ページ番号1006194 更新日 平成30年2月16日

石油天然ガスのトリビア ~ちょっとした疑問、質問にお答えします~

レポート属性
レポートID 1006194
作成日 2005-11-20 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 エネルギー一般
著者
著者直接入力 森島 宏
年度 2005
Vol 39
No 6
ページ数
抽出データ アナリシスJOGMEC 石油・天然ガス調査グループmorishima-hiroshi@jogmec.go.jp森島 宏石油天然ガスのトリビア?ちょっとした疑問、質問にお答えします?1.API比重質問:石油産業では、なぜ普通の比重を使用しないで、API比重という訳の分からない指数を使うのか。回答:たしかに、新聞記事などの中でも、石油の比重は、普通使われる0.95などではなく、API比重29などと、見当の付きにくい数値で表されることが多いようです。その理由を一言で言えば、石油産業の歴史の中で、現場ではAPI比重の方が普通の比重より使いやすかったので普及し、業界標準となったため、今日でも慣用的に使われているということです。石油の容量単位として、バレルが今日慣用的に使われるようになった経緯と同様です。まず、API比重とは、アメリカ石油協会(API, American Petroleum Institute)の定めた比重、ボーメ比重のことです。ボーメ比重とは、フランスの化学者ボーメ(Baume1728?1804)が考案した比重計によって計測される比重(ボーメ度)のことです。ボーメ比重計は浮き秤の一種で、「液体の中の物体は、押しのけた液体の重さに応じた浮力を受ける」というアルキメデスの原理を応用したものです。液体の比重が大きいほど受ける浮力が大きく、浮きがそれだけ浮き上がることを利用し、浮きに目盛りを付けて比重を計りたい液につけ、液面の目盛りを読んで比重を計るものです。ボーメは、比重が大きい液体を測定する浮き秤には、食塩15%溶液を15度、純水を0度とし、この間を15等分しました(重液用)。一方、比重が小さい液体を測定する場合は、10%の食塩水を0度、純水を10度とし、この間を10等分しました(軽液用)。石油は、比重が小さいので後者で計りますが、比重1の純水よりさらに比重が小さい石油は、浮力もさらに小さいので、秤は軽液用の10度の目盛りを越えて沈み、延長した目盛りの20度や30度に相当する位置を指します。これが、APIボーメ度で、石油が20度、30度という大きな値をとる理由です。また、軽い油ほど度数が大きくなる理由でもあります。では、なぜ普通の比重でなく、ボーメ比重の方が広く用いられるようになったのでしょうか。それは、現場での実用性にあります。比重の定義は、ある物質の一定体積当たりの質量の、同体積の水の質量に対する比率です(密度は、単位体積当たりの質量です(例えば、メートル法では1㏄当たりのグラム数))。これを決定するには、体積と重量の両者を測定する必要があります。石油産業が誕生し、成長した19世紀、重量を測定するには、両皿天秤を用意し、一定容量の試料を容器にとって、較正された分銅を用いて丁寧に秤量する必要がありました。両皿天秤は微妙なバランスを取る必要があり、風の影響を受けない屋内の試験室などを用意し、訓練を受けた技師が必要でした。これに対してボーメ比重計は、目盛りを付けた10?20㎝の浮き(通常ガラス製)であり、ただこれを試料に浮かべて目盛りを読むだけで比重の測定ができました。ボーメ比重計は軽く、持ち運びが便利で、操作も簡単で、試験室を用意する必要がなく、化学実験の基礎的な知識も不要でした。試料を試験室に運ばなくても、必要があれば採掘や精製の現場で、比重を測定することができました。このように、石油産業の様々な現場環境での操作の簡便性に優れ、洗練された微妙な操作を必要とせず、その割にデータの精度と再現性があり、また経済的でもあったこの方法は、業界で圧倒的に支持され、標準的な方法として普及していったのです。ところで、石油産業ではなぜ比重を重要視するのでしょう。