ページ番号1006163 更新日 平成30年2月16日

本格市場デビューするカスピ海原油 ―真近に見た BTC パイプラインに思うこと―

レポート属性
レポートID 1006163
作成日 2005-05-20 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 探鉱開発
著者
著者直接入力 杉浦 敏広
年度 2005
Vol 39
No 3
ページ数
抽出データ Analysisアナリシス伊藤忠商事・伊藤忠石油開発バクー事務所長sugiura@itochuoil.in-baku.com杉浦 敏広本格市場デビューするカスピ海原油真近に見たBTCパイプラインに思うこと アゼルバイジャンの沖合いにあるグナシリ・チラグ・アゼリ油田は、カスピ海で最初の本格的な油田として、ソ連時代の末期に発見されたものであるが、水深が250m以上あることから、ソ連技術では開発できないままであった。アゼルバイジャンの独立後、1994年に、いわゆる「世紀の契約」が西側コンソーシアムと結ばれ、BPを中心とした西側技術により開発が進められ、1997年11月にはチラグ油田から石油生産が開始された。日本からは、1996年から伊藤忠商事(株)が3.902%、2002年から国際石油開発(株)が10%参加している。 当初生産量は、控えめであったが、今回話題になっているバクー・トビリシ・ジェイハン・パイプラインが完成することにより、2009年ごろには、日量100万バレルを超える生産量が期待できる。伊藤忠商事の事業子会社の現地代表である杉浦敏広氏に、バクーとパイプラインの建設現場を報告していただいた。(編集者)1.プロローグ KP397*1に佇む、精悍なる一人の若き特派員。 行く手には茫漠とした原野が果てしなく広がり、その先はアゼルバイジャンとグルジアの国境となる。 大洋を渡り、飛行機を乗り継ぎ、汽車に揺られ、建設キャンプに泊まり、悪路に悩まされながらも、念願の目的地に今到着。眼前には、日本人ジャーナリストとしては誰も見たことのない未知の光景が展開していた。 そこは、BTC*2原油パイプライン建設現場。 その時、一粒の涙が頬を伝わり、胸に熱き想いが込み上げてきた。 ≪遥々と来つるものかな≫。図1KP397建設現場図2永遠の炎*1: バクー市郊外のカスピ海沿岸サンガチャル基地を起点として397km離れていることを意味する。KPはKilometer Point の略。ちなみに、KP443がアゼル*2: Bはバクー、Tはトビリシ、Cはセイハン。アゼルバイジャンからグルジア経由、地中海側のトルコ出荷基地セイハン港を結ぶ総延長約1,760kmの原油バイジャンとグルジアの国境になる。パイプライン。49石油・天然ガスレビューAナリシスカザフスタンロシアアストラハン迂回ルートysisnalyssiissyyllaanAAAAnAnalysisAAysAnana nalysisAnalysisで賑わっている。 14世紀の建物で5ドルの昼食を取り、外に出ると、左手には紀元前5世紀の遺跡が、右手には建設中の近代的な建物が目に入る。 旧事務所*7の隣は12世紀に建造されたイスラム寺院。事務所の中ではロシア語とアゼルバイジャン語と英語が飛び交い、窓の外からは理解できないがコーランが流れてくる。 旧事務所の窓からは、カスピ海が一望できた。 漠とした大海の遙か彼方は、カザフスタンとトルクメニスタン。眼下のバクー湾には時折、彼の地より原油・石油製品を積んだ小型タンカーが入港する。 石油はここから西に向け貨車輸送され、黒海沿岸のバツーミ港から出荷。トルコのボスポラス海峡・ダーダネルス海峡を通過して、地中海に運ばれる*8。原油の町 石油関係者にとり、バクーは身近なウザメと言えばキャビア。 しかし、タラバガニが蟹でない如く、チョウザメはサメ(軟骨魚)ではない*6。 カスピ海はボルガ川、運河、ドン川経由、黒海やモスクワ川と結ばれており、バクーは、カスピ海東岸のカザフスタンやトルクメニスタンと黒海への出口を結ぶ海上輸送の要衝の地となる。バクー旧市街 城壁に囲まれた旧市街の石畳の上を歩いていると、足音が後ろから追いかけて来る。 バクーは紀元前と中世と現在が無秩序に重なり合う不思議な街である。 紀元前5世紀に土台が建設され、紀元11世紀に増築された≪乙女の塔≫は、西暦2000年にユネスコの文化遺産に登録された。 