ページ番号1006190 更新日 平成30年2月16日

南アジアの虎、東の竜を猛追 ~インド石油ガス企業の海外事業戦略:成果はいま一歩~

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レポートID 1006190
作成日 2005-11-20 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 企業探鉱開発
著者
著者直接入力 坂本 茂樹
年度 2005
Vol 39
No 6
ページ数
抽出データ アナリシスJOGMEC 石油・天然ガス調査グループsakamoto-shigeki@jogmec.go.jp坂本 茂樹南アジアの虎、東の竜を猛追?インド石油ガス企業の海外事業戦略:成果はいま一歩?インドがエネルギー資源確保の努力を続けている。将来のエネルギー消費大国の一つであるインドは、既に70%に達する原油の輸入依存度がさらに高まり、ガスも輸入増加が見込まれている。原油価格高騰で原油輸入代金が膨れ上がる下で、積極的に海外の石油ガス資産獲得の施策を繰り広げている。その主要なプレーヤーは、国有石油上流企業ONGC(Oil and Natural Gas Corporation)である。ONGCは、特に2000年以降、野心的な目標を掲げて資産買収と探鉱鉱区取得に邁進している。進出国は既に14カ国に上る。しかし、現時点における成果は決して満足できる水準ではない。3件の生産資産を保有しているが(ベトナム、スーダン、サハリン蠢)、生産量は目標に遥かに及ばない。新たな資産買収の入札では、大方、中国企業との競合に敗れている。探鉱事業は多いが、発見のあった事業はまだ1件(ミャンマー)のみである。多くの探鉱事業は、取得時期がまだ新しく、その評価にはしばらくの時間を要する。しかし、政府の強力なバックアップは必ずしも企業の事業レベルの成功に結び付いていない。国有石油企業の経営に対する政府機関の大幅な関与は、企業経営の効率性と自主性に相反する局面が見受けられる。国内探鉱では、外資系および民間企業の成果が国有企業を凌駕している。民主主義政体をとるインドは、一党独裁の中国と異なり、エネルギー政策を強権的に進めることはできない。また、インドの海外資産・探鉱鉱区取得の歴史はまだ新しく、何らかの評価をするのにはまだ早いといえる。しかし今後の政策では、企業の進出意欲をより優先した政府のバックアップ体制が望まれている。本稿では、最初に石油上流事業に関するインド政府の政策を挙げ、次にインド全体の海外進出の特徴および個々の企業の海外進出状況を紹介・コメントし、併せて国際的なエネルギー協力関係構築の有効性を考える。そして最後に、ガス輸入を中心とした事業状況を概説する。1.インド政府の海外生産資産取得および国有石油企業に対する政策海外における石油ガス生産資産の盧取得インド経済の拡大とともにエネルギー消費量が着実に増大している。原油・ガス需要の増加量は、その国内生産量の増加量を大幅に上回り、徐々に輸入依存度が高まっている。2004年の原油の輸入依存度は約70%であるが、IEAは2030年には85%に達するものと見ている。こうしたエネルギー需給状況下で、インド政府は躍起になって、国有石油企業による海外における石油ガス生産資産の取得を推進させている。政府が海外の生産資産を求めるのは、以下の29石油・天然ガスレビュー80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 19851986198719881989199019911992199319941995199619971998199920002001200220032004原油輸入依存度 出所:2005年BP統計図1インドの原油輸入依存度推移二つの理由による。①原油の輸入依存率の一貫した上昇が示すように、エネルギー消費量は既に国内生産量を大幅に上回っており、将来はますます海外のエネルギー資源に頼らざるを得ない。②2004年以降の原油価格高騰により、PCL(Hindustan Petroleum CorporationLtd. 下流)51.01%BPCL(Bharat Petroleum CorporationLtd. 下流)66.2%GAIL(Gas Authority of India Ltd.ガス中・下流)57.35%政府は国有石油企業の過半数を大きく超える株式を保有する最大株主であり、政府方針に沿って、主体的に企業管理を行う。昨今の原油価格高騰のコストを価格転嫁できずに赤字転落した石油下流企業の損失をカバーするために、国有石油企業間で行うcross-subsidyのような政策も、政府主導で行う。一方、1999年に発表した新探鉱鉱区公開政策(NELP, New Exploration LicensingPolicy)の下では、外資、民間、国有企業とも全く同じ扱いであって、税率をアナリシス含めて国有企業のみに対する優遇策は一切ない。2004年春に成立した、国民会議派を中心とする現連立政権も、本来は段階的な国有企業の民営化を継続する計画であった。政府は、石油企業HPCL(Hindustan Petroleum)を含む多業種にわたる国有企業の株式売却を計画しており、外資のシェルやトタルおよび民間企業リライアンス等がHPCLの製油所買収に興味を示していた。しかしながら、閣外協力で与党を支える共産党など左翼・地方政党が、州レベルの地方選挙等の絡みで、政府が主導する民営化政策に強く反対した。政府は結局、現政権(国民会議派を軸とした連立政権)が2004年春の総選挙で掲げた「利益の上がる国有企業を民0500袰 1000KabulAFGHANISTANIslamabadSrinagarJAMMU KASHMIRLahoreFaisalabadHIMACHALPRADESHPAKISTANPUNJABUTTARANCHALHARYANACHINALhasaDelhiNew DelhiUTTAR PRADESHNEPALKathmanduRAJASTHANKarachiJaipurLucknowKanpurGUJARATMADHYA PRADESHAhmadabadINDIASuratMumbaiMAHARASHTRAPuneCHHATTISGARHNagpurORISSAARUNACHALPRADESHSIKKIMThimphuBHUTANGuwahatiMEGHALAYAASSAMNAGALANDMANIPURBANGLADESHDhakaTRIPURAMIZORAMBIHARJHARKHANDWEST BENGALCalcuttaChittagongMYANMARインドの国民経済が支払う原油輸入代金が増加している。海外の石油生産資産を購入する代価を10ドル/バレル強と仮定すると、現在の市場原油価格60ドル/バレル強と比較してかなり安価に原油を購入できることになる。なお、政府の海外資産取得政策は、経済合理性のある手段による海外資産からの収益を求めているのであって、生産物のインド国内持ち込みを求めているわけではない。海外において収益のあがる資産を保有し、その収入から得る利益で必要なエネルギー資源を別途購入すればよいと考えている。事実、インド企業が権益を保有するスーダンGNPOC事業の生産原油は、ほとんどインドに輸入されず、多くが海外の第三国向けに販売されているといわれる。海外進出の対象地域は、どこであれ地質ポテンシャルがあればよく、政府が対象国・地域、または重点地域を定めることはない。資産取得の対象地域は、個々の企業がその時々の目標地域を定めるものとしている。国有企業政策:政府が保有する国盪有企業株式インド政府は、社会主義的経済政策を採った1980年代に、当時の民間石油企業、外資企業を国営化した(例:エッソ→HPCL、シェル→BPCL)。1991年に経済自由化路線へと大きく方向転換した後、1990年代末から段階的に国有企業の民営化を進め、国内株式市場において国有企業株式の売却を行ってきた。現在、主要な国有石油企業の政府持ち株比率は、次の通りである:ONGC(Oil and Natural Gas corporationLtd. 上流)74.14%OIL(Oil India Limited 上流)約80%IOC(Indian Oil Corporation Ltd. 下流)82%35 30 25 20 15 10 HyderabadANDHRA PRADESHGOAKARNATAKABangaloreChennaiAndaman Is.TAMIL NADUKERALAColomboSRI LANKASri Jayewardenepura KotteNicobar Is.75 80 85 90 95 図2インド概略図2005.11. Vol.39 No.6305 N70 出所:JOGMEC作成?Aジアの虎、東の竜を猛追 ?インド石油ガス企業の海外事業戦略:成果はいま一歩?営化しない」との政策を尊重して、2005年8月初めに、計画していた民営化政策をこれ以上実施しないことを決めた(国有石油企業の株式放出を含む)。蘯国有石油企業統合の中止インド政府は2004年末に諮問委員会を設けて、国有石油企業再編成を含めた石油企業政策を検討した。目的は、インド企業がエネルギー資源を巡る国際入札において中国企業に敗退するケースが多かったため、企業統合によって強力な資金力と競争力を持つ上流企業を育成することにあったといわれる。2005年1月時点の見通しでは、ONGCおよびIOCをそれぞれの核とする、垂直統合された二大グループに再編成という案が有力と見られた。しかし、2005年8月末にインド関係先にヒアリングしたところ、諮問委員会が政府に提出した検討結果は、「国有石油企業の統合を実施しない」とのことであった。2005年8月末時点では、政府が諮問委員会の提案内容を審査している段階であって、まだ最終結論は出されていない。しかし、「国有石油企業の統合を実施しない」方針は、既に政府内の合意を得た既定路線とみられる。基本的な考え方は、上流企業は本来の上流事業に専念し、下流企業は本来の下流事業に専念させる、という方針であるといわれる。一方、この方針とは逆に、石油下流企業には強い上流事業参入志向がある。実際、石油下流最大手のIOCは、上流企業OILとコンソーシアムを組んで内外の上流事業案件への積極的な参入を図っている。また、上流企業にも下流事業参入志向があって、上流最大手のONGCは、現在所有する南部カルナータカ州マンガロール製油所の他に、さらに2カ所の製油所を建設する計画を進めている。