ページ番号1006153 更新日 平成30年2月16日

中国の DME 工場を訪ねて ―貧弱な LP ガス精製能力が支える DME の普及―

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レポートID 1006153
作成日 2005-03-20 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 技術非在来型
著者
著者直接入力 兼子 弘
年度 2005
Vol 39
No 2
ページ数
抽出データ Analysisアナリシス東京ガス株式会社R&D企画部主席研究員hrkaneko@tokyo-gas.co.jp兼子 弘中国のDME工場を訪ねて―貧弱なLPガス精製能力が支えるDMEの普及― 日本でも中小ガス田のマネタイゼーション(商業的有効利用)の新しい方法として、また低公害の新燃料として注目されているDME(ジメチルエーテル)の実用化は、中国の方が一歩進んでいる。2004年9月、中国最大のDME製造プラントが稼動している山東省臨沂(リンイ)市の久泰(ジウタイ)化工を訪問した。DMEを家庭用・自動車用・工業用の燃料として販売しており、石炭を原料としたDME製造設備の拡張が続いていることを確認した。その普及理由の一因は、LPガスに混入している残液*1(C5以上の液体成分)を、溶剤としてDMEを利用し燃焼させるためであることが判明した。LPガスに含まれる残液処理の重要性は四川省西昌(シーチャン)でも確認することができた。中国におけるDME普及は非常に急速だが、その背景には貧弱なLPガス精製能力がある。中国では多数のDMEプロジェクトが検討されているが、いずれも地方民間企業がイニシアチブを取っており、北京の中央政府は様子を眺めている。燃料DMEの保安基準や取扱法令は2004年末現在では国・地方ともまだない。瀋陽※ DMEとは、ジメチルエーテル(Dimethyl Ether)のことで、化学式CH3OCH3で表される最小のエーテル化合物である。DMEの物性はLPGに類似する。すなわち、常温・常圧で気体であるが、常温・6気圧または常圧・?25℃で容易に液化し、ハンドリングしやすくなる。現在、DMEは主としてスプレー噴射剤として、日本では1万トン/年、世界では15万トン/年程度使われている。DMEが天然ガス等から容易・大量・安価に合成できる可能性があり、易燃焼性、クリーンな排ガス、LPGに類似した物性等の特長を有していることから、注目されている。内モンゴル自治区茨楡新民鉄法遼陽盤錦台安河北省興隆台鞍山遼寧省1. 山東省久泰化工のDME工場包頭フフホト張家口オルドス盆地東勝銀川甘塘西寧夏自治区甘粛省GMGM呉堡延安楡林靖辺烏審旗 2004年9月14日、筆者は高圧ガス保俯谷安協会の視察団の一員として中国山東省の臨沂市に久泰化工のDME工場を訪問した。団長は大島榮次東京工業大学名誉教授、副団長は田村昌三東京大学名誉教授、以下高圧ガス保安協会液化石油ガス研究所から難波三男所長、柳川達彦DME室長、植松烈平主任研究員の5名に、岩谷産業から三木田裕彦総合エネルギー本部担当部長、北九州市立大学から黎暁紅(リー・シャオホン)助教授と張謙温(ジャン・チェンウェン)研究員の2名、通訳の吉村真理子さんそれに筆者の10名である。 臨沂市郊外のハイテクパークにある久泰化工は広々した前庭を持ち、日本や欧米の化学工場同様の現代的な外観を持っていた。工場設備と前庭は幅数十メートル、高さ数メートルの巨大な看板で仕切られていた。看板には『緑色能源 DME 造福人類(クリーンエネ西安陜西省黄陵銅川宝鶏渭南霊石M義馬0100km天津市源天津太原石家荘河北省山西省済南山東省臨沂鄭州河南省江蘇省図1山東省臨沂位置図塩城信陽ルギーであるDMEは人類に幸福をもたらす)』、『高新科技 DME 創造未来(高度な新科学技術であるDMEは未来を創造する)』と描かれていた。