ページ番号1006222 更新日 平成30年2月16日

知られざる新興大産油国 ~カザフスタンはこんな国~ 

レポート属性
レポートID 1006222
作成日 2006-05-20 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 探鉱開発
著者
著者直接入力 角崎 利夫
年度 2006
Vol 40
No 3
ページ数
抽出データ アナリシスアナリシス外務省 前駐カザフスタン日本国特命全権大使角﨑 利夫知られざる新興大産油国?カザフスタンはこんな国?編集部前書き 平成17年度にJOGMEC内部で運営しているロシア・中央アジア投資環境研究会において、任地より帰国されて間もない前駐カザフスタン日本国特命全権大使の角﨑利夫氏に、カザフスタンの政治・経済に関して特別に講演していただいた。石油・天然ガス動向に関心の深い読者にも有益な内容が随所に盛り込まれていることから、前大使より特別にご許可を頂き掲載する。度規模を拡大してパイプを作る工場を建てると言っていた。 ナザルバエフ大統領は若いころ鉄鋼労働者で、イスパット・カルメットの前身である国営製鉄会社で働いていた。私はテミルタウというカラガンダの隣町にあるこの製鉄所を訪問したことがあるが、そこには、そこで働いていた若いころのナザルバエフの写真が貼ってあった。エルビス・プレスリーに似た二枚目であった。図1 アスタナの街並み 土地に関しては、2年ほど前に「新土地法」を採択し、農業用地の私有化も断行している。土地を抵当に入れて金を借りるということも最近随分多くなっており、現在カザフスタンでは不動産が値上がりしている。農業用地の場合は、やはり外国人に買い占められることを懸念して、外国人には借地だけが認められており、制度上買うことは出来ない。市民権を放棄して国外に去る場合には土地は国家に返却するとでいるということだ。 例えば、わりと早めに銀行改革を進めており、最低資本金の問題を含めいろいろな制度改革を早くから導入しとうて、銀行の淘を相当進めた。1993年には200くらいの銀行があったが、1998年にはそれが71まで減り、2001年には48、今ではもう30以下である。非常に質の良い銀行だけが残ってきている。 電力も随分早い時代から改革を進めており、1999年に「電気エネルギー法」を公布し、規制緩和の方向で取り組んでいる。発電・送電・配電部門の三つに分け、送電部門は国営企業がしっかり維持しているが、発電と配電はもう民営化をしている。発電部門は実は1996年から民営化しており、米国企業なども進出している。配電部門も1999年から民営化しており、ここにも外国資本が入っている。 外国企業との合弁事業は、サービス産業も結構あるが、目立つのはトルコ資本の建築ラッシュだ。アスタナなどに新しいホテルが随分出来ているが、ほとんどトルコ系である。製造業となると数は少ないが、最近チェコ系自動車企業シュコダの組み立て工場の進出が決まった。そういう、車の組み立てを細々とやるくらいのところは出てきている。インド系製鉄会社イスパット・カルメット(ミッタル・スチール)も進出している。今、カザフスタンで唯一と言っていい製鉄会社であり、今汰た1. カザフスタンの国内事情? カザフスタンの政治・経済はかなり安定している 私は2002年の7月から2005年10月までカザフスタンに勤務していた。そして改めて思ったことは、私はロシアにも随分関係していたが、カザフスタンというのはミニ・ロシアであるということだ。 カザフスタンは、ロシアの大体10分の1の国家である。人口も1,500万で約10分の1、GDPの規模も大体10分の1くらいであると考えれば良い。人口1人あたりのGDPについては、3,000ドルを超えるレベルになってきている。最近5年間平均の経済成長率はおよそ10パーセントで、伸び率はむしろロシアよりも高い。 ナザルバエフ大統領は、いずれロシアを追い越すことを目標にしている。ナザルバエフ大統領の言葉を借りれば、人口では中央アジアの4分の1にあたる1,500万しかないカザフスタンは、中央アジアのGDPの3分の2を生み出しており、彼は中央アジアのリーダーということを非常に意識している。 カザフスタンは今、非常に安定している。その安定の基礎となっているのは、やはり好況な経済である。