ページ番号1006138 更新日 平成30年2月16日

石油供給増加のため投資は需要増に追いつけるのか?

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レポートID 1006138
作成日 2005-01-20 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 市場
著者
著者直接入力 Robert Mabro(ロバート・マブロ) John Smith(ジョン・スミス)
年度 2005
Vol 39
No 1
ページ数
抽出データ Analysisアナリシス石油供給増加のため投資は需要増に追いつけるのか? ここ半年余りの石油価格の異常高騰は、さまざまな要因が絡み合っているが、必ずしも現実の世界全体の瞬間風速的な需給を反映しているわけではないというのが、大半の石油専門家の見方といってよい。しかし、ここ1?2年で大幅に縮小してきたOPECの余剰生産能力が今後縮小したままであったり、完全になくなってしまうような事があると、中長期的に石油価格はこのまま高水準に留まったり、再び大規模石油危機を招来することになりかねない。この重要な余剰能力問題を一番大きく左右するのが、現在および今後の国際石油企業やOPEC諸国の国営石油企業による石油増産のための探鉱開発(上流)投資動向である。この上流投資動向を中心に、今後の中長期的な石油市場の行方を大きく左右する要因について、オックスフォード大学の高名な石油専門家ロバート・マブロ氏と、国際的に最も信頼の厚い欧米エネルギー専門誌の代表的石油/天然ガス・ジャーナリストに、これらの問題について論じてもらった(なお、後者については、諸般の事情によりペンネームで執筆いただいた)。1. 供給制約要因と石油価格高騰オックスフォード大学エネルギー研究所 前所長Robert Mabro 最近の石油価格高騰は、次のように表現することのできる重要な問題を提起した:この価格高騰は、石油供給システム(上流および下流の双方)におけるボトルネック――需要がいささか予想外に突然高騰した時に明らかになったボトルネック――によるものか。あるいは他の要因によるものか。 将来にわたって重要な意味合いをもつもう一つの問題は、存在する可能性のある供給ボトルネックはすぐに取り除かれるか、または、将来とも長期にわたって石油市場に影を投げかけるのであろうか、ということである。 2004年の石油価格高騰は、諸要因が一度に重なって、価格を上昇の一途に押しやったことによるものであった。これらの要因は、地政学的要因、経済的要因および偶発的要因の3つのカテゴリーに分類することができ、大半は、近い将来において重大な混乱が1石油・天然ガスレビュー生じかねないとの危惧を石油市場に生じさせるものだった。ここで、国際貿易における石油の基準価格は先物市場(NYMEXおよびIPE)において決定されるということを思い起こす必要がある。先物市場のトレーダーたちは、現況だけに注目するのではなく、将来にも注意を向けている。期待、認識または予測が将来の需給バランスの状態についての彼等の見方を形作り、したがって、価格形成に影響を及ぼす。絵:荒津瑞穂 将来の混乱への恐れを生じさせた地政学的要因は、イラク、ベネズエラ、ナイジェリアおよび(ユーコスと政府とが衝突した)ロシアにかかるものである。米国においては、さまざまなシンクタンク、コンサルタントおよびジャーナリストが、いわゆるサウジアラビアの政治的不安定性についての見解を広めている。彼等は、イスラム原理主義者がサウジの政体を打倒するであろうとし、このような出来事によりAナリシスWorldU.S.石油・天然ガスレビュー2ysisnalyAAnalysisAAysAnana nalysisAnalysisAAnssiissyyllaanA'75'76'77'78'79'80'81'82'83'84'85'86'87'88'89'90'91'92'93'94'95'96'97'98'99'00'01'02'03'04図1世界の稼動掘削リグ数の推移出所:Baker Hughes rig countた。われわれが持っていたのは、将来の不足への恐れだったのである。これは、地政学的リスクと厳しい技術的制約要因の存在について、認識が高まったことにより引き起こされた恐れであった。 