ページ番号1006217 更新日 平成30年3月5日

インド:アイヤル石油相交代後のエネルギー政策 ~イランからのガス輸入計画の行方、中国との協調ほか~

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レポートID 1006217
作成日 2006-03-20 01:00:00 +0900
更新日 2018-03-05 19:32:42 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 探鉱開発天然ガス・LNG
著者
著者直接入力 坂本 茂樹
年度 2006
Vol 40
No 2
ページ数
抽出データ インド:アイヤル石油相交代後のエネルギー政策?イランからのガス輸入計画の行方、中国との協調ほか?2006年1月末のインドの内閣改造で、石油天然ガス相がアイヤル氏からムルリ・デオラ(MurliDeora)氏に交代した。イランの核開発を巡って国際社会の緊張が高まる中、イランからのガス輸入計画を積極的に推進していたアイヤル氏が交代になったものとみられる。石油天然ガス相交代後、インドのエネルギー関連事業の中で、イランからのパイプラインガスおよびLNG輸入計画は、輸入価格交渉が難航しているほか、イラン現政権と国際社会との緊張が高まりつつあることなどから、遅延が避けられないものとみられる。一方、2006年1月上旬に包括協力協定を結んだ中国とのエネルギー協力は枠組みの中で進められるものとみられ、エネルギー価格設定などインドの国内政策は、現行の政策が踏襲されるものと考えられる。1.石油天然ガス相の交代:アイヤル氏からデオラ氏へ2006年1月29日に実施されたインドの内閣改造で、アイヤル石油天然ガス(以下、石油相)が突然、閣内で青年問題・スポーツ相に横滑りすることが発表された。後任には、マハラシュトラ州選出の国民会議派の国会議員であるムルリ・デオラ氏が就任した。2004年に就任したアイヤル前石油相は、拡大するインドのエネルギー需要に対処するため、熱心にエネルギー外交に取り組んできた。2005年には首都デリーに各国のエネルギー閣僚を招いて産油国と消費国との対話を主催し、またロシア、中国、中東、中央アジア、アフリカ、南米等の資源国を頻繁に訪問してエネルギー外交を繰り広げた。特に複雑な地政学上の対立と問題を抱える南アジア、中央アジア、西アジア地域内における国際石油・ガスパイプライン実現に向けて、熱心に関係国との折衝を行ってきた。米国とイランの政治的対立から、米国がインドに対して、イランからのパイプラインガス輸入事業への反対を繰り返しとなえても、一貫して同パイプライン事業の積極的な推進を主張してきた。また、1月上旬に北京に赴いて、中国との包括的なエネルギー分野での協力にかかわる協定締結を実現させ、両国企業による海外での石油ガス資産共同取得を推進させる構えであった。一方、インドのマンモハン・シン首相は、2005年7月下旬に訪米して、インドの核開発に関して米国首脳と協議し、インドの原子力平和利用に対する米国の協力を取り付けた。その際に、地元メディアに「イラン/インド間の輸入ガスパイプライン事業はリスクが高い」と述べるなど、同事業に対して慎重な姿勢が垣間見られた。しかしインド政府内部でイラン事業に関して見解の異なる局面が表面化することはなかった。またイランでは、ハタミ前大統領に代わって2005年8月に就任した保守強硬派のアハマディネジャド新大統領のもとで、核開発問題等を巡って国際社会との緊張が高まりつつある。国際原子力機関(IAEA)がイランの核開発問題を国連安全保障理事会に付託することを決めた際には、インドも賛同している。今後の国連安保理の審議によっては、何らかの対イラン経済制裁実施の可能性も考えられ、そうなると、パイプラインガスの輸入などイラン絡みの事業を進めることは難しくなろう。こうした状況下、一貫してイランからのガス輸入事業の推進を主張して米国の反感をかっていたアイヤル前石油相の存在は、インド政府にとって煙たくなってきたとみられる。前石油相のエネルギー外交の姿勢は理想主義的であり、エネルギー政策の発想はユニークであったが、難しい環境下で政策を実現させる調整力が一歩及ばなかったものとみられる。2006.3. Vol.40 No.2100ルぼ合意に至ったものとされている。今後は3国の最終協議を経て、2006年3月までにパイプライン建設に関する結論を出すことになっている。しかしながら売買価格に関しては、割安な価格を求めるインドに対して、イランはLNGに準じる高価格を要求しているものと伝えられており、いまだ合意に至っていない。