ページ番号1006226 更新日 平成30年3月5日

インドネシア:混迷が続く LNG 輸出と ガスの国内供給にかかわる産業政策

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レポートID 1006226
作成日 2006-05-20 01:00:00 +0900
更新日 2018-03-05 19:32:42 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 天然ガス・LNG
著者
著者直接入力 坂本 茂樹
年度 2006
Vol 40
No 3
ページ数
抽出データ インドネシア:混迷が続くLNG輸出とガスの国内供給にかかわる産業政策?2006年3月下旬、ユドヨノ大統領の「LNG輸出削減」発言に、関係するLNG事業者および需要家に衝撃が走った。経済政策に通じた大統領は、インドネシア経済にとってLNG輸出がどれほど重要であるか、および国際商習慣上、信頼性が必要であるかを十分に理解していると思われる。しかし石油価格高騰に端を発したエネルギー供給不足に悩むインドネシア社会においては、LNG輸出よりも、国民の日々の生活に直結する国内市場向けのエネルギー供給の確保を優先する発言と政策が求められていると考えられる。?しかし、インドネシアは豊富なガス資源を有しており、国内市場向けのガス供給を図りながらLNG輸出量も維持することは十分に可能なはずである。国内のエネルギー需給問題の短期的解決もさることながら、長期的なインドネシア経済発展のために、エネルギーの市場価格化を徐々に進め、さらに石油ガス産業の成長に必要な内外からの投資を喚起させるための投資促進策が望まれる。1.ユドヨノ大統領の「LNG輸出削減」発言 ユドヨノ大統領は2006年3月下旬、「2009~10年に契約期限を迎えるLNG売買契約の一部を更新せず、今後はLNG輸出量を削減して、ガス供給をより国内市場に振り向ける」旨の表明を行った。 インドネシアは一貫して世界最大のLNG輸出国(ただし、2005年に世界最大のその地位をカタールに譲ったとの情報もある)であり、日本のLNG需要家にとっては重要な供給国である。しかし実際には、原料ガスの供給不具合から、インドネシアのLNG輸出量は2004年以降契約量を下回っている。ボンタンLNG事業者は、2007年には生産を回復させるとしているが、明確な生産回復の見通しは立っていない。 また、新規PS契約に対してガス生産量の最低25パーセントを国内供給義務と定める法案の国会提出が予定されるなど、同国のLNG輸出にかかわる事業環境は不透明な状況にある。 天然ガスの輸出/国内供給政策に関するインドネシア政府関係者の発言にはブレがあって不明確な点も多く、前述の大統領発言の真意も十分に説明されているわけではない。 しかし、大統領自らの発言には重みがあり、インドネシアのLNG輸出は何らかの転換期を迎える可能性が高い。2.国内市場向けガス供給が求められる背景? 国内のガス需要動向 インドネシアのガス産業は、LNG輸出を基軸に成長してきた。他方で国内市場向けのガス供給は、ジャワ島を中心とする一部地域に偏り、ガスの輸送設備および国内市場向けガス生産の制度的枠組みは、ともに未整備の状態にある。 国内市場向けガスの多くは、産業需要が集積する最大消費地のジャワ島およびその沖合で生産され、主に肥料用原料、産業用燃料、および発電用燃料として消費されている。また、ガスが豊富なスマトラ島では産ガス地域周辺の産業用需要のほか、北部アチェの肥料工場向けの原料ガスとして、また南スマトラではデュリー油田二次回収用の圧入ガスとして利用されている。東カリマンタンでも、生産ガスの一部が肥料用および地元の産業用として使われている。 国内のガス輸送幹線としては、スマトラ島南部からジャワ島西部へのガス・パイプラインが、2007~08年の完成予定で建設される計画だが、それまではジャワ島へのガス輸送設備がないために、ガス供給の制約状態が続くことになる。? 石油製品価格上昇の影響 インドネシアの一次エネルギー供給は、石油比率が約35パーセントと最大であり、約23パーセントのガスを大きく上回る。ところが、原油生産は10年来減少が続き、2004年からは石油純輸入国に転落した。このため政府は、国内の石油消費を抑え、ガスと石炭を国内の主力エネルギーと位置付ける政策を進めようとしてきた。77石油・天然ガスレビュー曹ヨの反発が容易に表面化する。インドネシアも例外ではない。 インドネシアでは憲法裁判所のような司法機関および国会議員の中に、資源ナショナリズムに依拠する言動がしばしば見受けられる。今回、国会に提出予定の「ガス生産量の少なくとも25パーセントを国内市場に供給する」とする法案も、憲法裁判所の違憲判断に端を発している。 2001年に改定された石油・ガス法第22条1項の「産出した石油・ガスの最大25パーセントを国内需要に割り当てる」との規定に対して憲法裁判所は、上限の設定は「天然資源は国民の最大利益のために利用される」との憲法の規定に反するとの判断を2004年12月に下したのだ。 エネルギー産業の不振がナショナリズム的な風潮を生み出している面もある。石油の純輸入国に転じたインドネシアの原油生産量は、OPEC生産枠を30パーセント以上も下回る日量95万バレル程度にとどまる。