メキシコ:ガス開発の外資参入を可能とする憲法改正法案を提出
| レポートID | 1006196 |
|---|---|
| 作成日 | 2005-11-20 01:00:00 +0900 |
| 更新日 | 2018-02-16 10:50:18 +0900 |
| 公開フラグ | 1 |
| 媒体 | 石油・天然ガスレビュー 2 |
| 分野 | エネルギー一般探鉱開発 |
| 著者 | |
| 著者直接入力 | 齋藤 晃 |
| 年度 | 2005 |
| Vol | 39 |
| No | 6 |
| ページ数 | |
| 抽出データ | メキシコ:ガス開発の外資参入を可能とする憲法改正法案を提出①9月20日、フォックス大統領は、ガス開発の外資参入を可能とするといった憲法改正法案(エネルギー改革法案)を提出した。仮に法案が成立した場合、過去約70年間、炭化水素資源の外資保有を禁じてきたメキシコのエネルギー開発に、「風穴」を空ける可能性がある。米国のハリケーンの影響で、米国からの輸入ガス価格の高騰がドライビングフォースとなっている面もある。②PEMEXの発表によれば、民間開放は天然ガスの確認埋蔵量約15TCFのうち、約2TCFとなる見込みである。メキシコ議会の発表では、外資の役割は補完的であるとしており、外資の参入は限定的なものとなる可能性もある。また反対派の動きが強く、法案成立には紆余曲折が予想される。③フォックス大統領は、ガス政策について世論に訴えるには、ガス価格が高騰している現在が、法案成立への絶好のタイミングであると考えている。もし法案成立となれば、ポイントとなる石油開発の外資参入へと進展する可能性がある。ただし、将来の問題解決(外資導入)への道筋を示すところまでが、現政権の限界ではないかとの指摘する声が多い。④9月末、新エネルギー大臣にFernando Canalesが任命されたが、エネルギー政策の大勢にあまり影響はなさそうである。またPEMEXの海外での上流開発のみならず、将来の外資導入を見据えた外資との交流の動きが加速している。(注)このレポートは、10月上旬までの情報に基づいて作成されている。9月20日、フォックス大統領は、ガス開発への外資参入を可能とする憲法改正法案(エネルギー改革法案)を提出した。仮に法案が成立した場合、約70年間、炭化水素資源の外資保有を禁じてきたメキシコのエネルギー開発に、「風穴」を空ける可能性がある。なお、メキシコのガス確認埋蔵量は約15TCFであるが(石油:約148億バレル[BP統計2005])、昨年8月PEMEXが原油換算540億バレルの炭化水素資源の発見を発表したように、ポテンシャルは高いものと推定されている。メキシコは世界第5位の石油生産国であり、約180万b/dを輸出する石油輸出大国であるが、天然ガスにおいては、消費の約2割を米国から輸入する純輸入国である。今回の動向では、このようなガス開発の改革の動きと背景について、簡単に記載する。●非随伴ガスの開発・生産の外資への開放か9月12日、フォックス大統領はメキシコガス開発について、民間参入を可能にするための憲法改正を提案した。これは、従来のようなブルゴス盆地でのMSC(後述)とは異なり、資源所有権の移転を含むことから、企業にとって画期的なものである。前述したように、9月20日にはさらに、フォックス大統領はガス開発の民間開放を可能にするための憲法改正法案を議会へ提出した(炭化水素資源の民間保有を禁じる憲法27条の改正)。対象は天然ガスの探鉱・生産・貯蔵・老朽化パイプライン等のインフラ※1である。なぜこの時期に、天然ガスの探鉱・生産を中心とする憲法改正法案(エネルギー改革法案)が提出されたのか? その一つの理由は、9月に米国を襲ったハリケーン、カトリーナとリタの影響によって米国からの天然ガス輸入価格が高騰したことによる。9月中旬には、米国からの輸入天然ガス価格は11ドル/MMBtu超(10月上旬現在、約14ドル/MMBtu)となっている。現在、メキシコの天然ガス消費の約2割を米国からの輸入に依存しており、国内ガス田の探鉱・生産は、米国からの輸入依存脱却のための喫緊の課題となっている状況がある。なお、フォックス大統領は、9月15日にはメキシコ国内における天然ガス販売参考価格を7.65ドル/MMBtuとすることを*1:近年メキシコでは、老朽化したパイプラインのために、ガス漏れ・ガス爆発事故等が相次いでいる(05年7月までの18カ月に700の漏出事故が発生したとの情報もある)。