デオラ新石油相は、現在の国際政治情勢下で、積極的に推進すれば対米関係を損ねることになりかねない本事業に対して、より慎重な対応を取るものとみられている。一方、1月末から2月初めにかけて、パキスタンのムシャラフ大統領およびイラン石油省高官がそれぞれ、インドがパイプライン建設に参加しない場合でも、イランからパキスタンまでのガスパイプライン建設を実施すると発言している。しかし、パキスタンだけにガスを供給する場合、需要規模が事業全体の30パーセント程度に減少して事業採算が大幅に悪化するため、イランとパキスタンのみによる事業の実施は非現実的と考えられる。また、ムシャラフ大統領は米国寄りの政治姿勢を取っており、米国政府と真っ向から対立する判断をするとは考え難い。さらに、イランのガス供給力上のネックも考えられる。専門家の中には、イランの既存生産油田の生産性は低下しており、今後、2次回収用として油田に圧入する大量のガスが必要とされるが、現在、計画している圧入用ガス生産量では必要量を賄えず、輸出用ガスを投入せざるを得ない状況が考えられ、将来のガス輸出余力は決して万全ではないとの見方がある。イラン側のガス輸出交渉の際に(LNG輸出を含む)、高価格や厳しい取引条件を提示したり、また輸出開始を遅らせたりするような言動があることの背景には、ガスの輸出余力に不安があることも理由の一つであるとみられる。インド、パキスタンの中長期的なガス輸入の必要性には疑問の余地がない。従って、両国が将来にわたってガス資源に富むイランからのガス輸入を断念することは考えられない。しかし、イランを取り巻く現在の国際政治環境を含めた上記の要因を勘案すると、2006年3月までにパイプライン建設の明確な決定を打ち出す可能性は低いとみられる。盪LNG インドは2005年6月、イランから年間500万トンのLNGを25年間購入する売買契約(SPA)を締結した(2009?10年頃に輸入開始、仕向け地はペトロネットのダヘジ〈Dahej〉およびコチ〈Kochi〉基地)。さらに別途年間250万トン分のLNG輸入に関しても交渉中である。しかし、イラン側はインドとのLNG売買契約をいまだ批准していない。2005年6月に締結したSPAの価格フォーミュラ前提を用いると、LNG価格は3.2ドル/百万Btu(英国熱量単位)となるが(WTI上限価格=31ドル/バレル)、その後の原油価格高騰によりLNG長期契約すうせいが8ドル/百万Btu超となって価格の趨勢いることが理由である。イラン側はLNG価格条件の変更を求めているといわれ、イランからのLNG輸入の見通しはさらに混迷の度を深めている。イランの要求は、価格フォーミュラにおける基準原油の上限価格の引き上げ、および原油価格が80ドル/バレルを超えた場合に契約数量の一部の供給停止を含むものと伝えられている。インド側は、これらの条件が簡単にのめるものではないことから、困惑しているものとみられる。3.中国とのエネルギー協力関係の将来アイヤル前石油相は、2006年1月上旬に北京を訪問し、12日に国家発展委員会デオラ新石油相は、イラン事業の推進には若干、懐疑的な立場にあると言われる。インドが中長期的にエネルギー輸入を必要とすることに変わりはなく、インドのエネルギー政策が石油相の交代によって大きく転換されるわけではない。しかしインド政府は、現在の国際政治環境と事業の交渉相手先との経済条件にんがみて、より現実的な対外エネルギー政鑑か策を取っていくものと考えられる。以下に、その見通しを述べる。2.イランからのガス輸入計画の行方インドはイランから天然ガスを輸入する計画を着々と進めてきた。しかし、イラン新政権の対外強硬姿勢によって生じあつれき、およびイランが求た国際社会との軋轢める厳しいガス輸出の経済条件(売買価格等)により、当初計画したタイミングによるガス輸入の実現は難しい状況になりつつある。盧パイプラインガス輸入このガス輸入計画は、イランのサウスパルスガス田から陸路パキスタンを経由して、インドの既存のHPJ幹線パイプラインに接続する総延長2,775キロメートルのガスパイプラインを建設して、イランの天然ガスをインドとパキスタンに供給する事業である。パイプラインの輸送能力は1億5,000万立方メートル/日(=53億立方フィート/日)で、インドがガス供給全体の66.7パーセントを、パキスタンが33.3パーセントを購入する。投資額は、2005年半ばに70億米ドルに上方修正された(当初の投資見積り額は40億米ドル)。