ページ番号1006192 更新日 平成30年2月16日

石油天然ガスの起源 ~無機成因説は成り立つか~

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レポートID 1006192
作成日 2005-11-20 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 探鉱開発
著者
著者直接入力 加藤 進
年度 2005
Vol 39
No 6
ページ数
抽出データ 石油資源開発株式会社 技術研究所skato@japex.co.jp加藤 進アナリシス石油天然ガスの起源?無機成因説は成り立つか?1.はじめに石油の成因については、1830年代頃から議論が始まり、いろいろな考えが提出されていますが、それらは有機成因説と無機成因説の二つに大別されます。図1は「炭素サイクル(炭素循環)」と呼ばれ、炭素化合物の地球における循環の中での有機成因説と無機成因説の違いを示しています。地下の炭素化合物は、二酸化炭素(CO2)やメタン(CH4)などとして大気中に放出されます(CH4は途中で酸化されてほとんどがCO2に変化)。大気中のCO2の一部は植物の光合成により有機物となり、一部は水に溶け、やがて炭酸塩を形成して地下に戻ります。地球創成期の炭素化合物は、すべて初生的な非生物起源(abiogenic origin)の炭素でしたが、生命の誕生以降の長い地質時間の間に、地球表層の炭素のほとんどが生物に利用された生物起源(biogenicorigin)の炭素に変化したと考えられています。したがって、地球表層の石油を構成する炭化水素も生物起源の炭素からなるとするのが有機成因説です。一方、Gold(1988)は、地球の始原物質から放出される初生的なガス成分は主にCH4であり、その一部は酸化されずに高分子量の炭化水素を生成し、一部が集積して石油鉱床となっているとCO2大気 火山 燃焼 光合成 CH4CO2酸化   地殻 (堆積岩) 陸上生物 海洋生物 HCO3-海洋 Mg2+Ca2+海嶺 化石燃料 分散型炭化水素 ・非酸化炭素 無機成因の炭化水素 炭酸塩岩 酸化 マントル 出所:田口(1998)から作成CH4CO2図1炭素サイクルと石油の成因考えています。このように、生物を経由しない炭素化合物から石油鉱床が形成されるとするのが無機成因説です。Goldの説は国内でもマスコミ等で取り上げられ、話題となりました。また、スウェーデンの隕石孔シルヤン・リングでは、Gold説に基づいて1986年?1992年に2坑井が掘削されましたが、商業量の油・ガスは発見されませんでした。石油開発に携わっているほとんどの探鉱技術者は、非生物起源炭化水素の存在は認めていますが、その量は非常にわずかであり、油・ガス田の成立には貢献していないと考えています。中島(2005)が紹介した“無機起源説を支持する現象”には状況証拠に過ぎないものや説明が不十分と考えられるものがあります。本報告では、ベトナム沖や国内の基盤岩油・ガス田を中心に、そこに集積している炭化水素の地球化学的特徴を述べ、石油の起源と探鉱について考えてみたいと思います。2.非生物起源炭化水素これまでに確認されている非生物起源炭化水素と、その地球化学的特徴を最初に整理しておきたいと思います。石油(広義では原油・天然ガスなどを含む)は、炭素(C)と水素(H)の化合物である炭化水素から主に構成される混合物です。炭素は「生命の元素」とも呼ばれ、生命物質であるタンパク質、糖、脂肪などはすべて炭素化合物です。水素は最も基本的な元素であり、地殻中では酸素(O)、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)に次いで4番目に多い63石油・天然ガスレビューニされています。炭素には、質量12と13の安定同位体(それぞれ12C、13Cと表します)と質量14(14C)の放射性同位体が存在します。安定同位体の存在比(wt%比)は12C:13C=98.90:1.10です。炭素同位体比は13C/12Cで定義され、試料の炭素同位体組成は次式に示す標準物質(Peedee Belemnite:PDB)との比較によって表します。