ページ番号1006230 更新日 平成30年3月5日

世界のLNG事業はこう変わる ~日本企業の進むべき道:Poten & Partners セミナー~

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レポートID 1006230
作成日 2006-07-20 01:00:00 +0900
更新日 2018-03-05 19:32:42 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 天然ガス・LNG
著者
著者直接入力 坂本 茂樹
年度 2006
Vol 40
No 4
ページ数
抽出データ 駕が世界のLNG事業はこう変わる?日本企業の進むべき道:Poten&Partnersセミナー? 本稿は、世界のLNG事業に関するリーディング・コンサルタントであるポテン&パートナーズ(Poten & Partners)に依頼した調査「激変する世界LNG市場における、日本LNG上・中流事業者の将来のシナリオ」に関して、同社が2006年3月末に東京のJOGMEC会議室で実施した報告会の内容を紹介するものである。 LNG産業は従来、東南アジアを主要生産地域とし、日本を中心とする東アジアを主要消費地域として発展してきた。その過程では、30年以上にわたり日本のLNG事業者が世界のLNG産業をリードしてきた。 しかし現在、世界のLNG市場の構造、競争地図に革命的な変化が起こりつつある。欧米では、下流市りょう場の自由化が進んでいる大西洋圏のLNG市場の成長が、将来はアジア太平洋圏LNG市場の成長を陵すすうる趨にあり、2015年頃にはLNG市場規模の東西逆転が予想されている。中東では、大スイングLNGプロデューサーが出現する見通しである。太平洋LNG市場でも、今後は、中国、インドといった潜在成長規模の大きい市場が徐々に存在感を強めていくものと見られる。 このような状況下、LNGの上・中流事業にはスーパーメジャーが本格参入し、日本企業が育んできた伝統的なLNGビジネスモデルではなく、より柔軟な条件をバイヤーに提示できるブランドLNG*1、ないしコスト競争力が抜群の一貫型大規模LNG事業*2が目白押しとなっている。また、資源生産国において特権的地位を持つ国営石油企業も、LNG事業に本格参入してきた。 JOGMECは、こうした変化の中で日本企業の従来型LNGビジネスモデルの有効性や競争力が急速に失われてきており、国際LNG事業における生き残りが困難になる可能性もあり得るとの問題意識から、本スタディを実施した(これらの背景に関しては、「本誌」06年3月号「アジア太平洋LNGの動向を探る」、および05年7月号「国際LNG市場はどこまで変貌するか?」を参照)。 ポテン&パートナーズは、世界のLNG産業における日本企業の現況と今後の見通しを率直に述べた上で、日本企業間または外国石油企業、国営石油企業とのアライアンス構築を提言している。 なお、LNG事業を行う日本企業に対して「歯に衣着せぬ」表現が随所に見られるが、「良薬口に苦し」ということでお許しいただきたい。勢せいTACT SYSTEMMYCKアナリシスJOGMEC 石油・天然ガス調査グループsakamoto-shigeki@jogmec.go.jp坂本 茂樹(編者)1. LNG産業:現状の認識 世界のLNG産業は今、大きな変化を遂げつつある。 LNGのデリバリー・チェーンのすべての事業段階で競争が激化している。また、LNG取引はますますグローバル化している。図1に示されるように、2000?05年の5年間で世界のLNG取引量は4,300万トン増加し、05年の取引量は1億4,200万トンとなった。05?10年の5年間ではさらに、1億1,900万トンの増加が見込まれている。2015年のLNG取引量は、05年の約2.5倍の3億7,000万トンが想定されている。 伝統的なLNG市場は、日本を中心とする東アジア市場(太平洋市場)であった。しかし2000年以降、欧米市場(大西洋市場)向けの取引が大きく増加していることが図1からわかる。