PEMEXのコルソ総裁は、インフラ整備に05年?08年に121億ドルの投資必要とも述べている。2005.11. Vol.39 No.698ュ表した。この決定によって、05年年末までのPEMEXの補助金負担の増加額は5.15億ドルに達すると見られている(IOD, 9/15)。この決定は、フォックス大統領や政権与党PAN(国民行動党)の国民感情に配慮した人気取り政策であるとも見られている。一方、フォックス大統領がガス部門のエネルギー改革を進める好機と見ていると述べる専門家も多い。ガス価格高騰に対処するには、国内ガス開発の進展が不可欠であり、そのためには外資を含めた民間への開放が必要であるというロジックである。ただし、法案成立には3分の2の賛成が必要である。PRI(制度的革命党)の動向もポイントである。ルロス・モラレス・ヒルも同様の発言を行っている)。なお、メキシコ議会のウェブサイトでの発表(9/22)によると、ガス開発・生産における外資の投資は、あくまで補完的であると発表している。またコンセッションについては、入札を経て最長30年まで付与可能であると述べている。なお、コンセッションは、基本的にメキシコ企業に付与するため、外資はメキシコ企業に一部参画する形となりそうである。また政府が、市場安定確保のため、生産枠を課す権限を持つことも予定されている。仮に自給率達成の場合、メキシコ国外への輸出も可能であるとしている。●MSC方式現在、ガスの開発はMSC(MultipleService Contract、法的に外資への資源所有権の移転を伴わないメキシコ独自の包括的サービス契約)という請負契約の形で、一部外資に開放されている。しかし、MSC方式では、メジャー等から大きな投資が行なわれなかったという事情もあり、ガス資源所有権の移転を含む方式の導入が急がれている。とはいえ、MSC方式でさえ違憲とする裁判訴訟がおきているため、MSCは本年6月より実質上停止状態にあると言われている。●PEMEX発表内容フォックス大統領の提案を受けて、PEMEXのラミレス・コルソ総裁が、メキシコの非随伴ガスの確認埋蔵量約15TCFのうち約2TCFを民間に解放し、将来入札を行う予定との報道がされた。もし実現可能であるならば、米国からの天然ガス輸入の抑制に大きな効果があるとしている。対象地域としては、メキシコ北部に関してはNuevo Leon、Tamaulipas、Coahuilaの各州(Ricos盆地とMonclova盆地等も含む)、メキシコ南東部に関してはTabasco、Veracruzの各州が想定されている(PEMEX探鉱/生産部門の社長であるカ●フォックス政権下での成立は困難か国会が憲法改正に合意し、仮にガス開発・生産の民間への開放が進展すれば、メキシコにとっても税収や投資が増え、将来的にはガス価格が低下するという好循環となるメリットがあると思われる。ただ、憲法改正実現には反対派の壁が厚く、懐疑的に見る向きも多い。任期満了間近のフォックス大統領にとって、「lastbig reform」であるとする見方もある。しかし、憲法改正について世論に訴えるには、ガス価格が高騰している現在が、絶好のタイミングであるのは確かである。今回、フォックス大統領が提示した非随伴ガスの開発・生産の民間開放は、①ポイントとなる石油開発に対する外資参入の布石(憲法改正要)、②MSC自体が違憲という議論を払拭させること等につながるものと思われる。ヒューストンのコンサルタント、ジョージ・ベーカー氏は、「フォックス政権下での変革は難しいが、問題を広く認識させる意味で将来につながる」と述べている(IOD, 9/29)。このように、将来の問題解決(外資導入)への道筋を示すところまでが、現政権の限界ではないかと指摘する声が多い。一方で、現在のガス価格の高騰以外に、油価の高騰や、今後カンタレルの減退が予想以上に進むと、石油開発も含めて外資導入が進む可能性も否定できない。今後の動向が注目される。●最近の動向?Fernando Elizondoエネルギー大臣辞任?9月26日、エネルギー大臣のFernandoElizondo氏が辞任を発表した。理由は、上院議会の選挙に出馬のためである。新エネルギー大臣には、Fernando Canales氏(前経済大臣)が就任することとなった。フォックス大統領就任以来、約5年間で4人目のエネルギー大臣就任である。