ページ番号1006172 更新日 平成30年2月16日

水素エネルギー社会は天然ガスが支える ─水素普及のカギ握るコンパクト水素製造技術─

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レポートID 1006172
作成日 2005-07-20 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 技術
著者
著者直接入力 東 隆行
年度 2005
Vol 39
No 4
ページ数
抽出データ Analysisアナリシス大阪ガス株式会社エンジニアリング部マネジャーtakiazum@osakagas.co.jp東 隆行水素エネルギー社会は天然ガスが支える水素普及のカギ握るコンパクト水素製造技術 太陽熱を利用して、洋上で海水を分解し大量の水素を作る、その水素を液化して陸上に運び、そのまま燃料として、または、電力に変えて家庭や工場で使うという日本のオリジナルな水素エネルギーシステムが提唱されたのが1970年代である(文献1)。その後、わが国において画期的な水素エネルギープログラムであるWE?NETプログラムが開始され、日本の水素エネルギーの本格的な研究基盤が確立された。 また、地球環境問題に関しては、2005年2月16日に京都議定書が発効し、CO2の排出量削減が国際条約上の責務になったという状況下、日本は1990年比で6%の削減を達成しなければならないが、2002年の統計によれば、8%程度上回っている。特に、運輸部門、家庭部門の温暖化ガス排出量が依然高い状況にある。そこで、自動車産業界は水素をキーワードとし、燃料電池自動車を今後の環境調和型社会に適合するターゲット車として、生き残りをかけた熾烈な競争を行っている。もっとも、ハイブリッド車の開発が急速に進み、現状では燃料電池自動車と比べても遜色ない技術となっている。しかも、燃料電池自動車が市場に浸透するためには、燃料電池の価格を現状の100分の1程度まで削減させなければならない等の課題も多い。温暖化問題に先手を打つことで、ビジネスとして主導権を握るために、ハイブリッド車に続く将来の車として、燃料電池自動車を、経済性を有する形で技術的に完成させることは重要である(文献2)。 「いまだ多くのハードルが行く手に存在するとはいえ、馬車の発達から3000年を経た1900年にあっても、馬車が自動車に取って代わられる時代の到来を予測できた人はほとんどいなかったという歴史を振り返ってみてください」(文献3)という言葉に同感しながら、水素エネルギー供給サイドから、今後の水素エネルギーについて考察する。 本稿では、水素製造のための原料、再生可能エネルギーからと既存の化石燃料からの水素製造についてその役割を考察した後、原料を天然ガスについて絞り、天然ガスを原料とした水素製造技術について、特に、日本の誇るコンパクト水素製造装置について紹介し、来るべき水素エネルギー社会へのインフラ基盤の構築に関して議論を展開する。(cid:12695)(cid:12748)(cid:12708)1.水素を何からつくるか? 2次エネルギーとしての水素?製造と輸送?  水素は、その運搬性と即時性を考えれば、電力と同じ2次エネルギーであるとも言える。まず、電力については、その製造の原料構成比は各国で大きく異なっている。 たとえば、フランスでは78%が原子力発電により製造されているし、ドイツでは石炭53%、原子力30%であり、イタリアでは70%が石油、天然ガスから、イギリスでは石炭33%、天然ガス40%から製造されている。一方、日本は石炭24%、石油16%、天然ガス22%、原子力30%と、ひとつの原料源に偏ることなく分散された形で製造されている(文献4)。 2次エネルギーである水素も、水素というガス体あるいは液体水素という液体で他国から輸入するには、1970年代に日本の都市ガスをコークス炉での石炭ベースのガスから輸入LNGによる天然ガスに転換したよりも、大きなインフラ改造、システムの変革が必要となり、コスト的に極めて厳しい状況が予想される。電力と同様に日本国内にて輸入された原料から製造し、かつ、偏った原料に頼るのではなく、原料の多様化をはかるべきであると考えられる。 水素の原料ソースとしては副生水素があり、大都市周辺に大量に存在する副生水素を「準国産資源」として活用していこうという考えがある。このうちコークス炉のCOG(Coke Oven Gas)から分離された水素は、石炭の熱分解による水素であるので、広義には石炭由来の水素ということができる。日本の製鉄業界は6,400万トン(2002年)もの原料炭を使用してコークスを製造しているので(文献5)、この熱分解ガスからの水素の積極的利用は、米国の石炭利用の水素計画(FutureGen)よりも早くから実施されている日本独自の水素利用形態である。 