ページ番号1006162 更新日 平成30年2月16日

中国、インド、ASEAN による戦略備蓄の創設の動きと IEA による協力 ―将来の石油緊急時対応における協調体制の構築を目指して―

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レポートID 1006162
作成日 2005-05-20 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 備蓄市場
著者
著者直接入力 江原 功雄
年度 2005
Vol 39
No 3
ページ数
抽出データ Analysisアナリシス(前)国際エネルギー機関(IEA)アジア太平洋・ラテンアメリカ課長norio.ehara@mofa.go.jp江原 功雄中国、インド、ASEANによる戦略備蓄の創設の動きとIEAによる協力将来の石油緊急時対応における協調体制の構築を目指して 小職は、1991年8月から1994年9月までと、2000年9月から2005年1月までの2回、合計7年4ヵ月、国際エネルギー機関(International Energy Agency: IEA)に勤務した。最初の勤務の際には石油の緊急時対応の専門家として、また、2回目の4年あまりはアジア太平洋・ラテンアメリカ担当課長として勤務し、同地域のIEA非加盟国を担当した。IEAは1974年、第一次石油危機を契機として先進工業国のうちの石油消費国を中心として石油供給安全保障を集団で強化するために、パリのOECD(経済協力開発機構)の中に設立されたエネルギー専門機関である。IEAは、現在、北米(米国およびカナダ)、ヨーロッパ、アジア太平洋(日本、韓国、オーストラリアおよびニュージーランド)の26ヵ国の加盟国で構成されている。その設立の経緯からも明らかなように、IEAは、石油の緊急時備蓄と石油の供給中断時の対応システムを維持しつつ、加盟国の石油供給の安全保障を守ることを中心的使命としてきた。この26ヵ国は、70年代には世界の石油総消費量の約70%を占めており、現在でも62%の割合を維持している*1(図1)。このため、その設立以来30年以上にわたり、IEA諸国が如何なるエネルギー政策をとるかが、世界のエネルギー需給の方向性を大きく左右してきたといっても過言ではなかろう。しかし、私がIEAに在職した2000年から2005年までの期間に、これまでIEAが経験したことのない全く新しい状況が出現した。中国とインドの国内需要と輸入依存度が、高い経済成長とともに急上昇し、その結果、両国政府はそれぞれ戦略国家備蓄と緊急時対応システムを創設することを決定したのである。中国とインドは、IEA加盟国およびロシアを除けば、世界第1位と2位の石油消費国である(図2)。また、この時期、ASEANも緊急時対応システムの確立の検討を開始した。これら諸国の戦略備蓄と緊急時対応システムは、今後のIEA諸国および世界の石油安全保障システムのあり方を一変させることとなるであろう。 本稿の目的は、IEAが過去4年間に推進してきた緊急時備蓄分野における中国、インド、ASEANとの協力について概観することにある。そのために、まず、これら諸国による戦略備蓄・緊急時対応システムの創設の動きの背景と現状、また、IEAがこれらの諸国に対する協力に踏み出した理由、そして最後に、今後中国、インドに国家備蓄が創設された場合のIEA諸国に対するインパクトと、これら潜在的な戦略的パートナーとIEAとの将来の協調のあり方等について述べる*2。*1: 本稿に掲載されているグラフや地図等は国際エネルギー機関(IEA)で公開されている数値等をもとに筆者が作成したものである。*2: 本稿の記述は個人的見解であり、また、本稿においてはIEAがその当事者でないこともあり、日本や米国政府、JOGMEC、APERC等による中国、インド、ASEAN等との協力や対話に触れることは差し控える。他方で、特にJOGMECから、私がIEAに在任中に主催した多くのワークショップ等において、貴重なスピーチや専門的アドバイス等を頂いたことに対し予めお礼を申し述べておきたい。39石油・天然ガスレビューsisnalyAAnalysisAAysAnana nalysisAnalysisAAnssiissyyllaanAインドロシアOECD北アメリカOECDヨーロッパOECD太平洋中国NISおよび途上国30%NIS (3%)ロシア (5%)中東 (6%)アフリカ (7%)中南米 (9%)百万トン1600140012001000800600400200019712000百万トン201020202030図2世界の石油需要見通し300025002000150010005000アジアの途上国40.1%東アジア(10.6%)南アジア(2.1%)インド(7.4%)中国(20%)OECD太平洋(5.8%)OECDヨーロッパ(7.3%)OECD北アメリカ(17%)図3エネルギー需要の増加量 2000?2030は、中国の割合が16%、インドが8%、ASEANが12%である。 IEAの緊急時対応措置が石油市場に対する影響力を維持するためには、IEA加盟国の国際石油市場での石油輸入量の割合が大きいことが重要な要素であり、IEAの緊急時対応システムは、IEAの石油需要が世界の70%を占めて2005.5. Vol.39 No.3401. 世界の石油市場におけるIEA非加盟国の役割の増大移行経済6%アフリカ3%移行経済6%アフリカ5%アナリシスOECD北米27%中東6%中南米6%東アジア6%南西アジア4%中国7%OECD北米30%中東7%中南米8%東アジア8%OECD太平洋12%OECDヨーロッパ20%南西アジア6%OECDヨーロッパ14%中国10%OECD太平洋9%<2000:3,604百万トン>60%の増加<2030:5,769百万トン>図1世界の石油需要の見通し 2000?2030 2000年、アジアの開発途上国は1990年代後半の国際通貨危機から立ち直りつつあり、石油需要を徐々に増大させつつあった。