後から分かったのだがこの大看板の後ろにはDME製造プラントが連なっており、一種の目隠しの役割を果たしていた。 当日は副社長の李継選(リ・ジシュエン)氏、研究所副所長の王天寿(ワン・ティアンショウ)氏、李奇(リー・チー)DME部門長など5名が久泰化工側から参加した。我々の訪問は久泰化合肥*1:常圧で気体にならず、LPガスボンベの中に残留する液体化石燃料47石油・天然ガスレビューAnalysisAAysAnana nalysisAnalysisAAnssiissyyllaanAysisnalyアナリシス京国昌から導入したそうだ。元の技術は南化研究院が開発した国産技術とのこと。なお、久泰化工のDME合成法(『Combined acid-catalyzed dehydration method』と命名)は昨年、北京で開催された特許の展示会で金賞を受賞している。現在35名の研究員がいるが、今後大幅に増員を予定している。 久泰化工は工場内見学と撮影許可を出してくれた。あいにく激しい雨となり、背広がずぶ濡れになってしまったが、非常に興味深い設備を見ることができた。何より驚いたのは、工場設備のほとんどがメタノール合成装置に達する以前のプロセス、つまり石炭関係の設備で占められていることだった。ことに石炭ガスの脱硫設備が大きいことに驚いた。思い起こせば、昭和40年代後半、銀座のすぐ先にあった東京ガス豊洲工場でもやはり巨大な脱硫設備が稼動していた。原料を石炭にするということは、硫黄や重金属などの石炭公害をどう押さえ込むかという課題を背負うことになる。 釧路でJFEグループが行っているDMEの一段法の合成試験装置は100トン/日なので、年間生産能力は3万トンから3.5万トンに相当し、久泰化工のDME生産設備とほぼ同規模である。違いは製造方法だが、より大きな違いは釧路が単なる実験施設で、生産したDMEは再び原料に分解され実験材料となるだけなのに対して久泰化工はDMEでビジネスをしており、その売り上げで工場を操業している点にある。 久泰化工の現在のDME製造原価は2400元/トン(1元=15円で36,000円/トン)とのことであった。石油・天然ガスレビュー48写真1山東省久泰化工の工場入口。緑色の看板の後にDME合成プラントがある写真2山西省の石炭を砕き、ガス化するテキサコ法のプラント工にとっても良い宣伝材料のようで、『中国化工報』の劉蘇華(リュウ・スホア)記者が取材に来ていた。 久泰化工は2001年9月に年産5,000トンのDME製造プラントを竣工し、試験的な生産を開始した。李副社長はこの時に販売が順調だったので、現在稼動中の年産3万トンのDME製造プラントの建設を決めたと述べた。 現在稼動中のプラントは2003年12月に竣工した。中国有数の石炭産地である山西省から鉄道で石炭を輸送し、工場内で粉砕し、テキサコ法でガス化して合成ガスを作り、メタノール合成を経てDMEを合成する。この技術は既知の方法で、世界中のDMEメーカーが利用している実績がある。 同社はメタノール合成の技術は南?曹フDME工場を訪ねて2. 久泰化工のDME増産計画 DME販売が順調なので工場の増設工事が進行していた。増設DME工場は現在の工場敷地に隣接しており、6万トン/年の生産能力がある。2004年中の完成を目指しており、すでに巨大な合成ガスタンクや、DMEやメタノールのタンクが半ば完成していた。反応塔とおぼしき巨大な円筒形の装置も工事現場に横たわっていた。ここ臨沂でのDME生産は、現在稼動中の3万トン/年の施設と増設中の6万トン/年の設備を合わせると9万トン/年となる。なお、生産能力は稼働日数によっても変わるので、10万トン/年との表現もあり得る。 李副社長は天然ガスを原料にすると必要な資金量が膨大となり問題が多いと述べた。中国には豊富な石炭資源があるので、石炭からDMEを製造できれば天然ガスの代替にも、ディーゼル燃料の代替にもなると考えたのがこの事業に取り組み始めた理由とのこと。 