この拡大するLNG万トン/年40,00035,00030,00025,00020,00015,00010,00050,002010年:26,500万トン/年5年で11,900万トン増加2005年:14,200万トン/年5 Year Growth 43 MMt5 Year Growth 43 MMt5 Year Growth 43 MMt5 Year Growth 40 MMt5 Year Growth 43 MMt5 Year Growth 43 MMt5 Year Growth 43 MMt5 Year Growth 40 MMt5年で4,300万トン増加Atlantic BasinAtlantic BasinAtlantic BasinAtlantic BasinAtlantic BasinAtlantic BasinAtlantic BasinAtlantic BasinAtlantic BasinAtlantic BasinAtlantic BasinAtlantic BasinAtlantic Basin大西洋LNG市場大西洋LNG市場Asia Paci?cAsia Paci?cAsia Paci?cAsia Paci?cAsia Paci?cAsia Paci?cAsia Paci?cAsia Paci?cAsia Paci?cAsia Paci?cAsia Paci?cAsia Paci?cAsia Paci?c大平洋LNG市場大平洋LNG市場02000しかし誰が増える需要に対して供給するのか?200520102015年出所:ポテン&パートナーズ図1拡大するLNGビジネス*1:図7参照、世界で複数の液化事業および再ガス化/販売事業を抱えるグローバルな調整事業者(Global Aggregator)によって展開されるLNG事業。*2:図7参照、大手石油企業が手がける上流から下流まで一貫した大規模LNG事業。71石油・天然ガスレビューP071-080_アナリシス坂本.indd 7106.9.12 11:02:25 AMACT SYSTEMMYCKアナリシス程度であった。一方、欧州にはイタリア、スペイン、フランス、英国に小規模なLNG市場があり、アルジェリアとリビアが欧州市場向けにLNGを供給していた。 25年後の2005年にはLNG国際取引量は約6倍に拡大し、取引ルートも様変わりした。東アジア市場には韓国、台湾が加わり、04年にはインドもLNG輸入を開始した。LNG供給国には豪州、マレーシア、オマーン、カタールが加わった。大西洋市場はさらに拡大して、多くの消費国、供給国が登場した。消費国はギリシャ、トルコ、ポルトガル、ベルギーへと拡大した。LNG輸入先には、従来の北アフリカのみならず、99年にLNG輸出を開始した西アフリカのナイジェリア、南米カリブ海のトリニダード・トバゴ、さらには中東のオマーン、カタールも参入している。国内のガス生産が頭打ちになった米国は、主にトリニダード・トバゴとアルジェリアからLNGを輸入している。 日本市場向けLNG輸入は、主に日本の総合商社によって担われてきた。彼らはLNG事業の資金調達を助け、LNG供給者と需要家との橋渡しを行い、LNG市場に関する深い知識を有し、LNG事業を売買契約締結に至らせるまでの調整などの局面において卓越10年韓国22%台湾7%中国7%インド8%北米西岸7%しかし限りある供給を巡って買い手間の競争は激化する日本49%韓国20%台湾7%中国13%韓国24%台湾8%インド6%15年北米西岸9%インド8%05年日本39%%タイ2%他2日本62%出所:ポテン&パートナーズ図2日本は太平洋LNGを主導し続ける これに対して、中国さらにはインド、北米西岸の占めるシェアが徐々に上昇していく。LNG供給が限られている一方で需要は増加していくことから、今後、買い主間の競争は激化していくことが予想される。 また、世界的なLNG取引の規模および取引ルートは、近年大きく変化している(図3参照)。1980年当時、LNG供給事業は数えるほどであり、市場も限定されていた。東アジア市場は日本のみであり、日本への供給者はアラスカ、インドネシアのアルーン、ブルネイおよびアブダビ(アラブ首長国連邦)市場に対して、誰が主要な供給者としての役割を担っていくのであろうか。 ガス供給のほぼ100%をLNG輸入に依存する日本は、これまで一貫して世界最大のLNG輸入国であり、その立場は当面変わることはない。しかし、アジアの新市場(中国、インド)および大西洋市場(北米、欧州)のLNG需要拡大により、今後LNG取引に占める日本の比率は徐々に低下していく(図2参照)。太平洋LNG市場において、05年の日本のシェアは62%であった。将来の日本のシェアは、10年に49%、15年は39%と漸していく。ぜんん減げ1980年:2,400万トン/年(3.2兆立方フィート/日)2005年:1億4,200万トン/年(19兆立方フィート/日)出所:ポテン&パートナーズLNGの世界はドラスティックに変化した図3世界規模のLNG取引P071-080_アナリシス坂本.indd 7206.9.12 11:02:26 AM2006.7 Vol.40 No.472ACT SYSTEMMYCK世界のLNG事業はこう変わる ?日本企業の進むべき道:Poten&Partnersセミナー?しており、強みを発揮してきた(図4参照)。 