ページ番号1006215 更新日 平成30年2月16日

サウジアラビアの当面の石油政策、その注目点は?

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レポートID 1006215
作成日 2006-03-20 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 探鉱開発
著者 猪原 渉
著者直接入力
年度 2006
Vol 40
No 2
ページ数
抽出データ サウジアラビアの当面の石油政策、その注目点は??ナイミ石油相がCERA(Cambridge Energy Research Associates)主催シンポジウムで、石油市場の現状と将来についての認識、当面のサウジの石油政策、消費国への政策提言などについて見解を明らかにした。?ナイミ講演のポイントおよび以下に関する詳細動向を整理する。①サウジの原油生産能力増強計画の進捗と見通し②精製能力(国内、海外)増強への取り組み1.ナイミ石油相が石油政策に関する包括的見解を提示サウジアラビアのナイミ(Naimi)石油鉱物資源相(以下、石油相)は2006年2月7日、ヒューストンで開催されたCERA主催の国際シンポジウムCERAWeek 2006で講演を行い、石油市場の現状と将来についての認識およびそれらを踏まえた同国の石油政策、消費国に対する政策提言などのテーマについて、包括的見解を示した。ナイミ石油相はサウジの原油生産能力について、「2009年までに生産能力を現状の1,100万バレル/日から1,250万バレル/日に引き上げる計画は順調に進捗しており、予定通り達成出来る見込みである」と強調した。一方、米国における中東原油への依存減少(20年間で中東原油の輸入量の75パーセント削減を目指す)や代替エネルギー(エタノール等)の開発促進をうたったブッシュ米大統領の一般教書演説(1月31日)を念頭におき、「石油に取って代わる燃料は存在しない」とけん制した上で、サウジの2010年以降の増強計画(「市場の需要があれば、原油生産能力を1,500万バレル/日に増強」)については、慎重に判断する姿勢を示した。また、ナイミ石油相は、サウジが今後石油市場の安定化に寄与すべく、原油生産に加え精製分野での大幅な強化を図る方針を明らかにした。国内外での精製能力を、今後5年間で約50パーセント増強し、約600万バレル/日に拡大する。ナイミ石油相が今回の講演および前後のメディア取材で述べた見解の骨子は以下の通りである。・われわれ産油国は、クリーンな環境の実現を強く支持しており、多額の研究開発費を投じて厳しい環境基準に適合する石油製品の開発を進めている。消費国の協力(環境規制や製品仕様の合理的運用等)を得られれば、産油国としては、世界の石油および石油製品の需要拡大に対し、より効率的かつ経済的に対応(リーズナブルな価格での提供)することが可能である。効率性と経済性の両面で、石油に取って代わる代替燃料は存在しない。・現在、世界が直面しているのは、原油の供給能力(availability)の問題ではなく、石油サプライチェーンの各段階における配分能力(deliverability)の問題である。すなわち、石油資源は依然として十分な埋蔵量があり、供給能力に懸念はない。配分能力の問題は、投資必要分野に対し適切な投資を実施することにより、解決が可能である。・サウジとしては、2009年までに原油生産能力を現状の1,100万バレル/日から1,250万バレル/日に拡大する計画を予定通り実行することを保証する。その第一段階として、ハラッド(Haradh)油ガス田での原油増産を開始しており、本年4月にサウジの生産能力は1,130万バレル/日に増強される見込みである。・「2010年以降、市場の需要があれば原油生産能力を1,500万バレル/日まで増強する」との計画については、実施の可能性についてじっくり検討している。ブッシュ米大統領が一般教書演説で示した「中東原油の輸入量を20年間で75パーセント削減する」としたエネルギー政策は、サウジの原油生産の計画策定に大きな問題とはならないが、需要動向を見る上で考慮に入れる必要はある。