一つには、石油の比重はその含有成分を反映しており、それによって原油や製品の性質、成分などを相当程度知ることができ、蒸留などの操作や処理の見通しを立てる参考とすることができるからです。逆に、比重から、原油や製品の種類を推定し、場合によっては、他の指標と総合して、それらを特定することもできます。これらのことから、比重は、原油や製品の重要な基本的指標となってきました。ただ、最近では、種々の進んだ理化学的分析手法が開発されてきており、この分野での重要性は従来ほどではありませんが、簡単に計れて、原油や製品の特徴を示すという点では、依然として基本的な指標となっています。もう一つ、従来と変わらず、比重が重要な意味を持つのは、原油や製品の輸送、貯蔵の操作分野です。原油にお85石油・天然ガスレビュー「ても製品においても、タンクやタンクローリーに入れたり出したりする際、その容量を正確に見積もることは、安全上からも、取引上からも極めて重要です。を示すのに用いられていますが、我が国や国際石油産業の現場では、しだいにCGS単位による比重(㏄/g)がより広く、用いられるようになってきております。これは、国際的に単位系の統一が進められているためでもあります。しかし、米国では引き続きAPI比重が主流であるので、両者の間で、相互に換算が行われています。アナリシス液体の容量は、その熱膨張率のため、温度に応じて変動します。例えば、15℃においてある体積を持つ原油は、20℃において膨張し、それにより体積が増加し、逆に比重は減少します。種々の温度における比重の換算表が作成されているので、15℃において比重を測定すれば、この表から20℃における比重を求めることができます。比重=重量/容積、すなわち、容積=重量/比重で、重量は変わりませんから、20℃における比重から、20℃における原油の体積をあらかじめ精度良く算定することができ、輸送貯蔵の操作を確実に行うことができます。今日でも、API比重は、原油の性状出所:新日本石油㈱所蔵品、同社のご好意により撮影図1API比重測定用浮き秤8本セット。手前は温度計2.エッソタイガー質問:石油業界の王者を自認するエクソンのイメージキャラクターは、なぜ百獣の王ライオンでなく、虎なのか。回答:現エクソンモービルは、どちらもスタンダード系のメジャーであったエクソンとモービルが、1999年に合併して発足した世界最大のスーパーメジャーです。エクソンは、合併よりずっと以前の1972年に、米国において旧名エッソから改名した名称です。米国以外では、現在もエッソのブランドで、燃料油の販売が行われています。虎のイメージキャラクターは、エッソの時代に採用されたもので、したがってエッソタイガーとして、親しまれています。虎がイメージキャラクターに採用された経緯ですが、既に、エッソグループのノルウェー子会社では1900年代に、そして英国子会社では1930年代に、それぞれ虎のイメージを宣伝に用いていたとの記録があります。なぜライオンでなく虎を用いたかの理由は、残念ながら伝えられていません。あるいは、ライオンの雄は、たてがみもあり立派ですが、狩の方は雌に任せ、普段は寝てばかりというイメージがあるので敬遠されたのでしょうか。また、ロゴとしては、虎の方が黄色と黒の縞があって目立ちやすいという視覚的な効果が期待できるので、選ばれたのかもしれません。ところで、エッソタイガーが一躍世界的に有名になるのは、1960年代のはじめです。1959年、米国のシカゴにおいて、その地域のエッソガソリンの販売促進に役立つ力強いシンボルを考えていた広告会社のコピーライターが、後に広告史上最も有名なキャッチコピーの一つと言われるようになった‘Puta Tiger in Your Tank’を考えついたのです。この文と組み合わせて行われた販売キャンペーンは非常に成功し、シカゴから全米、そしてさらには全世界で出所:エッソドイツホームページ(エクソンモービル有限会社許諾)図2エッソタイガー2005.11. Vol.39 No.686ホ油天然ガスのトリビア ?ちょっとした疑問、質問にお答えします?行われるようになり、エッソタイガーは、広く知られるようになったのです。