しかし、世界のLNG取引が変化を遂げつつある現在、日本商社等のLNG事業者によって担われてきた伝統的な機能は、世界的にさまざまな挑戦を受けつつある(図5参照)。資金調達においては、様々な国際的な貸し手が新たに台頭し、エクイティ・ファイナンスなど新たな手法が登場し、債券市場が発達した。また、中国や韓国などの銀行も、新たに貸し付けを開始した。 LNG供給者と需要家との橋渡しをする機能に関しては、日本のガス・電力企業は上流分野のLNG供給者と直接に取引を行うようになり、さらには自らが上流分野の事業へ参入するまでに至っている。 市場情報に関しては、LNG市場がよりダイナミックに発展して取引が自由になり、多数の事業者が参加するようになったことから、もはや、限定された少数の事業者だけにとどまるものではなくなった。 LNG事業を売買契約締結に至らせるまでの調整機能に関しても、既に異なる事業者が複数の契約を締結していることから、多くの関係者がノウハウを習得し、共有するに至っている。資金調達へのアクセス国際的な貸し手、エクイティ・ファイナンス、債券市場、中国/韓国の銀行資金調達へのアクセス事業を成立させる調整機能日本商社買い主へのアクセスいくつかの異なるプレーヤーによって実施されるプロジェクトが複数実現し、技術は学ばれ応用されるようになった事業を成立させる調整機能日本商社買い主へのアクセス日本の電力・ガス企業は上流事業者と直接取引を行い、また自らも上流事業者になろうとしている市場の知識市場の知識市場はさらにダイナミックでオープンとなり、多くのプレーヤーが参加する。情報は、もはや少数の関係者間にとどまらなくなった出所:ポテン&パートナーズ出所:ポテン&パートナーズ図4日本LNG事業者はアジア太平洋地域で驚くべき活躍をした図5現在、すべての局面で競争が激化2. 変化を遂げつつあるグローバルLNG事業 LNG産業構造の変化が進展しつつある。 この構造変化の一つの類型として、LNGチェーンの各段階の機能が垂直的に統合される動きを挙げることができる(図6参照)。LNG産業は、上流分野においては探鉱・開発、液化事業、下流分野においてはLNGの再ガス化、ガスの販売等の各段階から構成される。LNG事業の垂直的統合を表す一つの流れとして、上流分野から下流分野への事業の統合の動きがある。具体的には、上流分野の企業である石油ガス開発会社が、下流分野のLNG再ガス化、ガスの販売等の事業領域に進出していく動きである。この動きは、有力な国際石油企業であるBP、シェル、シェブロンおよびエクソンモービル、さらに有力な国営石油企業であるペトロナス、スタットオイル、CNOOC等によって具体化されている。 また、これとは逆に下流分野から上流分野への統合の動きもある。これは、下流分野企業であるガス・電力企業が上流分野の液化、さらには探鉱・開発事業へと進出する動きであり、これを実行しているのは有力なガス・電力企業である。最近の例では、日本の主要なガス・電力企業、韓国のコガス(Kogas)、スペインのGNレプソル(GN-Repsol)、ユニオン・フェノサ(Union Fenosa)等が挙げられる。 構造変化の別の類型として、企業の哲学の差別化を挙げることができる(図7参照)。 この流れの一つの動きを、「Global Aggregator(グローバルな事業調整者)」と名付ける。このタイプのLNG事業者は、世界に複数の液化事業を展開し、また市場には独自のLNG受入基地/再ガス化設備とガス販売網を有する。自社が参加する液化事業から、73石油・天然ガスレビューP071-080_アナリシス坂本.indd 7306.9.12 11:02:27 AMACT SYSTEMMYCKアナリシス事業を推進しており、下流のガス販売にも強く、一貫したガス事業経営を実施している。例としては、エクソンモービル、シェブロン、あるいはコノコフィリップスが行う大規模事業を挙げることができる。最もふさわしい市場への供給を世界的に調整しつつ、LNG事業展開の最適化を図っている。このタイプの事業者としては、複数のLNG事業をグローバルに展開しているBP、シェル、BG、トタールが挙げられる。 もう一つの動きを「Integrated Projects(一貫型大規模LNG事業)」と名付ける。このタイプの事業では、大規模なガス資産を持つ企業(またはコンソーシアム)が大型投資を行って、大規模な液化装置を建設、大規模輸送を行い、特定の大市場(または需要家)にLNGを供給する。彼らは国営石油企業との全面的な協同の下でスケールメリットによるコストダウンを狙ってE & P(上流分野)液化輸送再ガス化再ガス化上流分野から下流分野への統合IOC・BP・シェル・シェブロン・エクソンモービルガ スガ スの販売の販売NOC・ペトロナス・スタットオイル・CNOOCE & PE & P(上流分野)液化液化(上流分野)1.1.2.3.2.3.