ページ番号1006169 更新日 平成30年2月16日

国営石油会社と日本上・中流企業に大きな成長潜在力 ─石油・天然ガス業界構造の多変量解析─

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レポートID 1006169
作成日 2005-07-20 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 企業
著者 野神 隆之
著者直接入力
年度 2005
Vol 39
No 4
ページ数
抽出データ AnalysisアナリシスJOGMEC 石油・天然ガス調査グループnogami-takayuki@jogmec.go.jp野神 隆之国営石油会社と日本上・中流企業に大きな成長潜在力石油・天然ガス業界構造の多変量解析 欧米石油・天然ガス探鉱・開発企業による合併・買収が相次いだ1990年代末以降、世界の石油・天然ガス上・中流業界地図は大幅に書き換えられた。かつてセブン・シスターズといわれた、世界を代表する欧米系大手民間石油会社(メジャー)7社(1980年央にはGulf OilがSocal(後のChevron)に吸収されたため、6社となった)は、ExxonがMobilと合併してExxonMobilに、BPは準メジャーであるAmocoと合併の上、同じく準メジャーであるArcoを吸収、さらにロシアにおいて大手石油会社TNKと合弁会社を設立した。こういった一連の動きの中で、従来のメジャーの一部は一層規模を拡大し、ExxonMobil、BPはShellと併せて、「スーパーメジャー3社」と呼ばれるようになった。一方で、セブン・シスターズの下位を構成する一員であったChevronは同じく下位のTexacoと合併し「ChevronTexaco」(2005年5月より「Chevron」に社名変更)となるなど、旧7大メジャーは現在までに4社に再編された。 その他の部分に目を向けてみると、仏TotalはベルギーのPetro?na、仏Elfと合併し、「TotalFinaElf(現Total)」となった他、北米の有力インディペンデントであったConocoとPhillipsが合併し、「ConocoPhillips」になった。また、北米のAnadarkoやDevonのように、それまでは中堅インディペンデントであったが、合併や買収(メジャー等が合併・買収した後、自らの戦略にそぐわない資産を売却したが、そういった資産の一部を買収したものと見られる)により規模を拡大させ、Occidental(Oxy)やMarathon Oilといった、従来の有力インディペンデントに肩を並べる会社(新興有力インディペンデントとも言われる)も出現している。 さらに最近、中国、インド、マレーシアおよびブラジルといった非OECD諸国(そのどの国においても自国で相応の石油生産を行っている)における国有石油会社(CNOOC、PetroChina、ONGC、Petronas、Petrobras等)が、国外に積極的に進出し、石油・天然ガスの探鉱・開発活動を活発に実施しているとのニュースもしばしば聞かれるようになってきている。 このように新しく塗り変わった世界の石油・天然ガス探鉱・開発業界において、大手石油会社(メジャー系企業)、有力インディペンデント系企業、国営系企業が、その規模および効率性で、どのように位置付けられるか、さらにそのような業界地図の中で、上・中流部門を持つ日本の石油会社はどのような特徴を持った領域を占めるのか、ということにつき、考察を試みたのが本稿である。各社が持つ様々な指標(生産量、埋蔵量、純利益、負債比率、ROCE等)を考慮に入れ、多変量解析の手法であるクラスター分析と主成分分析を実施することにより、最終的にはそれら複数の指標を2次元に変換、グラフ上に表示した。併せて最近の各石油・天然ガス会社グループを巡る諸般の情勢を考慮しつつ、検討を加えてみた。本稿が業界の全体像を理解する上で、そして本邦石油会社と世界の石油・天然ガス業界とを比較する上で、一助となれば幸いである。1.多変量解析とは? 多変量解析とは、調査対象に対して種々の異なる属性のデータ(例えば売上高、純利益、埋蔵量、生産量等)を合成し、調査対象全体における個々の調査対象の置かれた位置を表そうとする手法である。例えば、複数の石油会社の業績評価を行う場合、「売上高」、「純利益」、「埋蔵量」、「生産量」、「負債比率」、「ROCE」等の各指標により個別に評価を行うことはもちろん可能である。しかし「総合的にどの会社の規模が大きく、また財務的に健全なのか」ということを判断する場合、それらの個別の評価だけでは判断ができない。そこで、それぞれの指標を適切な比率により合計して総合的な指標を算1石油・天然ガスレビューAナリシスysisnalyAAnalysisAAysAnana nalysisAnalysisAAnssiissyyllaanA合計446394513470426495521410403484456図1クラスター分析のイメージ表15教科テスト結果国語(X1)社会(X2)理科(X3)英語(X4)数学(X5)9297100899599979389989583821007779968777759385776893100758498737270811561141761581401741901321321861563833444637424935353740 ABCDEFGHIJ平均したとき、その群における平方和の増加が最小となるようなクラスター同士を一緒のクラスターとする方法)を採用した。? 主成分分析 主成分分析は、調査対象の持つ多次元の属性のデータを、それぞれの持つ情報をできるだけ生かしつつ統合し、通常最終的には直感的に理解しやすい2次元のグラフ(X軸、Y軸)に合成する分析手法である。 例えば10人の生徒(A君からJ君まで)の5教科テスト結果が表1の通りであったとする。各科目の満点は、国語、社会、理科が100点、英語が200点、数学が50点と異なる。 表1から科目別および合計点のトップは、国語および社会についてはC君であり、英語および数学はG君、理科がD君、合計点ではG君ということが明らかであるが、各科目の満点と点数の分散が異なる状況のもとで、果たして各科目の単純な合計点を総合力としていいのか、という疑問が残る。また、文系科目が得意なのは誰か、理数系科目が得意なのは誰かという分析が必要な場合も生じよう。これに答えてくれるのが、主成分分析である。 