ページ番号1006209 更新日 平成30年2月16日

将来の世界の石油供給を左右するチャベス大統領 ~資源ナショナリズム、反米政策、多角化する国際関係の中で展開を読む~

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レポートID 1006209
作成日 2006-03-20 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 探鉱開発
著者 舩木 弥和子
著者直接入力 佐藤 隆一
年度 2006
Vol 40
No 2
ページ数
抽出データ JOGMEC ヒューストン事務所sato-ryuichi@jogmec.go.jp佐藤 隆一JOGMEC 石油・天然ガス調査グループfunaki-miwako@jogmec.go.jp舩木弥和子アナリシス将来の世界の石油供給を左右するチャベス大統領?資源ナショナリズム、反米政策、多角化する国際関係の中で展開を読む?1999年のチャベス政権発足以降、ベネズエラはOPECにおける行動を一変させて協調減産を呼びかけ、OPECの復権と高油価への道筋をつけた。一方、ベネズエラは世界最大規模の石油ポテンシャルを持つが、国内では資源ナショナリズムと社会主義的政策により外資の開発投資の大幅スローダウンを招き、本来大幅増加するはずの石油生産量が伸び悩みを見せている。また、チャベス大統領は石油の政治利用(反米、親中南米/中国他)を進め、国際政治緊張化を導き、将来の石油市場需給逼迫への懸念材料の一つとなっている。すなわち、これらの事実から、現在および将来の世界の石油供給は、中東湾岸、ロシアとともに、ベネズエラが運命を握っていると言っても過言ではない状況にある。本稿では、チャベス政権の政治的背景を押さえつつ、ベネズエラにおける石油資源の生産・開発動向をまとめ、今後の見通しについて考察する。なお、本稿は2006年1月31日時点での情報に基づいてまとめたものであり、その後の情勢変化は反映されていない点にご留意いただきたい。また、本稿は第1章を佐藤、第2、3章を舩木が担当し、第4章および第5章は共同でまとめた。生産量累計生産量ピーク生産量:370万バレル/日累計生産量(億バレル)600500400300200100 0年20001995199019851980197519701965196019551950194519401935193019251920原油生産量(万バレル/日)400350300250200150100500出所:OPEC資料より作成図1ベネズエラの石油生産量および累計生産量1.ベネズエラの石油資源と外資参入状況盧 ベネズエラの石油資源ベネズエラにおける石油の開発史は、1914年のシェルによるマラカイボ湖北東岸のメネグランデ油田(ベネズエラ最初の商業油田)の発見にはじまる。OPEC資料によると、石油生産量は1917年の3,000バレル/日から、1930年に37万バレル/日、1950年に150万バレル/日と増大し、1970年には370万バレル/日のピークを記録した(図1)。その後、資源国有化やOPECによる減産の影響を受け、1970年代後半からは150?300万バレル/日を下回るレベルで推移し、現在では実質260万バレル/日程度(国営石油会社PDVSA〈Petroleos de Venezuela S.A〉は2004年に310万バレル/日へ回復したとの発表)と推定されている。操業サービス契約(Operating ServiceAgreement)の民間石油会社から約60万バレル/日、オリノコベルト(後述)での戦略的提携(Strategic Association)プロジェクトから合成原油約57万バレル/日が生産されている。埋蔵量1兆2,000億バレルが存在し、そのうち技術的に採取可能な分(回収率約20%)が2,350億バレルに達すると推定されている。仮に、これが近い将来、可採埋蔵量に組み入れられるとすると、ベネズエラの在来型原油の約770億バレルと合わせて3,120億バレルとなり、サウジアラビアを抜いてベネズエラが世界第1位の埋蔵量を誇ることになる(図2)。現在のベネズエラにおける原油生産量の約3分の1は、1992年以降の開放政策で参入した外資などの民間石油会社からの生産である。2004年の統計では、一方、ベネズエラの探鉱・開発により確認されている残存可採埋蔵量は、約770億バレルである。さらに、オリノコベルトには、超重質油として原始13石油・天然ガスレビュー繼Lのような、膨大な石油・天然ガス資源を産する堆積盆地は、大きく分けて①西部の「マラカイボ堆積盆地」、②中央部から東部にかけての「東ベネズエラ堆積盆地」、③南部の「バリナス堆積盆地」、④北部のファルコン堆積盆地をはじめとする「カリブ海沖合の堆積盆地」が存在する。ベネズエラの石油資源の大部分は、マラカイボ堆積盆地と東ベネズエラ盆地に存在し、バリナス堆積盆地は相対的に小さく、カリブ海沖合はガスの探鉱で注目されている。以下に堆積盆地毎に、生産量、埋蔵量、探鉱ポテンシャル、今後の開発計画を紹介する。①マラカイボ堆積盆地マラカイボ堆積盆地は、同国最大の累計生産量(120億バレル以上)を誇る巨大油田ティアフアナ油田を筆頭に、マラカイボ湖北東部には巨大油田が多数存在する(図3、4)。これら巨大油田の多くは、1920年代から30年代に発見された古い油田である。堆積盆地全体の累計生産量は約400億バレルと膨大であるが、残存可採埋蔵量は約220億バレルと累計生産量の約半分となっている(図6)。随伴ガスが生産天然ガスの主体となっており、可採埋蔵量は32兆立方フィートである。貯留岩は、第三紀前期の始新世(Eocene)の砂岩で、主に重質油を産する。探鉱ポテンシャルは、PDVSAによると原油の未発見埋蔵量(Un-discovered Resources)が160億バレル、天然ガスの未発見埋蔵量が33兆立方フィートと推定されており(図7)、今後は深部探鉱および油田と断層で境される地域の探鉱が対象となると考えられる。マラカイボ堆積盆地においては、比較的老朽化した油田を対象に、主に操業サービス契約の形で外資導入が図られている。今後、もし適切に投資がなされない場合は、生産量が減退すると埋蔵量(億バレル)8,0007,0006,0005,0004,0003,0002,0001,00006,7606,7606,760その他イラン(900)U.A.E(920)クウェート(940)イラク(1,130)サウジ(2,610)3,120オリノコベルト(重質油)770750710中東ベネズエラアフリカアナリシス490440ロシアアジア190欧州出所:PDVSAより作成図2ベネズエラを含む世界の埋蔵量*米州*ベネズエラ、 カナダを除くテテティティアィアフア アフアナナア 油田油A’トトトモモモトモトモトモポポポポポモポモポモポロロロロロポポポポポポポ田田油田油田油田油油油Aマラマラカラカイカイボイボ堆積盆地積ジュカルジュカルジュカルプラセルガス田プラセルガス田プラセルガス田カリカブリブ海沖合堆積盆地ブマママリリリマママスススリスリスリスカカカスカスカスカルルルルルルスススルルル クククスクスクスクレレレレレクククコココロロロロロロロコココ コココココココロロロロロロロ ロロロロロコココココ 油油油油油油ガガガガガ油油油 スススガスガスガス田田田田田田田BBフフフリリリフフフアアアアアアルルルルルアアア 油田油田油油油油油田オオオオオフフフフフフフフフフフオフオフオフオフオフィィィィィィィィィフィフィフィフィフィシシシシシシシィシィシィシィシィシナナナナナナナシナシナシナシナシナ油田油田油油油田油田油油油油油油田田油田デデデデルルルデデデ タル ナタナプラプ ッッラットットッフフフトフォフォフフーォームームバリバ ナナスナ 堆積盆地堆グググググアアアグググ フフフアアア ィィィフィフィフィタタタィタィタィタ油田油田油田油油油オオオオリリリリオオオオ ノノノノリノリノリノリノココココベベベベルルルルベベベベ トトトトルルルル堆積盆地東ベベ東ベネネベネベネズズネズネズエズエララエララ堆積盆地ラ堆ラ堆B’010050km出所:James, 1990より作成図3ベネズエラの油ガス田位置図西岸マラカイボ湖東岸A’漸新統-現世始新統白亜系図4マラカイボ堆積盆地の模式断面図漸新統A深度(フィート)0’10,000’20,000’出所:James, 1990より作成(フ(フ010,0020,0030,00出所:James, 1990より作成図5東ベネズエラ堆積盆地の模式断面図2006.3. Vol.40 No.214ォ来の世界の石油供給を左右するチャベス大統領 ?資源ナショナリズム、反米政策、多角化する国際関係の中で展開を読む?推定される地域である。