ページ番号1006145 更新日 平成30年2月16日

イラク:最近のイラク上流開発の動向とガドバン石油相の中露訪問について

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レポートID 1006145
作成日 2005-01-20 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 探鉱開発
著者 猪原 渉
著者直接入力
年度 2005
Vol 39
No 1
ページ数
抽出データ 1. 石油省の当面の課題 イラク石油省高官によると、石油省は、石油関連設備の治安改善と石油製品の円滑な国内向け供給の確保といった短期的課題の解決に注力しており、未開発大規模油田の新規開発交渉は完全に先送りされた形となっている(MEES 2004/11/15)。 石油関連設備に対する攻撃は依然頻発しており、北部のトルコ向け輸出パイプラインはほとんど機能しない状況が続いている。また、国内向け製品供給は攻撃の影響もあって滞っており、石油省は関連設備の安全性を確保すべく警備強化に躍起となっている。最近では石油省高官(国内製品供給会社社長)や現場労働者が殺害されるなど人的被害も増加しており、治安改善は石油省にとって当面最大の課題となっている。 治安問題に加え、政治面でも、1月30日に予定されている国民議会選挙が円滑に実施されるかどうかの見通しも立たないなど、2005年末とされる民主的な正当政権樹立までの道のりは険しいと予想されている。大規模油田の新規開発は、長期契約が必須であることから、メジャー各社は治安・政治リスクの高い現状では交渉に入る環境にないと判断し、静観姿勢を崩していない。イラク石油省側の姿勢も、新規開発の早期着手を強調していたウルーム前石油相(2004年6月、ガドバン現大臣に交代)在任時と比べ、明らかにトーンダウンしている。イラクの新規開発対象油田は、フイラク:最近のイラク上流開発の動向とガドバン石油相の中露訪問についてセイン政権時代に多くの案件が交渉ないし契約締結されたが、現在は、未契約案件で正式に入札が実施されているのはスバ/ルハイス油田(後述)のみである(表1参照)。その他の案件は入札予定のアナウンスもされておらず、進展は見られない。また、前政権時代に締結された開発契約(西クルナ油田等)については、石油省は現時点で契約の有効性は認めておらず、時間をかけて契約内容の再検討を行うとしており、事実上凍結状態となっている。2. 最近の主な動向 主要未開発油田の新規開発に係る交渉は当面開始される見込みにないが、上流関係で長期的コミットを伴わない案件については、いくつかの動きが出てきている。これらの案件は、治安改善や国内向け石油製品の供給確保といった重要課題に比べ優先順位は落ちるものの、将来の生産能力拡大につながる案件と期待されており、石油省としては、実施可能なものであればできる限り前進させておきたいとの姿勢である。ウルーム前石油相就任時(2003年9月)には、「未開発油田に対する新規開発推進による大幅な生産能力増強を行い、2010年頃に能力600万b/dの達成を目指す」との石油省方針が示されたが、現在は、「現状生産能力約75石油・天然ガスレビュー・ 石油省の当面の課題は、治安改善と国内向け石油製品の安定供給の確保。・ 新規(大規模)開発案件が実質先送りされる一方で、油層スタディ案件や中小規模油田の開発案件は進捗あり。メジャーはイラク側との関係構築を目指し、石油省との協議を実施。・ ガドバン石油相が中国、ロシアを訪問。フセイン政権時代にCNPC、Lukoilと締結した開発契約の取扱いについては、具体的な合意はなかった模様だが、今後の協議で両契約の先行実施が検討される可能性がある。250万b/dの持続と緩やかな拡大を図り、できるだけ早く(2005年末までに)300万b/dレベルに持っていくこと」が石油省の当面の目標と伝えられている。 2004年10月のIvanhoeとのカイヤラ油田スタディ実施に関する合意に続き、その後1?2ヵ月の間に、以下のような動きがあった。いずれも能力拡大面で大きなインパクトのある案件とはいえないが、石油省は、これらを早期に実現させることが当面の目標達成に向けての重要なステップと位置付けている。? キルクーク、ルメイラ両油田の  油層スタディ イラクの代表的生産油田である2油田の油層スタディに関する入札プロジェクト。サービス会社、調査会社に加え、大手石油開発企業各社(BP、Shell、Eni、Repsol-YPF、BHP-Billiton)を含む計13件(14件との報道もあり)の応札があったとされ、両油田とも5社ずつがショートリスト企業として選定された。11月23日に石油省高官が明らかにしたもの。 正式アナウンスはされていないが、一部報道では、Landmark(Halliburton系)、Schlumberger、ECLおよびBPがショートリスト企業に含まれており、Shellは外れたと伝えられている。