図2を念頭において、主成分の求め方を概念的に説明してみたい。情報を合成したものをZとし適当な係数AiをXiにつけ、Z=A1・X1+A2・X2+…+An・Xnとする。主成分は、標本データの重心(図2では点Pに該当する)を通り、各点からの距離が最小となる直線Zを引くことにより求められる。22+…+Anこのようにするには、A1=1の条件下で合成変数Zの分散が最大になるようにすればよい。この分散が最大となるのが、第1主成分である。また、その次に分散が大きく第1主成分とは相関の低いものを第2主成分と2+A22005.7. Vol.39 No.42出したり、指標に関して他社と類似性を計測したりするなどして、おのおのの企業について総合的に比較可能な状態にする、というのが多変量解析である。この解析法には、各企業の総合力が見えやすくなったり、産業における全体的な傾向が判明したりする場合もあるなど、いくつかの利点がある。多変量解析の代表的なものには「クラスター分析」と「主成分分析」があり、本稿もこの両者による分析を行うこととする。まず、これらの分析方法について簡単に触れておくこととしたい。なお、数学的な背景を含めた当該分析の詳細については、書店等にて「多変量解析」に係る書籍類が多数発行されているので、そちらを参照されたい。? クラスター分析 クラスター分析は、調査対象に関する様々なデータにつき、他の調査対象との類似性を、総合的なデータの接近性(距離)を計算することにより、分類する方法である。最も類似性が認められるものを1つの分類とし、さらにその次に類似性が認められるものと併せて別の1つの分類とする。すべての調査対象が1つの分類集団の元に位置付けられるまで当該作業は継続され、結果的には、個々の調査対象が複数の階層を構成する樹形図の形をとる(図1参照)。 簡単な例として、2つの指標で表される4つの調査対象の場合を考える(本分析は、実際には3以上の指標をもって実施するのが通常であるが、説明の簡略のため、2つの指標とする)。例えば仮に調査対象a、b、c、dがあるとする。図1左図において、aとbの距離が最も近く、次いでcとdの距離が近いという場合、クラスターは図1右図のようになる。 なお、本分析では、一般的に用いられるWard法(2つのクラスターを併合FCC112233GGJJDD?1?1?1.5?1.5?2?2?2.5?2.5BB221.51.5110.50.5EE?1?10000AA?0.5?0.5?3?3?2?2HHII第2主成分?3?3第1主成分図4教科テストに係る主成分分析結果図2主成分の求め方(イメージ)国営石油会社と日本上中流企業に大きな成長潜在力図3主成分得点の概念図(PQが主成分得点)する(図2において直線Z1と直交する直線Z2がそれに当たる)。 いま、図の1点Aからこの直線Z上に垂直になるように下ろした点をQとするとPQが主成分得点となる(図3参照)。 求められた第1主成分と第2主成分の座標をもとに、主成分分析に係るグラフ(散布図)を作成することができる。上記の例で主成分分析を行った結果は図4の通りとなる。分析の結果第1主成分(X軸)は総合学力を表す指標となっており、Y軸は文系科目(国語、社会、英語)の学力が強いか理数系科目(数学、理科)の学力が強いかを表す指標で、上方に行くほど文系科目の学力が強いことを示していると解釈できる。また今回の教科テスト結果から判断する限り、C君がクラスの中で一番総合学力を持っており、さらにC君は相対的に理数系科目よりも文系科目の学力がありそうであると考察することができる。2.調査対象 調査は以下に示す36社の石油・天然ガス会社に対して行った。どの会社がメジャーであり、どの会社が有力インディペンデントであるかという分類については、諸説あるのが実情であるが、ここでは便宜上① メジャーないしそれに準じる企業、② 国営ないしそれに準じる企業、③ 有力インディペンデント系企業、④ 大手商社(石油・天然ガス上・中流部門)を含む日本企業の4グループに分類した。なお、ここにおける分類はクラスター分析や主成分分析に影響を及ぼすものではなく、後述の通り分析によって違う分類を示唆する結果となっている。① メジャーないしそれに準じる企業群(以下「メジャー系企業群」):ExxonMobil、Royal Dutch Shell、BP、Chevron、Total、ENI、Repsol-YPF、ConocoPhillips② 有力インディペンデント系企業群:Anadarko、Unocal、Oxy、Amerada Hess、Marathon Oil、Talisman、Burlington、BHP Billiton、Apache、Devon、Canadian Natural Resources (CNR)、BG、Kerr‐McGee、Nexen、Petro-Canada、Murphy、Gaz de France③ 国営(国有)ないしそれに準じる企業群(以下「国営系企業群」):PetroChina、CNOOC、Petrobras、Statoil、Lukoil、TNK-BP④ 日本企業5社(日本企業群):精製会社系を含む石油開発会社および大手商社(石油・天然ガス上・中流部門)計5社(A、B、C、D、Eとする) 対象年は多くの企業により既に年報が発行され、データの入手が可能な2000年から2003年としたが、1年でもデータが欠落している企業は分析から除外した。また、各年につき分析を行うと、その年に生じた特殊要因(資産買収や特別損失等)により指標が大きく左右される可能性があるので、分析は2000年から2003年までの4年間の平均値で行うこととした。さらに、利用した指標は、各企業において2000?2003年にできる限り同様の定義により3石油・天然ガスレビューAナリシスRatio)、純利益、バレル当たり上流部門利益、ROCE② 主成分分析:売上高、EBITDA、純利益、石油・天然ガス埋蔵量、石油・天然ガス生産量、負債比率、ROCE なお、日本企業群に属する5社においては、必ずしも前述のすべての指標が入手可能な状態ではなかったため、一部指標については独自に推定を行うことにより、分析を実施した。