政府としては、ある程度の企業間競争を促進させる目的で、こうした国有石油企業の多角化傾向を認めている。民間大手企業を含めて、企業側には垂直統合された事業体制を望む意向が根強く、実際に事業多角化が進展している。諮問委員会が国有石油企業再編成を提案しなかった理由は、雇用問題に強い関連があるものと考えられる。インドは、経済の自由化が進みつつあるとはいえ、依然として労働組合が強い力を持ち、雇用問題は非常に微妙で手を付けにくい問題である。現在の状況下で国有石油企業を統合しても、数万?十数万人という過剰な従業員を抱えた非効率な組織の温存になりかねない。現政権の置かれた環境下では、経済効果が期待できる企業再編成は難しいとの判断があったものと考えられる。2.石油ガス企業の事業戦略:海外事業を中心に総論盧a.国内の探鉱・開発:最近は活況インドの石油上流産業は、1990年代までONGCおよびOILの国有2企業体制(ONGCが鉱区面積および生産量の約90%を占める)が維持されてきた。1974年に大油田のムンバイ・ハイ(旧名:ボンベイ・ハイ)が発見されたが、1980年代以降は特に目ぼしい大発見は無く、原油生産量は現在までほぼ横ばい状態が続いている。一方、1990年代半ば以降の経済成長とともに原油需要は一貫して増加しているため、原油自給率は低下を続け、2004年時点では30%程度に落ち込んでいる。1980年代以降の原油確認埋蔵量、生産量および消費量の推移は図3・4の通りである。なお、1990年代末に新エネルギー探31石油・天然ガスレビュー鉱政策(NELP)が導入され、民間および外資系石油企業が国有企業と同じ条件で石油上流事業に参入できることになった。Cain Energy、BG等の英国企業、リライアンスなど民間企業の探鉱活動が活発化して、西岸のムンバイ沖合、陸上のラジャスタン州、および東岸のベンガル湾沖合等で新たな発見が続いている。特に画期的な発見は、2002年にリライアンスが発見したDhirubhaiガス田である。同ガス田は8?14tcfの可採埋蔵量を持つと言われるが、現在10億バレル 6 原油埋蔵量 5 4 3 2 1 0 198019851990199520002004出所:2005年BP統計図3インドの原油確認埋蔵量推移軛/d 3000 2500 2000 1500 1000 500 0 原油生産量 原油消費量 19851986198719881989199019911992199319941995199619971998199920002001200220032004出所:2005年BP統計図4インドの原油生産・消費量推移ガス埋蔵量 mcm 1000 900 800 700 600 500 400 300 200 100 0 1980出所:2005年BP統計19851990199520002004図5インドの天然ガス確認埋蔵量推移bcf/d 3.5 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 ガス生産量 ガス消費量 19851986198719881989199019911992199319941995199619971998199920002001200220032004出所:2005年BP統計図6インドのガス生産・消費量推移アナリシスなお評価作業を継続中であり、埋蔵量はさらに拡大傾向にある。同ガス田は、2005年4月に政府から開発計画の承認を受け、2008年の生産開始に向けて開発作業を進めている。ベンガル湾では、リライアンスのDhirubhaiガス田の他にも、2005年半ばにGSPCL(グジャラート州石油公社)および国有ONGCによって相当量の埋蔵量を持つガス田発見が続いている。1980年代以降のガス確認埋蔵量、生産量および消費量の推移は図5・6の通りである。かつて、インドの石油上流事業は外資企業にとって参加しにくく、また1980?90年代を通じて探鉱成果が芳しくなかったため、概して外資企業に不人気であった。しかし、2000年以降の探鉱成果を見て、新たにインド国内探鉱に参入する外資企業も現れ、2005年のNELP-5における入札は盛況であった。2005年7月末にNELP-5の入札結果が発表され、イタリアのENIがONGC、Cairn EnergyおよびGAILと組んで初めてラジャスタン州およびアンダマン海の鉱区を落札した。またENIは、2005年9月初めにONGCと深海域のE&P事業相互協力にかかわる覚書を締結し、インドおよび第三国における上流事業で協力関係にある。b.海外における上流資産取得インド政府は、今後原油の輸入比率がさらに高まる見通しであることから、この数年来、国有石油企業(ONGC)の海外資産取得を積極的に推し進めてきた。特に2004年半ば以降、ロシア、カザフスタンを含む旧ソ連、ベネズエラ、サウジアラビアなどエネルギー資源国との資源外交を積極的に推進している。また、インドと同じく将来のエネルギー大消費国と目される中国との協調関係を模索するなど、多方面な資源外交を展開している。理由は、原油購入コスト削減のためにエクィティー原油を保有することの2005.11. Vol.39 No.632?Aジアの虎、東の竜を猛追 ?インド石油ガス企業の海外事業戦略:成果はいま一歩?必要性がかつてなく強く認識されてきたこと、またこれまでの海外の石油資産入札において中国企業に敗退するケースが目立つこと等が挙げられる。最近のインド石油企業の海外進出(エネルギー資産取得)に関して、次のような特徴を挙げることができる。①政府の強いイニシアチブ政府の積極的な外交的働きかけが目立つ。石油契約の交渉、締結に際しては、首相、石油相または外相がしばしば相手国政府首脳と会談している(2005年9月のキューバとの契約締結の際は外相がキューバを訪問した)。中でも、アイヤル石油天然ガス相の積極的なエネルギー資源外交が際立っている。2005年1月に首都デリーに石油消費国および産油国の政府代表を招いて産油国・消費国対話を開催して注目を浴びたことを始め、ガスの輸入事業の推進、海外のエネルギー資産買収の推進など、多くの案件に関して相手国首脳と相互訪問を繰り返し、活発なエネルギー資源外交を展開している。一方、インドに一歩先んじて1990年代に海外のエネルギー資産取得に乗り出した中国の資源外交は、さらに徹底している。昨年来、胡錦涛主席や温家宝首相は、中南米、旧ソ連、アフリカ、中東の資源国との頻繁な資源外交を繰り返し、エネルギー資源国との経済的結び付きを着実に強めつつある。一般に、政府のエネルギー資源外交は、実際に当該国で事業を推進しようとする民間企業に対する強力な後押しとして機能することが多い。1990年代後半に起こったアゼルバイジャンの石油開発ラッシュは、メジャーズの意を受けた英米首脳のアゼルバイジャン詣でから始まった。しかしながら、現実の事業は必ずしも政府の思惑通りには進展しない。アゼルバイジャンの多くの探鉱事業で成功したのは、BPのACG事業の他はシェルのシャー・デニス・ガス田程度であった。企業の進出意欲に基づかない政府の外交施策は、必ずしも事業採算上の裏付けを伴っているとは限らない。インド政府の資源外交は、必ずしも十分な成果を上げているわけではないし、産業界からは、政府の施策に対してビジネスセンスがないとの強い懸念も聞かれる。②依然として国有石油企業が主要プレーヤーインドは1980年代に基幹産業を国有化しており、1991年に経済自由化へと方向転換した後も、国有企業の民営化はさほど進んでいない。主要な石油企業は依然として国有企業であり、海外における石油ガス上流事業の主要なプレーヤーも国有企業である。中でも、上流企業最大手のONGCが海外事業を一手に担ってきた。しかし最近では、上流企業のONGC、OILのみでなく、IOC、GAIL等の中・下流企業も、海外の上・中流事業に積極的に乗り出そうとしている。IOC、GAILが上流事業に参加する場合、上流企業のONGC、OILとの共同事業の形態を取ることが多い。また、GAILは中国など海外のガス事業者と共同事業会社を設立して、相手国のガス中・下流産業に進出している。ガス事業者のGAILには、さらに豪州などの海外LNG事業権益を取得する動きがある。なお、ガス需要家である国有発電公社NTPC(National ThermalPower Corporation)も、海外のLNG事業権益を取得しようとしている。ューバの探鉱鉱区が加わった。しかし、必ずしも探鉱成果が上がっていないので、地域選択に一貫性がないとの批判もある。④海外へ進出する際の手法が多様化2005年7月にONGCは、鉄鋼業界で世界最大手のミタル・スチール(ラクシュミ・ミタル(Lakshmi Mittal)会長はインド出身)と合弁事業会社を設立し、海外での新規鉱区・資産取得に当たる計画を発表した。ミタル・スチールは、途上国・東部ヨーロッパを中心に鉄鋼事業を展開しており、進出国の政財界において極めて大きい影響力を持つといわれる。ONGCと鉄鋼財閥ミタル・グループとの共同事業は、石油ガスE&Pと鉄鋼事業とのシナジー効果を狙う戦略であり、非常にユニークな手段と考えられる。政府のバックアップのみに頼らず、考えられる手段を総動員している感がある。しかしONGC/ミタル合弁事業の最初の対象となったカナダ企業PetroKazakhstan(カザフスタンで石油事業を展開)買収では中国CNPCに敗退しており、合弁事業の真価は今後の進展を見る必要がある。辣腕で、カザフスタン他各国にて業績不振の国営鉄鋼企業を次々と買収して再生してきたミタル・スチールは、進出国の政財界に強い影響力を持つ一方で、ミタル進出先の政府は、これ以上ミタルの影響力を拡大させたくないとの意向があるとも言われる。⑤進出先で行う事業が多様化③海外の上流事業活動地域が多様化海外の上流事業活動地域(上流権益取得対象国)はかなり広い地域にわたり、多様化している。ONGCの進出地域は、従来のアジア太平洋、旧ソ連(ロシア)、中東、北部アフリカの他に、2004年末以降は西アフリカ(ナイジェリア、コートジボアール)さらにはキ上流事業の進出先で行う事業が、石油関連他事業へと多様化が進んでいる。例えば、ONGCは2005年2月にスーダンで、ハルツーム製油所から輸出港ポート・スーダンへの製品輸出用のパイプライン建設を請け負った。こうした実施事業の多様化は他のアジア国有石油企業にもしばしば見られ、33石油・天然ガスレビュー?