・サウジは国内外での精製能力の増強に積極的に取り組む。今後5年間で、精製能力を約50パーセント増強し、600万バレル/日態勢を確立する。米国メキシコ湾岸では、シェルとサウジアラムコのジョイントベンチャー(Motiva)の製油所精製能力を30万バレル/日増89石油・天然ガスレビュー89ォ合油田等の休止抗井分)であり、事実上「デッドストック」との見方もされていることから、現在のサウジの原油生産は実質的にはフル生産に近いと見ることができる。原油価格(WTI)は、バレル当たり40ドルを突破した2004年5月以降、上昇基調で推移しているが(図2参照)、その間、サウジは消費国の期待に応えるべく、OPEC最大の産油国としての供給責任を果たすことに注力してきたといえよう。盪今後の原油生産能力の増強計画とその進捗サウジは、原油生産能力の増強に関し、以下の基本方針を掲げている。・2009年までに、5件の油田開発プロジェクトを実施し、原油生産能力を1,100万バレル/日(現在)から1,250万バレル/日に引き上げる。・その後も、市場の需要があれば、1,500万バレル/日まで増強する用意がある。2009年までの増強計画については、具体的内容も明らかになっている。すなわち、ハラッド?3、AFK、シャイバ(Shaybah)、クライス(Khurais)、ヌアイイム(Nuayyim)の5つの油田開発プロジェクトを実施し、2009年までに産油能力を150万バレル/日増加(=増強分計230万バレル/日?老朽油田リプレース分80万バレル/日)させ、現在の1,100万バレル/日から1,250万バレル/日に増強するとの計画である(表1参照)。これら5件のプロジェクトの進捗は以下の通りである。サウジ側の発表によれば、ハラッド?3プロジェクトが予定通り2006年2月から原油生産を開始するなど、5件はいずれも順調に進んでいる。2006.3. Vol.40 No.290強する。・高止まりする現状の原油価格については、少なくとも15ドル/バレル分はファンダメンタルズを反映しない投機的な動きと考える。需給実態を反映した適正相場は45?50ドル/バレル程度であろう。・サウジの最優先課題は、今後とも、エネルギー市場の安定をいかにして実現するかであるが、サウジ一国の力では問題は解決せず、産油国、消費国あげて努力すべきである。各国政府は、(米国議会で議論が出ているウインドフォールタックスのような)石油・ガス企業に対する課税強化などではなく、省エネの推進や新規技術の研究、開発投資促進に注力すべきである。ナイミ石油相の見解の中で、①サウジの原油生産能力の増強計画の進捗と見通し、②精製能力(国内、海外)増強への取り組み、の2点については、エネルギー関係者として特に注目しておくべき事項と考えられる。次章以降で、これら2点に関し、現在の詳細動向について述べる。2.原油生産能力の増強計画の進捗盧原油生産実績と現状の生産余力サウジの原油生産量は、イラク戦争終結後約1年間は800万バレル/日台前半で推移していたが、2004年6月に910万バレル/日への増産を図ってからは900万バレル/日台の生産量を維持している。特に2005年4月以降の生産量は、おおむね950万バレル/日前後のレベルで推移している(図1参照)。サウジの現在の原油生産能力は1,100万バレル/日であり、また増産余力は150万バレル/日程度である。ただし、この150万バレル/日分は、大半が市場流通性の低い重質油サファニア(Safania、生産実績OPEC生産枠Dec-05Nov-05Oct-05Sep-05Aug-05Jun-05May-05Apr-05Mar-05Feb-05Jan-05Dec-04Nov-04Oct-04Sep-04Aug-04Jun-04May-04Apr-04Mar-04Feb-04Jan-04Dec-03Nov-03Oct-03Sep-03Aug-03Jun-03May-03Apr-03Mar-03Feb-03Jan-03*クウェートとの分割地帯生産量の50パーセントを含む。NGLは含まない。