ysisnalyssiissyyllaanAAAnalysisAAysAnana nalysisAnalysisAAnExxonMobilRoyal D/ShellBPENI Petrochina Chevron Total PetrobrasCNOOCConocoPhillipsAnadarkoApacheBGDevon日本 ALukoilStatoilTalisman CNRBurlingtonNexen Murphy 日本 B日本 CUnocalAmerada Hess日本 DMarathon OilKerr-McGee日本 EOxyBHP BillitonPetro-Canada 図5世界主要石油会社に係るクラスター分析結果今後生産量に反映されていくと期待できることから、「規模は小さいが将来に向けて事業継続性が期待できる」企業群と位置付けることができよう。またOxy、BHP Billiton、Petro-Canadaは他の有力インディペンデント系企業群の会社と比べて相対的にバレル当たり上流部門利益が高い。従って、「規模は小さいが調査対象時点では効率的に利益を生み出している」企業群と位置付けることができるであろう。残りは指標的に中庸な有力インディペンデント系企業群と、日本企業Aを除く他の日本企業が1クラスターとなっている。2005.7. Vol.39 No.44入手が可能なデータで、かつ各指標同士の相関関係なども考慮し、以下の指標とした。① クラスター分析:石油・天然ガス生産量、石油・天然ガス埋蔵量置換率(RRR:Reserve Replacement 3.分析結果? クラスター分析 上記石油・天然ガス会社につき、クラスター分析を施した結果は図5の通りとなった。 樹形図で示される通り、調査対象である世界の主要石油・ガス会社は大きく2系統に分類することができる。一方はいわゆるメジャー系企業群の会社と国営系企業群の大部分の会社であり、全般的に生産量や純利益が他の企業群と比べて大きいことが主に影響しているものと考えられる。さらに、2000?2003年だけを見てみれば、このメジャー系企業群の中でもExxonMobilとRoyal Dutch Shellは他社と比べて純利益の規模が特に大きいことから、この2社が1クラスターとなっていると見られる。 大分類のもう一方は、基本的に有力インディペンデント系企業群および日本企業群の会社であると言える。ConocoPhillipsは合併で規模が大きくなったものの、依然として有力インディペンデントの域を出ていないことを、この分析は示唆している。有力インディペンデント系企業群はさらに3系統に分類される。まず、ConocoPhillpsやAnadarko、Apache、Devon、日本企業A、Lukoilの企業群であるが、RRRが他の有力インディペンデント系企業群等と比べて相対的に良好な状態にある。従って、これらの企業においては、追加した埋蔵量が痩c石油会社と日本上中流企業に大きな成長潜在力432CNOOCCNOOC日本?C日本?C日本?B日本?BTNKTNKLukoilLukoilPetroChina?PetroChina?KerrMcGeeKerrMcGee?2?1012456783規模※ X軸、Y軸ともに合成された主成分得点(指数)を表しており、数字が大きくなるほど、傾向が強まる(規模が大きくなる、ないしは財務的健全性が向上する)ことを示す。  なお、赤字:メジャー系企業、青字:国営系企業、黒字:有力インディペンデント系企業、緑字:日本企業を表す。図6世界主要石油会社の主成分分析結果? 主成分分析 主成分分析結果は図6の通りである。分析の結果X軸は売上高、EBITDA、純利益、埋蔵量、生産量といったいわゆる企業の規模を示す指標、Y軸は負債比率およびROCEといったいわゆる企業の財務的健全性を示す指標を表していると解釈することができる。当該結果からは、メジャー系企業群(前述の通りConocoPhillipsはクラスター分析では必ずしも「メジャー系企業群」には分類されなかったが)が全般的に規模において圧倒的に他の企業群を引き離しており、国営系企業群がそれを追う形になっている。また財務的健全性の観点からは、国営系企業群が他の企業群よりも優位に立っているように見える。また有力インディペンデント系企業群は規模ではメジャーと比べて圧倒的に劣る他、これは個々の企業にもよるところ大ではあるが、それでも全般的に財務的健全性もメジャーと比較して劣り、従って事業遂行上の自由度が減少する傾向が読み取れる。主成分分析結果のグラフにおいて、国営系企業群と日本企業群を除いた、いわゆる欧米系民間企業群につき回帰分析を施すと、右上がりの直線を引くことができる(図6における赤色の直線)。つまり、このことからも欧米の民間石油・天然ガス探鉱・開発業界では、規模の経済(スケールメリット)が働き、規模が拡大するとともに財務的健全性も向上するといった一般的な傾向が存在すると言えよう。 日本企業群は、全般的には他の有力インディペンデントとほぼ同様規模も小さく、財務効率性も中庸であるということもできるものの、一部企業はメジャー系企業群を上回る財務的健全性を示しているものもある(ただしこの「財務的健全性」の指標に係る解釈については注意を要する、後述)。 主成分分析グラフにおいてメジャー系企業、国営系企業、有力インディペンデント系企業、日本企業を分類してみると、それぞれの集団の占める領域を示すことができ、興味深い。5石油・天然ガスレビューExxonMobilExxonMobilENI?ENI?PetrobrasPetrobrasTotal?Total?ChevronChevronBPBPRep?YPFRep?YPFMarathon?OilMarathon?OilConocoPhillipsConocoPhillipsStatoilStatoilAnadarkoAnadarkoUnocalUnocalAmerada?HessAmerada?HessDevonDevon?1?2?3BGBGApacheApachePetro?Canada?Petro?Canada?CNRCNRBHP?BillitonBHP?BillitonTalisman?Talisman?BurlingtonBurlingtonGaz?de?France?Gaz?de?France?Nexen?Nexen?OxyOxy1日本?E日本?E日本?D日本?D0Murphy?Murphy?日本?A日本?A財務的健全性005.7. Vol.39 No.46アナリシスysisnalyAAnalysisAAysAnana nalysisAnalysis柔軟に石油生産能力を調整する方法が可能になっていることから、外国石油会社の援助を必要としていないと伝えられる。