特に中国、インドおよびASEAN諸国の石油輸入は急速に増大する兆しを見せており、例えばOECD諸国の2002年から2004年までの石油の需要の対前年度の伸び率は、それぞれ0.1%、1.7%、1.4%であったのに対し、中国のそれは、6.3%、11%、15.6%であった。しかし、これらの国々には、確固とした緊急時対応システムは存在せず、これら諸国のエネルギー安全保障システムの脆弱性は年々増大しつつあると思われた。石油需要が徐々に増加する場合には、製油所の建設、供給システムの構築、輸入代金の調達等、それらの対策も対応対策その国のエネルギー安全保障上、さほど深刻な問題を及ぼさない。前述のとおり、26ヵ国の先進工業国を加盟国とするIEAは、世界のエネルギー消費量で見ると、2000年時点では約50%を占めていたが、2030年までには現在のIEA加盟国と非加盟国との割合は逆転する状況が出現する。また、エネルギー需要の増加という観点からも、2030年までの世界のエネルギー需要増加分のうち何と70%以上がIEA非加盟国で発生することになる。同割合のうち、アジアの途上国の割合は約40%で、中国がそのうちの半分である約20%を占め、インドが同7%、ASEANは約10%を占めると予測されている(図3)。 また、世界の石油の需要に占める途上国の割合も、2000年の32%から2030年には44%に増加(これに対してOECD諸国は2000年の62%から2030年には50%に減少)すると予測されている(図4)。また、この期間の石油需要増加分について見れば、64%が途上国で発生すると見込まれている。内訳?早Aインド、ASEANによる戦略備蓄の創設の動きとIEAによる協力いた時代を前提に策定されたものである。前述のとおり、IEA加盟国の世界の石油総消費量に占める割合は、非加盟国の需要が増大するとともに年々減少し、1970年代初頭には70%であった。この割合は、2000年には60%、2030年には50%以下にまで低下すると予測されている。これに対し、途上国の割合は12%から2000年には30%、2030年には43%にもなり、ロシアを中心とする移行経済諸国も含めると50%を上回り、IEA加盟国と非加盟国の割合は逆転する。このような状況の中で、国際石油市場とIEAの石油供給安全保障システムに対する不安定要因は、緊急時備蓄や緊急時対応措置を有していない100908070605040302010083%94%82%65%60%74%61%34%30%OECD太平洋OECDヨーロッパOECD北アメリカ2000南アジア中国東アジア20102030図4 アジアの主要地域の石油輸入依存度見通し(%)資料:IEAIEA非加盟国からもたらされると思われる。2. 中国、インド、ASEANにおける戦略国家備蓄創設に対する動き 1990年代初頭、ベルリンの壁が崩壊し、IEAはロシアとNIS諸国*3のエネルギー市場経済化の支援という課題に取り組んだ。その10年後、21世紀になって、IEAは中国、インド、ASEAN諸国の石油・エネルギー市場における役割の増大と脆弱化する世界のエネルギー安全保障システムという新たなチャレンジに直面することとなった。「世界のエネルギー安全保障システムは、増大する中国、インド等の非加盟国の存在によって弱体化してしまうのではないだろうか。この課題に取り組むことに失敗したならば、21世紀におけるIEAの将来はあるのか。果たしてIEAはこれらアジアの途上国と戦略的パートナーシップを組めるであろうか。」小職がアジア太平洋・ラテンアメリカ担当課長として2000年9月にIEAに着任した当時は、このような危機感がIEA事務局内に重くたち込めていたのである。 折りしも2000年から2004年にかけて、中国、インド、ASEAN諸国は、経済成長とそれに伴う石油需要の増大および石油の輸入依存度の高まりを背景に、以下のとおり、相次いでそれぞれ石油供給安全保障の強化のために、戦略備蓄と緊急時対応システムの創設に向けて動き出した。 中国政府は、増大する石油供給安全保障上の問題に対し、2001年、第10次五ヵ年計画(2001年?2005年4月1日)において戦略国家備蓄を創設することを決定した*4。しかし、実際に同備蓄創設の決定が具体化に向けて動き出すには、2003年の国家発展改革委員会(NDRC:National Development and Reform Commission)の能源(エネルギー)局(Energy Bureau)/国家石油備蓄室の設立を待たねばならなかった。経済発展とそれを支える石油供給の確保、それに伴う輸入依存度急上昇とエネルギー・石油の安全保障体制の脆弱化に危機感を覚えた中国政府は、2003年3月、全国人民代表者会議でNDRCの中にエネルギー局を新設し、同局の中に小規模ながら国家石油備蓄室を設置したのである。インドも、ほぼ時を同じくして石油・天然ガス省を中心に、石油戦略備蓄の創設について政府部内での議論を開始した。インド政府も、第10次五ヵ年計画(2002年4月?2007年3月末)において初めて、戦略備蓄創設を検討すべきである旨をうたった。2002年、インド政府は、同五ヵ年計画を踏まえて発表された「Hydrocarbon Vision 2025」の中でも戦略備蓄創設の必要性を訴えた。2003年1月、イラク戦争開始前の油価の高騰と石油輸入依存度の急速な高まりを背景に、インド石油・天然ガス省は戦略石油備蓄を創設する旨を発表した。2004年1月には、同備蓄計画はついに国家の正式の計画として閣議決定された。