ページ番号1006241 更新日 平成30年3月5日

2LNG 案件を煩わせた豪州/東チモール間海洋境界の解決 ~バユ・ウンダン、Gサンライズと大陸棚自然延長説/EEZ 中間線論の争い~

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レポートID 1006241
作成日 2006-09-20 01:00:00 +0900
更新日 2018-03-05 19:32:42 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 天然ガス・LNG
著者
著者直接入力 今 英樹
年度 2006
Vol 40
No 5
ページ数
抽出データ アナリシスJOGMEC 前シドニー事務所所長kon-hideki@jogmec.go.jp今 英樹2LNG案件を煩わせた豪州/東チモール間海洋境界の解決~バユ・ウンダン、Gサンライズと大陸棚自然延長説/EEZ中間線論の争い~ 日本のエネルギー企業も関与している2つのLNGプロジェクト(バユ・ウンダンとグレイター・サンライズ)は近年東チモール*1と豪州(オーストラリア)政府間の海洋境界紛争に煩わされてきた。 この海洋境界紛争は、大陸棚自然延長説を主張する豪州と排他的経済水域に基づく中間線を主張する東チモールが、両国の間にある同じ海域をめぐって経済主権を争っていたものだが、ようやく本年1月に政治的決着が図られ、両プロジェクトの推進には朗報となった。日本で十分に知られているとは言えないこの海洋境界紛争のこれまでの経緯と両プロジェクトに与える影響、および残された課題について(本年6月まで)JOGMECシドニー事務所前所長であった今が紹介する(編集部)。1. はじめに天然ガス資源埋蔵量が確認されたことであった。 ガス資源の生産により、東チモールには長期にわたり、ばく大かつ安定した収入を得ることが期待された。 ただ、チモール海の埋蔵資源の大部分の権益は、東チモールの隣国、豪州との境界線にまたがるものであった。そのため、東チモールが正式に独立を果たす以前から両国は、チモール海資源の両国共同開発、ならびに収益シェアに関する交渉を開始している。 本稿では、過去の交渉の経緯、さらにこれまで両国間で合意された内容をまとめた。 本稿は、①チモールの歴史とインドネシアによる東チモールの併合、②豪州とインドネシアとのチモール・ギャップ条約、③東チモール独立の経緯、④チモール海資源開発をめぐる豪州と東チモールとの交渉、⑤これまでに調印されたチモール海条約、ユニタイゼーション協定、チモール海境界線条約、⑥資源開発の行方、等を分析の視点としつつ、チモール海の石油・天然ガス資源開発問題を総括する。ぎょうう倖こ 1975年以降、約四半世紀にわたって隣国インドネシアの圧政に苦しんできた東チモールは、99年8月に実施された独立の是非を問う住民投票を経て、2002年5月、ついに新生国家としてスタートを切った。 だが、東チモールの主要産品は少量のコーヒー豆にすぎず、悲願であった独立を果たしたとはいえ、経済的、財政的基盤は極めて脆ぜい弱じゃくなものであった。だった その東チモールにとって僥のは、チモール海において商業規模の2. 東チモールの歴史とチモール・ギャップ条約(1)インドネシアの東チモール併合 東インド諸島に属するチモール島は、17世紀にポルトガルによって植民地化された。 東インド諸島では、その後約300年間、オランダの支配が続き、チモール島についても西部分はオランダ領となった。しかし、島の東部分については、ポルトガルの統治が続いていた。 ところが1974年になると、宗主国の*1:外務省では「東ティモール」と表記しているが、本稿では「東チモール」とする。ポルトガルで軍事クーデターが発生し、それを契機にしてポルトガルでは非植民地化の動きが一挙に活性化した。東チモールでも、インドネシアを後ろ盾とする親インドネシア派と、東チモール独立革命戦線との間で抗争が激化し、東チモールは内乱の様相を呈した。 1975年12月にはインドネシア軍が東チモールに侵攻した。翌76年7月には、当時のスハルト・インドネシア大統領が、東チモールをインドネシアの第27番目の州として内外に宣言し、東チモールはインドネシアの支配下に置かれることとなった。(2)チモール・ギャップ条約の締結 インドネシアが東チモールを併合する前の1971年から72年にかけて、 豪州政府とインドネシアは、ポルトガル領63石油・天然ガスレビューAナリシス採用の主張を取り下げている。その背景にあったのは、事実上インドネシアを支持した形の豪州に対する返礼、さらに交渉の要件であったとはいえ、インドネシアの東チモールに対する主権を、豪州が法的に認知したことの配慮であったと思われる。 一方、豪州側も一定の譲歩を行っている。それは、両国の共同開発海域の南側の境界を、両国の中間線とすることに合意したことであった。 チモール・ギャップ条約の内容であるが、最終的に両国政府は、東チモールと豪州との間に合意した境界線を設定することには至らず、暫定的な境界線を設定することで合意した。そのために「ギャップ」と呼称している。 同条約では「チモール・ギャップ」海域はA、B、Cの3つの海域(Zone)に分類されている。東チモールに近い海域Cは、インドネシアの専管的海域。一方、豪州大陸に近い海域Bは、豪州の専管的海域。そして、海域CとBとに挟まれた最も広大な海域Aは、両国の共管的海域とされた。 この海域Aには、バユ・ウンダン(Bayu-Undan)等、有望な石油・ガス田が含まれており、同海域での資源開発は、名称どおりに両国の共同事業となった。その際の収益は両国で折半することも、併せて決定された。 ちなみに、海域Bと海域Aの境界線は、81年の両国間漁業水域線、すなわち両国の中間線と一致している。一方、海域CとAとの境界線は、72年の両国間海底境界線とつながっている。Timor IslandTimor IslandINDONESIAINDONESIAINDONESIAINDONESIAINDONESIAINDONESIAINDONESIAINDONESIAINDONESIAINDONESIAINDONESIAen linaideM C CeennooZZ A AeennooZZ B BeennooZZAUSTRALIAAUSTRALIAAUSTRALIAAUSTRALIAAUSTRALIATimor SeaWesternAustraliaDarwinNorthernTerritory出所:JOGMEC図1豪州・インドネシア間共同開発地域"Zone of Cooperation"である東チモールの領海部分を除く形で、両国間の海底境界線交渉を行っている。その際に豪州側が主張したのは、チモール島の南方50海里程に横たわる「トラフ」が自然の境界線という、強硬なものであった(いわゆる「大陸棚延長説」)。 これに対してインドネシア側は、同島と豪州沿岸線の中間線を採用すべきと主張し、両国は真っ向から対立した。 結局、72年10月に調印された条約では、両国ともに一定の妥協、譲歩を行い、トラフ線と中間線の間を海底境界線として採用することで決着した。 1975年の軍事侵攻以降、インドネシアの東チモール支配が始まると、それまでは手付かずであった、東チモール部分と豪州との海底境界線を画定する必要が生じた。 そこで豪州のフレイザー保守政権は、両国間境界線交渉を開始する上での要件となる法的認知、すなわちインドネシアが東チモールへの主権を保持していることを法的に認知することを宣言している。 そして境界線交渉が開始されたが、その直後の1981年に、豪州とインドネシアは漁業水域協定に調印している。その際に採用された境界線は、チモール島と豪州沿岸との中間線であった。 海底境界線交渉でもインドネシア側は、再度中間線を主張し、そのために交渉は難航した。最終的にはチモール・ギャップ条約として結実したものの、同条約が調印されたのは1989年、また発効したのは1991年になってのことであった。 