ページ番号1006237 更新日 平成30年2月16日

資源ナショナリズム台頭で深海/非在来型石油・天然ガス開発加速 ~国際石油会社の上流投資の重点が大きくシフト~

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レポートID 1006237
作成日 2006-09-20 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 企業非在来型
著者 野神 隆之
著者直接入力
年度 2006
Vol 40
No 5
ページ数
抽出データ アナリシスJOGMEC 石油・天然ガス調査グループnogami-takayuki@jogmec.go.jp野神 隆之資源ナショナリズム台頭で深海/非在来型石油・天然ガス開発加速~国際石油会社の上流投資の重点が大きくシフト~39Tcf31Tcf 世界の石油・天然ガス上流業界において、近年とかく話題になるのは、LNG開発と並んで、深海部*1探鉱・開発、カナダのオイルサンドのような非在来型石油資源開発、そして日本ではあまりなじみがないかもしれないが、北米におけるコールベッドメタン(CBM:Coalbed Methane)やタイトサンドガス、およびシェールガスといった非在来型天然ガス資源開発である。 これら深海および非在来型石油・天然ガス資源は、一部で開発が進んでいたものもあるが、全般的には、主に技術的な問題から長期にわたり経済的に生産することが困難であったものが多い。 しかし、新技術の開発と近年の石油および天然ガス価格の高騰などにより、たとえば深海石油・天然ガス探鉱・開発については、米国メキシコ湾やアフリカなどを中心に活発になってきており、大手国際石油会社のみならず、米国等独立(インディペンデント)系石油会社も、深海での探鉱・開発活動に注力するところが相当数出てきている。 また、非在来型石油および天然ガス資源開発についても、活動が活発化してきていると言われる。確認埋蔵量も、カナダのオイルサンドは1,741億バレル*2と豊富である。 非在来型天然ガス資源の確認埋蔵量については、米国等北米においてはある程度調査されており(後述)、CBM、タイトサンドガス、シェールガスとも広範囲にわたって賦存しているとみられる(米国での分布については図1、2、3参照)。 しかし、北米以外では調査があまり進んでいない模様であり出所:「加速する新資源コールベッドメタン開発」(島田荘平「石油・天然ガスレビュー2005年9月号)出所:Research Partnership to Secure Energy for America図1米国のCBM分布図図2米国のタイトサンドガスの分布図South Texas South Texas South Texas South Texas trendtrendtrendtrendGreen RiverGreen RiverDenver Denver San JuanSan JuanPiceancePiceanceAnadarkoAnadarkoWind RiverWind RiverUintaUintaPermianPermianPermianPermianBasinBasinBasinBasinMajor Tight Sands PlaysAppalachiansAppalachiansFt WorthFt Worth*1:どれくらいの水深が「深海」(Deep Water)であり、どれくらいが「大水深」(Ultra-deep Water)であるかの定義については必ずしも世界的に統一されていないのが現状である。ちなみに米国鉱業管理局(MMS:Mineral Management Service)では深海を水深1,000フィート(約305m)以深、大水深を水深5,000フィート(約1,524m)以深としている。*2:2005年末時点、カナダの在来型石油資源の確認埋蔵量は約47億バレルであり、いかに同国がオイルサンドを大量に埋蔵しているかが理解できよう。石油・天然ガスレビューAナリシスGreen RiverBarnettFayetteville図3Devonian/OhioNew AlbanyAntrimNiobraraBakkenLewis and MancosPalo DuroBarnett and WoodfordGammonExcello/MulkyMcClureMontereyCane Creek(CBMについては、その開発状況につき一部の国で調査がされていると伝えられる〈図4参照〉)。世界における確認埋蔵量等については一般的には知られていない(ただ世界の非在来型天然ガス資源の原始埋蔵量については推論的に、CBMが9,107兆cf、タイトサンドガスが7,413兆cf、けいシェールガスが1.61京(数の単位で、兆の1万倍)cfとした報告がある)。 本稿では、大手国際石油会社等によるこのような深海での探鉱・開発活動や非在来型石油・天然ガス資源開発活動の活発化の背景と現状、そして今後の展望とそれに付随する課題などについて、主に非技術的な面に焦点を当て、可能な限り幅広い考察を試みることとしたい(なお、大手国際石油会社等にとってのLNG開発の重要性については、次号以降で別途とりまとめる予定である)。米国のシェールガス分布図Floyd and ConasaugaWoodfordCaney and Woodford出所:Schlumberger注: 石炭を埋蔵する69カ国のうち、2001年までに35カ国(赤い点)につきCBM開発に係る調査が実施されている。出所:Schlumberger図4CBM開発に係る調査状況1. 深海部および非在来型石油・天然ガス開発に係るこれまでの経緯(1)深海部探鉱・開発 深海部探鉱・開発活動はその推進に高度な技術を必要とする。したがって、石油・天然ガス探鉱・開発の歴史においては、活動の中心は長い間陸上ないし浅海域であり、深海域が注目されるようになったのはごく最近である。深海域が注目されるようになった背景にはまず、陸上や浅海域において、プロジェクトが進展していくにつれ、当該地域における探鉱・開発機会が限定されてきたことが挙げられる。こうした事情から、各社とも活動の中心を深海域に移行したと考えられる。 地域としては、米国や西アフリカ(ナイジェリアやアンゴラ)が挙げられる。また、深海域での石油・天然ガス探鉱・開発を推進するうえで必要とされる技術力も、事業を推進していくなかで改善が重ねられた。技術の規格化を含め、深海部の探鉱・開発において高度な技術を比較的低廉なコストで適用することが可能になってきたことも、当該地域での活動の活発化につながったと思われる。 また、深海鉱区を持つ国の一部において、刺激策が導入されたことで活動が活発化した、という面もある。この代表例としては、米国とブラジルが挙げられよう。 米国では、クリントン政権時代の1995年11月28日に深海ロイヤルティ救済法(DWRRA:Deep Water Royalty Relief Act)が発効した。これは、ロイヤルティ(12.5%)が適用されたままでは経済性が確保できない鉱区につ2006.9 Vol.40 No.5糟ケナショナリズム台頭で深海/非在来型石油・天然ガス開発加速 ~国際石油会社の上流投資の重点が大きくシフト~鉱区取得数1,2001,000800600400200092939495969798990001020304200m以浅出所:米国MMS200-400m400-800m800m以深図5米国メキシコ湾における鉱区取得数929394959697989900010203047500フィート以深5000-7499フィート1500-4999フィート1000-1499フィート坑250200150100005出所:米国MMS図6米国メキシコ湾における坑井掘削数あるProcap 3000(2000年~)へと引き継がれている。 このような支援もあり、Petrobrasは深海での探鉱・開発技術を習得していったと考えられる。(2)オイルサンド開発事業 非在来型石油資源の一種であるカナダ・アルバータ州のオイルサンドは、古くからSuncor(1967年9月30日生産開始)およびSyncrude(1978年7月30日生産開始)の2社による開発・生産が行われてきた。しかし、事業が活発になってきたのは、ここ10年程度である。転機は、1996年にアルバータ州政府により制定された包括的ロイヤルティ制度の導入であると言われている。 同制度により、投資が回収されるまではロイヤルティを1%とする(回収後は25%)という規則が導入された。それ以前は、ロイヤルティはプロジェクトごとに決定されるなど一貫性を欠き、オイルサンドに係る新規開発の障害になっていると業界から批判されていたが、この包括的ロイヤルティ制度の導入により、投資意欲が刺激され、多数の石油会社がオイルサンド開発事業に参入した(1999年にはShell、Chevron、Totalが参入したと伝えられる)。また、アルバータ州政府関係機関であるアルバータ研究評議会(ARC:Alberta Research Council)を通じて、研究・開発面からもオイルサンド開発事業に対する支援がなされたとされる。(3)非在来型天然ガス開発 米国内では、従来、一部企業によりCBMやシェールガス等の非在来型天然ガス資源の開発が進められてきた。これは、1978年に、1坑井当たりの天然ガスの回収率の向上と開発コストの低減を図ることを目的とした、米国エネルギー省による非在来型天然ガス資こうせいいて、ロイヤルティを免除する法律で、水深200~400mは最低1,750万バレル(石油換算)、400~800mは最低5,250万バレル(同)、800m以深は最低8,750万バレル(同)のロイヤルティが免除される、というものであった。 