輸送再ガス化1.2.3.ガ スの販売1.2.3.ブランドLNGShellグローバルな調整事業者(Global Aggregator)**世界で複数の液化事業および再ガス化/販売事業を抱え、グローバルにLNG事業を展開する事業者E & PE & P(上流分野)(上流分野)液化液化輸送再ガス化ガ スの販売ガス・電力企業・日本の主要ガス・電力・Kogas・GNレプソル・ユニオン・フェノサE & PE & P(上流分野)(上流分野)液化液化輸送再ガス化1.2.1.2.1.2.1.2.ガ スの販売1.2.洋上のパイプライン下流分野から上流分野への統合出所:ポテン&パートナーズ一貫型大規模LNG事業(Integrated Projects)出所:ポテン&パートナーズ図6進化するLNG産業の構造図7企業哲学の差別化3. 上流分野と下流分野の産業分析 競争がますます激化するLNG産業において、競争に打ち勝って有利な位置につけるためには何が必要となるのであろうか。(1) 上流分野の競争 上流分野の競争で有利な立場に立つためには、ガス資源を発見して生産資産に育てるために、優れた探鉱・開発技術を持つことである。投資のための強力な資金力、また事業目標を定めて経営資源を集中させる経営センスが必要とされる。さらに、プロジェクトの開発と管理能力、資産・事業の経緯を理解することも必要となろう。 ここで、ゲーム理論を用いてLNG上流事業の戦略的相互作用を考察する(図8参照)。産油国の国有石油企業が国際石油企業の実力が勝る場合LNG事業ゲーム入札(日本企業, 国際石油企業)(単位:百万ドル)国際石油企業日本企業入札参加入札参加(-1,9)入札せず(10,0)入札せず(0,12)(0,0)クリティカル・マス*で、さらに有効なナッシュ均衡*に至る日本企業と国際石油企業の実力が等しい場合LNG事業ゲーム入札(日本企業, 国際石油企業)国際石油企業日本企業入札参加入札参加(4.5,4.5)入札せず(12,0)入札せず(0,12)(0,0)*クリティカル・マス:必要不可欠な最小限の規模    ナッシュ均衡: ゲーム理論における非協力ゲームの解の一種であり、いくつかの解の概念の中で最も基本的。他のプレーヤーの戦略を所与とした場合、どのプレーヤーも自分の戦略を変更することによってより高い利得を得ることができない戦略の組み合わせ(ウィキペディアより抜粋)。出所:ポテン&パートナーズ図8ゲーム理論P071-080_アナリシス坂本.indd 7406.9.12 11:02:28 AM2006.7 Vol.40 No.474@次に、戦略デシジョン・ツリー*3の手法を用いて、下流分野の競争状況を検証する。 日本のLNG市場は、新規参入に対する障壁が高く、既得権益者に有利な市場と特徴づけられる(図9参照)。 一方、国際的に自由化されたLNG市場、または新たに勃興しつつあるLNG市場は、互角に競争することが可能な事業分野である。ただし、新規参入者は既存事業者と競合せざるを得しないために、熾な競争に巻き込まれる(図10参照)。烈れつオファーするLNG事業に、日本企業および実力で勝る国際石油企業の2者がそれぞれ参入しようとしている。 仮に日本企業が入札して国際石油企業が入札しない場合、日本企業は1,000万ドルの価値を取得するとする。逆に、日本企業が入札せず、実力で勝る国際石油企業が入札する場合、事業力に勝る国際石油企業はより多い1,200万ドルの価値を獲得する。両者とも入札する場合、実力で勝る国際石油企業が落札して、入札コストを差し引いた900万ドルの価値を獲得する一方、日本企業は入札コストとして100万ドルの持ち出しとなる。 しかし、日本企業と国際石油企業の実力が等しいという前提であれば、どちらか一方が入札する場合、いずれもが1,200万ドルの価値を獲得する。両者が入札すれば、双方が等しく入札コストを差し引いて450万ドルを取得する。つまり、実力が接近していれば、双方に事業のメリットがあると考えられるのである。(2) 下流分野の競争 下流分野の競争を有利に進めるためには、規模の経済、政府の支援、顧客の獲得、さらに資源と専門技術へのアクセスが必要と考えられる。世界のLNG事業はこう変わる ?