最近のエネルギー改革の動きに水を差すという見方がある一方で、エネルギー大臣の権限は弱く、大勢への影響は軽微であるとの見方も多い(PEMEXの権限は大きいが)。なお、新大臣のFernando Canales氏は、97年?03年までNuevoLeon州知事を務めた後、03年から経済大臣に就任していた。Fernando Canales氏は9月30日、新大臣の抱負として①エネルギーの国内供給の確保、②国有会社の採算性の改善(PEMEX CFE[メキシコ電力公社]等)、③民間参入を可能とするための憲法改正等について努力する旨を語っている。また、米国以外からのガス輸入を促進させるため、太平洋岸のLNG受入基地の建設を出来るだけ早急に進展させるとの発言も注目される。近々、PEMEXやCFE等の幹部とも会合を持つとも述べている。今後の動きを注視していく必要があるが、エネルギー政策が大きく変化する可能性は低いものと思われる。●最近の動向?PEMEX、海外上流進出への動き加速??9月下旬、メキシコ地元紙ウニベルサルは、メキシコがガス供給確保のため、ペルー・ボリビア・豪州・カタール等のガス上流へ関与する可能性を伝えた。候補先として、ペルーのカミセアの名前も挙がっていた(カミセアのガスに関しては、ペルー太平洋岸のPampa Melchorita99石油・天然ガスレビュー99ナLNGへ液化後、メキシコManzanillo(マンサニヨ)に輸送する計画がある)。石油開発に関しても、米国のメキシコ湾沖において、シェルとJ/Vを組成するという動きもあり(Great White油田が想定されている)、PEMEXはメキシコ国外での開発促進を図る予定である。前エネルギー大臣のFernando Elizondo氏も、5月にロイターに「厳格なメキシコ法規制を避け、増産を図るには、国外での投資機会を検討する余地がある」と語っている(参照:JOGMEC石油・天然ガス資源情報05年9月「岐路に立つメキシコ石油開発」)。ガス開発に関しても、投資機会が制限されているメキシコ国内ではなく、国外で進展する可能性がある。出所:CFE図1メキシコの天然ガスバランス図2探鉱ポテンシャルエリア他方、メキシコ国内の開発において、海外の協力を得る努力も続けられている。最近ではロシアとの関係においても進展があったようである。9月22日には、ロシアのラブロフ外相とPEMEX幹部が、天然ガス生産に関して共同投資を行うことを協議した。なお、本年6月のフォックス大統領のロシア訪問時には、エネルギー全般の協力関係を構築するMOUが締結されている(発電、深海掘削技術、製油所の近代化等)。フォックス大統領は特に、メキシコの今後の油ガス開発にロシアが保有する深部掘削技術が必要であると述べている。また、ロシアとメキシコの間では、LNG関係での進展が見られる。本年6月、モスクワでフォックス大統領は、ロシアから20年以上にわたりLNGを購入することで一次合意(preliminaryagreement)済みである。メキシコ湾ではキャメロン・ポートアーサーなどで計画がある。ガスプロムと大手ユーティリティ企業のセンプラ(メキシコ・バハカリフォルニア州にCosta Azul基地の建設を進める)が、北米での事業を共同で進めることでMOUを締結済みである。またフォックス大統領は9月末、カナダを訪問し、メキシコエネルギー部門への投資を呼びかけている(約30人の経済人が同行したと伝えられる)。メキシコ国内におけるパイプライン事故の多発を背景に、カナダの保有する石油パイプラインのメンテナンス技術、環境技術等にも関心があると述べている。(参考)メキシコの天然ガス事情メキシコの天然ガス需要は、今後急増すると予測されており、2013年までに年率約5.8%ずつ伸びると見込まれている。特に発電用の伸びは、環境対策、効率性等の理由で急速に伸びる(約10%)と見込まれている。一方、国内生産の伸びは年率2.5%程度にとどまると予測されてい2005.11. Vol.39 No.6100驕i図1参照)。現在、メキシコは米国からガスを輸入しているが、今後急速に伸長する天然ガス需要に対応するため、LNG輸入が必須となっている。国内生産に関してはMSC(Multiple Service Contract)契約という、法的に外資への資源所有権の移転を伴わない形で外資の参入も一部図られている(ブルゴス盆地等)が、法律改正をして外資の参入を図らない限り、根本的な解決は不可能である。現在、ガス生産はブルゴス盆地、カンタレル、Muspac等が中心である。