δ13C=[(13C/12C)試料/(13C/12C)標準?1]×1000単位は千分率(‰:パーミル)です。標準物質に比べ13Cが富む場合はプラス(+)、12Cが富む場合はマイナス(?)となります。また、通常は13Cが富むものを“重い”、12Cが富むものを“軽い”と表現します。地球上の生物は、12Cを13Cより速く取り込むので、生物起源の炭素化合物は、非生物起源の炭化水素より軽くなります。水素にも同様に2つの安定同位体(H、D)と一つの放射性同位体(T)が存在します。試料の水素同位体組成(δD)の標準物質は標準海水(SMOW:Standard MarineOceanic Water)です。地球以外の宇宙空間にも炭素化合物の存在が知られています。例えば、最近探査機カッシーニ・ホイヘンスが、土星の衛星タイタンの大気中にメタンやエタン(C2H6)を検出しています(佐々木,2005)。地球外物質と言えば、「月の石」や隕石がその代表です。現在28,000個を超える隕石が世界で確認されており、その半分以上が国立極地研究所に保管されています。それらの大部分は南極大陸から回収されたもので、南極隕石と呼ばれています(矢内,1991;1992)。隕石にはいろいろな種類がありますが、始原的(primitive)隕石と分化した(differentiated)隕石に大別されます。46億年前太陽系星雲のチリとガスの中で誕生した天体から由来したと考えられている始原的隕石の代表的なものアナリシス?30熱分解 ヘキサン メタン δ 13C?40スパーク実験 ?50(‰) 図2C3C4C2C1スパーク実験とヘキサンの熱分解実験によって生成された炭化水素の炭素数による炭素同位体組成の変化表1Murchison隕石中の炭化水素とその炭素同位体組成成分含有量(nmol/g)δ13C(‰)二酸化炭素(CO2)メタン(C1)エタン(C2)プロパン(C3)イソブタン(iC4)ノルマルブタン(nC4)ペンタン(C5)Yuen et al.(1984)から引用2.4×1038.98.58.94.35.512+29.1±0.2+9.2±1.0+3.7±0.1+1.2±0.1+4.4±0.1+2.4±0.1?7.9±0.05がコンドライトと炭素質隕石です(矢内,1994)。炭素質隕石は隕石の約2%を占める程度ですが、炭化水素などの有機物を含んでいます。1969年にオーストラリアで落下・採集されたマーチソン(Murchison)炭素質隕石では、二酸化炭素(CO2)、炭化水素の含有量とその炭素同位体組成が報告されています(表1;Yuen et al., 1984)。CO2に比べ炭化水素の含有量はわずかですが、メタン(以下炭素数で表現:C1)以下ペンタン(C5)までの飽和炭化水素であるアルカン(alkane)が検出されています。C1からC3まではほぼ同程度含まれています。CO2のδ13C(以下δ13CCO2)は+29.1‰と非常に重い値であり、C1からC3までのδ13C(以下δ13C1?δ13C3)は炭素数が増えるに従い軽くなる傾向がありますが、すべて+の値です。また、不飽和炭化水素であるエチレンやプロピレンなどのアルケン(alkene)も含まれています。C1大気下でのスパーク実験で重合されたC2、C3、C4のδ13Cは、ヘキサン(C6H14)の熱分解で生成されるC1?C4のδ13Cと全く逆のパターンを示すことが分かっています(図2;Des Maraiset al., 1981)。そうなる理由は、反応速度が、分解(ヘキサンの熱分解)においても重合(メタン大気中のスパーク実験)においても、軽い12Cの方が重い13Cよりも速いため、前者は熱分解が進むほど、そして後者は重合が進むほど、それぞれの生成物が軽くなるからです。隕石に認められるパターンはスパーク実験と同じ「重合」パターンを示し、炭素数が増加するとδ13Cは軽くなります。これに対し、石油炭化水素は、ヘキサンの熱分解と同様に、炭素数が多いほど重く、根源物質(ケロジェン)からの熱分解で生成したとする説に合致しています。非生物起源のメタンやエタン以上の炭化水素は、海嶺熱水ガスやオフィオライト(火成岩の一種)からの湧出ガス、火成岩の流体包有物から検出されています。