なお、同法は2000年11月28日に失効したが、発効期間中の5年間に取得された鉱区については、そのリース期限が失効するまで救済は適用される。また、2000年以降も限定的ではあるが救済措置が実施されていると伝えられる。 これにより、救済法による恩恵が特に大きい、800m以深における鉱区の取得や掘削の件数が増大し、同地域における探鉱・開発活動が活発化した (図5、6参照)。 また、これまで主に大手国際石油会社による鉱区の保有が中心(後述)だった同地域において、インディペンデント系石油会社の進出が顕著になった(図7参照)。 このような法的支援の下、米国等の石油会社各社は、深海での石油・天然ガス探鉱・開発活動を推進していくなかで自らの技術を洗練させていったと考えられる。なお、大手国際石油会社が深海探鉱・開発に係る技術力を自社で発展させていったのに対し、インディペンデント系石油会社はサービス・コントラクターと組んで事業を主に進めていくことで、技術力を発展させていったと指摘する向きもある。 一方、ブラジルでは主に国営系石油会社Petrobrasに対して、深海開発技術育成プログラム「PROCAP」を通じた支援がなされた。当初のProcap(1986年~)は水深1,000mからの円滑な生産を支援するために設立された7,000万ドルのプログラムであった。その後、同プログラムは、水深2,000mでの生産を目的とした5,600万ドルのプログラムであるProcap 2000(1993年~)、水深3,000mでの生産を目的とした1億3,000万ドルのプログラムで石油・天然ガスレビュー992 - 1993Texas1994 - 1995Texas1996 - 1997TexasMississippiAlabama112332LouisianaFlorida1998 - 1999MississippiAlabamaLouisianaFlorida1,297Texasアナリシス5000ft7500ft1150000ft0ft5000ft7500ft100105f0t0ftMississippiAlabamaLouisianaFlorida2000 - 2001MississippiAlabamaLouisianaFlorida5000ft7500ft1150000ft0ftTexas5000ft7500ft100105f0t0ftMississippiAlabamaLouisianaFlorida2002 - 2003MississippiAlabama1832,348LouisianaFloridaTexas1,9745000ft7500ft1150000ft0ft50500050 mi50 km5000ft7500ft100105f0t0ft50500050 mi50 kmLeases with greater than50% major ownershipLeases with 50%major ownershipLeases with less than50% major ownershipLeases with greater than50% major ownershipLeases with 50%major ownershipLeases with less than50% major ownership出所:米国MMS図7米国メキシコ湾における石油会社の進出状況(1992~2003年)源の増進回収に係る研究開発プログラムが導入されたことによる*3。 これに加えて、1980年に適用が開始された超過利潤税法(Windfall Profit Tax Act)第29項(Section 29)による非在来型天然ガス資源に対する税優遇措置で、非在来型天然ガス資源を開発する企業の税負担が軽減された。これは、1979年12月31日から1993年1月1日までに掘削された坑井から生産され、2003年1月までに販売される天然ガスについて、当初580万Btu(約5,800cf)当たり3ドルの税優遇措置(一部の非在来型天然ガスは物価上昇にしたがって税優遇額を増額するとされた)を受けられる、というものであった。同法適用期間における天然ガス平均井戸元価格は、100万Btu当たり1.5~2.5ドルであったが、この税優遇策でタイトサンドガスやシェールガスについては100万Btu当たり0.5ドル、CBMについては100万Btu当たり1ドルの負担軽減となり、経済性が大幅に向上した。以上のような支援等の結果、非在来型天然ガス資源の開発が推表1米国における非在来型天然ガス資源の埋蔵量と生産量タイトサンド・ガスシェール・ガスCBM合計出所:米国エネルギー省他確認埋蔵量(兆cf)生産量(10億cf)確認埋蔵量(兆cf)生産量(10億cf)確認埋蔵量(兆cf)生産量(10億cf)確認埋蔵量(兆cf)生産量(10億cf)1978199919 1,560 1 70 --20 1,630 35 2,900 5 370 13 1,250 53 4,520 *3:ただし、このプログラムが制定された当初は、米国内における天然ガス供給量の不足が懸念されていたにもかかわらず、その後は天然ガスが供給過剰に転じたという事情もあり、タイトサンドガスを除き同プログラムは1992年に終了した。また、残ったタイトサンドガスに係る研究開発プログラムも大幅に縮小された。2006.9 Vol.40 No.5糟ケナショナリズム台頭で深海/非在来型石油・天然ガス開発加速 ~国際石油会社の上流投資の重点が大きくシフト~進され、したがって埋蔵量や生産量も大幅に増大した(表1参照)。 現在、米国本土48州では、非在来型天然ガス資源の生産量が、陸上の在来型天然ガス資源のそれを既に追い越している、とする推定もある(図8参照)。 この米国非在来型天然ガス生産量の推定は、若干過大評価されている可能性もあるかもしれないが、それでも米国の非在来型天然ガス資源の生産量は、在来型天然ガス資源のそれに相当接近しているものと推定される。出所:EnCana図8米国天然ガスの生産推移2. 加速する深海部油・ガス田探鉱・開発と非在来型石油・天然ガス開発の現状と見通し 近年、石油業界にとって深海部油・ガス田開発や、非在来型石油・天然ガス資源開発がなお一層脚光を浴びてきている。その背景としては、もちろん新技術との開発と石油・天然ガス価格の高騰(図9参照)があるが、それらに加えて、昨今の原油価格高騰で米国外の産油国のいくつかが強気の姿勢に変わってきた(いわゆる資源ナショナリズムの台頭)ことから、大手国際石油会社にとって投資環境が悪化してきていることが挙げられる(表2参照)。 さらに、中国やインド等の非OECD諸国における国営石油会社等の国外進出で、在来型石油・天然ガス資源を中心とする、限られた有望鉱区において入札等で競争が激化しているという事情もある。その結果、十分な経済性を得られる機会が減少してきたことから、北米における資源開発や、高度な技術が必要とされるという意味において競争力を発揮できる分野に対する魅力が相対的に増大してきたものと考えられる。石油・天然ガスレビュードル/バレル7060504030201092949596979899000102030405*06919093*:1?6月推定出所:IEA図9原油価格(WTI)の推移表2主要産油・ガス国の最近の投資条件悪化(あるいはその可能性を示唆する動き)の例主な内容産油・ガス国ベネズエラロイヤルティ比率の16.67%から30%への引き上げ。プロジェクトにおいて国営石油会社PDVSAが51%以上参加へ。所得税の引き上げ(34%から50%へ)地下資源に係る外資進出規制の動き、Yukosを事実上解体し国営化2004年12月地下資源法改正、国営石油会社のプロジェクト参加権限、先買権拡大国営石油会社NNPCが参加比率増大を検討、ロイヤルティの適用プロジェクトにおける国営石油会社Sonatrachの権益比率を51%以上へ引き上げ(?)自国の石油産業国有化の動き政府がオクシデンタルの石油上流資産を接収ロシアカザフスタンナイジェリアアルジェリアボリビアエクアドルトリニダード・トバゴ ロイヤルティの引き上げ、契約条件改定出所:各種報道より作成(1)深海部油・ガス田探鉱・開発 大手国際石油会社の多くは、米国でのロイヤルティ救済法発効以前から、米国メキシコ湾等の深海油・ガス田開ュに注目していた。たとえばShellは、まだ深海探鉱・開発技術が必ずしも確立していない1990年代初めまでに、いずれ当該技術が確立されるとの見通しのもと、多数の米国メキシコ湾鉱区を取得した。これが後に開発され、同社は米国メキシコ湾においてMars、Ursa、Brutus等の油田を抱える同地域有数の大生産者となった(表3)。米国メキシコ湾の最近の主な生産鉱区を示すこの表(表3)を見ても、Shellが同地域における主要生産者であることが理解できよう。 さらに前述のとおり、原油価格高騰に伴い、産油国の外資導入方針が厳しくなるとともに、中国やインドといった国々の石油会社の参入でとくに在来型石油・天然ガス資産の取得については競争が激化した。このような投資環境の悪化の下で、大手国際石油会社は米国内外の深海油・ガス田を大規模に取得、探鉱・開発し、大規模に収益を上げるといったビジネスモデルをなお一層推進するようになってきた。 地域としては、米国メキシコ湾に加え、ナイジェリアやアンゴラといった西アフリカ、エジプト、ブラジル、マレーシアなどの国・地域に、比較的多数の鉱区や油・ガス田を保有している(表4参照)。