しかし、これらの制約要因の性格はどういうものであろうか?? OPECの生産能力 石油市場・産業といった複雑かつ世界的なシステムは、円滑に作用するために、一定の余剰能力を持たなければならない。このシステムは、事故、天候の変化、労働者のストライキ、政治的出来事、予想外の消費増大等々の要因による不可避的な供給、または需要の短期的変動に対処するための、一定の余剰設備または緩衝在庫を有していなければならないということである。 この観点から、石油産業の上流部門に、一定の余剰生産能力を備えておくことが有益である。必要な余剰能力の最適規模については、見解が異なり得る。私の意見では、世界生産量の2.5%未満の余剰能力では、市場により不十分であるとみなされるだろう。特に、需要の増加が供給の増加によって十分に対応しきれないと予想される場合はそうである。これは、現在の状況において受け入れ得る余剰能力の最小量はおよそ200万ないし210万バレル/日であるということを意味している。リスクを嫌う専門家は、5%の余剰生産能力、すなわちおよそ400万バレル/日を求めるのかもしれない。私の意見では、この量は多すぎる。私は、「余裕をみた」量は、300万バレル/日台だと考えている。 一部の非OPEC諸国は、偶然的なのものを除けば、余剰生産能力を持たず、また、このように高くつく重荷を背負う意図もない。余剰能力の問題は、基本的にOPEC内に存する。 すべてのエンジニアが承知しているように、さまざまな「能力」の概念が存在する。したがって見積量もさまざまであり、これらは注意深く扱う必要がある。これらを額面どおりに受け取ると誤解を招くであろう。 一般的な合意を得ている現在(2004年)のOPECの生産能力は次のとおりである。 各方面での些細な誇張を考慮に入れて、私は、下限を3,050万バレル/日と見ている。一方、技術システムが70006000500040003000200010000重大な供給混乱が生じる恐れがあると主張している。 経済的要因とは、①中国、米国およびいくつかの中南米諸国における、予想外に大幅な石油需要の増大、②いくつかのOPEC諸国が有する余剰生産能力の大幅な低下、ならびに③特に米国における精製側の制約要因の出現、であった。 偶発的要因とは、石油施設・設備にこれまでの暴風雨よりはるかに大きな損害を与えたハリケーン・アイバンであった。 これらの要因のうちのいずれの2つか3つの要因であっても、価格を大幅に高騰させるのに十分であった。きわめて多くの要素が作用していたことを考えると、驚くべきことは、価格が上昇したことではなく、それよりさらに高い水準に上昇しなかったということであろう。 供給制約要因については最初に言っておきたいが、出現した多くの制約要因のいずれも、「物理的混乱」を引き起こしたわけではない。ここで私が「物理的混乱」というのは、消費者が通常買っていた燃料をガソリンスタンドやその他の小売場所で見付けることができないという状況である。物理的不足は、長い行列、または非価格的な制限配給の形で現れる。エコノミストは、需要量が、減少した供給量と同じ水準になるのに必要な程度まで価格が上昇するのにまかせれば、物理的不足は生じないと主張する。供給の減少が大きければ、価格が高い均衡水準に達するまでの間、引き続き行列ができよう。行列ができるのは、短期間であれ、長期間であれ、物理的供給問題の症候である。 2004年の状況の重要な特徴は、先に定義した意味での物理的不足は存在しなかったということである。世界のどこでも、行列を見た者は誰もいない。戦略備蓄が放出されることもなかっホ油供給増加のため投資は需要増に追いつけるのか?サウジアラビア10.5百万バレル/日イランイラククウェートUAEカタールベネズエラナイジェリアインドネシアリビアアルジェリア3.92.42.42.50.762.62.40.951.51.3431.25百万バレル/日(たとえ数ヵ月のみの期間であっても)過大に稼動する能力を考慮に入れて、上限を3,200万バレル/日と見ている。したがって、能力の範囲は3,050万ないし3,200万バレル/日である。 2004年のある時点で、OPECの生産量が3,000万バレル/日強になった。その時点での余剰生産能力は50万ないし150万バレル/日であったであろうが、これは、200万バレル/日とした最少必要量をかなり下回り、また、「余裕をみた」水準である300万バレル/日を大幅に下回っていた。 