他方、ASEANにおいては、産油国と消費国双方が加盟国内に存在する中でかなり慎重なものではあったが、*3: New Independent States;旧ソ連からの独立国のうち、ロシア、エストニア、ラトビア、リトアニアを除く11ヵ国をいう。*4: 中国による国家備蓄創設決定の背景には、中国の国内石油生産の低迷と急激な経済成長のための石油輸入の急増があるが、このため中国政府は、国内増産の奨励、省エネ政策の推進の他、石油供給安全保障のため、国家戦略備蓄の創設と産油国との協力関係の強化、特にCNPC(中国石油天然気集団公司)やSINOPEC(中国石油化工集団公司)等の中国石油企業による石油供給源の多様化、世界の様々な国・地域からの石油採掘権の獲得やジョイント・ベンチャーによる海外進出などを推奨してきている。従って、中国の戦略備蓄創設に向けての政策もこれらの諸政策との関連で見ていく必要があろう。41石油・天然ガスレビューsisnalyA盟国に経済的ダメージを与えかねない。この観点からも、中国、インド、ASEANを非加盟国としてIEAのシステムの外に置くよりも、IEAのシステムとの協調関係に招き入れる方がはるかに得策である。ssiissyyllaanAAAnAnalysisAAysAnana nalysisAnalysis* そして第四に、上記の3つの理由が正しいとすれば、中国およびインドによる緊急時備蓄創設の試みを失敗させてはならない。中国、インドの戦略備蓄の創設計画が頓挫した場合には、これら諸国は、緊急時対応システムを持たない巨大な石油輸入国として引き続き国際石油市場から石油輸入を続けることになる。戦略備蓄を創設するコストは、中国やインドの石油輸入・消費量の規模からすると数億ドルから数十億ドルにのぼると考えられ、大きな国家事業となる。従って、これら諸国の戦略備蓄創設の計画は十分に注意深くならねばならず、計画立案の段階でIEAの経験から学ぶ余地は非常に大きい。 さて、以下においては、中国、インド、ASEANにおける戦略石油備蓄もしくは緊急時対応システムの創設の現状を概略したい。3. IEAはなぜ中国、インド、ASEANの戦略備蓄・緊急時対応システム構築のための支援を行ったのか なぜIEAはこれらの諸国との協力に積極的に取り組むこととしたのであろうか。主な理由は以下のとおりである。* まず、第一に、前述のとおり、急速に増大しつつある中国、インド、ASEANの石油消費量、輸入量の規模を勘案すると、これらの諸国との協調に失敗したならば、IEAは国際エネルギー分野においてその影響力を失い、緊急時対応システムも国際石油市場においてIEAのシェアが減少する中で、有効に機能させることが困難となる。また、中国、インド等における石油輸入国化が今後急速に進むため(図4)、石油消費国によって設立されたIEAとこれら諸国とは共通の利害を共有する状況となりつつある。* 第二に、IEAにとって、これらの諸国が戦略備蓄を創設した場合(中国とインド合計で約2,000万トン=IEA諸国の戦略備蓄の約12%に相当:後述)、石油供給中断時にIEAの備蓄取り崩しを中心とする緊急時対応メカニズムを効果的なものとするためには、同諸国と協力しないという選択肢はもはやあり得ないと考えられる。中国、インド、ASEANの石油市場におけるシェア(現在は17%であるが、2030年には24%となる見込み)を考えると、IEA単独で緊急時対応を行ってももはや十分な効果が期待できないという時代がすぐそこに来ている。IEA加盟国の国際石油市場におけるシェアの相対的な減少を考えると(2000年の62%から2030年には50%となる見通し)、IEAがこれまで維持してきた緊急時備蓄と需要抑制を中心とする石油供給中断時の緊急時対応システムが世界システムであり続けるためには、緊急時対応におけるこれら諸国との協調は不可欠となっている。* 第三に、中国、インドが将来緊急時備蓄を所有すること自体は、IEA加盟国がそうであるように、世界のエネルギー安全保障の観点から好ましいが、緊急時におけるその使用法が不適切であった場合には、かえって国際石油市場に対する混乱要因となり得る。これらの諸国の備蓄取り崩しがIEAとの協調なしに行われる場合には、IEAによる緊急時対応策や国際石油市場にとって攪乱要因とならないとも限らず、ひいてはIEA加4. 中国、インド、ASEANにおける戦略石油備蓄および緊急時対応システムの創設に向けた努力? 中国 2003年、中国の石油の需要は前年比11%の伸びを示し、ついに東アジア諸国で最大の石油消費国であった日本を抜いて世界第2位の石油の消費国となった。また、国内の石油生産量の伸び悩みを背景に、石油の輸入依存度を急速に高め、2001年には140万b/d(輸入依存度30%)であった石油の輸入量は、2004年には2倍以上に増加し、2902005.5. Vol.39 No.342アナリシス2000年頃から、ASEAN共同石油備蓄の創設や石油供給安全保障体制作りの議論が開始された。2001年、ASEANは、1986年に合意された「アセアン石油融通協定」(ASEAN Petroleum Sharing Agreement:APSA)がもはや石油市場の現状にそぐわないとして、同合意の改定作業に入った。ASEAN石油評議会(ASCOPE)技術サービス委員会がASEANエネルギー大臣からAPSA改定作業を委託された。ASCOPEは、ASEANの緊急時対応システムの参考にしたいとして、2002年2月、IEAを同委員会会合に招待したが、以来、IEAは、ASEAN/ASCOPEの同合意改定作業に対し積極的に支援を行ってきている。?早Aインド、ASEANによる戦略備蓄の創設の動きとIEAによる協力万b/d(同45%)となった。