14世紀に建設されたラクダの隊商のオアシス≪キャラバン・サライ≫は今でもレストランとして営業しており、昼食時には近隣のビジネス・パーソングルジアWREPグロズヌイカスピ海スプサボルゾミトビリシトルクメニスタン????テヘランイスタンブールバチューミトラブゾンアルダハンSCPトルコアンカラカイセリイズミールBTC?Pipelineシバスエルジンジャンエルズルムカルスガンジャエレバンアルメニアアララット山ジェイハン(Ceyhan)タブリーズイランバクー(Baku)ShahDeniz図3BTCパイプラインルートその他のパイプラインは表1、4を参照通過国その他の国Km10020010050Miles0 0イラクシリア地中海コンスタンツァノボロシスクNREP建設時ルートアクタウモルドバキシニョフウクライナオデッサルーマニアブカレストブルガリアブルガス黒 海2.アゼルバイジャン風土記アゼルバイジャンとは? アゼルバイジャンと聞いて場所を正確に言える日本人は、ほとんどいないであろう。 人によっては、「アルゼンチンの間違いでは?」という答えが返ってきたりする。 多少なりとも蘊蓄を傾ければ、アゼルバイジャンとは≪火の国≫(Land of Fire)という意味。昔から拝火教(ゾロアスター教)*3が栄えた地であり、今でもバクー国際空港近くの拝火教寺院跡には観光客が絶えることなく、そこでは永遠の火が燃え続けている*4。 ちなみに、バクーの語源は古代ペルシャ語の"Bad Kube"(City of Wind)の由。文字通り≪風の町≫となり、名は体を現している。カスピ海 カスピ海と日本の共通点は何か? ≪面積がほぼ同じ≫がその解答となる。 カスピ海の面積は37万?。湖面標高マイナス28m。ボルガ川、ウラル川、クラ川等が流入するが、流出する川はない。この点、東シベリアのバイカル湖と異なる*5。 余談だが、筆者はバクーの前はサハリンに勤務していた。サハリンとアゼルバイジャンの面積がこれまたほぼ同じ。サハリン後のバクー勤務は宿命だったのかもしれない。 その昔、カスピ海は黒海の一部であった。南コーカサス地域が隆起し、カスピ海が沈下したため、黒海と分離され、湖となった。湖水は塩水である。 カスピ海と言えばチョウザメ。チョ*3: ゾロアスター教は紀元前4世紀、ペルシャより当地に伝わる。その後7世紀にイスラムの侵略を受け寺院は破壊されたが、17世紀にヒンズー教徒がこのゾロアスター教寺院を再建した。ちなみに、ゾロアスターのドイツ語読みがツァラツストラとなる。ニーチェの『ツァラツストラかく語りき』 のツァラツストラとは、ゾロアスター(拝火教の教祖)のこと。*4:ただし、現在は都市ガス。*5:バイカル湖は湖面標高455m。330以上の川が流入するが、流出する川はアンガラ川のみ。アンガラ川はエニセイ川に合流し、北極海のカラ海に注ぐ。*6:チョウザメはチョウザメ科(硬骨魚)。タラバガニはヤドカリの仲間。*7:伊藤忠バクー事務所は、今年1月下旬に旧市街よりハイアット敷地内に引越した。*8: バクーより黒海側のロシア・ノボロシスクとグルジア・スプサまで、2本の既存原油パイプラインがある。バクー原油は、原則このパイプラインで西に輸送される。2005.5. Vol.39 No.350{格市場デビューするカスピ海原油存在である。 帝政ロシアの時代、バクーは世界の原油生産の半分を占めていた。西暦1900年、世界の原油生産量は約2,200万トン。うち、バクーは1,100万トンを生産していた。 19世紀末にはバクーから黒海沿岸バツーミまでの原油輸出用パイプラインが完成、鉄道輸送からパイプライン輸送に徐々に切り替わった。これが、世界初の本格的輸出用原油パイプラインとなる。すなわち、原油生産においても、輸送方法においても、当時のバクーは米国に匹敵する(凌駕する)世界の大先進油田地帯であった。 ロート・シルト("赤い楯")家が、ノーベル兄弟が、バクー原油で財を成した。 スパイ・ゾルゲが生まれ育ち、今や飛ぶ鳥を落とす勢いのルークオイルのアレクペーロフ社長やロシア連邦エネルギー庁オガネシアン長官が生まれ学んだ地、バクー。 元素周期表で有名なペテルブルク大学メンデレーエフ教授はバクーの化学工場に勤務*9、バクー原油資源の有効利用を説いた。カフカース山脈 カスピ海と黒海の間には大カフカース山脈が走っている。 