日本企業の進むべき道:Poten&Partnersセミナー?TACT SYSTEMMYCKYESNOYESNO競争上の優位性を生かすことができる独占的企業の競争上の優位性が排除されないのであれば、参入障壁が高いために成功に至らないゲームの構造/シミュレーション、囚人のジレンマ、参入の先買い、協力/駆け引き参入をあきらめていさぎよく撤退する唯一の独占的な企業高い参入障壁、競争上の優位性:YESYESNO貴社がそうであれば複数企業の中の1社日本のLNG市場/産業:いくつかのローカル市場低い参入障壁、競争上の優位:NO操業上の有効性:効率-効率-効率日本市場は参入障壁が大きく、既得権益者に有利と特徴づけられる出所:Greenwald, Kahn 2005図9日本のLNG市場*3:各設問をYes/Noによって先に進み、結論に至る。75石油・天然ガスレビューP071-080_アナリシス坂本.indd 7506.9.12 11:02:29 AMACT SYSTEMMYCKアナリシスYESNOYESNO競争上の優位性を生かすことができる参入をあきらめていさぎよく撤退するゲームの構造/シミュレーション、囚人のジレンマ、参入の先買い、協力/駆け引き独占的企業の競争上の優位性が排除されないのであれば、参入障壁が高いために成功に至らない唯一の独占的な企業YESNO高い参入障壁、競争上の優位性:YES貴社がそうであれば複数企業の中の1つ自由化された市場、または新市場低い参入障壁、競争上の優位:NO操業上の有効性:効率-効率-効率さらに進歩した事業分野、ただし新規参入は既存事業者と競合するために競争は熾烈となる出所:Greenwald, Kahn 2005図10国際的に自由化されたLNG市場、または新たに勃興しつつあるLNG市場4. LNG事業を行う日本企業の競争力分析強み強い中程度弱い石油上流企業資金調達事業調整能力情報エンジニアリング(工学)E&P(上流分野)液化輸送LNG受入基地/再ガス化販売消費出所:ポテン&パートナーズ図11日本の石油(上流)企業の競争力分野事業を中?下流分野事業に結びつける事業調整能力やLNGのエンジニアリングに関しては、ほとんど経験がないために弱い。全体的に見て、日本の石油企業のLNG産業における存在感は、中程度?弱といったところである。2006.7 Vol.40 No.476んにあるものと考えられるが、上流分野事業で政府から資金面の支援を期待できることから、資金調達能力は総じて中程度といえる。また比較的充実した市場情報を持つが、それはアジア市場に限定されているために、総じて情報力の強みは中程度であろう。上流ゅう疇ち範は 次にバリュー・チェーン展開の図式を用いて、LNG事業を行う日本企業の特徴を分析する。バリュー・チェーン展開の図式では、下方にLNGバリュー・チェーンの各事業段階(上流分野→液化→輸送→再ガス化→販売→消費)を示し、上方にLNG事業に関連する諸活動要素(資金調達、事業調整能力、情報、エンジニアリング)を示している。対象事業者が持つ強みの強弱によって、これらの事業段階、活動要素を、3段階に色分けする。 図11は、LNG事業を行う日本の石油(上流)企業の分析を示している。日本の石油(上流)企業は一般に、保有する油ガス田権益シェアが小さく、コンソーシアム内の発言力が弱いために、上流分野における強みは中程度にとどまっている。また中流から下流(液化?販売)に至る各事業分野に対しては、ほとんど参加していないために強みがない。財務基盤は中程度から弱のP071-080_アナリシス坂本.indd 7606.9.12 11:02:29 AMACT SYSTEMMYCK世界のLNG事業はこう変わる ?日本企業の進むべき道:Poten&Partnersセミナー? 図12に、LNG事業を行う大手商社の分析を示す。大手商社は、従来から多くのLNG事業に参加している長い経験があり、それらの事業を通じ、また他業種の事業から知り得た戦略的で重要な情報にアクセスできる能力に卓越した強みを持つ。また、財務基盤、LNGチェーン全般を通じた事業調整能力に関して、中程度の強みを持つ。ただしエンジニアリング分野は弱い。LNGチェーンの各事業段階では、石油企業が実施する上流分野およびガス・電力企業が独占する販売部門が弱いが、中流分野(液化から再ガス化)においては中程度の強みを持つ。全体として、大手商社の強みは、特に情報と市場知識分野にあるが、上流分野においては特段の成功を収めていない。 図13は、LNG事業を行う中規模商社の分析である。中規模商社は、長いLNG事業の経験から産ガス国政府との間に緊密な関係を築き上げており、情報分野で中程度の強みを持つ。また、財務基盤にも中程度の強みを持つが、事業調整能力とエンジニアリングには弱い。LNGチェーンの各事業の中では、輸送部門に中程度の強みがあるが、他の事業段階では総じて弱い。 図14は、LNG事業を行うガス・電力企業の分析を示す。日本のガス・電力企業の規模は世界でも最大級であり、彼らは世界的なLNGの大需要家である。彼らはLNGの大需要家としての立場を生かして、情報、ガス事業のエンジニアリング分野に大きな強みを持っており、また国内制度上の地域独占に支えられて財務基盤も強い。