また、一般的にOPEC加盟国では、原油生産量調整に柔軟に対応するために、政府としても自国の石油資源に対する統制を確保する必要があることから、そのような統制を難しくさせるような外資の導入には消極的であるとも言われている。 クウェートにおいては外資導入による北部および西部油田開発プロジェクトが議会の反対で実施が大幅に遅れている状況にある。また、戦争後西側石油会社による石油探鉱・開発活動が期待されたイラクにおいても治安が回復していない他、法制や税制も整っておらず、参入できる状況にはない。イランも米国による制裁が続く他、参入できたとしてもバイバック契約が中心であることから、やはり投資機会は限られている。また最近注目を浴びているスーダンのようなアフリカの新興産油国については、政治リスクが高い他、ss人権問題を抱えていることから人権団iissyyll体の反発を受ける可能性があり、メaanAジャー等欧米系企業が参入に対して二の足を踏む状態となっている。 他方、一部の国においては対外開放が実施されたり、契約が改訂されたり投資条件が改善されたりした産油国も若干はある。このような例としては、リビアにおける鉱区入札(EPSA Ⅳ)の実施、サントメ・プリンシペとナイジェリアの共同開発地帯(JDZ:Joint AAn間主導プロジェクトへの参加により、同社の既存油田からの生産量減少を相殺することが目的であると言われている。ただ、このような個別的要因による場合もあるものの、全般的には、投資環境の悪化の背景には原油価格の高騰があると見られている。最近では、高水準の原油価格の環境下で、欧米等の民間企業が収入増大を望んで石油・天然ガスの探鉱・開発・生産活動を活発化させるのを見て産油国が強気になり、産油国政府が、自国に対してより多くの収入を得られるように政策を変更する一方で、そこでの活動を希望する民間企業に対しては契約条件をより厳しくするようになってきている(余談であるが、反対に総じて原油価格が低水準の場合には、石油・天然ガスの探鉱・開発・生産活動は低調となるため、産油・ガス国は民間企業の参入を促すべくより寛大な契約条件を提示する傾向があるとも言われている)。 メジャー系企業が参入可能な産油・ガス国において投資環境が悪化する一方で、かつて対外開放が期待されていた一部の中東湾岸諸国やメキシコといった産油国では、実際の対外開放は限定的である。サウジアラビアやメキシコは基本的には天然ガスに係る鉱区に限って対外開放をしており、石油資源については国家独占状態にある。サウジアラビアは原油価格高騰により多額の資金を保有していることに加え、既にサウジ・アラムコが十分な探鉱・開発・生産ノウハウを取得しており、表2主要産油・ガス国の最近の投資条件悪化(ないしはその可能性を示唆する動き)の例出所:各種報道より作成産油・ガス国ベネズエラロシアカザフスタンナイジェリア主な内容ロイヤルティ比率を16.67%から30%へ引き上げ。プロジェクトにおけるPDVSAの参加権益比率51%の要求。所得税の引き上げ(34%から50%へ)地下資源にかかる外資進出規制の動き2004年12月地下資源法改正、国営石油会社のプロジェクト参加権限、先買権拡大国営石油会社NNPCが参加比率増大を検討、ロイヤリティの適用、鉱区の開発許可取り消し政府がロイヤルティの引き上げを検討ボリビアトリニダード・トバゴ ロイヤルティの引き上げ、契約条件改定4.クラスター分析および主成分分析が示唆するもの?詳細分析と企業を巡る情勢 さらに世界の石油・天然ガス産業を巡る最近の情勢を考慮しつつ、上記で行われたクラスター分析および主成分分析の結果が何を示唆しているのかにつき、2. の「調査対象」の章に従って分類した? メジャー系企業群、? 国営系企業群、? 有力インディペンデント系企業群、? 日本企業群に対して、それぞれの全体的な傾向とその背景、今後の見通し等を考察してみると以下の通りになるものと思われる。? メジャー系企業群 クラスター分析や主成分分析を通じて、メジャー系企業群の会社は、規模の面では他に比べて圧倒的に優位に立っているということが改めて示された。しかし、それであるが故に、一定の収益を維持し、株主の要求に応えるには、常に大規模に事業を遂行していかなければならない。メジャー系企業群にはそれを遂行できるキャッシュフローは潤沢にある模様である。しかしながら、従来型の石油・天然ガス探鉱・開発事業の遂行において問題も生じてきている。 それは、近年彼らにとって投資機会が限られてきているとともに既存や新規の石油・天然ガス探鉱・開発・生産案件において投資条件が悪化しつつある、ということである(表1参照)。このような投資環境の悪化の背景には、それぞれの産油・ガス国特有の要因がある場合もある。例えば、ベネズエラは2002年12月に発生したストライキ以降、民間企業が主導し生産する既存の油田に対して、ロイヤルティの引き上げや国営石油会社PDVSAの51%の参加を認めさせるべく、圧力をかけている。これは原油生産が減少しているPDVSA向け資金確保や、PDVSAの民痩c石油会社と日本上中流企業に大きな成長潜在力入札区Development Zone)における鉱区入札の実施といったことが挙げられる。 ただ、もともと限られてきていた投資機会に対する参入を求める民間企業の他、最近では新たに高水準の原油価格等で資金が潤沢になったCNPC、Sinopec、CNOOC(以上中国)、ONGC(インド)、Petronas(マレーシア)、Petrobras(ブラジル)といった、一部国営石油会社の国外進出加速(後述)により、鉱区入札の際の競争が激化する傾向が出てきている。 鉱区入札における競争激化の例としては、サントメ・プリンシペにおいて有望とされた鉱区(第一鉱区)において、ChevronTexaco(現Chevron)が1.23億ドルの高額のサイン・ボーナスを提示したとされることや、リビアの鉱にCNPC、Sinopec、Petronas、Petrobrasといった国営石油会社が参加したと伝えられていることなどが挙げられよう。 このようなことから、メジャー系企業にとって、良好な条件での投資機会を大規模に求めることは、かつてに比べてより難しくなってきている状況にあると言える。このようなこともあり、(石油探鉱・開発の進捗状況やSEC基準等に左右される場合もあるので考察には注意が必要であるが)例えばExxonMobilの2004年の追加埋蔵量は、その95%近くがカタールの天然ガス開発に伴うものであるなど、企業にとって石油・天然ガス埋蔵量追加の機会も限られてきている。 