ページ番号1006232 更新日 平成30年2月16日

イスラム文化との接近遭遇 ~サウジアラムコの場合を中心に~

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レポートID 1006232
作成日 2006-07-20 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 エネルギー一般企業
著者
著者直接入力 庄司 太郎
年度 2006
Vol 40
No 4
ページ数
抽出データ 石油鉱業連盟企画調査部長t.shoji@sekkoren.jp庄司 太郎イスラム文化との接近遭遇?サウジアラムコの場合を中心に?エッセーはじめに掛け、「御身にこそ平安を(ワアレクンサラーム)」と返すのである。今、どこでも使えると書いてしまったが、トイレの中では使わないらしい。筆者もあまり大声でトイレの中であいさつしているのを聞いたことがない。 アラブ人はイスラム教徒が大半である。しかし、アラブ人の居住している地域は広範であり、かつ複雑で、キリスト教徒のアラブ人も少なくない。サダム・フセインがイラクの大統領だったときに、副首相で外務大臣だったターリクアジーズや、国連事務総長だったエジプトのガリがキリスト教徒であったことは、記憶に新しい。 アラブ人にとっての最初のあいさつは、相手を敵か味方か、イスラム教徒にとって特別の意味をもつアラビア語を理解している者かなど、その接近遭遇時に瞬時に相手を感じ取る緊張感をもった行為である。それ故に、最初に相手の平和を願うのである。 さらに男同士でも、あいさつ時には、抱擁と接吻を行う。この接吻のやり方と場所が、お互いの関係を表すことになるので、注意して観察してほしい。相手の肩、首、顔の唇の下の部分、鼻、頬、おでこ等々さまざまである。同時に握手も行う。あいさつにおいて、とにかく体のすべてを鋭敏にして相手との関係を構築するのである。お辞儀の文化の日本とは、なんと流儀が違うことか。これが文化の違いである。出所:サウジアラビア王国文化・情報省『サウジアラビア王国 伝統ある若き近代国家』04年3月 ※写真はイメージですアラブ人の男性ん憺た 「ィサラーマアレークム。」その発音は、カタカナにすると正確ではなくなる。ことほどさように、外国の事象は、日本の言葉や文化によって簡単には写し出せないし、理解が難しいことは、さん読者の皆様も日頃から苦心惨していることであろう。もっとも、大声で発音し、相手との間合いを計り、状況を把握していれば、相手も「ワアレクンサラーム」と答えてくれるケースが多い。ここにようやく、アラビア語によるあいさつが成立し、相手にとっては、こちらがイスラム教徒かもしれないとの淡い同胞意識が生まれる。 アラビア諸国において、あいさつには特別の意味がある。最初に引用した言葉は、朝夕を問わず、いつでもどこでも、男性か女性か、また相手の数にかかわらず、公式の場合でも使える万能のあいさつである。 初めての人も、これだけは覚えておいてほしい。こちらから「御に平安を(ィサラーマアレークム)」と呼び身みおん あいさつに関する記述が長くなった。ここで本題への導入に移ろう。 筆者が最近注目している新進気鋭のイスラム地域研究者の池内恵氏が、2002年に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書)という書物を出版している。この中で氏は、次のようにその論文のテーマを述べている。さとし アラブ社会が脚光を浴びるときというのは、どうもきな臭かったりする場合が多い。端的にいえば「テロと戦争」である。これに「石油」が加わって油臭くなったりもする。4次にわたる中東戦争や湾岸戦争、その他の小規模の紛争・衝突に現われる不安定な政情や、かつての「パレスチナゲリラ」のハイジャックや爆破などの活動、現在の「イスラーム原理主義者」による自爆テロなどが「危険な地域」としてのアラブ世界の印象を強めている。