一方、大きな増産計画がある有望油田はPDVSAが依然保有しており、トモポロ油田では現在の11万6,000バレル/日から2008年に25万バレル/日へ、ティアフアナ油田では現在の31万2,000バレル/日から2012年に52万7,000バレル/日への増産計画がある。010050km2232マラマ カイボボ堆積盆地地カリブ海カカカリカ ブ海沖合堆積盆地積盆地0.1454108東ベネベ ズエズ ラエ 堆積盆地堆2方フ方 ィフ ート)ガスガ (Tcf:cf兆立兆原油 (Bbbl;10億バレバ ルレル)0000444デルルデルタタタル ナナプラプ ッラ トトッフフトフトフォォォフフフ ームムム原油確認埋蔵量量量: 780億億億億0億0億バババレレレバババ ルルルルルレルレルレル    原油確認埋蔵量原油確認埋蔵量方方方フフフ方方方 ィィィフフフーーートトトトーー確認埋蔵量量ガスガスガス確認埋蔵量確認埋蔵量量量量: 148兆立兆立兆兆立8兆兆8兆8兆0バリバ ナナスナス堆積盆地堆出所:PDVSAより作成図6ベネズエラの確認埋蔵量010050kmkカリカ ブ海178ガスガ (Tcf:cf兆立方フ方 ィフ ートー )原油 (Bbbl;10億バレバ ルレ )BBカリリリカカ ブブ海沖合堆積盆地カ海沖合堆積盆地05305051633マラマ カイボ堆積盆地16403132588東ベネベ ズエズ ラエ 堆積盆地6822221311デルルデ タタタル ナプラプ ッラ トッフフトト ォォォフ ームムムプププロロロプププ スススペペペススス クククペペペ トトトククク 数数数原油未発見埋蔵量原油未発見埋蔵量原油未発見埋蔵量ガガガスススガガガ 未発見埋蔵量未発見埋蔵量未発見埋蔵量億億億00 バババレレレバババ ルルルレレレ (((ル推定推定推定)))兆立兆立兆立66方方方フフフ方方方 ィィィフフフーーートトトーー (((推定推定推定)))4634バリバ ナスナ 堆積盆地出所:PDVSAより作成図7ベネズエラの炭化水素ポテンシャル②東ベネズエラ堆積盆地東ベネズエラ堆積盆地では、マラカイボ堆積盆地に続き、1940年以降に探鉱、開発が行われている。当初は南部のオリノコベルトからオフィシナ油田など、中央部にかけての巨大油田が発見され、その後、探鉱技術の進展により北部地域で深部探鉱が行われた(図3、5)。同国で数少ない軽質油を産するフリアル油田は1986年に発見され、それを端緒に盆地北部での深部探鉱が活発化している。累計生産量は約150億バレルとマラカイボ堆積盆地の約400億バレルに比べて小さいが、逆に残存可採埋蔵量は約540億バレルと同国最大規模である(図6)。天然ガスの埋蔵量も108兆立方フィートと最大で、ジュカルプラセルガス田をはじめとする北部や東部沖合のデルタナプラットフォーム海域に、ガス田が分布する。地質的には北部で堆積層厚が厚く、南部に向かって単調に薄くなる盆地形態を示す(図5)。南部のオリノコベルトの重質油は、基盤深度が浅くなる南の縁辺に帯状に分布する。一方、北部のフリアル油田の系列は油層深度が深く、軽質油を産する。また、堆積盆地の北方および東方のデルタナプラットフォーム海域に向かって、生産は石油よりガスが主体となる。方海域にかけての石油の深部探鉱およびガス探鉱が主体となると考えられる。外資導入は、東ベネズエラ堆積盆地の中央部の油田地帯において、主に操業サービス契約の形で図られている(日本企業では帝国石油がイーストグアリコ鉱区、サンビグエレ鉱区にて石油・天然ガスを生産)。一方、南部のオリノコベルトでは、外資との戦略的提携による4プロジェクトから、軽質化された合成原油約57万バレル/日が生産されている。合成原油が18万バレル/日、③コノコフィリップスのペトロスアタプロジェクトでは、API比重19?25°の合成原油が10万4,000バレル/日、④トタールとスタットオイルのシンコールプロジェクトでは、API比重32°の合成原油が18万バレル/日、それぞれ生産されている。さらに、PDVSAは既存鉱区以外でもペトロブラス、CNPC、ONGC、ペトロパース、ガスプロム、ルクオイルおよびレプソルYPFと共同で埋蔵量調査を予定しており、2012年に現在の2倍の120万バレル/日まで生産量を引き上げる計画である。天然ガスについては、東ベネズエラ堆積盆地の北部でトタール等によるジュカルプラセルガス田の開発(2004年に1億立方フィート/日で生産を開始、PDVSAによると、陸域の未発見埋蔵量は原油が250億バレル、天然ガスが88兆立方フィート、東方海域の未発見埋蔵量は油が20億バレル、天然ガスが31兆立方フィートと推定されている(図7)。今後の探鉱は、盆地北部から東図8に示すように、東から順に①エクソンモービルとBPのセロネグロプロジェクトでは、API比重16°超の合成原油が10万5,000バレル/日、②コノコフィリップスとシェブロンのアマカプロジェクトでは、API比重26°の15石油・天然ガスレビュー?益比率ジョイントベンチャーへ変更→PDVSA:51%超PDVSA:51%超PDVSA:51%超?→?→?所得税34%→50%34%→50%34%→50%34%(変更無し)(変更無し)2006.3. Vol.40 No.216将来的に3億立方フィート/日を計画)が行われており、東部沖合のデルタナプラットフォーム海域でもシェブロンがロランガス田、スタットオイルがコキーナガス田の評価を実施している。一方、PS(生産物分与)契約を結んでいるコノコフィリップスは、当初パリア湾のコロコロ油田で2006年より生産を開始する(フェーズ1として5万5,000バレル/日)計画であったが、契約条件の変更およびデルタナプラットフォーム海域のガス開発との関係もあり、投資が進んでいない。③バリナス堆積盆地バリナス堆積盆地の探鉱は主に1980年代以降に行われ、1984年発見のグアフィタ油田をはじめ数億バレル規模の油田が複数分布する。しかし、残存可採埋蔵量は原油20億バレル、ガス1兆立方フィート未満と、埋蔵量規模はベネズエラの堆積盆地の中で最も小さい(図6)。探鉱ポテンシャルについても未発見埋蔵量が原油の30億バレル、天然ガスが4兆立方フィートと、4堆積盆地の中で最も小さい(図7)。外資では唯一、レプソルYPFがバリシンンンシシシ コココンンン ーーールルルシシ権益比益 率(%):PDVSA (38), P トタト ール(47), スタッタ トッ オイオ ルル (15)超重質油生産量:202 万バレバ ルレル//日 API比比重: 8-8.5合成原油生産量:18万バレバ ルレル//日 API比比重: 32: 3°: 8° ペペペトトトペペペ ロロロスススアアアタタタアアア権益比益 率(%):PDVSA (49.9),  コノコフィフ リップップスプ (50.1)超重質油生産量:121 万バレバ ルレル//日 API比比重: 9.3: 9 °合成原油生産量:101万4000バレバ ルレル//日 API比比重: 19-25: 1° P アアアマママアアア カカカマママ権益比益 率(%):PDVSA (30), コノコフィリップス (40), 超重質油生産量:191 万バレバ ルレル//日 API比比重: 8.7: 8 °合成原油生産量:181 万バレバ ルレル//日 API比比重: 26: 2°シェブロン (30) アナリシスセロロロネネネグググググロロロセセ権益比益 率(%):PDVSA (41.67), P エクエ ソク ンソ モン ービル (41.67), BP (16.66)超重質油生産量:121 万バレバ ルレル//日 API比比重: 8.5: 8 °合成原油生産量:101万5,000バレバ ルレル//日 API比比重: 16: 1° ONGCONGCONGCルルルクククルルル オオオイイイイイイイオオオ ルルルルルルCNPCCNPCCNPCレレレプププレプレプレプソソソプププ ルルルルルソルソルソルソルYPF ガガガスススガガガ プププススス ロロロプププ ムムムペペペトトトペペペ ロロロパパパパパパパパパーーーパパパパパ スススースースース出所:PDVSA, EIAより作成図8オリノコベルトの開発ペペペトトトペペペ ロロロブブブラララブブブ スススラスラスラス新規開発予定鉱区フニンニアヤクーチョチカラボボナス盆地の探鉱に参入しており、2004年に数兆立方フィート規模のガス田を発見している。④カリブ海沖合堆積盆地ベネズエラ北方のカリブ海沖合は探鉱密度の非常に低いエリアである。現時点での既発見埋蔵量も原油1億バレル、ガス4兆立方フィートで、最も少ない堆積盆地である(図6)。しかし、探鉱ポテンシャルは東ベネズエラ堆積盆地に次いで2番目に大きく、PDVSAによると未発見埋蔵量は原油が250億バレル、天然ガスが88兆立方フィートと推定されている(図7)。