ページ番号1006233 更新日 平成30年2月16日

西サハラ:ポリサリオ戦線が鉱区公開 ─ 今後の展開で鉱区権益はどうなるか?

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レポートID 1006233
作成日 2006-07-20 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 探鉱開発
著者
著者直接入力 石田 聖
年度 2006
Vol 40
No 4
ページ数
抽出データ 西サハラ:ポリサリオ戦線が鉱区公開─今後の展開で鉱区権益はどうなるか?アフリカ大陸西端部に位置する西サハラ地域の正当政府を主張するポリサリオ戦線は、2005年5月に鉱区公開に踏み切った。設定18鉱区のうち、9鉱区が落札された。同地域は長年モロッコが実効支配しており、鉱区権益の正当性、継続性については危ぶむ声も大きい。しかし、同戦線とモロッコとの関係は新時代を迎えたものと考えられ、今後これらの鉱区権益が継続し、探鉱が活発化するものと思われる。1.鉱区公開とその結果 西サハラの正当政府を主張するSADR(サハラ・アラブ民主共和国:Saharawi Arab Democratic Republic)が鉱区公開を行った。設定鉱区の概要を図1に示す。鉱区公開は2005年5月に行われ、2006年3月に落札会社が公表された。 入札結果は、表1のとおりである。沖合12鉱区については、6鉱区が落札された。陸上鉱区6鉱区については、3鉱区が落札された。なお表1には、落札者が現れず公開状態のまま残されている鉱区についても、その概要を示す。 落札会社については、海洋のDaora、Haouza、Mahbes、Mijekの4鉱区は、いずれもPremierとOphirのコンソーシアムが落札した。その他の海洋のLaguera鉱区はEncore、同じく海洋のGuelta鉱区はComet、陸上のHagunia鉱区およびBir Lahlou鉱区はEuropaがそれぞれ落札した。 Premierは、英国の著名な独立系石油企業である。一方、Ophirは、南アをベースにするブラック・アフリカを代表する企業で、ブラック・アフリカへの重点投資を行っている。 過去、モロッコが主権を主張する西サハラ沖合2鉱区をKerr-McGeeとTOTAL他(計4社)に鉱区付与してい97石油・天然ガスレビュー出所:ホームページSaharawi Arab Democratic Republic, Oil and Gas    Exploration 2005/2006 Licensing Round:http://www.sadroilandgas.com/図1西サハラの公開鉱区たが、TOTALは2005年に撤退、最後の1社であったKerr-McGeeも2006年4月に鉱区期限が来て撤退した。SADRは、この撤退に際しては、歓迎の声明を発表している。2.炭化水素ポテンシャル 同海域の炭化水素ポテンシャルについて、若干の考察を試みた。図2に本地域の地質の概要と、モーリタニアにおける石油発見位置とを図示する。 西サハラの鉱区は、英領北海の約50%の鉱区面積があるにもかかわらず、同海域には1960年代から1970年にかけてわずかに5坑井が掘削されたにすぎない。 南部のLaguera鉱区については、チンゲッティおよびペリカンの発見のあったMSGBC(Mauritania-Senegal-Gambia-Bissau-Conarky)Basinの北端部にあたる。なお、北部のAaiun-Tarfaya Basinに関しては、前述のとおり掘削井が乏し\1落札鉱区(上)とオープン鉱区の概要(下)鉱区名DaoraHaouzaMahbesMijekLagueraGueltaHaguniaBir LahlouBojador鉱区名TahAmgalaFarsiaImliliJreifiaZugSmaraUmdreigaTichla海・陸海海海海海海陸陸陸面積 (km2)20,89215,41 717,38116,96517,36120,47629,89539,60314,579面積 (km2)17,54017,27716,33823,17219,76515,76031,50431,45244,298海・陸海海海海海海陸陸陸落札会社Premier/OphirPremier/OphirPremier/OphirPremier/OphirEncoreCometEuropaEuropaMaghreb/Nighthawk/Osceola水深等0 - 3,5002,700-3,5002,700-3,3000 - 1500 - 700100-3,400―――出所:ホームページSaharawi Arab Democratic Republic, Oil and Gas    Exploration 2005/2006 Licensing Round:http://www.sadroilandgas.com/く、石油地質データはほとんどない。 