その背景には、どのような社会の状況があるのだろうか。 現在(2006年4月)に至り、このテーマは、われわれがますます日常的に追わなければならないものになってきた。2004年からの原油価格の急騰とその継続、イラクやパレスチナでの自爆テロの頻繁な発生、イラクの国内での混乱、イランの核の濃縮問題に端を発した緊張、中東における米国の存在、日本のアザデガン油田権益の行方等、2006.7 Vol.40 No.492№ヘ、どこでもお祈りする。メッカの方向を「キブラ」といい、モスクなどにはキブラを示すミフラーブという造作が必ずあるし、メッカの方向がどこでもわかるように、磁石セットも販売されている。 お祈りの方向は、最初からメッカだけだったのではなく、エルサレム*3もお祈りの方角になっていたこともある。イスラム教は聖典宗教であり、クルアーン*4とムハンマド*5の言行を重視する。そして、やや意外な感じがあるが、合理性を重んじるのである。それも、ときにはわれわれと違った形で合理的にふるまうのである。 それは、筆者が自社(アラビア石油)のサウジアラビアにある鉱業所で、大卒の新入社員研修を企画していたとき、近隣他社のサウジアラムコを訪問して、その研修の状況を視察した際の新しい発見である。 午前11時過ぎにぞろぞろと研修生が教室から出てきた。それは、会社の始業時間を過ぎて最初の礼拝時間だっやはり、きな臭い状態が世界のエネルギー安全保障にも多大な影響を与えている。 この問題の背景にあるアラブ社会の社会状況の本質は、池内氏でなくとも把握したいのではなかろうか。池内氏は、この社会状況の把握には、「知識人ほこりの思想書から、街角のスタンドで埃をかぶった際物出版物、さらにはテレビ番組やヒットソングに至るまで、そのしょう言説を渉し、社会と政治の変動との絡みを大づかみに描き、現代アラブ世界の時代精神を切り取ってみたい」と述べている。筆者もこれにあやかって、今回は自分の体験や見聞きした面白いエピソードを紹介して、アラブの社会状況を知る材料にしていただこうと思う。お付き合いを願いたい。猟りょうイスラム文化との接近遭遇 ?サウジアラムコの場合を中心に?サウジアラムコにおける お祈りの時間 サウジアラビアのみならず、中東のイスラム社会では、メッカの方角に向けてのお祈り(これを「サラー」ないしは「サラート」という)が、スンニー派*1の社会では1日5回、シーア派*2では4回行われる。スンニーとシーアはめったに一緒にお祈りしない。 原則的には、作法にのっとりモスク(イスラム教寺院)または礼拝所で行うが、そういった特別な場所がない場出所:サウジアラビア王国文化・情報省『サウジアラビア王国 伝統ある若き近代国家』04年3月現在のメッカ聖モスク*1:本論文の脚注は編集部が付した。出典はそれぞれ括弧書きで文末に記す。イスラム教(イスラーム)の二大宗派のひとつ。預言者ムハンマド(Muhammad,570年頃?632年)の時代から積み重ねられた「慣行」(スンナ)を守る宗派という意味で、アラビア語で「スンナに従う人」を意味する「スンニー(Sunn_)」の語からスンニ(ー)派、スンナ派などと呼ばれる。イスラームの宗派の中で最大の勢力となる、多数派となっている。多数派であることや歴史的な事情などから「正統派」などといわれたりもするが、正統であるかどうかはあくまでスンナ派の内側から見た理解である(ウィキペディアより抜粋)。*2:イスラム教の二大宗派のひとつ。イスラム教の開祖ムハンマドの従兄弟で、娘婿のアリーと、その子孫のみがイマームとして預言者のもつイスラム共同体(ウンマ)の指導者としての職務を後継する権利を持つと主張する。シーアは、アラビア語で「党派」を意味する普通名詞で、初期のシーア派の人々が、「アリーの派」(シーア・アリー)と呼ばれたことに由来している。のちには、シーアに単に定冠詞を付したアル=シーアという語で「アリーの派」を意味するようになり、派の名称として定着した。シーアに属する人のことをシーイーといい、スンナ派信徒を意味する「スンナに属する人」(スンニー)に対応する。