2005年のベネズエラ湾のガス鉱区の入札では、7鉱区が落札(日本企業では帝国石油がペトロブラスと組みモルイ鉱区を落札)され、同海域の未発見埋蔵量27兆立方フィートの天然ガス探表1ベネズエラにおける契約形態:下線は石油産業に対する締め付け政策例契約形態操業サービス契約→ジョイントベンチャー1992、1993、1997に入札実施実施年次主な参加企業ロイヤルティ比率?16.67%→30%1%→16.67%→30%20%シェブロンエニペトロブラスシェル帝国石油コノコフィリップスエクソンモービルコノコフィリップストタールトタールシェブロンスタットオイルペトロブラス帝国石油利益配分契約入札(PS)1996年に入札実施戦略的提携(Strategic Association)1998?2001年に締結天然ガス開発契約(non-associated natural gas project)2001、2003、2005に入札実施出所: IEA World Energy Outlook 2004ォ来の世界の石油供給を左右するチャベス大統領 ?資源ナショナリズム、反米政策、多角化する国際関係の中で展開を読む?鉱がこれから開始される。一方、カリブ海東部沖合のパリアガス田で計画されていたマリスカルスクレLNGプロジェクトについては、国内向けガス供給を優先するという政府方針にのっとり、プロジェクトのスコープが変更された。現在、ベネズエラ/ブラジルの2国間のエネルギー協定に基づき、PDVSAとペトロブラスが対象ガス田開発について共同スタディ中である。盪 ベネズエラの石油産業および外資との契約(表1、詳細は第3章で展開)ベネズエラでは1976年に石油産業が国営化され、油ガス田の操業は国営石油会社PDVSAに委ねられた。しかし、1986年の石油価格の暴落などによるベネズエラの経済問題の解決ため、国際通貨基金(IMF)との政策調整の下、外資を導入する石油開放政策が1992年より施行された。1997年までに3度の操業サービス契約入札(操業サービス契約:油田再生事業として1992、1993、1997年に入札実施)、利益配分契約入札(PS探鉱事業として1996年に入札実施)、オリノコベルトの超重質油開発のための戦略的提携(4プロジェクト)が行われ、石油開放政策は1998年まで積極的に推進された。しかし、1999年のチャベス政権発足以降は、PDVSAの変革および2001年の新炭化水素法導入によって石油産業に対する締め付け政策が採られている。ただし、天然ガスに関しては国内需要増加に対して新ガス法*1を整備し、2001年に陸域のガス開発に係る入札、2003年にデルタナプラットフォームの入札、2005年ベネズエラ湾の探鉱鉱区の入札を実施するなど、積極的に推進している。2.チャベス大統領、その人となりウゴ・ラファエル・チャベス・フリアス大統領は、現在、ベネズエラのすべての政策について最終決定権を握っている。その支配力は強く、エネルギーを含む行政のすべての分野において、チャベス大統領なしでは政府は麻痺しかねないと言う。チャベス大統領が独裁者といわれるゆえんであるが、その一方で、チャベス大統領は自分の考えの枠組みに収まる新しい考え方に対しては受容性があると言われる。また、チャベス大統領は、ベネズエラの貧困層の心理について鋭い洞察力を持っている。一部では、広がっていた貧富の差を縮めるためのチャベス大統領の努力を評価する向きもあるが、これは貧困層の支持が自らの政治生命にとって非常に重要であると理解しての行動であるとも考えられる。チャベス大統領が反米政策をとる理由についても、両親が黒人とインディオであること、米国がクーデター*2に関与していたと考えていることももちろん大きな要因であろうが、反米色を打ち出すことで、政治的な支持母体であるベネズエラの貧困層の支持を得ようとする戦術という一面も否定できないであろう。型破りな性格、衝動的な独裁者、国民、特に貧困者のために尽くす革命家といった多面性を持つ人柄同様、その経歴も紆余曲折を経ている。1954年バリナス州に生まれた。教師の子として育ち、陸軍士官学校を卒業し、陸軍に入隊した。陸軍中佐であった1992年にクーデターに参加したが、軍上層部が動かず失敗した。投獄されるが、2年後に恩赦で出獄し、政治家に転向した。貧困層に訴える話法に優れ、その支持を得て、1998年12月の大統領選で当選、1999年2月に大統領に就任した。2000年の憲法改正に伴う選挙で再選される。2002年、軍部の反乱、クーデターで辞任に追いこまれるが、3日後には政権に復帰した。2002年12月から2003年2月の反チャベス統一ストライキを乗り切り、2004年8月の大統領罷免投票選挙で罷免を免れ、2005年12月の国会議員選挙提供:サンテレフォト図9チャベス大統領で全議員与党体制を実現し、強固な政治基盤を築いた。チャベス大統領のアドバイザー①ホセ・ビセンテ・ランヘル副大統領1929年、カラカス生まれ。ランヘル副大統領は、16歳で政治活動を開始、ペレス・ヒメネス大統領の独裁政権に反対したため国外に追放された。そのため、ベネズエラ以外に、チリ、スペイ*1:新ガス法(Organic Law of Gaseous Hydrocarbons)は非随伴ガスに対し適用されており、表1のように石油・随伴ガスを対象とした新炭化水素法よりロイヤルティ・税制面で優遇されている。*2:2002年4月11日のクーデター。チャベス大統領は軍部に監禁され、カルモナ経団連会長が臨時大統領に就任した。しかし、13日にはチャベス大統領派の軍隊がクーデターに対する反乱を起こし、数万人の民衆が大統領官邸を包囲し、カルモナ臨時大統領は辞任し、クーデターは失敗に終わった。17石油・天然ガスレビュー唐フ大学でも学ぶ。1958年にベネズエラに戻り、5期連続でベネズエラ国会に選出された。その後、ジャーナリストに転身、テレビ番組を制作するとともに、数多くの新聞および雑誌のコラムを担当し、ベネズエラジャーナリズム賞を2回獲得した。1973年、1978年、1983年には、大統領選挙に立候補している。1999年2月、チャベス政権発足と同時に外務大臣に就任、2001年2月から国防大臣、2002年5月からは共和国副大統領を務めている。②ホルヘ・ヒオルダニ企画大臣1940年生まれ。イタリアのボローニャ大学を卒業後、電気技師として働く。1973年からベネズエラ中央大学で経済学および開発理論を学び、学者となる。左翼イデオロギーの持ち主で、国家管理および決定権の集中を伴う経済計画を主張していると言う。国民経済を発展、推進させるためには政府が積極的に支出、投資を行うべきだと提唱しているとされる。チャベス大統領は、1998年の大統領選挙立候補前にヒオルダニ氏に接触し、1999年のチャベス政権成立と同時に企画大臣に任命した。チャベス大統領と親密な関係にあり、その信任は厚く、経済顧問を務める。2002年のクーデター後、チャベス大統領は、自分にはどうすることもできない圧力がかかっているとして、ヒオルダニ企画大臣を一時内閣から追放したが、2003年のストライキ後、企画大臣として呼び戻した。③アリ・ロドリゲス外務大臣ロドリゲス外務大臣は、エネルギー部門において長い政治経験があり、議会においても主要なエネルギー関連のポストを歴任してきた。エネルギー・鉱山大臣、OPEC事務局長、PDVSA総裁を務めた。国家指向の考え方を持っており、1990年代に同国が民間企業に石油産業を開放した際には強く反対したと言われている。国際政治および外交上の目標を達成するために、ベネズエラは石油を用いるべきだとの考え方の、最大の擁護者の1人であると言う。ロドリゲス外務大臣は、かつてチャベス大統領との間に意見の相違があったとされており、ロドリゲス外務大臣を絶対的に信頼しているキューバのカストロ首相が両者の仲を取り持ち、ロドリゲス外務大臣の政治家としてのポストを確保したとされている。与党内の一部の派閥からは不信感を抱かれているが、ラミレスエネルギー大臣と非常に親しく、外務大臣としての立場にありながらも、エネルギー部門にも多大の影響力を保持していると言われる。④ラファエル・ラミレスエネルギー石油大臣/PDVSA総裁ラミレスエネルギー大臣は、チャベス大統領に対する一貫した忠誠心や機敏な政治判断のゆえに、チャベス大統領から全幅の信頼を寄せられており、わずか5年間でベネズエラのエネルギー部門における最も影響力のある人物になったとされる。ベテランの政治家であると同時に、エネルギー問題を的確に把握し、同部門を代表する能力を有していることから、ベネズエラのエネルギー部門においてある程度の自主性を与えられていると伝えられる。チャベス大統領の国民投票においては広報活動を担当し、チャベス大統領を勝利に導いた。他の政府官僚からも深く尊敬されており、その立場はますます重要になっている。⑤ベルナルド・モメール炭化水素副大臣モメール炭化水素副大臣は、天然資源の課税および投資政策について豊富な経験を有する。エネルギー政策の立案にあたっては最も影響力がある人物アナリシス提供:サンテレフォト図10ランヘル副大統領提供:サンテレフォト図11ヒオルダニ企画大臣提供:サンテレフォト図12ロドリゲス外務大臣2006.3. Vol.40 No.218ォ来の世界の石油供給を左右するチャベス大統領 ?