さらに、石油、天然ガス、再生可能エネルギーおよび電力からの水素製造を考慮すれば、原料の多様化という観37石油・天然ガスレビューAナリシスysisnalyAAnalysisAAysAnana nalysisAnalysisAAnssiissyyllaanAいる。表1に国の目標値を示した(文献8)が、平成22年度(2020年度)においても、太陽光発電からバイオマス熱利用までの再生可能エネルギー量を総合計しても、原油換算で1,910万?、日本の一次エネルギー総供給量の約3%にしかならない。確かに、2020年における必要な水素量58万トンは、原油換算では約210万?(現在の日本の石油消費量の1%程度)に相当する量であるので、エネルギー量という観点からは、再生可能エネルギーを利用し水素を製造するということは、計算上は可能である。しかし、再生可能エネルギーは出力の不安定性と高コストのため経済性が成立しにくいという課題を抱えており、それから水素を製造するとなると、安価な水素の提供はまず困難であると言わざるを得ない。しかも、自動車の数という観点からは、水素量58万トンでも燃料電池自動車500万台程度しかまかなえない。再生可能エネルギーを使用して作られた水素を、安価に大量に供給し、本格的な水素社会に突入させるためのドライビングフォースにするのは、再生可能エネルギー量の制約、経済性から考えて当面は難しい状況にあると予想できる。 再生可能エネルギーの利用状況は国により異なる。たとえば、スウェーデンでは、水力発電も含んだ形での再生可能エネルギーの1次エネルギー総供給量に占める割合が、先進国の中ではずば抜けて高く32%程度もあり、とりわけ、バイオマスの利用比率が高い。産業排水、下水汚泥や家畜系のバイオマスの発酵により製造・精製したメタンを圧縮天然ガス燃料にして、CNGV(Compressed Natural Gas Vehicle)に供給するステーションが、スウェーデン国内に多数建設されている。これは、CO2フリーのCNG自動車社会をローカルにではあるが実現しているといえる(文献9)。ただ、認識しておかねばならないのは、スウェーデンは12005.7. Vol.39 No.438点から、原料の偏りのリスクは軽減される。 また、送電網ができあがっている電力と異なり、水素はそのエネルギーの輸送について考えなければならない。現在、世界では年間5,000億?の水素が生産され、消費されている。その50%以上は、天然ガスの改質により製造されている。米国に至っては、95%以上の水素が天然ガスの改質によって製造されており(文献6)、その95%以上の水素が石油精製用、メタノール、アンモニア製造用に用いられている(文献7)。つまり、水素が必要な場所で、天然ガスから水素に変換され消費されているわけである。もちろん水素製造場所と水素消費場所とが離れているケースに対応するため、圧縮水素トレーラーあるいは液体水素トレーラーによる輸送も行われている。 水素製造エネルギーをどのように調達するかは、水素インフラを考える際の根幹であり、かつ、製造コストを決める大きな決定要因であると同時に、水素エネルギーの安定供給、供給安全性に大きくかかわる重大な問題である。 ガス体エネルギーのトレーラー等による輸送は、日本においても、LNGのローリー輸送が活発化しつつあり、高圧水素の輸送も年間2億N?程度がされているが、液体水素輸送については、輸送距離や輸送経路は非常に限定されている。ガス体エネルギーの輸送は、エネルギー密度が低く輸送効率が悪いという課題、かつ、人が運転するという安全性リスクが問題となる。今後、水素ステーションの数が2010年で500ヵ所、水素需要約4万トン、約4.5億N?の水素、2020年3,500ヵ所、水素需要約58万トン、約65億N?の水素の供給要求に応えていくには(文献2)、安定供給、コスト、安全性等を踏まえ、水素をどこで何から製造するかということが重要となる。? 再生可能エネルギーからの水素と化石エネルギーからの水素? 再生可能エネルギーからの水素 前述したような太陽エネルギーや、バイオマスを利用した水素製造は、CO2フリーという観点から、究極の水素エネルギー利用形態である。現状においても、限定的な地域あるいは特殊な環境下では、経済的に成立する場合もあり、興味深いものではある。