従って、シーアあるいはシーイーに「派」という語を付すのは、厳密に言えば同一語の二重の繰り返しである(ウィキペディアより抜粋)。*3:エルサレムは、西部についてはイスラエルが実効支配し、東部についてはイスラエルが占領しているものの、パレスチナも領有を主張している内陸都市で、イスラエルの首都である。古代イスラエル・ユダ王国の首都で、エルサレム神殿があった場所である。またイエス・キリストが処刑された地であり、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教共通の聖地である(ウィキペディアより抜粋)。*4:イスラム教(イスラーム)の聖典。イスラム教の開祖であるムハンマドに対して神(アッラーフ)が下した啓示であり、ムハンマドの死後にまとめられた現在の形は全部で114章からなる。アラビア語の定冠詞「アル(al-)」をつけてアル=クルアーンともいい、「朗唱されるもの」を原義とする。欧米では古くからCoranあるいはKoranと呼ばれており、日本でも長らくそのカタカナ化した形であるコーランという名前で呼ばれてきた。しかし近年はアラビア語の原語の発音により近くして日本語ではクルアーン、英語ではQur'anと表記されることが多くなってきている。なお、宗教法人日本ムスリム協会は「聖クルアーン」と表記している(ウィキペディアより抜粋)。*5:ムハンマドは、イスラム教の創始者。イスラム教では、モーセ、イエス・キリストに続く最後にして最高の預言者とみなされている。全名はムハンマド・イブン=アブドゥッラーフ・イブン=アブドゥルムッタリブ(Muhammadibn`abdullahibn`abdal-MuTTalib)という。かつて日本では、西欧での表記(Mohammed,Mohametなど)やトルコ語での表記(Mehmet、Muhammet)にしたがって、モハメッド、マホメットなどと呼ばれることが多かったが、近年では標準アラビア語(フスハー)の発音に近い「ムハンマド」に表記・発音される傾向がある(ウィキペディアより抜粋)。93石油・天然ガスレビュー006.7 Vol.40 No.494エッセー出所:サウジアラムコホームページ※写真はイメージですサウジアラムコ社内の様子上手に融合させた知恵が見受けられるのではないだろうか。 スンニー派の中でも、特に戒律が厳しいワハーブ派*7であるサウジアラビざんアは、女性が顔を隠しているとか、斬があるとか、とかく外国文化とはかけ離れた生活をしているような印象が強いが、サウジアラビアにはサウジアラムコのような組織もあり、旧弊・因習の地とは単純に言えないこともおさえておく必要があろう。首しゅの問題、いかなる理由でも例外なしだそうである。どうして、こんなに厳しくするのだろうか。サウジアラムコのサウジ人の部長はこう言った。「われわれにとっては、ナショナル社員(自国民のことをナショナルという表現を使うことが多い)に学ばせることは最大の目的であり、学んだからには、その知識や体験を実際の仕事に生かしてほしい。そして、外国人に依存している仕事をナショナルで置き換えたい」。この強烈な誇りが規律を厳しくしているというのである。 サウジアラビア国内でも、サウジアラムコは国民の誇りであるようである。そして、会社内においても、基本的にはビジネスは英語で行われ、英語の下手な人は出世しないと言われている。予算も、スケジュール管理も、資材のシステムも、環境対策もすべて、発足当時からの米国メジャーの方法が進化している。サウジアラムコを、サウジアラビアの中のアメリカという人もいるが、会社の文化を着実に自分たちのものにしていることは見上げたものである。 そして、この過程のなかに、欧米の合理的経営にイスラムやアラブ文化をWORKFORCE(year-end 2005)Saudi44,991Expat6,852出所:サウジアラムコホームページサウジアラムコの従業員の割合(05年末)TOTAL: 51,843た。