この背景には、在来型石油・天然ガス開発に比べると、高度な技術と巨額の投資が必要な深海石油・天然ガス開発には、資源国の資源ナショナリズムや激しい資産獲得競争の影響が相対的に及びにくいという事情がある。 一方、インディペンデント系石油会社であるが、米国の深海ロイヤルティ救済法による刺激策のもと、米国メキシコ湾において深海探鉱・開発技術を身につけた。しかし、大手国際石油会社に比べてキャッシュフローが圧倒的に劣るこれらの会社は、米国メキシコ湾での活動が中心であり、米国外での活動は総じて選択的に行っている。アナリシス表3米国メキシコ湾における主な生産鉱区鉱区プロジェクト名主な所有者水深(フィート)生産量(BOE)*1Petronius MC 807 Mars MC 809 Ursa MC 763 Mars VK 786 GC 202 Brutus GB 215 Conger MC 127 Horn Mountain VK 915 Marlin EB 602 Nansen MC 899 Crosby Boomvang EB 643 EB 945 Diana MC 687 Mensa GC 200 Troika MC 305 Aconcagua MC 85 VK 956 MC 765 Princess GB 426 ST 204 *1:2002年7月から2004年6月までの累計生産量出所:米国MMSShell Shell Shell ChevronShell Hess BP BP Kerr-McGee Shell Kerr-McGee ExxonMobil Shell BP Total BP Shell Shell Shell El Paso King Ram-Powell Auger Unnamed 2,9333,8002,9331,7533,3001,5005,4003,2363,6754,2593,6504,5005,2802,6797,1005,0003,2163,6002,86015793,999,26055,773,37834,864,75234,738,26534,180,99532,197,43932,165,64326,234,58823,926,94223,481,23922,375,26022,161,44421,502,13820,185,90019,513,42219,484,24219,423,17718,930,56217,401,75817,124,043表4大手国際および欧州系石油会社の深海域進出例進出国ExxonMobilShellBPChevronTotalConocoPhillipsENIStatoil出所:各社年報等より作成米国メキシコ湾、ナイジェリア、アンゴラ、赤道ギニア他米国メキシコ湾、ブラジル、ナイジェリア、エジプト、マレーシア、ブルネイ他米国メキシコ湾、アンゴラ、エジプト他米国メキシコ湾、ブラジル、アンゴラ、ナイジェリア、インドネシア、豪州他米国メキシコ湾、ナイジェリア、アンゴラ、赤道ギニア、コンゴ、ナイジェリア他米国メキシコ湾、ナイジェリア他米国メキシコ湾、ナイジェリア、コンゴ、エジプト、リビア他米国メキシコ湾、ノルウェー、ナイジェリア他表5米国等インディペンデント系石油会社の深海域進出例AnadarkoDevonHessKerr-McGeeMarathonMurphyTalismanNexen出所:各社年報等より作成進出国米国メキシコ湾、モザンビーク、ガボン他米国メキシコ湾、赤道ギニア他米国メキシコ湾、エジプト、赤道ギニア他米国メキシコ湾、豪州、中国他米国メキシコ湾、アンゴラ他米国メキシコ湾、コンゴ、マレーシア他米国メキシコ湾、豪州他米国メキシコ湾、赤道ギニア他 なお、その中でも米国外で鉱区や油・ガス田を比較的多く保有している会社としては、Anadarko、Devon、Hess、Kerr-McGee、Murphyなどが挙げられる(インディペンデント系石油会社の深海域進出国例は表5参照)。 また、欧州系石油会社を見てみると、Total、ENIをはじめとして多くの石油会社が米国メキシコ湾に進出しているほか、アフリカ等で活動を行っている。非OECD諸国の石油会社ではPetrobrasとPetronasが比較的活発に2006.9 Vol.40 No.5糟ケナショナリズム台頭で深海/非在来型石油・天然ガス開発加速 ~国際石油会社の上流投資の重点が大きくシフト~表6非OECD諸国石油会社の深海域進出例PtrobrasONGCRelianceCNOOCCNPCSinopecPetronasPetroVietnam出所:各種年報等より作成進出国米国メキシコ湾、ブラジル、ナイジェリア他インド、ベトナム他インド他中国他リビア他アンゴラ、サントメ・プリンシペ他マレーシア、エジプト他ベトナム他AfricaAsiaAustralasiaLatin AmericaNorth AmericaWestern EuropeOthers25,00020,00015,00010,000noillim $5,00002001200220032004200520062007200820092010出所:Douglas Westwood図102010年までの深海域における資本支出予測2,5002,2502,0001,7501,5001,2501,0007505002500出所:Douglas Westwood/Energyfiles図112010年までの沖合掘削活動の予測この方針を先取りするかのように、中国では南シナ海の深海域で鉱区が公開され、DevonやKerr-McGeeが鉱区を取得した。中国海洋石油総公司(CNOOC)も、カナダのHuskyと共同で深海探鉱・開発を実施、2006年6月14日には海南島東約500km、香港南方約250kmの沖合深海部で大型ガス田を発見した旨発表している。またCNOOCは、子会社を通じて国外の技術を導入し、国内深海域用の掘削装置(リグ)を建設することを検討しているとも伝えられる。 ベトナムにおいても、深海域である活動を行っているが、現在のところ、それ以外は総じて活動は限定的である(非OECD諸国石油会社の深海域進出国例は表6参照)。 今後も深海石油・天然ガス開発活動は活発に行われていくと考えられている。英コンサルティング会社Douglas Westwoodによれば、深海部分は今後5年間、年率7.3%の投資成長傾向が続き、2010年には資本支出は年間200億ドルを超えると見られている(ちなみに、2005年は年間150億ドルに達していなかった。図10参照)。 地域的には米国メキシコ湾、アフリカ、ブラジルといった地域での資本支出が全体の85%を占めるが、アジア地域でも急速に支出は伸びていくと考えられている。 一方、掘削活動を見ると、深海における探鉱井数は、2001年以降若干伸び悩み気味であったが、2006年以降は再び着実に伸びていく見通しである。この今後の深海域における探鉱活動の活発化については、さらに水深の深い、いわゆる大水深地域における探鉱ないし開発技術が進歩し、これらの地域からの石油・天然ガス生産が魅力的になってくることが重要な鍵を握るものと見られている。また、開発井掘削数は今まで以上のペースで増加していくと予想されている(ちなみに、浅海域では掘削井の絶対数は大きいものの、むしろ減退気味になると見られている)。 なお、アジア深海地域において資本支出が急速に伸びる見通しであると先に述べたが、既にその兆候がいくつか見られる。マレーシアやインドの深海域においては大型油・ガス田が発見されていると伝えられている。また、中国では2006年3月に開催された全国人民代表大会で「国民経済および社会発展に係る第11次5カ年規格綱要」が採択されており、この中で新たに深海部における探鉱強化がうたわれている。石油・天然ガスレビューAナリシス図12Totalの保有鉱区(2004年末)Phu Khanh盆地が公開され、ChevronやインドONGCが鉱区を取得している。アジア以外では、メキシコのPemexが今後深海域における探鉱・開発活動を実施していく旨明らかにしている。 他方、ごく最近では、非OECD諸国石油会社の国外での深海鉱区取得も散見される。インドONGCがベトナム深海域で鉱区を取得したことは先に述べたが、中国企業も、アンゴラおよびナイジェリア等西アフリカ諸国における深海鉱区の取得を活発化してきている。2006年4月には、Sinopecがアンゴラ国営石油会社Sonangolと共同で深海域の第17および18鉱区を取得したと報じられた。取得費用は各鉱区につき12億ドル(サイン・ボーナス11億ドルに社会保障費1億ドル)で、計24億ドルとなっており、鉱区取得費用の高騰に拍車がかかる格好となっている。 ただ、ここで見てきたような非OECD諸国やメキシコの石油会社については、深海域探鉱・開発に係る経験が豊富でなく、技術力も伴っていないため、他の経験豊富な石油会社との提携を通じて技術を習得していくものと考えられる。 Petrobrasは既に、中国石油天然ガス総公司(CNPC)、CNOOC、中国化工総公司(Sinopec)やPemexと提携している。またインドのONGCは、ENIとの間でインドその他の深海部における新規探鉱につき情報交換を行う旨の覚書を2005年9月7日に締結している。同国の民間石油会社Relianceも、深海域での探鉱・開発技術力を持つ石油会社との提携を検討していると言われている。 このような提携に基づき、深海技術に係る協力の中で、これらの石油会社が技術力を向上させていくとすれば、将来的には深海域における探鉱・開発に係る競争がなお一層激しくなっていくのではないかと予想される。出所:Total(2) 非在来型石油開発(オイルサンド、オイルシェール)? オイルサンド オイルサンドの分野においても、大手国際石油会社がその開発に一層注力するなど、業界内で動きが見られる。