この状況は、近い将来において、改善するだろうか、あるいは悪化するだろうか? 答えは、需要動向、非OPEC供給量およびOPEC諸国での純投資により決まる。 私の推測では、需要は、2005年に180万バレル/日も増大する。非OPEC供給量は、120万バレル/日増加しそうであり、その大半は旧ソ連およびアンゴラからのものである(他の地域での増加は、他の非OPEC地域における減少により相殺されるであろう)。OPECに対する追加的な要求量は60万バレル/日を下回ることはなく、恐らくはそれを超えるだろう。 OPECの生産は、サウジアラビアでの2.5%からベネズエラおよびインドネシアでの6%以上までの範囲で生じる自然減少に直面している。年間総自然減少により、恐らく120万バレル/日の生産量が失われるだろう。OPEC諸国は、60万バレル/日の追加的純需要量を満たすのに必要な能力を創出することに加え、この自然減少を相殺するために必要な金額を投資しなければならないであろう。必要最低限の投資百万バレル100806040200-20-40-601234567891011121234567891011 月図2NYMEX原油市場における投機筋の動き(2003?2004)(非当業者のネット買/売持ち残高:正の値が買持ち)出所:CFTCは、180万バレル/日の石油生産のためのものであるが、これは能力を60万バレル/日しか純増させない。余剰生産能力を最低の200万バレル/日の水準にまで上げるには、さらに100万バレル/日の追加にかかる投資が必要かもしれない*1。2005年のOPECの投資額が、下記の280万バレル/日の原油を生産するのに十分なほど多くなるとは思えない。・ 自然減少を相殺するための120万バレル/日・ OPECの石油に対する追加的な要求を満たすための60万バレル/日・ 余剰生産能力を200万バレル/日の規模に回復させるための100万バレル/日 平均費用を1バレル当たり3ドルと仮定すると、この目標を達成するのに必要な年間支出額は次のとおりである。3ドル×365×2.8×100万=306億6,000万ドル このバレル当たりの費用見積額がバレル当たり1ドル増加するごとに、総支出額は102億2,000万ドルずつ増加する。 この目標は不可能なことではないが、一部の国有石油会社にとって完全には約束し得ない決然たる努力を必要とするだろう。私の感触では、余剰生産能力は、2005年の大半を通じ、余裕をみた水準には依然として低すぎる規模になるだろう。???@???????≪? 国際石油企業(IOC)の資本支出 IOCは、2つの問題に直面している。第1の問題は、きわめて大規模な埋蔵量を有する諸国へのアクセスが拒絶されていること(サウジアラビア、メキシコ)、魅力のない条件でしか可能でないこと(イラン)、戦争(イラク)もしくは受入国の関係当局による意思決定がきわめて遅いこと(クウェー*1: 訳者注:2004年の最低余剰生産能力を50万バレル/日と考えると最低投資による余剰生産能力の増加である60万バレル/日とたして110万バレル/日となる。余剰生産能力を200万バレル/日の水準にするには、さらに100万バレル/日の追加投資が必要である。3石油・天然ガスレビュー0億ドル50403020100アナリシス?199920002001200220032004*2005*2006*年*推定図3スーパーメジャー3社の上流資本探鉱支出実績と予算(色の薄い部分は想定幅)注:大規模買収を除く 出所:各社年報他AAnalysisAAysAnana nalysisAnalysisAAnssiissyyllaanAysisnaly正によるものであった。2000年以降は、埋蔵量増加に対する評価変えによる増加修正の寄与度は大幅に低下した。 したがって、上流にかかる資本支出は1994年から2003年の間に増加したが、この増加は、石油・ガス探鉱および開発の双方を含めるものであった。これは、バレル当たりの発見・開発費用の増加と関連付けられている。もとより、資本支出増加の一部は、成熟油田における自然減少を埋め合わせる必要があったことによるものであった。? ロシアにおける石油輸出の  ロジスティックス パイプラインや貯蔵・輸出ターミナルでのボトルネックは、まだ、ロシアの石油輸出に影響を及ぼすには至っていない。