この需要の急増のため、この年の世界の対前年比石油需要の増加分の約40%が中国のものであったという事態を招き、国際石油市場の油価高騰の一因ともなった。IEAは、中国の石油輸入量は2005年には330万b/dとなり、輸入依存度は約50%を超えると予測している。早晩、中国は石油の輸入量でも日本を抜いて世界で第2位となり(ちなみに2004年の日本の石油輸入量は543万b/d、韓国214万b/d、インドが246万b/d)、輸入依存度も2010年には60%、2030年には82%に達するものと予測されている(図4)。これらの状況を踏まえ、中国政府は2001年3月の中国人民代表大会において、2001年から2005年までの第10次五ヵ年計画の期間中に国家備蓄の創設を決定した。 なお、中国政府の戦略備蓄設立に向けた動きを事前に察知したIEA事務局は、2000年の終わりから2001年の初めにかけて、中国政府(当時の国家発展計画委員会:SDPC)と政策対話を開始した。2001年4月には、早速第1回「緊急時備蓄問題に関するIEA・中国合同ワークショップ」をパリで開催し、中国政府に対して戦略備蓄に関するIEA諸国のノウハウを伝達した。また、IEA事務局は、中国政府の要請に応え、このワークショップの機会を利用して、IEA加盟国であるフランス、ドイツ、オランダの緊急時備蓄基地への視察を中国代表団に対してアレンジした。さらに、2002年12月には、IEAは、中国政府の要請に応えて、第2回「国家備蓄と緊急時対応に関するIEA・中国合同ワークショップ」を北京で開催した。 NDRC能源局は、IEAや中国の主要石油会社との検討を経て、2003年、中国東海岸の寧波市の鎮海(Zhenhai)、舟山市の岱山(Daishan)(以上浙江省)、山東(Shandon)省の黄島7006005004003002001000百万トン34%82%(輸入依存度)60%73%2000201020202030国内石油生産石油輸入量図5 中国の国内石油生産の減少と輸入依存度の上昇(Huangdao)および遼寧(Liaoning)省の大連(Dalian)の4ヵ所に1,400万トン(=約1億バレル=1,600万?)の備蓄能力を有する国家備蓄基地を設立する計画を策定した。この1,400万トンは、中国の国内消費の約20日分に相当する。中国政府はこれらの計画の詳細について明らかにするのを慎重に差し控えているが、手始めに、鎮海の備蓄基地に着手することにし、2003年秋には中国石油化工集団公司(SINOPEC)の協力のもとにフィージビリティ・スタディを終了、同年末に国家発展改革委員会の馬凱主任(大臣)に許可を求めるべく備蓄基地建設計画書を提出した*5。2004年始めには鎮海に52の備蓄タンクからなる合計約400万トン規模(=3,000万バレル=500万?)の国家備蓄基地の建設を開始した。同基地はSINOPECに建設が委託され、最近の報道によれば、2005年後半には建設が終了したタンクに最初の国家備蓄の積み増しを開始することが可能になる見込みである。400万トン規模の第2の国家備蓄基地を建設するべく準備を開始し、2004年、岱山基地にも中国中化集団公司(SINOCHEM)にフィージビィティ・スタディを委託した。SINOCHEMは2004年中に同調査を終了させ、用地買収が終わり次第、建設を開始する予定であり、これら4基地は2008年までにはすべて建設が完了する予定である。 鎮海と岱山とも浙江省の港湾都市であり、約60kmの距離であるが、経済的に躍進する舟山および上海などの主要都市の石油供給を緊急時に支えるべく計画されている。また、舟山港は25万トンのVLCCが着岸できる港湾施設を有している。 中国石油業界筋によれば、1,400万トン(約1,600万?)の同備蓄基地の建設コストは、1?当たり約700人民元(約0.83ドル)であり、従って1,600?(1,400万トン)当りの建設コストは112億人民元(13.5億ドル)である。また、NDRC能源局の国家石油備蓄弁公室筋は、この資金の調達については各種銀行借り入れにより賄うとしているが、この点についても詳細は不明である。 中国政府は戦略備蓄基地の建設に関する情報の公表に極めて慎重である。この点に関する中国政府のIEAに対する説明によれば、戦略備蓄の建設は能源局を超えて中国指導部の決定と指導に基づくものであり、石油備蓄法案および具体的な国家備蓄の管理体制のあり方等は未整備であっていまだ公表する段階にない、の2点であった。他方、*5:2003年12月の北京におけるIEAとエネルギー局との政策対話での国家備蓄の進展状況に関する中国側説明。43石油・天然ガスレビューsisnalyAAnalysisAAysAnana nalysisAnalysisAAnssiissyyllaanA300250200150100500百万トン40%199094%(輸入依存度)65%83%200020102020国内石油生産石油輸入量図6 インドの国内石油生産の減少と輸入依存度の上昇0500Km100035 30 25 20 15 10 5 Nヴィザグ:地下備蓄基地(2基地)*100万トンマンガロー:地下備蓄基地(2基地)*150万トン*250万トン70 75 80 85 90 95 図7 インドの国家備蓄基地候補地後者については、能源局はIEAに対し、IEA各国の石油備蓄法体系および備蓄の管理・運営のノウハウについての情報提供・技術移転を要請してきている。これに対しIEAは2004年10月、中国政府および石油企業のハイレベル代表団をIEAに招待し、協議の場を設けるとともに、IEAのヨーロッパにおける主要備蓄モデル国であるフランス、オランダおよびドイツの備蓄基地への視察*6をアレンジし、これら諸国の備蓄維持管理体制を紹介した。