背景となっているのはやはり、北米外における投資環境の悪化であり、また、SAGD法等の新技術開発によるコストダウンであると考えられる。 たとえばTotalは2005年8月2日に、Joslyn鉱区おいて84%の権益を保有しオペレーターとなっていたDeer Creek Energyの買収を発表した(同年12月13日には買収完了を発表)ことに加え、Joslyn北方にある鉱区の権益を2005年8月に取得するなど、オイルサンド事業を拡大しつつある(図12、13参照)。同社によれば、2006年にもJoslyn鉱区(Totalの保有権益84%)からの生産が開始され、生産量は最大で日量20万バレルになると予想されている。 また、ConocoPhillipsがTotalとともに以前から保有するSurmount鉱区についても、2005年8~11月に周辺鉱区が追加取得されている。同鉱区は2006年に生産が開始され、生産量は最大で日量20万バレルになると見られている。 Shellは、2014年までに非在来型石出所:Total図13Totalの保有鉱区(2005年末)油資源の生産比率を、現在の5%程度から10~15%へと拡大する意向である(図14参照)。このような背景のもと、カナダ子会社Shell Canada(Royal Dutch Shellが株式の78%を保有、オイルサンド保有鉱区は図15参照)は、2006年5月12日にBlackRock Venturesを買収する意向を明らかにした(7月10日時点で約99.38%の株式を買収完了)。 BlackRock VenturesはPeace RiverにおいてShellの保有する鉱区の近隣の鉱区でオイルサンド開発事業を実施しており、今後、事業推進上の相乗効果が得られると予想される(図16参2006.9 Vol.40 No.5糟ケナショナリズム台頭で深海/非在来型石油・天然ガス開発加速 ~国際石油会社の上流投資の重点が大きくシフト~照)。また、このほかにBlack Rock VenturesはCold Lakeにおいてもオイルサンド鉱区を保有している。 これとは別にShell Canadaはアサバスカ(Athabasca)のオイルサンド・プロジェクト(Shell Canadaが60%の権益を保有)において、2005年に隣接する地域に6万9,000エーカーの鉱区を取得した(図17参照)。 そのうえで、さらなる資源の開発や改質装置の追加などにより、現在日量15万5,000バレルの生産量を、10年後には日量50万バレル超とする計画である。 他方、Royal Dutch Shellは2006年3月21日に、100%子会社であるSURE Northern Energyを通じてアサバスカ地区に21万9,000エーカーの鉱区を4億6,500万カナダドル(約4億米ドル)で取得したと発表した。今後、資源評価を実施するとともに、評価の結果がよければ新規技術を使用して開発を行う意向であると伝えられる。さらに、Chevronも2006年3月2日にアサバスカ地区におけるオイルサンド鉱区7万5,000エーカーを7,000万カナダドル(約6,000万米ドル)で取得した旨発表している。 今後のカナダにおけるオイルサンド事業への投資であるが、Athabasca Regional Issues Working Group Associationによれば、同事業には1996~2004年の9年間に340億ドルの投資がなされたが、さらに2005~2010年の6年間にも450億ドルの投資が行われるなど、高水準の投資が維持されると予測している。また、この水準は、計画されているプロジェクトが実施されればさらに伸びる可能性があることが示唆されている(図18参照)。 一方、カナダ石油生産者協会(CAPP:Canadian Association of Petroleum Producers)の2006年5月の見通しによれば、オイルサンドの生産量は2020年には現在の約4倍の日量石油・天然ガスレビュー2004 Estimate5% 39% 53% 2009 Outlook3.8-4.0mln boe/d?5% ?15% 2014 Aspiration10-15%?25% ?40% ?20% ?40% 40-45% Existing OilNew Material OilUnconventional OilIntegrated Gas出所:Shell図14Shellの石油・天然ガス生産見通しAthabascaPeace RiverB.C.Fort McMurrayAlbertaColdLakeEdmontonCalgarySask.出所:Shell Canada図15Shell Canadaが事業として関与するオイルサンド資源出所:Shell Canada図17Athabascaのオイルサンド・プロジェクトの鉱区(橙色の部分は2005年取得)ShellBlackRock出所:Shell Canada図16BlackRockの鉱区(緑色)とShellの鉱区(黄色)(Peace River)400万バレルになると予想されており、同国石油生産に占めるオイルサンドの割合も2005年の39%から2020年には82%に高まると予想されている(図19参照)。? オイルシェール オイルシェールについては、1980年代に盛んに研究・開発が行われたが、原油価格の低迷もあり、1990年代には下火となった。しかしShellは2000年AナリシスActualForecast20022003200420052006200720082009201019992000199819972001Announced Projects CaseForecast Case1996000,61000,41000,21000,01000,8000,6000,40000,2$ Millions0102030405060708091011121314151617181920012345在来型石油資源オイルサンド注:2005年までは実績、以降は見通し出所:CAPP図19カナダの石油生産見通し(2001~20年)出所:Athabasca Regional Issues Working Group Association図18カナダオイルサンドに対する投資見通し日量100万バレル出所:Shell図20Shellのオイルシェール研究プロジェクト(Mahogany Research Project)の様子たが、インディペンデント系石油会社にとっては資金的負担が重く、進出機会は限定的であったと考えられる。 このような事情もあり、たとえば現在シェールガスの主要生産地となっている米国テキサス州のBarnett Shaleで最も天然ガスを生産しているのは、米国インディペンデント系石油会社の2006.9 Vol.40 No.50以降、ロッキー山脈地域のコロラド州Rio Blancoにおけるオイルシェール鉱区で、従来の露天掘りと地上プラント乾留に代わる地中内生産プロセスの新技術(ICP:In-Situ Conversion Process)によるオイルシェール研究プロジェクト(Mahogany Research Project、図20参照)を実施しており、最近の6カ月間にわたる小規模な抽出実験でAPI34度の石油を1,700バレル生産することに成功した。同社は今後さらに規模を拡大して抽出実験を進める意向を示している。また、Shellは米国のみならず中国吉林省においても、中国企業と共同でオイルシェール資源の開発を推進する予定である。2006年4月2日には吉林光正鉱業(Jilin Guangzheng)とShell China Jilin EnergyおよびShell Chinaが、オイルシェール開発に係る共同事業体を組織して中国政府の承認を得ており、現在探鉱準備作業中であると伝えられている。ちなみに、中国で2006年3月に採択された「国民経済および社会発展に係る第11次5カ年規格綱要」では、超重質油やオイルシェールのような非在来型石油資源の開発強化についても言及されている。(3)非在来型天然ガス開発 前述のとおり、1970年代末から一部で開発が推進されてきた非在来型天然ガス資源であるが、これまでこの中心は、インディペンデント系石油会社が担ってきた。 他方、欧米の大手国際石油会社は、一時期英領ないしノルウェー領北海の在来型石油・天然ガス資源、西アフリカなどの深海部石油・天然ガス資源といった米国外の資源の探鉱・開発に事業の中心をかなりシフトさせていった。これらは相対的に資源規模が大きく、いったん発見され開発されれば大きな収益が得られるということから大手国際石油会社にとって魅力的であっ糟ケナショナリズム台頭で深海/非在来型石油・天然ガス開発加速 ~国際石油会社の上流投資の重点が大きくシフト~Devon Energyとなっている(表7参照)。同社は2002年1月に、それまで同地域において15年間活動し、同地域での生産を経済的に実施できるような技術を開発していたMitchell Energyを買収して以降、シェールガス資源開発を加速させた。 前述のように、非在来型天然ガス資源の埋蔵量および生産量は増大してきており、今後さらに成長が見込まれている。2020年には、現在よりもさらに50%生産量が増大すると見る向きもある。このような流れの中で最近見られるのは、一時米国外での在来型ないし深海部石油・天然ガス探鉱・開発事業に基本的な軸足を移していた大手国際石油会社が、米国の非在来型天然ガス資源に注目し始めたことである。 大手国際石油会社の非在来型天然ガス資源事業への進出例としては、まずShellの例が挙げられる。