しかし、インフラは、予測されている2005年におけるロシアの石油輸出の増加に対処できないと思われる。 ロシアにおいて、石油会社は、明白な経済的理由により、国内の製油所に売るよりも輸出することを望んでいる。輸出では、国際価格で販売する石油により外貨を稼げる。国内販売で稼げる金額ははるかに少ない。会社の思うとおりにさせたら、国内製油所に石油を供給しないであろう。実際にはロシア政府が介入し、国内製油所が必要とする石油量を確保できるような方法い。 こうして、探鉱支出と開発支出の合計額は、名目ドルで、1994年の503億ドルから2003年の1,245億ドルへと増加した。これは、年平均にしておよそ10.5%の増加である。 これは、印象的なことのように見える。実際には、これらの支出額の増加と達成された結果とを比較する必要がある。 探鉱支出と開発支出の合計額は、上記9年間に146%増加したが、バレル当たり平均発見・開発費用は、バレル当たり4ドルから7.17ドルへと、すなわち80%増加した。言い換えれば、実質増加を見るためには、2003年の支出増加額をバレル当たり発見・開発費用増加額で除する必要がある。したがって、1994年から2003年までの実質支出増加は、37.6%にすぎないと推定され、したがって、この9年間の年平均増加率は3.6%にすぎない。 石油埋蔵量の発見(および成長)は、1994年の年間33億バレルから2003年の69億バレルへと増加した。調査の対象となった会社の石油生産は毎年増加し、66億バレルから109億バレルになった。しかしこれらによっても、生産量を埋め合わせることはできなかった。1995年から2000年までの埋蔵量リプレースメント*2は、主として、40億ないし60億バレルの埋蔵量評価の増加修ト)により長期間遅延すること、または複雑なアプローチを必要とすること(ロシア)である。第2の問題は、投資資本の高い収益率および自社株買戻し(株主への返金)を要求する株主からの大きな圧力に直面していることである。 非OPEC地域で操業している石油会社の資本支出に関するデータがあるが、これには、リビア、アブダビ、インドネシア、カタール等一部のOPEC諸国で操業している民間石油会社の支出も含まれている。 データは次のとおりである。① 探鉱支出は、1994年の127億ドルから1998年の219億ドル、2003年の245億ドルへと増加した。しかし、この増加は、1994年から2003年までの期間において連続したものではなかった。1996年の166億ドルから1997年の203億ドルへの急増があり、また、1998年の219億ドルから1999年の165億ドルへの大幅な減少もあった。同様に、探鉱支出額は、2001年に232億ドルであったものが2002年には202億ドルに減少した。② 開発支出は、1994年の376億ドルから2003年の1,000億ドルへと増加した。探鉱支出に関しては、1998年から1999年にかけて減少し、2001年から2002年にかけてはほとんど停滞した。 双方の場合について、1998年の原油価格の暴落が1999年の資本支出に悪影響を及ぼしたことおよび2001年9月11日の事件が2002年の資本支出に同様のマイナス効果を及ぼしたことが見て取れる。 これらの支出は、石油およびガスの双方を対象としている。私は、ガスプロジェクトと石油プロジェクトへの支出を分けているデータを見たことがな*2: 生産によって減少した埋蔵量を、埋蔵量の増大(新規の発見、既存油田の回収率の増加など)によって埋め合わせること。石油・天然ガスレビュー4ホ油供給増加のため投資は需要増に追いつけるのか?で輸出インフラへのアクセスを配分している。 この配分制度について、会社は、この制度の下では、自分たちが欲するだけ輸出することができないとの不満を述べている。このことは、しばしば、インフラにボトルネックが存在することを意味するものと誤解されている。 上述のように、これはまだ該当していない。しかし、この制約要因は、2005年には現実のものとなるだろう。いし50ドルへの価格上昇を説明することはできない。 需要が引き続き高率で増大する場合は、状況は今後悪化するかもしれない。 さらに、タンカーの構造的問題(「良い質」の船の不足)には心理的効果を伴う。