内モンゴルの次期工場予定地から戻ったばかりの李副社長は色黒で、度写真3石炭からの合成ガス(COと水素)を貯蔵する水封式のガスホルダー写真4メタノールからDMEを合成する反応塔。肝心の箇所はカバーの中の強いメガネをかけ、額の生え上がった精悍な風貌の中年の人物であった。内モンゴルではまず年産10万トンのプラントからはじめ、2007年には年産50万トン、2010年には年産100万トンにまで設備拡張を考えているとのことだ。50万トンプラントまでいけば、現在2,400元/トンの生産コストを半額の1,200元/トンにまで下げられると試算している。内モンゴルの石炭は、消費地から遠く離れているため、非常に安価で、山西省の石炭の1/10で入手できる。久泰化工は1億元で炭鉱の採掘権を得たが、推定埋蔵量6億トン、厚さ30mの炭層は露天掘り可能で、無煙炭とのこと。石炭中の硫黄はガス化した後に脱硫し、硫酸工場に外販するとのことであった。 DMEの販売先は地元の山東省だけでなく、全国を対象に考えている。ト写真5製品のメタノールとDMEの貯蔵タンク群写真6DMEの出荷設備。傘をさす人が李継選副工場長、対話する人は大島委員長49石油・天然ガスレビューAナリシスysisnalyAssiissyyllaanAAnalysisAAysAnana nalysisAnalysisAAnは想像してなかった。石油精製設備の能力が高い今日の日本では、常圧で液体の軽質炭化水素はガソリン基材として無駄無く利用されている。帰国後、ご年配の方々にこの話をしたところ、昔は日本でも使い終わったLPガスボンベを揺すると「ポチャン、ポチャン」と液体がボンベ壁に当たる音が聞こえていたそうだ。昔は、LPガスは重さで販売していたので、納品時と引取時の重さの差を使用量と算定した。性質の悪い事業者は納品時の重さからボンベ自体の重さを差し引いただけで、客に残液量を知らせず、残液を転売して利益を上乗せしていたそうである。写真8久泰化工の工場調理場。料理長がDMEコンロの火力を調整している石油・天然ガスレビュー503. LPガス残液とDME 久泰化工は2万トンのDMEを工業用に、残り1万トンを燃料用に販売しているとのことである。工業用の用途としてはスプレー噴射剤、化粧品、発泡剤が主とのこと。燃料用のDMEは純度97%で、残りはメタノールと水だが、工業用は99.99%から98%まで4段階の製品グレードを揃えている。 さて、ここで我々は「DMEとLPガスの混合体を扱っていますか」と李副社長に質問したところ、やや謎めいた答えが返ってきた。「ええ扱っていますよ。都市では純DMEですが、農村部ではLPガス残液が全部使えるようにするために20?50%だけDMEを混ぜています。」 LPガス純度に応じたDMEが必要になるとのことなので、LPガスとの混合はこの工場ではなくて、客先でやるとのこと。顧客によってLPガス/DME比が異なるので、客先にはLPガス用タンクとDME用タンクがある。混合法は自然混合なので、LPガスが高純度なら3時間で済むが、低純度だと12時間もかかるとのことだ。 この説明を聞くまで我々は中国のLPガスに、プロパンとブタン以外の成分がそれほど大量に含まれていると4. DMEの様々な用途 行くまで全く知らなかったのだが、山東省には珍しい料理がいろいろあった。久泰化工を訪問した際、昼食時となったので、李継選副社長が我々一行を工場内の来客用食堂に招待してくれた。食事に先立ち調理場を案内してくれたが、DME燃料を使用していることを見せてくれた。長く伸びた火炎の色はオレンジ色で、複数ある調理器はどれも拡散バーナーを使用していた。周知のとおり中国ではこれまで練炭や石炭で調理が行われてきた。DMEでは熱輻射が小さすぎて調理は難しいのではと考えてきたが、料理長はDMEで十分調理可能だと説明した。 