Premierの取得について同社幹部は、モーリタニア・チンゲッティ油田での生産開始、カナリア諸島でのRepsolとWoodsideとの探鉱から、今回の取得鉱区についても有望なものと判断しているようである。 一方、陸上鉱区を取得したEuropa OilはBir Lahlou鉱区について、アルジェリアに盆地主部があるTindouf Basinの南部に位置しており、アルジェリアにおける同堆積盆地の下部古生界石油システムと同様のものが対象鉱区にも分布している、としている。 Hagunia鉱区は、大西洋海岸盆地に位置している。ほとんど探鉱がなされておらず、詳細は不明である。3,000m以上の白亜系の堆積物があると予想されている。モロッコとの境界を越えて北側のCap Juby(ジュビー岬)のすぐ北方では油徴が知られており、落札者のEuropa Oilは同鉱区も有望であるとしている。3.西サハラ問題 西サハラ地域は、アフリカ西端部にある旧スペイン領サハラ(もとのリオ・デ・オロおよびサギア・エル・ハムラ地区)を指し、面積26万6,000km2で人口は約30万人と推定されている。同地域は北東部を除いて大半がサハラ砂漠で、大西洋岸まで広がっている。北東部はアトラス山脈の南西端にあたる。 西サハラ問題とは、西サハラ地域の領有権を巡って、モロッコと、独立を目指すポリサリオ戦線の対立のことをいう。同戦線の公式名称は「サギア・エル・ハムラおよびリオ・デ・オロ解放人民戦線 (POLISARIO:Frente Popular de Liberacion de Saguia el Hamra y Rio de Oro)」である。 西サハラは1886年にスペインの保護領、1934年にスペイン領サハラとなり、アラブ人およびベルベル人の共存で栄えてきたが、1975年のマドリード協定によりスペインは領有権を放棄した。 スペインが同地域から手を引くと、1975年11月6日に故ハッサン2世国王自らの指揮の下、37万人ものモロッコ国民がモロッコ・西サハラ境界を越えて行進し、この地域のモロッコへの帰属を内外に訴えた。これが「緑の行進」である。 1973年に、独立を志向する住民のなかからポリサリオ戦線が結成された。ポリサリオ戦線は1976年2月27日に、サハラ・アラブ民主共和国(Saharawi Arab Democratic Republic:SADR)の樹立を宣言した。これは、アルジェリアの首都アルジェに根拠地を置いた亡命政府で、リビアの支援も受け、同年から武力闘争を開始した。同時に、アルジェリアはモロッコとの国交を断絶した(その後1988年に国交再開)。 1975年のスペインの領有権放棄の裏では、西サハラ北部をモロッコ、南部をモーリタニアが分割統治するという秘密協定があったといわれる。モーリタニアに対しては、1977年にポリサリオ戦線が軍事的に勝利した。さらに1978年にはモーリタニアで戦費の多額の出費から無血クーデターが起きた。1979年には、同国はポリサリオ戦線と単独和平協定を締結し、西サハラの領有権を放棄した。 しかし、モーリタニアが放棄した部分をモロッコが同年、すぐさま併合したため、モロッコとポリサリオ戦線の対立は拡大し、独立をめぐる問題は現在に至るまで続いている。モーリタニアは1984年にSADRを国家承認した。 図3に示したようにモロッコは、土砂を高さ2m前後に積み上げた「砂の壁(ベルト)」と呼ばれる防壁を築き、ポリサリオ戦線を排除している。 この「ベルト」は、モロッコ国内から約2,000kmにわたって続いている。1976年以来、これまで6次にわたって建設が進められてきたもので、前面に地雷を設置し、5kmごとに部隊が配置されている。さらに、要所に電子探知装置が設けられ、20kmごとにレーダーも備えている。「ベルト」から5?6kmの地点にはモロッコ機甲部隊が待機している。ポリサリオ戦線に同調する者はこの「ベルト」により排除されており、西サハラ域内では「ベルト」の東側、あるいはアルジェリア領内にある難民キャンプに居住し、スペインなどに亡命している者も多い。 SADRは、アフリカ、中南米、南アジアの発展途上国を中心に約80カ国からの国家承認を受けているが、先進諸国からの承認はない。また、西サハラのほとんどの地域をモロッコが実効支配しているが、モロッコによる領有権の主張は、ほとんどの国から認められていない。 