特に、北緯21°の東太平洋海膨(East Pacific Rise:EPR)の熱水2005.11. Vol.39 No.664ホ油天然ガスの起源 ?無機成因説は成り立つか?表2非生物起源のメタンと随伴する二酸化炭素の炭素・水素同位体組成場所タイプ21°N EPRギリシャ(ミロス)フィリピンコラ半島コラ半島スウェーデンカナダ・スカンジナビア熱水地熱オフィオライトヒビンアルカリ岩体ヒビン・ロボゼロアルカリ岩体シルヤンドレライトシルヤン花崗岩楯状地各地Potter &Konnerup-Madsen(2003)を簡略化および修正火成岩δ13C1(‰)?15??7.6?9.4??17.8?6.1??7.5?3.2??12.8?12.8??28.6δDC1?C4(‰)?102??126?104??377?118??137δ13CCO2(‰)?7.0?0.6??1.1?7.1?15.9??26.3?19.4??38.0?22.4??44.9?33.0??40.7?26??28.6?133??372?390??419表3Kidd Creek鉱山から産出するガスの組成と炭化水素の炭素・水素同位体組成?10?20δ 13C1?30?40(‰) ?50ドレライト サイドトラック(ST) ドレライト 花崗岩類 ST泥水中に潤滑油 Gravberg-1におけるヘッドスペースガス分析結果0123深 度 456(袰) 7図3同位体組成 (‰)水素炭素?32.7??36.8?36.4??39.9?34.9??38.9?35.4??41.5?406??419?314??321?262??270?234??256ガス成分メタンエタンプロパンブタン水素窒素ヘリウム二酸化炭素ND:検出限界以下Lollar et al.(2002)から作成(CH4)(C2H6)(C3H8)(C4H10)(H2)(N2)(He)(CO2)(%)69.3?78.15.55?11.70.71?2.420.21?0.770.40?12.73.88?12.71.83?2.45NDに含まれている炭化水素は非生物起源としてよく引用されます(表2)。火成岩や変成岩中に含まれる非生物起源の炭化水素の詳細についてはPotterand Konnerup-Madsen(2003)がまとめています。この中で、シルヤン・リングで掘削された坑井Gravberg-1のヘッドスペースガスのδ13C1を図3に示します。岩石は花崗岩類とそこに貫入したドレライト(火成岩の一種)からなっています。炭化水素量は非常に少なく、その組成は花崗岩類とドレライト部分から得られたものでは明瞭に異なっています。前者はC1/C2比が低く(<10)、かなりの量の不飽和炭化水素を含んでいるのに対し、後者のC1/C2比は高く(>15)、不飽和炭化水素はほとんど含んでいません(Jeffrey and Kaplan,1988)。ドレライトに含まれるガスは、δ13Cが?26.3‰より重く、非生物起源と考えられていますが、花崗岩類のガスの一部は掘削泥水に含まれている潤滑油などの混入で軽くなっているとみられています。この坑井の6袰より深い部分におけるヘリウムの同位体比(3He/4He)はマントル起源ではなく、地殻起源であり、深部からのガスの侵入を示す証拠は見つかっていません。65石油・天然ガスレビュー図4Kidd Creek鉱山から産出するガスとオンタリオ州南西部のカンブリア紀ガス層ガスの炭化水素における炭素数による炭素同位体組成の変化カナダ楯状地のKidd Creek鉱山(世界最大級の火山性塊状硫化物鉱床の一つ)では、深度2,000m付近の密閉されたフラクチャー系の部分から、塩分の高い地下水に伴って、1坑井当たり最高で約40裙/Dのガスが産出しています(Lollar et al., 2002)。このガスの組成と同位体組成を表3に示します。主にC1から成り、C2、水素(H2)や窒素(N2)を含み、少量のHeAナリシスを伴っています。δ13C1は?32.7‰以下であり、有機物の熱分解の範囲に入るものの、δ13C1>δ13C2、δ13C3、δ13C4と熱分解のトレンドとは明らかに異なること(図4)から、このガスは重合により形成された、非生物起源の炭化水素であると推定されています。