山東料理は北京料理の母体となった料理だそうで、周辺の農村から取れた豊富な野菜、キノコと肉類、それに養殖した淡水魚が次々に食卓に並んだ。どれも大変おいしかったが、イモ虫の唐揚が出てきた時は、日本側の一行は瞬間だが凍りついた。長さ16、7センチ、直径1センチ位のイモ虫(地元では「葉虫」と呼ぶ)が30匹位、皿に盛り上がっている。なんでも食べる方針の私と難波三男高圧ガス保安協会液化石油ガス研究所長はさっそく手を出したが、味はチーズのようでコクがあり、揚げた写真76万トン/年の設備工事現場。左の円筒タンクがDME用ヨタ自動車が進出する広州の南沙開発区に年産10万トンの製造設備を構想しており、まず年産3?4万トンでスタートしたいとのことだ。 工場建設に必要な費用は銀行融資と株式発行でまかなっているが、近く株式公開して広く資本金を集めたいと資金計画を説明した。国の資金援助は全く受けていないそうだ。?曹フDME工場を訪ねて写真9DMEで調理した山東省の名物料理(現地で「葉虫」と呼ぶ虫料理)写真10製陶工場で利用されているDMEタンク。山積みの皿が出荷を待つ写真11DMEとガソリンの両方のタンクを持つスクーター。指差す先がDMEタンク写真12DMEによる鋼板切断のデモンストレーションての香ばしい油の香りでなかなかイケた。しかし、やはり姿がイケない。特に足がゾロっと並んでいると、気持ちが悪い。隣に座った王天寿研究所副所長に上手に勧められて、さらに4匹も食べてしまった。 その夜、我々は答礼として宿泊していたホテルに李副社長、王研究所副所長、李奇DME部門長らを招き、地元料理で歓待した。この時なんとサソリの唐揚―それも山盛りの―が出た。サソリは黒く手のひらに乗るくらいのサイズで、おしりの針を抜いて食べるよう教えてもらった。味はサクラ海老に良く似ていた。 なお、DMEの用途として白物陶器の焼成炉(LPガスとの混合燃料)や、鋼板ガス溶断設備が実際に稼動している場所も訪問できた。自動車用にはディーゼル代替として純DMEを、ガソリン代替にはLPガスとの混合燃料を利用していた。まだ乗用車30台、オートバイ6台、バス1台しかDME化していないが、来年には乗用車35,000台、バス30から50台をDME化する予定とのことだった。5. 保安規則と合成ゴム膨潤問題は未着手 高圧ガス保安協会の訪中目的は、中国でDMEが実用化されているなら、当然その利用のための法規ができているに違いないと想像し、中国のDME保安規則を入手することだった。しかし、久泰化工の話では保安規則まだないとの返事だった。地元政府から保安規則について相談があったので、これから検討するとのことだった。51石油・天然ガスレビューAナリシスないくらい錆びだらけで、土台が腐食して傾いているものもあった。 久泰化工がおおらかなのは、交通規則でも同様だった。日本ではDME車が公道を走るのに警察の許可がいるため、我々を工場内で乗せたDMEバスが工場外に走り出た時は、特別な許可が必要ではと尋ねたが、質問の意味不明という印象で、大丈夫だとの答えが返ってきた。 中国が非常に大胆に技術導入を行い、規則や法律は後から考えようという姿勢であることが良く分かり、感心と同時に、寒心もした工場訪問だった。ysisnalyAssiissyyllaanAAAnAnalysisAAysAnana nalysisAnalysisいてはLPガスのインフラが使えるが、まだ問題解決に至っていないと見ている。中国は石炭の国なのでDMEには期待している。久泰化工は臨沂市政府の強力な後押しを受けているので、市内のLPガスをDMEに転換することは順調にできるだろう。しかし今後、中国各地でDME事業を成功させられるかどうかは不明である。中央政府の協力が必要になるだろう。久泰化工がメタノール製造とDME製造を二段階に分けて行っているのは賢明である。中国ではメタノール価格が高く変動幅も大きいので、DME需要が伸びなくてもメタノール販売で元が取れると思われる。