石油価格が高止まりしている一方、経済改革を進めてきたことが、良い効果を生ん57石油・天然ガスレビュー006.5 Vol.40 No.358アナリシス2003年夏撮影図2 日本の無償資金援助による首都アスタナ救急センターへの救急車寄贈式典で筆者(左)と談笑するナザルバエフ大統領ようだ。しかしながら、やはりカラー革命的なものが起こりにくい背景には、経済成長が低所得層にもスピンアウト効果(波及効果)を生み出しているという事情があろう。 カザフスタンでも、大統領の親族への富の集中がある程度行われている。しかしカザフスタンには結構いろいろな寡占資本家グループがあり、それぞれが富を蓄える状況になっている。 これはキルギスと比較すると一目然だ。キルギスの場合、なぜあのような革命が起きたのかと言えば、大統領の親族が極めてえげつない形で富の集中を行ったことに対する風当たりが相当強くなって、それが一つの起爆剤になったと言われている。しかしカザフスタンの場合、大統領近親者だけが目立つことはない。キルギスはやはり国が小さいので、一族がやると非常に目立ってしまうという状況にあった。 さらに、カザフスタンの場合、野党が非常に弱く、ウクライナやグルジアと異なり、カリスマ性のある指導者が不在であるため、あのようなカラー革瞭りょうぜんはびこなってしまう。とにかく、怠けていても最後にちょっとお金を積めば良い成績がもらえるということになっている。カザフスタンの要職にある人が、教育の腐敗というのはまさに国家の将来にかかわる大問題だということを言っていたが、いかんせん教員の給与水準が低いということもあり、そういうことが蔓延ってしまうという状況が見られる。 2005年7月にカザフスタンは、教員や病院の医師といった国家・地方公務員の給料を一挙に30パーセントもアップしている。さらに年金なども相当アップしている。これは、大統領選を前にナザルバエフ大統領の人気を高めるための工作という側面もあるが、やはり公務員の給料が低いという状況では、汚職が蔓延るということに対する対策でもあるのだろう。 大統領自身もいろいろな演説で、汚職対策が重要だということは言っており、警察などの取り締まりもそれなりにやっているようだが、なかなかこの体質は治っていないという実態があるいうことになっている。これはロシア人を念頭に置いていると思われる。つまり、ロシア人が土地を得ても、国外に去る場合には土地を手放さなくてはならない。 経済改革は非常に進んでいるということで、今、WTO加入交渉を積極的に進めている。おそらくロシアとカザフスタンは、ほぼ同じ時期に加入していくのではないか。中央アジアでは、現在キルギスがすでに加入しているが、カザフスタンがそれに続くことになろう。経済改革面では、CIS諸国の中で最も進んでいる国の一つである。 それが政治的安定の基礎になっている。昨年12月4日に大統領選挙が行われたが、現職のナザルバエフが圧勝した。ある西側外交官も言っていたが、アゼルバイジャンでも選挙があったが、あの選挙の後、アゼルバイジャンでカラー革命的なことが起これば、それがカザフスタンに波及するということは十分考えられた。しかしアゼルバイジャンがあのような形で収まっていくというのであれば、カザフスタンで不穏なことが起きる可能性はなかった。つまり、グルジア、ウクライナ、キルギスと続いたカラー革命がカザフスタンに波及するということはなかった。 もちろんナザルバエフ大統領には権威主義的、強権主義的な体質が残っており、国民の間の貧富の差は拡大する一方であり、社会の隅々まで汚職、腐敗体質がしみ込んでいるということはロシアと変わらない。 私がいちばん驚いたのは、汚職体質が教育の場にまで浸透していることだ。カザフスタンでよく聞くことは、大学などに入学するためにある程度お金を積むと、試験の成績に関係なく入れるということだ。さらに学校で良い成績を取ろうとすれば、お金を出せば簡単に優が取れる。従って、学生が真剣に勉強するインセンティブがなくmられざる新興大産油国 ?カザフスタンはこんな国?命は極めて起こりにくい。また、ナザルバエフ大統領も結構人気が高い。地方に行くと、やはりナザルバエフのおかげで生活が少しずつ良くなっていると言う人が非常に多い。? 「遊牧の民」カザフはイスラム化が最も遅かった もう一つ、カザフスタンが他の中央アジア諸国と比較して安定しているのは、イスラム教の影響が弱いことがある。この点、ウズベキスタンと比べると分かりやすい。 中央アジアは「遊牧の民」カザフ人、「オアシスの民」ウズベク人、「山岳の民」キルギス人という三つの民からなる。