この問題は、さまざまな理由により、かつ、さまざまな地域における一定の気がかりな逼迫状況のために全システムが障害を受けるとの見方を強めることになる。? タンカー 近代的な二重底タンカーの数は、需要に比べて不足している。他方、世界の船腹量は現在の輸出量を輸送するのに十分である。問題は、総量の問題というよりは、タンカー市場構造の問題である。事故により引き起こされる石油流出被害による費用を回避するために質の高いタンカーを求める者は、当然のことながら、運賃を押し上げる。この運賃上昇は、全船舶に波及する。 したがって運賃は大幅に上昇したが、これは、基本的に、量に対する需要よりも質に対する需要によるものである。 私は、石油価格高騰の相当部分を海運の問題に帰することはできないと考えている。輸送費用がバレル当たり2ドル、さらには3ドル上昇したとしても、バレル当たり30ドルから45ドルな? 精製設備 私の考えでは、精製にかかる制約要因および上流における余剰生産能力の大きな欠如がより重大な問題となっている。 2004年の夏、米国においてはガソリン不足が本当に危惧されていた。このためガソリン価格が高騰した。原油価格も上昇したが、上昇率は同じではなかった。その結果、精製マージンはきわめて大きくなった。「エコノミックアニマル」である製油会社は、大きな精製マージンからのインセンティブに応えた。製油会社は、製油所の利用率を高い水準に押し上げ、必要な保守作業の一部を9月に延期した。 2004年5月から8月まで、米国における製油所稼動率は、およそ96%に維持された。言い換えれば、製油会社は製油所を目一杯稼動させたということである。ガソリン危機は回避された。しかし、このためにはコストがかかる。9月および10月に保守を行わなければならない。この2ヵ月の製油所利用率は、83ないし89%であった。他の場合におけるよりも多くの保守作業が必要とされた。保守期間は長かった。その結果、冬を控えて必要な軽油(gasoil)在庫の積み上げが遅延した。現在、市場は、特に冬がいつもより寒かった場合について、軽油不足が生じる可能性を懸念している。この恐れが現在の原油価格の高水準を下支えしている。 私は、将来米国において製油所の制約が容易に取り除かれるとは思わない。各社は、製油所に投資することには気が進まない。米国における製品仕様が多様であることは(州ごとに、また場合によっては同州内の都市ごとに異なる)、問題を引き起こす。さらに、新製油所計画について許可を得ることは不可能に近い。 製油所の制約条件は、米国における石油需要が急激に減少しない限り緩和しないだろう。これはあり得そうにないので、今後一層の原油価格変動を予想しなければならない。これは、米国における石油製品価格の急上昇によるものであろう。また、時折生じる製油能力の不足により石油製品不足が生じる恐れにより、原油価格の高水準が下支えされることも予想される。2. 求められる想定油価の引き上げエネルギージャーナリストJohn Smith 2004年、原油価格が1バレル当たり50ドルを超えた。しかし、1バレル当たり50ドルは、実質ではこれまで最も高い石油価格ではない。石油価格が1バレル当たり50ドルに達するまでには24ヵ月近くかかっているが、これも「石油ショック」と呼べる状況には当たらない。しかし、現在の石油産業は、疑いもなく重要な変化の時期にあり、また、最大の変化を求める圧力を最も受けているのは上流部門である。多くの者にとっては、突然大量の需要が生じ、供給が不足しているように思われる。それに違いないが、これは突然生じた現象ではなく、石油産業が均衡を取り戻すにも長期間を要する可能性がある。 予想外に高い石油価格にもかかわらず、上流産業は、大盤振る舞いの投資を行ってはいない。OPECの増産余力は1日当たりわずか100万バレルに減少しており、世界の上流部門の健康診断をしてみても、明るい結果は出ていない。世界の石油の半分は120ヵ所の油田から出るものであり、世界の石油の20%は、わずか14ヵ所の油田から出るものである。これら14ヵ所の油田5石油・天然ガスレビューsisnalyAAnalysisAAysAnana nalysisAnalysisAAnssiissyyllaanAアナリシスの世情不安、ベネズエラの大統領解職投票、サウジアラビアの爆弾事件がBBCワールドやCNNの見出しになると、それぞれが価格を急騰させる新たな要因となった。 