曹フ国有石油企業やマレーシアのペトロナスも、上流事業進出先でパイプラインなどインフラ設備や製油所・化学プラントの建設およびその操業を手がけるケースがある。⑥生産資産取得は必ずしも成功していないサハリン蠢およびスーダンのGNPOC資産に続くインドの生産資産買収は、まだ実現していない。強い意欲をもって臨んだと思われるPetroKazakhstan買収は、またもや中国企業の後塵を拝することとなった。c.資産買収で中国と競合したケース1990年代後半から既に海外で活発に資産買収を行っていた中国に対して、インドは2004年以降、積極的な海外資産取得政策に転じ、しばしば両国の企業がエネルギー資産の国際入札で競合するケースが起きている。ONGCがエネルギー資産の国際入札で中国企業と競って敗退した主要な事例として、表1の案件が挙げられる。①アンゴラ政府は、シェルとONGC間で合意されていた第18鉱区権益売買を了承せず、国営石油企業Sonangolが先買権を行使してシェルの権益を取得し、後にSonangol/中国Sinopecが設立した共同事業会社にこの権益を譲渡した。背景には、両国がアンゴラに提示したインフラ開発融資額の多寡があった。インドは2,000万米ドルの資金を申し出ていたが、中国はこれをはるかに上回る20億米ドルの融資を提示し、アンゴラは中国の条件を受け入れた。②中国にとってPetroKazakhstan買収は、カザフスタンからの原油パイプラインを建設して原油を購入する計画と併せて、原油調達先を確保するための周到に準備された計画の一環であったものと考えられる。カザフスタン政府にとって中国は国境を接する隣国であり、またカザフスタンが望んでやまないロシア経由以外の石油搬出ルートを積極的に提供してくれる相手でもあって、その経済的重要性はインドを大きく凌駕していたと考えられる。PetroKazakhstan側は、2005年10月18日までにCNPCが提示した条件を審議して、資産売却の可否の結論を出す予定である。アナリシス③EnCana のエクアドル資産買収は、CNPCのぺースで進められている。ONGCは入札を検討したが、最近のエクアドルは政情不安定で、また財務条件が投資家に不利に変更されたなど、資産に問題があると判断して、応札するまでに至らなかった様子である。中国は、経済が過熱してエネルギー需給の逼迫が始まった1990年代に、既に海外におけるエネルギー資産買収を開始し、1990年代後半以降、スーダン、インドネシア等の生産資産を次々と取得していった。中国企業全体の海外資産は既にまとまった規模に達しており、2004年における海外保有資産の石油ガス生産量は約40万BOE/日に達する。この数量は、同年の国内生産量の約10%に相当し、石油輸入量の約13%に相当する。中国の政治体制は共産党の一党独裁であって、石油、鉄鋼他の基幹産業は国有である。国有企業は実質的に政府の管理下にあって、その経営陣は政府要人との人的つながりが極めて強く、幹部人材の行き来もしばしば行われる。つまり、中国の国有石油企業は国家機関の実践部隊として、国家の最優先事表1インド・中国企業が競合した資産買収事例時期2004年4月対象資産アンゴラ沖合第18鉱区取得企業Sinopec/Sonangolの共同事業会社2005年8月PetroKazakhstan(カナダ企業)CNPC2005年9月EnCana のエクアドルにおける石油およびパイプライン資産CNPC/Sinopecの共同事業会社Andes Petroleum出所:各種情報・データ経緯原パートナーはBP(オペレーター、50%)とシェル(50%)の2社。2004年4月にONGCがシェルの権益を購入することでいったん合意が成立した。しかしアンゴラ国営石油会社Sonangolが先買権を行使してシェルの権益を購入し、その後Sinopecと設立した共同事業会社を、この資産権益を移転させた。中国からアンゴラへの政治的働きかけがあったものとみられる。PetroKazakhstanの会社買収につき、ONGC、Sinopec、CNPCが応札してONGCが最高額を提示した。しかしCNPCがONGCの提示額を上回る41.8億ドルを再提示してPetroKazakhstanがこれを受けた。EnCana はエクアドルの石油およびパイプライン資産を中国系JVのAndes Petroleum に14.2億ドルで売却。ONGCも興味を示していたが、本案件は問題が多いとして結局断念した。2005.11. Vol.39 No.634?Aジアの虎、東の竜を猛追 ?インド石油ガス企業の海外事業戦略:成果はいま一歩?項の一つであるエネルギー資源確保の実現を担っているのである。その計画性も徹底しており、PetroKazakhstan買収では、中国が必要とする石油資源の輸入にかかわるパイプラインを建設して経済関係を強化し、相手国政府と緊密な外交関係を築いた上で、石油資源を持つ第三国の会社買収に着手している。一方インドは、中国に約15年遅れて経済自由化政策を採って経済が拡大基調に至り、2000年以降に海外のエネルギー資源の確保に乗り出した。2004年初の海外生産資産は、スーダンGNPOC事業とベトナムのLan Tay/Lan Doガス田の2件にとどまる。数量は約9万BOE/日であって、これは同年の国内生産量の約7%、原油・ガス輸入量の約5%に相当する。なお2005年10月から生産開始されたサハリン蠢の生産量を追加すると、海外生産の輸入量に対する比率は約7%に上昇する。インドは海外生産を輸入量の15%程度とすることを目標に挙げているが、目標達成はまだ先の話である。また、中国の水準に比べると大きな差異がある。中国、インドの違いは、まずそのエネルギー需要規模の違いにある。2004年の中国の石油ガス需要規模はインドの約2.4倍であった。両国ともに人口が10億人を超える大国だが、中国の産業構造が相対的にエネルギー多消費の製造業中心であり、インドの産業はさほど多量のエネルギーを必要としないサービス産業が中心であることを考え合わせると、将来の両国のエネルギー需要の差異はさらに拡大していくものと考えられる。中国はインドに比べてより強いエネルギー資源の安定供給確保の必要性に迫られているわけである。次に、両国の政治体制の違いが考えられる。中国は先に述べた通り、共産党支配下の一党独裁体制下にあり、政府の定める政策がそのまま実行に移される。一方インドは民主主義体制であ35石油・天然ガスレビュー国内生産or輸入 海外生産 国内生産or輸入 海外生産 千boe/d 4500 4000 3500 3000 2500 2000 1500 1000 500 0 対国内生産比率 (10%) 対輸入比率 (13%) 出所:BP統計他各種統計データを用いて計算図7中国の石油・ガス海外生産の比率(2004年)千boe/d 1800 1600 1400 1200 1000 800 600 400 200 0 対国内生産比率 (7%) 対輸入比率 (5%) 出所:BP統計他各種統計データを用いて計算図8インドの石油・ガス海外生産の比率(2004年)って、選挙によって民意が政策に反映される。経済が発展しつつあるとはいえ、未だに国民の大多数を占める貧困層が求める職の確保、安価なエネルギーの供給に応じる経済政策は、必ずしも効率性を優先できるわけではない。経済合理性に依拠したエネルギー政策を徹底的に推し進められるわけでもない。なお、インドのエネルギー売上の約90%近くを占める国有企業は実質的に政府の管理化にあり、経営自主権があるとは言い難い。自らが稼ぎ出した利益の使途を決める権限もない。政府の価格政策で、昨今の原油価格高騰で膨らむコストを売価に転嫁できずに膨れ上がる石油下流企業の損失は、cross-subsidy政策により上流企業の利益で補填される。自己責任で投資を行うことができない体制は、成果に対する責任が不明確となり、経営が非効率な方向に流れる懸念がある。以降に、インドの各石油企業の状況を記す。Aナリシス盪ONGC(国有企業)ONGCはインド国内の石油ガス上流分野で全体の90%に近い埋蔵量をもって生産を担うガリバー企業である。海外進出における自負も強ければ政府の期待も大きく、これまでの実績も他企業を大きく引き離している。2004年2月に石油情報誌PIWがONGCの海外部門を担当する子会社ONGC-Videshの役員に行ったインタビュー記事によると、当時のONGC-Videshの目標は次の通りであった。①事業目標・2025年までに満足できるレベル達成を目標とする。その時点で、国内外を合わせた生産量を120万バレル/日にする。しかし、需要の伸びはさらに高く、2025年には700万バレル/日になるものと想定している。・2010年までに、海外の原油生産40万バレル/日を目指す。②Rationale・鉱区・案件選定に当たっては、収益性と対象国のポテンシャルを指針とする。ロシアとイラクがこの指針に該当する。また、アフリカ大陸をもう一方の対象とする。これらの地域では、長期的な原油調達を求めて長期的視野に基づく関係を築くが、他の地域(国)は個別に対応する。③現在の活動と今後の事業計画・スーダンとサハリンの権益取得。・その他には、アンゴラでの入札、ミャンマーの探鉱案件。④投資額・100億ドルの投資を計画する:個別の主要案件は、サハリンに20億ドル、スーダンに7億ドル。・2007?08年にスーダンでさらに15億ドルを投資。ミャンマー探鉱・生産に2?3億ドルを投資。・2010年までに10億ドル以上の利益を上げ、将来はONGC全体の利益の半分を捻出したい。⑤経営手法改善・政府がONGCやIOCなどの国有企業に対して多額の出資を行う通常の手続きには時間を要するため、1996年から4年間をかけて、主要な省の高官から成る委員会を組織し、国際商慣習に沿うタイムリーな出資と意思決定を可能とする決裁規定を作った。また、目標利益率=12%とする。⑥その他・(スーダンGNPOC事業において)CNPC、ペトロナスは良好な関係を持つパートナーであり、頻繁に話し合いの場を持っている。・事業の対象国は、資源があって、それが利益に結び付く地域。国際的な評判は問題ではない。サウジアラビアはエネルギー資源を解放していないから、投資対象にはならない。・生産物の処分方法は、最も利益が上がる方法を取る。他国への販売もあれば、自国への輸入もあり得る。全量を自国に持ち込む必要はない。それから1年半経った2005年10月時点で、ONGC-Videshは表2に示す15カ国で上流事業を行っている。