ページ番号1006207 更新日 平成30年2月16日

中国、インド:初の協調への試み、シリア石油資産の共同入札

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レポートID 1006207
作成日 2006-01-20 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 探鉱開発
著者 猪原 渉
著者直接入力 坂本 茂樹
年度 2006
Vol 40
No 1
ページ数
抽出データ 中国、インド:初の協調への試み、シリア石油資産の共同入札中国国有石油企業のCNPC(China National Petroleum Corporation)とインド国有石油企業のONGC(Oil and Natural Gas Corporation)が、共同で石油資産買収を実施する。対象資産は、シリアの石油会社AFPC(Al-Furat Petroleum Company)のペトロカナダ(Petro-Canada)社持ち分、17パーセントである。両国企業は、石油ガス資産の国際入札で頻繁に競合を繰り返しているが、政府レベルではエネルギー分野の協力関係の模索が行なわれてきた。今回の共同入札は両国企業にとって初めてのケースであり、将来のエネルギー分野の協力関係構築に対する一つの突破口になるものと考えられる。しかし、今回対象となるシリアの資産は、資産価値の魅力に乏しく、シリアが抱える政治リスクもある。このため、両企業は、リスク分散と価格安定化のために、優先順位の低い案件として共同入札に合意したものと推測される。両国の石油ガス需要が今後ますます拡大することは確実であり、今後も共同入札が検討される機会はあろうが、まずは自国の資産獲得を優先させるものと考えられる。1.中国CNPCとインドONGCが共同で資産買収を実施2005年11月CNPCとONGCが、共同でシリアの石油会社AFPCの権益買収に乗り出すことが明らかになった。両企業は、AFPCのペトロカナダ持ち分(17パーセント)について、共同で応札を行った。これに関し、ペトロカナダは2005年12月20日、AFPCの自社権益について、CNPCとONGCのジョイントベンチャーに約5億7,400万ドルで売却すると発表した。今後、シリア政府の承認手続きが完了すれば、2005年7月1日に遡及して売却が実施される。2.対象資産:シリアAFPC社のペトロカナダ持ち分(17パーセント)ペトロカナダによると、AFPC対象油田の2005年上半期同社取得分は、ネット77石油・天然ガスレビュー772.2万バレル/日(ロイヤリティ支払い前7.2万バレル/日)である。シリア石油業界筋によると、ペトロカナダの売却希望金額8億ドル程度に対し、当初の応札金額は5.5億ドル以下と大きな開きがあった。このため、CNPCとONGCは共同応札に踏み切り、応札金額の引き上げが実現したものとみられる。ただし、2社以外にも応札企業があるとみられ(クウェート石油公社(KPC:Kuwait Petroleum Corporation)の海外事業子会社クフペック(Kufpec)やロシア企業等の応札が取り沙汰された)、AFPCの参加企業ロイヤルダッチシェル(RD/Shell)が先買権を行使する可能性もあったため、中印企業による共同買収が実現するかどうか不透明とする見方も一部にあった。ナダ(17パーセント)が参加する共同操業会社である。シリア北東部の自社鉱区(33油田、220坑井)で石油と天然ガスの生産を行っている。2005年の石油生産見込みは約18万バレル/日と、シリア石油生産の4割程度を占めるが(表1参照)、生産量はピーク時(45万バレル/日)から大きく落ち込み、前年の2004年(21.3万バレル/日)比でも約15パーセント減少している。さらに、2006年の生産目標が15.3万バレル/日に設定される(シェルシリアのジェネラルマネージャー、ケイル(Kheil)氏のコメント)など、急激な生産減退に直面している。ペトロカナダとしては、ポートフォリオの改善を図るため、今後も収益性悪化が予想されるAFPCの権益売却を検討してきたものとみられる。AFPCは、1985年に設立され、現在は、シリア国営のSPC(Syrian PetroleumCompany、50パーセント)とロイヤルダッチシェル(33パーセント)、ペトロカなお、AFPC事業に係る生産分与(PS)契約は対象鉱区別に3件締結されており、ペトロカナダ権益比率は33?38パーセント(シェル権益比率は62?67パーセント)\1シリアの2005年石油生産見通し(会社別内訳)会 社生産量(千バレル/日)備 考SPC単独操業鉱区分出資比率:SPC(50%)、シェル(33%)、ペトロカナダ(17%)出資比率:SPC(50%)、トタール(50%)コンデンセート1931803517425SPCAFPCディールエズール・ペトロリアム(Deir ez-Zour Petroleum)インテグレーテッド・ガスプロジェクト(Integrated Gas Project)合計出所:SPC、World Petroleum Argus(2005/11/21)の範囲となっている。