LNGチェーンの事業段階においては、自らが実施する輸送および下流分野(再ガス化?販売?消費)での強みが大きい。 日本の大手ガス・電力企業は最近、上流分野の資産権益取得、液化事業に対して積極的に進出しており、これらの事業段階においても中程度の強みを持つ。総じて、ガス・電力企業は日本大手商社資金調達へのアクセス事業調整能力情報エンジニアリング(工学)消費E&P(上流分野)液化輸送LNG受入基地/再ガス化販売出所:ポテン&パートナーズ図12日本の大手商社の競争力中規模商社資金調達事業調整能力情報エンジニアリング(工学)E&P(上流分野)液化輸送LNG受入基地/再ガス化販売消費出所:ポテン&パートナーズ図13日本の中規模商社の競争力電力・ガス企業資金調達へのアクセス事業調整能力情報エンジニアリング(工学)E&P(上流分野)液化輸送LNG受入基地/再ガス化販売消費出所:ポテン&パートナーズ図14日本のガス・電力企業の競争力強み強い中程度弱い強み強い中程度弱い強み強い中程度弱い77石油・天然ガスレビューP071-080_アナリシス坂本.indd 7706.9.12 11:02:30 AMACT SYSTEMMYCKアナリシスエンジニアリング分野においては弱いものの、他のすべての活動要素およびLNGバリュー・チェーンのほとんどすべての事業段階において強みを発揮している。 次に、産油ガス国の国営企業の例として、マレーシアのペトロナスを取り上げる(図16参照)。マレーシアではガスの国内供給がパイプライン輸送で行われているために、LNG販売・消費機能が存在しない。従って、ペトロナスはLNGバリュー・チェーンの販売・消費にかかわる事業段階において弱いものの、他のすべての事業段階、および活動要素において強い競争力を持っている。強み強い中程度弱い支援を得ることができた。これはLNG事業において自らの役割を拡大させる観点からは貢献度が大きかった。しかし別の観点から見ると、そのために日本企業が純粋にコマーシャルな観点からの投資を決断する能力を鈍らせる結果をもたらした さて、日本企業の競争相手となる海外のLNG事業者に目を転じると、彼らはLNGバリュー・チェーンの多くの事業段階、およびLNGにかかわる諸活動要素の多くにおいて強みを持つ強力な企業であることがわかる。 国際石油企業の例として、英国のBGを取り上げる(図15参照)。BGは、BG資金調達事業調整能力情報エンジニアリング(工学)E&P(上流分野)液化輸送LNG受入基地/再ガス化販売消費出所:ポテン&パートナーズ図15BGの競争力ペトロナス資金調達事業調整能力情報エンジニアリング(工学)E&P(上流分野)液化輸送LNG受入基地/再ガス化販売消費出所:ポテン&パートナーズ図16ペトロナスの競争力のLNG事業者の中においては優位性が最も大きい。しかし、彼らが得意とする事業分野は規制により強く守られた国内市場に特化しており、国際的な事業展開となるとまだ心もとない。 以上の諸点から、LNG事業を実施している日本企業の現在の特徴を、次のようにまとめることができる。・主に商社によって築き上げられた日本の伝統的なLNG事業モデルは衰退しつつある・世界の競争者(上流分野の石油ガス企業だけでなく、自らLNGの購入および取引を行う電気・ガス企業を含む)と比べて、日本企業の石油ガス上流分野(探鉱、生産、および液化事業)における実力は乏しい。日本企業は既存のLNG事業コンソーシアムの中で支配的な権益シェアを持っておらず、現在はマイナーな役割に甘んじているに過ぎない・ガス・電力企業を別にすると、日本企業はLNG実取引においてめぼしい影響力がない・日本企業は、LNG輸送事業においては、中程度から強力なレベルに至る実力がある。これは自らの取引に用いるLNG輸送船を保有していることだけでなく、必要な量を輸送するための用船に関しても同様である・日本のガス・電力企業は、ガス・電力市場において大きな影響力を持っている。しかし、一方でLNG事業にかかわるすべての業種の日本企業は、LNGの海外市場においてほとんど基盤を持たないに等しい・LNG事業を行う日本企業は、一般に強い財務基盤を持つ。特にガス・電力企業(=公益事業)は、競争が制約される地域独占を許されているために、総じて事業リスクが低い・日本企業は最近まで上流分野において、日本政府から政治的、財政的なP071-080_アナリシス坂本.indd 7806.9.12 11:02:31 AM2006.7 Vol.40 No.478ACT SYSTEMMYCK世界のLNG事業はこう変わる ?日本企業の進むべき道:Poten&Partnersセミナー?5. 