ただし、再生可能エネルギーの賦存量は膨大であるが、エネルギー密度が希薄であり、分散しているため、実際に水素製造のために使用できる量は限られて表1 新エネルギーに関する国の目標平成13年6月総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会報告書平成11年度(実績)平成22年度(目標)原油換算(万kl)5.3 3.5 115.0 5.4 98.0 4.1 4.4 ー457.0 692.7 設備規模(万kW)20.9 8.3 90.0 8.0 ーーーーーー構成比(%)0.8 0.5 16.6 0.8 14.1 0.6 0.6 0.0 66.0 100.0 原油換算(万kl)118134552344395814674941,910設備規模(万kW)48230041733ーーーーーー太陽光発電風力発電廃棄物発電バイオマス発電太陽熱利用未利用エネルギー廃棄物熱利用バイオマス熱利用黒液・廃材等計*原油1リットル=9,250kcal*1kWh=860kcal*出力○kWの発電量(kWh)=○kW×24時間×365日×発電効率*発電効率:太陽光12%、廃棄物65%、バイオマス25%として計算構成比(%)実績との 対比6.2 約7.0 約28.9 約1.8 約23.0 約3.0 約0.7 約3.5 約25.9 約100.0 約22倍38倍5倍6倍4倍14倍3倍倍1倍3倍?fエネルギー社会は天然ガスが支える次エネルギー総量自体が非常に少なく、日本の8%程度であるということである。 このような状況下にある国では、将来CNG車から燃料電池自動車へ転換することは、インフラサイドからは容易であると予想できる。つまり、バイオメタンを水素に変換することにより、CO2フリーの水素社会の実現を目指すことができる。後述する日本の天然ガスから水素を製造する装置は、この転換を容易にする潜在能力を秘めている。? 天然ガスからの水素 化石エネルギーを用いた場合のCO2発生量について、ガソリン、CNGを原料としたときの自動車からのCO2発生量を水素原料と比較したものを表2に示した(文献10)。 ガソリン、CNGと比較して、水素がCO2削減に対して高いポテンシャルを有することは一目瞭然であるが、問題は水素を製造する工程である。もちろん、再生可能エネルギーによる製造ではCO2の発生量はないが、前述したような課題が存在する。通常の欧州の電力グリッドからの電気を使用した水電解法によるCO2排出量は、206gCO2/MJと試算されている。これに対し、天然ガスパイプラインからの天然ガスをベースにした水素製造法によるCO2排出量は、101gCO2/MJと試算されている(文献10)。 つまり、天然ガスからの水素製造が、CO2発生量という観点からは通常の電力を利用した水電解よりは環境にやさしいということができる。 エネルギー基本計画(2003年10月閣議決定)における再生可能エネルギーに関する重点的施策にあるように、再生可能エネルギー利用は、将来のエネ表2 CO2排出量燃料ガソリンCNGH2gCO2/MJ73.4 56.4 0.0 ルギー利用形態として、確かに目指していくべき方向ではある。しかし、再生可能エネルギーからの電力を使用して製造された水素を使うという水素エネルギー社会の扉を開くには力不足である。水素社会の黎明期において力強く牽引できるのは、天然ガス等の化石燃料ベースの水素製造であると考えられる。水素製造のための当面の牽引役は天然ガス等の化石燃料をベースとするが、将来は再生可能エネルギーがこれに加わってくるというような役割を認識することが必要かと考える。2.天然ガスからの水素製造と日本の水素製造装置の国際比較? 天然ガスからの水素製造プロセス メタンを主成分とする天然ガス、特に、日本においては、都市ガス(13A規格)原料を用いた場合の水素製造のプロセスは2つの工程からなる。原料ガスから水素をつくる改質部門と、不純物を精製して製品水素ガスを得る精製部門の2部門である。改質部門は、原料中の硫黄分を除去する脱硫工程、水蒸気改質反応により水素リッチな合成ガスを生成する改質工程、水蒸気を含む改質ガス中のCO成分をシフト反応によりCO2と水素に転換するCO変成工程に分けられる。 実際のプロセスとして、大阪ガス㈱の水素製造装置、HYSERVEを例にとり説明する。図1にプロセス概要を示した(文献11)。まず、原料の都市ガスを0.9MPa(9気圧)程度まで昇圧し、装置に導入する。脱硫工程では、改質触媒の活性低下の原因となる硫黄成分を取り除くために、約200?300℃で水添脱硫反応をおこない、原料中に含まれる硫黄分を硫化水素に転換し、吸着脱硫反応にて硫化水素を除去する。さらに超高次脱硫触媒を利用することにより、ppbレベルまで硫黄成分を除去する。 脱硫した原料はプロセス水と混合して、原料加熱器等で約500℃まで加熱した後に、改質器に導入する。改質器では、約700?800℃の温度で水蒸気改質反応により、水素濃度約70vol%の改質ガスを生成する。改質後、CO変成器において、約200?300℃で改質ガス中のCOと水蒸気とを反応させ、水素濃度を約75vol%まで上昇させる。その後、改質ガスを常温まで冷却し、余剰の水分を分離し、精製部門へ供給する。 精製方法としては、圧力スイング吸着法(PSA法)による。