資源ナショナリズム、反米政策、多角化する国際関係の中で展開を読む?と言われている。炭化水素副大臣として現在までのところ舞台裏にとどまっているが、石油・天然ガス産業における民間企業とのあらゆる交渉において、発言力を強めていくと予想されている。新炭化水素法の立案者で、炭化水素部門において政府の利益取り分および参加シェアを大きくすべきであると主張していると伝えられる。1990年代に同国が石油部門を民間企業に開放した際には強く反対したと言う。ラミレスエネルギー大臣およびロドリゲス外務大臣両者の考え方に強い影響を及ぼしており、また、チャベス大統領も同副大臣の意見を支持する度を高めており、チャベス大統領を動かすことができる人物と言われる。提供:サンテレフォト図13ラミレスエネルギー大臣3.チャベス大統領の石油・ガス政策とその反応チャベス大統領にとって、ベネズエラの貧困層からの支持は非常に重要なものである。大統領になることができたのも、クーデターから大統領に返り咲くことができたのも貧困層のおかげである。この貧困層からの支持を得るために必要不可欠なのが、貧困層救済のための社会プロジェクトに充てる資金と、貧困層に訴えかける米国批判であると考えられている。石油・ガス産業はその重要な資金源であり、チャベス大統領はそのために、以下に述べるように、石油会社に厳しい政策をとってきた。本来国民が享受すべき利益を搾取してきたと認識する外国石油会社に対しては、新炭化水素法導入によって政府の取り分増加を図った。また、国内で石油による利益を独占してきたPDVSAに対しては、開放路線を成功させてきた旧経営陣を刷新し、政府の完全支配下に置いた。さらに、反米という政治的な発想から、中国、中南米諸国、インド、イランなどとの間に石油を通じた、世界マーケットのメカニズムによらないリンケージを形成しつつある。また、2006年12月には、大統領選挙を控えており、これを目標に政策が動くことが予想される。いずれの面から考えても、今後、ベネズエラの上流部門については、外国石油会社やPDVSAへの圧力に起因する投資不足、そしてその結果としての生産量減退が懸念されている。対石油会社盧①新炭化水素法2001年11月に制定された新炭化水素法では、ロイヤルティ比率が16.67%から30%に引き上げられ、また、すべての探鉱、開発契約についてPDVSAが51%以上の権益を保有することが定められた。チャベス大統領は、ロイヤルティ比率の引き上げにより政府の資金を確保し、また、民間企業主導の生産油田にPDVSAが過半のシェアを持つことで、石油・ガス産業への政府の管理、支配を強めるとともに、減少傾向にあるPDVSAの原油生産量を相殺することをめざした。しかし、外国石油会社からは、コストが上昇し、採算が合わず、新たなプロジェクトを立ち上げることは困難であるとの批判を受けた。また、PDVSAや労働組合など国内の関係者からも、ロイヤルティはもっと弾力的に設定すべきで、また、PDVSAが過半を所有することに固執することで上流部門に甚大な悪影響を与えることになるとの批判を受けた。そこで、チャベス大統領は議会の審議なしで法案を成立させることのできる特権(first-track powers)を利用して、新炭化水素法を成立させた。新炭化水素法に基づく契約方式に自発的に移行するよう石油会社に求める微税監督局による所得税調査石油会社、操業サービス契約からジョイントベンチャーへの移行に合意2001.112004.112005.4.142005.52005.122006.4新炭化水素法成立オリノコプロジェクトに対するロイヤルティ引き上げ2005年末までに操業サービス契約をジョイントベンチャーに変更するよう要請操業サービス契約からジョイントベンチャーへ変更するよう政府からの圧力ジョイントベンチャー設立予定出所:JOGMEC図14ベネズエラの最近の石油・ガス政策の動向19石油・天然ガスレビューV炭化水素法成立時には、同法は新規プロジェクトを対象とし、既存のプロジェクトには適用されず、契約内容に変更は加えられない、と当時のシルバエネルギー大臣は語っていた。しかし、政府はその後方針を変更、既存のプロジェクトについても同法の適用を求めた。②オリノコベルトプロジェクトのロイヤルティ比率引き上げ2004年11月、ベネズエラ政府は、戦略的提携によるオリノコベルト超重質油開発・軽質化プロジェクトのコンソーシアムが支払うロイヤルティの比率を、1%から16.67%へ引き上げた。これらのプロジェクトに適用されるロイヤルティ比率は、採算を考えて、操業当初9年間については1%、その後は16.67%と通常に比べ低い比率が設定されていた。政府は、旧炭化水素法が、オリノコプロジェクトについてはロイヤルティ比率を1%に低減するが、経済状況が変化した場合にはロイヤルティ比率を16.67%に戻す権限を政府に与えていたことを利用し、ロイヤルティ比率引き上げを正当化した。技術の進歩により合成原油のコストが低減する一方、より多くの製油所で合成原油を処理することができるようになった結果、合成原油の市場性が高まっており、また、現在の石油市場から考えて、政府の議論は妥当と見る向きも多い。4プロジェクトのうち、ペトロスアタおよびアマカについては、16.67%のロイヤルティ比率で支払うことが合意されたが、セロネグロおよびシンコールについては、ようやく支払いについて合意がなされたところである。なお、シンコールプロジェクトについては、政府の許可を得ずに、定められた11.4万バレル/日以上に生産量を増加させたとして、超過生産分についてはロイヤルティ比率を30%とするよう命じていたが、トタールが契約締結時に比べ油価が大幅に上昇していることを認め、こちらについても支払うことで合意がなされた模様である。③操業サービス契約からジョイントベンチャーへの契約変更ベネズエラ政府は2005年4月に、操業サービス契約を締結している企業に対して、2001年制定の新炭化水素法に基づき、2005年末までに現在の契約を、PDVSAが権益の51%以上を保有するジョイントベンチャーに変更するよう伝えた。対象となるのは、1990年代の入札により締結された32件の操業サービス契約である。ベネズエラ政府およびPDVSAは、2002年12月のストライキ以降、新炭化水素法の適用を認めるように石油会社と交渉を行ってきた。2004年1月には、同法の適用を認めない限り増産を承認しないという強硬姿勢を示したが、石油会社は動かなかった。今回も当初、石油会社はPDVSAとの個別の交渉を行ってはいるものの、政府の出方を見ているだけで、ジョイントベンチャーへの変更は行われないのではないかとの見方もあった。しかし、チャベス大統領およびラミレスエネルギー大臣は、これまでの操業サービス契約はベネズエラ人民から同国の天然資源を奪うものであり、2005年末までにジョイントベンチャーへの変更に同意しない企業はベネズエラから撤退すべきだ、選択の余地はないと強い調子で重ねて発言した。このようなベネズエラ政府からの強いプレッシャーを受けて、2005年8月以降、石油会社は次々とジョイントベンチャーに契約を変更することで政府と合意に達した。エネルギー省およびPDVSAは、当初考えていたように、2005年末までにすべての操業サービス契約をジョイントベンチャーに変更することはできなかった。しかし、最後までジョイントベンチャーへの変更に抵抗するアナリシス姿勢を示していたエクソンモービルについても、PDVSAが設定した契約変更期限直前の12月30日に、所有していたキアマレラセイバ油田の権益の25%をオペレーターのレプソルYPFに売却することが発表され、すべての操業サービス契約について、エネルギー省およびPDVSAは外資に契約移行協定に署名させることに成功した。この契約移行協定の具体的な内容については、PDVSA側も会社側も明らかにしていないが、協定締結以前に発表された案には、石油会社が今回の契約変更について国際仲裁機関に訴える権利を放棄すること、既存の契約(操業サービス契約)の違法性を認めること、未納の所得税の支払いに同意することが含まれていたという。いずれにしても、同協定は、共同で作業を行うという両者の意思を確認し、会社がジョイントベンチャーへの移行についてエネルギー省と交渉することに同意したものにすぎず、移行を保証するものではない。また、同協定にはジョイントベンチャーがどのように設立されるのかについての概要は示されていない。ジョイントベンチャーが成立した場合のPDVSAのシェアについても、最低でも60%、通常は70?80%と発表されているのみである。操業サービス契約は2005年末に終結し、2006年1月1日から、各操業サービス契約の経営は、PDVSAから3名、操業サービス契約を締結していた企業から2名の合計5名のメンバーから成る暫定執行委員会(Transitional ExecutiveCommittee)に引き継がれた。