日本企業が今後取るべき方法:アライアンスの構築なかったのであるから、将来、卓越した強みを容易に獲得できるとは考え難い。日本のガス・電力企業は、自らの専門事業分野および市場では力を持っている。しかし、世界のLNG業界では、大規模なガス・電力企業が上流分野や液化事業分野において独力で成功した例はほとんどない。 日本企業がLNG事業で成功するためのカギは、日本企業の間で、または外国のLNG企業との間でアライアンスを組むことである。詳細は後に述べるが、このようなアライアンスを組むことによって、上流ガス資産を入手し、LNG輸出プロジェクトの中で重みのある事業参加比率を獲得でき、さらにLNG売買契約を確保することが可能となる。日本企業は、これまでの弱さを徐々に改善するという穏やかな手法に甘んじるのではなく、思い切って他企業とアライアンスを組むことにより、日本の本来の強みであるLNG購買力を有効に活用するよう、経営資源を集中すべきである。(2) 下流分野において 日本企業がLNG事業における存在感を増すための、もう一つのオプションは、下流分野に進出することである。日本のLNG事業者を勝ち組とするための2タイプの戦略的アプローチ(先に述べた「グローバルな事業調整者」および「一貫型大規模LNG事業」)を実現させるには、下流事業分野の取り込みが必須である。日本の天然ガス・電力市場についてのある分析は、明確な供給責任を持つ産業には高い参入障壁が存在すると説明している。日本のガス・電力企業は、周囲に参入障壁をめぐらした業界の中で心地よく過ごすことができようが、他の日本企業にとってはガス・電力業界に参入して存在感を示すのは至難の業である。日本のガス・電力企業は独占的に需要家を抱え、日本政府が定めた地域独占の法令・規則の下で事業を行い、大規模投資を行って都市ガス配管網や発電所を建設し、規模のメリットを享受している。 日本のガス・電力下流市場への参入障壁がこれだけ高く、供給義務が確立している以上、ガス・電力以外の日本企業は、もっと開かれ、自由化されたエネルギー市場を持つ第3国において、下流分野の市場シェアを確保しようとするであろう。参入障壁の低い市場とは、流動性があって既に自由化された市場、または新たに発展しつつある市場である。 具体的には、次のような施策が考えられよう。・日本企業にとって可能性のある機会とは、規模が大きくオープンな市場で独自のLNG受入基地を建設すること、または建設会社やガス販売会社が目下建設中のLNG受入基地の使用権を買い取ることである・こうすることで、日本企業はオープンで流動的な市場に参入するためのカギである、ガス資産の支配権を直接に獲得できる。また日本企業は、地元のガス・電力企業と提携したり、小売り段階および卸段階の顧客を獲得したりすることで、下流分野にさらに深く浸透することができる 制度的枠組みがオープンで、魅力ある世界のガス市場の多くは、規模が巨大であるにもかかわらず、競争は熾烈である。米国においては、成功を確保するためには操業がクリティカル・マス(最低の必要規模)に達する必要があり、規模の経済性が重要になる。リスク・コントロールのためには、ガス供給源の多様化も必要である。ガスと電力業界のマーケティングには、専門知識を習得したスタッフと組織が必要ゃく弱じ 前章までで、国際石油企業および産ガス国の国有企業がLNG産業で強い競争力を持っているのに対して、多くぜいの日本企業の競争力は脆な状況にあることを述べた。それでは、拡大しつつあるLNG事業分野において、日本企業は今後どのような事業戦略を取ることができるのだろうか。 ポテン&パートナーズは、日本企業がLNG事業における実力を増大させるための施策として、他企業とのアライアンス構築を挙げ、次の二つのオプションを提案する。(1) 上流分野において 最初のオプションは、日本企業の上流分野における地位を強化させることである。そうすることにより、日本企業はLNG供給の実質的な支配力を得ることができる。上流事業者としての本来の役割を確立するために、日本LNG事業者は国際石油企業と競争している。しかし、国際石油企業はすでに世界中で最も規模が大きくまた採算性のよいガス資産を保有して、事業化を実現している。 また一方で、産ガス国の国営石油企業も、日本企業にとって強力なライバルである。国営石油企業は、多くの場合、自国の石油ガス資源を直接管理下に置き、長期にわたる操業経験から知り得た知見を生かして、石油ガス資源の開発・生産を行っている。 国際石油企業、国営石油企業ともに、上流事業分野で勝ち組となるために必要な競争上の強みを備えている。それらは、中核となる石油ガス資産、強力な財務基盤、プロジェクトを立ち上げて開発・推進・運営する能力、そして長期間の操業経験に裏打ちされた卓越した技術力である。 