質量流量とガス混入率に依存する性質を利用している6)。多相流体の総質量流量,Gmp,は,下記の式で求められる。Gmp=kΔθΑ/ζmpQmpRm(13)写真5 フローループでの性能試験中のJNOC多相流流量計図7 JNOC多相流流量計の計測精度石油/天然ガス レビュー ’02・11―28―ニでより実効的な成果が得られるものである。なお,本件は,平成12年1月に調印されたADNOC-JNOC間の技術協力覚書(MOU:Memorandum of Understanding for TechnicalCooperation between ADNOC and JNOC)に基づくアブダビ国営石油会社との共同研究の中の1テーマである。4.2MPFMの設計・製作対象となる坑井の仕様,法律,規格に従い,MPFMを設計・製作した。対象となる坑井の生産量などを考慮に入れて作成したMPFMの仕様を表4に示す。ハード的には,MPFMの管理を2in. →4in. にスケールアップすると共に,配管についてはANSI/ASME B31-3,耐腐食性にはNACE MR-01-75に従い,材質を選定し,MPFM本体の製作を行った。また,データ処理,流量演算,データの保存を司るフローコンピュータを中心としたデータ取得システム(図9)についても設計製作し,第1期として導入予定のMPFM2基について製作を完了した。表4 上部ザクム油田に導入する多相流流量計の仕様 4.JNOC MPFMの上部ザクム油田への適用4.1 研究の背景ZADCO社の操業する上部ザクム油田の東部においては,2kmスペーシングの5点水攻法により開発がなされているが,従来の油層モデルでは予測し得なかった早期かつ特異な水付き現象が観察されている。当該油田のような炭酸塩岩油層は一般的に砂岩油層に比べ岩相変化が激しく,この不均質性が水攻法における圧入水の油層内流動挙動の把握を困難にしている。圧入水の油層内流動挙動を把握する際に,生産井での含水率の変化は最も単純で重要な指標の一つである。今回対象となる油田における含水率測定方法は,現在1回/月程度の頻度で井戸元から液体のサンプリングを行った後ラボにて遠心分離を行うというものであり,この方法では,1)井戸元での流れが均質でないため,サンプリングのタイミングによりデータにばらつきが生じる,2)サンプリング,分析にオペレーターが必要となり,作業量が多くなるため,測定頻度の低下をもたらしかねない,という問題点がある。MPFMの導入はこの点を解消し,少ない作業量で正確な含水率データを集中,連続的に取得及び蓄積することを可能にするものである。ここで得られたデータを基にして的確な物理検層プログラムを策定,実施し,詳細かつ正確な圧入水の油層内流動挙動を把握することが可能となり,最終的にはこれらの情報を油層モデルに反映させるこ 図8 MPFMを用いた含水率データの連続・集中取得及び解析概念図図9 多相流流量計則システム概念図―29―石油/天然ガス レビュー ’02・11.3MPFMの国内総合試験MPFMを実フィールドに設置する前に,柏崎TF多相流実験設備を用い,下記の目的で国内総合試験を行った(写真6)。―MPFMの機械的/電気的動作チェック―フローループを用いた動的較正―システム全体としての統合性の確認―MPFMの性能評価国内総合試験の結果,各構成機器,及び,システム全体として,MPFMが良好に作動することを確認した。また,計測精度についても,窒素-灯油-真水系の三相流実験での基準値との比較において,フルスケール計測誤差5%を充分満たすことを確認した(図10)。4.4MPFMの設置モニタリングが行われる坑井は,生産量が十分に大きく,かつ,油層モデリングスタディにおいて,近い将来含水率の上昇が見込まれている4つの無人坑井プラットホームが選定された。MPFMの設置に係るエンジニアリング及び写真6 国内総合試験中のMPFM 図10国内総合試験の結果によるMPFMの計測精度設置工事はZADCO社が行った。設置工事確認の結果,2機共にこちらの要求をほぼ満たす形でMPFM及びその周辺機器が,設置されていることを確認した(写真7)。写真7 設置されたMPFM4.5MPFMのコミッショニングコミッショニング作業は下記の項目に分かれる。―動作確認―入力データの収集及び入力―フィールドにおける動的較正―計測性能評価フィールド較正,及び,性能評価において使用する油,水,ガス各々の生産量に関するデータを取得した。液相,ガスの生産量については,テストセパレータ後の単相計測(液相はタービン流量計,気相は渦流量計にて計測)から得られる値を基準値とした。なお,液相,ガス共に生産量は実圧力温度条件下での値であり,それを以ってMPFMの出力値と比較検討した。ウォーターカット(BS&W)については,テストセパレータ入り口から約20分おきにサンプリングし,エマルシファイア(エマルジョンを分離する界面活性剤)を注入し遠心分離機に掛け石油/天然ガス レビュー ’02・11―30―ス後,メスシリンダにて計測した。以上得られたデータを元に,較正定数を決定し,それを入力した後,MPFMの計測性能の評価を行った。液相流量,ガス流量,ウォーターカット(BS&W)各々のMPFM出力とテストセパレータから得られた基準値との比較を図11?13に各々示す。図11 油生産量におけるMPFM出力と基準値との比較図12 ガス生産量におけるMPFM出力と基準値との比較―31―石油/天然ガス レビュー ’02・11}13 ウォーターカットにおけるMPFM出力と基準値との比較5.まとめMPFMという技術は,この比較的長い研究開発のフェーズを終了し,今,実際にフィールドで適用されるに至った。幾つかの石油会社では,試験的な意味合いでの貴重な経験をつんだのみならず,既に商業的にも成功を収めている。今後同技術が,広く商業ベースで導入されていくためには,開発側の更なる技術革新による同技術の成熟が必要であることは当然であるが,ユーザーである石油開発会社が,数多くのテストや適用実績を踏むことにより,技術的リスクを軽減していくことが不可避である。また,JNOC-TRCでも,開発されたMPFMをフィールドテストできるレベルまでに至った。いまだ,トライアルはコミッショニングを完了したばかりであるが,良い「第一歩」を踏み出すことができたと認識している。今後,モニタリングを継続することにより,長期的な性能や信頼性について評価する必要がある。また,このプロジェクトを通じて,MPFMの技術的な成果のみならず,導入意図である水攻法の最適化の一助となることにより,操業的にも成果を挙げることが望まれる。また,中長期的には,今後も継続的に技術開発を実施すると共に,本MPFMの商品化を検討する。また,本MPFMの更なるフィールド適用についても積極的に実施していきたい。6.参考文献1.Personal Communication at SPE ForumSeries in Europe,”Multiphase Production”(1997).2.Falcone, et. al.:“Multiphase FlowMetering: Current Trnd and FutureDevelopments”, SPE 71474(2001).3.Norwegian Society for Oil and GasMeasurement:“Handbook of multiphasemetering,”(1995).4.Manning, F.S. and Thompson, R.E.:“Oilfield Processing of Petroleum,”(1990).5.峯村,他:“タービン流量計による気流二相流の各体積流量の同時計測法”機論(1996)6.Ogawa, et. al.“Measuring Methed onMultiphase Flow of Gas, Oil and Waterusing a Turbine Flowmeter,”IMEKO-XV(1999)石油/天然ガス レビュー ’02・11―32― 図?14 プロジェクトスケジュール ―33―石油/天然ガス レビュー ’02・11
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2002/11/30 [ 2002年11月号 ] 真鍋 亮
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