生産資産は当初スーダン、ベトナムの2事業であった75o60o45o30o15o0o15o30o45o60oイラク(第8) シリア(Al Walead) イラン(Farsi) ロシア(サハリン蠢) (生産中) リビア(NC188/189, 81(1)) カタール ミャンマー(Shwe) キューバ (N34, 35, N25?29, 36) ナイジェリア(323/321) エジプト (北ラマダン第6) ベトナム(Lan Tay/Laodo) (生産中) コートジボワール(CI-112) スーダン(GNPOC他) (生産中) オーストラリア(WA-306P) Miller ProjectionScaleat Equater01000200030004000km15o0o15o30o45o60o75o90o105o120o135o150o165o180o165o150o135o120o105o90o75o60o45o出所:各種情報からJOGMEC作成図9ONGC-Videshの海外上流事業進出先2005.11. Vol.39 No.636?Aジアの虎、東の竜を猛追 ?インド石油ガス企業の海外事業戦略:成果はいま一歩?表2ONGC-Videshの海外上流事業一覧国名鉱区取得時期ベトナムLan Tay/ Lan Do1988年5月権益シェア45%オペレーターBP同権益35%その他パートナーPetro Vietnam同権益20%ロシアサハリン蠢2001年1月20%ExxonMobil30%イラクBlock 8 2000年11月100%ONGC VideshミャンマーBlock A-1 2002年1月20%大宇(韓国)60%Block A-32005年9月20%大宇(韓国)60%Farsi offshore2002年12月40%ONGC Videsh40%Al Waleed(Block XXIV)GNPOC生産資産2004年1月60%2003年3月25%IPRInternational共同操業40%イランシリアスーダン5A鉱区5B鉱区2003年24.1%2003年23.5%リビアBlock NC188/1892003年4月49%White Nile(Petronas)White Nile(Petronas)TPOC68.9%51%SodecoSMNG-SRN-AstraKogasGAILKogasGAILIOCOILCNPCPetronasSudapetSudapetLundinSudapetオーストラリアWA-306 P 2004年8月55%加Antrim32.5%Magellan 象牙海岸Block CI-112 2004年12月23.5%Vanco30%SINOPECOil India LtdPetroci30%11.5%8.5%10%10%10%10%40%20%40%30%5%7.0%24.5%11.0%12.5%30%11.5%5%2005年3月70%IPR Energy30%備考相対交渉で権益取得1992年にBPがファームインガス生産中Rosneft/SMNGから資産買収(ロシアが対印関係を配慮)2005年10月生産開始相対交渉で権益取得探鉱大宇鉱区にファームインガス発見:インドへ輸出を計画権益・パートナーはA-1と同じ相対交渉で権益取得探鉱(サービス契約)探鉱タリスマンから資産買収原油生産中:2004年27万b/dOMVから取得探鉱OMVから取得探鉱TPOC鉱区にファームイン探鉱Antrim 権益にファームイン探鉱Vanco 権益にファームイン探鉱:2005年に試掘井掘削入札で落札第一フェーズ:3D+試掘3坑エジプト北ラマダン第6鉱区(スエズ湾)開発カタールナイジェリア沖合鉱区(Najwat Najem)深海鉱区323/321キューバキューバリビアメキシコ湾深海鉱区(N34、35)メキシコ湾深海鉱区(N25?29、36)第81(1)鉱区(Ghadames)出所:各種情報からJOGMEC作成2005年3月20%ONGC Videsh20%Qatar Petroleum80%PS契約、当初2年間で評価作業2005年9月25%KNOCグループ65%ナイジェリア企業10%公開入札で落札2005年9月100%ONGC Videsh100%2005年9月30%Repsol-YPF40%Norsk Hydro30%2005年10月100%ONGC Videsh100%相対交渉でキューバから権益取得探鉱相対交渉でRepsolから権益取得探鉱公開入札で落札が、2005年10月にサハリン蠢事業が生産を開始した。2004年に海外2事業生産量(スーダン、ベトナム)のONGC-Videsh権益比率分数量は約9万バレル/日であった。これにサハリン蠢生産量を加えた2006年の推定値は約12万バレル/日、2010年時点の3事業合計からの取り分は約15万バレル/日であって、2004年2月にもくろんだ生産目標40万バレル/日には遠く及ばない。この1年半の間に、アンゴラおよびPetroKazakhstanと、続けて資産買収に失敗してきた。今後速やかに次の資産買収に成功しなければ、少なくとも2010年時点の目標は達成できないことになる。ONGC-Videshの事業権益取得政策は、バランスの取れた資産・鉱区取得を行うことであり、探鉱でリスクを取る一方で、適宜、既発見または生産資産を取得しようとしている。重点事業地域として、中央アジア/中東、アフリカ、南米を挙げている。コア資産の一つであるスーダンGNPOC事業周辺では、5A/5B鉱区権益を取得して探鉱を実施している。重点地域の北アフリカ・中東一帯では、リビア、エジプト、シリ37石油・天然ガスレビューAナリシスア、イラン、イラク、カタールで探鉱事業を実施している。ただし、インドが重点地域と目する旧ソ連圏では、2001年にサハリン蠢権益を購入した後には資産買収に成功しておらず、探鉱鉱区も保有していない。また南米では、2005年はじめのベネズエラのチャベス大統領訪印時に提案された、ベネズエラの共同事業のパイロット・スタディーが開始されたのみである。キューバを除くと、保有する鉱区権益はない。エクアドル、ボリビアなどを含む南米の資源開発対象国では、原油価格の高騰とともに資源ナショナリズム的な動きが高まって資源開発の契約条件が悪化しており、権益を取得するには時期が悪いとの判断が働いているものと考えられる。オペレーター案件は、2000?2002年に取得したイラン、イラクの探鉱案件、および2005年に取得したカタール、キューバおよびリビアの探鉱案件がある。オペレーターシップを持つ生産案件はまだ実現していない。探鉱案件は14件あるが、成功した事業は2002年に韓国・大宇グループのミャンマーA-1鉱区へのファームイン後に発見されたShweガス田のみである。数多い探鉱案件には、最近取得したばかりの案件も多い(2005年の取得案件が5カ国6案件)。2005年の取得案件の対象国は、中東/北アフリカ(カタール、エジプト、リビア)に加えて、西アフリカ(ナイジェリア)、北米(キューバ・メキシコ湾深海)と新たな地域に拡大している。キューバ・メキシコ湾深海は新たなポテンシャル地域として注目する見方もあり、ONGC-Videshの権益取得は積極的な探鉱方針の表れとも言える。なお、ONGCは2005年9月にRepsol-YPFからキューバ沖合のメキシコ湾深海鉱区(N25?29、36)権益を取得した際に、同鉱区パートナーのNorskHydroとの間で、深海域のE&P事業相互協力にかかわる覚書を締結した。探鉱の評価には今後の成果を待たねばならないが、現在見るところ、総じて探鉱成果が上がっているとは言い難い。積極的な探鉱方針は、逆にいうと、探鉱成果が上がっていないにもかかわらず、対象地域を効果的に絞りきれていないと見ることもできる。石油業界からは、ONGC-Videshの経営方針は、戦略を十分効果的に練りきれてもいなければ、対象地域を絞りきれてもいないとの批判も聞かれる。また、政府の国有石油企業に対する関与が強すぎるために、企業の経営能力を十分に発揮できていないとの見方もある。権益を取得した経緯を見ると、ファームイン、相手方との相対交渉、公開入札が、ほぼ同程度の比率になっている。現時点でのONGC-Videshの成果は、①資産買収の実績が上がっていない、②探鉱成果のあった案件が少ない、さらに③オペレーター事業でも見るべき成果がない事から、総じて狙った目標はまだ達成されていないと見なさざるを得ない。一方、ONGC全体としては、次の要因から、比較的順調に業績を伸ばし収益を挙げている。・国内探鉱は、他社のベンガル湾の相次ぐ発見を契機にして活況を呈しており、国内生産量も持ち直しつつある。・2002年4月に国内生産原油価格の価格制限が撤廃されてから、国際原油価格高騰に伴って毎年売上高を大幅に伸ばしている。・ONGCは現在、一カ所の製油所を保有しているが、今後製油所を増設して下流部門の拡充を計画している。将来的には、垂直統合的な企業組織を目指している。なお前述の通り、ONGCは2005年7月に、鉄鋼で世界最大手のミタル・スチールと合弁で、海外で石油ガスの探鉱・開発を行う子会社設立に合意した。8月にはさっそく共同で、ミタル・スチールが強い影響力を持つカザフスタンに権益を持つカナダ企業PetroKazakhstan買収を試みたが、CNPCに対して敗退しており、本合弁事業の評価はまだ断言できない。ONGCにはインド最強の石油企業としての自負とともに、強い拡大・上昇志向があり、「メジャーの一角に位置を占める」ことを目標にしている。なお、下流最大手のIOCも類似した拡大志向を持つ。参考に、2004年12月のPIW石油企業ランキングから、スーパーメジャー2社(エクソンモービル、BP)、準メジャー1社(イタリアENI)、アジア国有企業4社(中国のPetroChina, Sinopec、インドONGC、マレーシアのペトロナス)の7社を取り上げ、資源埋蔵量、生産量および純利益の各項目を比較すると、図10?図12の通りとなる(注:社名後の数字はPIWによる総合ランキング順位)。中国、インド、マレーシアの国有石油企業は、いずれも国内の石油ガス産業・市場で独占的な事業基盤を持つために、企業の国際比較上ではもともと有利な立場にある。PIWの総合ランキング順位で、アジアの国有石油企業はスーパーメジャーのエクソンモービル、BP等(いずれもトップテン以内)には及ばないが、いずれも10?32位であって、ENI等準メジャー級の企業とは同程度の位置にある。利益額ではスーパーメジャー首位のエクソンモービルに遠く及ばないものの、中国・マレーシア企業は、埋蔵量、生産量において上位企業と同程度の位置にある。