東西1,000km以上にわたり標高2,000m級の山々が連なり、最高峰はエリブリス山(5,642m)、次がカズベキ山(5,047m)となる。 南側には小カフカース山脈が走り、アルメニアとトルコの国境を成す。 第二次大戦時、ドイツ軍はバクー原油を目指したが、峻険なる大コーカサス山脈に行く手を阻まれ、1942年末退却を余儀なくされた。 余談だが、ロシア語で"за"(ザ)は"外側"、"?の彼方"という意味。 故に、帝政ロシアの中心地より見て、バイカルの向こう側は"ザ・バイカル"(外バイカル)、カフカース山脈の彼方(南側)は"ザ・カフカース"となる。 日本では良くコーカサス3国として、アゼルバイジャン・グルジア・アルメニアが紹介されることがあるが、正確に言えば、あくまで、"外コーカサス"(あるいは"南コーカサス")3国となろう*10。 ソ連邦の時代、NATOの最前線はノルウェーとトルコであった。 トルコ領のノアの箱舟で名高いアララット山(5,165m)山頂には対ソ情報収集基地があり、レーダーが据え付けられていた。イラン革命によりエルブルズ山脈の対ソ情報収集基地を喪失した米軍にとり、アララット山は対ソ情報収集の生命線となった。 アルメニア人は自分達はノアの末裔と信じており、アララット山はアルメニア人の聖地である。しかし、アタチュルク率いる新生トルコ政府は1921年3月、誕生したばかりのボルシェビキ政権と友好条約を締結、アララット山はトルコ領に割譲された。 人は皆、心の中に故郷の原風景を持っている。 アルメニアの首都エレバンから見るアララット山は、田子の浦から見る富士山そのもの。静岡県人にとり、富士山が他国の領土になったらなんとする。 今でもアルメニア人は聖地奪回を目指していると云われており、次に事が起きるとすればエレバンかもしれない。しかし、山麓にはクルド人が大勢住んでおり、ここで一朝事あらば、民族紛争が再燃する恐れもあろう。図4バクー油田地帯図5大コーカサス山脈*9:この化学工場は、前述のゾロアスター教寺院に隣接している。*10:ちなみに、露語"カフカース"が英語の"コーカサス"になる。51石油・天然ガスレビューAナリシスysisnalyssiissyyllaanAAAAnAnalysisAAysAnana nalysisAnalysis億バレル。インドネシア一国の確認可採埋蔵量よりも大きな油田となる。 早期原油生産(Early Oil)は1997年11月生産開始。現在は約15万b/dの原油を生産している。 2004年9月20日には当地バクーにて、『世紀の契約』ACGプロジェクトPSA(生産分与契約)締結10周年記念式典がアゼルバイジャンのアリエフ大統領主催のもと大々的に開催され、その場でフェーズ3(グナシリ鉱区開発)が承認された。 今年2月中旬には、中央アゼリ鉱区より原油生産開始(フェーズ1)。現在、原油は順調に生産されている。図6建設中のサンガチャル石油・ガス処理施設ACGプロジェクト 本稿では上記4プロジェクトの内、ACGとBTCに言及したい。 尚、各プロジェクト概要は別添資料①をご参照願いたい。 ACGは、伊藤忠商事(3.9%)と国際石油開発(10%)が参加するカスピ海ACG海洋鉱区開発プロジェクト*12である。 ちなみに、Aはアゼリ鉱区、Cはチラグ鉱区、Gはグナシリ鉱区の頭文字。 各々の意味だが、アゼリは"Land of Fireの"、チラグは"灯火"、グナシリは"太陽が燦燦と輝く場所"を意味する。 ACG鉱区の確認可採埋蔵量は約543.BTCパイプライン・プロジェクトサンガチャル基地概観 バクー市内よりこのカスピ海を左手に見ながら海岸沿いに約43km南に下ると、右手にサンガチャル基地が見えてくる。 現在は随伴ガスを燃やしているので、遠くからでもすぐ分かる。しかし、近々この随伴ガスの有効利用が始まるので、この火も今が見納めかもしれない。 ちなみに、途中のカスピ海には、映画007のロケ舞台となったリグが見える。 この基地は、4大プロジェクト*11が一つの敷地内に共存する世界最大の陸上処理施設。オペレーターはすべてBP。アゼルバイジャン領海のカスピ海開発は、BPの尽力によるところ大と言えよう。 この面積と処理能力において世界最大の陸上処理施設サンガチャル基地は、時々刻々とその表情を変化させる。筆者はほぼ毎月この基地を訪問しているが、視察回数を重ねるに、観る風景が異なってくる。 目にする風景は訪問する度に変貌するが、変わらないものが一つある。 