アナリシス? インド 現在のインドの石油輸入依存は既に約70%に達しているが、同依存度は、国内生産の減少、消費の急増もあって、2010年には83%、2030年には94%に達するものと予測されている(図6)。量の大きさでは劣るものの、中長期的将来の石油の国内需要と輸入依存度の伸び率は、むしろ中国よりも高いと予想されており、緊急時備蓄の創設、需要抑制等を含む緊急時対応システム等の石油供給安全保障体制の確立はインド政府にとって急務である。 このような状況のもと、インド石油・天然ガス省は2003年2月、500万トン(2000年時点のインドの国内消費量の約15日分に相当)の戦略石油備蓄の創設を立案した。約1年間の検討を経て、同500万トンは、インド西海岸のマンガローに2ヵ所、それぞれ250万トンおよび150万トンの国家備蓄基地を、東海岸のヴィザグに100万トンの基地を建設することとされ(図7)、2004年1月7日、同案は閣議決定された。これら3ヵ所の備蓄基地は、建設コストが最も安価で、国家セキュリティ上の観点からも好ましいとして、採掘後の油層等を利用した地下備蓄システムが採用されることとなった。 IEAは、2003年の石油・天然ガス省による戦略備蓄の立案段階から政策対話を行ってきたが、閣議決定から約2週間後の1月21?22日にはIEA・インド合同ワークショップをニューデリーで開催した。同ワークショップには、インド側から石油・天然ガス省大臣の他、インドの石油産業界、研究機関等のハイレベルが参加した。このワークショップでの議論も踏まえて、インド石油・天然ガス省は2004年6月、「インド戦略石油備蓄会社」(SPC:Strategic Petroleum Company)を設立した。同社は、インドの国家備蓄基*6: 2004年10月のこの視察旅行は、2001年1月にIEAがアレンジした同様の視察に次いで第2回目のものである。中国エネルギー局および石油企業は、第1回の視察が極めて有益であったが、第1回目の視察への参加者が政府組織等の改変でほとんどエネルギー局に残っていない、としてIEAに対し、2003年夏に2回目の視察旅行を要請してきたことにIEA側が答えたものである。2005.5. Vol.39 No.344?早Aインド、ASEANによる戦略備蓄の創設の動きとIEAによる協力地を建設し、国家石油備蓄を維持運営するための「インド石油会社」(IOC)の100%持ち株会社であり、法律によって設置された特殊法人である。同年8月にはSPCの最初の株主総会が開催され、主要役員が選出された。SPCの組織や運営方法は依然として未整備の部分も多いようである。また、この間、総選挙が行われ、バジャパイ政権に代わってマンモハン・シン政権が誕生したが、政権交代によっても戦略備蓄創設に関する基本方針は特段の影響を受けることなく、石油・天然ガス省は2004年を通じて国家戦略備蓄法案を準備し、2005年の国会に提出することとした。同法案は、国家備蓄の創設と運営費の資金源として新たに石油製品輸入と石油精製税の導入案を含んでいるが、同税の額は1?当たり極めて小額であり、同省は、国家備蓄税の国会通過について楽観視している。備蓄基地の建設時期については、SPC幹部が筆者に語ったところによれば、2005年7月に着手され、2008年には完成予定とのことである。 また500万トンの国家備蓄は第1期の計画であり、インドの経済成長と石油の国内消費と輸入の増加に対応し、第2期として1,500万トンまでの積み増すことも決定されている。しかし、石油・天然ガス省によれば、第2期の開始時期は未定であり、第1期の計画終了とその評価を踏まえて第2期計画の詳細は策定される予定とのことである。? ASEAN ASEAN諸国は、ASEAN加盟国内で石油の消費国と産油国が相互に助け合うことを想定した「アセアン石油融通協定」(APSA)を有している。同協定は1986年にASEAN外相会議により合意されたが、86年当時の石油市場の供給過剰と油価暴落を背景に、ASEANの産油国主導で策定されたものである。石油市場の供給過剰時にはASEAN内の石油消費国が産油国から石油を購入し、反対に、供給中断等が発生して石油市場が緊迫した場合には、ASEAN諸国内の産油国が消費国に対して石油を優先的に供給するというシステムである。このシステムにおいては、石油の供給交渉はASEAN加盟国の2国間で協議し、その時の市場価格により売買されることとされている。しかし、石油の相互融通に全く強制力を有していないため、これまで有効に機能してこなかった。例えば、1990年から1991年にかけて発生した湾岸戦争による石油供給中断の際、マレーシア政府はフィリピンに対しAPSAに基づき石油の供給を申し出たが、フィリピン政府は価格と油種の観点からマレーシア等の申し入れを断り、サウジアラビア産原油を石油市場から調達した。このことにより、APSAシステムが実際には有効に機能しないことを露呈してしまった*7。 ASEAN諸国における緊急時石油備蓄創設および緊急時システムの議論は、過去数年、タイやフィリピン等の石油消費国において検討が進められてきた。ASEANによる共同備蓄の構想についても、これまでASEAN内で種々議論されてきたが、建設コスト問題とインドネシア、マレーシア等のASEAN内の産油国による備蓄慎重論により、その議論は極めてゆっくり進められてきている。タイにおいては、独自に国家備蓄を創設する計画が、また、フィリピンではスービック湾の既存の休閑軍事用備蓄施設をASEANの共同備蓄として提供する案が検討されている。他方、緊急時の国家石油備蓄とは別に、タイ、シンガポール、フィリピン、インドネシア、ブルネイにおいては、民間および国営の石油会社や電力会社等に対して一定量の備蓄義務を課す法律が存在しているが、その備蓄量は最小限のランニング・ストックに留まっている。