結果として、インドネシアは中間線3. 東チモールの独立(1)ハワード政権の路線転換 1996年に誕生した豪・ハワード政権は、98年の末頃になると、対東チモール政策あるいは対インドネシア政策について重大な路線転換を行った。 その内容は、1999年1月に公表された。骨子は、まずインドネシア政府に対し、①東チモールに自治権を付与し、②その後、自決権を付与することを要2006.9 Vol.40 No.564QLNG案件を煩わせた豪州/東チモール間海洋境界の解決 ~バユ・ウンダン、Gサンライズと大陸棚自然延長説/EEZ中間線論の争い~請する。次に豪州は、③東チモール独立運動指導層との交渉に直接関与する。ただし、④同地に対するインドネシアの主権は引き続き承認する、というものであった。 本声明は、インドネシア政府に東チモールの自治を迫っていくとした点で、目新しいものであった。 ただし、当時のハワード政権は、東チモールの独立は周辺地域の不安定化を助長し、またインドネシアの分裂を招来しかねないとの懸念から、独立には反対していた。 ではなぜ、これまで現状維持志向であった豪州の保守政党が、東チモールに配慮する路線に転換したのか。 それには、豪州の国内政治上の圧力が挙げられる。インドネシア軍の横暴に触発され、豪州の国内世論は東チモールに同情的であった。また労働党が野党となってからは、東チモールへの自決権付与を声高に叫び、ハワード政権に圧力をかけたのである。 また、外交分野での実績を上げることを望んでいたハワードが、東チモール問題をその絶好の好機と捉えたことが指摘できる。(2)住民投票の実施と多国籍軍の派兵 ところがハワード政権の路線転換は、予想外の反応を招いた。インドネシアのハビビ大統領が、拡大自治権付与の是非を問う住民投票の即時実施を提案したのだ。しかもハビビは、「住民投票で自治権付与提案が拒否されたら、2000年早々にも東チモールの独立を容認することもあり得る」とも発言した。 このハビビ発言に対してハワードは、当面は東チモールが自治権のみを獲得し、インドネシアの主権下にとどまることが望ましいとの考えを再度示していたが、東チモール問題をめぐる情勢は一挙に加速し、拡大自治権付与に対する東チモールでの住民投票、すなわち事実上の独立の是非を問う住民投票の実施へと発展した。 その住民投票は、1999年8月30日に実施された。インドネシア政府の拡大自治権付与案は圧倒的多数で拒否され、それを機に親インドネシア武装グループによる独立派住民への迫害がエスカレートした。 そうした事態に豪州政府は、多国籍軍を主導して騒乱状態に終止符を打つ必要があるとの結論に達した。その時点で東チモール問題は、むしろ豪州の国内世論に対処するための課題に変質していた。また、海外派兵に対する国内世論を統一するためにも、ハワード政権は東チモールの人権擁護というモラルの側面を強調する必要に迫られ、結果として、インドネシア政府の神経を逆なでするような方針の実行を余儀なくされた。 一方、国連も東チモール情勢安定のために、多国籍軍派遣の必要性を認め、インドネシア政府に多国籍軍派遣を受け入れるよう強く求めた。この結果、国際社会での孤立化を恐れたインドネシア政府は1999年9月、多国籍軍の派遣受け入れを表明した。同月中には豪州を主力とする多国籍軍が東チモールへ到着し、治安維持活動を開始した。この活動により、東チモール情勢は正常化に向かい始めた。4. チモール海条約交渉の意義と経緯 豪州とインドネシアの関係を緊張させ、 多くの犠牲者を出しつつ、東チモールは2002年5月、新生国家として独立した。結果論で言えば、豪州は東チモール独立に多大な貢献をなしたと言えよう。 その豪州は、住民投票で独立が確実となった直後から東チモールと、チモール・ギャップの新たな境界線問題に関する交渉をスタートさせた。この交渉は東チモールにとって極めて重要なものであった。境界線交渉はチモール海資源開発と密接に関係し、資源収益の両国分配交渉と同一だからだ。 有望な石油・ガス資源を抱えるチモール海は、資源輸出を主な国家財源とする豪州にとって大いに魅力のあるものだが、 一方、東チモールにとっては国家の根底を支えるものであった。 東チモールの財政的基盤は極めて脆弱であり、石油・天然ガスを埋蔵するチモール海の資源開発を通じて得る収益は、新生国家の礎となるのはもちろん、国際機関からの金融支援を可能にする要件であり、さらには将来の東チモールが「海外援助漬け」に陥ることを防ぐ担保でもあったからだ。 交渉が開始される前の豪州側の姿勢は、甚だリラックスしたものであった。というのも豪州側は、東チモールとのいしずえ交渉を、豪州とインドネシア間で締結されたチモール・ギャップ条約の改訂交渉と認識し、しかも改訂内容は単に「テクニカル」なものにすぎないと考えていたからだ。 すなわち、豪州政府としては、改定交渉とは極端な話、チモール・ギャップ条約内の「インドネシア」という語を「東チモール」に置換するものという程度の認識であったと思われる。 ところが、東チモールは住民投票の翌年になると、強硬な姿勢へと転換した。2000年5月、東チモールの暫定政府とも言えるチモール独立委員会は同交渉に関する声明を公表したが、その65石油・天然ガスレビュー燉eは、交渉を既存条約の改訂ではなく、新条約の締結交渉と位置付けた。その上で、現在は東チモール寄りとなっている海底境界線を、両国沿岸線の中間とすることなどを要求した。 言うまでもなく、中間線を採用した場合、チモール・ギャップ条約で規定された海域A、すなわち共同開発海域は、そのすべてが東チモールの専管的海域となることから、独立委員会の要求は豪州側を大いにあわてさせた。 2000年10月には、豪州政府と、国連安全保障理事会の決議に基づいて設置された、東チモールを代表する国連暫定統治機構(UNTA:UN Transitio-nal Authority in East Timor)との間で、チモール・ギャップ問題に関する第1回協議が、そして翌01年4月には第2回協議が開かれている。 協議でUNTA側は、東チモールを不法占領したインドネシアと豪州との間で締結された現行条約は無効であるとして、共同開発海域における産出資源収入の東チモール側の分配率をアップするよう要求している。 それどころかUNTAは、チモール・ギャップ条約が締結されて以降、国際海洋法における境界線の解釈は変化し、最近では大陸棚などの地理的特性を考慮せずに、単純に両国沿岸線の中間線を採用するようになっていると主張して、正式かつ執拗に両国間境界線の引き直し要求まで行った。このため、条約交渉は、一時頓挫するに至った。 東チモール側の強硬姿勢の背景には、経済開発担当者として交渉に臨んだ東チモールのアルカティリ首相(当時)*2の政治的思惑があった。 アルカティリとしては、できるだけ東チモールの収入を増加させること、また、2001年8月には東チモール初の国政選挙が実施される予定であったために、なおさら豪州への妥協は政治的しつようTIMOR ESTETIMOR ESTEINDONESIAINDONESIAINDONESIAINDONESIAINDONESIAINDONESIAINDONESIAINDONESIAINDONESIAINDONESIAINDONESIAJPDAJPDABayu-UndanGreater Sunriseen linaideMGasTrunkline Under ConstructionAUSTRALIAAUSTRALIAAUSTRALIAAUSTRALIAAUSTRALIATimor SeaアナリシスDarwinNorthernTerritoryWesternAustralia出所:JOGMEC図2豪州・東チモール間「石油資源共同開発地域」JPDAに難しかったのである。 ただし、東チモール側の境界線見直し要求は、交渉を有利に運ぶための道具、具体的には資源開発の収益分配率を東チモールに有利にするための手段にすぎなかったと考えられる。