主な生産油田(アルタイエム(Al-Thayyem)、オマル(Omar)、アルイズバ(Al-Izba)、マレエ(Maleh)、シジャン(Sijan)等)はいずれも成熟油田で生産減退が顕著となっているため、AFPCは原油増進回収法(EOR)の強化等により生産量の維持を図ってきた。さらに2003年7月、シェルとペトロカナダは、シリア側と「Deep and Lateral」契約を締結した。これにより、既存油田の深部および周縁部(従来のPS契約の生産対象外)について掘削・生産が可能となり、生産減退分の一部がカバーされると期待されている。しかし、ピーク時でも2?3万バレル/日程度と見込まれる同契約による増産だけでは「油田寿命が5年程度延長されるに過ぎない」とする専門家の厳しい見方もある。また、シリアはレバノン元首相ハリーリ氏暗殺事件への関与が指摘され、米国を中心とする国際社会から制裁圧力が強まっている。ペトロカナダの権益売却の動きの背景には、このようなシリアの政治的リスクの高まりがあるとの見方がある。しかし同社は、AFPC以外では、一定のポテンシャルが期待できるシリアの他の探鉱鉱区(ブロック2)について権益を引き続き保持する方針であり、そのような見方を否定している。3.中国、インド企業の海外資産取得の経緯中国、インドは、それぞれ約13億、10億人の人口を抱える大国である。またそれぞれ1980年代および1990年代に経済の自由化・開放化に政策転換してから高い経済成長を続けており、将来は最も大きなエネルギー需要が見込まれる地域である。ともに産油国であるが、旺盛な国内エネルギー需要を国内生産分で賄うことができずに、両国とも原油の輸入依存度がますます高まりつつある。当然ながら両国は、海外におけるエネルギー資産獲得に乗り出している。中国は1990年代後半から、有力国有石油企業のCNPC、シノペック(Sinopec)とCNOOCが海外における資産買収活動を活発に展開し、既にインドネシア、アフリカ等に一定規模の生産資産を保有して生産を行っている(2004年の海外生産量:約40万バレル石油換算/日)。一方、インドは国有企業ONGCが、中国にやや遅れて2000年以降、海外資産取得を活発化させた。しかし、まだ生産資産は3件にとどまり(ベトナム、スーダン、サハリン)、2004年の海外生産は約9万バレル石油換算/日であった。インドの海外資産・鉱区権益取得活動がとみに顕著となった2004年以降、両国の企業がエネルギー資産の国際入札で競合するケースが頻発しているが、いずれ2006.1. Vol.40 No.178(cid:17027)(cid:17062)(cid:17006)(cid:15000)(cid:15005)(cid:15015)(cid:15002)(cid:13046)(cid:3481)(cid:17010)(cid:17061)(cid:16989)(cid:4094)(cid:2587)(cid:7567)(cid:17070)(cid:17033)(cid:17035)(cid:17063)(cid:17019)(cid:17049)(cid:17012)(cid:16998)(cid:17012)(cid:16991)(cid:17060)(cid:17002)(cid:17059)(cid:17062)(cid:17019)(cid:17070)(cid:17008)(cid:16993)(cid:17011)(cid:16989)(cid:17060)(cid:17038)(cid:16989)図1AFPCの保有鉱区位置図\2インド・中国企業が競合した資産買収事例対象資産取得企業経緯時期2004年4月アンゴラ沖合第18鉱区シノペック/ソナンゴル(Sonangol)の共同事業会社2005年8月ペトロカザフスタン(Petrokazakhstan、カナダ企業)CNPC2005年9月エンカナ(EnCana)のエクアドルにおける石油およびパイプライン資産CNPC系のアンデスペトロリアム(Andes Petroleum)2004年4月にONGCがシェル(50%)の権益を購入することでいったん合意が成立した。しかしアンゴラ国営石油会社ソナンゴルが先買権を行使してシェルの権益を購入し、その後シノペックと設立した共同事業会社に、この資産権益を移転させた。中国側の対アンゴラ投資条件がインドの提案を大きく上回っていた。ペトロカザフスタンの会社買収につき、ONGC、シノペック、CNPCが応札してONGCが最高額を提示した。しかしCNPCがONGCの提示額を上回る41.8億ドルを再提示してペトロカザフスタンがこれを受けた。エンカナはエクアドルの石油およびパイプライン資産を中国系合弁企業のアンデスペトロリアムに14.2億ドルで売却。ONGCも興味を示していたが、本案件は問題が多いとして結局断念した。(出所)各種情報・データも中国企業が入札に競り勝っている。