ONGCも、ENIと比較してさほど遜色ない位置にある。なお、最も成功したアジアの国営石油企業の一つと見なされるペトロナスは、早い時期から様々な分野での海外進出を図っており、上流事業では現在2005.11. Vol.39 No.638?Aジアの虎、東の竜を猛追 ?インド石油ガス企業の海外事業戦略:成果はいま一歩?百万US$25,000 20,000 15,000 10,000 5,000 0 xxE)2(il boMno)5( PB)71(NI E)01( anihCorteP)82( ceponSi)23(C GNO)12( sanorteP図10メジャーおよびアジアNOCの純利益額比較(2003年)百万boe 25,000 20,000 15,000 10,000 5,000 0 xxE)2(il boMno)5( PB)71(NI E)01( anihCorteP)82( ceponSi)23(C GNO)12( sanorteP図11メジャーおよびアジアNOCの石油ガス埋蔵量比較(2003年)千boe/d4,500 4,000 3,500 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 xxE)2(il boMno)5( PB)71(NI E)01( anihCorteP)82( ceponSi)23(C GNO)12( sanorteP図12メジャーおよびアジアNOCの石油ガス生産量比較(2003年)出所:PIW 2004年12月13日39石油・天然ガスレビュー25カ国で事業展開している。上流事業対象国のほとんどがアジアとアフリカの産油国であって、中東はイランおよびイエメンの2カ国、旧ソ連はトルクメニスタン1カ国のみである。何らかの判断基準に基づいて対象地域を絞り込んできたものと考えられる。海外に保有する生産資産も多い。インドとマレーシアは、国の規模およびエネルギー需要量では大きく異なるが、同様に民主主義政体を採っており、開発独裁体制から経済開発に成功したマレーシア国有石油企業の経営方針は、インドの国有石油企業に対する一つの参考になりうるものと考えられる。IOC(Indian Oil Corporation、蘯国有企業)IOCはインド最大の石油下流企業であって、42%の石油精製能力シェアおよび約56%の市場販売シェアを持つ。IOCの収益形態は、精製部門、パイプライン部門、販売部門の3部門から成る。精製部門は販売価格を国際市場価格としているため、利益幅が年々向上しており、またパイプライン部門は安定したタリフ収入があるため(鉄道輸送に比べて安価で信頼性が高い)、この両部門の採算は安定している。販売部門は製品の市場価格化(2002年?、灯油・LPGを除く)により、2003年までは収益が安定していたが、政府指導で2004年以降の原油価格高騰を売価に転化できないために、最近の収益は悪化している。過去2年半で原油価格は2倍になったが、同時期のガソリンの値上げ幅は30%、軽油は20%の上昇にとどまっている(注:IOCは2005年以降、赤字になっているものとみられる)。一方、IOCの上流事業は、1998年にONGCと国内鉱区で共同事業を実施したことを契機に始まった。海外における上流事業は、2002年にやはりONGCとともにイラン・ファルシー鉱区の探鉱事業に参加したことを契機に開始さ\3IOC等企業の海外進出状況企業IOC(国有)(Indian Oil)イランリビアGAIL(国有)ミャンマー国名鉱区Farsi offshore第86鉱区第102鉱区Block A-1取得時期2002年12月2005年1月2005年10月2002年1月権益シェア40%10%オペレーターONGC VideshOILとの共同操業OILとの共同操業大宇(韓国)Block A-32005年9月20%大宇(韓国)中国China Gasに10%出資2005年2月同権益40%60%60%パートナーOILOILOILKogasONGC VideshKogasONGC VideshChina Gas同権益20%10%20%10%20%シリア2005年3月Reliance Industries(民間)イエメンBlock 9(Malik)2005年1月21.25%Calvalley Petroleum42.5%The National GasCompany of SyriaHood Oil LtdThe Yemen Company21.25%15%オマーンナイジェリア第18鉱区Block 471Videocon Industries(民間)出所:各種データ・報道からJOGMEC作成2005年3月2005年9月100%リライアンスVideoconアナリシス備考探鉱(サービス契約)第1次公開入札で落札第2次公開入札で落札ガス発見:インドへ輸出を計画権益・パートナーはA-1と同じChina Gas(香港で上場)に10%出資、50/50のJVを設立して中国でPL・都市ガス配管建設、マーケティング等を行なうガス供給事業れた。2004年以降、石油上流企業2番手のOIL(Oil India limited)と組んで、積極的に独自の進出を模索している。2005年1月には、再開されたリビアの第一次公開入札において、OILとともにSirteエリア86鉱区を落札し、さらに10月の第二次公開入札においても102鉱区を落札した。IOCとOILは海外におけるE&P活動にかかわる10年間の契約を締結し、同等の立場の共同事業として事業を実施する計画である。IOCの海外事業3件の詳細は表3のとおりである。またインドは、2005年6月にイランからLNG 500万トンを25年間購入する売買契約を締結した(2009年に輸入開始予定)。このLNG輸入に関連してIOCは、イランPetroParsとともにSouth Parsガス田開発、LNG生産基地建設、マーケティングに至るLNG事業を共同で実施することを協議中である。イランでの事業は、地政学上、非常に難しい問題を抱えているが、実現すればIOCにとって画期的な事業となる。他には、GSPCL(グジャラート州石油公社)とベンガル湾ガス田開発のMOUを締結し、ガス販売事業への進出も意図している。総じて、下流最大手のIOCは上流企業ONGCと並ぶ国有石油企業の雄であり、ガス事業を含む上・中流事業への進出によって、一貫操業体制企業を志向している。しかし、上流事業の経験と技術力がないために、上流事業はOILまたはONGCとの共同事業の形を取らざるを得ない。2005年初にうわさされたように、垂直統合された一貫操業企業の中核会社となれば独自に上流事業を展開するシナリオも考えられたが、石油企業統合が見送られた以上、IOCの上流事業は海外案件も含めて限定的な範囲にとどまるものと考えられる。盻 GAIL(Gas Authority of IndiaLimited、国有企業)GAILは1984年に設立された国有のガス企業であり、幹線ガスパイプラインの建設、ガスの輸送・販売、都市ガス事業、化学、LNG事業(ONGC、IOC等とともに設立したLNG事業体Petronetの共同事業者として)等、ガスに関連する事業を幅広く行っている。上流事業では、いくつかの国内鉱区にノン・オペレーターとして参加している。また海外の上流事業では、ONGCとともに韓国の大宇が操業するミャンマーのA-1/A-3鉱区(Shweガス田発見)に参加している(海外事業は既述の表3参照)。またガス事業者であるGAILは、2005年初に中国およびシリアのガス事業者に出資して、当該国でのガス事業に参加しているが、中国での事業が特にユニークである。GAILは2005年2月に、都市ガス事業者としてChina GasHoldings(香港で上場)に10%出資し、共同事業会社を設立して中国におけるガスパイプライン・都市ガス配管建設、マーケティング等を行う予定である。中でも、2008年のオリンピックを控えた北京での事業が一歩先行しており、大気汚染対策を目的にして、CNG車導入を推進している(デリー等インド主要都市で既に実施済)。その他の都市でも順次共同事業を行う計画である。2005.11. Vol.39 No.640?Aジアの虎、東の竜を猛追 ?インド石油ガス企業の海外事業戦略:成果はいま一歩?中国では、エネルギー消費の中で天然ガスが占める割合は現在3%であるが、2010年にはガスの比率を8%にまで上昇させる計画と言われる。中でも、自動車用天然ガスの普及は、エネルギー消費構造を改善するための重要措置と見なされており、国家エネルギー中・長期計画と省エネ重点プロジェクトにおいて、自動車用燃料の切り替えは大々的に推進すべき重点業務とされている。GAILは、その他の海外事業として、エジプトのLNG事業一部権益の取得、豪州、インドネシア等LNG事業のエクイティ取得の検討、バルカン・ガスパイプラインNABUCCO事業への参加検討など、幅広くガス事業の展開を図っている。眈 リライアンス(Reliance Industries、民間企業)リライアンス社は、第二次大戦後に急速に業容を拡大した新興財閥であるが、売上高では既に名門タタ・グループをも凌ぐインド最大の企業グループとなり、傘下に様々な産業の企業を抱えている。石油上流事業では、7?8年前にベンガル湾の国内鉱区で上流に参入した。当初は他社に技術および人材支援を求めたといわれるが、以降、独自で技術力を磨いて事業を拡大した。現在はインド東岸のベンガル湾沖合、西岸のアラビア海沖合を中心に32鉱区を保有しており、深海開発を含めて十分な技術力を持つものとみられる。リライアンスの大きな成果は、2002年にベンガル湾深海で発見したDhirubhaiガス田であり、インドにまだ探鉱ポテンシャルが多く残ることを再認識させ、国内の探鉱活動を活発化させるきっかけになった。リライアンスは、国内鉱区ではすべてオペレーターシップを取る方針である一方、海外事業ではオペレーターシップにこだわっていない。Dhirubhaiガス田開発計画は、2005年4月に政府の承認を得て、2008年半ばに第1フェーズの生産を開始する予定である。生産ガスは、2003年に実施された入札で落札したNTPC(国有発電公社)の西部地域にある発電所に供給される。インド東岸のガス田から西部のガス消費地へのガス・パイプラインは、リライアンス自身が建設する計画である。なお、この大規模ガス田開発事業に、メジャー(エクソンモービル、シェブロン、シェル等)が参加を求めていると言われるが、まだ結論が出ていない。