出所:MEES図1サウジアラビアの原油生産実績の推移千b/d9,8009,6009,4009,2009,0008,8008,6008,4008,2008,0007,8007,6007,400ドル/バレル75706560555045403530252012345678910111212345678910111212345678910111212出所:各種資料WTIBrentDubai図2原油価格の推移(2003-2006)P089-094_トピックス8 06.4.14 14:00 ページ 90@ハラッド?3プロジェクトサウジアラムコが2006年2月8日に発表したプレスリリースによると、ハラッド?3プロジェクトにおいて、最後に残っていた第3ガス・石油分離設備(GOSP-3)の建設工事がこのほど完了し、同プロジェクトの原油生産が開始された。ハラッド油ガス田の32新規坑井のうち数坑井から原油および随伴ガスがGOSP-3に送られ、分離された原油は、160キロメートルのパイプラインを経由してアブカイク(Abqaiq)のスタビライザーに輸送される。ガスはウスマニヤ(Uthmaniyah)のガスプラントで処理が行われている。今後、徐々に生産量を拡大し、本年第2四半期中にはフル生産(原油30万バレル/日、ガス140百万立方リート/日)を実現する計画である。これにより、サウジの原油生産能力は約1,130万バレル/日に増強される(既存油田減退分は考慮せず)。サウジアラムコは、同プロジェクトの建設工事が、ファイナンス計画承認後わずか21カ月で完了し生産を開始した(シャイバ油田での記録を抜いて同社最短記録)としており、増産プロジェクトの早期実現を全社的課題と位置付け、取り組みを行っていることを強調している。また、サウジアラムコの発表は、ハラッドプロジェクトでの増産に言及したCERA Weekでのナイミ石油相講演の翌日にタイミングよく発表され、石油相発言の信頼性を高めるのに一役買った形であるが、発表のタイミングは、石油省、サウジアラムコ間で事前に綿密なすり合わせが行われていたとみるのが妥当であろう。ガワール(Ghawar)油田の一部(南端部)であるハラッド油ガス田は、1996年にArab Light(API33度、硫黄分1.8パーセント)30万バレル/日の生産を開始し、2003年に60万バレル/日に能力増強されている。今回のプロジェクトは第3期開発プロジェクトに当たり、現在の生91石油・天然ガスレビュー91表1当面(2009年まで)のサウジ原油生産能力増強計画の内訳油田・プロジェクト名(場所)能力増強分(バレル/日)完成時期油種+50万+30万2006年2月アラブライト2007年アラブライト①ハラッド‐3(ガワール油田南部)②AFKプロジェクト・アブハドリヤ、ファディル、クルサニヤ(東部州ジュベイル近郊)③シャイバ(UAE国境近く)④クライス(リヤドとガワール油田の中間)⑤ヌアイイム(リヤド南部)計注:2009年までに産油能力150万バレル/日増加(=増強分計230万バレル/日?老朽油田リプレース分80万バアラブエキストラライトアラブライト+10万230万2009年アラブスーパーライト+120万+20万2008年2009年レル/日)出所:各種資料出所:サウジアラムコホームページほか各種データより作成図3サウジアラビア東部の油田分布産能力を30万バレル/日増強し、合計90万バレル/日とする計画である。投資額は約12億ドル(「OPEC UpstreamInvestment Plans 2005-2010」による、以下同じ)とされ、テキント(Techint)(伊/アルゼンチン)のサウジ法人がメCンコントラクターとして工事を担当した。②AFKプロジェクト東部州ジュベイル近くの3つの陸上油田(アブハドリヤ〈Abu Hadriyah〉、ファディル〈Fadhil〉、クルサニヤ〈Khursaniyah〉油田)の開発プロジェクトをAFKプロジェクトと総称している。3油田はいずれも1993年より休止中である。本プロジェクトは、総投資額約22億ドルで、2007年までに3油田合計で50万バレル/日(アラブライト〈Arab Light〉)の生産を開始する計画である。