一方、インドネシア、マレーシア、ヴェトナム等のASEAN産油国は、戦略石油備蓄はASEAN内の石油の純輸入国にふさわしいシステムではあるが、ASEAN産油国にあってはむしろ地下にある石油の埋蔵資源自体がASEAN石油消費国に提供し得る石油備蓄であり、従って、これら埋蔵量を開発し、供給を可能とすることこそが先決であると主張している。 これに対しIEAは、2010年頃までにはインドネシアもマレーシアも石油の純輸入国になる可能性が高いと予測しているため、ASEANに対しては、この事態も念頭に置いて石油の供給安全保障の検討を開始すべきであると主張してきている。 ASEANとの政策対話を進めるべく、IEAは、まず手始めに2000年5月、クアラルンプールにおいてIEA・ASCOPE*8合同「アジア石油・エネルギー安全保障セミナー」を開催した。同セミナーのフォローアップとして、2003年9月にはIEA・ASEAN・ASCOPEの三者の合同で「石油安全保障・緊急対応ワークショップ」をパリで開催した他、第3回目のハイレベルのワークショップとして、2004年4月、IEA・ASEAN・ASCOPE合同で「石油供給中断マネージメントに関するワークショップ」をカンボジアで開催した。 これら一連の政策対話の中で、2001年、ASEANはAPSAの改定作業に取り組むことを決定した。2002年2月、ASCOPE技術サービス委員会は、APSA改定作業をASEANエネルギー大臣から委託されたが、同委員会会合はIEAを同委員会のマニラにおける会合に招待することを決定し、IEAと*7: 2004年4月のIEAとASEAN/ASCOPE合同備蓄ワークショップ(後述)におけるIEA側の指摘に対し、ASCOPE側は、湾岸戦争当時のこの事例を認めた。また、このことが、ASEANがAPSAの改定作業を2001に開始した背景の一つとしてあるとも述べた。*8: ASCOPE:ASEAN Council on Petroleum(ASEAN石油協議会)。ASEAN諸国の石油・ガス会社により構成され、ASEANエネルギー大臣会合の下に位置付けられている。45石油・天然ガスレビューフ情報交換を開始した。APSAの改定案はIEAの緊急時システムの諸要素をも取り込みつつ改定作業が続けられているものの、未だ加盟国間で最終合意には至っていない*9。同改定作業はもう少し時間がかかるようであるが、2004年6月のASEANエネルギー大臣会合では、2002年以降の改定作業の進捗状況が報告された。IEAは、緊急時備蓄も含め、改定APSAのシステムが、ASEAN内の産油国と消費国間のみを対象とする閉鎖的システムに留まるならば、IEAのシステムとの協調の可能性を狭めてしまい、また、国際石油市場にあっても機能しない旨主張し続けてきた。しかし、ASEAN/ASCOPEには、依然としてASEAN産油国の備蓄慎重論が強く、改定APSAのシステムをIEAや国際石油市場を視野に入れた開放的なシステムとするこアナリシスとには慎重な立場をとっている。 以上を踏まえると、IEAとしては、今後ともASEANにおけるAPSAの改定作業を支援しつつも、タイやフィリピンにおける緊急時備蓄の創設の動きに対しても、これら諸国から要請があるならば別個に支援していくことが現実的であると考えている。ysisnalyAAnalysisAAysAnana nalysisAnalysisAAnssiissyyllaanAJAPANOECD民間備蓄OECD民間備蓄45%45%世界の石油備蓄量:60億バレル*(8億1,000万トン)世界の石油備蓄量:60億バレル*(8億1,000万トン)海上・洋上備蓄海上・洋上備蓄16%16%(1億7,000万トン)(1億7,000万トン)非OECD民間備蓄非OECD民間備蓄18%18%OECD緊急時備蓄OECD緊急時備蓄*Excludes ex-USSR, China and Suoth African strategic stocks.*Excludes ex-USSR, China and Suoth African strategic stocks.21%21%中国+インド=約2,000万トン(1億5,000万バレル)中国+インド=約2,000万トン(1億5,000万バレル)→OECD諸国の緊急時備蓄の約12%→OECD諸国の緊急時備蓄の約12%図8 中国とインドの緊急時備蓄のインパクトUlaanbaatar(Ulan Bator)MONGOLIA2,000万トン(1,000万トンのKNOCの国家備蓄を含む)中国能源局:1,400万トン 鎮海:400万トン 岱山:400万トン 黄島:300万トン 大連:300万トンPALthmanduThimphuBHUTANインド:500万トンBANGLADESHDhakautta)MYANMAR(BURMA)YangonHa NoiLAOSViangchanBeijing(Peking)KNOCNORTHKOREAP'yongyangSeoulSOUTHKOREATokyoCHINAShanghai8,400万トン(4,300万トンのMETIの国家備蓄を含む)METIT≪aipeiTAIWANHong Kong台湾エネルギー局:200万トン5. 中国とインドの緊急時備蓄のインパクト さて、前述の中国とインドによる国家備蓄創設計画が順調に進捗すれば、早ければ今後3年のうちに(2008年)、約2,000万トンの緊急時国家備蓄がIEA非加盟のアジア地域に出現する(ASEAN諸国(タイ、フィリピン等)においては緊急時備蓄が創設されるにはさらに時間がかかると思われる)。この量は、商業備蓄も含めた現時点での世界の全石油備蓄量の約2.4%を占めるにすぎないが、IEA加盟国の緊急時備蓄に対しては約12%にも上る(図8)。