次は3時頃だろうなと思っていたら、研修担当の教官がサラー時刻表なるものを示して説明してくれた。知っている人も多いと思うが、このお祈りの時刻は毎日少しずつ変化する。月を基準に決めているので、そうなるのである。そして驚いたことに、そのお祈り時刻表は1日ごとに分単位で1カ月分記載されていた。研修生はそのスケジュールに沿って、講義の時間割のようにお祈りに行ったのである。そして15分たって戻ってきた。この15分は驚きである。 日本の会社で働くアラブ人従業員は、お祈り時間になると大体30分は戻ってこない。日本人管理者は、宗教的行為であるからして、そのことについて文句を言わない。たとえ、作業能率に影響してもである。日本の会社には、毎日を分単位で変化させたお祈り時刻表はない。時間管理は会社内のモスクからの「アザーン*6」というお祈りの呼び掛けに任せている。戻ってくる時間は決めていない。 これも一種の管理方法であろうが、サウジアラムコの時間管理の厳格さには驚いた。現在は世界最大の産油会社であり、世界最大の原油埋蔵量をもち、世界最高の生産量を出し続けているサウジアラムコ。技術力もついているし、欧米留学経験者も多い。その他、戦略をもって中国、日本、韓国等にも留学生を送っている国営会社の「欧米流の会社運営とイスラムやアラブ文化の融合」の実例を見た思いがした。 さらに、この研修スケジュールの1カ月の間に3日以上休むと、研修参加者はやり直しか、研修への再参加ができなくなる。この条件は、どんな理由であれ守られると聞いた。病気、家族*6:ユダヤ教のラッパ、キリスト教の鐘と同じような役割をしているが、肉声で行われることに特徴がある。「神は偉大なり」という意の句「アッラーフ・アクバル」の四度の繰り返しから始まる(ウィキペディアより抜粋)。*7:ワ(ッ)ハーブ派は、18世紀にアラビア半島内陸のナジュドに起こったイスラム教の改革運動である。宗派としてはスンニー派に属するが、その下位宗派に数えられる場合もある。法学的には、イスラム法学派のうち厳格なことで知られるハンバル派に属す。創始者はムハンマド・イブン=アブドゥルワッハーブ(ワッハーブ)。一般にイスラム原理主義と呼ばれて知られている復古主義・純化主義的イスラム改革運動の先駆的な運動であると評価される。ワッハーブ派は現在もサウジアラビアの国教であり、宗教警察が国民に対して目を光らせている。また、王家が国庫を私物化しているという不満を受け止める存在ともなっている。同国出身のオサーマ・ビンラーディンも元々ワッハーブ派に属する信徒であったとされる(ウィキペディアより抜粋)。i財)として寄贈を受け、それがイスラム学校の費用、クルアーンの普及、寡婦への援助や病院・医療のためなどに使われる。サダカと呼ばれる個人の喜捨も相当額にのぼる。図書館や病院などの公共施設の建設なども、イスラムが担当している部分が相当ある。 サウジアラビアなどでは、ワクフを「イスラム問題・ワクフ・宣教・指導省」が管轄し、世俗国家の組織の中に取り入れながら、伝統的イスラムの制度を存続させている。西欧においても、キリスト教の教会が税を取ったり、寄付を集めたり、宗教改革の発端になった免罪符により資金を集めたり、イスラムと同じように慈善の精神が横溢しているが、教会の世俗化はイスラムと比較すべくもなく、何度も宗教改革ののろしが上がってきた歴史があることはよく知られている通りである。イランの場合については詳しくは触れないが、スンニー派の諸国とは異なる寄付金の流れや慈善の観念が、歴史的に確立されている。おういつ原理主義と陰謀史観 イスラム原理主義の台頭は、心の中にイスラムの公正と慈善の心をもったじゅんれらによって金利の禁止や度量衡の遵ゅなど、市場の交換を担保する仕組みが規定されている。さらに、個人の不正に対しては、絶対神アラーが、帳簿に記載されているものをすべて見て最後に判断し、地獄に行くものは地獄へ、天国に行くものは、水辺で絶世の美女と美食にありつけるというイメージつきで結果が明示され、自己規律がしやすくなっている。