スナムプロゲッティ(Snamprogetthi)(伊)がGOSP-1を10億ドルで、テクニップ(Technip)(仏)/ベクテル(Bechtel)(米)連合がGOSP-2他を15億ドルで、それぞれFEED(基本設計)およびEPC(設計・調達・建設)契約を締結し、建設を進めている。GOSP以外の主なプロジェクト対象設備は、140の坑井、ガス・石油・水パイプライン(各500キロメートル以上)等である。③シャイバプロジェクトアブダビとの国境近くに位置するシャイバ油田は、残存可採埋蔵量が約150億バレルと巨大であり、サウジの巨大油田の中で最も新しい油田(1967年発見)である。1998年に生産を開始し、現在の生産量は50万バレル/日である。アブカイク処理施設で他の軽質油とブレンドされ、アラブエキストラライト(ArabExtra Light)として出荷されている。随伴ガス8億8,000万立方フィート/日は油田再圧入されている。今回、新たな能力拡張プロジェクトとして、GOSP、脱水・脱塩装置、パイプライン、ガス再圧入装置等を増設し、2008年までに生産能力20万バレル/日の増強を図る。総投資額は約14億ドル。現在、ジェイコブズエンジニアリング(Jacobs Engineering)(米)、SNC ラバリン(Lavalin)(カナダ)、サウドコンサルト(SaudConsult)(サウジ)のコンソーシアムがサウジアラムコとFEED契約を締結し、実施中である。さらに本年1月23日締め切りで、エンジニアリング会社に対する技術入札が実施されたと伝えられている。工事コントラクターは未定であるが、現代エンジニアリング(韓国)、スナムプロゲッティ(伊)、テキント(伊/アルゼンチン)、ベクテル(米)、ABBラムス(ABB Lummus)(スイス)等が候補として挙げられている。④クライスプロジェクト2009年までの能力増強計画のなかで、クライス油田開発は中核的プロジェクトと位置付けられている。現在、アラブライト約10万バレル/日の生産を行っているが、既生産率は約2パーセントにとどまっており、残存可採埋蔵量は約85億バレルと巨大である。2009年までに、生産能力を120万バレル/日増強する計画であり、総投資額は、5つのパッケージ合計で約80億ドルと最大級の規模になると伝えられている。2005年6月にフォスターウィーラー(Foster Wheeler)(米)がプロジェクト・マネジメント契約を結び、業務を行っている。さらに、サウジアラムコは、パッケージごとに工事コントラクターの選定作業を進めている。このうち、パッケージ2(水供給・圧入装置の新設、海水処理設備の増設、パイプライン2系統〈合計延長160キロメートル〉の建設等)に関する入札が本年1月17日締め切りで実施された模様である。フォスターウィーラー、フルオル(Fluor)(ともに米)、現代エンジニアリング、テクニップ(仏)、ABBラムス、スナムプロゲッティ、テキント等が関心を示している。また、パッケージ3(天然ガス処理装置2基の建設)については、1月上旬に事前資格審査の結果がエンジ企業に通知され、2月上旬をめどに入札が締め切られる見込みである。さらに、パッケージ1(ガス・石油分離設備4基(能力合計130万バレル/日)の建設)の入札も近く開始される見通しである。⑤ヌアイイムプロジェクト投資額約4億ドルで、2009年までにアラブスーパーライト(Arab Super Light)(API50度、硫黄分ほぼゼロ)10万バレル/日の能力増強を図る計画である。クラフグループ(Clough Group)(豪)がFEEDを実施中と伝えられている。ガス・石油分離設備1基の建設を予定している。本プロジェクトについては、ターンキー契約ではなく、サウジアラムコが主要エンジニアリングを担当し、エンジニアリング会社を外注先として起用するという方式が検討されている。蘯 サウジアラムコのフセイニ元副社長が指摘した増産計画遅延の可能性を石油省が否定サウジアラムコのサダッド・フセイニ(Husseini)元副社長は2005年11月9日、ロイター通信の取材に答え、サウジが掲げる1,100万バレル/日から1,250万バレル/日への増産計画は、世界的なリグや油田関連資機材の不足から2?3年遅れる可能性があると語った。