なお、このキャンペーンが縁で、エクソンモービルは、1995年から、絶滅の危険があるとされる野生の虎の保護運動に参加しています。3.ワイルドキャット質問:なぜ試掘井をワイルドキャット(山猫)というのか。回答:や、wildcat strike 山猫スト(組合員の一部が本部の承認を受けずに勝手に行うストライキ)など、そのような意味で用いられる語彙が載っています。辞書によっては、それらと並んで、試掘という意味も載っています。同じ意味の、形容詞や動詞もあります。ワイルドキャット(wildcat)を辞書で引くと、名詞として、山猫の他に、短気で獰猛な人、無鉄砲な(乱暴な、でたらめの)企業や計画との意味があります。また、wildcat bank 山猫銀行(銀行法に基づかず、紙幣を発行した銀行)近代石油産業は、19世紀の半ば、米国のペンシルベニア州タイタスビルで、ドレーク大佐が井戸を掘って地下から石油を汲み上げた時に誕生しました。その成功の知らせは瞬く間に国中に広がり、大勢の人々が押し寄せてそこら中を掘り返すようになりました。石油を求めて、やみくもに掘って回る人々は、その無計画ででたらめな作業ぶりから、wildcatter(山師)と呼ばれ、そのように埋蔵の不確かな地域での掘削(試掘)井は、ワイルドキャットwildcatと呼ばれるようになりました。試掘井は、一般にexploration wellと呼ばれていますが、その中でも特にそれまで探鉱が行われておらず、全く石油の存在が確認されていない地域での最初の試掘井は、今でもワイルドキャットと呼ばれることが多いようです。4.ユノカル76質問:ユノカルのロゴは、なぜ76なのか。回答:ユノカルは米国の独立系石油会社で、最近、同社を巡る米系メジャーのシェブロンと中国海洋石油CNOOCとの買収合戦が話題になったところです。さて、同社はその製品にUnocal76という商標を用いていますが、これは、同社が1930年代にガソリンの新製品を売り出したときに採用したものです。この76という数字は、ガソリン製品のオクタン価が76であることとともに、米国の独立した年、1876年から採られたと言われています。ユノカル76の商標は、その独特のネーミングにより、ユーザーに広く親しまれるようになり、米国で最も良く知られ、長続きしている商標の一つに数えられています。ユノカルの歴史は古く、ドレークが最初の石油井を掘削した1859年から3087石油・天然ガスレビュー年後の1890年に、カリフォルニアの油田開発を目的としてUnion Oil Company ofCaliforniaとして、設立されたものです。20世紀に入って、自動車の普及に注目した同社は、ガソリンや潤滑油の製造を含む上下流一貫創業会社を目指して事業を展開しました。その過程で生まれたのが、ユノカル76ガソリンです。同社は、第2次世界大戦後、海外へも活動を広げ、アラスカ、メキシコ湾、北海、タイ、インドネシアなどで、石油および天然ガスの開発に成功しています。また、地熱の開発でも実績を上げました。1983年に組織改変があり、同社は持ち株会社Unocal Corporationの操業子会社となり、1985年には、社名もUnionOil Company of Californiaから、現在の出所:JOGMECヒューストン事務所撮影図3ユノカル76nocalに変わりました。同社は、80年代から90年代にかけての世界的な油価低迷と業界再編の激動期を何とか乗り切りましたが、その過程で多くの負債を抱えました。これを打開するため、1997年、同社はついに下流部門の生成設備などを売却し、上流専業会社として再出発しました。しかし、今回の米中企業による買収の動きの中で、シェブロンに吸収されることとなり、100年以上の歴史を閉じることとなります。長く親しまれたユノカル76の商標もなくなるのでしょうか、気になります。アナリシス5.BTU質問:なぜLNG取引では、BTUという妙な熱量単位が未だに使われているのか。回答:Btu(British thermal unit)とは、英国式熱量単位のことで、英国においてヤードポンド単位系に基づいて制定された熱エネルギー単位です。