ページ番号1006234 更新日 平成30年2月16日

キプロス:エジプト深海ガス田地帯隣接海域で、初のライセンスラウンド検討へ

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レポートID 1006234
作成日 2006-07-20 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 探鉱開発
著者 猪原 渉
著者直接入力 島田 忠明
年度 2006
Vol 40
No 4
ページ数
抽出データ キプロス:エジプト深海ガス田地帯隣接海域で、初のライセンスラウンド検討へキプロス政府は、2006年前半に南部海域にて2次元(2D)震探収録作業を行った。解釈の結果によってはライセンスラウンドが2006年末までに実施されることになる。当該海域南西部にまでナイルデルタからの堆積物が延伸し、堆積していれば、ガス資源の埋蔵が期待でき、解釈の結果が注目される。1.キプロス南部海域鉱区公開か エジプトでは近年、ナイルデルタ沖合深海鉱区で大ガス田が発見されており、複数のLNG事業が推進されている。中東石油専門誌『MEES』*1は、このガス田地帯に隣接するキプロス南部沖合における地震探鉱実施のニュースを伝えた。同誌の報道の概要は以下のとおりである。・キプロス政府は、同国南部海域にて7,000kmの2D震探収録作業を2006年前半に実施した(図1)。・キプロスは「東地中海の石油・ガス生産国クラブ」入りを切望してきたが、これまで2D震探実施の事実を公表していなかった。北キプロスおよびトルコとの微妙な関係(後述)が背景にあると考えられる。・調査を実施したのはPetroleum Geo-Services(PGS、ノルウェー)。・収録した測線のうち2測線は、エジプト沖合のNEMED(North East Mediterranean Deepwater)ブロックに伸びている。・データ解釈はPGS社が実施するが、結果によってはライセンスラウンドが実施される見込み。その場合、2006年末出所:PGSホームページ図1PGSの震探実施測線までに実施されることになる。2.炭化水素ポテンシャル 当該海域の水深は、中央部に水深1,000m以浅の海山(Eratosthenes Seamount)があるものの、およそ1,500m以深である。 1970年代に、測線長80km程度の2D震探および重磁力調査と、地中海東部を対象とした広域の2D震探が実施された。石油・天然ガスを対象とする試掘はまだ実施されておらず、1995年3月から4月にODP*2による学術掘削が4カ所(16坑)にて掘削されたのみである。 層序は、火成岩からなる基盤の上に中新統のマールや石灰岩、鮮新統以上の砕屑岩、石灰岩が堆積していることが判明している程度で、石油地質に関する情報は乏しい。*1:MEES:2006年5月15日号*2:ODP:国際深海掘削計画(Ocean Drilling Program)の略。米国国立科学財団が中心となり、世界先進各国が参加している海底調査の国際共同プログラム。1968年開始の深海掘削計画(DSDP: Deep See Drilling Program)と1975年開始の国際深海掘削計画(IPOD: International Phase of Ocean Drilling)を引き継いで1985年に開始された。101石油・天然ガスレビュー101石油・天然ガスレビュー泣^先端部、レバノンから、いずれも離岸距離が200km近くなることなどから、天然ガスを探鉱対象とすることは、技術的にも経済的にも困難な点が多い。 しかしながら、完全に未探鉱地域であることから、PGSの地震探鉱の解釈・評価を待ち、新たな石油・ガスプレイ創出への模索など、今後とも注視していくことが必要であろう。3.キプロス島の地質概況 キプロスは、地質学的に特異な地域である。過去の海洋性地殻が大陸地殻に衝上したトルドス・オフィオライト(Troodos Ophiolite)岩体が露出している。 同オフィオライトは、玄武岩(枕状溶岩などを含む)・斑れい岩・かんらん岩などの層状複合岩体で、中生代のアルプス・ヒマラヤオフィオライト帯に属するものである。同オフィオライトには、キプロス型塊状硫化物鉱床と呼ばれる塊状黄鉄鉱・黄銅鉱・閃亜鉛鉱鉱床が分布し、銅およびニッケル等の鉱山が稼行中である。 銅の英語であるCopperは、キプロスを語源とした言葉であるといわれる。4.キプロス問題 キプロス共和国の首都ニコシアは、中世の町並みを残した城郭都市である。1191年にフランス十字軍が到着した後、防衛のために都市城壁が築かれ、時代とともに城壁が強化されてきた。 不規則な中世の城壁は,ヴェネチア時代(1489-1570年)にパルマノヴァ城郭都市の設計者の1人であるジュリオ・サボルグナンによって設計された、現在の11の突起部をもつ新しい円形塁壁に建て替えられた*4。 