「オアシスの民」というのは、古来オアシスの周りにずっと定住してきたため、イスラムの伝道師が布教をしやすい環境にあり、古い時代からあそこにはイスラム教が普及してきた。 「遊牧の民」はつかみ所がなく、布教しようにも、次に行ってみると何百キロと離れた所に移動しているため、イスラム教の布教は難しかった。そのため、カザフ人は18~19世紀になってようやくイスラム化している。 彼らはチュルク系民族で、固有の祖先信仰、太陽信仰が非常に根強く、それと併存したような、奇妙な宗教の状況下にある。その点、何となく日本に2003年夏撮影図3 セミパラチンスク空港で民族衣装の女性から花束を受ける筆者59石油・天然ガスレビューおける仏教と神道の関係を見ているような感じがして、親しみを覚える。 ちなみに日本は太陽を国旗にしているが、カザフスタンもやはり国旗に太陽を使っており、私がもう一つ管轄していたキルギスも国旗には太陽を使っている。つまり、中央アジアの国々の国旗に関し、三日月と星を使うか、太陽を使うかという選択は非常にシンボリックであり、カザフスタンやキルギスの場合はイスラム教の影響よりも、古来の信仰である太陽信仰のほうが強いということを暗示しているのだろう。? 安定の影の中に見える脆弱さ 中央アジアでは、トルクメニスタンも天然ガスのおかげで統計上成長率は高い。それを例外とすると、カザフスタンと中央アジアの成長率の格差が非常に広がっている。これが地域の不安定化につながるという問題があり得る。ナザルバエフ大統領がつい最近、中央アジア諸国連合というような構想を発表し、また中央アジアの市場をもう少し統一していくべきだということも言っている。それは、カザフスタンにおける製造業の発展のためには、中央アジア全体の市場が重要だというねらいもあるだろう。しかし、カザフスタンだけがますます経済発展するけれども周りの国は全部貧しいというのでは地域が不安定化するため、やはり全体として安定的な発展をしていく必要があるという発想に基づくものと思われる。 その点、日本政府が今進めている「中央アジア+日本」という対話は、非常に時宜を得たものであり、今の中央アジア地域においては高く評価されるべき政策だと思う。ぜいじゃく 長期的に見れば、カザフスタンの安定性にも脆弱さはある。まず一つは、今のカザフの経済成長と安定というのは、石油に依存していると言っても過言ではない点だ。ナザルバエフ大統領は資源産業以外の製造業にも「投資してくれ」と一生懸命言っているが、それはままならず、製造業を発展させるのはなかなか難しい状況にある。やはりカザフスタンの地理的な位置、つまり内陸国であって海から遠く、市場からも遠いということは重要だ。人口規模1,500万のカザフスタンだけではとても、製造業を引きつける市場にはなれないという問題がある。資源依存型経済の脆弱性というのは、どうしても免れない。 宗教的、民族的な問題も存在している。カザフスタン南部では、ウズベク系住民が少しずつ増加している。その背景の一つとして、ウズベク系住民のほうが出生率が高いことがある。 もう一つは、ウズベキスタンから非合法で国境を越えて入ってきていることだ。その人たちはイスラムの信仰心が厚い。すなわち、次第に南のほうからイスラムが浸透してきているという状況が見られる。今後5年、10年で何か大きな社会変化をもたらすとは思わないが、もう少し長いスパンで考えれば、ウズベク系住民の増加はあの国の社会の変動要因になり得よう。 ナザルバエフ大統領は、多民族・多宗教国家であるカザフスタンをうまく統治しているが、やはり民族的多様性が本来持っている政治的な弱さは消し得ない。その一つはロシア人の問題である。 現在の人口構成としては五十数パーセント、半分以上がカザフ人。その次に多いのがロシア人で30パーセントくらいである。元々ロシア人の数はもっと多かったが、相当ロシアに移住した。そして元来100万人のドイツ人がいたが、既に70万人がドイツに帰還してお閨A30万人がカザフスタンに残っている。いずれにしろ、それだけ多くのロシア人を抱えているため、今日カザフ語が国家語、ロシア語が公用語となっている。公文書にも一応両方使われているが、傾向としてはカザフ語重視という民族主義的傾向が伺える。このような傾向は、例えば官僚組織の中でも上のほうの人たちが徐々にロシア系に代わってカザフ系が増えていることかアナリシスらも見て取れる。