以上述べた非生物起源の炭化水素の特徴は、次のようにまとめることができます。1)δ13C1が重い(>?25‰)2)炭素数の増加とともにδ13Cが軽くなる重合のパターンを示す(δ13C1>δ13C2>δ13C3)3)エチレンなどの不飽和炭化水素をかなり含む3He/4Heがマントル起源であっても(通常、大気の3He/4He(Ra)の8倍程度)、メタンもまたマントル起源であるという証拠にはならないことに注意する必要があります。の質や熟成度(熟成度が高いとδ13Cが大きい傾向が見られる)、微生物分解などの変質、起源の異なるガスの混合などにも影響を受けますので、地質情報などを考慮して総合的に解釈する必要があります。しかし、非生物起源炭化水素からなる可能性のあるガスは、これまでのところほとんど報告されていません。重合 分解 13C1生物起源ガスです。δ13C1>?25‰であるガスは41(2.4%)、δ13C1>?20‰のガスは5(0.3%)に過ぎません。この中には、カリフォルニア北部の窒素(N2)に富むガスがかなりの割合を占めています。2)δ13C1>δ13C2(重合パターン)δ13C1とδ13C2の両方が測定されているガス試料は803ありますが、δ13C1>δ13C2であるガスは29(3.6%)に過ぎません(図6)。 δ13C2?20C1などのδ13Cはガスの起源だけでなく、ガスを生成した根源岩3.油・ガス田における非生物起源炭化水素既存の油・ガス田には、どの程度非生物起源炭化水素が存在しているのでしょうか。上述した非生物起源炭化水素の地化学的な特徴を用いて、その割合をみてみます。1)δ13C1>?25‰(軽い)日本、カナダ、アメリカ合衆国、ヨーロッパ、ロシアなどで生産している油・ガス田から採取した1,699のガス試料のδ13C1ヒストグラムを図5に示します(Jenden et al., 1993)。顕著なモードは?42.5‰にあり、δ13C1<?60‰は微1501005001699試料 ?42.5熱分解起源 微生物起源 非生物起源 >?25?80?60?40 13C1δ?20(‰) 0?40?60(‰) ?80?60?40 13C1δ?20(‰) 50403020100803試料 重合 分解 3.6%?100δ 13C210? δ20 13C130(‰) 図5油・ガス田におけるメタンの炭素同位体組成図6油・ガス田におけるメタンとエタンの炭素同位体組成の比較2005.11. Vol.39 No.666ホ油天然ガスの起源 ?無機成因説は成り立つか?4.基盤岩油・ガス田4?1.ベトナム沖クーロン堆積盆地ベトナム南東海域に位置するクーロン堆積盆地は、始新世?漸新世前期に北西?南東方向の伸張によるリフティングで形成された堆積盆地です。ここには、バクホー(Bach Ho)油田を始め、ランドン(Rang Dong)油田、ルビ(Ruby)油田などの基盤岩油田が成立しています。堆積盆地を充填する堆積物は、広域的な不整合により六つのシーケンスに分けられています(図7)。坑井試料の根源岩分析により、上部D層の湖成泥岩は有機物に富み(全有機炭素量(TOC)は1?4 wt%)、主にタイプ蠢ケロジェンからなる良好な根源岩であることが確認されています(島田・青山,2005)。ランドン油田の基盤岩油層から生産されている原油(以下基盤岩原油)は、35?40°APIと比較的軽質であり、高ワックス、低硫黄などの特徴があります。上位の砂岩層から生産されている原油と性状が類似しており、同じ根源岩から生成されたと考えられています(島田・青山,2005;表4)。堆積環境が異なる(例えば、海成、陸成、湖成)根源岩から生成される原油の性状は、それぞれ特徴を有しています(表4)。ランドン油田の基盤岩原油は湖成根源岩の特徴と一致しており、根源岩分析結果と調和しています。またバイオマーカーであるステランのC27?C28?C29組成でも、上部D層の根源岩と基盤岩原油は類似しています(図8;島田・青山,2005)。原油の地化学性状や原油?根源岩対比に基づけば、基盤岩原油は有機物に富んだ湖成泥岩から生成されたものと考えられます。4?2.勇払油・ガス田北海道石狩低地帯から青森県下北半島尻屋崎沖合に広がる石狩?