シール問題を含めて日本との技術協力に期待している。」 さて、中国化工報では我々一行が久泰化工を訪問した時の様子を、9月16 高圧ガス保安協会からは、日本のDME研究の概要紹介が行われ、DMEとLPガスの火災実験、容器爆発実験の貴重な映像が進呈された。また日本の高圧ガス取締法・保安規則の一連の書籍も寄贈された。 高圧ガス保安協会側からは、日本で問題となっているDMEによる合成ゴムの膨潤についてどのような対策を採っているか質問したところ、「気にしていない。その問題はDMEが液状の時だけ生じる問題だが、ボンベはいつも立っているので、ガスしかゴムパッキンに触れない。」との答えが返ってきた。日本側の一同は唖然としてその回答を聞いた。 久泰化工のボンベ管理は、取り締まりに当たる高圧ガス保安協会の一行を不安がらせる程、おおらかだった。我々はDMEをボンベ充填する現場も見せてもらったが、DMEはボンベ充填時に断熱膨張し、温度が下がり、沸点以下となり液化してしまうので、これを避けるために現場ではボンベに熱湯を盛んにかけており、充填所内部は蒸気の白煙に包まれていた。ボンベの塗装は所有会社の名前が判読できないほど剥げ落ちており、日本では見たことも6. 北京での評価 翌日我々は臨沂空港から、青島空港に戻り、首都北京に向かった。北京では中国のガス協会にあたる中国城市燃気協会を訪問してから、中国化工報の本社を訪ね、?長江(ハオ・チャンジャン)社長、曲京佳(チュー・ジンジャア)国際事業部主任、李鉄(リ・ティエ)企画センター主任と面談した。 中国化工報は中央政府の中国化工部に属し、すでに20年の新聞発行の歴史を持っている。日本の化学工業日報とは十数年来の交流があり、記者の交換も行っている。2004年4月には中国化工報の主催で『中国DME業界トップフォーラム』を北京で開催し、中国のDME情報を最も詳細に内外に発信している機関である。?社長はDMEの現状と展望について次のように語った。「DMEはここ数年で話題となった新燃料である。シール性能の問題を除写真13北京の中国化工報の本社での取材調査風景。左から2番目が?社長写真14中国化工報2004年9月16日の写真石油・天然ガスレビュー52?曹フDME工場を訪ねて日の一面にカラー写真で大々的に報道していた。写真の説明は次のようなものであった。『エネルギー不足が世界各地で注目を浴びる中で、日本の経済産業省の委託事業で訪中したDME調査団。日本DME燃料安全性評価委員会委員長大島教授(左から3人目)一行10名は、14日山東久泰化工科技株式有限公司を訪問し、現在世界で規模が最も大きいDME生産基地を視察し、DMEの工業生産化、市場での販売拡張および安全性の評価に対して、実地の調査検討を行った。』 ところで、中国化学報の事務所だが、建物は古くてさえないのだが設備は非常に先端的で感心した。編集部はLANシステムで運営され、大型液晶ディスプレイが社員の机に並んでいた。パーティションで小間に区切られた机の配置は日本と同様だが、書類がほとんどなく、電子ファイリングが行き届いていることが分かった。印刷前の原稿の誤字を当方が指摘すると、5分後には修正された紙面が会議室に届けられた。 中国化工報は米国のケミカル・ウイークとも提携しており、2005年には米中合同のシンポジウムを北京で開催するとのことだった。7. 四川省西昌市 北京から、DMEが都市ガスのように配管供給されていると噂の四川省西昌市を訪問した。西昌は四川省の都市だが、雲南省に近く、中国の少数民族のひとつであるイ族が多数を占めている。西昌空港は小さなローカル空港だが、ロケット打上基地であることから、中国要人の来訪も多いようで、整った設備があった。観光名所にもなっているので、ロケットのミニチュア模型や記念切手を売っていた。イ族の伝統工芸品である鮮やかな原色模様をあしらった漆器類も売店に並んでいた。 