神が善悪を担保するシステムなのである。 ロシアのオリガルヒ*9が、自由競争と市場を使った形でロシアの石油・天然ガスの資産を私物化した例などは、市場に正義と徳が失われていたという格好の例であろう。オリガルヒの代表的人物であるホドルコフスキーが逮捕されても、ロシア国内でプーチン大統領の強権体質がそれほど問題にならなかったのは、彼らこそが市場を使って不正を行ったと見なされている証拠である。 さらに、イスラム社会ではザカットという宗教税が収入の2.5?5%程度課せられている国が多い。富裕税の一種であろうが、世俗国家で宗教国家ではない国でも、モスクや財団によりザカットが徴税されている。相続権者のいない財産は、モスクがワクフ(宗教守し出所:サウジアラビア王国文化・情報省『サウジアラビア王国 伝統ある若き近代国家』04年3月※写真は本文とは直接関係ありません小泉首相と会談するファハド国王(03年5月、ジェッダ)アラブ人にとっての公共の概念 2006年4月5日の日経新聞の経済教室欄で、猪木武徳教授が「市場に道徳的基盤を」との意見を述べている。その中に、以下のような論述がある。 「市場価格」の倫理的な価値を支えているのは時にあいまいな意味しか持ち得ない「自由な交換」という大前提で、この前提に最大の価値を与えることへの懐疑と反省が時には重要になる。自由競争は経済社会の成長や発展のためには、重要かつ不可欠な社会装置だ。ただ、それは正義の徳とは必ずしも両立するとは限らない。(中略)これからの日本のかたちを考える場合、理念としての「公(公共)」の強化が欠かせない。ただし、これは現実の「官」と厳しく区別しなければならない。はんゅう疇ち これは、日本に向けての発信であると同時に、アラブ諸国にとっても非常に重要な提言であろう。アラブ社会は、歴史的にも交易とス?ク(市場)を社会の発展の基盤にしている。「市場価格」と「自由な交換」の概念は、西欧での資本主義の発展の前に、既に存在していたともいえる。それらの概念に「正義の徳」と「公共」の意味を付加していたのは、イスラム教の教えであったと考えるのが妥当であろう。市場の公正さを守るためのルールの基本は、イスラム教の教えであった。 イスラム諸国では経済法が整備しにくいし、整備されていないとよく言われるが、それは、経済法の範にもイスラム教が既に深く入り込んでおり、クルアーンやハディース*8が法源になっていると考えるべきであろう。そイスラム文化との接近遭遇 ?サウジアラムコの場合を中心に?*8:ハディース(Al-had?th、言行録)は、イスラム教の預言者ムハンマドの言行録。クルアーンがムハンマドへの啓示というかたちで天使を通して神が語った言葉とされるのに対して、ハディースは、ムハンマド自身が日常生活の中で語った言葉をまとめたものである。ただし、クルアーンと異なり、一冊の本にまとまっているような類のものではない。伝えられる言行一つ一つがハディースである(ウィキペディアより抜粋)。*9:ロシアの新興財閥(oligarkhi)。「オリガルヒア」、「オリガーキー」などとも称される。ロシアの資本主義化の過程で形成された政治的影響力を有する寡頭資本家(ウィキペディアより抜粋)。95石油・天然ガスレビューGッセー出所:サウジアラビア王国文化・情報省『サウジアラビア王国 伝統ある若き近代国家』04年3月※写真は本文とは直接関係ありませんサウード国王に拝謁する山下太郎氏(1957年、リヤード)かっさい単であるし、その陰謀の張本人がイスラエルやアメリカだったり、フリーメイソン*10やユダヤの結社、アメリカのCIAだ、イスラエルのモサド*11だということになれば、民衆は拍手喝采だし、出来事を血わき肉躍るドラマに仕立て上げ、その責任をあいまいにできるというメリットがある。 とにかく、中東やアフリカでは、相当の教養のある人でも、この手の話をまともな顔をしてうわさすることがある。新聞などにも、ダブロイド版でなくともこの類の話題が載ることがある。 