日高堆積層序 岩相 ABIIC28基盤岩原油 砂岩原油 根源岩 堆積環境 デルタ 貯留層 根源岩 浅海 湖 (河川?汽水) 湖 層厚 (m)600-7001000-2000100-10000-3500基盤岩 泥岩 砂岩泥岩互層 砂岩 礫岩 C27C29地質 年代 更新世 鮮新世 後 期 中 期 前 期 中 新 世 白亜紀 I上部 下部 DIECB    後 期 前 期 漸 新 世 図7ランドン油田における層序、堆積環境、および油層と根源岩の層準図8ランドン油田における原油と根源岩(ビチュメン)のステラン組成表4堆積環境の異なる根源岩から生成された原油の特徴とベトナム沖の原油ベトナム・クーロン堆積盆地油田ランドン基盤岩0.0422.52.030.09砂岩0.0719.32.060.04湖成バクホー0.250.172.230.05低高低1?3C27低根源岩陸成低高低>3C29高海成高(還元)低高(還元)<2C28低パラメータバルクバイオマーカー硫黄分(wt%)ワックス分(wt%)V/(V+Ni)Pr/PhC27?C29ステランオレアナン/C30ホパン文献:Peters et al.(2005) 島田・青山(2005)67石油・天然ガスレビューAナリシス構成されています。花崗岩類と礫岩がフラクチャー型貯留岩となっています(図10)。ガスはC1が主体であり、C2以上は約12%を占め、淡黄色?橙色、約42°APIのコンデンセートを伴っています(ガス油比は1,000裙/褌弱)。コンデンセートは、C25以上のノルマル(n)アルカンを多く含み、ワックスに富んでいます(武富・西田,2002)。ガスのδ13C1は?35.3‰であり、δ13C1<δ13C2(?25.6‰)<δ13C3(?23.5‰)であることから、ガスは熱分解起源です(早稲田ほか,2002)。コンデンセートは、δ13Cが約?26‰と軽いこと、ステランのC29/(C27+C29)比が高いこと、C25以上のn アルカンに加え被子植物に含まれるクチクラが起源の2?メチルアルカン類が豊富に含まれていること(図11)から、陸源有機物から生成されたと推定されます(武富・西田,2002)。石狩層群夾炭層の石炭や炭質泥岩のステラン組成はコンデンセートと必ずしも一致していませんが、これは熟成度の違いを反映している可能性があります(図12)。C2850盆地内の南北に伸長した隆起帯(苫小牧リッジ)に、勇払油・ガスは位置しています(図9)。白亜紀花崗岩類を基盤として、下位より礫岩と夾炭層からなる石狩層群、主に泥岩からなる幌内層、火山砕屑岩や泥岩・シルト岩などからなる南長沼層、滝ノ上層などから貯留層 層序 第四系-荷菜層 平取-軽舞層 滝ノ上層 南長沼層 地質 時代 更新世 鮮新世 後期 中期 前期 中 新 世 漸新世 NSABBA札幌 勇払 石狩?日高沖 堆積盆地 袰 5000酒田 能代 秋田 本荘 由利原 新庄 下越 村上 紫雲寺 新発田 新潟 新津 三条 見附 中越 柏崎 長岡 吉井?東柏崎 上越 南長岡?片貝 幌内層 根源岩 糸魚川 長野 020袰 ガス田 油・ガス田 油田 始新世 石狩層群 暁新世 白亜紀 花崗岩類 図9国内における基盤岩およびグリーンタフ油・ガス田の分布図10勇払油・ガス田の層序および油・ガス層と根源岩の層準飽和炭化水素 ステラン 炭質泥岩 コンデンセート C28コンデンセート C2750C29石炭 炭質泥岩 C27C29図11勇払油・ガス田における根源岩とコンデンセートの重質飽和炭化水素およびステランのクロマトグラム図12勇払油・ガス田における原油と根源岩(ビチュメン)のステラン組成2005.11. Vol.39 No.668ホ油天然ガスの起源 ?無機成因説は成り立つか?4?3.新潟地域グリーンタフ油・ガス田新潟地域には中新世中期の流紋岩類を貯留岩とする油・ガス田があり(図9)、見附油田、吉井?東柏崎ガス田、南長岡?片貝ガス田はその代表的なものです。新潟堆積盆地には、中・古生層や白亜紀?古第三紀の花崗岩類を基盤岩として、その上に前期?中期中新世の火山岩類(グリーンタフ)が発達しています。グリーンタフも、1958年に見附油田が発見されるまでは、商業的な探鉱事業の対象とはならない基盤岩と考えられていました。