そのような状況が、今後民族関係にどういう影響を与えていくかが注目される。2. カザフスタンの国際関係? 米国との関係は緊密 今日、カザフスタンには外国軍の基地はない。ロシア政府がバイコヌールの宇宙基地を借りているが、これは特に軍事基地ということではない。中に軍人がいるようなことはあるが、軍事基地として借りているわけではない。 カザフスタンと米国の関係だが、9.11後にアフガニスタン情勢が紛糾した時にも、米国はカザフスタンには基地の設置を要求していない。アフガニスタンからカザフスタンは遠すぎるということで、ウズベキスタン、あるいはキルギスの基地で十分対応できるということであった。他方、カザフスタンは今でも米軍機の上空通過権および緊急の場合の着陸権を認めている。 キルギスに関しては、米軍が駐留しているのみならず、ロシア軍も25キロ離れたところのカント基地に駐留している。しかし、カザフスタンは外国の基地は置かないという立場を貫いている。両国の国力の差や国の規模の差が表れていると言うべきであろう。 カザフスタンにも民主化問題あるいは人権問題がある。例えば野党系の新聞がいろいろ税務当局から圧力を受けて閉鎖されるとか、あるいは編集者や記者がだれか分からない者に殺されたり、暴力を受けたりする事件も発生している。ただ、幸いにも隣のウズベキスタンでの人権・民主化問題のほうがもっと大きいため、カザフスタンの問題はあまり騒がれていない。 そして何よりも米国政府が高く評価しているのは、カザフスタンがイラクに派兵をしていることだ。わずか30人程度であるが、カザフスタンは地雷等爆発物処理部隊を出している。中央アジアで唯一のイラク派兵国である。また、既に触れた通り、経済改革を非常に進めており、米国が高く評価しているということもあって、米国は殊更カザフスタンに関する人権問題を取り上げていない。つまり、米国との関係は非常に良い。 カザフスタンは現在、海軍を編成しようとしている。海のない国の海軍というのも妙ではあるが、カスピ海で展開する海軍のことである。カスピ海の油田開発が進むと、そこにテロが起こるかもしれないということから、やはりあそこの防衛は重要だということで米国が艦艇などを無料で寄贈したり、あるいは軍の養成に米軍が相当かかわったりしている。軍事面での協力関係が示すとおり、米国との関係は決して悪くない。? 中国との関係は石油が中心 中国にとってカザフスタンは、二つの点で重要性がある。一つは、経済・資源であり、二つ目はウイグル人過激派対策である。 私の在任中に、中国の経済的進出が非常に目立った。まず石油だが、これはすでに少し前から中国のCNPCがカザフスタンの北のほうでCNPCアクトベムナイガスという合弁企業(最近は既に100パーセント中国資本)を設立し、石油生産を始めた。最近はそれに加えてペトロカザフスタン、少し前まではハリケーン社といったカナダ系石油企業を買収した。これらは両方とも陸上油田の生産を行うものである。 他方、カシャガンという極めて有望視されているカスピ海の海底油田でも中国は利権を得ようとしたが、そちらは失敗した。ブリティッシュ・ガスがロシアロシアグルジアグルジアトルコトルコアルメニアアルメニアカスピ海アラル海アスタナアスタナカザフスタンカザフスタントルクメニスタントルクメニスタンウズベキスタンウズベキスタンタジキスタンタジキスタンキルギスタンキルギスタンアゼルバイジャンアゼルバイジャン盆地油田ガス田出所:JOGMEC図4 中央アジアの国々2006.5 Vol.40 No.36060mられざる新興大産油国 ?カザフスタンはこんな国?そきゅう自社所有分の権益(全体の1/6)を売却したいという話を持ち出し、カザフスタン政府の仲介で中国が買うという話になったが、結局コンソーシアムの他のメンバーが先買権を行使してその権益を全部分配することになり(日本のINPEXだけは参加していないが)、結局中国は入れなかった。 最近「地下資源法」が改正された。例えば、外国企業がカザフスタンで得た権益をカザフ政府が買い取ろうとする場合には、外国企業が買った時の値段で買えるという規定が入っているが、ただ、遡及しないということに一応なっている。従って、これまで契約しているものについては影響を受けないということで、カシャガンをはじめとして、これまでの投資家たちは一応安心できるという状況になっている。 この問題に対して、西側大使館が全部集まって、カザフ政府に申し入れるという話には至っていない。