フセイニ氏は2004年3月に退任するまで、長く同社E&P部門のトップの地位にあり、サウジの油田状況を熟知する人物だけに、石油関係者の間でも波紋を呼ぶ発言となった。これに対し、サウジ石油省はただちにこれを否定するコメントを発表し、増産計画は予定通り進んでいることを強調した。サウジアラムコ関係者によると、リグについては、2004年の稼働実績55基を2006年に110基に倍増させるとの計画に基づき、サウジで活動する掘削会社9社(ネイバーズ〈Nabors〉、プレシジョンドリリング〈Precision Drilling〉、中国企業等)との入札を精力的に実施しており、11月時点の見通しとして、2005年中に稼働リグ数は25基追加され、年末までに95基に到達する見込みとされた。また、2006年から2009年まで毎年20億?25億ドルを開発掘削費として投下することも明らかになるなど、サウジ側は具体的な説2006.3. Vol.40 No.292\22010年以降のサウジ原油の生産能力増強計画油田・プロジェクト名能力増強分(場所)マニーファ(ペルシャ湾沖合)出所:OPECホームページ等(バレル/日)+30万?60万完成時期油種2010年以降Arab Heavy表3サウジアラビアの精製部門<国内>製油所ラスタヌラ(Ras Tanura)リヤド(Riyadh)ラビグ(Rabigh)ジェッダ(Jeddah)ヤンブー(Yanbu)サムレフ(Samref)ヤンブーサムレフ、ジュベイル(Jubail)ヤンブージュベイル<国外>現在の精製能力(千バレル/日)新規精製能力(千バレル/日)550120400085235400320備考石化増強計画中(2010年予定)住友化学とのJV、石化統合プロジェクト実施中(2008年完成予定)石化増強計画中(2012年予定)エクソンモービルとのJVシェルとのJV425400-450新規製油所建設予定(2010年完成予定)新規製油所建設予定2008年完成予定3540501525NANA未定未定30016020033056518072551580??フィリピン韓国S-OilPetronモティバ(Motiva)米国昭和シェル日本シノペック/福建中国シノペック/青島中国?インド出所:International Oil Daily 他会社/場所国現在の精製能力(千バレル/日)サウジアラムコ出資比率(パーセント)新規精製能力(千バレル/日)備考示した中東原油比率の削減方針と、それに対するナイミ石油相の増産慎重発言(上述)で水を差された形であるが、サウジアラムコは、1,250万バレル/日を上回る増産実施に向けて検討を粛々と進める方針である。同社は2007年初頭に、マニーファ開発のFEEDを実施したい考えであると伝えられている。ただし、世界的に重質油処理能力が不足する中、今後の原油供給増加分の主流となる重質油(マニーファ油田等)の受け皿が市場に存在するのかという疑問明を行って、増産計画が順調に進行していることをアピールした。増産計画が今後も遅滞なく進められるかどうかは予断を許さないが、本件に関する一連のサウジ側発言を見る限り、石油市場に対し増産をコミットしたサウジの極めて真剣な姿勢を見て取ることができよう。なお、フセイニ氏は、IEAが発表した今後の産油国の生産見通しの中で、2030年にサウジアラビアの生産量が1,850万バレル/日に達するケースを想定していることについても、疑問を投げかけた。サウジの豊富な原油埋蔵量の最適な利用法は、今後20年にわたって生産量の上限を1,350万バレル/日とすることであるとした。盻 2010年以降の増産計画の一環でManifa重質油田の開発を検討。製油所新設とも連動か?2010年以降の増産計画(1,250万→1,500万バレル/日へ能力増強)は、当初、具体的内容が不明だったが、休止中のマニーファ(Manifa)沖合油田の開発(生産再開)計画がその一環であることが明らかになった。既に、「OPECUpstream Investment Plans 2005-2010」(OPECホームページ)の国別プロジェクトの内訳に、2010年以降のプロジェクトとして唯一掲載されている。同プランによると、投資額約10億ドルで、フル生産能力30万?60万バレル/日程度の増強(100万バレル/日程度との専門誌の見方もある)の実現を目指す。