1983年にアフリカ統一機構(OAU、現在のアフリカ連合〈AU〉)が独立問題に関する住民投票を提案し、モロッコ2006.7 Vol.40 No.498} 例第四系第三系白亜系古生界先カンブリア界火成岩水域堆積盆地境界公開鉱区位置既発見油田位置(モーリタニア)18°12°6°Taoudeni BasinTaoudeni BasinT7035eeetttaaaRRReeeUuibuibuibgggplift8602nnnnnsssssssiiiiiaaaaaaaBBBBBBB aaaaaaayyyyyyyaaaaaaa66fffffff66rrrrrrraaaaaaa00TTTTT22-----nnnnnuuuuuiiiiiaaaaaAAAAAhieldate SauibuibggeeRRaC BMSGB28°24°20°BandasinTiofChinguetti出所:鉱区位置は図1と同じ資料。地質図は、USGS(2003:Buttetin2207-A)による。図2西サハラの地質概況とモーリタニアにおける石油発見位置もそれを受け入れた。しかし1984年、OAUにSADRが加盟したことで、モロッコはOAUを脱退した。なお、AUへの加盟国総数は53カ国であり、アフリカ大陸の国連加盟国数53カ国と同数であるが、SADRはAUのみへの加盟、モロッコは国連のみへの加盟である。 1988年に、独立かモロッコへの帰属かを決める住民投票を実施するという国連事務総長の和平提案に、ポリサリオ戦線はモロッコとともに合意した。1991年4月、国連の仲介でモロッコとポリサリオ戦線は停戦に合意し、同年の9月に国連西サハラ住民投票監視団(MINURSO)が派遣され、活動を開始している。 しかし、同地域には遊牧民が多く、有権者の認定が困難を極めるため、投票は無期延期となっている。また、モロッコ国王モハメド6世の相次ぐ西サハラ訪問、モロッコによるインフラ整備などにより、モロッコは西サハラ領有を既成事実化し、独立を阻止しようとしている。 前述したとおり、モロッコとアルジェリアとは、現在も政治的な緊張状態にある。モロッコとアルジェリアは隣国同士であるうえ、モロッコは、アルジェリアから欧州への天然ガス供給の大動脈であるアラブ・マグレブガスパイプライン(GME)の通過国であることから、ある程度の経済関係はあるが、国境は依然として封鎖されたままで陸路での往来はできない。 西サハラ問題はモロッコ人の民族・国家意識をかき立てているようだ。筆者は先般、モロッコを訪れて、何人かの一般的なモロッコ人(ただし石油関係者)に同問題について意見を聞いた。国際社会の認識と彼らの認識は大きく違うようだ。曰く「いわゆる西サハラと呼ばれる『モロッコ南部』には、飛行機の定期便もあるし、モロッコの旗もなびいているし、国王も頻繁に訪れている」。また、「旧いわ来からのモロッコ領をスペインが不当に植民地としていたものを取り返しただけだ」と言う者もいた。観光と、沿岸部の小規模な農業以外にめぼしい産業もない同国にあっては、国家意識を高揚するこの問題の意義は大きいのかもしれない。4.今後の展開の観測 SADRは、海域の漁業権(モロッコ政府の「承認」のもとに、日本を含めた多くの外国船が西サハラ沖合に入漁している)に主権を主張している。これとともに、SADRが国際社会で自立できるか否かに関して、石油・天然ガス探鉱・開発問題が最大の課題となっている。今後、モロッコがどのように出るか? このまま国際世論を無視するのか、それとも妥協して西サハラを独立させるのか、あるいは別の方策、たとえば大幅な自治権を与えつつ独立を許さないのか?99石油・天然ガスレビュー「る。とはいえ、モロッコの国家財政を劇的に好転させるものではない。 今回、海洋鉱区の入札にPremierをはじめ参入者があった。ポリサリオ戦線側は全く海軍力を持たないので、もしモロッコ側がその気になれば、海洋鉱区のオペレーションをいかようにも妨害できる。そうしたリスクをおかしてまで、土地勘のある欧州企業が参入したとは考えられず、それなりの状況好転の予兆や裏付けが得られているものと観測される。 最終的には、モロッコはアラブ諸国初の大幅な自治権をポリサリオ戦線側に渡すことになるであろう。そうなれば、今回のSADRによる公開鉱区の権益は、モロッコが暗黙に了解した、国際的にも承認される権益になると予想される。 ノルウェーのペンションファンドは、かつてモロッコが策定した鉱区に参入していたKerr-McGeeを反倫理的企業であるとし、株式を保有しない旨発表していた。モロッコ自身にとっても、今後同国に、人権意識に敏感な欧州からの投資を呼び込むためには、西サハラ問題をこのままにしておくことは不利益になるとの判断があったものと思われる。 隣接する海域のモーリタニア・チンゲッティ油田は2006年2月より生産を開始した。いずれにしても、当該鉱区における探鉱作業の行方から目が離せない。