これは、吸着剤により改質ガス中のH2O、CO2、CH4、COなどを吸着除去し、高純度水素(99.999vol%以上)を得る方法である。不純物は、吸着塔内の残留水素ガスとともにオフガスとして排出し、全量を改質器のバーナー燃料として利用する。? 天然ガスを原料とする世界の水素製造装置 IEA技術開発プログラムの中の「再生可能エネルギー開発」分野で、水素エネルギーに関する研究開発実施協定が結ばれ、「水素の製造・利用」として、さまざまな水素製造に関する技術についての検討が実施されてきた。これらは、光電気化学的水素製造、光生物学的水素製造、炭素系物質からの水素製造、固相および液相からの水素製造(吸蔵合金)の4部門で、2002年から3年間39石油・天然ガスレビューAナリシスAysisnalyAnalysisAAysAnana nalysisAnalysis利用を考えている。ヨーロッパにおいては天然ガスのパイプライン網は整備されており、低コスト、かつ水素の安定供給という命題から、パイプラインによって輸送された天然ガスを原料とした水素製造・供給ステーションが必要不可欠という認識が広まっている。このオンサイトステーションのためのコンパクトな水素製造装置が主要課題となっており、そのためにIEAの部会(Annex)がつくられている。 このAnnexへの参加エキスパートは、国の研究機関からの代表ではなく、各国の水素製造装置メーカーの開発技術者がほぼ一同に参加しており、自社技術と他社技術とを比較しながら水素製造について議論するという、ある意味珍しい会議が2002年から3年間開催されてきた。日本からは、天然ガスを原料とする水素製造装置メーカーである三菱化工機㈱と大阪ガス㈱の2社が参加し、欧米のメーカーと議論してきた。 各メーカーが実際に開発している、ssあるいはすでに商品化している機器のiissyyll仕様を表3に示した(文献13)。三菱化aanA工機と大阪ガスとを除き、他社は記号で示した。 この比較で、日本の2社の装置は非AAn三菱化工機(HyGeia)(HYSERVE)大阪ガス都市ガス脱硫器(200~300℃)燃焼バーナ改質器加熱(700~800℃)スチーム水蒸気改質工程大阪ガスが独自に開発した高性能の高温水蒸気改質触媒によりH2を主成分とする合成ガスに改質CO変成器(200~300℃)CO変成工程CH4+H2O=3H2+CO(吸熱反応)オフガスPSAユニット水素PSA工程CO+H2O=H2+CO2(発熱反応)水蒸気改質反応後の生成ガス中のCOをH2に転化高純度H2ガスH2分離性に優れた吸着剤により、不純ガスを吸着除去し、高純度のH2だけを送出※水素以外の成分ガス)は改質炉の燃料として全量使用されます図1 水素製造プロセス概要あるいは5年間のプログラムとして検討されている。メンバーである15ヵ国(2004年10月の時点)からエキスパートが参加し、議論が進められている。この中の「炭素系物質からの水素製造」という部会(Annex-16)では、コンパクト水素製造装置に関する先進技術についての評価が実施されてきた。参加国は、ノルウェー、スウェーデン、オランダ、デンマーク、ドイツ、フランス、スペイン、イギリス、米国、シンガポール、韓国、日本である。 特にこのAnnexではヨーロッパからの参加者が多いが、ヨーロッパの9都市で27台の燃料電池バスを走行させているCUTE(Clean Urban Transport for Europe)プロジェクトにみられるように、太陽エネルギー、風力エネルギー、バイオマス燃焼による電力を利用した水電解法(4ヵ所)、トレーラーによる水素供給(3ヵ所)と並んで、Stuttgart、Porto、Madridの3ヵ所で、天然ガスの水蒸気改質による水素製造が実施されている(文献12)。 ヨーロッパ諸国は、前述したように、2次エネルギーである電力の原料構成が国により異なるので、水素製造の考え方に関しても若干異なるものの、遠い将来の究極目標は再生可能エネルギー利用、短・中期的には天然ガスの表3 各社の水素製造装置比較単 位TCK6150-50003516M6350-20004013-15H26920-1253510HY5450-250208Z6050-125ー673503077030-100407効率(HHV,電気込)サイズ範囲%Nm3/h75250-1000099.9999.993020%bargmole%ppmhrターンダウン比出口圧力製品純度 H2 CO起動時間サイズ プロット面積  50Nm3/h         100Nm3/h        1000Nm3/h 高さイニシャルコスト**筆者が、イニシャルコストとして、A:低、B:中、C:高と評価した。