同社は2005年8月にBarnett Shaleで2万5,000エーカーの鉱区を取得したが、現在ではそれを4万エーカーに拡大している。同社は北米での天然ガス事業拡大を目指していると言われており、今後、非在来型天然ガス資源にもある程度注力していくものと考えられる。 また、ExxonMobilは米国コロラド州のUinta-Piceance Basinにおいてタイトサンドガス資源に係る鉱区保有を拡大しつつある。今後、自社で開発した技術を使用して積極的にこれらの資源を開発し、2010年までに同社の石表7Barnett Shaleにおける主要各社の鉱区保有面積と天然ガス生産量鉱区保有面積(エーカー)生産量(日量100万cf)Burlington Resources(現ConocoPhillips)Chesapeake EnergyCarrizo Oil & GasDenbury Resources Devon EnergyEnCana EOG ResourcesInfinity Energy Resources Quicksilver Resources Parallel Petroleum XTO Energy 注:1エーカー=4,046m3=0.004046km2出所:Pickering Energy Partners, Inc. “The Barnett Shale”89,000 48,000 65,000 43,500 553,000 127,000 490,000 60,700 230,000 2,300 155,000 80506155607070213~2103油・天然ガス生産量に占めるタイトサンドガスの割合を拡大することを目指している(図21参照)。 さらにBPは、2005年10月にワイオミング州にあるWamsutterガス田からのタイトサンドガスについて、今後15年間に最大22億ドルを投資して2,000坑の坑井を掘削し、生産量を現在の日量1億2,500万cfから2億5,000万cfへ倍増させる予定であり、さらに1億2,000万ドルを投じて技術試験を行うと発表している。 ConocoPhillipsは2005年12月12日に、インディペンデント系石油会社であるBurlington Resourcesの買収を発表した(2006年3月31日に買収完了の旨発表)。Burlington Resourcesは以前、沖合資産を売却し、Barnett Shaleを含めた米国陸上の非在来型天然ガス資源に資産を集中させていた。 米国等の有力インディペンデント系石油会社にも動きが見られる。まずDevon Energyは2006年6月29日にChief Holdingsを22億ドルで買収した。Chief Holdingsはそのすべての資産がBarnett Shaleにおけるものである。Anadarkoは2005年6月にKerr-McGeeからPowder River BasinにおけるCBM鉱区を買収し、さらに2006年6月23日にはKerr-McGeeとWestern Gasを買収することを発表した。Kerr-McGeeはロッキー山脈においてタイトサンドガスの資源を保有しているほか、Western GasはPowder River BasinにおいてCBM鉱区を保有している。このため、Anadarkoの保有資産のかなりの部分は非在来型天然ガス資源で占められることになる。同社はまた、非在来型天然ガス生産量を増加させるべく、当該資源の開発に注力していく旨明らかにしている。 非在来型天然ガス資源の開発は米国出所:ExxonMobil図21ExxonMobilの生産見通し石油・天然ガスレビューAナリシスて、同社が他社より有利な条件を提示していることが明らかになっている。さらに豪州でも、時折クイーンズランド州においてCBM鉱区開発に係る報道がなされることがある。 また、前述のとおり世界の非在来型天然ガス資源量については、調査が進んではいないものの、CBMは旧ソ連・東欧諸国およびアジア、タイトサンドガスはアジアおよび南米、シェールガスはアジア、中東、南米などに分布しているとされ、今後の埋蔵量の調査によってはさらに開発のために進出できる地域が広がる可能性を秘めている。米国での事業を通じて技術力をつけた会社が将来的には米国外における非在来型天然ガス資源開発へ進出することも予想される。にとどまらない可能性もある。CBMやタイトサンドガス、シェールガス等の非在来型天然ガス資源は、米国のみならずカナダ(アルバータ州を中心としたWest Canadian Basin等)などにも賦存する。しかしながら2005年6月現在、カナダの非在来型天然ガス資源生産量は日量15億cfで、同国の天然ガス生産量の0.3%を占めるに過ぎないと伝えられているなど、これらは現在のところ大規模に開発されてはいない。 既にEnCanaは北米での非在来型天然ガス資源を獲得し、開発する意向を示しているが、その中にはカナダ西部の資産も含まれている。また、Shellはカナダにおいて非在来型天然ガス資源開発を加速すべく11万エーカーの鉱区を取得している。ただし米国での非在来型天然ガス資源開発が、政府による税優遇措置により加速されたように、カナダでの非在来型天然ガス資源開発にも税優遇措置が必要であるとする意見もある。このあたりが今後カナダの非在来型天然ガス資源開発を左右することになるかもしれない。 他方、非在来型天然ガス資源は北米のみならず、豪州やインド、中国をはじめとする各国にも存在していると見られる。中国で2006年3月に採択された「国民経済および社会発展に係る第11次5カ年規格綱要」では、CBMのような非在来型天然ガス資源の開発強化についても触れられている。またインドでは、既に3回のCBM鉱区入札が実施されており、2006年6月30日に行われた第3回入札では大手国際石油会社であるBPも応札しており、8月18日には同社が応札した鉱区(西ベンガルのBB-CBM-2005/Ⅲ鉱区)におい3. 深海部/非在来型資源開発をめぐる課題出所:ODS Petrodata図222,001~5,000フィート(約600~1,500m)の深海用半潜水型リグの稼働率および利用料開発においてリグが調達できなかったり、調達できてもコストが上昇してしまったりすることから、プロジェクトの遅延や経済性の悪化といった問題が2006.9 Vol.40 No.5(利用料)(稼働率)1,0008006004002000Day Rate Index(1994=100) 今後なお一層活発化が予想される深海部/非在来型資源開発であるが、いくつかの問題点も顕在化してきている。 まず深海域探鉱・開発活動における問題点としては、掘削装置(リグ)や人材の不足によるプロジェクトの遅れやコスト上昇などが挙げられる。 リグの不足の問題では、深海掘削用の高度な仕様の装置の利用料が特に高騰していると言われている。2,001~5,000フィート(約600~1,500m)の深海用半潜水型リグの稼働率は2006年半ばには100%に達している。利用料も2年前の約4倍、1994年の水準の8倍超となっているなど、高騰している (図22参照)。 また、パイプやポンプ等といった他の資機材についても、ここ数年、価格が20~50%上昇している。 このように、深海油・ガス田探鉱・糟ケナショナリズム台頭で深海/非在来型石油・天然ガス開発加速 ~国際石油会社の上流投資の重点が大きくシフト~生じている。 ただ、これについては、現在相当数のリグが建造中であり、2年後くらいから市場で利用可能になるとの予測もあることから、今後緩和される可能性もあるものと考えられる。 次に、人材不足の背景について述べてみたい。まず、この業界では1980年代以降、大規模なリストラが断行され、多数の従業員が解雇された。また最近では、当時解雇された従業員の子供の世代が、両親が石油・天然ガス産業から解雇されたという記憶を強く持っていることから、そのような業績の浮沈の激しい業界への就職を敬遠するようになってきているものと考えられる。 次に、この業界のイメージがあまりよくないと言われていることがある。石油・天然ガス産業が高度技術を使用する、いわゆるハイテク産業でもなければ、クリエイティブな産業でもないと認識されている。それに加え、石油・天然ガス企業はその操業を通じて環境に悪影響を与えているほか、製品価格操作といったような、何かよくないことを行っているのではないか、といった疑念や、さらには石油自体が将来枯渇してしまうかもしれず、産業の将来展望が不透明であるといった、マイナスの印象を持たれている。このため、若年層にとっては、銀行、コンサルタント、そしてITのようなハイテク産業への就職にむしろ魅力を感じるようになってきている。 以上のような要因から、石油・天然ガス産業の従業員数が大幅に減少する一方で、十分な数の若年層が石油関連技術に係る学問を専攻せず、したがって業界にも入ってこない、といった状況になっている。 このような状況が、過去相当期間続いたことから、近年業界全体に高齢化の問題が発生している(米国の例は図23参照)、今後、彼らが順次退職していく一方で、それを大学からの卒業者で埋め合わせていくことが困難なことから、従業員数はさらに減少していくことが予想されている(図24参照)。 技術者を中心とする石油・天然ガス業界の人材不足は、米国のみならず他の産油国でも見られる。