もっとも、これがこの事態の全貌ではない。事態の大半でさえない。過去2年間に本当に生じたことは、世界の石油需要のほとんど完全に予想外の急増である。現在、中国の石油輸入が40%の年率で増加したことや米国の石油需要が予想よりはるかに多いことは誰もが知っているが、2年前は、早期の根本的な兆しを見守ったり耳を傾けたりしている者は皆無で、その代わりにCNNを見ているだけだった。 その結果、昨年、世界の新たな石油発見埋蔵量は年間生産量の半分にしか相当しないという状況になっている。スーパーメジャーが探鉱に支出する額は減少の一途をたどっている一方で、既存の油田の開発に対する支出額は増加し続けている。かつての「世界の石油は枯渇しつつある」との脅威は最早妥当とは言えないものの、業界は単純に十分な石油が発見されていないという新たな脅威に直面している。? 国際石油企業(IOC)は1バレル  当たり50ドルの事態に無反応 石油価格が1バレル当たり50ドルを超えたことは、上流への投資ブームを引き起こすはずである。スーパーメジャーは、各四半期に巨額の予想外の利潤を得つつあり、したがって、このようにきわめて利益の多い価格で売るために、より多くの石油を求めて世界中を捜し回るものと予想された。スーパーメジャーは世界の石油の推定17%を生産するが、世界の埋蔵量の4%しか保有しておらず、したがって、1バレル当たり50ドルの石油価格は、新たな資産を購入してこの新たな収益を将来の成長に投資するための十分な資金は、いずれも44年以上操業している。世界の石油の4分の3は、30年以上経った油田からのものであり、これらの油田の回収率は40%未満である。スーパーメジャーは、過去5年間にわたり、油田開発に重点を置くために探鉱支出を削減し、そのほとんど不可避的な結果として、昨年の発見埋蔵量は、年間供給量の半分にしか相当しなかった。2003年、十大石油・ガス開発会社は、全体として、油田開発活動に500億ドル近くを支出したが、これは、1998年に支出した350億ドルをかなり超える額である。他方、純然たる探鉱支出の趨勢は逆で、昨年の支出額80億ドルは、1998年の支出額110億ドルより3分の1近く少ない。Wood Mackenzie、IHS Energy、John S. Heroldなどの上流のコンサルタントは、いずれも、このような探鉱支出の削減により埋蔵量発見件数や発見量が少なくなり、かつ、埋蔵量リプレースメント*3が全般的に低下している旨報告している。? いかにして1バレル当たり50ドルになったか いかにして石油が1バレル当たり50ドルになったかを説明するためには、2002年初に立ち戻る必要がある。当時、業界の関心は、エンロンの崩壊、OPECの新たな団結および石油価格を1バレル当たり約25ドルという、より持続可能な水準にまで戻すOPECの能力に集まっていた。同年中、関心は、中東における新たな戦闘行為――米国による2回目のイラク侵攻――の展望に移って行った。当時のイラクは、国連支援による「Oil for Food(石油食料交換プログラム)」に基づいて、1日当たり約300万バレルの原油を市場に供給していた。状況を手早く分析しただけでも、米国の侵攻があった場合には、イラクの原油は市場から姿を消し、価格は上昇するとの結論が出た。この状況の手早い分析のほとんどにおいては、一旦米国が勝利を収めたならば、状況はすぐに正常化し、世界石油市場に対する長期的な影響は生じないだろうとされた。投機家は、すぐに、ニューヨーク商品取引所(NYMEX)で軽質・低硫黄原油先物を買うことにより、この一見不可避的な趨勢に乗ってぼろ儲けする可能性を利用した。やがてヘッジファンドや専門商品トレーダーが先物市場にくまなく押し寄せ、石油価格を果てしなく押し上げた。公然たる戦闘行為が終わった直後にイラクの原油が市場に再び姿を現さなかったとき、投機家は、これを、市場での買いあさりを続ける理由にした。ナイジェリア図4世界の石油埋蔵量は「成長」している出所:BP統計*3:生産によって減少した埋蔵量を、埋蔵量の増大(新規の発見、既存油田の回収率の増加など)によって埋め合わせること。石油・天然ガスレビュー6ホ油供給増加のため投資は需要増に追いつけるのか?をスーパーメジャーに与えたはずである。しかし、スーパーメジャーはそうしていない。