その理由は、豪州が東チモールの要求に屈すれば、近隣諸国、とりわけインドネシアからの同様な要求は必至であり、豪州政府がそういった要求を受け入れることなどあり得ないことは、誰の目にも明らかであったからだ。 さらに、境界線問題解決が決裂すれば、困るのは豪州の方ではなく、同資源開発の収入に国家財政を依存する東チモール側であった。 実際に交渉は、元来の豪州側主張の大陸棚延長説に基づくトラフ線と、東チモール(インドネシア)主張の中間線が重なる部分、すなわちチモール・ギャップ条約上の海域内の分配率をめぐるものとなった。 豪州は、まずたたき台的な数字として、東チモールへの分配率を50?60%に増加させるとの提案を行っている。その後、豪州側はこれを85%にまで増加させたが、最終的には90%とすることで妥結した。 2001年7月に両国は、両国の収益分配率を東チモール側90%に対し豪州は10%とした、チモール海条約の基本枠組み合意書に署名している。また、翌2002年5月には、首都ディリでの独立式典に出席した豪・ハワード首相と東チ・アルカティリ首相は、この基本枠組み合意書に基づくチモール海条約への調印を行った。 そして2002年12月の東チモール議会での条約批准、03年3月の豪州議会での批准を経て、チモール海条約は2003年4月に発効した。 前述のとおり、1989年にインドネシアとの間で締結されたチモール・ギャップ条約では、両国の収益シェア*2:アルカティリ首相は、2006年5月の解雇兵士と国軍との衝突に端を発して東チモール全土に広がった治安悪化と政治的混乱の責任を取って、6月末に退陣した。グスマン大統領は7月8日、新首相にノーベル平和賞受賞者のラモス・ホルタ前外相を指名し、同氏は10日に首相に就任した。2006.9 Vol.40 No.566QLNG案件を煩わせた豪州/東チモール間海洋境界の解決 ~バユ・ウンダン、Gサンライズと大陸棚自然延長説/EEZ中間線論の争い~は50%ずつとなっており、数字を見る限りは、新条約で豪州側が大きな譲歩をしたように見える。譲歩の背景には、東チモールに同情的な国内、ならびに国際世論の存在が大きいだろう。 しかし、東チモールが財政難に陥ることは、豪州の財政支援の増大につながる可能性が強く、 したがって収益比率で譲歩することは、豪州にとって将来の支出節減につながるものであった(文末の「参考1:チモール海条約」参照)。5. 開発の現状と行方(1) バユ・ウンダン石油・ガス田の開発 チモール海条約の発効で開発・生産活動が本格化したバユ・ウンダン鉱区は、1995年に発見された有望な石油・ガス田で、豪州北部準州のダーウィンの北西約500キロメートルに位置している。全鉱区がJPDA内にある。 埋蔵量は、天然ガスが960億立方メートル、コンデンセートは約4億バレル程度と推定されている。参加企業はコノコフィリップス、サントス、国際石油開発、東京電力、東京ガスで、コノコフィリップスが、そのうちの57.7%の権益を保有している。 バユ・ウンダン・プロジェクトは、LPG、軽油を産出する第1フェイズと、天然ガスを産出する第2フェイズに分かれており、第1段階の開発計画については2000年2月に、第2段階については03年6月に認可が出ている。 第1フェイズは2004年2月より生産が開始されており、採掘されたLPGと軽油は洋上施設で処理・貯蔵された後、タンカーで各地に輸送される。 一方、第2フェイズでは、産出された天然ガスがパイプランによってダーウィンへと輸送され、同地の年間処理量300万トンの液化天然ガス(LNG)プラントにおいて液化される。そこから専用船で輸出されるが、その全量が日本の顧客、東京電力および東京ガスへ販売される。 バユ・ウンダン開発で大きな収益が上がるのはこの第2フェイズであり、第1フェイズでの収益の多くは第2フェイズのための設備投資へと回されているとのこと。なお、現在の原油価格などを加味した最新の見積もりによると、バユ・ウンダン開発・生産を通じて東チモール側が受け取る収益は、今後20年間で145億米ドルに達する見込みである。因みに、現在の東チモールのGDPは3億数千万米ドル程度。 このバユ・ウンダン鉱区での資源開発活動は、チモール海条約が発効する以前からスタートしていたが、2006年の2月に、LNGが日本に初出荷されている。(2) グレイター・サンライズ石油・ガス田 2003年3月に発効したチモール海条約によって、バユ・ウンダン石油・ガス田資源開発は軌道に乗ったものの、両国にはチモール海の資源開発に関し、より複雑かつ未解決の問題が残されていた。それはJPDAの東側に位置するグレイター・サンライズ(Greater Sunrise)石油・ガス田の存在であった。 同鉱区は、ダーウィンの北西約480キロメートルに位置するサンライズ鉱区と、トロウバドア鉱区から構成される。発見されたのは1974年と、バユ・ウンダンよりもはるか以前に存在が確認されている。しかし、辺境の地に位置すること、さらにコンデンセートの埋蔵量が少ないことから、長い間開発は見送られていた。ところが1990年代に入るとようやく注目を集め、95年以降には、推定埋蔵量の確認作業も実施されている。推定埋蔵量は、天然ガスが7.7TCF(兆立方フィート)、コンデンセートは約3億バレルと、チモール海の鉱区では最大規模の埋蔵量となっている。ただし、埋蔵位置が海底下140?800メートルと相当に深いこともあり、開発・生産のための設備投資はばく大な額となる可能性がある。 権益保有企業は、ウッドサイド、コノコフィリップス、ロイヤル・ダッチ・シェル、大阪ガスの4社で、そのうちの33.44%の権益をウッドサイド社が保有し、オペレーターとなっている。 さて、同開発プロジェクトでは、生産される天然ガスはLNG化されて輸出される計画である。液化プラントについては、①東チモールにパイプラインで生産天然ガスを輸送し、同地に建設するLNGプラントで液化する、②バユ・ウンダン・プロジェクト用のパイプラインを一部活用して、ガスを豪州のダーウィンに輸送し、同じくダーウィンにある同プロジェクトのためのインフラも活用して同地で液化する、③鉱区の洋上に浮かべた船舶LNGプラントで液化する、の3つのオプションがある。 このうちの①については技術面、コスト面、さらに安全性から問題があるとされる。現在のところは②のオプションが優勢とされるものの、パイプライン敷設コスト面から③を強く推す向きもある。 すなわち③の支持者は、(ア)グレイター・サンライズ・プロジェクトのインフラ整備コストは、バユ・ウンダン用パイプラインを一部活用しても72億ドルにのぼる、(イ)ダーウィンにあるバユ・ウンダン用のさまざまなインフラを活用しても、節減できる額は67石油・天然ガスレビューAナリシス約に基づき、バユ・ウンダン石油・ガス鉱区の開発、生産は順調に進んでいる。既に東京電力および東京ガスへのLNG出荷がスタートしている。 一方、03年3月に両国政府間でIUAが、また本年1月にはチモール海境界線条約も調印されたものの、グレイター・サンライズ石油・ガス鉱区の開発については、主として以下のような3つの理由から、依然としてやや不透明感が漂っている。 第一に、法的な問題である。すなわち、豪州は既にIUAを批准しているが、東チモール議会では未だに批准されていない。また、チモール海境界線条約は両国でいまだ批准されていない。 第二の懸念事項として、今後、東チモール政府が新たな追加要求を行う可能性があることが指摘できる。とりわけ注目すべきは、生産ガスの液化プラント問題である。前述したとおり、その方法としては3方法があるが、このうちの東チモールにLNGプラントを建設せよとの案は、チモール海境界線条約交渉で東チモール側が強硬に要求し、交渉を一時頓挫させる原因となったものである。 問題は、2006年1月に同条約が調印された後も、アルカティリ首相が同案に固執し続けていることだ。