石油会社は通常の操業とジョイントベンチャーへの変更を保障するとされているが、エネルギー省によると、PDVSAの2006年の操業サービス契約の予算は計上されておらず、それ以降は、オペレーターに対してサービス手数料は支払われないことになっている。PDVSAが、最近、ジョイントベン2006.3. Vol.40 No.220ォ来の世界の石油供給を左右するチャベス大統領 ?資源ナショナリズム、反米政策、多角化する国際関係の中で展開を読む?チャーが成立するまでは現在の操業サービス契約に基づいて操業するのを認めるとしたこと、また、一部のオペレーターに対し、契約移行期間についてもサービス手数料の支払いを継続するための予算を割り当てる旨述べたとの情報もあるが、法的枠組みも明確でない、きわめて不安定な状況のもとでの操業が続けられていると考えられる。2006年に入り、議会はジョイントベンチャーの契約案についてのスタディを開始したと伝えられている。政府は第1四半期中には最終的な案を完成させ、議会の承認を得た後、4月までにジョイントベンチャーを設立したいとしている。なお、32件の操業サービス契約の生産量は、2005年初には約50万バレル/日であったが、2005年末には46万バレル/日に減少している。④所得税率引き上げ徴税監督局Seniatは2005年4月、32件の操業サービス契約を締結している石油会社に対して、従来の34%ではなく、50%の所得税率に従って2001?2004年分の納税を行うように通告した。所得税法では、石油鉱業に従事する者に対する税率は50%であるが、サービス契約に基づいて作業を行う者は同規定から除外されており、操業サービス契約についての税率は34%とされていた。しかし、徴税監督局は、操業サービス契約を締結する石油会社に対して、生産物の所有権も処分権もないにもかかわらず、あたかも「利権」を保有して石油事業に従事しているかのごとく解釈を変更し、税率を引き上げる根拠とした。そして、納税者が法的義務を果たさなかった場合に4年の滞納税を課することを定めた法に基づき、4年分の課税を行うとした。合った十分な納税を行っているか否かを過去4年間にさかのぼり調査を行った。調査に基づき、徴税監督局はシェルとハーベスト・ナチュラル・リソーシズを皮切りに、石油会社各社に対し2001?2004年分の所得税のうち50%の税率を34%としてきたため未納となっている部分について課税額を査定し、納税するよう命じた。2005年中に支払いを行ったのは、ハーベスト・ナチュラル・リソーシズなど少数の会社のみであった。2006年1月、徴税監督局はシェルがこれまで未提出であった書類を提出し、再度調査を行った結果、同社に対する課税額を1億3,100万ドルから1,300万ドルに引き下げると発表した。シェルは直ちに全額を支払うとしている。シェルの他にも、2006年に入り、ペトロブラス、ウエストファルコンなどが支払いを行ったと伝えられている。さらに徴税監督局は、これらの油田について1993年までさかのぼって課税するための調査を行うことを検討していると発表した。また、2006年に入り、徴税監督局はオリノコベルトの超重質油プロジェクトについても同様の調査を行う予定である。政府は、石油の生産に関する所得税率はすべて50%であり、他の探鉱・生産プロジェクトは50%を支払っていることから、オリノコベルト超重質油プロジェクトに対する税率も34%から50%に変更する計画であるとしている。政府は所得税率の引き上げにより石油収入を増加させる計画であるが、これが石油会社の投資意欲をそいでおり、将来の生産量、石油収入の減少につながると見る向きも多い。盪対PDVSAまた、徴税監督局は、納税を避けるために多くの企業が過大に損失を申告しているとして、石油会社が所得に見チャベス大統領は就任以来、国家収入の50%を稼ぎ出すPDVSAを自らの管理下に置き、政治の道具として使うべく、実権を握りたいと切望していた。また、チャベス大統領は「PDVSAによる国富の一人占めが貧困の原因」とすることで貧困層の強力な支持を得て大統領となり、就任時にPDVSAを「ブラックボックス」、「国家の中の国家」であると非難し、このような状態を終結させることを国民に約束した。そして国民との約束を果たし、貧困層からの支持を取りつなぐためにも、PDVSAの大組織を解体し、自分の思い通りに再構築することに努めてきた。チャベス大統領は、OPECの石油生産枠を遵守し、外資参入を控えさせるような新炭化水素法を導入することでPDVSA首脳陣と対立、PDVSAへのコントロール強化のためPDVSA首脳陣の人事異動を行った。これが原因となり2002年2月に、後にクーデター未遂に発展するストライキが決行された。さらに、2002年12月から翌2003年2月まで、反チャベス派による統一ストライキが起こった。そして、チャベス大統領は、ストに参加したことを理由に4万人のPDVSA従業員のうち1万7,000?1万8,000人を解雇した。このPDVSA従業員の大量解雇以後、チャベス大統領とPDVSAの関係は大きく変化した。ストライキを契機に、チャベス大統領はPDVSAの反乱分子を完全に排除し、PDVSAを支配下に置くことに成功した。現在はチャベス大統領がPDVSA全体を支配しており、その影響力は非常に強いと言われる。大量解雇により石油産業の人材が不足していることもあり、同一人物がエネルギー省とPDVSAの役職を兼務するなど、事実上、両者の境目はなくなっていると言う。チャベス政権の思惑通り、操業に関してはPDVSA、政策に関してはエネルギー省と役割を分担してはいるものの、エネルギー省とPDVSAはほぼ一体化しており、政府がPDVSAの活動を完全に管理、支配していると伝えられている。21石油・天然ガスレビューアのようにPDVSAを支配下に置いたチャベス大統領は、資金源としてPDVSAをさらに利用しやすくするために、2005年に中央銀行法を改正した。この改正により、石油販売によって得られたPDVSAのドル建ての収入は、これまでのように中央銀行に納められず、直接チャベス大統領が管理する開発基金に組み入れられることとなった。開発基金は社会開発プロジェクト、すなわち道路、病院、公共輸送機関等のインフラ整備のために使われる。これによりチャベス大統領は、油価高騰でベネズエラが享受している石油収入に対し、より大きな自由裁量権を得たことになる。しかし、このようにPDVSAの収入に対するチャベス大統領のコントロールが強まったことで、PDVSAによる探鉱、開発投資が減少することが懸念されている。また、ストライキの間にPDVSAから解雇された人員の不足を補うため、同社は過去2年間に解雇者数を上回る軍関係者、退職した技術者や外国人技術者などの雇用を図った。その結果、PDVSAの職員総数はストライキ以前の4万人を超えるに至ったというが、技術的には対応しきれず、生産量はストライキ以前の水準に戻っていない。この点も、資金面とあわせて今後のPDVSAの課題となると考えられる。蘯対OPECチャベス政権以前、ベネズエラは、OPECはメジャーへの対抗組織として作られたもので生産カルテルではない、と主張して、OPECの生産割当てを無視し続けていた。しかし、チャベス大統領の就任後は、生産割当てをほぼ遵守し、他の加盟国に対しても協調減産を呼びかけ、OPEC内により強い一体感を生み出そうと努力してきた。それにより、ベネズエラの生産量や世界市場での輸出シェアは減少することとなったが、この対OPEC政策の転換により、2001年1月から2002年4月までの間、当時のロドリゲスエネルギー大臣がOPEC事務局長を務め、OPEC内で政治的な影響力を得ることとなった。また、OPECの結束が強まったことで、現在の油価上昇を引き起こしたということもでき、チャベス大統領は極めて大きな成果を上げたと言えよう。しかし、現在、ベネズエラの原油生産能力は、ストライキ以前の水準まで回復していない。これに投資不足も加わり、本来ならば期待できたはずの生産量の増加をみることもできず、生産余力もないことから、ベネズエラのOPEC内での影響力はかなり低下しているとみられる。盻対米国従来、ベネズエラと米国は、経済面を含め非常に結びつきが強い。ベネズエラは石油輸出量の約3分の2を米国に輸出している。これは両国が距離的に近く、また、米国はベネズエラの原油に適した精製設備を備えており、PDVSAの子会社Citgoは米国内に1万6,000カ所のガソリンスタンド網を保有していることによる。このようにベネズエラは、国家財政の多くを米国への石油輸出に依存してきた。一方、米国にとっても、ベネズエラは米国の石油輸入量の約15%を占めている。