そうしていないことの原因は、世界の上流産業にとってきわめて大きな問題となっている。 スーパーメジャーは、一定の重要な要因に基づいて上流投資についての決定を行うが、最も重要な要因は、長期石油価格についての予想である。BP、エクソンモービル、シェブロンテキサコ、トタールおよびコノコフィリップスは、いずれも、1バレル当たり20ドルとの長期石油価格予測を用いている。つまり、上流への投資は、それが新たな探鉱井であれ、開発であれ、インフィールド(in?eld)ドリリング*4であれ、増進回収技術の実施であれ、いずれも1バレル当たり20ドルの石油価格で利益が上がるものでなければならないということを意味する。注目すべき例外は、シェルで1年間に大幅な埋蔵量低下を被ったためにもっと積極的になることが必要となり、現在、上流投資について1バレル当たり25ドルに設定した「キャッシュ中立レベル」を用いていることである。これらの長期石油価格予測と現在のスポット価格との間の差はきわめて大きい。スーパーメジャーや他のほとんどの上流事業者は、現在石油は1バレル当たり40ドルをはるかに超える水準で取り引きされているという事実を無視している。 この考え方の違いの主たる理由は、石油会社はきわめて長期にわたる組織的記憶を有しており、現在の石油会社の従業員のそれぞれすべてが、1バレル当たり10ドルという原油価格が石油産業を根底から揺るがした1988年初の石油価格を記憶しているということにある。石油会社の役員の大半は、石油業界で繰り返されるにわか景気と不景気の周期を少なくとも1回以上記憶している。このような周期においては、図5高水準の石油価格が新たな上流投資を促したかと思うと、誰もが同時に新しい油田を稼動させて価格が大暴落した。一見魅力的な儲けがあるにもかかわらず、現在の石油会社は、投資計画および財務予測において本来的に用心深く、現在の石油の高価格に反応しようとはしない。 1バレル当たり20ドルという投資上の基準は、上流探鉱支出の増加に対する最大の障害の1つとなっている。この内部的に課された基準は、スーパーメジャーが1バレル当たり25ドルないし27ドル、さらには30ドルで利益が出る可能性がある油田に投資することを妨げている。このことは、新たな油田を探鉱することについてと同様に、すでにスーパーメジャーの世界的な上流ポートフォリオに含まれている既存の発見埋蔵量についても等しく当てはまる。ほとんどの石油会社の経営者の大半は、業界が新たな、より高い石油価格環境にあることをまだ受け入れることができないでいる。 世界の上流産業が直面している第2の障害は、スーパーメジャーが新たな石油探鉱および生産の可能性について阻害されているように思われることである。スーパーメジャーが資金を割り当てる上で必要な、魅力的な財務条件を伴う有望性(prospectivity)を提供する国は、世界で驚くべきほど少ない。石油探鉱の面で世界で最も有望な地域、すなわち中東は、IOCに対して閉ざされているのと同然である。新たな上流石油ライセンスまたは原油生産物分与契約をサウジアラビアやイランで獲得するのはほとんど不可能である。しかし、埋蔵量リプレースメント率は変化に乏しい(可採年数)出所:BP統計というのも、両国それぞれの国有石油会社が自己の油田に対する絶対的支配権を維持しようとするからである。世界で次に最も有望な地域である西アフリカおよび米国メキシコ湾岸も、新たな上流投資については問題がある。ほとんどのIOCは、西アフリカの厄介な世情不安や石油生産の中断の歴史にかんがみて、上流投資となると、他の点では有望な西アフリカ諸国をきわめて用心深く取り扱っており、また、米国メキシコ湾岸における限定された深海鉱区をめぐる競争は激しく、価格を押し上げている。 興味深いことには、高水準の石油価格は、国有石油会社とビジネスを行おうとしているIOCの立場を一層困難なものとしている。NOC(国営石油会社)は、IOCが発表する巨額の利益を注意深く記憶しており、この収益の分け前にあずかることに熱心である。