例えばアルカティリは、06年1月18日付の豪州ファイナンシャル・レビュー紙の中で、東チモールでのプラント建設は、グレイター・サンライズ開発に関する両国政府間の合意事項の一部とまで主張している。だが、豪州政府はもちろんのこと、参加石油企業の中で同案を推す企業はない。東チモール側があくまで同案に固執した場合、この問題が両国間で改めて係争化する恐れもある。りをかけたことから、交渉は困難なものとなった。 豪州政府は、豪州がチモール海条約を批准し、したがって東チモールにバユ・ウンダン石油・ガス田生産からのロイヤルティ収入、税収が保障された後では、グレイター・サンライズ開発での東チモール側の要求はエスカレートするばかりと危機感を抱き、チモール海条約とユニタイゼーション協定交渉との抱き合わせ戦略を採用した。具体的には、グレイター・サンライズ問題で合意に達しない限り、チモール海条約は批准しないと宣言したのである。 この豪州の戦術は、東チモールには極めて効果的なものであった。というのも、バユ・ウンダンのオペレーターであるコノコフィリップスは、仮に03年3月11日迄に豪州がチモール海条約を批准しなかった場合には、同鉱区生産ガスの顧客候補である東京電力と東京ガス2社との売買契約が破棄され、さらに北部準州のLNGプラント建設も中止に追い込まれるとして、バユ・ウンダン開発自体が中止される可能性を強く警告していたからだ。 これによって、ロイヤルティ収入がから手が出るほど欲しい東チモールに圧力をかけ、結局、ここでも当面の間は境界の見直し要求は行わないとの確約を東チモール側から得て、豪州は東チモール政府と03年3月にユニタイゼーション協定を締結することに成功した。それを受けて、チモール海条約の豪州議会での批准も行った。ただ、豪州はユニタイゼーション協定調印の見返りに、東チモールへの追加財政支援を約束している(文末の「参考2:ユニタイゼーション協定の骨子」参照)。喉のど4億ドルにすぎない。他方で、(ウ)洋上プラントの建設コストは51億ドル、と主張している。ところで、前記オプションについては、当然のことながら北部準州の労働党政府は②を強く推しているものの、連邦政府は、プラント決定は権益保有企業による商業上の判断事項として、表向きは静観の構えである。(3)両国資源開発上の問題点 大きな埋蔵量を誇るグレイター・サンライズ石油・ガス田だが、豪州と東チモール政府の共同資源開発という観点からは、複雑かつ困難な問題を有している。 それは、同油・ガス田がJPDAと豪州の領海域にまたがって位置していることから生ずる。 付属文書では、グレイター・サンライズ鉱区のうち、JPDA内に含まれるのは全体の20.1%で、JPDA以外の鉱区、すなわち豪州専管海域内鉱区に含まれるのが79.9%ということが規定されている。また、同鉱区から将来産出される石油資源についても、そのうちの20.1%をJPDA産出分と見なすことが併せて確認されている。 これらにより、グレイター・サンライズ資源開発の東チモール側収益シェアは、20.1%の90%に当たる18%強。一方、豪州側のシェアは20.1%の10%に加えて、79.9%の豪州専管海域分についてはそのすべてとなる。こういった認識のもと、両国政府は変則的なグレイター・サンライズ鉱区の開発を可能にするため、02年7月にチモール海条約が両国で調印された直後から、いわゆるユニタイゼーション協定(International Unitization Agree-ment)の交渉を進めていた。 わずか18%の利益配分率では満足できない東チモール政府は、またも海底境界線問題を持ち出して豪州に揺さぶ(4) チモール海 石油・天然ガス資源開発の行方 2003年4月に発効したチモール海条 そして第三に、参加企業の意向がある。周知のとおりウッドサイドは、両国政府間交渉が遅々として進まないこ2006.9 Vol.40 No.568QLNG案件を煩わせた豪州/東チモール間海洋境界の解決 ~バユ・ウンダン、Gサンライズと大陸棚自然延長説/EEZ中間線論の争い~とに業をにやし、04年12月にはグレイター・サンライズの開発に向けた検討作業を凍結している。当然のことながら、これら企業が検討作業再開に合意する必要がある。 既に関連企業は相当な投資を行っていることから、開発を中止することはあり得ないと見る向きも多いが、現時点では必ずしも確実ではない。実際にオペレーターのウッドサイドは、チモール海境界線条約の締結がほぼ確実となった昨年の12月初旬に、同交渉に関して短い声明を公表した。その中で、交渉が妥結する見込みであることを歓迎しつつも、開発にコミットメントすることは避け、同プロジェクトの実施は財政スキームや顧客の確保など、いくつかの要因次第としている。 関連企業の意向問題に関しては、ウッドサイド社が他の有力な事業、例えばプルートなどの天然ガス開発プロジェクトを抱えており、そのためグレイター・サンライズ事業の相対的優先度が低下しつつあることも、不安材料として挙げられる。 また参加企業の間に、東チモール政府に対する不信感が醸成されていることも懸念されている。というのも、今回の一連の交渉を通じて、東チモールほ ご政府が一旦合意したことを直ぐに反故にし、都合が悪くなると国際的同情に訴えること、そして政治的にも不安定である点などが認識され、東チモール政府のクレディビリティーが著しく低下しているからだ。そのため、東チモールが今後も非合理的な要求を繰り返した場合、企業の開発インセンティブが一層阻害される恐れがある。参考1:チモール海条約1. 条約の骨子 2003年4月に発効したチモール海条約(Timor Sea Treaty)は、条約本文15ページ、条約付属文書が24ページの、合計39ページからなる。条約本文は前文に続いて計25条、そして付属文書は付属Aから大部の付属Gまで計7文書で構成されている。1.1. 条約本文 条約本文の各条の内容は、第1条:使用語句の定義、第2条:権利侵害の否定、第3条:石油資源共同開発海域、第4条:生産石油資源の共有、第5条:財政的取り決めと税、第6条:規制・監督機関、第7条:石油採掘規約、第8条:パイプライン、第9条:統合/単一化、第10条:海洋環境の保護、第11条:雇用問題、第12条:労働者の健康・安全問題、第13条:税法の適用、第14条:犯罪の管轄権、第15条:通関・検疫および移住問題、第16条:水路測量および地震観測、第17条:専用船の安全・運行基準および船員規制、第18条:石油資源共同開発海域内の活動の監視、第19条:安全保障/警備、第20条:捜索および救助、第21条:航空管制サービス、第22条:条約の有効期限、第23条:係争処理、第24条:条約の改正、最後に、第25条:条約の発効、となっている。重要条項の骨子は以下のとおりである。(1)第2条:権利侵害の否定 第2条はそのa項で、このチモール海条約が、1982年採択の国連海洋法条約(United Nations Convention on the Law of the Sea)の中で規定された署名国への義務に基づき、発効するものである点を明言している。署名国に課された義務とは、大陸棚に絡む海底境界線の問題で係争中の国々は、最終的な境界線の採用で合意に達するまでの期間、暫定的な境界線取り決めを結ぶべく、あらゆる努力を傾注しなければならないというものである。要するにa項は、本条約が境界線問題に関して、あくまで暫定条約にすぎない点を明らかにしている。 そしてb項では、本条約内の規定事項、ならびに本条約の有効期限中に発生したいかなる行為も、最終的な海底境界線問題での豪州もしくは東チモール政府の立場や権利、さらにそれぞれの海底権益を侵害するもの、あるいはそれらに影響を与えるものと解釈すべきではないとしている。(2)第3条:石油資源共同開発海域 第3条は、いわゆる「石油資源共同開発海域」(JPDA:Joint Petroleum Development Area)の設定に関するもので、その正確な位置や範囲については、付属文書Aの中で詳細な緯度と経度が提示されている。