ショートリストされた各社は石油省から再見積の提出を要請された。当初見積(提案書)には、能力増強を図るための長期の最適操業計画が見積範囲に含まれていたが、短期的な生産能力増強を重視する石油省の方針で、再見積では、操業計画の第1フェーズのみに変更された。事業費はおおむね300?500万ドル程度とみられるが、一部企業は無償実施を提案している模様で?る。? ハムリン油田、フルマラドーム   (キルクーク油田の一部)、  スバ/ルハイス油田の開発 北部ハムリン油田(6万b/d増産:数値はMEES2004/11/15による、以下同じ)、北部フルマラドーム(10万b/d増産)、南部スバ/ルハイス油田(各5万b/d、10万b/d増産)に関する入札プロジェクト。Sonoran Energy(米)、Petrel(アイルランド)、Petrom(ルーマニア)等の中小石油企業が応札している。 特にハムリン油田、フルマラドームについては、年末までの契約先決定を目指し応札企業との交渉が続けられた。また、スバ/ルハイス油田開発については、国営プロジェクト会社SCOPが進める他の入札プロジェクト(南部Fao港の石油貯蔵タンク、ガス供給パイプライン、ダウラ及びバスラにおける新規精製設備の各建設プロジェクト)とともに、2005年に契約先決定がずれ込んだ。? Woodside(豪)、Heritage(加)が北部油田開発に参入 Woodside(豪)は2004年11月16日、イラク石油省との間で、北部クルド地域の石油・ガスポテンシャル評価(6ヵ月間)およびイラク人エンジニアのトレーニング(パースで実施)に関する2年間の協力協定(契約発効日:11月12日)に調印したと発表した。Woodsideは、具体的には、数億バレルクラスの原油埋蔵量を有するとされるTaq-Taq油田(1978年発見)および1Tcf以上有するとみられるChemchemalガス田というクルド地区の2油ガス田を対象に評価を進める。WoodsideのDon Voelte CEOは「今回の合意はイラク石油のポテンシャルやリスクを検証するための第一歩」としているが、イラク石油開発への本格参入を狙うプレーヤーがまた新たに登場したといえよう。 6月にクルド自治政府がDNO ASA(ノルウェー)とクルド地域の探鉱開発契約を締結したが、今回、Woodsideは石油省と契約した。DNOの契約に対し、石油省が、地方政府に石油開発契約の権限はないとして強く反発したことが少なからず影響したものと考えられる。 また12月13日には、Heritage Oil(加)が北部クルド地域の油田開発を目的として、地元企業EagleGroupと合弁契約を締結したと発表した。? 他の石油企業も石油省とMOU協議 上記以外でも、ChevronTexaco、Shell、ExxonMobil、BP、Petronas等が、イラク石油省との協議を行っており、石図1イラク石油・ガス関係図イラク石油・ガス関係図カイヤラ油田ハムリン油田石油輸出ターミナル西クルナ油田スバ/ルハイス油田コルアルアマヤターミナルバスラターミナル383634323028 N040 E200km4240044464850石油・天然ガスレビュー76\1イラクの主な既発見未開発油田の概要油田名発見年可採埋蔵量生産状況生産能力マジヌーン西クルナ(フェーズ2)ビンオマールハルファヤラタウィナシリヤ197719731949197619501978121 億bbl未開発60 万b/d113 億bbl一部生産中80 万b/d63 億bbl46 億bbl31 億bbl26 億bbl一部生産中未開発未開発未開発45 万b/d25 万b/d25 万b/d30 万b/dスバ/ルハイス1969/196118 億bbl生産休止中25 万b/dツバガラフラフィダンアフダブ出所:Issam Al-Chalabi 他より作成197619791976197915 億bbl11 億bbl 7 億bbl4.5億bbl未開発未開発未開発未開発20 万b/d13 万b/d10 万b/d 9 万b/d進捗(契約・交渉実績等) *:フセイン政権下での動きTotal(旧Elf)と交渉実施*1997/6 ロシア3社(Lukoil他)とPS契約締結2002/12イラク側が契約破棄*2004/9 ConocoPhillipsがLukoilと提携合意し、本プロジェクトにも参加へTotal(旧Total)と交渉実施*BHP(豪)、CNPC(中)等と交渉*Shell、Petronas(マレーシア)等と交渉*Eni(伊)、Repsol-YPF(西)と交渉実施*フセイン時代、Slavneft(露)と交渉*現在は国営会社SCOPによる入札実施中ONGC(印)、Sonatrach(アルジェリア)と交渉*TPAO(トルコ)等と交渉*2003/2 Soyzneftegaz(露)と合意書締結*1997/6 CNPC(中)とPS契約締結*油産業支援に関する約20のMOUが交渉中(または調印済み)と伝えられている。