それは、我々をいつも温かく迎えてくれる、BPの基地受入責任者アゼルバイジャン人ラヒムリさんの屈託ない笑顔。訪問客の要望により、ロシア語・英語・アゼルバイジャン語で基地現状を要領よく説明してくれる。 説明のあと基地内部視察となるが、見学者はその規模に度肝を抜かれることになる。 ちなみに、2005年一月中旬には、逢沢外務副大臣・安部大使一行が同基地を視察されている。表1 サンガチャル基地/4大プロジェクトACGBTCSHAH DENIZSCP(South Caucasus Pipeline)●推定原始埋蔵量153億バレル●確認可採埋蔵量54億バレル●開発構想 ①早期原油生産(Chirag鉱区)97年11月生産開始15万b/d ②フェーズ1(中央 Azeri)05年2月生産開始 ③フェーズ2(東・西Azeri)06?07年  ④フェーズ3(Gunashli深海部、およびチラグ西部)08年 ●総工費約30億ドル●パイプラン全長約1760km。全線埋設。8ポンプ・ステーションアゼルバイジャン約443km(口径42")グルジア約266km(口径46")トルコ約928km(口径42")   約125km(口径34")完工予定:パイプラインは 05年前半。通油後、05年第3四半期出荷目標。グルジア国境まで完工すると、バクー向けにSCP建設開始●CAPEX約30億ドル。カスピ海天然ガス鉱区●開発構想フェーズ1:06年末生産開始。年間84億m3生産予定●総延長約1000kmの天然ガスパイプライン。主口径42"●開発構想トルコ・エルズルム向けに2006年末天然ガス輸送開始予定*11:ACG/BTC/SCP(南コーカサス・パイプライン)/Shah Deniz(天然ガス鉱区)*12:他社は、BP(34.1%)、Unocal(10.3%)、 SOCAR(10%)、 Statoil(8.6%)、ExxonMobil(8%)、TPAO(6.7%)、DEVON(5.6%)、 DeltaHess(2.7%)。2005.5. Vol.39 No.352{格市場デビューするカスピ海原油表2 アゼルバイジャン経済情勢外観*16とGDP推移(上表と下グラフ)91年度92年度95年度 00年度01年度02年度03年度7031,3102,4155,2725,7076,2367,13804年度(速報値)8,551▲11.811.19.910.611.210.2%7,2347,4407,7268,0818,1418,2028,2668,344$98 $180 $319 $665 $714 $775 $880 $1,041 GDP (単位百万$)GDP実質 成長率(%)人口 (単位千人)GDP (人口1人当)1000080006000400020000GDP (単位百万$)GDP 実質成長率(%)91年度92年度95年度00年度01年度02年度03年度04年度7031,3102,4155,2725,7076,2367,1388,551-11.811.19.910.611.210.2151050?5?10?15GDP (単位百万$)GDP 実質成長率(%)表3 アゼルバイジャン外国貿易額推移/輸出入内訳単位:百万ドル貿易額輸出輸入92年度95年度00年度01年度02年度03年度04年度2,4241,4849401,3056376682,9171,7451,1723,7452,3141,4313,8332,1671,6655,2182,5922,6267,1193,6143,50580006000400020000貿易額輸出輸入BTCパイプラン カスピ海ACG海洋鉱区の原油を、黒海側ではなく地中海側に直接輸送する、総延長約1,760kmの原油パイプライン建設プロジェクト。ザ・カフカース地域における米露のエネルギー覇権を巡る思惑の中、難産の末、ルートが確定した。 原油輸送能力は100万b/d。パイプライン・ルートはバクー/トビリシ/ジェイハンとなり、日系企業では伊藤忠商事(3.4%)と国際石油開発(2.5%)が権益参加している*13。 2004年10月16日、アゼルバイジャン・グルジア国境において、アリエフ大統領とサーカシビリ大統領共催のBTCパイプライン溶接記念式典(Golden Weld)が開催された。 筆者は幸運にも、日本人としてただ一人、この記念式典に参加する名誉に浴した。 この時、筆者の最大の関心事は、≪アゼルバイジャンとグルジアの国境は何で仕切られているのか≫であった。 