3013012ー3015012Am2m2m2m<2NA99.99<218-2462200-2000NA17<2NA20018C99.99999.9999.9999.9999.99999.999<2NA174802.5B<13-410-2.1B<1213-2.4A<13-410-2.4B<19A<13-4102.8 A2005.7. Vol.39 No.440?fエネルギー社会は天然ガスが支える図2 ドイツ某社の100Nm3/h水素製造装置(改質部のみ)図3 大阪ガスのHYSERVE-100外観常にコンパクトに仕上がっており、水素製造効率が高く、安価であることから、技術力、価格競争力とも世界のトップレベルにあることが判明した。 例として、ドイツの天然ガス改質型水素ステーションで稼動している、某社の100N?/h規模の水素製造装置と大阪ガスのHYSERVE-100(100N?/hの水素製造装置)の写真を図2、3に示した。 ドイツの水素製造装置の写真(図2)は、手前に写っているのが改質部であり、奥にPSA部があり、かつ改質部とPSA部との間に改質ガスの昇圧のための圧縮機がある。 一方、大阪ガスの装置は、改質部、PSA部ともすべてが入ったオールインワンのパッケージ化がなされている。両装置の設置面積の比較を図4に示した。? コンパクト水素製造装置  ?HYSERVE? ?機器構成 HYSERVEシリーズは、原料圧縮機と本体ユニットとからなる極めてシンプルな構成となっている。現在、1時間あたりの水素製造量が30N?のHYSERVE-30と100N?のHYSERVE-100とが商品化され、300N?のHYSERVE-300が開発中である。本体ユニット内部には、脱硫器、改質器、CO変成器、PSA吸着塔、オフガスタンクなどがすべて内蔵されている。用役設備として、純水装置、純水ポンプ、冷却塔、計装空気圧縮機などを必要とするが、水蒸気供給に関しては、改質器の排熱により自給するシステムとなっている。図4 装置の大きさの比較(設置面積の比較)41石油・天然ガスレビュー? 仕様および性能 表4にHYSERVEシリーズの基本仕様および性能を示した。製品水素は99.999vol%以上の高純度であり、電力消費量も非常に少ない。運転はワンボタン起動、停止が可能な簡単操作で、40?100%の負荷範囲で自動負荷追従運転が可能となっている。? 装置外観、設置スペース 既に、図3にてHYSERVE-100の外観写真を示したが、HYSERVE-30の装置外観写真を図5、内部機器レイアウト立体図を図6に示す。装置全体が外装材で覆われてパッケージ化されており、配管などの取り合いを背面に集めているため、従来の化学プラント的な印象を全く与えない外観となっている。前面にタッチパネルを装備した操作盤を配置し、四方に開閉可能な扉を備え、運転調整およびメンテナンスも容易におこなうことができる。また、本体ユニットサイズが30 N?/日・機で2.5mW×2.0mD×2.5mH、総重量が約5トンと、容易に運搬、設置が可能であるため、現地では、原料(天然ガス/都市ガス)圧縮機、水素利用機器との接続をおこなうだけで、装置の搬入から短期間で水素の供給が可能となる。\4 HYSERVEシリーズ 基本仕様HYSERVE3030Nm3/hHYSERVE100HYSERVE300(開発中)300Nm3/h停止が可能100Nm3/h都市ガス(13A)99.999vol%以上機種名水素製造能力原料水素純度不純物濃度原料原単位電力原単位製品水素圧力設置スペース (N2、O2、CO、CO2、CH4)合計 10ppm以下 露点?70℃以下0.42Nm3-NG/Nm3-H20.40Nm3-NG/Nm3-H20.38Nm3-NG/Nm3-H20.20kWh/Nm30.16kWh/Nm30.70MPaG以上0.16kWh/Nm3(ユーティリティエリア除く)2.5mW×2.0mD×2.5mH3.8mW×2.6mD×2.8mH4.5mW×3.0mD×3.0mHアナリシス専門家を必要とせず、無人運転が可能である。・ ワンボタンで安全に水素の供給開始、・ 使用量に応じて水素の製造負荷を自動調整、複数台自動連携運転も標準化・ 日常的な窒素ボンベの交換が不要で、点検管理が容易? 水素ステーションにおける水素製化造コストssiissyyllaanAAysisnalyAAnAnalysisAAysAnana nalysisAnalysis 国の描くシナリオのもとでの水素ステーションにおける水素出口価格の目標は、2005年150円/N?、2010年80円/N?、2020年40円/Nm3となっている(文献2)。これら目標値は、熱量等価(HHV基準)のガソリン価格(税込)に換算すると2.7倍の価格となり、それぞれ2005年407円/?、2010年217円/?、2020年109円/?相当となる。燃料電池自動車の効率が、ガソリン自動車(ハイブリッド車を含む)に対しどの程度の値になるかで、走行時のエネルギーコストは変化する。 