インド企業(ONGC)がエネルギー資産の国際入札で中国企業(CNPC、シノペック)と競った主要事例を、表2に事例を挙げる。インド企業が国際入札で中国企業に敗退してきた理由として、エネルギー需要規模の違い(2004年の中国の石油ガス需要はインドの2.4倍)から生じるエネルギー確保の切実さ、政治体制の違いから来る取り組みの差異(中国は一党独裁制のトップダウン型、インドは官民合意形成の民主型)等が考えられる。しかし直接の原因としてはインドONGCと中国企業、特にCNPC(上場企業はペトロチャイナ(PetroChina))との企業規模と資金力の違いによる影響が大きい。CNPCはONGCの約2.5倍の原油・ガスを生産し(2004年)、製造業に特化した中国市場(インドの約3倍の経済規模)を、他の国有企業とともに独占して利益を上げている。その資金力は大きく、メジャーズに準じる位置にある(図2、3を参照)。インド政府は、インド企業がエネルギー資源を巡る国際入札において中国企業79石油・天然ガスレビュー79千バレル石油換算/日450040003500300025002000150010005000エクソンモービル(出所)各社年報他BPペトロチャイナシノペックCNOOCONGC図2メジャーと中国・インド企業の原油・ガス生産量比較(2004年(度))300002500020000150001000050000億円エクソンモービルBPペトロチャイナシノペックCNOOCONGC(出所)各社年報他図3メジャーと中国・インド企業の純利益額比較(2004年(度))ノ敗退するケースが多いことに鑑みて、いくつかの方策を検討した。一つは、強力な資金力とを競争力を持つ上流企業を誕生させるために、国有の石油ガス企業を統合させる案であったが、企業統合は人員削減につながるため、強力な労働組合の抵抗等にあって断念したものと見られる。もう一つは、エネルギー大消費国同士のインドと中国企業が、石油ガス資産の国際入札で競合して応札価格を競り上げるのではなく、協調体制を築いて共同入札・取得をしようとするアイデアである。インドのアイヤル石油天然ガス相(以下、石油相)は、熱心な両国間の協調体制推進派である。同石油相は、省内のタルミズ・アハメド(Talmiz Ahmed)補佐官を特使として中国との交渉に当たらせていたが、このたび両国は合意に至り、2006年1月に共同入札協定を含む包括的なエネルギー協力の覚書を締結する運びとなった。今回のシリア資産の共同入札は、この「エネルギー協力の覚書」締結に先立って、CNPCおよびONGC間で実施されることになったものである。4.中国、インド企業のシリア資産共同入札の意味合い中国、インド企業が石油ガス事業に共同参加している事例として、CNPCとONGCがともに共同操業体制下のパートナーとなっているスーダンGNPOC(Greater Nile Petroleum Operating Company)事業(原油生産中)が挙げられる。また、ONGCが2004年12月にファームインした象牙海岸CI-112探鉱鉱区に、ノン・オペレーターとしてシノペックが参加している。既存事業でパートナーとなっている事例が少ない一方で、両国企業はこの数年来頻繁に国際入札で競合してきた。今回両国企業が共同入札するのは初めてのケースであり、エネルギー分野での協調関係を模索してきた両国政府関係者の試みが実現するという観点からは、重要な第一歩であると考えられる。しかしながら現時点では、今後も両国の共同入札が継続的に行なわれるかどうかは断定できない。一つには、両国のエネルギー需給が今後ますます逼迫すると予想される中で、協調というより、まずは自国への供給が優先されるケースが多いと推測されるためである。また、実際に入札に参加する個々の企業の、その時々のミクロの事情は、国家レベルのマクロの要請とは異なる局面が多いものと考えられる。したがって、双方の企業の立場・方針が一致するケースは自ずと限定されてくるものと推測される。今回、両国の共同入札が検討されるシリア資産は、①2005年上半期のネット取得量が2.2万バレル/日で、今後生産減退が進展する魅力の乏しい資産であり、②国際政治上、欧米と対立するシリアの政治リスクをも考慮せねばならない、比較的価値が低い資産であるため、入札のリスク分散や買収コストの引き下げを狙って共同入札に踏み切ったものと考えられる。今後、価値の高い資産の入札を巡って、両国企業が資産評価・戦略を調整して共同入札を頻繁に行うのは難しいものと推察される。しかしながら、今回の共同入札検討は、両国間のエネルギー協力関係構築の観点から見て、重要な第一歩であることには間違いない。(坂本茂樹/猪原渉)2006.1. Vol.40 No.180
地域1 中東
国1 シリア
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国・地域 中東,シリアアジア,インドアジア,中国
2006/01/20 [ 2006年01月号 ] 猪原 渉 坂本 茂樹
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