(石田 聖)AgadirTiznitMOROCCOSidi IfniTindoufIAERALGOuedDraaTan TanZagAs-SaknAl Ga'daaAlmraHJdiriyaHawzaAl MahbesFarciyaWestern SaharaCANARYISLANDSLanzaroteLa PalmaTenerifeGomeraHierroSanta Cruzde TenerifeLas PalmasGran CanariaFuerteventuraTarfayaSubkhat TahATLANTICOCEANLa 'YounOuedA'sSaquiaSmaraBoukraAmgalaMeharrizeTifaritiBir LahlouOuedAlKhattBoujdourAridalBir MaghreinGaltat ZemmourZbayraChalwaTagarzimatOum DreygaBir AnzaraneBaggariSubkhatTanwakkaSebkhet Oumm edDrous TelliSubkhatAghzoumalMijekMAURITANIAWesternSaharaAd DakhlaAargubImlilySubkhatTidsitAwsardAgailasSubkhatDoumasSebkhetIjillZouerateAguanitDougajZugGuergueratBir GandouzTechlaBon LanuarNouadhibouLa GueraSebkha deChinchaneMAURITANIAAtarThe boundaries and names shown and the designations used on this map do not imply official endorsement or acceptance by the United Nations.Town, villageInternational boundary RoadBermWadiDry salt lakeAirport0050100150 200 km50 100 miMap No. 3175 Rev. 2 UNITED NATIONSJanuary 2004Department of Peacekeeping OperationsCartographic Section出所:国連平和維持活動サイト:http://www.un.org/Depts/Cartographic/map/profile/wsahara.pdf図3西サハラの地図と「砂の壁」の位置 モロッコは、対外的には西サハラを完全に自国領土と主張し、実効支配もしている。しかし、広大な土地での対ポリサリオ戦線との戦費は、国家支出の約1割を占めるまでに至っているとも言われ、モロッコにとっては過大な「お荷物」となっている。 1963年に豊富なリン鉱床が西サハラ内陸部のブーカラーで発見されており、現在もその採掘が同地域の主産業となって【参考文献】(順不同)Saharawi Arab Democratic Republic, Oil and Gas Exploration 2005/2006 Licensing Round:http://www.sadroilandgas.com/Afroil:2006/2/28USGSホームページ:http://energy.cr.usgs.gov/WEcont/regions/reg7/P7/tps/AU/au701311.pdf外務省ホームページ:http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/morocco/kankei.htmlウィキペディア「西サハラ」:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A5%BF%E3%82%B5%E3%83%8F%E3%83%A9西サハラ支援ホームページ:http://www5e.biglobe.ne.jp/~dorogame/w-sahara/世界飛び地領土研究会:http://www.geocities.co.jp/SilkRoad-Lake/2917/hikounin/sahara.html朝日新聞:1988/6/19読売新聞:2006/6/62006.7 Vol.40 No.4100
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2006/07/20 [ 2006年07月号 ] 石田 聖
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