3油・ガス田の貯留層と油・ガスの概要を表5に示します。貯留層深度の増加に伴い貯留層温度が高くなり、ガスが主体となっています。また、δ13C1や原油のδ13Cも重くなっていることから、ガスや原油の熟成度も高くなっています。グリーンタフを含む火山岩類(火山岩貯留岩)から産出する油・ガスの起源について、地質調査所(現産業技術総合研究所)が詳しく検討しています(例えば、坂田,1994)。それらの結果を要約すると、以下のようになります。1)火山岩貯留岩中の原油は、アルカン組成、CPI値、ステランのC27?C28?C29組成およびδ13Cが堆積岩貯留岩中の原油と類似しており、いずれも海成泥岩を根源岩として生成されたと推定される。2)火山岩貯留岩中のガスのδ13C1は?33??54‰であり、堆積岩貯留岩中のガスと差がなく、非生物起源のδ13C1とは明らかに異なっている。また、δ13C1<δ13C2<δ13C3<δ13C4の関係は、有機物の熱分解に伴う同位体分別効果と同じ傾向であり、非生物起源のC1が含まれる可能性は否定される。以上述べたように、基盤岩油・ガス層中の原油やガスの地球化学分析結果は、これらの原油やガスがそれぞれ異なった特徴を有しており、有機物の熱分解起源であることを示しています。みにして、石油が無尽蔵にあるかのよ標準層序 新潟 灰爪層 西山層 貯留層 椎谷層 上部 寺泊層 下部 七谷層 石油システム トラップの形成 タービダイト砂岩 圧縮場 根源岩 泥質岩の堆積 還元環境 急激な海進 活発な海底 火山活動 鮮 新 世 後 期 中 期 中 新 世 (グリーンタフ) 前期 伸張場 図13新潟地域の層序および油・ガス層と根源岩の層準後期 更 新 世 地質 時代 化学的な見地から検討することにより、石油の移動・集積に関する情報を得ることができます。探鉱対象を限定するのではなく、フレキシブルにものごとを考えることが必要だと思います。これまで予想していなかったような発見がこれからも続くと思います。以上簡単に、石油無機成因説に対する反論を試みました。ピーク・オイル論に対する議論がかまびすしい現在ですが、石油・天然ガスの起源について、より研究・検討を深めていく必要があると思います。安易に無機成因説を鵜呑5.まとめ堆積盆地の構造発達史や根源岩に関するデータから、石油がいつ、どこで生成しているかはある程度推定することができます。しかしながら、石油は流体であるため、生成した場所から移動して、トラップと呼ばれる石油の集積に適した場所に集積しています。いろいろなトラップを探し出すことは地震探鉱技術の進歩によって、かなり可能となってきていますが、石油がどこを移動しているのか、あるいはどこに集積しているかは、現在の技術力でもよく分かりません。基盤岩油・ガス田の場合のように、予想外のところまで石油が移動し、集積している可能性があります。地表油・ガス徴などを地球表5新潟地域グリータフ油・ガス田の概要とメタンおよび原油の炭素同位体組成貯留層生産物油・ガス田名見附油田吉井?東柏崎ガス田南長岡?片貝ガス田関口ほか(1994)などから作成深度(m)1,500?2,0002,300?2,7004,000?4,800温度(℃)81?98116?133158?196主原油ガスガス副ガスガス油比(裙/褌)330コンデンセートコンデンセート3,900?4,4008,000?10,000δ13C1(‰)?34.1??34.5?32.1??33.1?32.5??33.6δ13Coil(‰)?22.0?20.6?20.569石油・天然ガスレビューAナリシスうな幻想をもつことは、今後の地球環境問題を考えても控えられるべきものであると思います。反対にピーク・オイル論から、明日にでも石油生産がピークをむかえるとの考えをもつことも、昨今の油価上昇の背後にある資源枯渇不安感に一層拍車をかけ、世界経済の混乱と沈滞を生むことになるでしょう。私たちも、いろいろな論に惑わされないで、素直に自然に向きあっていくことが大切です。引用文献1. Gold, T., 1988:地球深層ガス(脇田 宏監訳).