1957年に発見されたマニーファ油田は、API27度の重質原油(アラブヘビー〈Arab Heavy〉)のため市場確保が難しいという問題があり、長期にわたり生産を休止している。しかし、残存可採埋蔵量約170億バレルとされる巨大沖合油田で、既生産率が約1パーセント強に過ぎないことから、大きな増産余力を有していると考えられている。ブッシュ米大統領が93石油・天然ガスレビュー93ヘ、今後ともついてまわる。照)。注目されるのは、サウジが進める精製能力の増強計画(後述)である。サウジは重質油問題の解決策として、ジュベイル(Jubail)、ヤンブー(Yanbu)に2010年頃をめどに建設を計画している新規製油所(能力40万?45万バレル/日)の設置と、重質油田の開発を連動させる考えであるとみられる。すなわち、従来、サウジは重質油処理をもっぱら消費国側が対応すべき問題としていたが、今後は、国内に重質油処理が可能な大型製油所を建設することで、自らのイニシアティブで自国重質油の市場流通性を高める方針に転じたものと思われる。サウジが打ち出した下流(精製)部門の大幅拡張方針は、重質油の処理問題を解決しなければならない上流(油田開発)部門側の事情もその背景にあるとみるべきであろう。3.精製能力増強計画サウジアラビアは国内2カ所(ジュベイル、ヤンブー)に20数年ぶりに製油所の新設を計画するなど、国内・国外で本格的な精製能力の増強に乗り出す。サウジアラムコのグロス精製能力は、現状の390万バレル/日から今後5年間で約600万バレル/日に5割増強される(表3参この600万バレル/日というレベルは、精製能力で世界一のエクソンモービルの精製能力(630万バレル/日)に匹敵するレベルであり、サウジアラムコは上流(原油生産)分野に続き下流(精製)分野でも世界トップクラスの能力規模を有することになる。石油専門家の間では、「サウジアラムコは国営石油会社(NOC)であるが、事実上の国際石油企業(IOC)あるいはメジャーの一員とみなすことも可能である」(ウッドマッケンジー〈Wood Mackenzie〉社のGelder氏)といった見方も出されている。精製能力増強の内訳であるが、サウジ国内ではペルシャ湾岸のジュベイル、紅海沿岸のヤンブーでそれぞれ40万バレル/日クラスの製油所を新設する。サウジアラムコと外資との合弁で建設される予定であり、トタール、シェブロン、コノコフィリップス、マラソン、エクソンモービル、シェルおよびシノペック等が候補に挙がっているとされるが、ジュベイルの製油所については、トタールが選定されたとの報道もある。また、2006年1月のアブドラ国王訪中、訪印時に、相手国精製部門への参入が協議されたとの情報もあり、インド企業が入札に参加する可能性もある。ラビグ(Rabigh)では、住友化学と合弁で石化・精製統合プロジェクト(2008年完成予定)が進められている。国外では、米国メキシコ湾岸で、シェルとサウジアラムコのジョイントベンチャー(Motiva)の製油所の精製能力を30万バレル/日増強する計画である。またフィリピン・ミンダナオでの製油所新設、韓国S-Oil社による製油所新設等も検討を進めている。さらに、インド国内の製油所2カ所への出資についても、調査を行っていると伝えられている。サウジが精製能力の増強に注力する理由としては、「世界的な精製能力不足の解消を図り、市場安定化へ貢献する」という表向きの理由のほかに、LPGやガソリン等の石油製品分野でのシェアの維持・拡大、成長するアジア太平洋市場(特に中国、インド)のニーズ(スペック)にマッチした製品生産能力の拡大、重質油増産対応(前述)といった面が考えられる。(猪原 渉)2006.3. Vol.40 No.294
地域1 中東
国1 サウジアラビア
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 中東,サウジアラビア
2006/03/20 [ 2006年03月号 ] 猪原 渉
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