そして第3条では、豪州と東チモール政府が、両国民の利益を増進するために、JPDA内石油等資源の探査、開発、生産を共同で監督、運営、促進することがうたわれている。 ちなみにこのJPDAは、89年に豪州とインドネシア政府の間で調印されたチモール・ギャップ条約の中では、海域A、すなわち海域CとBとに挟まれた両国の共管的海域に相当する海域である。(3)第4条:生産石油資源の共有69石油・天然ガスレビューAナリシス 第4条は、JPDA内で採取された石油資源の所有権はすべて豪州と東チモールに属するとした上で、両国の生産資源シェア、あるいは所有率を規定している。それによると、生産石油資源(Petroleum Produced)、すなわち石油・ガス田より産出され、処理された(Initially Processed)石油資源のうち、90%は東チモールが所有し、一方、豪州側は残りの10%を所有するとしている。(4)第5条:財政的取り決めと税 第5条では、JPDAにおける資源開発・生産活動、あるいは関連活動によって生じた関連企業等の収入等に対し、両国政府がそれぞれの税制度にのっとって課税できることを規定している。ただし、両国が課税対象とする収入等は、両国の生産資源所有率分、すなわち東チモールの場合は、発生した収入等の90%分、豪州の場合は10%分が、それぞれの課税対象となる。(5)第6条:規制・監督機関 第6条は、JPDAの資源開発・生産活動を監督、運営、促進するため、「選任監督・運営局」(DA:Designated Authority)、「合同委員会」(JC:Joint Commission)、そして「閣僚カウンシル」(MC:Ministerial Council)の3層からなる機関を設置することが規定されている。まず最下層に当たるのがDAで、当初はJCがDAを任ずるが、一定期間後には石油資源問題を所掌する東チモール政府の閣僚、もしくは東チモールの法定機関がDAとなる。DAはJCに対して責任を負うが、DAの役割は石油開発・生産活動に関する日々の規制や運営で、その権限や所掌の詳細は付属文書Cで規定されている。 第2層に当たるのがJCで、その構成メンバーは豪州ならびに東チモールによって任命されるが、東チモール任命委員の数は豪州任命委員数よりも1名多い。JCの役割は、JPDA内石油資源開発・生産活動に関する政策、ならびに規制を策定することで、さらにDAの監督役も併せて担う。なお、JCの権限や所掌の詳細は付属文書Dで規定されている。 最上層に位置する監督機関がMCで、豪州側と東チモール側 同数の政府閣僚によって構成される。MCは、両国政府の一方によって提議された本条約に関するあらゆる問題、事項、さらにJCより解決依頼のあった事項を扱う。仮にMCが解決できなかった場合、豪州もしくは東チモール側は、付属文書Bで詳細が規定された係争処理メカニズムを活用することも可能である。(6)第8条:パイプライン 第8条はa項からh項までの8項で構成されるが、まずa項は、JPDAで採取された石油資源を、JPDA内から輸送するためのパイプランの建設には、合同委員会(JC)による認可が必要と規定している。次にc項は、パイプラインが豪州あるいは東チモール領土に建設された場合、パイプラインの接続国は、非接続国へもパイプラインを建設するとのJCの決定に反対することや、決定を妨害することはできないと規定し、またパイプライン問題に関しては、閣僚カウンシル(MC)もJCの決定には介入できないとしている。ただしd項には、JPDAからパイプライン非接続国へとパイプラインを建設することが、資源供給の阻害、制限につながる恐れがある場合には、c項の規定は適用されないとの但し書きが添えられている。 また8条はe項で、洋上プラント案、すなわち天然ガスを洋上の船舶プラントで液化することが、パイプランで陸に輸送し液化する場合よりも、豪州や東チモールに大きなロイヤルティ収入、ならびに税収をもたらすとの商業判断がある場合は、豪州も東チモールも洋上プラント案に反対することや、同案の採用を妨害することはできないと規定している。ただし上記d項と同様に、8条のf項がe項の但し書きとして添えられており、それによると、洋上プラント案の採用が資源供給の阻害、制限につながる恐れがある場合には、e項は適用されないとしている。(7)第9条:統合/単一化 第9条では、グレイター・サンライズ(Greater Sunrise)に代表される鉱区、すなわちJPDA内に鉱区の一部だけが含まれるような鉱区は、全体が統合された、単一の鉱区と見なすことがうたわれている。(8)第13条:税法の適用 第13条は、JPDA内資源開発・生産活動に適用される両国の税法上の観点、目的から、JPDAを豪州および東チモール双方の一部と見なす、あるいは一部として取り扱うとしている。なお、両国での二重課税防止を目的とする税制規約の詳細は、付属文書Gで規定されている。(9)第22条:条約の有効期限ただ2006.9 Vol.40 No.570QLNG案件を煩わせた豪州/東チモール間海洋境界の解決 ~バユ・ウンダン、Gサンライズと大陸棚自然延長説/EEZ中間線論の争い~ 本条約の有効期限として、豪州と東チモールとの間で恒久的な海底境界線が採択されるまでの期間、もしくは本条約が発効してから30年間のうちで、どちらか早い方の期間と規定している。 さらに第22条では、本条約は両国政府の合意を受けて改正することが可能としつつも、仮に改正された場合でも、本条約の規定に基づき開始された参加企業の石油資源開発・生産活動は、そのままの形で継続できるとの保障がなされている。1.2. 条約付属文書 チモール海条約の各付属文書の内容は、付属文書A:石油資源共同開発海域の位置/描写(本文第3条関連)、付属文書B:係争処理手続き(本文第23条関連)、付属文書C:チモール海資源開発選任監督・運営局の権限・機能(本文第6条b5項関連)、付属文書D:合同委員会の権限・機能(本文第6条c2項関連)、付属文書E:グレイター・サンライズ石油・ガス田の統合/単一化(本文9条b項関連)、付属文書F:特定埋蔵石油に関する財政スキーム(本文第5条a項関連)、そして最後に付属文書G:税制規約(本文13条b項関連)、となっている。 付属文書Eは、チモール海条約の調印前後から豪州と東チモール政府との間で重大な係争点となり、その後も延々と交渉が続いたグレイター・サンライズ石油・ガス鉱区に関するものである。文書Eはaからdまでの4つの項で構成されている。 まずa項では、豪州と東チモール政府が、互いに隣接するサンライズならびにトロウバドアの2つの鉱区を(註:両鉱区をまとめてグレイター・サンライズ鉱区と呼称)、統合化された、あるいは単一の(Unitised)鉱区と見なすことがうたわれている。 また統合化鉱区のうち、JPDA内に含まれるのは全体の20.1%、一方、JPDA以外の鉱区、すなわち豪州の専管海域内に含まれる鉱区の面積を79.9%とすることで、両国が合意に達した点が明らかにされている。そしてa項では、グレイター・サンライズ鉱区から将来産出される資源の出所についても、上記の分割率にのっとって分けられること、すなわち、そのうちの20.1%をJPDAでの産出分、残りの79. 9%を豪州専管海域での産出分と見なすことも、併せて確認されている。 次に文書Eのb項では、将来に豪州もしくは東チモール政府の要求に従って、上記の生産分割率式が見直される可能性が指摘されている。 そしてc項では、a項での合意事項が、将来の両国間海底境界線の決定に何らの影響を与えるものではない点が確認されている。 また、d項では、恒久的な海底境界線が採択された場合には、両国政府は上記a項の合意内容を見直すこととなるが、新たにいかなる内容が合意されても、a項に基づき締結された生産シェア契約や、関連企業に付与されたライセンス、認可の条件は遵されるとの保障がなされているじゅんゅ守し2. 