もともとは、重量1ポンドの水を、1気圧下で、華氏59.5?60.5褻(15.28?15.83℃)まで1褻加熱するのに必要な熱量が1Btuと定義されました。このままだと実用的には小さすぎるので、その百万倍の百万Btu(MMbtu)が最も一般的に用いられています。また、その10万倍を1therm(サーム)という単位名で使っている場合もあります。現在1Btuは、CGS単位で251.996cal(カロリー)、すなわち1,055J(ジュール)と定義されています。さて、このBtuが、LNG取引の場で未だに用いられている理由ですが、一つには、石油の容積単位としてのバレルが慣用的に用いられているように、石油産業およびガス産業が最初に発展した英米においては、ヤードポンド単位系が用いられており、これらの産業の発展普及とともに、その単位系が業界標準となったという経緯があります。特に天然ガスの大規模利用は、米国においてまず発展したので、天然ガスの取引単位にはBtuが用いられました。たまたま、天然ガスの熱量が、1,000立方フィート当たり約百万Btu(1.098MMBtu)という、きりの良い関係であり使いやすいということも、この単位が普及した理由かもしれません。もう一つの理由は、ガス産業特有の事情です。石油産業は、19世紀米国で発足したのですが、ガス産業の歴史は石油よりも古いのです。18世紀英国で始まった産業革命は、石炭を原動力として発展したのですが、その石炭からコークスを取る時、乾留(空気を遮断した蒸し焼き)の過程の副生成物として石炭ガスを生産する手法が確立され、19世紀のはじめに欧米の大都市で、照明(ガス灯)用に配管供給されるようになりました。これが都市ガスであり、こうしてガス産業が始まりました。石炭ガスは、石炭Cが高温で水H2Oと反応して生じる水素H2と一酸化炭素COを主成分とする混合ガスで、その発熱量は、1裙当たり約4,000?6,000kcalです。C+H2O=H2+CO20世紀になって、都市の照明はエジソンの発明した白熱電灯に主役の座を譲りましたが、都市ガスは、家庭用の熱源として、後には工業用としても、広く普及していきました。やがて、都市ガスの原料に大きな変化が起こります。それは、第2次世界大戦の後、世界的に起こったエネルギー革命の影響です。1930年代から40年代にかけ、中東を中心に発見された大油田から、石油が大量に安価に供給されるようになって、石炭に代わって、エネルギーの主役に躍進してきました。これを背景として、都市ガスの原料も、原油、LPG、ナフサなどの石油系のものへと転換していきました。これら石油を原料としたガス(合成ガスなどと呼ばれる)は、1裙当たり20,000?30,000kcalという高い熱量を持っています。その後、それに続いて、世界的に天然ガスが大規模に発見されるようになると、都市ガスの原料は、今日主流の天然ガスへ移行していきました。この転換は、国内に豊富なガス資源のあった米国では、既に戦前から始まっていましたが、欧州では1960年代から地域内で発見されたガス田や、アフリカやソ連から輸入天然ガスを利用して、本格的に始まりました。国内に天然ガス資源の乏しかった我が国では、さらに遅れ、1970年位になって、液化天然ガスLNGによる海外からの輸入が可能になって、天然ガス転換が始まりました。メタンを主成分とする天然ガスは、1裙当たり約10,000kcalの熱量を持っています。さて、ガスは燃料として、固体の石炭や液体の石油と比べて、気体であるため空気との混合が容易で、燃焼のコントロールが極めて容易であるなどの点で特に優れており、広く利用されるようになってきました。この、ガスの最大の特徴である燃焼時の利点を発揮させるために最も重要なことは、その品質、すなわち熱量を調整することにあります。したがって、ガス産業においては、ガスの製造や供給、製造されたガスや原料ガスの売買取引においては、常に、それらの熱量を測定する必要がありました。2005.11. Vol.39 No.688ホ油天然ガスのトリビア ?ちょっとした疑問、質問にお答えします?ガスの熱量の変動幅は、石油に比べて、石炭ガス、石油合成ガス、天然ガスなどの原料の違いによっても、またそれぞれの製造条件などに応じても、極めて大きいものであったため、熱量の決定は特に重要でした。