原油価格の推移を見てみると、2000年以降少なくとも現時点までは、WTIで年平均1バレル当たり25ドルを上回るなど、1990年代の1バレル当たり15?25ドル程度に比べて高水準で推移している(図7参照)。このため、特に2000年以降高水準の原油価格により、メジャー系企業を含めて世界の石油・天然ガス会社は全般的に資金には余裕があるものの、大規模な投資機会7石油・天然ガスレビュー図7WTI価格出所:IEA表3メジャー各社の深海地域、天然ガス(LNG事業)、非在来型石油・ガス資源事業進出例(主要なもの)出所:各社年報他深海地域探鉱・開発天然ガス探鉱・開発(LNG)非在来型石油・ガス資源開発備  考ExxonMobil米国メキシコ湾アンゴラカタールナイジェリア豪州ロシア(サハリンⅠ)カナダオイルサンド(Cold Lake)カタールGTL米国メキシコ湾ナイジェリアマレーシアナイジェリアオマーン豪州ロシア(サハリンⅡ)カナダオイルサンド(アサバスカ)カタールGTL米国メキシコ湾アンゴラトリニダード・トバゴインドネシアShellBPChevronTotal米国メキシコ湾アンゴラナイジェリア豪州インドネシア米国メキシコ湾ナイジェリアアンゴラカタールイエメンインドネシアConocoPhillips米国メキシコ湾カタールナイジェリア豪州カナダオイルサンド(アサバスカ)ベネズエラ超重質油ナイジェリアGTLカタールGTL2005年4月、Unocal買収を提案、アジア・太平洋地域の天然ガス資源を強化する意向カナダオイルサンド(Surmount)ベネズエラ超重質油カナダオイルサンド(Surmount)ベネズエラ超重質油が限られることから、新たな活路を求める(後述)一方で、株主価値を増加させるため、自社株消却や配当引き上げを実施している。 一方、2000年以降原油価格が高水準に推移し、特に2004年は記録的な原油価格高騰を示す市場環境下においても、メジャー系企業は、想定原油価格をおおむね1バレル当たり20?25ドル程度とするなど、プロジェクト意思決定に対する姿勢は総じて保守的である。業界関係者の一部には、想定原油価格を少しでも引き上げることや、社内における意思決定基準を若干でも緩和しさえすれば、投資機会はもっと広がるのではないか、との指摘も聞かれる。しかしメジャー系企業の多くは、特に2004年以降の原油価格高騰は一時的なものであり、大規模で、従って事業として収益を生むまでに長期間を要するプロジェクトを推進するためには、その長期間故に生ずる不確実性にも当該プロジェクトが耐えることができるよう、意思決定基準は保守的にあAナリシスysisnalyAAnalysisAAysAnana nalysisAnalysisAAnssiissyyllaanAdeepwater oilTNK-BP oilother oilpipeline gasLNG200420102010-BP projection 図9BPの将来の生産割合見通し出所:BP図10Shellの将来の生産割合見通し出所:Shell油資源開発は高い技術水準やノウハウが要求される。従って、メジャー系企業は、これらの分野において大規模に事業を遂行する場合には、相対的に競争上優位性を発揮できることから、当面、高水準の研究開発費を支出することにより(ExxonMobilは年間6億ドル、BPは年間4億ドルの研究開発費(上流部門以外のものも含む)を支出している)、国営系企業や有力インディペンデント系企業に対して競争力を保持できる、上記3分野におけるプロジェクトを中心として活動を推進していくものと考えられる。? 国営系企業群 主成分分析による散布図を見ると国営系企業は、規模的には中庸であるが、財務的には健全と言える企業が多い。また、純利益の水準ではメジャーと肩を並べる水準に達していることから大部分の国営系企業はクラスター分析ではメジャーと同様の範疇に分類されているものと考えられる。これは特権的2005.7. Vol.39 No.48production by resource type ExxonMobilの将来の生産割合見通し出所:ExxonMobil図8るべきとの態度を堅持している。ただ、これが自らの投資機会を狭めるもう1つの要因となっていると考えられることも確かであろう。 メジャー系企業にとって、投資機会が限られたり投資条件が悪化したりする環境の下、彼らは既存の石油・天然ガス田での生産維持を行いつつ、米国メキシコ湾や西アフリカ等の深海部における石油・天然ガス探鉱・開発・生産、LNG事業を含む天然ガス探鉱・開発、オイルサンドやGTLといった非在来型資源の開発に注力するようになってきている(表2参照)。 例えば、ExxonMobil、BP、Shellが発表した資料を見ると、いずれも今後数年の間に、深海部探鉱・開発、LNG事業ないし非在来型石油資源開発に係る生産割合を増大させる意向が示されている(図8、9、10参照)。これはいずれも高度な技術的を要する他、例えばLNGを含む天然ガス事業については、天然ガス探鉱・開発に係るノウハウの他に、液化、輸送、受入および販売といったそれぞれの分野でのノウハウが必要とされることから、産ガス国政府が容易に扱うことができるようなものではないという特徴をもつ。むしろ産ガス国政府としては、権益の一部を外資に付与する代わりに、LNG事業に係るリスクを会社側に負担させる方が得策であると考えていると見られる(権益の一部を与えてもなお、産ガス国は天然ガス生産収入の85?90%を獲得できると言われている)。 ただ、このような分野においても、例えばナイジェリア政府が深海部石油探鉱・開発プロジェクトへの参加比率増大を検討したり、ベネズエラ政府が超重質油プロジェクトにおける条件を外資にとってより厳しいものにしたりするというように、リスクが依然として存在していることも否定できない。しかしながら、深海部石油・天然ガス探鉱・開発やLNG事業、非在来型石痩c石油会社と日本上中流企業に大きな成長潜在力地位を有する中国、ブラジル、そしてロシアといった自国において、従来から一般的に低コストで石油・天然ガス探鉱・開発・生産事業を実施することにより、大きな収益を生み出してきていることが背景にあるものと考えられる(中国、ロシアはもともと大産油国であり、ブラジルも最近原油生産量が増加しつつある)。 最近このような国営系企業の一部が、国外への石油・天然ガス探鉱・開発・生産事業に進出する例が多くなってきている。