この項では、安価な水素製造装置を用いた場合の天然ガスを原料として、水素を製造するコストについて言及する。さらに、DOE(米国エネルギー省)も同様な水素コストの目標を提示して脱硫器CO変成器? 特徴 コンパクト性や経済性を追求していくと、水素ステーション向けとしては低圧改質器に比べて加圧型改質器(<0.99MPa)が有利であると考えられる。大阪ガス㈱は、コンパクトで熱効率の高い加圧型改質器の開発をおこなうとともに、PSA装置のさらなるコンパクト化、構成機器の集積パッケージ設計を進めてきた。① コンパクト 主に以下の点により、従来装置の約50%以上の省スペースを実現している(大阪ガス社製従来装置との比較)。・ 加圧型改質器の熱効率向上による小型化・ 小型高効率熱交換器の採用、構成機器の集積配置による小型化② 低コスト 主に以下の点により、従来装置より大幅な低コスト水素の供給が可能である。・ 機器仕様の標準化、一体パッケージ化による製作コスト、現地工事コスト削減・ PSAオフガスの全量回収使用により原単位低減・ 加圧型改質器の採用により、中圧都市ガス(>0.1MPa)供給圧力の有効利用可能・ PSAタイムサイクルの高速化およびオフガス制御方法の改良による小型③ 簡単操作 主に以下の点により、装置の運転に改質器ボイラー制御盤オフガスタンク図5 HYSERVE-30外観図6 HYSERVE-30 レイアウト立体図PSA吸着器2005.7. Vol.39 No.442?fエネルギー社会は天然ガスが支えるいるが(文献14)、その水素価格との比較、解析もあわせて実施した。 ?水素ステーション出口コスト 天然ガスを原料とするオンサイト型水素ステーションのプロセスは、大きく分けて水素製造装置、圧縮機、蓄圧器、ディスペンサーで構成される(図7)。 水素供給コストは、各構成機器の設備費等からなる固定費と、原料価格等からなる変動費から試算される。また、将来コストはステーション設置数の増加に伴う構成機器の製造数の増加による価格減衰を学習曲線で考慮することにより予測される。エネルギー総合工図7 天然ガス改質型水素スタンドの構成図8 黎明期の水素ステーション出口コスト図9 普及期の水素ステーション出口コスト43石油・天然ガスレビュー学研究所の年間水素試算ベースに則り、設定した黎明期(FCV数5万台、製造水素量20万?50万N?/年・ステーション)と普及期(FCV数1,500万台、製造水素量150万?240万N?/年・ステーション)(文献15)について、水素のステーション出口コストを試算した結果を図8、9に示した。黎明期は、100N?/hレベルの水素製造装置を設置した水素ステーション(累計10ヵ所)の水素製造コストであり、普及期は、300N?/hレベルの水素製造装置を設置したステーション(累計10,000ヵ所)の水素製造コストである。価格には金利、修繕費、租税公課、ステーション運転のための人件費を含んでいる。水素価格は設備の稼働率に依存するため、ここでは年間の稼働率を1,000?8,000時間の間で変化させた。 黎明期でも稼働率を高く維持することで水素1N?当たり70円程度の価格が達成できる可能性があること、普及期では50円/N?を切る価格となる可能性があることがわかる。国の2020年の目標である水素価格40円/N?を達成するためには、装置コストを含めたさらなるコストダウンが必要ではあるが、決して難しい目標値ではなく、十分手の届く範囲の目標値であると考えられる。? DOEの水素ステーション出口コストとの比較 DOEが目標としている、天然ガスをベースにした水素製造装置を設置した水素ステーションの2005年の水素出口コストのターゲットである3.0ドル/kg-H2と日本のコンパクト水素製造装置をベースにした水素ステーションの水素出口コストを、同じ原料費のもとで比較した。① DOEコスト試算条件(報告値)(文献14)・ 水素ステーションの規模は、138台/日(690kg/日)E ステーションは、天然ガス改質型水素ステーション(精製はPSA)(累計100台)② 日本のコスト試算のための前提・ 水素ステーションとしては、新たな土木工事をせず、既設のガソリンスタンドあるいはCNGステーションの敷地内に設置する。・ モジュール化した各設備を運び込み、積み木のように結合させるイメージによってつくる。したがって付帯工事費は大きくならない。今回は、付帯工事コストを総プラント建設コストの10%とした。・ 水素製造装置は、300N?/h、8,500h稼動とする(累計100台建設の装置コストを試算して使用)。・ 原料費は、天然ガスを50円/N?、電力を20円/kWhとして試算した。 なお、DOEの水素コスト3.0ドル/kg-H2を、日本の原料費ベースを用いて変換して比較した。