しかし、チャベス大統領が1998年に当選して以来、政情不安の中、同大統領は反米色を打ち出し、自国を含む中南米諸国を米国の支配下から解放したいと訴えることで国民の支持を得る戦術を取り、成功を収めてきた。外交面でも、米国と対立する国や距離を置く国、例えばキューバ、イランなどに接近してきた。2002年4月のクーデター後、両者の関係はさらに悪化した。チャベス大統領は、ブッシュ政権がクーデターを非難しなかったことを決して許そうとせアナリシスず、クーデターに米国が関与したのではないかとの疑念を抱き続けている。そしてベネズエラ政府は、米国がチャベス政権を転覆させようとしており、そのための計画を用意していると主張している。また、石油輸出先の多角化を図って、近隣諸国との間にエネルギー協力のための機関を提唱したり、中国に対して石油供給拡大を約束するなど、米国政府、議会を刺激している。一方、油価高騰以降、ブッシュ政権は、米国内のガソリン価格上昇の原因となりうるベネズエラとの関係悪化を避けたいとの考えから、以前に比べ、チャベス大統領を刺激しないように努めているようである。米議会も、米国のエネルギー安全保障および、ベネズエラがこの地域の不安定要因となる可能性があるとの観点から、ベネズエラに対しこれまで以上に関心を払っている。米国は、チャベス政権に地域的な圧力をかけたいと考えているが、現在、中南米諸国には左派政権が多いこと、これまで米国がこれらの地域にあまり関心を払わずにきたことから、中南米諸国の支持を得ることは容易ではないようだ。逆にベネズエラはこの状況を利用し、また、石油を政治の道具として使うことで、近隣諸国への影響力を強めている。ベネズエラは、さらに石油輸出先の多角化を図るため、2006年にはアフリカとの結びつきを強めたいとしている。このように、石油輸出先の多角化を図ってはいるものの、ベネズエラが米国向けに輸出している石油の全量を米国以外の国に輸出することは不可能である。また、ベネズエラに対する米国の投資を完全に禁止する可能性は、今後とも低いと考えられる。米国にとっても、ベネズエラからの石油輸入を削減すれば石油供給に混乱が生じるであろうし、米国企業は、エネルギー部門をはじめ様々な分野で、ベネズエラに2006.3. Vol.40 No.222ォ来の世界の石油供給を左右するチャベス大統領 ?資源ナショナリズム、反米政策、多角化する国際関係の中で展開を読む?対し巨額の投資を行っている。したがって、現在、ベネズエラと米国の関係は非常に複雑であるが、短期的にベネズエラが米国離れをすることは難しいと考えられる。Citgoについても、ベネズエラの重質油を処理できる精製設備を有しており、ベネズエラ政府に多額の配当金をもたらしていることから、PDVSAは今後もCitgoを通して米国内で活動を続けると考えられる。なお、米国内にはチャベス政権と関係を持っている政治家が多く存在する。これらの政治家を通して、米国への援助の申し出がなされている。2005年8月には、米国の公民権運動家ジェシー・ジャクソン師とチャベス大統領が会談し、Citgoが米国の貧困層向けに暖房用の石油を低価格で販売することで合意が成立した。11月にボストンとニューヨーク、2006年1月にメイン州の貧困層に石油販売が行われた。ベネズエラはバーモント州、ロードアイランド州にも石油を供給する計画で、供給量は全量で127万バレルとなる予定である。眈対中国ベネズエラと中国の石油・天然ガス部門については、1996年からオリマルジョン(オリノコ川流域の超重質油から生産されるボイラー用燃料)の輸出を開始し、1997年にはCNPCがベネズエラの2鉱区の権益を取得し、開発、生産を行うなど、以前から結びつきはあった。しかし、特に近年の関係親密化には目を見張るものがある。チャベス大統領は、反米という政治的な発想から、キューバ、ロシア、イラン等米国と対立関係にある国、米国と親密な関係にない国との関係を強めているが、中国との関係強化もその一環と見ることができよう。さらに、ベネズエラは石油輸出量の60%以上を米国向けとしているが、対米依存度を低下させるため、以前から石油の輸出先の多様化を図っていた。定された新炭化水素法が適用される。特に、2005年に入ってからは、PDVSAの子会社Citgoが米国に保有する製油所の持分を米国が凍結する可能性も警告されており、中国への石油供給拡大は、その場合の原油の輸出先を確保しておきたいとのベネズエラの意向が働いたものと考えられる。中国に主に輸出されるボスカン原油は、これまでほぼ全量が米国の製油所に送られていたことや、長距離輸送のために生じるコストの割り増し分を差し引いた割引価格が適用されていることからも、チャベス大統領の意図は経済的なものではなく、政治的な判断によるものであることがうかがえる。一方、中国側も、増加する国内需要を満たす必要があり、また、中東からの石油供給に対する不安や、マラッカ海峡をタンカーに通過させたくないという気持ちから、安全保障を最優先した結果、経済合理性を無視しても中南米から原油を輸入しようとの考えに至ったと思われる。ベネズエラと中国の関係強化は、このように両国の政治的な思惑が合致した結果の産物と言えよう。2004年12月のチャベス大統領訪中および2005年1月の曾慶紅(Zeng Qinghong)副主席のベネズエラ訪問時に締結されたエネルギー協定、および2005年8月のラミレスエネルギー大臣訪中時の合意により、両国の間で取りまとめられた事項は以下の通りである。①CNPCとPDVSAのジョイントベンチャー設立PDVSAとCNPCは、2005年末までにジョイントベンチャーを設立し、オリノコベルト・フニンブロック4(面積640平方キロメートル、重質油埋蔵量200億バレル)ならびにベネズエラ東部のスマノ地域(埋蔵量は中・軽質油4億バレル、天然ガス4兆立方フィート)の開発を行う。石油契約は2001年に制②PDVSA、中国事務所開設2005年8月、PDVSAは北京に中国代表事務所を開設した。PDVSA初のアジア地域の事務所となる。中国事務所は、新たな戦略パートナーである中国との関係を強化し、中国およびアジアの上流・下流でのビジネスチャンスを拡大することを目的としているという。③石油供給拡大PDVSAは、中国事務所開設により、今後これまで以上に積極的に、アジア市場でベネズエラの石油を販売していく計画を示した。ベネズエラから中国への石油輸出量は、2004年が6,700バレル/日、2005年上半期は2万7,500バレル/日となっているが、PDVSAは2006年から燃料油30万バレル/日を中国に供給する計画である。④ベネズエラ国内に製油所建設中国はベネズエラ国内に、中国の発電所向けの重油を精製するための製油所を建設する。中国は既発見、未開発の油田に重質油が多く、また、今後、価格的に安い重質油の輸入を増加させなくてはならなくなるとの見通しから、重質油の精製・処理のノウハウを必要としている。すでにシノペックが中国南部に重質油対応の製油所を建設中との情報もあり、中国にとってこのプロジェクトは、ベネズエラから重質油の精製・処理技術を習得することを目的としたものと考えられる。⑤共同でタンカー建造を計画PDVSAの造船部門の子会社ディアンカと中国船舶重工集団公司CSICは共同でタンカーを建造する事業について交渉を行っている。PDVSAは今後7年間に23億ドルを投じて42隻のタンカーを建造、購入する計画で、中国の他にもスペイン、ブラジル、アルゼンチ23石油・天然ガスレビュー500km100010 Nアナリシス01000km2000ベネズエラベネズエラベネズエラガイアナガイアナガイアナスリナムスリナムスリナムコロンビアコロンビアコロンビア0エクアドルエクアドルエクアドル10 Sペルーペルーペルーブラジルボリビアボリビアボリビアチリパラグアイアルゼンチンウルグアイ20304050110 W100908070605040302010Lambert azimuthal equal-area projection30252015105 Nバハマバハマバハマキューバキューバキューバハイチハイチハイチドミニカ共和国ドミニカ共和国ドミニカ共和国ベリーズベリーズベリーズジャマイカジャマイカジャマイカアンディグア・アンディグア・アンディグア・バーブーダバーブーダバーブーダドミニカドミニカドミニカセントクリストファー・セントクリストファー・セントクリストファー・ネビスネビスネビスセントルシアセントルシアセントルシアセントビンセント・グレナディーンセントビンセント・グレナディーンセントビンセント・グレナディーングレナダグレナダグレナダベネズエラコロンビア90W8580757060Equidistant conic projection65ペトロカリブペトロカリブ加盟国ペトロカリブ加盟国加盟国ペトロアンディナ加盟国ペトロアンディナペトロアンディナ加盟国加盟国ペトロカリブおよびペトロアンディナ加盟国ペトロカリブおよびペトロアンディナ加盟国ペトロカリブおよびペトロアンディナ加盟国:::::::::文字色青文字色青文字色青文字色赤文字色赤文字色赤文字色混合文字色混合文字色混合:PDVSAが計画中の製油所:PDVSAが計画中の製油所:PDVSAが計画中の製油所出所:JOGMEC図15ベネズエラの最近の石油・天然ガス政策の動向ンなどの造船会社とも交渉中である。