壁か? 鉄条網か? あるいは、地雷原か? 筆者は30年以上前の西ベルリンに想いを馳せた。 ベルリン・フィルの隣には壁が走り、図7両国国境記念碑図8KP397グルジア国境付近*13: 他社は、BP (30.1%)、SOCAR(25%)、Unocal(8.9%)、Statoil(8.7%)、TPAO(6.5%)、TFE(5%)、Eni(5%)、ConocoPhillips(2.5%)、DeltaHess(2.4%)の計11社。*16:アゼルバイジャン国家統計委員会『2004年度統計要覧』より作成。53石油・天然ガスレビュー\4 04年度原油・天然ガス生産量◆原油生産量 (内訳)SOCAR    AIOC◆原油輸出量 (パイプラインルート)WREP           NREP ◆ 天然ガス生産           輸入   *WREP/西方パイプライン=グルジアより出荷*NREP/北方パイプライン=ロシアノボロシスクより出荷1,554万トン(前年比 +23万トン)898万トン(+6万トン)657万トン(+18万トン)894万トン (+24万トン)630万トン 264万トン50.1億m349.3億m3(?1.6億m3)(+8.4億m3)アナリシス表5 アゼルバイジャン長期エネルギー計画《2005?2015年発展計画(cid:509) *17◆石油・ガス産業投資総額:100?120億ドル(今後10年間の総額)◆各種プロジェクト:ACG/SHAN DENIZ/BTC/SCP全面開発 ●原油生産計画 (2005?08年 /単位 百万トン) :年度2005200620072008SOCAR8.758.758.758.75AIOC12.0 21.3 22.0 38.0 総計20.7530.0530.7546.75 ●SHAHDENIZ天然ガス :    第一段階 88億m3 + コンデンセート 200万トン    第二段階 160億m3 + コンデンセート 400万トンysisAnalyAnalysisAAysAnana nalysisAnalysisAAnssiissyyllaanA図9BTCパイプライン敷設チーム図10展望台に上ると、東ベルリン側には壁に沿って地雷原が延々と続き、歩哨所には機関銃が見えた。 ベルリンの銀座通り"ウンター・デン・リンデン"は、ブランデンブルク門で東西ベルリンに分断されていた。 フリードリッヒ通り先の≪チェックポイント・チャーリー≫からは、東ベルリンに徒歩で渡る。西側国境通過地点には、髑髏のマークに「あなた方はこれから共産主義の国に入る」と大書されていた。 地下鉄でも東ベルリンに入った。国境の駅で降り、細い暗い長い通路を抜けると、そこは東ベルリンであった。 この時の強烈な印象が、走馬灯のように筆者の脳裏を駆け巡る。 一行はバクーよりチャーター便で、アゼルバイジャン第二の都市ギャンジャに着く。 ギャンジャより悪路に揺られながら車に乗ること数時間、両国国境にて目にしたものは果たして何か? そこには、延々と畑が広がるのみであった。両国を仕切るものは何もない! 強いて言えば、この日のために両国国境に設置された記念碑のみか。 アゼルバイジャン領におけるBTCパイプライン建設総元請会社の顔見知りの幹部より、両国国境を跨いで一緒に写真を撮ろうと提案あり。 筆者が真ん中に陣取り、建設会社の幹部が並ぶ。 筆者の足元には、お義理で引かれた仮想国境があった。 その時、銀色に輝くグルジア大統領*17:アゼルバイジャン政府により、2005年2月承認される。サーカシビリ大統領到着専用ヘリの爆音が近づき、国境線付近に着陸。サーカシビリ大統領がヘリを降り、両国国境に向かう。 一方、アリエフ大統領は装甲ベンツから降り、国境に向け歩き出す。 両者は国境線上で落ち合い、固い抱擁を交わす。まさに、映画の一場面を観ている光景であり、筆者はエルベ川にて合流した米兵と赤軍兵士を連想した。 国境においては、アリエフ・サーカシビリ両大統領は国境線上の2本の口径42"(約1,060mm)の大径鋼管を溶接、無事記念式典は終了した。 この日、ビザ無しでアゼルバイジャンとグルジアの国境を何度も徒歩で往復した。 この式典後、パイプラインは埋設され、今は元の畑に戻っていると聞く。