日経サイエンス社,286p.2. Jenden, P. D., Hilton, D. R., Kaplan, I. R. and Craig, H., 1993:Abiogenic hydrocarbons and mantle helium in oil and gas fields.The Future of Energy Gases(U.S. Geological Survey Prof. Paper 1570, 31?56. 3. Lollar, B. S., Westgate, T. D., Ward, J. A., Slater, G. F. and Lacrampe?Couloume, G., 2002:Abiogenic formation of alkanes inthe Earth's crust as a minor source for global hydrocarbon reservoirs. Nature, 416, 522?524.4. 中島敬史,2005:無機起源石油・天然ガスが日本を救う!?地球深層ガス説の新展開.石油・天然ガスレビュー,37(3),13?24.5. Peters, K. E., Walters, C. C. and Moldowan, J. M., 2005:The Biomarker Guide(2nded.). Cambridge Univ. Press.6. Potter, J. and Konnerup?Madsen, J., 2003:A review of the occurrence and origin of abiogenic hydrocarbons in igneous rocks.Hydrocarbon in Crystalline Rocks.Geol. Soc. London, Special Publications, 214, 151?173.7. 坂田 将,(1994):炭化水素の起源と続成変化に関する地球化学的研究.地球化学,28,59?72.8. 島田昌英・青山威夫,2005:ベトナム・クーロン堆積盆地の15?2鉱区における湖成根源岩・産出油.石技誌,70(1),74?82.9. 関口嘉一・重川 守・平井明夫・宮本泰行,1994:地化学的検知からみた長岡・柏崎地域のグリーンタフ油・ガス鉱床の形成.石技誌,49(1),56?64.10. 田口一雄,1998:石油の成因?起源・移動・集積(地学ワンポイント6).共立出版,140p.11. 武富 浩・西田英毅,2002:石狩?日高堆積盆における石油システム?勇払油ガス田の地化学データを中心として?.石技誌,67(1),52?61.12. 早稲田 周・岩野裕継・武田信從,2002:地球化学からみた天然ガスの成因と熟成度.石技誌,67(1),3?15.13. 矢内桂三,1991;1992:南極隕石の発見?その1.初期の隕石探査と成果;その2.隕石大量発見と国際競争.地質ニュース,444号,29?36;458号,37?46.14. 矢内桂三,1994:南極隕石の発見?その3.隕石の見分け方と隕石の種類.地質ニュース,481号,53?61.15. Yuen, G., Blair, N., Des Marais, D. J. and Chang, S., 1984:Carbon isotope composition of low molecular weight hydrocarbonsand monocarboxylic acids from Murchison meteorite. Nature, 307, 252?254著者紹介加藤 進(かとう すすむ)石油資源開発株式会社技術研究所主席研究員名古屋大学理学研究科修士課程修了(地球科学専攻)理学博士(名古屋大学)主に国内の石油探鉱に従事し、グリーンタフ油・ガス田である片貝ガス田や由利原油・ガス田の発見・探掘に関係。石油公団技術部に3年間出向し、視野と人的交流が広がった。この約10年は探鉱技術に深く関わっている。2005.11. Vol.39 No.670
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2005/11/20 [ 2005年11月号 ] 加藤 進
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