海外の上流事業では、オマーン第18鉱区でオペレーター事業を行い、イエメン第9鉱区(Malik)にノン・オペレーターとして参加している(権益取得はいずれも2005年)。数年前にグジャラート州Jamnagarにインドで最大規模となる精製能力54万バレル/日の製油所を建設して石油下流事業に進出し、マーケティングも充実させている。総じて、リライアンスの石油事業活動は、経験期間は短いものの、勢いと活力がある。新興財閥らしい思い切りの良さが身上で、政府の意向に縛られた国有企業には発揮し難いビジネス・センスと効率経営に強い自負がある。自らの生産ガス輸送の幹線パイプライン建設を、慣習通りに国有のGAILに頼ることなく自ら建設するなど、発想が大胆である。リライアンスの石油事業の規模は国有大手のONGC、IOCに劣るものの、企業形態としては上・下流一貫操業に海外事業も加わった垂直統合型を志向している。2005年9月に石油天然ガス省内の機構DGH(Directorate General of Hydrocarbons)が発表した2004?05年度(2004年4月?2005年3月)の上流事業のパフォーマンスは、トップが英国Cairn Energy、第2位がリライアンスであって、試掘成功率は37?47%であったという。国有ガリバー企業のONGCはその後塵を拝している。この数年間の事業パフォーマンスを見ると、画期的な成果は外資または民間企業によって達成されており、国有企業の旗色は悪い。インド国内の石油上流事業が自由化され、今後は外資・民間企業が徐々に地歩を固めていくものと考えられる。しかし、進出している外資および民間企業は国有企業ONGCに比べて規模で大きく劣るため、上流産業全体に占める貢献は限定的な程度にとどまるものと考えられる。眇その他の石油企業の動向HPCL(Hindustan Petroleum、販売シェア20%)、BPCL(Bharat Petroleum、販売シェア22%)といったIOCに続く国有下流企業も、上流および海外事業に興味を示している。両社とも、国内ではいくつかの鉱区にノン・オペレーターとして参加しているが、まだ海外事業への参加はない。しかし、BPCLがシンガポール・ペトロリアム(SPC)への資本参加を検討しており、同社と原油・石油製品の取引を行う協定を結んだといわれる。一方、HPCLはLNG輸入事業に対する興味を表明している。同社は、シェルが操業するグジャラート州HaziraLNG基地権益の26%購入を交渉中であり、またグジャラート州Mundraに自社のLNG受入基地建設を計画している。また先にGAILが豪州・インドネシアのLNG事業の権益一部取得を検討中と述べたが、NTPC(国有発電公社)、ONGCもLNG事業の権益取得を検討している。上流企業のみならず、ガス・ユーザー企業がLNG中流進出志向を強めているのは、世界的な傾向でもある。41石油・天然ガスレビューAナリシス3.国際的なエネルギー協力関係構築の可能性盧総論エネルギー消費大国であって、今後のエネルギー供給の多くを海外に依存せざるを得ないインドは、エネルギー供給国との友好関係を維持することが必須である。インドはその原油輸入量の85%を中東およびアフリカに依存している。また、イラン、ミャンマー、トルクメニスタン等からパイプライン・ガスを輸入する計画を進めている。エネルギー資源を確保するために、政府が精力的な資源外交を展開することが、最近の中国およびインドの外交姿勢の特徴である。インドの資源外交の類型として、次の3種類が考えられる。①対産油国外交②対近隣諸国外交③同じ立場の消費国との協調体制構築(主に中国に対して)次項で、上記それぞれの類型の現状と見通しを考える。ーシャルの観点から、または経済的(および政治的)損得から行われており、友好関係の有無が一義的な影響を及ぼすものではない。事実、サハリン蠢に続くインドと旧ソ連圏との資産取引は生じていない(2006年に予定されるサハリン蠱入札が次の機会と見られる)。PetroKazakhstan買収に当たって、(同社はカナダ企業であるが)カザフスタン政府はインドより経済的重要性の高い中国との取引を支持した。石油資源に富むサウジアラビアは、自国の石油資源を対外開放する予定が無く、インドもサウジアラビアへの進出機会が乏しいことを認識している。ベネズエラ・チャベス大統領は中国・インドへの好意的な発言を繰り返し、また相手国への訪問を行っているが、これは同大統領の反米姿勢を表しているに過ぎないとみるべきであろう。総じて国家間の友好関係は、あるに越したことはないのだが、資源取引はコマーシャルベースの価値基準によって判断されることを強調しておきたい。インドおよびパキスタンのガス需要の高まりから、広域ガス・パイプライン網建設は理想であるとともに、現実的な要請でもある。しかし、同じ価値観を共有する欧州各国と異なり、現在の南アジア?西アジア?中央アジア一帯は、多様な宗教的価値観・政治体制、隣国同志の相克に国際政治の思惑が絡んで、混沌とした状態にある。経済合理性の観点から、速やかに関係各国の合意をまとめ上げて、広域パイプラインの早期実現を図るのは難しい状況にある。米国が強く反対するイランからのパイプライン・ガス輸入計画に対して、インド、中国双方から、中国までパイプラインを延長して中国を本事業に参加させるとの提案が聞かれる。しかし、地勢的なパイプライン建設の難しさ、中国のガス需要地域がインドから遥かに遠い東部沿岸であることを考えると、中国の事業参加提案は対米国向けの牽制発言であるものと考えられる。インドがエネルギーの安定供給を求めて対近隣諸国外交を続けるには、忍耐を要する。盪対産油国外交蘯対近隣諸国外交インドは、ロシアおよび旧ソ連の中央アジア油ガス生産国、サウジアラビアおよびベネズエラとの協調関係にしばしば言及している。インドにとって、中東は最大の原油輸入元であり(約65%)、旧ソ連は潜在的なエネルギー供給元である。イランおよびトルクメニスタンとは、パイプライン・ガス輸入を交渉している。1991年のソ連崩壊まで一貫して社会主義的な経済運営を維持したインドは、ソ連およびその後継国家ロシアと友好関係にある。2001年にインドONGC-Videshがロシア企業からサハリン蠢事業権益を取得した際には、ロシア政府の政治的な配慮があったものとみられる。しかし、通常、資産の取引はコマ2005年2月にデリーで開催されたガス消費国会議において、アイヤル石油天然ガス相は、「欧州では以前にソ連からのガス・パイプライン建設が実現しており、冷戦中も操業上の支障はなかった。アジアでも広域ガス・パイプラインが成立しない理由がない。早期実現を目指したい」と熱く語ったと伝えられる。確かに、かつてソ連・西シベリアのガス田から欧州へのパイプライン・ガス供給が欧州のガス事業の発展に果たした役割は大きく、またその経済効果は、ソ連に欧州への政治的強硬手段を思いとどめさせるだけの抑止効果があった。翻って現在の南アジアにおいては、同じ立場の消費国との協調体制構盻築(主に中国に対して)今後、最も海外からのエネルギー調達を必要とするのは、経済規模と将来の発展性から中国およびインドと考えることに異論はない。昨今、石油ガス資産の国際入札に中国およびインド企業がともに参加することが多く、その動向が注目を浴びている。大型案件に、中国およびインド企業が参加して激しい入札競争を繰り広げる結果、入札価格は跳ね上がる。例えば、8月のカナダ企業PetroKazakhstanの入札では、CNPCは市場価格を21%上回る価格を提示して買収を確実にした。世界の石油企業は、このような入札価格の競り上げを苦々しく見ているし、当の中国およびインド企業にして2005.11. Vol.39 No.642?Aジアの虎、東の竜を猛追 ?インド石油ガス企業の海外事業戦略:成果はいま一歩?も購入価格の高騰は本意ではない。2005年1月にデリーで開催された産油国・消費国対話以降、インド・アイヤル石油天然ガス相はしばしばインド・中国の協調関係を提案している。このエネルギーの二大消費国は、互いにエネルギー資産獲得を競うのではなく、協調して資産を共同入札することにより、不要な競合とコストアップを回避させよう、という趣旨である。インドは石油エネルギー省のTalmizAhmed氏を特使として、中国との交渉に当たらせている。Ahmed氏は、8月上旬に北京を訪れて両国間のエネルギー分野戦略的パートナーシップ構想を協議した。この構想がまとまれば、ONGC、OIL、IOC等のインド企業、およびCNPC、CNOOC等の中国企業が合意文書に調印するものと期待されている。8月のインド・中国の協議以降、中国側から正式なコメントはないが、温家宝首相など中国側指導者は総じて両国の協調関係に賛同する発言をしている。さて、この二大エネルギー消費国の協調体制は、外交的には大変立派な概念であるが、各企業が行う実取引に際して両者の利害関係をどの程度調整できるかを考えると、容易なことではない。両者ともエネルギー資源確保に奔走しているのであれば、互いに妥協できる局面は少ないものと考えられる。インドに十数年先んじて経済を発展軌道に乗せ、海外のエネルギー資源取得にも先行した中国は、インドに比して石油企業の規模・資金力ともに有利な立場にある。中国企業は自らの優位性を認識してインド企業を脅威とは捉えていない様子であり、実際に今までに両国企業が競合した入札案件では、中国企業がほとんどを落札している。世界中から企業を誘致して世界の工場と化した中国では、既にエネルギー供給を含むインフラ整備に破綻をきたしている。毎年のエネルギー需要期には、産業界に必要な電力を供給できないほどエネルギー需給が危機的な状態にあり、安定したエネルギー供給源の確保に躍起になっている。格調高い協調体制の提案に外交辞令的な返答を返しても、実際には自国のエネルギー源確保が第一であり、悠長なことは言ってられないというのが本音であろう。インド関係先のヒアリングでは、国有企業はインド・中国とのエネルギー協調体制に肯定的なコメントをして、入札競争の緩和を期待している。しかし専門家、民間企業からは、その効果を疑問視するコメントがほとんどであった。彼らは、「中国企業は、自らが必要と認める時には助け合うこともあるが、理由・具体的な目的のない協力など決して行わない」、「自分自身がエネルギー不足に汲々としている時に、双方のニーズが合う協力の機会などほとんどない」と認識している。インド・中国企業が良好な関係を維持していることを示す例として、スーダンのGNPOC事業(原油生産中)がしばしば引き合いに出される。