一方の日本企業は、これまでLNG産業において競争者と対等に競合でき79石油・天然ガスレビューP071-080_アナリシス坂本.indd 7906.9.12 11:02:31 AMACT SYSTEMMYCKアナリシス国際石油企業(IOC)または産ガス国の国営石油企業(NOC)とのアライアンス: 上流以外の日本企業が、追ってこの類型のアライアンスに参加し、コンソーシアムにさまざまな強みを付け加えることも可能である。?日本のガス・電力企業が、上流分野および液化事業分野の事業機会追求のために、大規模商社または日本の上流企業とのアライアンスを組む。?日本のLNG共同取引機構の設立: 大規模商社とガス・電力企業とが、日本および第3国市場に対するLNG供給の配分を管理するために組むアライアンスを含む。であり、そのためには莫大な投資を必要とする。 しかし、新たなLNG輸入国(新市場)への参入には、最初に投資を始めた者の優位性が大きい。グローバルな事業調整者(Aggregator)の地位を確立しようとする日本企業にとっては、ニッチ市場への参入が不可欠である。とりわけ、調達に柔軟性が許される場合に、なおさらそうである。 ポテン&パートナーズは、日本企業がLNG事業における地位を拡大しようとするなら、上流分野から下流分野へ、または下流分野から上流分野への事業統合政策を実践すべきだと結論付けた。しかし、個々の日本のLNG事業者が直面する障害を勘案すると、LNG事業分野における将来の活動でアライアンスを組むことを真剣に考えるべきである。ポテン&パートナーズは、このための可能な4型のアライアンスを提案している。ここで語られるアライアンスは、LNG産業にしばしば見られる特定案件のコンソーシアム内部のアライアンスの範疇を超えるものである。?LNGのナショナル・チャンピオン企業の育成: 発見されたガス資産を取得してLNG事業として開発し、開発・生産段階に参加する権限を持つ巨大日本企業。?日本の石油ガス上流企業と小規模な 6.政府側機関に期待できる役割 日本企業が上流事業分野の地位を向上させ、LNG事業を拡大させようとする努力に対して、日本政府が貢献可能な余地も大きい。企業が事業モデルを実現させようとしたり、LNGチェーンを構築しようとしたりする際に、政府は必要となる一般的な財政または制度的支援を供与することができる。それによって、企業は自分たちだけでは達成することが難しい事業のアライアンスを容易に実現させることができるものと考えられる。具体的には、次のような事柄である。・外交上および政府間の支援ルートを通じて、日本企業がガス資源の豊富な国で事業機会を創出することを支援する・下流分野から上流分野への事業統合に際して、制約となる諸規制を緩和する。とりわけガス・電力企業に課せられた既存の規制は、日本企業がLNGバリュー・チェーンを作り上げようとする際に、大需要家としての市場の強みを十分に生かすことを妨げている・日本企業が技術分野における競争的優位性を獲得することを目的にして、洋上液化設備や小規模ガス田へのLNG適用などの長期の準備期間を要する研究・開発に対する資金供給を行う。また、日本企業が有用な情報を入手することができるように支援を行う・特定の液化事業案件に対して、最終投資決定に至るまでの期間に資金援助する・強力なLNGのナショナル・チャンピオン企業の育成を図り、これを支援する7.結論  本稿の結論を次の通り、要約する。・LNGチェーンの各段階を垂直統合させた有意義なアライアンスを構築するためのカギは、電力・ガス企業のコンソーシアムへの参加であるるために、日本企業はLNGの実質的な供給量を以下の方法でコントロールする必要がある。日本企業は、a.LNG輸出プロジェクトの上流資産に大きな権益シェアを取得し、・LNG事業の成長を確実なものにすb. ガス・電力企業が過去に実施してきたように、輸出事業者と数量に関する売買契約の締結をすべきである・経営資源を集中させることが重要である。将来に成長を求める場合の戦略には、集中と長期の開発計画とが必要であるP071-080_アナリシス坂本.indd 8006.9.12 11:02:31 AM2006.7 Vol.40 No.480
地域1 グローバル
国1
地域2 アジア
国2 日本
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
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地域10
国10
国・地域 グローバルアジア,日本
2006/07/20 [ 2006年07月号 ] 坂本 茂樹
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