我々調査団の受入は在日中国大使館から外交ルートで依頼したため、西昌市のある涼山(リャンシャン)州政府は外事弁公室の王昌金(ワン・チャンジン)副主任と、譚京(タン・ジン)副科長が深夜にも関わらず西昌空港に甘粛省陜西省0100km四川省四川省西昌西昌雲南省成都成都四川盆地四川盆地重慶重慶市湖北省?湖南省貴州省図2四川省西昌位置図出迎えてくれた。宿泊したホテルはレストランがすでに閉店していたが、お二人の手配でウドンと水餃子の夜食が用意されていた。譚さんはイ族の女性で王氏は漢族の男性、ともに30代後半の大柄で活動的な人達だ。写真15西昌郊外のLPガス基地。LPガスを貯蔵した大型タンク群の左端が残液タンク写真16西昌市内の準工業地帯にあったDME基地。入構を拒否され、基地外から調査53石油・天然ガスレビューsisnalyAAnalysisAAysAnana nalysisAnalysisAAnssiissyyllaanAアナリシス 工場には直径1メートル強、長さ4メートル程の円筒横置きタンク3基と直径2メートル、高さ3メートル程の円筒縦置きタンク1基があることを確認した。撮影した円筒縦置きタンクの配管の先にはシリンダー充填用のコンプレッサー室が写っていた。どうやら、円筒横置きタンクにはDMEが入っており、LPガス残液をローリー車で運び込み、円筒縦型タンクで混合して出荷するらしい。してみるとこのDME燃料はLPガスとの混合燃料と言うより、C5以上の重質分とDMEの混合ガスということになる。これなら火力は十分だろう。残念ながら何社長は用事があると途中で姿を消してしまった。 その後、我々は王副主任の住む公務員用の中層アパートに招かれ、LPガスが配管を通じてアパート群に供給されていることを確認することができた。西昌のLPガス消費者は自分の手でLPガスボンベを扱うことはない。もしC5以上の重質分とDMEの混合ガスが供給されていたとしても、消費者には分からないシステムである。 寧夏回族自治区の銀川では寧夏石化集団公司、中媒四達鉱業公司、西安交写真17西昌市内のLPガス器具販売所。初めて利用する時はLPガスボンベも抱き合わせで買わされるが、その時はガス器具が大幅割引となる石油・天然ガスレビュー54 翌朝は、西昌市の郊外にあるLPガス会社を訪問するため、マイクロバスに乗った。西昌市は人口50万人で都市部には約20万人が暮らしている。きれいに整備された幹線道路を離れると、すぐに山間部になり水牛が田畑を耕す田園風景が広がっていた。まだ9月なのに周囲の山にはすでに紅葉が見られ、チベットとの省境も近いことから、この地域の農業が非常に厳しい気象条件に置かれていることが分かった。これまで目にしてきた山東省や北京郊外の豊かな農村風景とは異なる貧しさが随所にひろがっていた。イ族の農民や子供は汚れた服を着ており、山間の田畑はいずれも狭小で、人も水牛も痩せていた。 LPガスの基地は山の中にあった。直径約2メートル強、長さ約6、7メートル程度の枕型のタンクが5つ並んでいた。西昌LPガス会社の何(ホー)社長によれば、新疆ウイグル自治区から貨車で国産LPガスを受け入れている。品質に問題があり、C5以上の重質成分が多く、残液の処理が問題となっている。5つあるタンクの内、左端のタンクは残液を溜めておくための残液タンクである。最近の国際的な原油価格上昇の影響はここ西昌にも及んでおり、15kgのシリンダーが、8月には65元(約975円)だったが、今月は72元(約1,080円)に値上がりしているとのことだった。なお西昌は高地のため気圧が低く、15kgシリンダーに13kgしか充填できないそうだ。 我々はその後、LPガス流通の末端である配送センターも訪問したが、ここではオートバイが配送の主要な手段となっていた。 さてこれまでのところ肝心のDMEが出てこない。何社長にDMEを供給しているかどうか尋ねたところ、自分の会社ではないがDMEを供給している会社があるとのことだった。DMEは火力が弱いので評判が悪いと語った。