特に中国(そしてインド)における国有石油会社は、国有であるが故に、自国の石油供給源多様化を第一の目的としており、欧米のメジャー系企業等のように株主への収益を第一に操業する必要が必ずしもないと言われている。従って欧米民間石油・天然ガス会社ほど配当等に気を使わなくても済むことから、内部留保を手厚くできる可能性が大きく、このことも負債比率を低くできるということで財務健全性に寄与していると考えられる。また、そのような性質があるが故に、より低い収益率でも操業が可能なこともあり、鉱区によっては、メジャー系企業等と対抗する部分も生じてきている。 一方、国営系企業の中でも、Petrobrasはブラジルで深海部における石油探鉱・開発プロジェクトを数多く手がけており、深海部探鉱・開発技術ノウハウを蓄積していることから、この面において国際競争力を持つ勢力になってきている。他方、PetronasやSonatrachは天然ガス液化事業に係る経験を持っている。 また、国営系企業については資金調達力が劣るとの指摘がなされることもあるが、クラスター分析や主成分分析では、必ずしもそれを示唆する結果とはなっていない。実際国営系企業においては、資金調達において大きな問題に直面したという報告はされていない。メキシコのPemexは2004年に60億ドルを調達した。一方、ベネズエラのPDVSAは30億ドルを調達した。CNOOCは2004年11月に社債発行で10億ドルを調達した他、Shellの保有するWoodside持ち分34%を取得しようとした。 さらに、国営系企業同士の関係も緊密になりつつある。例えばロシアの国営系企業や政府機関と中国やインドの国営系企業との間での対話が増加しつつある。また、国営系企業が政府により保有されている(ないしはかつて保有されていた)ということも含めて、企業背景に共通性があることにより、両者の協議が円滑に進みやすく、また国営系企業間の関係が良好な政府間関係により拡大される、という指摘もある。一方で、反対に国営系企業間の協力の成功が政府間の関係改善をもたらすとも言われている。ベネズエラは中国との間で原油および重油の割引販売で合意したと伝えられるし、CNPCはベネズエラの油田開発でPDVSAと共同事業体を設立した。Pemexはメキシコ湾における深海部開発のため、Petrobrasと同盟関係を結んだ。PetrobrasとSonangolも協力協定に署名した。さらにSinopecは深海部油・ガス田探鉱・開発技術力で定評のあるPetrobrasと提携していると伝えられる。 また、1990年代に比べて2000?2003年は総じて原油価格は高水準で推移しており、特に2004年においては、以前にも増して原油価格は高騰しているので、欧米系民間企業同様、自国で上流資産を有する国営系企業は資金を潤沢に保有していると考えられる。多くの国営系企業は、深海部開発等に係る技術力は現在伴っていないものの、今後国営系企業同士の提携を通じて経験を増やし、技術力を向上させていくとも言われている。このように、国営系企業は、現在の財務健全性を利用して、今後資本を有効活用していけば、さらに規模を拡大することが可能であり、経験を積むととともに、現在では必ずしも優れているとはいえない技術力を向上させれば、将来的には有力インディペンデント系企業はもちろんの表4国営系石油企業の国外進出例(主要なもの)出所:各社年報他国  名国営系企業名進出国名備  考CNPC(PetroChina)スーダン、ミャンマー、インドネシア、パプア・ニューギニア、モーリタニア、カザフスタン、ベネズエラ等中国CNOOCインドネシア(Tangguhプロジェクト)、豪州(NWSプロジェクト)、ミャンマー等Sinopecアルジェリア、インドネシア、オマーン等豪州Gorgonガス田の権益取得につき交渉中と伝えられる(2003年10月暫定合意) カナダのオイルサンド事業に進出2005年6月Unocal買収を提案カナダのオイルサンド事業に進出 Petrobrasと提携ロシア(サハリンⅠ)、ミャンマー、リビア、シリア、スーダン等アルジェリア、アンゴラ、カメルーン、チャド、エジプト、赤道ギニア、インドネシア、ミャンマー、スーダン、ベトナム、イエメン等アンゴラ、アルゼンチン、ボリビア、コロンビア、ナイジェリア、米国等Sinopec、Pemex、Sonangolと提携インドONGCマレーシアPetronasブラジルPetrobras9石油・天然ガスレビューsisnalyAAnalysisAAysAnana nalysisAnalysisAAnssiissyyllaanAアナリシスディペンデント系企業は、より選択的に事業を実施せざるを得ない状況にある。 具体的には、多くの有力インディペンデント系企業が、北米において成熟した油・ガス田での増進回収法(EOR)を通じた生産量維持、米国メキシコ湾を中心とする深海部探鉱・開発、北米におけるオイルサンドやコール・ベッド・メタン(CBM)、タイトサンドガス開発の中から事業を選択し進出していることが挙げられる(表4参照)。また米国の有力インディペンデント系企業は、従来から北米外に事業進出していた一部を除き、メジャー系企業と比べて相対的に資産が北米に集中している企業が多く(図12参照、インディペンデントの多くはその半分以上を北米での石油・天然ガス生産に頼っている)、北米外での事業進出は限定的である。さらにLNG事業については、有力インディペンデント系企業にとっては総じて事業規模が大きすぎることと、液化等探鉱・開発以外のノウハウを必要とされることから、ある程度の規模でもって進出している企業はMarathon Oil、ないしはBGといった従来から天然ガスを主として取り扱ってきた企業程度と、ごく少数である。 有力インディペンデント系企業においては、このような事業の選択の過程で、自社にとって中心的な役割を担わないと判断された資産は売却する傾向にある。例えばEnCanaはカナダでのオイルサンド事業等に経営資源を集中すべく、油田資産を売却しているし、Devonにおいても米国メキシコ湾深海部での事業を推進する一方で、同メキシコ湾陸上やメキシコ湾浅海域における資産を売却している。? 