このGNPOC事業は、インド・中国企業がともに参加する唯一の、注目度の高い上流事業である(ONGCとCNPCが共同操業体制下のパートナー)。しかし両社は、上流業界でごく常識的なコンソーシアム・パートナーという関係にあるだけであって、それ以上の特殊な関係でも何でもない。それをもって両国企業が友好関係にあると一般化することはできない。他の事例では、ONGC-Videshが2004年12月にファームインした象牙海岸CI-112探鉱鉱区に、Sinopecがノン・オペレーターとして参加しているのみである。総じて、外交上の友好関係の維持はけっこうなことであるが、実際のビジネスの場において「友好関係」のみから多くを期待することはできない。時には双方のニーズが合致して共同入札が可能な場合もあろうが、そういったケースは限定されている。インドと中国の場合、経済規模の大きさから、将来のエネルギー需要規模は世界でも突出している。さらに中国は、現段階で既にエネルギー供給が需要に追いつかずに需給が逼迫しているという特殊事情にあるため、まずは自国のエネルギー確保という判断が優先されるものと考えられる。4.関連する政府のエネルギー政策盧 エネルギー基本方針HydrocarbonVision 2025インド政府が2001年に定めたHydrocarbon Vision 2025がエネルギー政策の基本方針であり、具体的な政策はこの基本方針に沿って作成される。Hydrocarbon Vision 2025に定められた主要項目は、次の通りである。・集中的に国内探鉱を行い、石油天然ガスの国内生産量の増加に努める。また、エネルギー資源の長期的供給が可能な国において、インドの権益確保に努める。・原油・石油製品の十分な備蓄設備を建設し、輸送設備能力を確保する。・石油ガスの市場を自由化し、公的企業と民間企業間の競争を促進させる。・天然ガス供給プロジェクトを推進・環境への負荷が小さい燃料にかかする(LNG供給を含む)。わる基準を作成する。・石油製品の自給可能な石油精製設・適正なタリフと価格政策を維持す備能力を維持する。る。43石油・天然ガスレビューE炭化水素開発への投資を促進させるために必要な、長期的経済条件(fiscal policy)を制定する。・国有石油企業の再編成と段階的民営化を進める。また豊富な石炭資源を活用しつつ、輸入石油への依存度を下げ、ガスの利用率を高めるためにHydrocarbonVision 2025が目標とするエネルギー・ミックスの比率は図13の通りである。このHydrocarbon Vision 2025には理想とするエネルギー政策が高らかにうたわれているが、必ずしも実行を伴っているわけではない。国有企業民営化のように、政権与党の議会運営上の限界で実施が中断されている項目もある。石油、ガスの価格政策盪a.石油製品価格インドは2002年に石油製品の価格規制を廃止し、国際市場価格を適用することとした。ただし、一般家庭で厨房用に使われ、国民生活の必需品とされる灯油(主に都市圏以外で使用)およびLPG(都市圏で使用)価格は統制価格とされ、価格水準維持に多額の補助金が使われている。2005年時点の価格は、原油価格27ドル/バレルの水準で固定されている。その他の石油製品価格は、国際価格の変化を反映させて2週間ごとに改定される。しかし、ガソリンおよび軽油価格は政府の判断で石油販売会社の値上げ申請が許可されないことがある。政府によると、石油製品価格の値上げ保留は尊重ベース(honored)であって、外資・民間企業は自由に値上げしており、国有企業は最大株主としての政府の意向を尊重して値上げ申請保留を遵守しているという。しかし、国有企業の占めるシェアが大きい石油市場においては、石油製品は実質的に統制価格になっている。アナリシスその他 ガス 石油 石炭 15% 32% 20% 25% 50% 50% 8% 35% 54% 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 2001-02出所:GAIL(India)HP2006-072024-25図13インドのエネルギー・ミックス(Hydrocarbon Vision 2025)の常識的な範囲内で推移する限りは、製品価格変更申請も認められて、2003年まではうまく機能した。しかし2004年以降、従来の想定範囲を超えた原油価格高騰の前に、石油製品価格政策は機能せず、崩壊同然となった。製品価格の大幅な値上げを恐れて政府が値上げ申請をタイムリーに許可しないために、原油コストと製品売価の逆ザヤは石油製品販売会社の収益構造を直撃し、IOC他石油下流企業の2005年4月以降の損益は赤字転落の危機にさらされている。こうした国有石油下流企業の赤字は、ONGC、GAILといった国有上・中流企業の利益をcross-subsidyとして企業間で補填することによって埋め合わされている。インドでは本来、石油ガス産業は何段階にもわたって課税されており、政府収入中で石油ガス関連収入が25?30%もの比率を占めている。政府としても、この石油関連収入を敢えて削減することは忍びないが、このままだと石油製品への補助金が増加する一方なので、石油関連税率を下げるなど、税制改正を考慮せざるを得ない状況にある。国内価格は2002年3月以降不変だが、その間2005年6月までに、国際灯油価格は米ドルベースで184%になった。一方、ジェット燃料(ATF, Aviation TurbineFuel)はぜいたく品として国際水準と比べて高く設定されており、石油製品販売企業はこの部門でも収益補填を図ろうとしている。最近、民間企業のリライアンス、外資系企業が、ジェット燃料販売市場に参入すべく申請を出している。中国、南アジアおよび東南アジアの多くの発展途上国では、低所得層への配慮および自国産業の競争力維持を目的に、伝統的に石油製品への補助金政策を採ってきた。しかし、昨今の原油価格高騰から、補助金投入額が増大して財政赤字拡大を招き、補助金制度の段階的な撤廃を模索している。また、補助金政策がエネルギー資源浪費につながっていることに対する国際世論の批判もある。しかし、補助金撤廃はインフレなど経済活動への影響の他に、政治・社会問題化して政権崩壊につながる恐れもあるために、各国政府は難しい決断を迫られている。上記の価格政策は、原油価格が従来統制価格の灯油を例に取り上げると、2005.11. Vol.39 No.644?Aジアの虎、東の竜を猛追 ?インド石油ガス企業の海外事業戦略:成果はいま一歩?b.ガス価格:当面は二重価格制度が存続ガスの国内生産価格は、それぞれの油ガス田のライセンスによって、適用価格が異なる二重価格制を採っている。つまり、国有石油上流企業(ONGCおよびOIL)が石油上流産業の自由化以前に国から安価でライセンスを譲り受けた既存油ガス田の生産ガスは、公平性の立場から、肥料、電力需要家向けに安価に設定されている。現時点の国内ガス供給量は、ムンバイ・ハイ油田など旧ライセンスに基づく油ガス田が生産する比率が高いために、安価なガスの供給量が多い。また農業推進の政策上、肥料用売価を特に安く設定しているなど、需要家によって売価は異なるが、ガス卸価格はおおむねUS$1.1?2.0/MMBtu程度である。一方、1990年代後半に石油上流事業開放策によりNELPが導入された後の新規ライセンスによるガス田の生産物は、国有、民間および外資系企業を問わず、市場価格で販売されている。新規ライセンスによる事業形態は、Cairn Energy、BG(いずれも英国)などの外資系企業、Essar、リライアンスなどのインドの民間企業、および外資・民間・国有企業のコンソーシアム等、様々である。新規ライセンス油ガス田のガス販売価格は$3.6/MMBtu程度であって、主に産業需要家向けに販売されている。上記の国有企業が保有する旧ライセンスに基づく油ガス田の生産が終了した後には、すべてのガスは市場価格で売買され、二重価格制は解消されることになる。しかしながら、旧ライセンス油ガス田が生産を終了するのはかなり先の話であり、当面は現在の二重価格制度が維持される。最近では、順調な経済成長に伴って電力需要の伸びが大きいため、既に旧ライセンスから生産するガスのみでは旺盛な電力向け需要に応じることができずに、発電業界は不足分を新規ライセンスによる油ガス田から市場価格で購入している。蘯発電用燃料を選択する優先順位政府(石油天然ガス省)は、発電用燃料選択の優先順位を国内炭、原子力、ガスの順に置いている。石炭産出国であるインドは、伝統的に国内のエネルギー消費の中で石炭の占める比率が高く、特に発電用燃料は石炭への依存率が高い。また既存の発電設備のうち75%は石炭火力である。しかし、将来は需要地(発電所の立地)によって、燃料の選択が異なってくるものと考えられる。インドの主要な石炭産地は、東部のオリッサ州およびビハール州である。一方、インドの石炭は灰分の多い褐炭が多く、燃料炭としての品質は悪い。しかし、産炭地である東部地域の発電所では、品質が悪くとも価格の安い国内炭が燃料として使われており、今後も国内炭が選択されるものと考えられる。一方、現在の主要なエネルギー消費地である西部、および南部では、天然ガスまたは輸入炭が選択される。東部の産炭地から西部への石炭輸送には鉄道が使われるが、輸送能力が不十分で輸送費も高いために、国内炭を西部の内陸発電所に輸送した場合、パイプライン網が完備されている天然ガスに比べて国内炭の価格優位性は無いとされる。また、国内炭は納期通りに納入されることがほとんどないなど、輸送の信頼性も低い。石炭生産地に遠い南部、西部の新規建設発電所はガス火力が主体になるものと考えられる。なお、既存発電所の燃料転換は、価格が高いナフサから安いガスへの転換がほとんどである。なお、石炭産地である東部地域は鉄鉱石の産地としても有名だが、産業の発達は遅れ、インドで最も貧しい地域の一つである。ちなみに、最近、このオリッサ州および隣接するジャルカンド州など開発の遅れた東部地域に、内外の鉄鋼メーカーによる製鉄所建設計画が相次いでいる。鉄鉱石および石炭の産地である東部地域は、製鉄所の立地には優位性があるからである。韓国ポスコ、インド系で世界最大手のミタル・スチールなどが進出計画を表明しており、これらの計画が完成する2012年頃には、鉄鋼生産能力は現在の3倍近くに達する計画という。インドでは、経済発展とともにインフラ整備および自動車など製造業向けに鉄鋼需要が増加しており、これに注目した有力鉄鋼メーカーが石炭および鉄鉱石の産出地域である東部への製鉄所建設を計画しているものである。