また、アジア地域では、IEA加盟国として日本および韓国が既に合計1億トン以上の緊急時備蓄(国家備蓄および民間備蓄)を維持しているが、日本と韓国のこれらの緊急時備蓄と対比すると、同2,000万トンの備蓄はおおよそ20%にも及ぶ。IEAとしては、近い将来出現する中国とインドのこの備蓄を到底無視しえない量であると考えている。 さて、このようなIEA非加盟国による大規模な戦略備蓄の出現を目前にして、それではどのようにして、IEAとして中国、インド、ASEANとの第2段階の協力関係を築いていくべきであろうか。図9 中国、インド等における戦略国家備蓄のインパクト*9: 改定作業が進められているAPSAの内容については、ASEAN/ASCOPEは、ASEAN内部の意見の立場・相違のために、現在の検討状況や内容について対外的に知られることについて極めて慎重な立場をとっている。2005.5. Vol.39 No.346?早Aインド、ASEANによる戦略備蓄の創設の動きとIEAによる協力6. 中国、インド、ASEAN諸国との緊急時における協調のあり方―第2段階の協力を目指して IEAは、中国、インドおよびASEAN諸国との第一段階の協力として、2001年から2004年にかけてハイレベルの政策担当者や石油産業界の専門家を対象とした緊急時備蓄や緊急時対応システムに関するワークショップを開催しつつ、これら諸国に必要な情報を提供してきた。2004年には、これら諸国とのワークショップの開催や政策対話も一巡し、IEAとしては協力の第一段階は成功裏に終了したと認識している。第2段階の協力は、中国およびインド等が2008年頃に実際に緊急時国家備蓄や緊急時対応システムを設立した場合に備えて、これら諸国とIEAとの協調体制を確立するためのものであり、このための政策的・技術的対話であろう。 前述のとおり、IEAの非加盟国に対する戦略備蓄と緊急時対応分野における中長期の戦略は、中国、インド等の主要な戦略的なパートナーとの石油供給中断等の緊急時における協調体制の確立にある。しかし、この長期目標を達成するためには、今後いくつかの段階を踏まねばならない。IEA事務局は第2段階の協力として、中国、インド等との協力に関しして以下に述べるアプローチについて検討を重ねてきている。? 個別的な協力関係から地域的・世界的な協力関係へ これまでIEAは、中国、インド、ASEANと個別に協力してきた。いわば第1段階としてのこれら諸国との政策対話・協力関係は成功裏に終了したと言えよう。IEAとそれぞれ個別の協力関係が成熟したならば、この関係は地域的、世界的規模の協力に拡大していく必要がある。IEAは、これまでの中国、インド、ASEAN等との協力関係の蓄積を踏まえ、2004年10月、IEAにおいて開催された第3回緊急時対応訓練(ERE3)に、これらの諸国の緊急時備蓄と緊急時対応の政策立案者と石油産業界の専門家を招待した。ERE3は、IEAがこれまで個別に協力してきた非加盟国が初めて一堂に会する機会を提供した。ERE3においては、IEAの緊急時システムが説明され、石油供給中断シナリオに基づく緊急時対応の訓練の機会をこれらIEA非加盟国にも提供した。今後ともEREにIEA加盟国と非加盟国の双方が参加することにより、お互いに対する理解を深め、将来の協力の可能性を一層拡大するに違いない。ERE3は、IEA加盟国、中国、インド、ASEAN等が始めて緊急時対応の訓練のために一堂に会したが、今後はこれら諸国がさらに横の連絡を緊密にすることにより、地域的・世界的な協力関係が構築される必要がある。第2段階の協力はこのための対話とシステム作りに集中されるべきであり、IEAは引き続きこの分野で大きく貢献することができると思われる。? 緊急時のネットワークとホットラ非加盟国の緊急時対応担当者との間で連絡網リストを作成することが有益であろう。? 緊急時備蓄の維持・管理・オペレーションに関するIEAの経験の供与 中国とインドは緊急時備蓄創設を決定し、現在、備蓄施設の建設段階に移行している。両国とも2008年頃までに緊急時国家備蓄の施設を完成させる計画である。緊急時備蓄を建設しつつあるこれら諸国の関心は、今や緊急時備蓄に関する政策立案の段階から、どのようにして備蓄施設を効率的に維持管理すべきかといった備蓄の維持管理・運用の問題に移っている。1994年にIEAと旧石油公団が鹿児島でIEAの備蓄積み増し・取り崩しに関するワークショップを開催したように、同様のワークショップを中国、インド等に対して実施するべき段階にきている。実際、中国政府はIEAに対して中国の東海岸に出現しつつある緊急時国家備蓄基地の所長や管理者に対し備蓄基地の運営・管理の訓練を施すため、第3回目のIEAとの合同ワークショップの開催を要請してきている。インの構築? 石油データと緊急時情報システム IEA事務局と中国は2003年のイラク戦争の際に、電話のホットラインを設置し、石油市場の状況と中国とIEA諸国の緊急時の対応について情報交換を行った。この情報交換により、中国とIEA事務局は、緊迫する国際石油情勢にあって、それぞれが置かれている状況を知ることができたのであるが、この緊急時のホットラインによる連絡は、IEAと非加盟国の将来の協力関係について多くのものを示唆していたと思う。IEAは2004年に開催された一連のワークショップにおいて、インドとASEANとの間でもホットラインもしくは情報ネットワークを確立すべく合意しているが、今後さらに多くのIEA分野における協力 言うまでもなく、石油の緊急時には石油市場の需給状況について数値をもって正確に分析することが、緊急時対応措置の第一歩である。IEA非加盟国にはこの緊急時石油情報収集システムが存在しない。