ただおそらく、今後の資源部門における投資を相当鈍らせる話にもなっていくだろう。その後、西側の民間企業の大きな投資話はあまり聞いておらず、むしろロシアとカザフスタンの間でカスピ海の油田を開発する合意がなされたと伝え聞く。ロシアとの間では、おそらく別の、国家間の協定等でやっていくと思われる。その意味では、やはり欧米の外資系企業は、新しい投資について相当渋っていると言えるのだろう。 なぜ今、中国がこんなにカザフスタンで石油を一生懸命血眼になって買いあさっているのかと言えば、パイプラインとの関係がある。中国への石油パイプラインが2005年末に完成するので、年間1,000万トンの輸送力をもつ同パイプラインに流す油を確保する必要がある。アクトベムナイガスからだけでは全く足りず、他の油田の確保に躍起になっているのだ。当面はロシアから油を入れて流す予定だが、将来的にはカザフスタンで中国が権益を持つ油田から送油して1,000万トンを満たしたいということだろう。まだ構想段階ではあるが、中国は石油だけでなく天然ガスもパイプラインで自国に引っ張るという話も検討されている。 次にウイグル人対策だが、中国はカザフスタンの中に居住する20万人のウそうくつイグル人社会がウイグル過激派の巣窟となることを極めて心配している。カザフスタン政府に対しては、常にウイグル人の動きをウォッチしてくれと依頼しているが、やはりカザフスタンとの間で良い関係を保つことが、ウイグル人問題の対策上も重要となっている。 上海協力機構は、中国にとって非常にメリットの大きい機構である。かつては旧ソ連中央アジアと中国の間には常に鉄のカーテンがあったが、今日ではそれが取れて、中国が中央アジアに進出できる可能性が広がっている。それを制度的に保障するのが、いわば上海協力機構なのだろう。上海協力機構は元々安全保障が中心であったのが、中国側は経済協力のための機構としての役割を非常に強調している。まさにそれが大きなねらいである。中国側は10億ドルの資金を供与するというようなことも言っている。上海協力機構は、中国があれだけイニシアティブを取り、資金も提供しているから発展してきているという側面がある。 しかし、ロシアはどちらかというとユーラシア経済共同体を中央アジア協力機構と合体させて、中国抜きのユーラシア経済共同体協力機構を活性化していこうという考えだろう。 ウズベキスタンは最後に上海協力機構に入ったが、カリモフ大統領は中国の製品が国内に入ってくるのは絶対認めないと言っている。つまり、中国の進出に対するアレルギーはあるけれども、他のさまざまな理由からウズベキスタンは上海協力機構に入った。その意味では、徐々にウズベキスタンにおいても中国の影響力が強くなり、中国の経済的進出が見られるようになってくるだろう。? カザフスタンにとってロシアは頼り甲斐のあるパートナー ロシアとカザフスタンの関係について言えば、ロシアにとってカザフスタンは最も頼りがいのあるCISのパートナーであろう。もう一つ、ベラルーシもあるが、同国はやはり西側との関係を考える際に重荷となる国であり、経済的統合を図っていく時に、制度が違い過ぎており、やりにくい面があるだろう。これらの観点からすれば、やはりカザフスタンが経済的にも非常に頼り甲斐があるパートナーなのではないか。また、両国間の国境画定問題も最近解決したため、ロシアとカザフスタンの間には政治問題もほぼ存在しないと言えよう。 ロシアおよびカザフスタン、ウクライナ、ベラルーシによる統一経済圏構想は、結局ウクライナがEUとの統合を重視するということで、なかなか統一経済圏に歩み寄ってこない。カザフスタンとしては、別にウクライナがなくてもロシアとだけで統一経済圏的なものを作っても良いというくらいの考えでいる。今の経済改革の度合い等、またWTOの加盟交渉の進展度を考えると、ロシアとカザフスタンというのは最も経済圏的なものを作りやすい状況にあるだろう。 ロシアが加盟している地域機構としては、上海協力機構、ユーラシア経済共同体、CIS、集団安全保障条約機構、統一経済圏中央アジア協力機構などいろいろなものがある。そして、これらにすべて入っているのはカザフスタンだけである。カザフスタンとロシアが同じ地域機構に入っているということも、カザフスタンとロシアの近さを象徴的に示している。 ただし、ロシアとの関係が近いから、61石油・天然ガスレビュー痰ヲば米国や中国との関係が悪いということではない。