両国の法制 両国の国内法制度の概要は以下のとおりである。 豪州側は、石油資源の所有権は政府に帰属するものの、豪州は連邦制を採用しており、豪州の連邦憲法によると、石油資源の開発・生産は連邦政府と州等政府との共管的権限分野、となっている。 石油資源に関連する連邦法としては「1967年石油(海底)法」、一方、州等法としては同じく「石油(海底)法」、ならびに「石油/採掘法」がある。石油資源の場合は、陸から3海里を超える海域は連邦法の適用となるが、一方、3海里以内は、州等の「石油(海底法)」が適用されることとなる。 ただ3海里を超える場合でも、連邦と州等政府は共同して資源開発に当たり、開発関係の各種決定も、連邦ならびに州等政府の資源担当閣僚によって構成される「共同委員会」(Joint Authorities)によって行われる。資源開発関連の認可レジームは3層からなり、まず探鉱ライセンスが付与され、そして探鉱に成功した場合は、リテンションリースか採掘/生産ライセンスが付与される。リースの有効期限は5年だが、更新は可能。 一方、新生国家の東チモールだが、独立以降、既にいくつかの資源関連法を施行しており、海底石油資源関連の国内法としては「東チモール石油法」(詳細については不明)がある。71石油・天然ガスレビューAナリシス3. 両国の収益体制 豪州ならびに東チモール政府は、チモール海JPDA内の資源開発・生産を通じて、ばく大な収入を受け取るが、その収入はロイヤルティ収入と税収とに大別される。3.1. ロイヤルティ 政府のロイヤルティ収入とは、JPDA内の関連企業が政府に代わって資源の政府保有分を売却した際に、当該企業から政府に支払われるものである。例えば東チモールは、開発・生産企業と政府との間で産出資源を折半するが、その政府保有分50%の売却代金の5%分が、ロイヤルティとして東チモール政府に支払われる。3.2. 税収 次に税収であるが、上述したように、この点についてはチモール海条約本文の第5条や第13条、そして付属文書Gの中で詳細が規定されている。付属文書GはJPDA資源開発に関する税の基本枠組みを説明している。 文書G・第4条では、JPDA内の石油資源開発関連活動に課税される豪州の税としては、①石油資源利用税(Petroleum Resources Rent Tax)を除く所得税、②フリンジ・ベネフィット税、③財・サービス税(GST)、④年金税、東チモールの税としては、⑤所得税、⑥付加価値税、そして⑦売上税が挙げられている。ちなみに上記①の石油資源税は、付属文書Fの中に含まれる「生産資源共有契約」(Production Sharing Contracts)に取って代えられている。 条約本文の第13条で規定されているとおり、税制上の観点や目的から、JPDAは豪州と東チモール双方の一部として扱われており、税制規約のもとでは、豪州と東チモールはいわゆる「フレームワーク率」(Framework Percentage)分、すなわちJPDA内石油資源のシェア率に応じて、前者はJPDA開発・生産を通じて関連企業等が得た収益等の10%分、一方、後者の方は、その90%分に自国の税制度を適用することとなる。参考2:ユニタイゼーション協定の骨子 2003年3月に豪州政府と東チモール政府の間で調印された、グレイター・サンライズ鉱区に関するユニタイゼーション協定(Agreement on Unitization of the Sunrise and Troubadour Fields)は、協定本文14ページ、協定付属文書11ページ、さらに協定付属覚え書き2ページの合計27ページからなる。協定本文は、前文に続いて計27条、付属文書は付属Ⅰから付属Ⅴまでの計5文書と、覚え書き1文書で構成されている。1. 協定本文 協定本文の各条の内容は、第1条:使用語句の定義、第2条:権利侵害の否定、第3条:統合鉱区の探査、第4条:適用法、第5条:協定の取り扱い、第6条:鉱区の運営、第7条:鉱区石油資源の分割率、第8条:鉱区石油資源分割率の見直し、第9条:統合鉱区の管理、第10条:収益および支出の分割率、第11条:鉱区資産への適用税、第12条:資源開発計画、第13条:鉱区資産の廃棄、第14条:鉱区施設の位置、第15条:JPDA生産分資源の所有権受け渡し点、第16条:コスト回収ならびに生産共有のための鉱区石油資源の評価、第17条:サンライズ鉱区以外への鉱区資産の使用、第18条:雇用と訓練、第19条:安全問題、第20条:職業上の健康と安全問題、21条:環境保護、第22条:通関問題、第23条:安全保障の取り決め、第24条:計測システム、第25条:情報規定、第26条:係争処理、そして第27条:条約の発効、改正、および有効期限、となっている。なお、重要条項の骨子は以下のとおりである。(1)第2条:権利侵害の否定 チモール海条約と同様に、本協定もその第2条で、本協定内の規定事項、ならびに本協定の有効期限中に発生したいかなる行為も、最終的な海底境界線問題での豪州もしくは東チモール政府の立場や権利、さらにそれぞれの海底権益を侵害するものではない点を明確にしている。これは本協定も、境界線問題に関してはあくまで暫定協定にすぎないことを意味する。(2)第4条:適用法 第4条a項は、既に発効済みのチモール海条約は、JPDA内に適用されるもので、したがってグレイター・サンライズ鉱区のJPDA内に位置する部分の石油資源開発活動にも適用されると述べている。 さらにb項は、グレイター・サンライズ鉱区のうちのJPDA外、すなわち同鉱区の豪州専管的海域における資源開発活動に関しては、当然のことながら豪州の国内法が適用されるとしている。チモール海条約付属文書Eの規定に照らせ2006.9 Vol.40 No.572QLNG案件を煩わせた豪州/東チモール間海洋境界の解決 ~バユ・ウンダン、Gサンライズと大陸棚自然延長説/EEZ中間線論の争い~的に取り扱われ、したがって同鉱区資源生産の収益および支出も新分割率に基づいて調整される。ば、この第4条の規定は、グレイター・サンライズ鉱区のJPDA内にある20.1%についてはチモール海条約、他方、同鉱区の79. 9%は豪州国内法の適用下になることを意味する。(3)第7条:鉱区石油資源の分割率 第7条は、チモール海条約付属文書Eで規定されたグレイター・サンライズ鉱区の分割率が、そのまま石油資源生産の分割率となることが規定されている。つまり、同鉱区の全石油資源生産量のうち、20.1%がJPDA内で生産された量、そして残り79. 9%は豪州専管海域鉱区において生産された量と見なされる。(4)第8条:鉱区石油資源分割率の見直し 第8条は、上記第7条に規定したグレイター・サンライズ鉱区石油資源生産の分割率が、両国政府の一方の要請によって実施された技術的な調査に基づき、変更される可能性があることを明示している。仮に変更された場合、新分割率そは遡(5)第9条:統合鉱区の管理 第9条では、第4条の規定を適用することによって設置された規制・監督機関が、グレイター・サンライズ鉱区の石油開発活動や生産された石油資源を規制・監督する機関となること、そして本協定の執行、あるいは開発全般に関する考察、さらに規制・監督機関相互の調整役等のために、「サンライズ委員会」を設置することがうたわれている。同委員会は3人の委員より構成され、そのうちの2名は豪州側が、残り1名は東チモールが任命するとしている。(6)第10条:収益および支出の分割率 第10条では、いわゆる「評価点/段階」(Valuation Point)までに生じた収益および支出は、「20.1対79.9」分割率に基づいて分けられると規定されている。なお、本協定第1条の使用語句の定義によれば、評価点/段階とは、同鉱区から産出された石油資源が初めて売却される段階を意味するが、これはガス資源が輸送パイプラインに流入した段階と、いわゆる「市場向け石油商品」(MPC:Marketable Petroleum Commodity)が生産された段階のうちの早い方よりも、前の段階とされる。