中国にも石油企業が情報を国家統計局等に十分に提供していないために、このシステムはいまだ存在していない。IEAは中国に対してエネルギー統計専門家のためのIEA事務局での訓練コースをそれぞれ1998年と2000年の2回、インドに対しても2002年に1回組織した。今後はASEANに対してもデータ訓練コースを組織する予定である。この分野での47石油・天然ガスレビューsisnalyAssiissyyllaanAAnalysisAAysAnana nalysisAnalysisた、と総括した。この協力は、第一段階でとどまるべきではなく、中国とインドに2,000万トンの戦略備蓄が出現するまでに(2008年頃)、IEAと中国、インド、ASEAN等の非加盟国が参加する、よりグローバルな緊急時対応システムの構築を目指して、第二段階の協力に移行するべきである。これからの数十年、中国、インド、ASEAN等のIEA非加盟国の石油需要の伸び率はIEA諸国のそれを遙かにしのぎ、石油価格も中長期的には漸増傾向が続き、従って国際石油市場も一層予断を許さないものとなるであろう。このような状況の中で、IEAと非加盟国は、備蓄政策の調整も含め、お互いの石油・エネルギー安全保障のために、節度ある緊急時対応のための協力の枠組みを作りあげなければならない地点に立っていると確信する。私は、この仕事をNMCとSEQの私の同僚たちにお願いしてきたつもりである。中国、インド等を加えた真にグローバルで世界全体が裨益する新しいIEAのエネルギー安全保障のシステムの誕生を期待して待ち望みたい。AAn7. 終わりに 冒頭に述べたとおり、折りしも21世紀に入って、中国とインドの国家備蓄創設の動きにより、IEAおよび世界はこれまで経験したことのない全く新しい状況に直面している。中国とインドにおける戦略備蓄の出現は、間違いなくIEAがその30年の歴史の中で経験したことのない全く新しいチャレンジである。中国とインドの2,000万トンの緊急時戦略備蓄は、両国の石油安全保障システムのみならず、その規模の大きさから、日本、韓国等の近隣アジア諸国、さらには欧米まで広がる世界の石油供給安全保障システム全体に影響を及ぼす。IEAは、中国、インドが相次いで戦略備蓄の創設の検討を始めた段階で、これら諸国との政策対話を直ちに開始した。その際、最も留意したことは、実は相互信頼関係の構築であり、戦略備蓄創設後も続けられねばならないであろうIEAとの長期的協力関係の維持であった。そのため、IEAはこれら諸国のオーナーシップを尊重し、それぞれの国内の状況に柔軟に対応しつつ、IEAとこれら諸国との協力関係の構築にじっくりと取り組んできた。結果として、中国とインドとの信頼関係は4年にわたる協力により確立され、相互理解も進んだと思う。これら諸国は将来の実際の緊急時にはIEAと連携して緊急時対応を取りたいとの意図を表明するに至っている。冒頭に述べたと思うが、IEA諸国と中国、インドおよびASEANとの石油需要量を合計すると、現在は世界の約80%、2030年の時点でも74%を占めると予測されている。IEAとこれらの諸国は世界の石油安全保障、特に石油供給の緊急時対応に大きな責任を負っていると言えよう。 筆者はIEA在勤中の最後の非加盟国委員会(NMC)と緊急時問題常設作業部会(SEQ)の会合で、過去4年間の中国、インド、ASEAN等との協力関係について報告し、これまでの協力は、中国、インド、ASEAN等が戦略備蓄創設・緊急時対応システムの創設に対する政治決定と備蓄基地建設に至るまでの、いわば第一段階の協力であったが、この段階は成功裏に終了し著者紹介埼玉県出身。青山学院大学卒。カイロ・アメリカン大学(AUC)。1975年外務省入省。1981年から89年までエジプト、リビア、シリア大使館勤務。本省においては、国際エネルギー課(計3回)、中近東第二課等で勤務し、外務省における石油・エネルギー問題の専門家の一人。湾岸危機後の1991年から94年にかけて石油緊急時対応計画の専門家として国際エネルギー機関(IEA)に勤務。2000年9月から2005年1月までは非加盟国局アジア・太平洋担当課長として二度目のIEA勤務。韓国のIEA加盟交渉を成功させ、また、中国、インド、ASEANの緊急時備蓄や石油緊急時対応システムの創設に向けたIEAの支援やこれら諸国とのエネルギー協力関係の強化をIEAにおいて指揮。現在は、外務省経済協力局国別開発協力第一課首席事務官(対アジア諸国ODA担当)。妻、一男一女。趣味はとりあえず仕事。2005.5. Vol.39 No.348アナリシスさらなる協力が望まれる。? 政策対話の活性化―IEAの委員会、会議等への招待 IEAは非加盟国を特定の委員会、会議等に招待するが、例えば、石炭産業諮問委員会(CIAB:Coal Industry Advisory Board)や技術実施協定(Implementing Agreement)の各種会合には常に非加盟国を招待してきている。また、前述のとおり、2004年のERE3には、中国、インド、ASEAN等のIEA非加盟諸国を招待した。将来的には、緊急時問題作業部会(SEQ)に対してもこれら非加盟国を可能な限り招待し、備蓄政策、緊急時対応についてIEAとの政策対話を強化できたならば、緊急時におけるこれら諸国との協調はいっそう緊密化し、アジア地域および世界の石油緊急時対応システムと石油供給安全保障体制はさらに強化されるのではないだろうか。
地域1 アジア
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国・地域 アジア,中国アジア,インド
2005/05/20 [ 2005年05月号 ] 江原 功雄
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