本年9月前半の天然ガス平均生産量は4.94bcf/dとなっており、非随伴ガスの生産が増加している。生産地の構成として、ブルゴス盆地を含む北部地域で、メキシコ全生産量の約37%を占めている。その他の構成比は、カンタレル等カンペチェ地域で約3割、南部地域で3割となっている。ポテンシャルとして、ブルゴス・Sabinas・Veracruz・Macsupana・Lankahuasa等の開発が期待されている(図2・3参照)。一方LNG受入基地だが、現在建設中のLNG受入基地は2つある。メキシコ北東部・メキシコ湾岸のAltamira基地(2006年稼動予定、570万トン/年、Shell 50%/Total 25%/三井物産25%)と、メキシコ北西部の米国カリフォルニア州国境に近いCosta Azul基地(Baja California州、2008年稼動予定、760万トン/年、Shell50%/Sempra 50%)である。その他計画中のLNG受入基地として、メキシコ西部・中央部に供給する予定のLazaroCardenasやManzanilloのプロジェクト等がある。今後、国内ガス生産の推移によっては、有数のLNG輸入大国となる可能性がある。ただし、LNG受入基地の実現にあたっては、住民反対運動の動向を注視する必要がある。(齋藤 晃)101石油・天然ガスレビュー101E&P ProjectsReserves developmentProjectOilGasreserves(1)(MMb)reserves(1)(MMMcf)Peakproduction(Mboed)1.-2.-3.-4.-5.-6.-BurgosCLM(2)LankahuasaVeracruzIxtal-ManikYaxche-928-151511218,4984,1643,1611,20217447Secondary / Enhanced recovery39738679966341Year200920072016200720082008OffshoreOnshoreProjectOil reserves(1)Gas reserves(1)(MMb)(MMMcf)InjectionCantarellKu-Maloob-ZaapChicontepec7.-8.-9.-10.-Berm?dez11.-JujoTecominoac・n12.-Abkat?n PolChuc(1)(2)(3)Proved and probable reservesCrudoLigeroMarinoThe project reached a higher peak in previous years6,8664,0533,5811,9246993242,5081,5574,0292,796735279N2N2H2ON2N2Under study193462128711105Peakproduction(Mboed)2,170833230668110184Year20052010201120062008(3)2005(3)16DCF-A /August 19, 2005出所:PEMEX図3PEMEX E&Pプロジェクト概要TijuanaCosta AzulGNL Mar AdentroPuerto LibertadTopolobampoDorado HiLoad LNGAltamira建設中 計画 中止 0 200 400 kmManzanilloLazaro Cardenas図4主要メキシコLNGプロジェクト地図メキシコ湾太平洋岸表1(参考)メキシコの主なLNG受入基地プロジェクトAltamiraCosta AzulGNL Mar AdentroPuerto LibertadLazaro CardenasMananillo現況建設中建設中計画中計画中計画中計画中稼動開始(予定)受入能力(万トン/年)参加企業200620082007200820082009570760570990330380Shell, Total, 三井物産Sempra, ShellChevronTexacoDKRW EnergyRepsol YPFCFE(メキシコ電力公社)※Topolobampoにも計画がある(0.5bcf/d[LNG換算約380万トン/年])※メキシコ湾沖合にも計画がある(Tamaulipas沖[Dorado HiLoad LNG]) |
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