(7)第11条:鉱区資産への適用税 第11条は同鉱区の資産に絡む収入および支出に対する課税問題について規定している。それによると、収入/支出額のうち、JPDA生産分に関連して発生した額と見なされる20.1%分については、チモール海条約内ならびに本協定内の取り決めが、一方、豪州専管海域鉱区内で発生した額と見なされる残りの79. 9%分については、豪州の国内税法が適用されるとしている。(8)第15条:JPDA生産分資源の所有権受け渡し点 第15条では、まずグレイター・サンライズ鉱区で生産された石油資源のうち、JPDAに帰属すると見なされる20.1%については、いわゆる「評価点/段階」において、資源の所有権が両国政府から開発担当企業へと移行することが規定されている。また「評価点/段階」が、コスト回収や生産資源共有のための、JPDA帰属生産資源分に対する課税点および資源の評価点となることも、併せて規定されている。(9)第16条:コスト回収ならびに生産共有のための鉱区石油資源の評価 第16条は、両国政府が、JPDA帰属生産資源分に関する開発企業の生産石油資源売買契約を、付属文書Ⅲの規定にのっとり適切な取引、具体的には「arm’s length」の取引と認めた場合は、その取引価格をもって、コスト回収や生産資源共有の基準となる生産資源の評価額とすることを規定している。 一方、第16条は、両国政府が適切な取引と認めなかった場合には、両国政府は、付属文書Ⅲで示された国際的に認知された方式に基づき、評価額を決定するとしている。2. 協定付属文書 ユニタイゼーション協定の各付属文書の内容は、付属文書Ⅰ:統合鉱区の位置、付属文書Ⅱ:統合鉱区に適用可能な法(本文第19、20、21条関連)、付属文書Ⅲ:石油資源の評価原則・方式、付属文書Ⅳ:係争処理手続き、そして付属文書Ⅴ:専門家による判定手続き、となっており、最後に、グレイター・サンライズ開発に関する両国間覚え書きが添付されている。 このうちの付属文書Ⅲは、JPDA生産分石油資源の評価方法に関し規定している。まず開発企業の取引が「arm’s length」であるとは、当該取引企業が取引を「arm’s length」に行うことを意味するが、それが「arm’s length」なのゅう及き73石油・天然ガスレビュー006.9 Vol.40 No.574アナリシスか否かは、当該企業の相互関係ばかりか、たとえ互いに独立した企業である場合でも、ビジネスのやり方、進め方なども加味して、両国の規制・監督機関によって決定されるとしている。 仮に同機関によって「non-arm’s length」であると判断された場合には、石油資源の評価額は、評価点/段階におけるいわゆる「比較非統制価格」(CUP:comparable uncontrolled price)によって決定され、そしてCUPが存在しない場合は、同付属文書6項の算出式を用いて、評価額が決定されることが規定されている。 最後に覚え書きだが、これは豪州から東チモールへの「ボーナス」支払いに関する規定で、ただし同覚え書きの5項では、1項ならびに3項で規定された「ボーナス」の支払いは、生産天然ガスの液化プラントをグレイター・サンライズ鉱区内に設置した場合、すなわち洋上プラントのオプションが採用された場合にのみ実施されるとしている。こく息そ3. 再交渉の経緯 2003年3月に両国間でIUAが調印されたものの、依然としてチモール海資源共同開発問題は、一件落着には至っていない。それは、豪州は2004年3月に議会でIUAの批准を行ったものの、東チモールは、現行の境界は、かつて豪州とインドネシア政府とが勝手に取り決めたものにすぎず、したがって無効であるとの従来からの議論を再度持ち出し、海域の境界線見直し交渉の開始、ならびに見直しに同意しない限り、IUAの批准は行わないとの姿勢を採り続けてきたからだ。 またチモール海条約付属文書内の、グレイター・サンライズ構造の20. 1%がJPDA海域内の含まれるとの規定にしても、恒久的な海底境界線が確定するまでの暫定的な取り決めであることを改めて強調した。これまでも述べてきたとおり、実際にチモール海条約にしてもユニタイゼーション協定にしても、あくまで暫定的な取り決めであり、また前者の付属文書Eの(b)には、東チモールもしくは豪州は、分割率の見直しを要求することが可能との文言があるし、また後者も第8条で変更の可能性を規定している。要するに東チモールの主張も、合法的だが、収益の増加を目論んで、執拗に境界線問題を蒸し返す東チモールに豪州の不満が高まった。 ただ東チモールが境界線問題を取り上げ、態度を硬化させた背景には、2002年5月の東チモール正式独立の直前に、豪州政府の取った行動があった。豪州政府は、東チモールとの海底境界線交渉に関しては国際司法裁判所、ならびに国際海洋法裁判所の介入を拒否することを2003年3月、一方的に決定、通告したのである。東チモール側は、これは豪州が海洋法上の根拠が希薄であることを自ら認めたものとして、鋭く批判するとともに、姑とも言える豪州の「先制攻撃」戦術に強く反発した。 東チモールによるユニタイゼーション協定の批准拒否により、グレイター・サンライズ油ガス田の開発をめぐる両国の交渉は振り出しへと戻り、2004年には同鉱区の開発にも暗雲が漂う事態となって、同問題への豪州政府の対応が注目されはじめた。 結局、豪州としても問題を放置しておけず、グレイター・サンライズ問題をめぐる再交渉に応じ、2004年4月に第1回の協議が開かれた。同協議では、東チモール側が、(ア)境界線交渉については今後の「予定表」を明確にすること、(イ)交渉期間中にはグレイター・サンライズ鉱区で新ライセンスを付与することを中止する、さらに(ウ)交渉の「行司役」として第三者を関与、介入させる、等の要求も行ったことから、早くも交渉は紛糾し、その後も両国間協議は決裂、再開を繰り返すこととなった。 2004年の後半になると、紛糾を続けてきた両国間交渉にも変化が見え始めてきた。その契機となったのは、グレイター・サンライズ・プロジェクトのオペレーターであるウッドサイド社が、04年末までに東チモールがIUAを批准しない場合には、開発を諦めざるを得ないと表明したことであった。ウッドサイドの姿勢は東チモール政府に交渉姿勢の再考を促すもので、2004年のクリスマスまでには東チモールがIUAを批准するとの見方もあった。 豪州の最大関心事は境界線問題、特にインドネシアとの境界問題に与える波及効果、インパクトであり、他方、チモール海条約交渉時と同様に、東チモールの最大の関心事は資源収益分配率の増加にあり、境界の見直し要求も分配率増加につながるから、あるいは分配率増加のための交渉材料だったからだ。要するに、東チモールが境界線見直し要求を徹回する一方で、その見返りに豪州側が東チモールの取り分の増加に同意すれば、妥結が容易となる構図が描かれていた。 ところが2004年8月頃の楽観的な見通しとは裏腹に、同年10月にディリで開かれた協議でのアルカティリ首相の姿あきらQLNG案件を煩わせた豪州/東チモール間海洋境界の解決 ~バユ・ウンダン、Gサンライズと大陸棚自然延長説/EEZ中間線論の争い~勢は依然として厳しいもので、交渉は再度決裂、暗礁に乗り上げることとなった。豪州側は、交渉が決裂したのは東チモールの変節が原因としている。すなわち、それまで収益シェアの大幅増加の見返りに、いわゆる香港方式に基づき、境界線の問題を長期間にわたり凍結することを提案していた東チモールが、10月のディリ会議では同提案を取り下げ、しかも東チモールにLNGプラントを建設することを強硬に要求したためとされる。交渉はその後も難航したものの、2004年12月には、ウッドサイドの警告どおりにグレイター・サンライズの開発計画を一時凍結する事態となったことから、両国間の交渉にも拍車が掛かり、翌05年の5月にクイーンズランド州ブリスベンで開かれる予定であった会合で、最終的に妥結するとの期待感が高まった。