このため、はじめに述べたように、米英で用いられていたヤードポンド単位系の熱量単位Btuが、業界標準として定着し、天然ガスやLNG取引においても、依然として用いられる指標となっています。6.第三紀と第四紀質問:石油天然ガス産出の主要な地層の一つである新生代に「第3紀」「第4紀」があるのに、なぜ「第1紀」と「第2紀」はないのか。回答:たしかに、地質年代の表には、第三紀や第四紀はあっても、第一紀や第二紀は、見当たりませんね(紀をつけるのは地質年代で、地層は第三系、第四系と系をつけて呼びます。また、第三、第四と漢数字を用います)。地質学は、18世紀頃からヨーロッパを中心に発展してきました。それ以前は、聖書の記述が絶対でした。山地で海にあるはずの貝が見つかっても、一部には、レオナルド・ダ・ビンチのように、化石を研究して、海底の地層が隆起したと考える人もいましたが、多くの人々は、ノアの洪水によって運ばれたと解釈していました。今は用いられていない洪積層という名称は、その名残です。また、その影響で、地質学の初期の研究では、岩石はすべて水成岩とする水成説が有力でした。第一紀や第二紀は、そのような初期の地質学において、提唱されたものです。まず、1760年頃、イタリアのアルデユイーノが、北イタリアのアルプスの岩石の年代を古い方から順に三つに分け、第一紀、第二紀および第三紀と名付けました。ついで1829年に、フランスのデノアイエが、第三紀の堆積物より新しい堆積物の時代を第四紀と名付けました。しかし、その後の研究の結果、第一紀の地層は変成岩からなる地層、第二紀の地層は現在の中生代に相当する時代の地層であることが判明し、さらにより古い地層の年代が次々に研究され、細分化されていきました。その結果、第一紀、第二紀の命名は適切ではないとして用いられなくなり、第三紀と第四紀のみが残って現在も用いられているのです。ところで、地質年代の名称の中には、他にも数字がついているものがあります。古生代の最後の二畳紀(2億8600万年前から2億4800万年前まで)と、中生代の最初の三畳紀(2億4800万年前から2億1300万年前まで)です。二畳紀は、ぺルム紀とも呼ばれますが、これは最初にこの時代の地層が研究されたロシアのウラル山脈の西にあるぺルム地方から、名付けられたものです。その後、詳しく研究されたドイツにおける同時代の地層が、二つの異なる岩相の重畳(重なり)からなっていることから、二畳紀と名付けられました。日本では、ペルム紀より二畳紀の方が、よく用いられています。三畳紀の方も、最初に調べられたドイツのこの時代の地層が、異なる三つの岩層の重なりからなっていることより、こう名付けられました。このように、二畳紀と三畳紀は、それぞれの時代の地層の主要な岩相の数から名付けられたもので、数の順に、しかも年代が接して並んでいるのは、第三紀と第四紀の場合とは異なり、全くの偶然からです。7.オクタン価とセタン価質問:ガソリンなどの燃焼性指標のオクタン価、セタン価のオクタン、セタンとは何か。回答:オクタンもセタンも、炭化水素化合物の名前です。炭素の数で名前がつき、オクタンは、炭素数が8個、セタンは16個のものです。炭化水素には、炭素が直線状、枝分かれ、あるいは環状につながっているものがあり、直線のものはノルマル、枝分かれをしたものはイソ、環状のものはシクロをつけて呼びます。それでは、オクタン価およびセタン価とは、何を表すためのものかというと、これらはどちらもエンジン燃料の性能を表すものです。そして、オクタン価はガソリンエンジン用燃料であるガソリンのアンチノック性能、セタン価はディーゼルエンジン用のディーゼル油の発火性能をそれぞれ示しています。なぜ、2種類の性能表示が必要なのでしょう。これら2種のエンジンはいずれも内燃機関であり、機関内部で燃料を燃焼させ、その燃焼ガスの膨張圧力でピストンを押し、回転運動を取り出している点では同じです。しかし、両者は、燃料燃焼の開始方式が異なり、ガソリンエンジンは電気着火、ディーゼルエンジンは自然発火を、それぞれ採用していることから、89石油・天然ガスレビューAナリシス異なった性能が必要となるのです。