そのような意味では、今カザフスタンはロシアからも中国からも米国からも求愛される花嫁のような状況にある。? 隣国ウズベキスタンとは緊張も カザフスタンが唯一問題を抱えている国は、隣のウズベキスタンである。カリモフ・ウズベキスタン大統領との間にパーソナルなライバル意識みたいなものもある。他方、ウズベキスタンが経済改革という面では相当立ち遅れてしまったために、非常にクローズされた状況になっている。カザフスタンは既に述べたとおり、中央アジア諸国連合のようなものをぜひやろうということで、積極的にウズベキスタンに対し国をオープンにするようラブコールを出している感があるが、ウズベキスタンとしては安全保障上の問題を抱えているため、なかなか応じることが出来ないでいる。 国際的な立場として、カザフスタンは強く、ウズベキスタンは弱い。最近、ウズベキスタンの人権活動家がカザフスタンに逃げ込み、ウズベキスタンが同人物を引き渡せと要求したのに対してカザフスタンはそれを断り、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に引き渡した。これについて、カリモフ大統領がカンカンに怒っているが、カザフスタンは両国の国際的立場の強弱を見極めて対応したといえる。 この結果、カザフスタンは西側との関係で点数を稼いだが、これは2009年の欧州安全保障機構(OSCE)の議長国をカザフスタンがねらっていることにも関連する。カザフスタンは今後しばらく、ヨーロッパ指向というか、ヨーロッパあるいは米国の機嫌を取るような行動をいろいろな形でしてくるだろう。おそらく、一層経済改革を進めることや、人権問題などでも少し柔軟に野党に対応するといったような手段を講じてくるだろう。 しかし、それらはナザルバエフ大統領の「管理民主主義」のもとで行われている以上、本物の民主主義の拡大につながるかどうかについては、慎重に見極めていく必要がある。? カザフスタンは日本のイニシアティブを評価 最近のナザルバエフ大統領の外交演説などを見ていると、カザフスタンにとって重要な国々はロシア、中国、米国と3国がまず並ぶ。その次にアジア諸国、中国を除いたアジア諸国となるが、アジア諸国のなかで言うとすれば、日本やインド、韓国といったような国々が並ぶ。おそらくカザフスタンにとっての対外優先事項は、今後しばらくヨーロッパ指向が出てくるだろうが、並べるならばロシア、中国、米国、EU、そしてアジアの順となろう。さらにアジアのなかを分けるとすれば日本、インド、韓国の順となろう。 経済援助の累積額から言えば日本はナンバーワンであるが、今のカザフスタンは正直なところ、もはや経済協力が外交的なテコになるような状況下にはない。ナザルバエフ大統領からは「民間投資を促進してほしい。日本の企業は投資額が少ない」というようなことを常に言われた。私が着任した時、最初に同大統領から要請されたのは、第1に日本大使館を新しい首都のアスタナに移転すること、第2に、日本の首相にぜひカザフスタンを訪問してほし2003年夏撮影図5 日本が無償資金協力で機材供与したセミパラチンスクの医療センターで医師の説明を聞く筆者アナリシスいこと、そして第3に日本からの投資増加をぜひ期待したいということであった。 ここ2~3年、日本からの投資額は増加傾向にある。これは主にカシャガンにおけるINPEXの投資増加に伴い増えているものだ。貿易額も、昨年、一昨年と増え続けており、今年もおそらく昨年の2倍とまではいかないにしろ、相当増える見込みである。 日本とカザフスタン間の貿易で、最近特に目立つものの一つは自動車である。それから建機がずいぶん増えている。日本側の輸入は極めて少ない。貿易が増加しているとはいえ、日本からの輸出が増えているということであり、日本の輸入は鉱物資源だが、それほど増えていない。非常にアンバランスになっている。 「中央アジア+日本」の話に関し、カザフスタンは日本のイニシアティブを非常に高く評価している。それには、カザフスタン自身が中央アジア全体の雄であって、そういう大きな市場が誕生すればカザフスタンにとっても有利だという意味合いもある。もう一つはやはりカザフスタンだけが経済的にどんどん発展して他のところが取り残されると不安定化するので、そういうところは日本にも協力してもらい、全体として安定性、発展を図ることが出来れば良いということもある。 2004年のことだが、1992年に渡辺外務大臣(当時)が訪問して以来、12年ぶりに川口外務大臣が日本の外相としてカザフスタンを訪問した。