原因は、エネルギー生産分野への投資不足を招いたエネルギー政策にあるが、インドネシアの石油資源が国民経済の発展に寄与せずに輸出され浪費されてしまったと見なす風潮もある。天然ガスに関しても、むざむざ(外資に)浪費されてはならない、という発想に繋がる傾向が見られる。? 石油・ガス産業が輸出・政府歳入に占める比率 産油国インドネシアにとって、石油、天然ガス輸出は重要な外貨獲得の手段である。しかし産業構造の変化(=製造業の発達)とともに、輸出額全体に占める石油、天然ガスの比率は低下している。1980年代前半に輸出額の80パーセントを超えた石油・ガス比率は、2003~04年には20パーセント弱に減少している。 一方、政府歳入に占める石油・ガスの比率(=PS契約の政府取り分+ロイヤリティー+所得税)は、原油価格高騰を2006.5 Vol.40 No.37825ミャンマーミャンマー20ShweShweShweShweタイタイYadanaYadanaYadanaYadanaYetagunYetagunYetagunYetagunLNGプロジェクト(稼働中)LNGプロジェクト(計画中)LNGプロジェクト(構想段階)ガスパイプライン(既存)ガスパイプライン(計画中)ベトナムベトナムMalampayaMalampayaMalampayaMalampayaCamagoCamagoCamagoCamagoフィリピンフィリピン15105 N05 S10ErawanErawanErawanErawanBongkotBongkotBongkotBongkotJDAArunLan Tay/Lao DoLan Tay/Lao DoLan Tay/Lao DoLan Tay/Lao DoマレーシアマレーシアTerenngganuTerenngganuTerenngganuTerenngganuNatunaNatunaNatunaNatunaDuriDuriDuriDuriBruneiMLNGBontangCorridorCorridorCorridorCorridorNorth West JawaNorth West JawaNorth West JawaNorth West JawaインドネシアインドネシアKangeanKangeanKangeanKangeanDonggiTangguh0500Km100095 E100105110115120125130135Bonne projection140図1 東南アジアのガス・パイプライン、LNG液化事業う房ぼちゅうのような強い抗議運動は起きていない。しかし灯油は低所得者層が厨用に使う日常生活に不可欠な燃料であるだけに、その大幅値上げに対しては潜在的な不満が蓄積されていると考えられる。石油製品値上げと併せて、頻繁に発生する電力供給停止に対しても、国民の不満は強い。また、今年4月半ばには、労働法改正を阻止しようとするデモが主要都市で過熱して都市機能が麻するなど、不穏な社会情勢が伝えられている。 総じて、インドネシアの経済運営は、近隣のASEAN諸国と比べてさほど成功していないために、国民の不満は容易に政策当局に向かいやすい。スハルト政権以降の歴代政権では最も高い国民の支持を維持しているユドヨノ大統領といえども、ある程度民意に配慮した発言が求められる社会状況にあると考えられる。痺ひま? 国民の意識に根ざす「資源ナショナリズム」 最近の南米の資源ナショナリズムの高揚にも見られるように、発展途上国、特に経済運営が拙い途上国においては、国民の潜在意識の中に根強く残る資源ナショナリズムおよび資源開発に携わる外 石油製品価格は従来、民生用の灯油・LPG・軽油を中心に、補助金政策によって安く設定されてきた。しかし、数年来の原油価格高騰で国家財政が補助金の膨張に耐え切れず、政府は2005年10月に約2~3倍という大幅な石油製品値上げを断行した。 1998年のスハルト政権崩壊につながった過去の石油価格値上げとは異なり、インドネシア経済は今回の値上げを、石油需要の落ち込みなどの反応を示しつつ何とか受け止めてきた。 しかし一方で、産業用エネルギー需要が、相対的に安価となったガスに向かっているものと考えられる。2005年末までに石油製品値上げが一巡した後、2006年1月以降は国内市場向けのガス供給を求める要請が富みに強くなっている。3.LNG輸出に反対する国内の風潮? 国民の石油価格政策への反応と社会情勢 2005年10月の石油製品価格値上げは、低所得層への家計補助とセットで実施されたため、スハルト政権崩壊を導いた時ス映して2003年以降30パーセントを超えている(2005年3月「インドネシア 再生への挑戦」アジア経済研究所)。この数値は石油・ガス産業がインドネシア経済においてなお大きな存在であることを示すが、中東、アフリカの主要産油国のような、輸出および政府歳入のほとんどを石油・ガスに依存するモノ・カルチャー経済とは明らかに異なる。 アジアの新興工業国は、1990年代に外資主導で輸出指向の製造業を発展させて、一次産品輸出への依存度を大幅に減少させた(もともとエネルギー輸出実績のないタイを除く)。これらの国々に比べると、インドネシア経済はなおエネルギー輸出への依存度が高い。しかし、インドネシア政府関係者の中には、既に石油・ガス輸出を最優先する必要はないとの認識を持つ者も少なくないと言われる。4.