たとえば英国Exhibit 1. Workforce Age DistributionOil and Gas DistributionTypical Technology-Focused Company65+60-6455-6950-5445-4940-4435-3930-3425-2920-2465+60-6455-6950-5445-4940-4435-3930-3425-2920-240%5%15%Source: Society of Petroleum Engineers, 2003出所:Deloitte10%20%25%0%5%10%15%20%25%図23米国の業界年齢構成(左は石油・天然ガス産業、右は典型的な技術型産業)Exhibit 2. Oil & Gas Workforce ProjectionsU.S. Petroleum Engineering Workforce10Workforce in Place as of 20001,000Employees86420Cumulative New GraduatesProjected Workforce20002002200420062008201020122014201620182020Source: PetroStrategies Inc.出所:Deloitte石油・天然ガスレビュー図24米国の石油工学技術者の推移と今後の予想0,00025,00020,00015,00010,0005,000CNRLCNRLSHELLSHELLアナリシスTOTALTOTALSUNCORSUNCORPETRO-CANADAPETRO-CANADASYNCRUDESYNCRUDEIMPERIALIMPERIAL2010ていくことになろうが、一方で、たとえば現在上流専業でオイルサンド開発を実施している会社は、将来的には高度な改質技術をいかに獲得するか、もしくは当該技術を持つ企業といかにパートナーを組むことができるかが重要となってくる。 既にオイルサンド開発を行う上流専業企業の中には、下流部門への進出を模索する動きが見られる。EnCana(オイルサンド開発に伴う生産量を現在の日量3万バレルから2015年までに日量50万バレルへと増大させる意向)は2004年11月29日にPremcor(2005年9月1日Valeroが同社を買収した旨発表)と、同社の米国オハイオ州リマにおける製油所を利用し、オイルサンドからのビチューメン改質に係る精製部門での共同事業検討開始につき合意したが、2005年12月15日にはEnCanaおよびValeroとの間で共同事業に係る検討を終了する旨発表された。 共同事業に至らなかった理由についてValero側からは「改質のための製油所改修に、推定20億ドルもの高額の費用を要することによる」と報じられている。これによりEnCanaは他の石油企業との共同事業を模索することになった。 2006年6月にはEnCanaはBPとオイルサンドから得られるビチューメンの改質事業に係る協力について協議中で2006.9 Vol.40 No.5オイルサンド開発地区にはいないため、いかにしてそうした人材を雇用して訓練し、オイルサンド開発事業に従事させるかが問題になっている。 実際には、既に労働者不足に直面し、労働コストが上昇、オイルサンド事業を推進しようとする多くの企業で当初予算を超過する事態に陥っている。たとえばShell Canadaのアサバスカ・オイルサンド・プロジェクトにかかる費用58億カナダドルは、当初予算を50%超過している。また、Syncrudeの第3次オイルサンド拡張プロジェクトに係るコスト83億カナダドルは、当初見込みの倍となっている。 さらに、オイルサンド開発プロジェクトには在来型の石油探鉱・開発プロジェクトとは別のリスクが伴う。たとえば、2004年末にはオイルサンドから得られるビチューメンの改質施設の不具合やアスファルト向け需要の低下で、他の原油価格から乖してビチューメン価格が急落した。 また、今後中長期的には需要は軽質製品に向かうと見られることから、重質のオイルサンドを価値の高い製品にするには、オイルサンドから得られるビチューメンを、いかに低コストで高品質に改質できるか、ということが問題となってくる。 この面で、大手国際石油会社は自社の製油所等を用いた研究・開発を行っ離りかい図25カナダ・アルバータ州における主要オイルサンド・プロジェクトに必要な人材数02006出所:Shell Canada200720082009で2005年前半に行った調査では、50%の石油・天然ガス企業が人材採用上の困難に直面していると回答している。また、コントラクターでも57%が同様の困難に直面していると回答している。特に、石油エンジニアや物理探査技術者といった、技術者の採用により困難を感じていると伝えられる。限られた人員で、所定の作業をこなせるような画期的な技術が開発されない限り、人材不足に係る問題を解消するには長期間を要する可能性がある。 したがって、今後特に、深海部石油・天然ガス探鉱・開発といった技術的に高度なプロジェクトが多くなっていく状況を勘案すると、人材不足がこのまま深刻化すれば、さらにコストの上昇やプロジェクトの遅延等、企業に対する悪影響が出てくる恐れがある。 既に、10年の経験を持つ油層エンジニアの年収は12万~12万5,000ドルであり、また彼らを新たに雇用する場合には別途2万~2万5,000ドルのサイン・ボーナス(かつては、このサイン・ボーナスは必要なかったと言われている)が必要となるとの報告もあるなど人材にかかるコストは上昇している。 カナダのオイルサンド・プロジェクトについても、今後必要な人材が急増することが予想されている。図25で示す通り、2008年には現在の約2.5倍の人材が必要とされるとの見通しもある。 ただこの図25は、大規模プロジェクトについてのみ必要な人材数を計算したものであり、これ以外の中小規模のオイルサンド・プロジェクト推進のためには、さらに多数の人材が必要であると見られている。また、図中のShellの見通しについては、計画されているプロジェクトのうち第一フェーズ分の人員しか計上していない。今後、第二フェーズ以降を実施する場合には、さらに人材が必要になるとの見方もある。 現在、このような人材は、カナダの糟ケナショナリズム台頭で深海/非在来型石油・天然ガス開発加速 ~国際石油会社の上流投資の重点が大きくシフト~あると報じられた。EnCanaはこの協力において、精製部門での権益と引き替えに、同社のオイルサンド権益の半分を提供する用意のあることを明らかにしており、2006年秋には共同事業者を決定したい意向であるとされる。また、Husky Energyも下流部門における提携先を探していると言われている。一方で、BPはこれまでオイルサンド事業を行ってこなかったが、これを機に同事業へ進出することも考えられる。 オイルサンドの抽出ないしは改質に使用される天然ガスについても問題が生じる可能性がある。天然ガスは、二酸化炭素や硫黄酸化物、窒素酸化物の排出量が少なく環境にやさしい一方で、ガス・コンバインド・サイクルの普及で発電効率が改善するため、今後発電部門を中心として需要が増大、それに伴って天然ガス価格が上昇する可能性が考えられる。その結果、ビチューメン抽出および改質に使用する天然ガスの入手が困難になる可能性があり、この面でも対策が求められる恐れがある。 加えて、オイルサンド事業が今後活発化してくるにつれ、開発のために必要とされる水の確保も課題となってくる。さらに利用された水の処理等をめぐる環境問題も顕在化してくる可能性がある。4. 自前技術開発の重要性 今回紹介した、深海部での石油・天然ガス探鉱・開発および非在来型石油・天然ガス資源の開発を、今後推進していくうえで重要となるのは、技術力であると言われる。 既存の技術を適用できる油・ガス田は今後減少していくことが予想されることから、石油会社各社は、より高度な技術を新規に開発し、適用することで、非在来型資源を含め新規油・ガス田を探鉱・開発していかなければならない。このような背景もあり、大手国際石油会社は2006年から2010年にかけ、研究・開発予算を数割程度増額していく計画であると言われている。 また、特に大手国際石油会社においては、石油サービス企業との共同事業で研究・開発を行うことは、コストの低減といった利点はあるものの、一方で開発した技術が他の企業にも容易に適用されてしまうことにより、結果的には企業の競争力強化には役立たないといった欠点もある。 このことから、深海部における石油・天然ガス探鉱・開発や非在来型石油・天然ガス資源のための技術開発においては、大手国際石油会社は内部で技術研究・開発を推進するという、いわば「技術の内製化」が進むのではないか、と見る向きもある。石油・天然ガスレビュー 既にExxonMobilは、タイトサンドガスの効率的な開発技術を自社で開発しており、これを使用すれば従来型の技術に比べて数倍の天然ガスを生産できると見込んでいる。同社ではこの技術を他の石油サービス会社等にライセンス供与している(図26参照)。 またShellは、オイルシェールを地中内で回収する技術(ICP)に関し、既に2003年5月1日に約700ページにも及ぶ特許を出願しており(図27参照)、将来この分野における事業で先行し、支配的な地位の確保を目指す姿勢がうかがわれる。 一方、2006年7月には、Chevronがサウジアラビア・クウェート中立地帯Wafra油田で実施したSteam Injection(水蒸気圧入法)による重質油の生産に係る試験プロジェクトにおいて、初期の試験結果が良好であったと報じられている。 この方法はオイルサンドの開発方法に類似していると言われている。