まず、ガソリンエンジンでは、燃料を気化させ、これを機関内に吸入、圧縮した後、内部の電極で火花をスパークさせ、着火爆発させます。このとき、火花の出る前に、ガソリンが自然発火してしまうことがあります。これがノッキングです。ノッキングはエンジンの効率を下げ、騒音を引き起こすのみでなく、エンジンの損傷につながることもあります。これを防ぐことが、ガソリン燃料にとって重要な課題となっています。ガソリンは、通常、炭素数5個から12個あたりまでの炭化水素の混合物ですが、この中に含まれる代表的な炭化水素で、特にノッキングを起こしにくい性質、アンチノッキング性が高い炭素8個のイソオクタンを100とし、逆に最もノッキングを起こしやすい炭素7個のノルマルヘプタンを0として、試料と同じアンチノッキング性を持つイソオクタンとノルマルヘプタンの混合物中のイソオクタンの容量%を、オクタン価と呼んで、アンチノッキング性の指標としています。いわゆるハイオクは、ハイオクタン価high octane numberの略で、オクタン価が100前後と高いガソリンを指します。次にディーゼルエンジンですが、燃料を気化させ、機関内に吸入し、圧縮するところまではガソリンエンジンと同様ですが、その後、燃料の爆発を電気火花でなく、自然発火で起こさせるところが異なります。そのため、ディーゼル油にとって重要なことは、発火性能が高いことです。通常のディーゼル油は、炭素数14個から20個程度の炭化水素ですが、そのなかで代表的な、最も発火性の良い炭素数16の直鎖状炭化水素セタン(ノルマルヘキサデカン)を100とし、逆に最も着火性の悪い炭素数11の環状炭化水素アルファメチルナフタリンを0として、試料と同じ着火性能を持つセタンとアルファメチルナフタリンの混合物中のセタンの容量%を、セタン価と呼んで、着火性の指標としています。以上のように、同じ燃料油でも、ガソリンには着火のしにくさ、ディーゼル油には発火のしやすさが求められます。これを石油の成分である炭化水素の構造との関係で見ると、一般に分子構造がコンパクトにまとまると発火性が悪くなり、アンチノック性は良くなります。例えば、ガソリンの成分である同じ炭素6個の炭素水素で比較すると、直鎖状に長いノルマルヘキサンのオクタン価は26と低いのですが、枝分かれ1個のイソへキサンは73、環状で折れ板状のシクロヘキサンは83、環状で平面のベンゼンは120と、立体構造がまとまってくるにしたがい、アンチノック性が高まっています。イソオクタンは炭素数は8個ですが、枝分かれが5個もあって、コンパクトな構造なので、アンチノック性の高い指標として、オクタン価100とされ、一方ノルマルヘプタンは炭素数が1個少ない7個ですが、直鎖状で細長い構造を持つため、発火しやすい代表としてアンノック性0の指標に選ばれました。逆に、ディーゼル油については、炭素数16の直鎖状で細長いセタンの発火性が良く、セタン価100として指標に選ばれ、炭素数11のアルファメチルナフタリンは、ベンゼン環2個にメチル基1個がついたコンパクトな構造で発火性が悪く、セタン価0とされました。通常市販されているディーゼル油のセタン価は、40から50前後です。8.シェブロンとトタール質問:スーパーメジャーの一角、Chevron社のシェブロンと、Total社のトタールは、妙な名前だが、それぞれどういう意味か。回答:まず、シェブロンのchevronは英語で、制服の肩につける山形の肩章のことです。また、英国では金や銀の純度を保証する刻印としても用いられました。シェブロン社の前身は、ロックフェラーの創設したスタンダードオイルグループの一員であったスタンダード出所:JOGMECワシントン事務所撮影図4シェブロンのマーク2005.11. Vol.39 No.690ホ油天然ガスのトリビア ?ちょっとした疑問、質問にお答えします?オイルオブカリフォルニア(SOCAL)です。同社が、SOCAL時代の1931年に採用した商標が、シェブロンです。この商標は、同社の製品とサービスの品質を保証する刻印という意味とともに、消費者の目をとらえることを目的として、採用されたと言われます。