日本企業群 日本企業は、規模の観点では世界の他の石油・天然ガス企業と比べても最小の部類に入るということを主成分分2005.7. Vol.39 No.410図11メジャーとインディペンデントの操業キャッシュフロー出所:各社年報他100%80%60%40%20%0%XOMShellCVXTotalCOPDevonEnCanaAnadarkoCNRMurphyKMGApacheMarathonOxyNexenTalismanUnocalHess注:XOMはExxonMobilを、CVXはChevronを、COPはConocoPhillipsを、KMGはKerr-McGeeを、HessはAmerada Hessを、それそれ指す。北米北米外図12地域別石油・天然ガス生産割合(2004年)出所:各社年報他こと、メジャー系企業にとっても手ごわい相手となり得るものと予想される。また欧米では、石油探鉱・開発に係る技術者を中心として人材不足が顕在化しており、今後の事業発展において支障となるとの懸念が増大してきている。しかし、国営系企業では多数の人材を抱えているところが多く、この面でも今後の世界の石油探鉱・開発事業への進出を広げる可能性を有していると言えよう。? 有力インディペンデント系企業群 主成分分析によると、有力インディペンデント系企業は規模においてメジャー系企業に比べて圧倒的に劣る。また、財務的健全性はメジャーと遜色のない企業もあるものの、全般的にはやはり劣る状況にある。これは、有力インディペンデント系企業各社の操業キャッシュフローを見ても明らかである(図11参照)。有力インディペンデント系企業で最も操業キャッシュフローが潤沢であるDevon、EnCana、Oxyであっても、メジャー系企業群で最も操業キャッシュフローの少ないConocoPhillipsの半分以下である。また彼らも企業価値を維持するために、メジャー系企業同様株主への配当や自社株消却等を行う必要がある。このため、深海部、天然ガス(LNG事業)、非在来型石油・天然ガス資源といった複数分野で大規模に事業を遂行することで、ポートフォリオを組んでいるメジャー系企業とは異なり、規模や財務的健全性、資金力が限られる有力イン痩c石油会社と日本上中流企業に大きな成長潜在力表5有力インディペンデント系企業の深海部、天然ガス(LNG事業)、非在来型石油・ガス資源進出例(主要なもの)出所:各社年報他深海部天然ガス(LNG)非在来型石油・ガス資源その他北米外事業備  考Marathon米国メキシコ湾 アンゴラAnadarko米国メキシコ湾赤道ギニアLNG赤道ギニアGTL北米CBM 北米タイトサンドガスAmerada Hess米国メキシコ湾ノルウェーLNG(Snohbit)ロシア、ノルウェー、北アフリカ等カスピ海、ノルウェー、東南アジア等北米EOREnCana米国メキシコ湾ApacheOccidental米国メキシコ湾カナダオイルサンド(Forster Creek、Christina Lake) 北米CBM(2002年以降2004年までに43億ドルの資産取得)カナダCBM米国メキシコ湾インドネシアへのガス供給 タイ海洋パイプラインガス既存の石油・ガス資産を売却(2002年以降2004年までに60億ドル、2005年にも30億ドル前後の資産売却を見込む)米国陸上Permian Basinに係る資産を集中的に取得2005年4月ChebronTexaco(現Chevron)から、2005年6月CNOOCから、それぞれ買収提案を受ける北海、北アフリカ、豪州オマーンEOR、リビアカスピ海北海、西アフリカカスピ海、西アフリカ、ブラジル米国メキシコ湾岸陸上およびメキシコ湾浅海域等資産売却UnocalCNRDevon米国メキシコ湾Kerr-McGeeMurphy米国メキシコ湾米国メキシコ湾 マレーシアTalismanNexen米国メキシコ湾カナダオイルサンド(Primrose、Horizon)カナダオイルサンド(Jack Fish他)カナダオイルサンド(Syncrude)化学部門売却を検討中カナダ西部既存資産売却カナダディープガス北海、東南アジア、中南米等カナダオイルサンド(Syncrude、Long Lake)カナダCBM北海Buzzard、ナイジェリア、イエメン北米EOR析は示唆している。ただ、財務的健全性を見てみると、有力インディペンデント系企業と比較しても悪くない領域に位置しているように見える。実際日本企業の一部にはROCEも有力インディペンデントに比べて悪くない状況にあるものもあるが、この財務的健全性に係る指標の解釈には注意が必要である。日本企業の多くは、ROCEはともかくとして、全般的に負債比率が低いことが、この指標における位置付けに影響していると考えられるためである。一方のメジャー系企業や有力インディペンデント系企業については、ある程度負債による資金調達の上、高水準のROCEを目指すという企業行動が一般的であり、ここに負債比率が低い方が望ましいとする日本的財務評価基準と、負債である程度資金を賄いつつ最大限の収益を生み出していくという欧米型財務評価基準の違いがあることに留意されたい。 従って欧米の株式市場からは、日本企業の大部分において見られる負債比率の低さは、場合によっては資産を有効活用していない(レバレッジ効果を生かしていない)と理解されることもあり得る。今後欧米的な考えを持った株主が日本企業の株式を保有した後、資産の有効活用が進んでいないことを指摘するとともに、配当を引き上げる等の圧力をかけるといった状況が現れないとも限らない。 また、前述の通り、主成分分析では、欧米系民間企業においては、一般的に規模が拡大するとスケールメリットが働き、財務的健全性も改善する傾向を示しているが、特にROCEが改善する傾向がある。このため、現状においてROCEが著しく低くはないような日本企業においては、将来的には規模を拡大することにより、収益性(ROCE)を一層改善できる可能性があることを暗示しているものと考えられる。 さらに、仮に主要日本企業数社が合併した場合、規模が増大するため、スケールメリットが機能し収益が向上することも期待される。5.おわりに このように、クラスター分析や主成分分析といった多変量解析により世界の石油・天然ガス会社を分析してみると、産業界には、少数のメジャー系企業とその他の有力インディペンデント系企業、そして国営系企業が、おおむねそれぞれ独自の領域に位置していることが判明した。そしてそれらは、各企業の事業戦略に反映されているとも言えそうである。