今後世界の石油供給において重質原油が主流になっていくであろうと考えられているなかで、現在は中東産油国の既存の油田については外国資本の参入が大幅に制限されているが、このような産出所:ExxonMobil図26ExxonMobilのタイトサンドガス開発技術を説明するスライド綠曹ェ持っていないような開発・生産技術やノウハウを武器として、新たに外国資本が参入していく可能性も考えられる。アナリシス出所:Shell図27Shellのオイルシェール開発に係る特許出願書類(一部)5. 石油会社にとっては何が何でも深海と非在来型資源なのか?――結びに代えて これまで見てきたとおり、さまざまな課題は存在するものの、現在、深海地域や非在来型資源は、大手国際石油会社や一部インディペンデント系石油会社にとって、LNGとともに最重要投資分野の主要部分を占めるものとなっており、資産の取得・拡大に向けダイナミックな動きが見られるところである。 資源ナショナリズムの再興等により、在来型資源に対する良好な条件での投資機会が限定されてきている状況の下、このような動きは(たとえば原油価格が急落するなどして、産油国がもはや強気ではいられなくなり、自国の生産量増大のために外資による開発を促進すべく大規模な鉱区開放を実施するといった事態の急展開がない限り)、当面続いていくものと考えられる。 石油会社の中には、在来型石油・天然ガス資源を大胆に処分し、深海部油・ガス田探鉱・開発ないしは非在来型石油・天然ガス資源開発に注力するところも出てきている。Anadarkoは米国メキシコ湾の深海部等に事業を集中すべく、2004年後半に米国メキシコ湾の浅海部資産すべてとカナダ西部および米国陸上における資産を売却する旨発表した。またEnCanaも、2004年から2006年にかけ、エクアドル、米国メキシコ湾、カナダ西部、英領北海等の在来型石油・天然ガス資産を売却しており、結果的に同社の資産の大部分は北米陸上となり、その主なものは非在来型石油・天然ガス資源となった。 大手国際石油会社やインディペンデント系石油会社は現在のところ、非在来型石油・天然ガス資源については(ベネズエラの超重質油といった例外はあるものの)、概ね北米を中心として活動してきている。しかし今後、北米において培った技術力を武器に北米外での超重質油(前述)やCBM、タイトおおむサンドガスといった非在来型石油・天然ガス資源開発に乗り出す機運も出てきている。まずは消費市場に近く、政治的リスクの低い北米において事業を推進しつつ技術力の向上を図り、ある程度技術力が向上したところで、早期に北米外での資産の大量取得に入るという戦略を実行することが予想される。 さらに、前にも触れたが、大手国際石油会社やインディペンデント系石油会社のみならず、中国やインドといった国々の国営系石油会社や韓国の石油会社などが、深海部や非在来型石油・天然ガス資源開発への進出を続けることも予想される。2006年7月24日には、韓国商工エネルギー省とKNOCがカナダ・アルバータ州アサバスカ地区にあるBlackGoldオイルサンド鉱区(埋蔵量は2億5,000万バレルとされる)9,600エーカーを米国のNewmont Miningから約2億7,000万ドルで取得2006.9 Vol.40 No.5糟ケナショナリズム台頭で深海/非在来型石油・天然ガス開発加速 ~国際石油会社の上流投資の重点が大きくシフト~200020012002200320042005ApacheKerr-McGee2520151005出所:各社年報他図28ApacheとKerr-McGeeの石油・天然ガス埋蔵量推移石油換算日量千バレル500400300200200020012002200320042005ApacheKerr-McGee出所:各社年報他図29ApacheとKerr-McGeeの石油・天然ガス生産量推移石油換算億バレル40035030025020015010050000010203040506ApacheKerr-MeGee図30ApacheおよびKerr-McGeeの株価推移(2000年平均=100)回収と収益を獲得する技術やノウハウが必要であることは言うまでもないし、つまるところApacheはそのような技術と人材を保有しているということになろう。 一方、Kerr-McGeeのような例もある。同社は米国メキシコ湾深海部で探鉱・開発活動を推進する一方で、2001年5月14日にはHS Resourcesを買収する旨発表、同年8月1日には買収完了を発表した。さらに2004年4月7日にはWestport Resourcesの買収を発表し、同年6月25日には買収完了を発表した。このような買収を通じて同社は、ロッキー山脈におけるタイトサンドガスやCBMといった非在来型天然ガス資源を増加させてきた。 しかし同社は、業績の低迷していた化学部門を抱えていたことや、未確認でリスクの高い米国外の深海部への探鉱を積極的に推進した結果、思うように油田を発見できず、埋蔵量および生した旨発表したと伝えられる。 では、このような世界的な業界のトレンドに乗り遅れることなく、何が何でも深海部および非在来型石油・天然ガス資源獲得に向け鉱区取得を急ぐべきであろうか。ここにいくつかの例を提示したい。 Apacheは、米国のインディペンデント系石油会社の中でも、石油・天然ガス埋蔵量や生産量を順調に増加させている堅調な企業であると言われている。しかし同社は、若干の深海部やCBM鉱区を保有している模様ではあるものの、成長の原動力となったのはむしろ米国メキシコ湾浅海部や陸上の比較的成熟した鉱区であった。Apacheは他社が処分するような資産を取得することで資産保有を拡大し、それらの資産からの生産を、できる限り安定化させ、収益を上げることに徹底的に集中した。また同社は、エジプトやカナダ、豪州といった地域において主に在来型石油・天然ガス資源を保有しているが、総じてこれらの狭い範囲に集中して事業を実施している。同社は、2005年4月にエジプト深海で相当量の埋蔵量を持つ天然ガス田を発見したが、深海部の天然ガスを開発する意向は同社にはなく、結局Hess(当時Amerada Hess)に売却してしまった(2006年1月17日発表)。 このような戦略を推進する大手国際石油会社やインディペンデント系石油会社は少数である。その意味でApacheは、他社の「裏をかく」ようなやり方で成果を収めていると言えよう。ちなみに、同様のやり方を行っている企業に、二酸化炭素等を利用した増進回収法(EOR:Enhanced Oil Recovery)を積極的に適用することで生産量を増加させることに成功しているOccidentalのような企業が挙げられる。 もちろん、この戦略が成果に結びつくには、成熟化した資産から最大限の石油・天然ガスレビューY量を効率よく増大させることもできなかったことにより(図28、29参照)、株価もApacheに比べて差がついてしまった(図30参照)。 ApacheおよびKerr-McGee 間で株価の差がつきつつあった、2003年末時点での両社の上流資産内容を見てみる。Apacheは鉱区(開発済および未開発双方を含む)を保有する国の構成がKerr-McGeeに比べて限定されているが、そのかなりの部分は開発済であり、同社の保有する鉱区(開発済および未開発双方を含む)の国構成と開発済鉱区のそれが互いに似通っていることから、同社は保有する鉱区を効率的に開発できている様子がうかがわれる(図31、32参照)。 一方、Kerr-McGeeは、鉱区(開発済および未開発双方を含む)が多彩に及んでいるが、開発済の鉱区を保有する国は英国と米国のみとなっている(図33、34参照)。この傾向は前後の年でも同様であり、Kerr-McGeeは、保有する鉱区を効率的に開発できていないと推測される。こうした状況もあり、Kerr-McGeeは2006年6月23日にはAnadarkoから買収の提案を受けることになってしまった。 このように、単に深海や非在来型資源に係る資産を保有し、積極的にこれらの資産の探鉱・開発等を推進することが成功への十分条件となるわけではない。また、こうした資産を保有していないからといって、絶対に成功しないというわけでもない。重要なのは、いかに戦略的に資産を保有し、それを効率的に開発し生産するか、ということになろう。 その意味では、石油企業にとってはまず、自分自身の操業状態等について適切に診断してみる必要があるものと考えられる。つまりこれは、自分の会社がどの分野に強みを持ち、どの分野に弱みを持っているか、そしてさらに業界の動向と照らし合わせて、自社の強みをより増大させる一方、弱みを改善させるには何が必要なのか、ということを分析することに等しい。 このような自己分析を通して、たとえば自社の操業基盤を強化するために地域や分野、そして金額といった一定の条件下で合併ないし買収をどのように実施するか、さらに自社にとって操業上の中心とならないことから売却すべき資産がどれであるかを特定する、という戦略を取ることが可能になるであろう。 また、鉱区の取得戦略、つまりどの地域においてどのような財務的条件(サイン・ボーナスなど)を提示すればいいか、ということも明確になってくるであろう。技術についても、自社で開発するのか、それともサービス・コントラクターや大学等との連携を通アナリシスじて開発するのか、といったことについても道が開けるかもしれない。一度自己分析が完了していれば、その後の企業行動は即決かつ円滑にいくであろう(もちろん、その後の状況の変化によって随時分析の見直しを行う必要があることは言うまでもない)。 他社との競争が今後ますます激化し、有望資産の早期の取得と技術力、そしてそれを生かせる人材の育成がますます重要になっていくことが予想される状況下、限られた人的・財務的資源の中で、どのようにして企業の長所を利用し、適切なコストにより埋蔵量および生産量を増大させるか、そして短所をいかにして軽減するか。