陰謀史観とイスラム原理主義という極端な右と左が同居するイスラム社会は、国民の世論を、西欧的またはグローバリズムにのっとってまとめ上げることが難しい社会である。社会のこの深層をよく理解していないと、アメリカの拡大中東民主化政策のように、この地域に民主主義を広げることが容易にできるような錯覚に陥ってしまう。筆者は、民主主義は万能ではないが、権力のチェックのシステムが付いていれば、やはり独裁や共産主義よりはましだと思っている。われわれにとっては、イスラム教徒の心根のやさしさと公正を信じて、極端な陰謀史観にむしばまれた民衆が教育と啓蒙により覚醒し、本当に安定し、テロや貧困のない社会が、彼らの力で造り上げられるのを待つしか方法はないのではないか。それには長い時間が必要だと思われる。やりだま人たちが、公正であるはずの「現実の“官”」(イスラム諸国においては、「政府」と同一との認識であろう)が、公正と慈善の原則からかけ離れていると直感的に感じ取り、腐敗の撲滅運動、反政府運動や、世俗国家の親玉であるアメリカを槍玉に挙げながらの反米運動に走っていく中で培われているものとも言えるのではないだろうか。それが、西欧的な、民主主義の確立や普通選挙の実施、男女同権、福祉目的税の創出等々に向かわないことについては、イスラム社会の基盤が、専制国家や開発独裁国家、そして貧しい軍事国家、先進国からの援助でようやく成立している国家等が大半を占めるということに理由がある。 さらに、出版物の発行部数の統計を見ると、これらの地域では出版数がきわめて少なく、一般民衆の教育レベルも限定され、一部エリートを除き、民衆が、複雑なことを筋道を立てて考えることが困難な状況にあることも一因とも言われている。 「陰謀史観」が大はやりになる前提が揃っているのである。この陰謀史観がはやる理由は、民衆は物事を勉強したり、国際情報を広く求めることもしないし、現在の政府も、自らの不正や無策を陰謀のせいにした方が説明が簡著者紹介庄司 太郎(しょうじ たろう)ふるさと:1953年宮城県白石市に生まれる。学歴:1976年東北大学法学部法律学科卒業職歴:1976年アラビア石油㈱入社、ニジェールのテキダンテスムにて、ウラニウム探鉱に従事(2年間)、サウジアラビアカフジ鉱業所勤務(2度、9年間)、クウェートにてクウェート事務所に勤務(4年間)の海外勤務を含め、石油を中心にした、資源開発に従事。現在、石油鉱業連盟企画調査部長、中央鉱山保安協議会石油鉱山保安部会専門委員趣味:蚊の研究、車、鉄道旅行興味:エネルギー安全保障、イスラーム、サウジアラビア・クウェート地域研究、インド・タイ地域研究、外国人の教育訓練家族:妻、長男*10:フリーメイソン(Freemason、英語表記の場合)とは、イギリスで発生し世界中に派生した男性の秘密結社(自身は非公開団体といっている)である(ウィキペディアより抜粋)。*11:イスラエル総理府諜報特務局。正式名『ハ?モサドレ?モディインウ?レ?タフキディムメユハディム(直訳で諜報及び特殊任務のための機関)』。「モサド」というヘブライ語の一般名詞には「機関や組織、施設」といった意味がある(ウィキペディアより抜粋)。2006.7 Vol.40 No.496
地域1 中東
国1 サウジアラビア
地域2
国2
地域3
国3
地域4
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地域5
国5
地域6
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地域7
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地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 中東,サウジアラビア
2006/07/20 [ 2006年07月号 ] 庄司 太郎
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