ニコシアを南北に「縦貫」するレドラ2006.7 Vol.40 No.4102オレンジ色オーバーレイは今回のPGSの震探実施海域。出所:Ben-Avraham, Zvi, et al.,1981 : AAPG Bull.1135-1145の海底地形図に、PGSブローシャー(同社ホームページより)の図をオーバーレイした。図2地中海東部の海底地形と地質区分 ODPの資料等によれば、堆積物の分析から、同海山は白亜紀前期に浅海、白亜紀後期には深海環境にあったとされる。中新世には再び隆起し、浅海環境にあった。 その後、鮮新世?更新世には低角逆断層を介してキプロス島にスラストダウンし、現在のような水深域となった。同海山には、デルタ成(プロデルタ成)の堆積物は知られていない。 したがって、ナイルデルタからの堆積物を対象とする石油・ガスプレイを期待する探鉱は、本調査海域の南西のごく一部に限られる(図2)。 対象海域が狭いこと、さらに対象海域がシェルによる発見よりさらに水深が深く1,500m以深となること、たとえ発見があったとしてもキプロス島、ナイルデを介して隔てられている。部ぶ 当該海域で堆積している地層は薄く、炭化水素ポテンシャルはあまり期待できないとの見方もある。ちなみに、石油・天然ガスを対象とした試掘は、キプロス島陸上で1960年代末に2坑が掘削されたのみで、深度は300m程度である。 当該海域の南西に隣接するエジプトNEMEDブロックはナイルデルタの先端に位置し、約1tcfのガスが発見されている。オペレーターのシェルは今後の探鉱で3tcf程度の埋蔵量の確認を目指すとしている*3。 ナイルデルタが当該海域の南西部まで延びていれば、NEMEDブロックのガス発見と同様のプレイを期待することも可能と考えられる。 今回の探査域と海底地形について図2に示す。Eratosthenes Seamountは、Nile Delta Coneから続く地形的高まりと、鞍あん*3:MEES:2005年12月26日号ポテンシャルが比較的高いと評価される海域o所:UNFICYPホームページ:http://www.un.org/Depts/dpko/missions/unficyp/index.html より転載。図3国連キプロス平和維持軍の展開と停戦ラインス通りは、キプロス一の繁華街である。この通りを北に進むと、半ばで突然途切れる。そこには、キプロス島を南北に分断する「壁」(停戦ライン:Greenlineと呼ばれることが多い)が存在する。 停戦ラインは多くの場合、ドラム缶を積み上げ、鉄条網で封鎖された境界線で、両側にはキプロス国家警備隊(ギリシャ系)とトルコ駐留軍(トルコ系キプロス人部隊を含む)が機関銃座を備えて対峙している。 ニコシア市街地では、わずか数メートル幅の停戦ラインを隔てて、ギリシャ文化とイスラム文化が完全に分離されて存在するという奇妙な光景に出合う。すなわち、南側のキプロス共和国ではギリシャ語が公用語で、キプロス正教が信仰されている。一方、北側の「北キプロス・トルコ人共和国」ではトルコ語が公用語であり、かつての教会はモスクに変わっている。 一望できる範囲で、停戦ラインを挟んで商店の看板もギリシャ語とトルコ語で書かれている。 現在、国連平和維持軍が駐留するこの停戦ラインは、前述のとおり、狭い場所では数メートル、広い場所では約10kmの緩衝地帯を挟んでいる(図3)。 現在の、根深いキプロス問題を生んだ歴史的経緯は以下の通りである。 ビザンチン帝国の支配下でキプロスは、ギリシャ語を話す正教徒が大多数を占めていたが、1571年にオスマン帝国に占領されて以来、トルコ系住民が全島人口の2?3割を占めるまでになった。 その後、1821年にギリシャがトルコから独立を果たすと、イギリス統治下のキプロスでは、エーゲ海の島々と同じくギリシャに併合されるべきだという要求(エノシス運動)がギリシャ系住民の間で高まり、1948年には追い打ちをかけるように、ギリシャ国王が、キプロスはギ*4:函館市ホームページ:http://www.city.hakodate.hokkaido.jp/kikaku/kokusai/summit/02-cities.htm103石油・天然ガスレビュー卲タ直前に、国連案(アナン・プラン)に基づく住民投票案が合意された。 しかし、この案はトルコ系住民側およびトルコ共和国が主張してきた連邦制を前提としているなど、ギリシャ系住民に不利であった。こうしたことなどから、4月24日に行われた南北同時住民投票はギリシャ系の南側の反対多数という結果に終わり、EUへの参加による国際社会への復帰を望むトルコ系側の賛成多数にもかかわらず否決された。 このキプロス問題は現在も、トルコのEU加盟の最大の障害となっている。4.