中東湾岸諸国やメキ11石油・天然ガスレビューAナリシスシコにおける産油国で、対外開放の場が限られると同時に、原油価格高騰の影響もあり、対外開放を行っている産油・ガス国で契約条件が民間側にとって不利になるリスクが高まる恐れが懸念される中、新たに鉱区公開を実施する(ないし実施する予定の)産油・ガス国では、国営系企業の参入によって、鉱区取得に向けた競争が激化してきている。 メジャー系企業は既存石油・ガス田の生産維持の他、「天然ガス(LNG事業)、米国メキシコ湾および西アフリカ等の深海部での探鉱・開発、オイルサンド等の非在来型石油・天然ガス資源開発事業」、そしてBP等一部企業がロシアに進出するなど、大規模プロジェクトを複数推進することでポートフォリオを組んでいる。それに対して有力インディペンデント系企業は、規模の上で圧倒的にメジャー系企業に劣るため、「米国メキシコ湾を中心とする深海部、カナダにおけるオイルサンドや北米におけるタイトサンドガス、CBMといった非在来型石油・天然ガス資源、EOR」、そして一部企業がマレーシアやアフリカ等に的を絞って進出している。ただしLNG事業はごく一部に限られるなど、プロジェクト推進については、より選択的になっているという特徴が見られた。 今後ますます自らの立場を見極めつつ、いわば「選択と集中」の戦略を、多くの石油・天然ガス会社が推進していく中では、新たな資産および企業の再編が行われ、そしてその中で、自社にとって中心的な役割を果たさない資産や企業の売却が実施されていくことが予想される。このような大きな流れの中で、日本業界は自らの位置付けを明確にするとともに、自分の会社の長所と短所をわきまえ、戦略を策定しつつ、事業を推進していくことが今後ますます重要になっていくものと考えられる(すなわち目指すべきニッチの明確化が求められている)。 今回は、初めて多変量解析を用いて世界の石油・天然ガス業界の分析を試みたが、今後このような多変量解析による世界の石油・天然ガス業界調査・分析としては、さらに年数を増やして、原油価格が比較低廉でかつ大手石油会社の合併・買収が行われる以前の1990年代と、企業の資産買収・合併が一息つく一方で原油価格が全般的に高水準となった2000年以降の業界地図を比較・考察するというのも一案であるし(ただし、合併や資産買収前と後の業績データをどのように調整するかといった問題もクリアする必要があろう)、将来国営系企業や民間石油会社のデータがさらに公開されるに従って、調査対象を一層広げて分析を実施することも考えられよう。いずれにしても、適切に使用すれば、多変量解析の手法は、世界の石油・天然ガス業界の全体像を考察するとともに、それぞれの企業グループがどのような領域を占めるかを把握するのに有益なツールとなるポテンシャルを秘めていると言うことができよう。ysisnalyAAnalysisAAysAnana nalysisAnalysisAAnssiissyyllaanA参考文献 1. 社会情報サービス, 菅 民郎著, 「多変量解析」 2. Leopold Simar, Multivariate Data Analysis 3. 欧米メジャーおよび有力インディペンデント等の石油会社各社年報, 有価証券報告書および投資家向け等発表資料 4. John S. Herold, Inc./Harrison Lovegrove & Co., Global Upstream Performance Review 2004. 5. John S. Herold, Inc., John S. Herold Company Research. 6. 米国Mineral Management Service (MMS), 2004年11月, Gulf of Mexico Oil and Gas Production Forecast 2004-2013 7. Petroleum Finance Company (PFC), "Strategy and Performance Pro?les"における石油会社各社レポート 8. 国際エネルギー機関(IEA: International Energy Agency), International Energy Agency Oil Market Report各号およびInternational Energy Agency Oil Market Report Annual Statistical Supplement for 2003 and Users' Guide. 9. 野神隆之, 2005年5月, JOGMEC石油・天然ガス資源情報(JOGMECホームページ), 「国際石油会社を巡る従来型石油探鉱・開発投資の環境が悪化、深海部探鉱・開発、天然ガス(LNG)、非在来型石油資源(オイルサンド等)の事業に注力へ」10. 野神隆之, 2005年4月, JOGMEC石油・天然ガス最新動向(JOGMEC内部レポート), 「石油・天然ガス産業:リグと技術者の不足が世界各地で顕在化」11. 野神隆之, 2004年12月, JOGMEC石油・天然ガス最新動向(JOGMEC内部レポート), 「開発費用が増大する一方で探鉱活動は低迷、企業/資産買収も低水準、各社は深海域での活動を推進へ」12. 野神隆之, 2004年10月, JOGMEC石油・天然ガス資源情報(JOGMECホームページ), 「Shellが中長期戦略を発表、大規模探鉱・開発、ガス事業、非在来型石油資源開発に重点、しかしながら他のスーパーメジャー同様探鉱・開発投資の大幅増額はせず」2005.7. Vol.39 No.412痩c石油会社と日本上中流企業に大きな成長潜在力著者紹介早稲田大学政治経済学部経済学科卒業、ペンシルベニア大学大学院修士課程及びフランス国営石油研究所附属大学院(ENSPM)修士課程修了。通商産業省(現経済産業省)資源エネルギー庁長官官房国際資源課(現国際課)、国際エネルギー機関(IEA)石油産業市場課等に勤務の後、石油公団企画調査部調査第一課長を経て、現在JOGMEC石油・天然ガス調査グループ調査チーム上席エコノミスト(石油・天然ガス市場及び産業担当)。趣味は旅行(国内・国外問わず)だが、最近特に変化の激しい石油市場および産業の調査・分析に追われ、まとまった休暇がとれないのが悩み。13石油・天然ガスレビュー
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国・地域 グローバルアジア,日本
2005/07/20 [ 2005年07月号 ] 野神 隆之
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