インドネシア・ガス産業の行方? LNG輸出 LNG輸出国としてのインドネシアの地位は、変化の時を迎えている。LNG取引を含めて、国際商取引は相互の信頼性に基づく。インドネシアのLNG輸出は2004年から契約数量を満たすことができず、生産回復の具体的な見通しも立てられないことは大きな失点であった。加えて、2009年以降のLNG売買契約更新を前に、政府当局が明確な輸出政策・輸出可能量を示せないばかりか、関係閣僚の相矛盾する発言が飛び交い、LNG輸出大国としての信頼性が揺らいでいる。またカタール、豪州、さらにはアフリカの新規LNG生産国が大幅な生産増を図るなかで、インドネシアが過去に築いた優位性は相対的に薄れつつある。アジアの大手LNG需要家は、豪州などの新規LNG事業を安定的な供給先として認識しつつある。79石油・天然ガスレビュー 前述したように、新規のタングー事業は別にしてインドネシアの国内政治環境は、LNG輸出よりも国内向けのガス供給を強調させざるを得ない状況にある。大統領自らが表明したように、既存のLNG売買契約のある部分は更新されずに、該当するガス・ソースが国内市場に振り向けられる可能性がある。 しかし、主力のカリマンタン島ボンタンLNGプラントに原料ガスを供給するガス田群の残存可採埋蔵量は約30tcfと膨大である。原料ガス供給の不具合はマネジメントの問題であって、資源量に根本的な問題があるわけではない。未利用の中小ガス田資源を合わせると、国内市場向けにガスを供給しつつLNG輸出量を維持することは十分可能なものと考えられる。 ただし、ボンタンLNGは事業の仕組み上、異なるガス田を保有する供給者間で利害が異なるために、調整のしづらさがある。LNG事業の利益は、ガス供給者の商業ベース埋蔵量等を基にして決められるPQ(Production Quota:製造割当)の比率によって配分される。将来のガス田開発は、既発見だが深海にあって作業が難しい高コストエリアに移っていくが、現在の仕組みでは多額の開発投資に対するインセンティブが不十分である。やがて期限を迎えるPS契約延長の可否を確認してから投資実行を望む企業がある一方で、コンデンセートなど液分が多いガス田を早く生産に移行させるためにPQの増加を望む企業もあるなど、その異なる利害の調整が難しく、直ちに開発投資を実行するのが難しいという事情がある。? 国内市場向けのガス供給の問題点 単にLNG輸出量を削減すれば、削減分がおのずと国内市場に円滑に供給されるわけではない。国内市場向けガス供給を円滑に推進するためには、次の3項目の施策が必要と考えられる:①幹線を含むガス・パイプライン網の整備 ジャワ島には総人口の約55パーセントと産業基盤が集中する。スマトラ島からジャワ島への幹線パイプライン建設が計画されているが、続いてジャワ島西部および東部のパイプライン体系を接続する幹線の建設が必要とされる。また、ガスをより広範に需要家に供給するためにはガス配管網の拡充が必要である。②ガス(エネルギー)の市場価格化 政府は、産業用ガス価格を手始めに徐々に市場価格に移行させようとしているが、現状では管理価格制である。このためコストを売価に反映させにくく、事業採算の見通しを立てることが難しいため、ガス生産者はリスクを恐れて投資に踏み切れないケースが多い。③中小ガス田を開発に移行させるための制度的枠組み;インセンティブ施策 上記②にも関連するが、インドネシアには、発見されても現在の枠組みでは採算ベースに乗らないために開発・生産されない中小ガス田が多い。こうした中小ガス田の開発・生産にかかわる契約の経済条件の大胆な改善および税制面の優遇措置が求められている。インドネシアは、なお東南アジア最大の産油国であるが、10年来原油生産量は減少を続け、現在はピーク時の70パーセント以下の水準である。中東の有力産油国並みの厳しい経済条件を体面上維持しているのではなく、現実的な投資誘致策を採ることが求められる。 また、製造業などの経済開発施策とLNG輸出の削減は別問題であって、LNG輸出を減らせば自然に経済が発展するわけではないことは、言うまでもない。? インドネシアのガス政策に望まれること インドネシア経済は厳しい状況にあっト、為政者にとって政局運営が難しいことは十分理解できる。しかし、インドネシアの天然ガス可採埋蔵量はアジア太平洋地域でなお最大の規模を誇る。同国のガス開発における最大の問題は、将来のエネルギー政策が見えないために、ガス生産者が適切な投資をためらわざるを得ないことであって、資源量の問題ではない。 途上国経済においては、エネルギーの市場価格化を速やかに実現することは難しいものの、徐々に価格体系を市場価格に近づけ、内外投資家の投資を促進させるインセンティブ策の導入を思い切って進めていくことである。適切なガス産業育成計画に基づく政策を実行することにより、インドネシアのLNG輸出の回復とガス産業の発展が望まれる。(坂本 茂樹)2006.5 Vol.40 No.380
地域1 アジア
国1 インドネシア
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国・地域 アジア,インドネシア
2006/05/20 [ 2006年05月号 ] 坂本 茂樹
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