アナリシス 結果を表5に示した。 DOEの目標である3.0ドル/kg-H2は、日本の原料費のもとで計算すると4.8ドル/kg-H2となる。一方、日本の水素出口コストは、5.3ドル/kg-H2と若干高い結果となっている。しかし、水素製造セクションだけをみると、水素コストは、DOEの3.23ドル/kg-H2に対し、日本は2.72ドル/kg-H2と安価である。日本の水素昇圧部のコストと貯蔵、ディスペンサー部のコスト、その他のコストを低減できれば、十分に競合できる。あるいは、日本の技術と米国の技術の良いところを組み合わせれば、より安価な水素を製造できる可能性があることがわかった。表5 水素コストの比較現   行水素コスト円/Nm3$/kg**水素製造セクション (リホーミング、PSA)水素昇圧セクション水素貯蔵+ ディスペンシングセクションその他*合計25.5 12.1 3.3 8.9 49.8 2.72 1.29 0.35 0.95 5.32 *  その他は、付帯工事10%をのせ、かつ労務費(2人/年)を計上している。   償却等については、金利3.1%、修繕3.5%、租税公課1.7%、   減価償却(10年、簿価10%)9.0%としている。** HHVで計算***DOE水素コストでは、原単位を日本の装置と同じとして、原料コストの差    (DOE→NG:4ドル/百万Btu(HHV)、電力:0.07ドル/kWh、日本→NG:50円/N?、電力:20円/kWh)の比例費分のみ上積みした。ysisnalyAAnalysisAAysAnana nalysisAnalysisAAnssiissyyllaanADOE水素コスト$/kg3.23***0.95**0.19 0.42 4.79 円/$=1103. 水素ステーション展開のための課題? 水素ステーション投資コストの低減 水素ステーションへの投資コストをできるだけ低減するためには、既存のガソリンスタンド、CNGスタンドを、水素供給もできるマルチエネルギーステーションに改造することである。このためには、水素製造装置だけでなく、圧縮機、貯蔵装置、ディスペンサーすべてを標準化、コンパクト化、パッケージ化することにより、コストダウン、現場の設置面積の低減および現場工事の簡素化を図ることが重要である。例えば、関西圏にあるCNGステーションを、水素併設型のマルチステーションに転換するというイメージを図10に示した。製造装置の大きさは、普及期以降では、100N?/h、300N?/hの2種類と考えており、それにあわせて、後流の機器である、圧縮機、貯蔵ユニット、ディスペンサーのサイズを標準化し、すべてをコンパクトに仕上げてパッケージ化するのは、まさに日本のお家芸であると考えている。? 水素製造装置のコスト低減 水素エネルギーの黎明期には、水素ステーションの数も少なく、その結果、製造する水素製造装置の数も少ないため、装置コストの低減がままならないという好ましくないサイクルの状況が続く。その打開策としては、コンパクト水素製造装置を工業用オンサイト水素製造に適応することを考えればよい。日本においても、現在、約2億N?程度の水素が工業用水素として異企業間で取引されている。すでに、メタノールを原料としたオンサイト水素製造装置、天然ガスを原料としたオンサイト水素製造装置が、一部導入されているがその数は少ない。天然ガスのオンサイト製造装置をまず工業用に展開し、信頼性を高めつつ、コストダウンを図り、水素ステーション展開を待つというスタンスで、水素時代の扉を開く準備をするというのが望ましいと考える。 大阪ガスにおいても、図11に示したように、大阪府内の鋼線メーカーの工場にHYSERVE-30を納めている。敷地面積の制約があったため、工場の屋根の上に2台の水素製造装置を設置する構造となっているが、まさにコンパクト水素製造装置により可能となった設置方法である。2005.7. Vol.39 No.444?fエネルギー社会は天然ガスが支える図10 水素供給可能マルチフューエルスタンド図11 工場に販売しているHYSERVE4. まとめ 1972年のローマ・クラブによる成長の限界から、30年間の地球の状態を観察し続け、シミュレーションを見直した結果の報告書が、Limits to Growth The 30-Year Update (日本語訳「成長の限界 人類の選択」)として出版され、環境問題が再びクローズアップされており(文献16)、環境問題を解決するひとつの方法として、水素エネルギーに大きな期待が寄せられている。 この水素エネルギー社会の扉を開けるためには、化石エネルギー、特に天然ガスを利用した水素製造が、水素供給インフラサイドから、非常に重要な役割を演じると予想している。 