シェブロンのマークは、その後広く親しまれるようになり、1984年、同社が米国の非スタンダード系のメジャー、ガルフ社と合併したとき、正式に社名をSOCALからChevron Corporationに変更しました。さらに、2003年10月に、同じく米国の非スタンダード系メジャーであるテキサコ社と合併したとき、社名をいったんChevronTexacoとしましたが、2005年5月、再びChevron Corporationに戻し、現在に至っています。次に、フランス系のメジャーであるTotal社のTotalは、1953年、同社の前身CFP(フランス石油)が、登録した商標です。この語が選ばれた理由は、totalが、英語、フランス語など、多数の言語において、同じように発音されるとともに、総合、統合という同じ意味を持ち、同社の幅広い事業を訴える力があると期待されたためです。9.メタンガス質問:溝から発生するメタンガスと天然ガスとは違うのか。回答:天然ガスの主成分はメタンですので、溝から発生するメタンガスと天然ガスとは、ほぼ同じであるといってよいでしょう。ただ、両方のメタンは、発生する機構が異なり、それと関連して、厳密に見れば、異なるところもあります。現在、天然ガスの生産量は、ガス田から生産されるガス田ガスが最も多く、次いで油田からの原油の生産に付随して生産される随伴ガスとなっています。天然ガスは、石油や石炭と同じく、化石燃料と呼ばれるように、大昔の生物から生じたものです。その生成機構として現在最も有力な説は、次のようないわゆるケロジェンを根源とする説です。太古の海や湖で、砂や泥が堆積するとき、堆積物が厚く重なると、砂や泥は圧縮されて砂岩や泥岩となります。それらに混じって一緒に堆積した生物残渣中の有機物は、重合して、ケロジェンと呼ばれる炭化水素を主成分とする複雑な高分子になります。ケロジェンを含む地層がさらに深く埋没すると、上昇した地温や圧力によって、ケロジェンが熱分解を起こし、より低分子の炭化水素が発生します。これが石油や天然ガスです。炭化水素のうち、炭素数が5個以上のものは、液体であり、その混合物が原油です。一方、炭素数が4個以下のものは気体ですが、その中でも最も熱分解が進み、最小単位の炭素1個の炭化水素となったものがメタンです。これが天然ガスの主流、ガス田ガスの主要な生成過程であり、こうして出来たガスは、熱分解性ガス(thermogenic gas)とも呼ばれています。これらの他に、現在利用されているガスには、浅い地層の地層水に溶け込んでいて、地下水の汲み上げに伴って生産される水溶性天然ガスがあります。溝や池から発生するガスは、水溶性ガスと同じ起源で、水中や泥の中の有機物(CH2O)が、嫌気的(酸素の少ない)環境条件のもとで、微生物の働きにより分解されて発生するメタンであり、生物分解性ガス(biogenic gas)と言われます。2CH2O=CH4+CO2熱分解性であれ生物分解性であれ、どちらの機構で発生するメタンも、同じ分子構造CH4を持ち、燃焼熱など、燃料としての性質は、ほぼ同じです。しかし、その化学組成を、同位元素を含めて詳細に分析すると、化石燃料である熱分解性ガスの方が、生物分解性ガスよりも、重い同位元素が多く、平均の質量もやや重いことが知られています。炭素の安定同位元素は、原子量12の12Cと、同じく13の13Cの2種があり、地球上の岩石や大気中の炭酸化合物においては12Cが98.90%に対し、13Cが1.10%存在しているので、炭素元素の原子量はその加重平均、12.011となっています。しかし、生物を構成する生体成分中の同位炭素を調べてみると、12Cの比率が増え、軽くなっています。その理由は、地球上における炭素の循環において、まず植物が大気中の炭酸ガスと水から光合成によって糖類を合成する際、軽い12Cの炭酸ガスを、重い13Cの炭酸ガスより速い速度で取り込むためです。こうして出来た植物成分は他の生物に取り込まれ、それがまた他の生物に取り込まれ、こうして地球生態系の中の食物連鎖に入っていきます。どこかで、生命活動が終わると、生体残渣中の炭素はゆっくりと、大気中や岩石中の炭素との置換を始め、長い年月をかけて地球上の平均的な同位炭素組成へと近づいていきます。