5.各エネルギー事業分野の取り組みここでは、インドのエネルギー分野の中で注目を浴びるガス事業に関連して、国内幹線パイプライン建設、ガス輸入事業計画の現況を概説する。盧幹線ガス・パイプライン建設計画インドの既存の幹線ガス・パイプラインは、西岸ムンバイ沖合(ムンバイ・ハイ油ガス田等)およびカンベイ湾のガス田と、北西部のエネルギー主要需要地域(グジャラート州、ラジャスタン州、デリー首都圏)を接続するHBJ(Hazira?Bijaipur?Jagdishpur)パイプラインである。このHBJパイプラインを、東部(西ベンガル州コルカタ、リライアンス・ガス田付近のアンドラ・プラデシュ州Rajahmundry)および南部(ケララ州Kochi)に接続する幹線パイプライン建設が計画されており、45石油・天然ガスレビュー005.11. Vol.39 No.6462007?08年頃の完成が見込まれている。ガス・パイプライン建設事業は、従来、国有のGAILが担当する業務であったが、数年前に政府が幹線パイプライン建設にかかわる規制を緩めてから、他企業も許可を得て建設することが可能となった。リライアンスは、ベンガル湾で発見したDhirubhai生産ガスを契約先のNTPCの火力発電所に輸送するために、東岸Rajahmundryからムンバイ付近で既存HBJパイプラインに至る東西横断幹線パイプラインを自ら建設する予定である。現在、政府に建設許可を申請中であり、建設作業開始後2年間程度での完成が見込まれている。その他の東西、南北を結ぶ幹線は、GAILがパイプライン建設計画に沿って建設する予定となっている。盪LNG輸入LNG輸入事業は、既存のDahej基地(事業者:Petronet)、Hazira基地(シェル/トタル)の他に、長らく中断していたDabhol基地計画の再開が2005年7月に発表された。また、2005年6月にイランとのLNG売買契約が締結された。詳細は表4のとおりである。TURKMENISTANアナリシスIRANPAKISTANDelhiKanpurJagdishpurBANGLADESHBijaipurMYANMARKolkataDahej (Petronet)Hazira (Shell)Mumbai HighMumbaiDabholHyderabadShweRajahmundryKG-8 (GSPCL)Dhirubhai (Reliance)(Krishna-Godavari Basin)MangaloreChennaiBangaloreKasargodKochi (Petronet)Gas PipelineGas Pipeline (Planned)LNG Terminal出所:各種データ・報道からJOGMEC作成図14ガス関係インフラ(主要ガス田、パイプライン、LNG受入基地)事業者受入基地同左所在地操業開始設備能力供給ソース供給候補主要需要家表4インドのLNG受入基地事業概要カタールRasGasイランカタールRasGasShellの各事業豪州Gorgon他エジプト・ダミエッタイランShellの各事業グジャラートおよび周辺州の各需要家Essar電力/鉄鋼Dabhol火力発電所(万トン/年)500500-750250-500250250-7505002502502502004/1月2008?2008?2005/4月2006/3Q???PetronetShellRatnagiriONGCIOCHindustanDahejDahej増強KochiHaziraHazira増強DabholMangaloreEnnoreMundraグジャラート州グジャラート州ケララ州グジャラート州グジャラート州マハラシュトラ州カルナータカ州タミール・ナドゥ州グジャラート州(注)事業者PetronetShell(Hazira基地)Ratnagiri Gas and Power出所:各種データ・報道からJOGMEC作成IOC 12.5%、ONGC 12.5%、Bahrat Oil 12.5%、GAIL 12.5%、Gas de France 10%、ADB 5.2%、機関投資家34.8%Shell 74%、Total 26%GAIL 28.33%、NTPC(火力発電公社)28.33%、機関投資家28.33%、マハラシュトラ州電力庁15%?Aジアの虎、東の竜を猛追 ?インド石油ガス企業の海外事業戦略:成果はいま一歩?a.Dahej基地事業(Petronet、2004年1月操業開始)Dahej基地は、現在の設備能力が500万トン/年であるが、2008年頃1,000万?1,250万トン/年への設備拡張が計画されている。また、現在はカタールRasGasとの長期契約に基づいてLNGを購入しているが、将来の購入先として、豪州Gorgon/Bayu Undan、エジプト・ダミエッタLNGとの交渉が行われている。b.Hazira基地事業(シェル/トタル、2005年4月操業開始)Hazira基地は、シェルが権益を保有する豪州NWS、中東等の事業からスポット・ベースでLNGカーゴを購入している。なお、HPCL(HindustanPetroleum)がシェルからHazira基地権益の26%購入を検討・交渉中といわれる。c.Dabhol基地事業(Ratnagiri Gasand Power)旧エンロンのダボール事業は、GAILとNPTC(火力発電公社)が引き継ぎ、Ratnagiri Gas and Powerと改名され、マハラシュトラ州電力庁も出資する予定である。2,184 MWの発電所(2006年後半に操業開始予定)と500万トン/年のLNG受入基地を運営する予定である。d.その他の新規LNG受入基地計画ONGCのMangalore基地、IOCのEnnore基地が計画されている(いずれも南部)。さらに2005年9月に、HPCLによるグジャラート州Mundhra基地計画(500万トン/年)が発表された。e.イランからのLNG輸入インドおよびイランは、2005年6月にLNG 売買契約を締結した(2009年から年間500万トンを25年間、向け先はPetronetのDahejおよびKochi基地)。ブレント原油リンクの販売価格フォーミュラを採用し、ブレント原油31ドル/バレルで持ち届価格$3.515/MMBtu(=FOB$3.215/MMBtu+輸送コスト$0.3/MMBtu)となる。なお、この500万トンとは別枠の年間250万トン(2005年1月に合意)については、まだ価格等の条件が合意されていない。パイプライン・ガス輸入計画蘯a.ミャンマー(Shweガス田)ミャンマーShweガス田(可採埋蔵量4?6tcf)は、2004年1月に韓国・大宇によって発見された。インド企業のONGCおよびGAILも本事業に参加している。2005年1月、さらにShwe Phyuガス田(可採埋蔵量4?6 tcf)が発見され、なお探鉱作業が継続されている。全体の埋蔵量は、最終的に14?20tcfに達するものと期待されている。2005年1月に、Shwe生産ガスをバングラデシュ経由の陸上パイプラインでインドに輸出することが、関係国間(ミャンマー、バングラデシュ、インド)でいったん合意された。しかしその後、バングラデシュから提示された様々な要求(インドを経由してのネパールからの電力供給、インドとの貿易赤字の縮小、タリフ額、最近のバングラ国内テロに対するインド関係者の関与疑惑など)に対してインドが一部対処できなかったため、しばらく交渉が進展しなかった。バングラデシュ陸上パイプライン・ルート以外で検討されたガス田開発方法は次の通りである:・インド北東部(アッサム州等)経由の迂回ルート;地勢が急峻でコストがかかる・CNG事業化・ミャンマー国内で発電し、電力を輸出バングラデシュはこれらの開発方法に反対であり、またいずれの開発案も実現性の決め手に欠けるため、関係国はバングラデシュ陸上パイプライン・ルートを念頭に、再度交渉の場に着くことで合意している。b.イラン(サウスパルス・ガス田)イランのサウスパルス・ガス田から、隣国パキスタンとともに合計で100MMcmd(=3,530MMcfd)の天然ガスを輸送する大規模な事業計画である。しかし、当事国のインド・パキスタン間に歴史的な根深い対立があり、また米国がイランからの天然ガス輸入に強く反対しているなど、難しい問題を抱えている。関係国(インド、イラン、パキスタン)は2カ国ごとの合同作業部会を設けて定期協議しており、2005年末までにパイプライン建設の可否を決めることになっている。もし事業実施が合意されれば、3カ国は2007年までにパイプライン建設を開始し、2010年頃に操業を開始する予定である。合同作業部会の事務協議では、ガス価格および品質を除くほとんどの検討項目に関して既に合意済みであると言われる。また、昨今の鋼材など資材価格の上昇が建設コストを大幅に押し上げ、投資総額は当初の約40億ドル強を大幅に上回る70億ドル以上と見積もられている。c.トルクメニスタン(Daulatabadガス田)トルクメニスタンの大ガス田Daulatabadから、アフガニスタンを経由してパキスタン、インド向けにガスを輸入する計画である。パキスタンとトルクメニスタンが主体的に検討を行っており、インドもこれに参加する意向を示している。イラン/インド間ガス・パイプライン検討の合同作業部会において、このトルクメニスタン・ルートの検討も併せて行われている。47石油・天然ガスレビューオかし、国際テロ組織の影響力がなお強いとされるアフガニスタンを経由するトルクメニスタン・ルートは、ミャンマー、イランからのガス輸入事業に比べてリスクが高いため、検討の優先順位は相対的に低いものと考えられる。アナリシス著者紹介坂本 茂樹(さかもと しげき)長野県生まれ。東京大学文学部社会学科卒業。当時のテーマは低開発経済の開発論。日本石油(株)入社。1991年から日本石油開発(株)にて海外の石油上流資産管理。2004年10月から現職(JOGMEC石油天然ガス調査グループ 上席研究員)。エリア・スタディーに興味を持っている(主に旧大陸)。最近の余暇の過ごし方は、週末の競技ボートの練習と、中国語番組(ドラマとニュース)を見ること。2005.11. Vol.39 No.648
地域1 アジア
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国・地域 アジア,インド
2005/11/20 [ 2005年11月号 ] 坂本 茂樹
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