インド、パキスタンおよびイランの関係3国が、それぞれ2カ国から成る三つの合同作業部会(Joint Working Group:JWG)でプロジェクトの法律面、経済性、ファイナンス、および技術的問題を検討し、101石油・天然ガスレビュー101蜚C(大臣に相当)の馬凱氏とともに、インド、中国両国間の包括的なエネルギー分野での協力協定に調印した。インド、中国の国有石油企業は、石油ガス資産の国際入札においてしばしばしれつな争いを繰り広げており、結果的に、熾烈規模、資金力に勝る中国企業が落札に成功していた。アイヤル前石油相は、この入札競争を回避するため、昨年来、中国に特使を派遣して粘り強く交渉を重ね、今回の両国間エネルギー分野の協力協定調印にこぎつけたものである。なお、閣僚による協力協定調印と併せて、両国各石油ガス企業間で、上流の油ガス田探鉱、開発から中・下流の精製、輸送、販売および技術分野の協力にかかわる協定が調印された。両国政府は、アイヤル前石油相の交代後も、基本的にはこの協力関係の維持を望むものと考えられる。両国のエネルギー消費大国としての存在感は、今後さらに増大し、ガス利用、広域パイプライン敷設など、中、下流の事業領域で両国間の協力が求められる局面が増えてこよう。一方、石油ガス上流資産取得に際しては、ともにエネルギー消費大国として有限の資源を求める立場にあることから、協力というよりは競合する機会の方が多くなるものと考えられる。2006年1月のエネルギー分野協力協定調印後も、カザフスタンのネイションエナジー(Nation Energy)資産の買収、およびカナダオイルサンド資産案件など、両国の石油企業が競合するケースが続いている。は、両国の協力関係をうたう何らかの協定があった方が、両者の調停をスムーズに実施することができると考えられる。さらに、先行する中国を追う立場にあるインドの方が、より切実に両者間の協力あるいは調停を必要とすると考えられる。4.インド国内のエネルギー価格政策インド政府は国内エネルギーの市場価格化を進めようとしているが、まだ道半ばであって、完全市場化までには長い時間を要するものとみられる。その背景には、発展途上のインド経済が多くの貧困層を抱え、また国民会議派主体の現連立政権は共産党など左翼政党の閣外協力のもとで成立しているという政治的な事情がある。灯油、LPガス(家庭の厨房用燃料)、ガスなど、国民生活に直結する燃料は、実質的には統制価格に近い。特に、貧困層を含む国民の多くが厨房用に用いる灯油は、政策的配慮から多額の補助金によって安価に設定されている。そしてこの補助金は、政府、原油供給者(ONGC等の原油生産、供給企業)および石油製品販売者(IOC、ヒンドゥスタン、リライアンスなどの石油精製、販売企業)が分担して負担している。昨今の原油価格高騰のあおりを受けて、石油企業の補助金負担が増大し、企業の経営を圧迫している。特に、専業の石油精製、販売企業の多くは、2005年以降の採算が赤字に陥っているものとみられる。競合あるいは利害の対立する局面で石油産業界においては、石油政策の元締めであるアイヤル前石油相の評判はすこぶる悪かった。「実際の商売を全く知らない外交官出身の大臣」などと言われる。確かに、前石油相がとなえた理想的なエネルギー外交の姿勢は、知己の少ない石油産業界にあってはなじみが薄く、好意的に映らなかったのであろう。しかし、多くの石油精製、販売企業を赤字に陥れることになった石油価格政策は、現政権が置かれた政治的背景と原油価格高騰によってもたらされた結果であり、アイヤル前石油相のみが責められる筋合いではない。デオラ新石油相は、就任後のインタビューの中で、「石油製品の急激な引き上げを行わない」と答えている。多くの貧しい農民人口を抱えるインドでは、低所得層の納税、電気料金支払いなどの制度が確立されていない。民主主義国家インドにおいては、選挙での貧困層の票田を気にしながら行う価格政策は、進め方がまことに難しい。今後も、エネルギーの市場価格化は、長期的視野に立って緩慢に進めざるを得ないとみられる。総じて、イラン絡みのガス事業は遅延を余儀なくされそうな見通しであるが、その他の政策は、現在の枠組みに沿って進められるものとみられる。(坂本茂樹)2006.3. Vol.40 No.2102
地域1 アジア
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国10
国・地域 アジア,インド中東,イランアジア,中国
2006/03/20 [ 2006年03月号 ] 坂本 茂樹
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