黎助教授がDME供給の現場を見せて欲しいと懇願したところ、何社長は我々を西昌市内の準工場地帯に案内してくれた。到着した工場は非常に厳重に警備されており、上層部の許可が無いと入ることも写真撮影もダメとのことで、すぐに追い出されてしまった。8. 中国のDME事業・技術開発DMEプラントを建設し、エアゾール用DMEを生産している。 『中国化工報』を黎助教授が調べたところ、中国で計画中のDME事業は10ヵ所以上にも上るそうだ。北京市で開催された『中国DMEトップフォーラム』における中国化工国際諮問公司の白雪松報告では、中国のDME生産は1990年代初頭にメタノールからDMEを製造する小規模生産に始まり、2004年には国内の総生産能力は6.5万トン/年に達している。 1994年に広東省中山市精密化工実業は、2,500トン/年のDME製造プラントを建設し、現在は5,000トン/年に拡張している。1995年に成都華陽威遠天然ガス工場は2,000トン/年の?曹フDME工場を訪ねて通大学、化工部第二設計院、中国成達化学工程公司などが共同で83万トン/年のDMEプラントを計画している。投資金額は47.8億元だが、米国政府が67.5万ドルの援助を申し出ているとのことだ。このプロジェクトの技術はエア・プロダクト社の一段法(合成ガスから直接DMEを製造する技術)を用い、建設も米国のフロア・ダニエル社になる見込みである。DME生産コストは1,200元/トンで、毎年230万トンのlingwu(?武=霊武)石炭を消費すると報じられている。 四川省の濾天化集団は地元産天然ガスを原料に、二段法でメタノールからDMEを生産している。この技術は日本の東洋エンジニアリング(TEC)から導入し、2003年から1万トン/年の本格的なDME生産を実施している。天然ガスからのメタノール製造プラン写真18西昌のLPガス配達所に張られていたLPガスの値上げ通告書。消費者を意識して非常に丁寧な表現トは49万トン/年の規模で、DMEの純度は99.69%とのことである。濾天化集団は10万トン/年の次期DMEプラントを計画している。9. 中国独自のDME技術開発 黎助教授は日本ではあまり知られていない中国独自のDME技術開発情報に明るく、次のような研究グループが活発な研究を行っていると教えてくれた。 精華大学と精華紫光英力化工技術有限公司は、2003年から四川省重慶で天然ガスを原料とする一段法によるDMEプラント(生産能力3,000トン/年)を立ち上げ、現在運転している。精華大学化工系の王金福教授がリーダーで、スラリー床による反応装置といわれている。このグループは研究成果も、研究計画も公表していないそうだ。 中国科学院山西石炭化学研究所は中国におけるGTL研究の中心となっている。すでに北海道勇払のGTLプラントをしのぐ20バレル/日のGTL実験プラントが稼動している。1997年に山西省大同市に5,000トン/年の一段法によるDMEプラントが完成し、すでに操業している。 上海石油化工研究院は江蘇省昆山で1,000トン/年のDMEプラントを操業している。 浙江大学と中国五環化学工程公司、湖北田力実業公司は共同で1,500トン/年のDMEプラントを運転しており、CO転化率は70?80%とのこと。 一段法のDME製造研究には気相で反応を扱う気相一段法と、スラリー床を用いる液相(三相とも呼ぶ)一段法がある。中国科学院大連化学物理研究所、蘭州化学物理研究所、浙江大学は気相一段法を研究しており、精華大学、山西省石炭化学研究所、華東理工大学化工学院は液相一段法を研究している。10. 中国のLPガス事業 中国のLPガス市場規模は2003年現在で1,711万トン/年と、日本のLPガス市場規模と並ぶスケールにまで成長している。国内生産量は1,077万トン/年で、輸入量は636万トン/年である。差の2万トン/年は輸出分である。中国で生産されるLPガス量は、輸入LPガスの価格に左右される。