この思考と実践の過程が「選択と集中」という行為であろうし、そのような行動は今後益々必要とされてくるであろう。世界の石油企業にとって、選択と集中米国カナダエジプト英国豪州中国出所:Apache年報他ポーランドアルゼンチン図31Apacheの鉱区保有状況(2003年末現在)アルゼンチン米国カナダエジプト英国豪州中国出所:Apache年報他米国英国中国モロッコ豪州イエメンカナダガボン出所:Kerr-McGee年報他ベニンバハマブラジル米国英国出所:Kerr-McGee年報他図32Apacheの開発済鉱区保有状況(2003年末現在)図33Kerr-McGeeの鉱区保有状況(2003年末現在)図34Kerr-McGeeの開発済鉱区保有状況(2003年末現在)2006.9 Vol.40 No.5糟ケナショナリズム台頭で深海/非在来型石油・天然ガス開発加速 ~国際石油会社の上流投資の重点が大きくシフト~のやり方いかんが業績の優劣を決める状況にある。自己分析と合理的な企業戦略の策定が一層求められるところである。 なお、今回は非技術的側面に焦点を当てたことから、ややもすると深海油・ガス田がどのような技術でもって探鉱・開発されている、ないし今後されていくか、そして非在来型石油・天然ガス資源がどのような技術でもって開発されている、ないし今後されていくか、ということなどに関する記述が希薄になってしまった感がある。それらについては、以下に参考文献を掲載させて頂いたほか、今号、そして今後石油・天然ガスレビューにおいて技術的側面等に焦点を当てたアナリシス(分析)が掲載されると思われるので、そちらを御参照頂ければ幸いである。参考文献1. 大手国際石油会社およびインディペンデント系石油会社等各社年報、有価証券報告書類および投資家向け等発表資料2. John S. Herold, Inc., John S. Herold Company Research3. Petroleum Finance Company(PFC),“Upstream Competitive Service”における石油会社各社レポートおよび各種レポート類4. Wood Mackenzie, Upstream Insight各レポート5. 米国Mineral Management Service(MMS),2004年5月,“Deepwater Gulf of Mexico 2004, America’s Expanding Frontier”6. 米国Mineral Management Service(MMS),2005年5月,“Deepwater Gulf of Mexico 2005, Interim Report of 2004 Highlight”7. Douglas Westwood, 同社各News Release8. Alberta Department of Energy, 2005年12月,“Alberta’s Oil Sands 2004”9. Alberta Economic Development, 2005年12月,“Oil Sands Industry Update”10. Athabasca Regional Issues Working Group,“Oil Sands: Growth, Challenge & Opportunity”11. Alberta Energy and Utility Board, 2005年9月,“Alberta’s Reserves 2004 and Supply/Demand Outlook 2005-2014”12. Canadian Association of Petroleum Producers(CAPP),2006年5月,“Canadian Crude Oil Production and Supply Forecast 2006-2020”13. Cambridge Energy Research Associates(CERA),2006年5月,“Canadian Oil Sands Industry Innovations”14. 米国エネルギー省他,“Translating Lessons Learned From Unconventional Natural Gas R&D To Geologic Sequestration Technology”15. Research Partnership to Secure Energy for America(RPSEA),2005年12月,“Technology Needs for U.S. Unconventional Gas Development Final Report”16. Gas Technology Institute, “Rationale for Section 29 Non Conventional Gas Tax Credit Extension”17. Harts Energy Publication, “Advances in Coalbed Methane”18. Pickering Energy Partners, Inc., 2005年10月,“The Barnett Shale Visitors Guide to the Hottest Gas Play in the US”19. Schlumberger,“Unconventional Gas”,Schlumberger White Paper20. Schlumberger,“Shale Gas”,Schlumberger White Paper21. Canadian Society of Unconventional Gas, 2006年3月,“Unconventional Gas in Canada, Past, Present and Future”22. ODS-Petrodata, 2006年7月,“ODS-Petrodata Day Rate Indices”23. 岩間剛一, 武石礼司, 野神隆之, 2006年5月,「座談会 欧米メジャーの今後の経営戦略」,ペトロテック2006年5月号24. 野神隆之, 2005年7月,「国営石油会社と日本上中流企業に大きな成長潜在力 石油・天然ガス業界構造の多変量解析」,石油・天然ガスレビュー2005年7月号25. 市川真, 2005年11月,「破竹の勢いのオイルサンド」,石油・天然ガスレビュー2005年11月号26. 寺崎太二郎, 2006年2月,「世界の非在来型天然ガス資源とその長期需給予測」,日本エネルギー学会誌2006年2月号27. 島田荘平, 2005年9月,「加速する新資源コールベッドメタン」,石油・天然ガスレビュー2005年9月号28. 林薫(編),2006年5月,「国際石油天然ガス上流優良企業の条件~日本企業の国際競争力向上に向けたCERAの提言~」,石油・天然ガスレビュー2006年5月号石油・天然ガスレビューAナリシス29. 桜井紘一, 2006年7月,「帰ってきたオイルシェール」,石油・天然ガスレビュー2006年7月号30. 竹原美佳, 2006年4月,「中国:第11次五ヵ年計画(2006年~2010年)における石油・天然ガス関連政策」,JOGMEC石油・天然ガス最新動向31. 竹原美佳, 2006年5月,「アンゴラ/中国:欧米メジャーの関心高いアンゴラで中国Sinopec猛進」,JOGMEC石油・天然ガス最新動向32. 坂本茂樹, 2006年6月,「インド:ベンガル湾深海で大規模な原油・ガス発見-ディルバイ・ガス田の埋蔵量大幅上方修正へ-」,JOGMEC石油・天然ガス最新動向33. 坂本茂樹, 2006年6月,「アジア:大水深海域での探鉱・開発の現況と方向性」,JOGMEC石油・天然ガス最新動向34. 齋藤晃, 2006年7月,「カナダCAPP(カナダ石油生産者協会):オイルサンド見通し、上方修正へ~原油価格高騰を背景に脚光を浴びるオイルサンド開発~」,JOGMEC石油・天然ガス最新動向35. 野神隆之, 2006年2月,「石油・天然ガス産業:石油・天然ガス上流部門おける人材不足-現状と今後の展望」,JOGMEC石油・天然ガス最新動向36. 野神隆之, 2006年5月,「石油・天然ガス産業:深海探鉱・開発活発化の背景、現状と今後の展望」,JOGMEC石油・天然ガス最新動向37. 野神隆之, 2006年7月,「石油・天然ガス産業:北米の非在来型天然ガス資源及び石油資源(オイルサンド)開発-大手国際石油会社も進出、活動活発化へ」,JOGMEC石油・天然ガス最新動向38. 猪原渉, 2006年8月,「サウジアラビア:新技術による超重質油回収の動き」,JOGMEC石油・天然ガス最新動向執筆者紹介野神 隆之(のがみ たかゆき)早稲田大学政治経済学部経済学科卒業、ペンシルベニア大学大学院修士課程およびフランス国営石油研究所付属大学院(ENSPM)修士課程修了。通商産業省(現経済産業省)資源エネルギー庁長官官房国際資源課(現国際課)、国際エネルギー機関(IEA)石油産業市場課等に勤務の後、石油公団企画調査部調査第一課長を経て、現在JOGMEC石油・天然ガス調査グループ上席エコノミスト(石油・天然ガス市場および産業担当)兼上席研究員(北アフリカ担当)。趣味は旅行(国内・国外問わず)。2006.9 Vol.40 No.50
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2006/09/20 [ 2006年09月号 ] 野神 隆之
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