そして妥結内容の骨子は、①東チモール側の要求していた両国境界線の引き直し問題は棚上げにし、向こう50年?60年にわたって凍結する、②将来、東チモール領土に石油・ガスの「下流産業」を誘致するとの案には、豪州側も前向きに検討、対処する、③グレイター・サンライズ石油・ガス田開発における、東チモール側の収益配分率を高める、そして④東チモールはIUAの批准を行う、等になるものと予想された。 実際、同会議は、グレイター・サンライズ交渉のターニング・ポイントとなったが、その後も両国は微調整のための交渉を続け、05年11月の第8回協議でほぼ全面合意に達し、年が明けた06年1月には、ハワード首相と東チモールのアルカティリ首相が見守るなか、ダウナー外相とホルタ外相が、チモール海のグレイター・サンライズ石油・ガス田の開発に関するチモール海境界線条約に調印した。 条約の主要骨子は、両国間の海底境界線をめぐる問題については今後50年間にわたり凍結し、一方、同鉱区資源生産の収益は両国で折半する、というものであった。グレイター・サンライズ石油・ガス田開発関係の枠組みは、02年5月に調印され03年4月に発効したチモール海条約、03年3月に調印されたものの、依然として未発効のIUA、そして今回調印された条約の計3本によって構成されることとなる。4. チモール海境界線条約の骨子 2006年1月に豪州政府と東チモール政府の間で調印された、チモール海境界線条約(Treaty on Certain Maritime Agreements in the Timor Sea)は、条約本文11ページ、条約付属文書2ページの合計13ページからなる。条約本文は前文に続いて13条、付属文書は付属Ⅰと付属Ⅱの2文書で構成されている。4.1. 条約本文 条約本文の各条の内容は、第1条:使用語句の定義、第2条:権利侵害の否定、第3条:チモール海条約の有効期間、第4条:境界線問題の凍結、第5条:統合鉱区からの収益分配、第6条:査定/評価者、第7条:石油資源に関する権利と義務、第8条:専管、第9条:豪州‐東チモール海洋委員会、第10条:グレイター・サンライズ鉱区分割率の見直し、第11条:係争処理、第12条:条約の有効期限、第13条:条約の発効、となっている。重要条項の骨子は以下のとおりである。(1)第2条:権利侵害の否定 第2条では、チモール海条約ならびに国際統合化協定の第2条と同様に、本条約内の規定事項、ならびに本条約の有効期限中に発生したいかなる行為も、最終的な海底境界線問題での豪州もしくは東チモール政府の立場や権利、さらにそれぞれの海底権益を侵害するもの、あるいはそれらに影響を与えるものではないとしている。(2)第3条:チモール海条約の有効期限 第3条では、チモール海条約第22条で規定された、同条約の有効期限に関する条文が改正されている。すなわち第22条では、本条約が暫定条約にすぎず、その有効期間は両国政府間で恒久的な海底境界線が採択されるまで、もしくは本条約が発効してから30年間のうち、どちらか早い方の期間としていたが、本条約第3条によって第22条の上記規定は、「チモール海条約の有効期限は、チモール海境界線条約の有効期限と同一とする」に変更されている。(3)第4条:境界線問題の凍結 第4条の規定は豪州側が強く望んだもので、同条では本条約の有効期限中、懸案となっている両国海底境界線問題を両国が「棚上げ」することがうたわれており、この間両国政府には、裁判所、国際機関などに対して、同境界線問題を提訴することも禁じられている。さらに第4条はその7項で、本条約の有効期限中には、両国政府に恒久的な海底境界線問題で交渉する義務は課されていないことが明示されている。(4)第5条:統合鉱区からの収益分配75石油・天然ガスレビューAナリシス 第5条で扱われている収益分配問題は、本条約交渉の中核的な争点となったものである。第5条では、まずその1項で、グレイター・サンライズ鉱区全体からもたらされる「上流」(Upstream)関連の収益を、両国で折半することが規定されている。なお、第1条の使用語句の定義によると、「上流」とはユニタイゼーション協定の中で定義された評価点/段階(Valuation Point)以前の、石油生産活動ならびに施設を意味する。 そして第5条の3項では、豪州側が受け取る収益の中身として、石油利用税、キャピタル・ゲイン税を含む法人税、ロイヤルティを挙げ、一方、5項では、東チモール側が受け取る収益の中身として、ロイヤルティや所得税などを挙げている。 さて、3項で指摘された豪州と東チモールの収益額の合計が両国で折半されることとなるが、収益額は豪州側の方が大きい。そこで第8条の9項によると、折半のために豪州側は、豪州の収益額から東チモール側の収益額を減じ、その額の半分を米ドルで東チモール側に渡すとされる。ただし10項は、仮に特定四半期の東チモールの収益額が豪州の収益額を超えた場合にも、折半のための東チモールから豪州への支払いは行われず、次期四半期における豪州の対東チモールへの支払い額で調整されるとしている。(5)第7条:石油資源に関する権利と義務 第7条では、まず本条約の有効期間中に、資源開発に関連して両国政府に認められた権利、ならびに課せれられた義務の内容は、本条約、チモール海条約、IUA、そしてチモール海条約第9条において触れられた、将来の両国間合意によって規定されるとしている。(6)第9条:豪州―東チモール海洋委員会 第9条では、両国が関心を抱く海洋問題を協議するために、両国それぞれの閣僚1名ずつ、もしくは両国政府の選出した政府代表によって構成される、海洋委員会を設置することが規定されている。(7)第10条:グレイター・サンライズ鉱区分割率の見直し 第10条は、IUAの第8条の改正に関するものである。上述したようにIUA第8条では、グレイター・サンライズ鉱区の分割率、すなわち同鉱区のうちで、JPDA内に含まれるのは鉱区全体の20.1%、一方、JPDA以外の鉱区、すなわち豪州専管海域内に含まれる鉱区部分は79.9%との分割率が、今後変更される余地のあることがうたわれていた。ところが本条約の第10条では、本条約の有効期限中に分割率は変更されない点が明示されている。(8)第12条:条約の有効期限 第12条では、本条約の有効期限が発効後から50年間、もしくはグレイター・サンライズ鉱区の採掘活動が終了した5年後までと規定されている。この規定により、本条約の第4条で規定された境界線問題の凍結期間とは、結局50年間、もしくは生産活動終了から5年後までとなる。 なお、国際統合化協定が発効してから6年以内に、グレイター・サンライズ事業の「開発計画」が了承されなかった場合、もしくは本条約が発効してから10年以内に、同鉱区での資源生産が開始されなかった場合には、両国政府の一方は、書面にて本条約の破棄を希望する旨、他方に通達することができ、その場合本条約は、通達後3カ月で廃棄される。ただし、仮に本条約が廃棄された後に同鉱区の生産が開始された場合にも、依然として本条約の規定条項は有効とされる。4.2. 条約付属文書 本条約付属文書Ⅰは評価手続き、付属Ⅱは条約本文第8条で言及された境界線に関するものである。執筆者紹介今 英樹(こん ひでき)1978年 石油公団入団。石油公団では総務部、計画部、TRC研修班に在籍。JHN Oil Operating Co.、石油資源開発(株)国際石油開発(株)、ICEPに出向。2003年3月より2006年7月までJNOC/JOGMECシドニー事務所に勤務。2006.9 Vol.40 No.576
地域1 大洋州
国1 オーストラリア
地域2 アジア
国2 東ティモール
地域3
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2006/09/20 [ 2006年09月号 ] 今 英樹
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