このようにして、生きている生物中の炭素が最も軽く、生命活動が終わって、堆積物中に取り込まれ、化石となり、長い地質年代を経るほど、重くなっていきます。したがって、天然ガスと、溝から発生したメタンとは、厳密に言うと同位炭素の比率に違いがあり、91石油・天然ガスレビューV然ガスの方が13Cの比率が高く、溝から発生したメタンよりも重いということになります。ところで、天然ガス中に13Cが多いという特性が、最近医療分野で利用されるようになっています。それは、胃潰瘍などの炎症を引き起こすピロリ菌の診断薬の製造原料としてです。ピロリ菌は、尿素((NH2)2CO)という物質を分解するウレアーゼという酵素を大量に含んでいます。そこで、13Cを含む尿素を合成して投与すると、ピロリ菌が多い場合は、ウレアーゼが働いて、尿素を、13Cを含む炭酸ガスとアンモニアに分解します。((NH2)2CO)+H2O=CO2+2NH3炭酸ガスは、血液中から呼気の中に出てくるので、13C尿素の服用の前後で、呼気中の炭酸ガスの濃度を測ると、13Cを含む炭酸ガスの増え方で、ピロリ菌の存在量が判定できます。呼気中の13Cの同定、定量は、赤外線分光や核磁アナリシス気共鳴などの分析手法により、比較的簡便に行うことができます。なお、LNG中に1%程度ある13Cを含むメタンを濃縮して、純度の高い13Cメタンを精製するには、12Cメタンとの間にわずかにある沸点の違いを利用して、LNGの蒸発、冷却を何度も繰り返して行い、最終的に99%の13Cメタンを製造しています。10.LNGとNGL質問:LNGとNGLはどう違うのか。回答:LNGはLiquefied Natural Gasの略で液化天然ガスを、そしてNGLはNaturalGas Liquidの略で天然ガス液を、それぞれ指します。両方とも、名前にNG(天然ガス)とL(液体)が入っているように、地下から採取される天然ガスから製造される液体です。その違いは、LNGは、天然ガスを人工的に極低温に冷却することによって液化したもので、主成分がメタン、微少成分としてエタンやプロパンなどを含みます。一方、NGLは、採取された天然ガスから、地上の常温常圧の下で、沸点の高いペンタンやヘキサンなどの軽質の炭化水素が、自然に分離凝縮して液体となったもので、コンデンセートと呼ばれます。これらはまた、ガソリンの成分に近いので天然ガソリンとも呼ばれています。同じく、石油や天然ガスから製造されるものに、LPG(液化石油ガス)があります。これは、常温常圧下で気体であるプロパンやブタンに人工的に数気圧の圧力を加えて、液体にしたものです。これらの3種類の製品の性質と成分の違いは、以下のようにまとめられます。地下から生産された天然ガスの成分のうち、最も分子量が大きく沸点、凝固点が高く、地上の常温常圧の条件下で、自然に凝縮して液体になるペンタン、ヘキサンなどがNGL。それより分子量が小さく、沸点、凝固点も低く常温、常圧で気体であるが、加圧すれば液体になるプロパン、ブタンなどがLPG。そして最も分子量が小さく、沸点、凝固点も低いために、極低温に冷却することによって初めて液体になるメタン、エタンなどがLNG、ということになります。著者紹介森島 宏(もりしま ひろし)京都生まれ。京都大学理学部卒、同修士課程、博士課程修了(化学専攻)、同理学博士。75年石油公団に入り、同石油開発技術センター、中東事務所、天然ガス新石油資源室、譛石油開発情報センター(出向)などで勤務。98年日本ガス協会に入り、第22回世界ガス会議東京大会組織委員会に勤務。04年石油天然ガス・金属鉱物資源機構に入り、現在、石油天然ガス調査グループ業務チーム担当調査役。著書に『天然ガス新世紀』(2003年ガスエネルギー新聞刊)がある。趣味は、歴史探訪、スポーツなど。国分寺市在住。2005.11. Vol.39 No.692
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2005/11/20 [ 2005年11月号 ] 森島 宏
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