2005.5. Vol.39 No.354{格市場デビューするカスピ海原油図11両国大統領図12両国国境パイプライン(記念式典終了後) ちなみに、このBTCパイプラインは全線1,760km埋設されるので、サンガチャル基地を出発して地下に潜ると、トルコ側ジェイハン港の出荷基地にて顔を出すまで、パイプラインを観ることはできなくなる。 アゼルバイジャン領内におけるBTCパイプライン建設は、ごく一部地域を除き、すべて終了。愈々、これからライン・フィル(通油)が始まる。 今年5月25日、サンガチャル基地にて、ACG中央アゼリ原油生産開始とBTCパイプライン通油を記念して、アリエフ大統領・サーカシビリ大統領主催の記念式典開催予定となった。 BPによれば、ブッシュ大統領とプーチン大統領にも招待状を出した由だが、両大統領が出席するとはとても思えない。 ただし、ライス国務長官訪問の可能性はあるという。 ライス国務長官訪問となれば、ロシア側も大臣クラスを派遣することも考えられよう。 余談だが、この1週間前の5月17日は愛知万博におけるアゼルバイジャン・デーとなり、アゼルバイジャン政府要人はチャーター便で訪日予定と聞いている。4.エピローグ徐ろに来たりて、水波興らず。) 夕暮れは小雨にけぶり、月が雲を割り、湖上に懸かっている。 季節は初春。ところは何処、バクー湾。 湖面を吹き抜ける風は生暖かく、約3km続く遊歩道では、庭園の常夜灯が湖畔に寛ぐ人影を疎らに映し出している。 一人湖畔に佇み湖面を眺めていると、昔の詩人の言葉が自然と脳裏に浮かんでくる。 ≪春宵一刻値千金 花有清香月有陰≫*14(湖面は穏やかにして、風が頬に心地良い。) ≪清風徐来 水波不興≫*15(清風*14:蘇軾『春夜』*15:蘇軾『前赤壁賦』 遠くに船の明かりが瞬いている。 この大洋の彼方では、カザフの北カスピ鉱区が、トルクメンのチェレケン鉱区が開発を待っている。 カスピ海には大輸送船団が生まれんとしており、バクーは交通・輸送要衝の地となろう。 このBTCパイプラインは、我々のACG原油を輸送するための現実的手段として計画・建設された。 しかし、大洋の彼方に、近未来が透けて見えてくる。輸送船団が当地バクーに殺到。BTCパイプラインに原油を流し、地中海に輸送する姿が・・・・・・。 ここに至るまでの紆余曲折・艱難辛苦は筆者の知らない世界である。 しかし、勲の陰に涙あり。オペレーターたるBP、日本政府関係者・関係機関、先輩諸氏の血と汗と涙の結晶が、BTCパイプライン完工間近という現実の姿の中に、今まさに結実せんとしている。 新参者の筆者は、先輩諸氏に対し、ただただ頭を垂れるのみ。 カスピ海沿岸のバクーに住み、アゼルバイジャン人と一緒に働いて、考える事。 それは、豊饒なるべき未来と、カスピ海におけるエネルギー覇権を巡る米55石油・天然ガスレビューsisnalyssiissyyllaanAAAnalysisAAysAnana nalysisAnalysisAAn2005.5. Vol.39 No.356露両大国の地政学的思惑に翻弄される現実との狭間にて呻吟するアゼルバイジャン民族の熱きDNAが、現実的選択を渇望していたこと。そして、そのアゼルバイジャン国民と外資側の現実的選択こそBTCパイプラインであった、と。 その選択が正しかったことが、今まさに証明されようとしている。アナリシス著者紹介現職:伊藤忠商事・伊藤忠石油開発バクー事務所長。1950年静岡県清水市(現静岡市)に生まれ、富士山を見て育つ。アララット山を失ったアルメニア人の心情をよく理解できる。大阪外国語大学ドイツ語学科卒。学生時代には、サンケイ・スカラシップにて西独フライブルク大学経済学部に留学。1973年に入社した伊藤忠商事では、当初、輸出鉄鋼部に配属され、入社後、海外にてロシア語研修を受講。85年から通算6年間モスクワ駐在、95年から通算6年9ヵ月サハリン駐在の後、2004年8月よりバクー駐在、現在に至る。趣味は、テニス、将棋。※著者は図9真ん中のコートを着た人物。
地域1 旧ソ連
国1 アゼルバイジャン
地域2 旧ソ連
国2 グルジア
地域3 中東
国3 トルコ
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 旧ソ連,アゼルバイジャン旧ソ連,グルジア中東,トルコ
2005/05/20 [ 2005年05月号 ] 杉浦 敏広
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