スーパーメジャーは、投資環境は有望というには程遠く、NOCが現在の高い石油価格のより大きなシェアを自国の国庫に取り込もうとして、契約締結料やロイヤルティをどんどん引き上げている旨報告している。? アジアのNOC アジアの国有石油会社および国家関連企業が、中東のNOCとスーパーメ*4: いままで採油していた坑井の間に新規に坑井を掘削して、生産され残った石油を回収する方法7石油・天然ガスレビューsisnalyAAnalysisAAysAnana nalysisAnalysisAAnssiissyyllaanAアナリシス欲と能力がある企業のコンソーシアムを日本のINPEX(国際石油開発株式会社)が主導している。 日本の石油企業は、なかんずく中東において上流事業を積極的に推進する外交政策から利益を得た最初の企業であった。アジアの他の多くの諸国は、日本の例から学ぼうと努めており、その成果はまちまちである。マレーシアのペトロナスは、単独の国有石油会社が自国政府の適切な支援を得て、また、もちろんのことすぐれた幹部経営陣を得て、いかに成果を挙げられるかの輝かしい例である。しかし、政治的なつながりを最もよく生かしているのは、中国の新興巨大企業、なかんずく中国石油天然気集団公司(CNPC)であろう。このPetroChinaの親会社は、カザフスタンからペルーに至る見事な世界的上流ポートフォリオを形成し、あたかも直接の「北京の代表」であるかのように取り引きする事実を隠そうとしない。もとより、この戦術は、中東および中央アジアの多くの地域において功を奏した。CNPCの成功の原因の一部は、欧米のスーパーメジャーと比較してかなり低い収益率を容認することができる能力に帰することができ、かつ、このアプローチの報酬として1日当たり240,000バレル*5の世界生産を示すことができる。? 石油産業は困難を乗り越える  ことができるか 重大な市場の基本的不均衡を回避するためには、世界のエネルギー産業が上流投資水準を引き上げる必要があることは明らかだと思われる。石油産業が実際に新しい、これまでより高い石油価格の環境に置かれていることを各企業が理解しているならば、最も迅速な解決方法は、上流企業が長期石油価格予測を1バレル当たり20ドルから引き上げることである。障害となってい石油・天然ガスレビュー8図6埋蔵量は圧倒的に中東に集中している(03年未確認可採埋蔵量)出所:BP統計図7油価は移ろいやすい。しかし、現在は構造的に高いレベルにある(ドル/バレル)出所:BP統計ジャーとの間に生じたこの間隙に殺到している。中国およびインドの国家関連企業が、欧米のスーパーメジャーが収益についてあまりにも非妥協的であると考えている、または取り引きを行うにはあまりにも政治的に評判がよくないと考えているホスト国政府と、上流事業の大規模な世界的ポートフォリオについて契約を結んでいる。この趨勢の明確な事例がスーダン、サウジアラビアおよびイランで見受けられる。スーダンのグレーター・ナイル・プロジェクトは、中国のCNPC、インドのONGCおよびマレーシアのペトロナスによって運営されている。これらはすべて、政治的な理由で欧米のメジャーに対して実質上立ち入り禁止になっている国から、原油を汲み上げる好機に飛び付いた国有、または国家関連の企業である。サウジアラビアの膨大な国内ガス埋蔵量は、結局のところ、なかんずく比較的低い収益率を容認した中国のSINOPECに認可された。イランのアザデガン油田については、米国の石油会社に対して依然として立ち入り禁止になっている国と取り引きする意*5:子会社のPetroChinaと合わせると260,000バレル/日を生産ホ油供給増加のため投資は需要増に追いつけるのか?るこの価格水準を1バレル当たり30ドル近傍に引き上げれば、1バレル当たり20ドルという企業投資基準を下回っていた鉱区で、新たに商業化し得るものが数多く見つかるはずである。上流産業は、利用されなくなった設備を放棄してはならず、油田サービス専門のSchlumbergerのような企業のもつ増進回収技術に基づいて多くの資金を投資することは容易なことであろう。上流部門は、過去20年にわたって見られなかったようなマージンや収益率を享受しているが、この新たな現実が十分理解されるには長期間を要する。9石油・天然ガスレビュー
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2005/01/20 [ 2005年01月号 ] Robert Mabro(ロバート・マブロ) John Smith(ジョン・スミス)
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