おそらく、今後はこの枠組みの中で、12年に1回でなく、もう少し頻繁に外務大臣の訪問、あるいは首相の訪問などもいずれ実現するのではないかと思っている。ちなみに、G7の中でどの国の首脳がカザフスタンを訪問しているかといえば、イタリア、ドイツが既に訪問済みで、フランスのシラク大統領も実は2005年の10月に訪問する予定であった。同大統2006.5 Vol.40 No.362mられざる新興大産油国 ?カザフスタンはこんな国?領の健康上の理由から急きょ取り止めになったものの、現在も訪問する意向を示している。残っているのは日・米・英・加である。 「中央アジア+日本」をどのように進めていくかという問題は、ウズベキスタンでは暴動事件があった後、難しくなりつつある。しかし、このスキームに関しては、日本がイニシアチブを取っているということもあり、ウズベキスタンもそう冷たい態度を示しているわけではない。私見では、何かカザフスタンもウズベキスタンも合意できるようなプロジェクトを動かしていくという可能性が残されている。 それはあまり政治的なものが絡まない、例えば道路整備や観光促進などが考えられるだろう。 日本からの経済協力に関し、最近のカザフスタンは、もう円借款はいらないと言っている。自分たちは石油から取れる資金が潤沢であり、むしろハイテク部門で技術協力をやってほしいとか、あるいは直接投資をお願いしたいと言っている。 ハイテクの技術移転を含む円借案件であれば前向きに考えるし、政府保証も付けたいということだ。では、具体的にハイテクの技術移転とは何だというと、一例としてアフメトフ首相が、首都の空港から都心までモノレールを作るアイデアを挙げていた。つまり、全く円借の可能性を排除しているわけではない、ということだ。 最近の日本の民間企業の動きとしては、カザフスタンの資源にようやく注目が集まってきた。商社などもウランにかなり関心を持っている。カザフスタンはウランの埋蔵量が世界有数の国である。石油のほうはINPEXの後は、特に目立った動きを聞いていない。今後カザフスタンはカスピ海の鉱区を順番に開放していくだろうが、韓国や中国、インド等はかなり関心を示しているようだ。日本の民間は必ずしもそこまで関心を示してきていないのが気懸かりである。著者紹介外務公務員採用上級試験合格東京大学法学部卒業外務省入省↓国際連合局人権難民課長大蔵事務官 関税局監視課長外務事務官 在ジュネーブ国際機関日本政府代表部 参事官↓在ロシア日本国大使館 公使角﨑 利夫(つのざき としお)略歴昭和23年6月28日生まれ昭和46年9月 昭和47年3月 昭和47年4月 平成元年3月 平成3年7月 平成5年8月 平成8年6月 平成11年11月 在ハバロフスク日本国総領事館 総領事平成13年9月 平成14年5月 平成14年7月 平成17年10月 大臣官房審議官兼欧州局↓特命全権大使 カザフスタン国駐箚兼ねてキルギス国駐箚(財)国際開発高等教育機構専務理事趣味:ゴルフ、スキー、クラシック音楽鑑賞63石油・天然ガスレビュー
地域1 旧ソ連
国1 カザフスタン
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 旧ソ連,カザフスタン
2006/05/20 [ 2006年05月号 ] 角崎 利夫
Global Disclaimer(免責事項)

このwebサイトに掲載されている情報は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

※Copyright (C) Japan Oil, Gas and Metals National Corporation All Rights Reserved.

本レポートはPDFファイルでのご提供となります。

上記リンクより閲覧・ダウンロードができます。

アンケートにご協力ください
1.このレポートをどのような目的でご覧になりましたか?
2.このレポートは参考になりましたか?
3.ご意見・ご感想をお書きください。 (200文字程度)
下記にご同意ください
{{ message }}
  • {{ error.name }} {{ error.value }}
ご質問などはこちらから

アンケートの送信

送信しますか?
送信しています。
送信完了しました。
送信できませんでした、入力したデータを確認の上再度お試しください。