まとめ 今回簡単に解説したように、キプロス南部海域は、比較的炭化水素ポテンシャルが低いと考えられるが、デルタ(プロデルタ)堆積物が期待できる調査海域の南西端部の一部については、炭化水素胚の可能性があると結論できる。 今後、トルコのEU加盟とも絡んで、キプロスが再統一された場合は、キプロス島北部海域についても、当然公開の対象となると見られ、新たなポテンシャルの評価対象となるとが考えられる。胎たはいい(島田 忠明/猪原 渉/石田 聖)リシャに併合されるべきだとの声明を出した。 一方のトルコ系住民の間では、キプロスを分割してギリシャとトルコにそれぞれ帰属させるべきであるとの主張がなされ、キプロスの帰属問題がイギリス、ギリシャ、トルコの3カ国の間で協議されることになった。 その結果、1959年に、キプロスの独立がチューリッヒで、これら3カ国間で合意された*5。 1960年、ギリシャ系でキプロスの単独独立を主張していた穏健派の指導者であったキプロス正教会のマカリオス大主教を初代大統領として、キプロス共和国は独立を果たした。 その後、イギリスの圧政によってそれまで影を潜めていた民族問題が噴出した。人口の80%を占めるギリシャ系と19%を占めるトルコ系住民の間で衝突が絶えず、1963年、マカリオス大統領による憲法改正をきっかけに対立は表面化した。 1964年3月、安保理はUNFICYP(United Nations Peacekeeping Force in Cyprus:国連キプロス平和維持軍)の設置を勧告する決議を全会一致で採択し、同月末、部隊の展開が開始された*6。 さらに1974年7月15日に、ギリシャへの統合を望むギリシャ系武装勢力が、ギリシャ本国軍事政権の支援を受けて、統合反対派のマカリオス大統領暗殺(未遂)クーデターを起こした。 トルコはこれに機敏に反応し、7月20日、トルコ系住民の保護を名目に軍隊をキプロスに侵攻させた。 トルコ軍はさらに、8月13日に第2次派兵を敢行し、首都ニコシア以北のキプロス島の北側37%の土地を占領した。 この結果、ギリシャ系住民は南部に、トルコ系住民は北部に移住し、対立の構図が完全にでき上がった。 トルコ系住民は1983年に「北キプロス・トルコ人共和国」(TRNC)の成立を宣言したが、承認しているのはトルコのみである。 UNFICYPは、停戦ラインおよび両ラインに挟まれた緩衝地帯の監視と武力衝突の再発防止に努めることとなった。 1970年代以来、再統合の模索が続けられているが、分割以前の体制への復帰を望むギリシャ系キプロス共和国と、あくまで連邦制を主張するトルコ系北キプロスとの主張の隔たりは大きく、再統合は果たされてこなかった。 経済的には、1980年代に入り、南側のギリシャ系キプロス共和国はタックス・ヘイブン(租税回避地)政策をとったり、観光開発を積極的に進めた。 一方、北側のトルコ系住民は、当初はキプロスの耕作適地のほとんどを手に入れたが、経済的にはトルコとのみの関係で、国際的には全く孤立状態となっている。 その結果、現在、南側の1人あたりGDP(2万1,600ドル/人・2005年)は、北側の約3倍といわれる。 2004年5月1日のキプロスのEU加盟を前に、北キプロスが政治的経済的に取り残されることを避けるため、国連のコフィー・アナン事務総長の仲介で同年2月9日より、再び南北大統領による統合交渉が行われた。そして3月31日の交渉【参考文献】(順不同)PGSホームページ:http://www.pgs.com/Custom/templates/Page____29576.aspxhttp://www-odp.tamu.edu/publications/169_SR/ABSTRACT/52.HTMRobertson, A.H.F.,et al.(1998), Proceedings of the Ocean Drilling Program, Scientific Results, Vol.160.http://adolf45d.client.jp/kousyokipurosu.html朝日新聞:1993/1/9毎日新聞:1996/9/3、2004/4/26*5:ウィキペディア:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%B9(キプロス)*6:外務省ホームページ:http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/pko/unficyp.html2006.7 Vol.40 No.4104
地域1 欧州
国1 キプロス
地域2 アフリカ
国2 エジプト
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 欧州,キプロスアフリカ,エジプト
2006/07/20 [ 2006年07月号 ] 猪原 渉 島田 忠明
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