輸入LPガスの価格が高くなると輸入量が減少し、国内生産量が増加する。逆に輸入LPガスの価格が低くなると輸入量が増大し、国内生産量が減少する。中国でLPガスを生産しているのは中国の油田地帯である東北と華北、輸入原油の精製基地がある華東と華南である。広東省や上海に海外LPガスの輸入基地があり、東南アジアや中東からのLPガスを輸入している。 輸入LPガスにはC5以上の炭化水素55石油・天然ガスレビューsisnalyAAnalysisAAysAnana nalysisAnalysisAAnssiissyyllaanA写真20西昌の一般庶民の台所。練炭は給湯用。LPガスは調理用。電気は電気釜だけと使い分けているた高圧ガス保安協会と北九州市立大学黎暁紅助教授、日本ガス合成株式会社(矢野俊比古社長)に感謝します。なお、小論は高圧ガス保安協会ならびに筆者の所属する組織とは無関係な筆者の個人的見解であり、その責任は筆者が負うべきものです。11. 今後の予想 今回の訪問で筆者の見たのは、もはや後戻りできないくらいグローバル経済の一環に組み込まれている中国の姿だった。四川省西昌のような僻地に近い地方までもが、国際的なエネルギー価格高騰に巻き込まれ困惑していた。国産石炭会社も便乗値上げし、中国のエネルギー会社はどこも潤っていたが、燃料を購入する立場の農民や都市生活者は、練炭、ガス、電気などを節約して生活防衛に必死であった。LPガスの残液利用が今後10年以上続くとは考えにくいが、現状では有効で、DME事業立ち上げに役立っている。 中国のエネルギー不足は今後さらに深刻になり、石炭、石油、天然ガスなど可能な限りの国産資源開発の努力がなされ、燃料DMEも一定の市場を掴むことができるだろう。釧路で開発中のDME直接法は中国が欲しがる技術であることは間違いない。 しかし中国元が交換可能となり、妥当な水準まで切り上げられれば、輸入LNGやLPガスが相対的に安価となるので、中国の国産エネルギーの優位さ写真19西昌市内のエリート公務員住宅だがエレベーターはない。LPボンベは建物の外に建てられたボンベ小屋に並んでおり、黄色い細管で各戸に供給されているは失われていく。その時に燃料DMEが生き延びられるかどうかは不明である。 また北九州市立大学の藤元薫教授により4年後に完成予定の天然ガスからのLPガス合成技術が、DMEを単なる中間原料にしてしまう可能性もある。DMEの運命はまだ定まっていない。 本原稿作成に当たりご協力いただい参考文献1. 今回の調査報告書は間もなく高圧ガス保安協会から出版の予定。(仮名:『DME燃料実用化基盤事業に係わる海外調査報告書』、2005年)2. 黎暁紅:『急拡大する中国DME市場』、高圧ガス、2004年10月号46-473. 白雪松:『クリーン燃料DMEの応用と需給見通しの検討』、2004年4月12-14日、北京、「中国DME業界トップフォーラム」における発表資料(高圧ガス保安協会翻訳)4. 田春栄:『中国LPガス需給状況と2004年展望』、China LPG Conference 2004(西安)、LPガス振興センター「海外LPガス情報の紹介」104号、平成16年4月5. 兼子弘:『新燃料の開発状況と展望 ―LPガス合成技術の進歩―』プロパン産業新聞、2005年新年特大号石油・天然ガスレビュー56成分はほとんど入ってない。LPガスの残液は国内の古い石油精製設備から生み出されている。上海や広州で建設が進むシェル、BASF、BPなど外国資本による石油化学工場ではC5以上成分を無駄に出荷することはないので、LPガス残液を商売の種にする時代がそれほど長くは続かない可能性がある。アナリシス
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2005/03/20 [ 2005年03月号 ] 兼子 弘
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