また、経済性、利便性、安全性を考慮したうえで、旧来のガソリンスタンド、CNGスタンドを水素も供給できるマルチ水素ステーションに転換するための総合技術、すなわちオンサイト型水素製造装置とステーション関連装置の標準化、コンパクト化、パッケージ化の技術を武器に、日本が世界の水素供給インフラ構築に多大な貢献をできる可能性が高いと考えている。 水素インフラサイドからの水素エネルギー供給に関して、蓋を開ければ石油メジャーや世界レベルの工業ガス会45石油・天然ガスレビューsisnalyAAnalysisAAysAnana nalysisAnalysisAAnアナリシス社が主権をとろうと競争している中で、メタンを原料としたコンパクト水素製造装置の分野は、明らかに日本が世界をリードできるだけの技術力、開発センスがあり、世界レベルで競争できる力がある。現在、活発に開発が進められている燃料電池技術とともに、水素ステーションへ設置するコンパクト水素製造装置の技術も、日本のエネルギーの戦略技術として、今後世界に向け、発信、展開すべきであると考える。 燃料電池自動車と水素供給ステーションとの関係は、Chicken-EGG Problemといわれ、どちらが先かの議論がなされるが、水素を車上で電気に変換し、車を走らせるという"サプライズ"を生み出す燃料電池自動車に対し、どちらかというと縁の下の力持ちという感のある水素エネルギーインフラサイドの確立は、いままでの車社会を支えてきた石油産業界、CNG供給で低公害化に貢献してきたガス産業界が、営々として築き上げてきたスタンドを水素インフラ用へ転換するという形で、淡々と、しかし力強く、水素エネルギー社会の確実な立ち上げのために貢献できるものと考えている。謝辞 水素製造装置の開発および経済性の評価についてのご指導に対し、新エネルギー・産業技術総合開発機構およびエネルギー総合工学研究所に感謝いたします。引用文献 1. 太田時男, ソフト・エネルギー, 講談社現代新書 2. 燃料電池・水素関連の技術開発状況と対応の方向性について, 2004, METI資源エネルギー庁省エネルギー新エネルギー部政策課燃料電池推進室資料 3. BP, Cleaner energies/Hydrogen, BPパンフレット 4. 野村, 三浦, 鈴木, 薄井等, 大阪大学出版会, 21世紀を担うクリーンコールテクノロジー, 1頁 5. 白鳥 研二, 2003, 日エネ誌, 82p, 382p 6. June 2002, National Hydrogen Energy Roadmap, DOE, p9 7. www.airproducts.com 8. 経済産業省HP: www.meti.go.jp 9. METHANE FUEL A CLEANER FUEL SYDKRAFT パンフレット10. L-B-Systemtechnik GmbH, 2002, GM Well-to-wheel analysis of energy use and greenhouse gas emissions of ssiissyyllaanAadvanced fuel/vehicle systems - a European study11. 2004, 超小型オンサイト水素製造装置-HYSERVEシリーズ, パンフレット, 大阪ガス㈱, ㈱リキッドガス, 大阪ガスエンジニアリング㈱12. CUTE Project The European Commission Directorate-General for Energy and Transport13. IEA Annex-16 Task-C Small Scale Reformers for Energy Applications調査結果14. NREL Draft 2003, Hydrogen, Fuel Cells & Infrastructure Technologies Program, DOE, p3-1015. 水素シナリオの研究, 平成15年度成果報告書, NEDO16. ドネラ・H・メドウズ, デニス・L・メドウズ, ヨルゲン・ランダース, 成長の限界 人類の選択, ダイヤモンド社著者紹介大阪府出身。大阪大学大学院卒、工学修士、技術士(化学部門)。1989年西ドイツKarlsruhe大学に留学中、ベルリンの壁崩壊を現地で体験。石炭の乾留、ガス化の技術開発、炭素材の製造・用途開発に従事後、現在、水素エネルギーとCO2削減のエンジニアリング開発を実施中。趣味は読書、テニス、ゴルフ。2005.7. Vol.39 No.446
地域1 グローバル
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2005/07/20 [ 2005年07月号 ] 東 隆行
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