眇対近隣諸国中南米の石油会社は、以前より役員や技術者の相互乗り入れを行っており、国営石油会社同士の関係は非常に強いものであった。チャベス大統領は、豊富な石油・天然ガス資源と高油価により得た資金を利用して、有利な条件で低価格の石油供給、ベネズエラ国内の探鉱・開発への国営石油会社の優先的な受け入れなどを行い、ベネズエラの中南米での孤立を防ぎ、中南米諸国への影響力ならびにこれらの国の国営石油会社との関係をさらに強固なものとしようと企てている。ベネズエラ政府によれば、原油価格が1ドル変動すると、同国の石油輸出収入は約10億ドル変動する。2005年は原油価格が高騰したことで、ベネズエラの外貨準備高は300億ドルを超えており、チャベス大統領は中南米諸国を支援するのに十分な資金を保有している。特に、2005年7月に中央銀行法が改正されたことで、チャベス大統領は中央銀行の準備金のうち60億ドルを自らの自由裁量でつかうことができるようになり、このような石油外交に拍車がかかっている。油価高騰に加え、近年、中南米に左派政権が次々に誕生していることもチャベス政権を後押しし、中南米の協力統合関係は急速に強まっている。①有利な条件で低価格の石油供給■ペトロカリブ2005年6月、チャベス大統領の提案でカリブ諸国の代表がカリブ諸国エネルギー首脳会議を開催、ペトロカリブエネルギー協力協定を締結し、ペトロカリブが設立された。ペトロカリブはカリブ地域のエネルギー部門の統合を図ることで、カリブ諸国を油価高騰から守り、経済面で支援していくことを目的としている。石油輸送のため、PDVSAの子会社PDVカリブを設立し、トレーダーなどを通さずに直接、ベネズエラからその他の加盟国に石油を供給することで、マージンや手数料、投機的な要因をなくし、市場価格よりも安い価格での石油供給を図る。また、加盟国がベネズエラから石油を購入する際には、原油価格に応じて支払いに便宜を受けることができる。ベネズエラは、石油を市場価格よりも安く供給するだけでなく、同地域での石油資源の探鉱、開発、生産、精製、輸送、備蓄、技術分野でも協力していきたいとしている。当初、ペトロカリブエネルギー協力協定に署名した国は、ベネズエラ、ドミニカ共和国、バハマ、ベリーズ、キューバ、ドミニカ、ジャマイカなど14カ国であった。ベネズエラは親米の姿勢をとるハイチのペトロカリブ加盟を認めなかったが、11月になってハイチ2006.3. Vol.40 No.224ォ来の世界の石油供給を左右するチャベス大統領 ?資源ナショナリズム、反米政策、多角化する国際関係の中で展開を読む?の加盟を承認、加盟国は15カ国となった。これらの国は低価格で石油の供給を受けられるため、同協定を歓迎しており、チャベス大統領の目論見は、一応、成功したと言うことができよう。一方、トリニダード・トバゴは、ペトロカリブの設立によりベネズエラから安価な石油が加盟国に供給されると、自国の石油輸出が阻害されるとして、また、バルバドスはトリニダードへの賛同を示すため、同協定への署名を行わなかった。なお、PDVSAは、今後取引が増大すると考えられるカリブ地域での操業拠点として、キューバのハバナに事務所を開設した。資、代替エネルギー源の開発など、エネルギーにおける各国の協力を目的とするものである。CANの加盟国はコロンビア、エクアドル、ペルー、ベネズエラ、ボリビアである。■その他中米諸国ホンジュラスのマドゥロ大統領はチャベス大統領に、高油価が経済に与える影響を緩和するために、ペトロカリブ同様の支援を中米に対しても行うように求めている。中米諸国は、メキシコに対して有利な条件での石油供給を求めたが、メキシコは中米諸国を支援するためにはサンホセ条約が存在しているとして断った。■ペトロアンディナ2005年7月にペルーのリマで開かれたアンデス共同体(CAN)の第16回首脳会議において、チャベス大統領は、アンデス諸国の石油公社からなるペトロアンディナの創設を提案した。これはペトロカリブのアンデス諸国版で、エネルギー資源の相互利用、エネルギー開発・生産プロジェクトへの共同投②ベネズエラ国内の探鉱・開発への国営石油会社の優先的な受け入れベネズエラは2005年8月に、ウルグアイ、アルゼンチン、ブラジルの国営石油会社とジョイントベンチャーを組み、オリノコベルトの開発を行うという内容の協定を締結した。チャベス大統領は、「オリノコ原油は第一にベネズエラ国民のものであり、次にラテンアメリカとカリブ諸国のものである」と語っており、オリノコベルトの開発については特に中南米の国営石油会社が優遇されると見られる。また、チャベス大統領とブラジルのルラ大統領は、PDVSAとペトロブラスが共同で、上記オリノコベルトの開発の他、スクレ州パリア湾北部に位置するマリスカルスクレ天然ガスプロジェクトを推進し、ベネズエラ国内の4油田の開発を検討することで合意した。両首脳は、この協力関係が域内のエネルギー統合につながることを期待していると語った。③製油所の建築・改修、域内供給網の獲得当初、ベネズエラと近隣諸国の協力関係は上流部門と石油供給が中心であったが、2005年秋以降、近隣諸国の下流部門へのPDVSAの参入が進んでいる。ベネズエラは中南米諸国で製油所の建設、改修を行い、そこでベネズエラ原油を精製し、域内に供給することで、その存在感をさらに高めるとともに、石油輸出の対米依存度を減少させ表2PDVSAの中南米各国における製油所建設・改修計画建設・改修計画等25億ドルを投じ、精製能力20万バレル/日の製油所を建設。ベネズエラ、ブラジルで生産される重質の原油を処理、主にディーゼル、LPガスを精製。FSを実施中、2011年に稼働開始予定精製能力8,000バレル/日の製油所の拡張を計画1991年に建設された精製能力は6万5,000バレル/日の製油所。PDVSAは第1段階として6,000万?1億ドルを投じて同製油所を再開、第2段階としてAPI34゜の原油を精製するよう設計された同製油所をベネズエラの重質の原油に合うように改修精製能力7,500バレル/日の同製油所を改修するか、新たに製油所を建設するかについて検討中2億ドルを投じて精製能力を5万6,000バレル/日から10万6,000バレル/日に引き上げることで合意精製能力を10万バレル/日に倍増させ、ベネズエラの重質油(一部アルゼンチンの原油)を処理し、アルゼンチン、ブラジル、パラグアイで販売する計画。2006年3月までにFSを終了予定8億ドルをかけて精製能力を14万バレル/日に倍増させる計画国、地域製油所名ブラジルペルナンブコ州スアペ港―石油会社ペトロブラスエナルサ―エンフエゴス―シビラエリサペトロパーキングストンペトロジャムラテファアンキャップアルゼンチン カンパナキューバアレハンドログラナダパラグアイアスンシオン近郊ジャマイカウルグアイモンテビデオコロンビアカルタヘナペトロブラスエコペトロール25石油・天然ガスレビュー骭v画と考えられる。PDVSAとアルゼンチン国営石油会社エナルサは、共同でアルゼンチンの精製会社ラサを9,200万ドルで買収した。買収した資産にはサービスステーション150カ所が含まれている。チャベス大統領は、アルゼンチンのサービスステーション600カ所を取得し、アルゼンチンの市場の12%をコントロールしたいとしている。また、PDVSAとエナルサは共同で、ウルグアイ国営石油会社アンキャップからウルグアイ国内の163カ所のサービスステーションを買収することを計画している。アナリシス4.今後のベネズエラの開発、生産、投資見通し盧PDVSAの計画PDVSAは2005年8月に、ベネズエラの石油開発に関する壮大なビジネスプラン(PDVSAでは「Plan SiembraPetrolera」と呼んでいる)を発表した。そこでは、まず原油生産量を現在の260万バレル/日程度から、2012年には580万バレル/日まで倍増させる計画で、その増大分はPDVSA分で約180万バレル/日、新規のオリノコベルト開発で60万バレル/日を賄うとされている(図16)。同時にPDVSAは、オリノコベルトに関する長期的な展望を示しており、2030年には回収率8.5%(PDVSAは現在の技術では10%前後と考えている)でも300万バレル/日、回収率20%とすると600万バレル/日の生産が見込まれるとしている(図17)。すなわち、2030年など遠い将来における石油生産では、オリノコベルトが主力となるのは確実であり、その開発の成否が鍵となると言える。また、ラミレスエネルギー相は、2006?12年の投資計画の中でオリノコベルトを27の鉱区に分割し、そのうちの数鉱区を今後2?3年以内に付与するという具体的な提案を明らかにした。