上述のキルクーク、ルメイラ油田油層スタディ案件と同様、一部企業はスタディを無償実施するとの提案を行っている模様である。将来の新規開発案件についてイラク石油省は「公明正大な競争入札の実施」との方針を言明していることから可能性は低いものの、各社は、MOUを締結することで新規案件の契約交渉時に何らかの有利な扱いを受けたいとの思惑があることは否定できない。3. ガドバン石油相が中国とロシアを訪問 ガドバン石油相は2004年11月29日、イラクを出国し、ドーハでアティア・カタールエネルギー相と会談後、中国、ロシアを相次ぎ訪問した。 ガドバン石油相は12月2日、北京で曽培炎(Zeng Peiyan)中国副首相と会談し、中国企業がイラクの石油産業再建と経済発展に貢献するための活動を行うことを歓迎すると表明した。これに対し、曽副首相は、イラクの石油生産の早期増産が国際原油価格の安定に寄与するとして、自国企業がイラク石油産業へ参加することを政府として支援するとの考えを示した。両国は、エネルギー分野での協調を強めることで一致した。また、ロシアでは、ガドバン石油相は、12月7日に行われたプーチン・ロシア大統領とアラウィ・イラク暫定政府首相の首脳会議に同席し、エネルギー分野での両国の協力などについてハイレベルでの協議を行った。 専門誌等の見方では、今回の両国訪問で、CNPC(中)とLukoil(露)がフセイン政権時代の1997年に相次ぎ調印し、その後事実上凍結状態となっているアフダブ油田開発契約および西クルナ油田開発契約(表1参照)の取り扱いについて協議される可能性があると見られていたが、結局、今回の訪問では、両契約に関する具体的な合意事項は発表されなかった。ただし、イラクは中露両国と個別にエネルギー問題を話し合う定期協議の場を設置することで合意しており、今後、この協議の場で両契約の扱いについての協議が継続されるものと見られる。 ロシアは、西クルナ油田開発契約(1997年契約、2002年イラク側により破棄)は現在も法的に有効であるとして、Lukoilコンソーシアムによるプロジェクトの早期実行を求めているが、イラク側はこれまで契約の有効性を認めておらず、契約内容の精査が先決であるとの姿勢を崩していなかった。パリクラブ(主要債権国会議)が11月21日、主要加盟国が保有するイラク公的債務残高のうち8割を一律削減することで合意したが、以前から債務削減に前向きだったロシアは、プーチン大統領が、今回のイラクとの協議で削減幅を90%にまで上乗せすることを提示したと伝えられている。これに対する「見返り」をイラク側に求めたとみられる。 メジャー各社の動きが鈍く、未開発油田の新規開発が実質的に先送りとなり、当面大幅な生産能力拡大が望めない(300万b/d程度が限界か?)という状況であることから、イラクが今回の中露訪問において重要な決定を下す可能性があるとの見方もあった。すなわち、アフダブ油田および西クルナ油田開発契約について、従来の方針を覆し契約の有効性を宣言し、両油田開発を入札によらず中露企業によって先行実施させるという決定を行うという見方である。イラクにとって、中国、ロシアは米国主導のイラク戦争および駐留軍展開に非協力的な国であり、政治的にプライオリティーが高い国とはいえないが、イラク経済の早期復興に必要な石油生産の更なる拡大を図るには、中露両国の力を借りて上記2油田の開発を進める以外適当な手段が見当たらないという事情があるからである。 大臣に同行した訪問団は、South Oil Co.、Midland Refinery Co.、South Gas Co.など有力国営石油企業の社長クラス77石油・天然ガスレビューネど9名の石油省高官から構成されており、実質的成果の獲得を目指すイラク側の意気込みが伺われる顔ぶれであったが、とりあえず問題は先送りされ、1月の国民議会実施後に設置される新たな移行政権にゆだねられた格好である。とはいえ、イラクと中露両国の協議は、イラクの上流開発が動き出す転機となる可能性が高いという点で、今後もその行方が大いに注目されるところである。(担当:猪原 渉)石油・天然ガスレビュー78
地域1 中東
国1 イラク
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地域7
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地域9
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国10
国・地域 中東,イラク
2005/01/20 [ 2005年01月号 ] 猪原 渉
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