現時点ではペトロブラス、CNPC、ONGC、ペトロパース、ガスプロム、ルクオイルおよびレプソルYPFとの埋蔵量調査を経て、PDVSAとこれらの地域の開発を行う計画となっている(図8)。チャベス大統領が、米国企業はオリノコベルトの開発には参加させないと  単位万バレル/日600500400300200100332.1332.1332.10.60.60.661.461.461.451.651.651.6351.3351.3351.37.17.17.162.262.262.253.253.253.2218.5218.5218.5228.8228.8228.8583,7583,7583,761.561.561.512.112.112.162.262.262.2464646401.9401.9401.9オリノコベルトの新規開発分オリノコベルトの新規開発分オリノコベルトの新規開発分JV(OSA)の新規開発分JV(OSA)の新規開発分JV(OSA)の新規開発分PS契約による新規開発分PS契約による新規開発分PS契約による新規開発分オリノコベルトの既存分オリノコベルトの既存分オリノコベルトの既存分JV(OSA)の既存分JV(OSA)の既存分JV(OSA)の既存分PDVSAの直接生産分PDVSAの直接生産分PDVSAの直接生産分2006200720082009201020112012図162005年から2012年までの生産計画02005出所:PDVSA  生産量(万バレル/日)900 原始埋蔵量:1兆3600億バレル回収率20%(2,720億バレル)20002010202020302040205020602070208020902100年図17オリノコベルトの将来の生産予測発言していることを考え合わせれば、ベネズエラは今後、ペトロブラス等NOCを中心にオリノコベルトの開発を進めていく模様である。また、チャベス大統領がイタリアを訪問、ベルルスコーニ首相と会談した結果、イタリアの電力会社エネルとPDVSAがジョイントベンチャーを組み、オリノコベルトで共同開発を行う可能性について検討が行われており、前述の企業のほかにも石油会社が新たにオリノコベルトでの開発に参加する余地は残されていると見る向きもある(*締め切り直前の1月23日にアルゼンチン国営石油2006.3. Vol.40 No.226800 700 600 500 400 300 CurrentProduction200 100 1990出所:PDVSA回収率16%(2,180億バレル)回収率12%(1,630億バレル)回収率8.5%(1,160億バレル)ォ来の世界の石油供給を左右するチャベス大統領 ?資源ナショナリズム、反米政策、多角化する国際関係の中で展開を読む?会社のエナルサとも埋蔵量調査を行う計画が発表されるなど、オリノコベルトへの参入はまだしばらく続く様相)。盪上流投資減少の動き上記のように、PDVSAは壮大な計画を打ち出しているが、外国石油会社を積極的に受け入れ、増産に努めてきた旧経営陣が刷新され、政府の完全支配下に置かれている。ストライキ後の職員大量解雇により計画立案能力を失っており、さらに、経験不足の技術者による油田へのダメージは大きく、恒久的に生産能力が失われてしまった油田もあると言う。西部の老朽化した油田については、PDVSAが理解している以上に状況が悪いというのが大方の見方である。さらに、従来ならばPDVSAの探鉱、開発に回されるはずの資金が、社会プロジェクトに回されてしまっている。2005年は予定していた額の70%しか投資が行われなかった。現時点では2006年に70億ドルを投資する計画であるが、大統領選挙を控えていることもあり、PDVSAが計画を実現するのに十分な資金がPDVSAに対して充当されるか否かは甚だ疑問である。石油会社に対しては、政府が収入を増加させるために、新炭化水素法導入、所得税率の引き上げを突然行ってきた経緯がある。そのため、石油会社は投資意欲をそがれ、新規参入を考える企業は少なく、メジャーの中にはベネズエラから一部撤退する方向のものさえある。新たにベネズエラで活動を行おうと考えるのは、中国や中南米諸国などのNOCを中心とする企業のみである。ベネズエラにはオリノコベルトや西部の老朽化油田など、特に技術力を必要とする油田が多く、これらの企業とメジャーの技術力を比べた場合に、PDVSAの計画の実現性には疑問を抱かざるをえない。例えば、オリノコベルトアヤクーチョブロック7での埋蔵量評価作業を行う協定に調印したイランのペトロパースは、オリノコベルトで作業を行う技術力がないため、パートナーを求めているという。したがって、PDVSAの2006?12年の石油生産量倍増計画は、国営石油会社のPDVSAの技術不足および投資不足、メジャー等の石油会社が大型投資を手控えている現状を考えると、破綻することが予想され、最悪の場合、生産量の減少、将来のベネズエラ政府の石油収入の減少という悪循環さえ懸念される。ただし、チャベス大統領も自らの政治生命存続のため最悪のシナリオは避けようとすると考えられ、投資増加への政治的舵取りに振れる可能性もあり、政策動向を注視していく必要がある。5.まとめチャベス大統領は、対外的にはOPECで他の加盟国に協調減産を呼びかける一方、国内では新炭化水素法の導入をはじめとする様々な政策により投資不足を引き起こし、本来増加するはずの石油生産量の伸び悩みを招いた。ベネズエラのとったこれらの政策が、現在、高騰している油価の下支えとなっている。この意味で、ベネズエラは、チャベス大統領就任以来わずか数年のうちに、OPECや石油市場の構造を大きく変えてしまったということができる。チャベス大統領については、ベネズエラ国内に広がっていた貧富の格差を縮めようと努力している点などを評価する向きもあるが、石油政策に関しては問題点が多い。すなわち、近い将来の計画として上げられている「石油生産を2012年までに倍増させる計画」は、国営石油会社のPDVSAの技術不足および投資不足、メジャー等の石油会社が大型投資を手控えている現状を考えると、実現困難と読める。ただし、ベネズエラは地質的には世界最大規模の石油ポテンシャルを持つことから、政策さえ変更されれば状況は一変する可能性があり、今後も長期的視点でその政策動向を注視すべき大産油国である。言い換えれば、中国、ロシア、中南米諸国のNOC等がオリノコベルトの埋蔵量調査を終える数年後、さらに開発に掛かる10年後、20年後という視野では、その埋蔵量規模が大きいだけに、世界の将来の石油需給に大きな影響を与える巨大産油国に成り得ると考える。27石油・天然ガスレビューQ考文献・情報1. James, K.H., The Venezuelan hydrocarbon habitat., Classic Petroleum Provinces, Geological Society Special Publication (1990)2. 石油公団・(財)石油開発情報センター. 1995-1996、平成6-7年度「東ベネズエラ堆積盆地のポテンシャル評価調査報アナリシス告書(その1、その2、その3)」3. IPD Latin America(コンサルタント)情報4. ベネズエラ関連のウェブ情報:PDVSA、OPEC、EIAなど5. JOGMECヒューストン事務所情報著者紹介佐藤 隆一(さとう りゅういち)愛知県出身。静岡大学理学部卒業、同大学院修了、理学修士(地球科学)。1990年より石油公団地質調査部・技術部等を経て、現職JOGMECヒューストン事務所副所長。石油公団時代は、地質調査部で中国、イエメン、イランの海外地質構造調査等に従事。現在、メキシコの国営石油会社PEMEXとの構造調査関連業務に携わりつつ、メキシコを中心にベネズエラ、ブラジルなどラテンアメリカ諸国の情報収集を実施中。舩木 弥和子(ふなき みわこ)神奈川県出身。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。石油公団入団。企画調査部を経て、現職。家族は夫と娘1人。2006.3. Vol.40 No.228
地域1 中南米
国1 ベネズエラ
地域2
国2
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地域5
国5
地域6
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国8
地域9
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地域10
国10
国・地域 中南米,ベネズエラ
2006/03/20 [ 2006年03月号 ] 舩木 弥和子 佐藤 隆一
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